食事を終えた私と黒ウサギはその後、街の中を回る事にした。黒ウサギはコミュニティの為を考えると同時に私の事も考えてくれる。だから欲しい物は無いかと聞いて来るけれど、私はそれに首を横に振って無い事を示し、全て見るだけで済ます。本当に欲しいと思える物は無いし、もしあっても持っていけるか分からない。それにもうすぐ離れるのだから、これ以上迷惑は掛けたくない。
「っと、そろそろ帰りましょうか?」
黒ウサギの言葉に私は頷くと、彼女に手を引かれて帰路を歩く。来た時同様に街を出た後、余り人気の無い道を歩き続けて。するとその途中、一瞬何処かで何かの声が聞こえる。本の微かで気のせいかとも思えた声だけれど、どうやら黒ウサギにも聞こえた様子。2人で同時に聞いたのならば、気のせいと言う可能性は低い。黒ウサギは「何でしょうか?」と言って聞こえた来た何かを確認するために帰路から少し外れて歩き始めた。私は黒ウサギに手を繋がれて居る為、当然それに付いて行く。そうして見えて来たものは……
「おかえり。早かったな」
「あ……れ、レティシア様……た、ただいまです」
「……どうしたんだ?」
ノーネームに無事に到着すると、出入り口を掃除して居たレティシアが出向かえてくれる。だけどレティシアは黒ウサギの返事と顔を確認した後、私に何があったのかと質問して来た。それもその筈。今現在黒ウサギの顔は真っ赤に染まって居て非常に恥ずかしそうにして居て、何よりも髪の色が【桃色に変わって】居た。私はレティシアの質問に説明しようと口を開いたけれど、一瞬の内に黒ウサギは「お、お猫様!」と言うと同時に私の口元を手で塞いで来る。そして「失礼しますね!」とレティシアに告げると、私は黒ウサギに抱えられて強制的にその場を去る事になった。
黒ウサギがこうなったのは声の正体を確認しに言ったことが原因。ちょっとした興味本位で音の発生源を見つけ、覗きこんだそこで行われて居たのは所謂【男女の営み】。聞こえて来たのは女性の喘ぎ声だったらしく、本人たちは見つからないと思って居たんだろう。でも普通の存在よりも遥かに耳の良い黒ウサギと私はそれを微かに聞い取ってしまったらしい。結果それを見てしまった黒ウサギは顔を真っ赤にしながらしばらく固まり、やがて我に帰ると同時に私を連れてその場から豪速で逃げ出すことになった。そして必死に落ち着かせながら帰還し、今に至る。
レティシアの姿が急激に離れて行き、私はそのまま黒ウサギの部屋に連れて行かれる事に。再び息を乱して疲れきって居る黒ウサギはそこでやっと私から手を離すと、ゆっくりその場に正座の体制で座り込んだ。ようやく解放された事で私は動けるようになり、黒ウサギの目の前に移動して同じ様に座り込む。恥ずかしさが頂点に達したのか、黒ウサギはもう涙目になって居た。
「……大丈夫?」
「あ、あの……その……すいません。取り乱しました」
私が話しかけると同時にゆっくり顔を上げ、まだ少し荒い息を整えて行く黒ウサギ。それでもまだ感情は昂ったままらしく、髪の色が戻る様子は無い。……私は何だかんだで『そう言う事』に関して気付けば少し免疫が付いて居るらしく、恥ずかしいと言うよりはあんなところでどうして出来るのかと思うぐらい。だけど黒ウサギは事この様な内容に関して純粋で、平常心では居られない様子。……もし黒ウサギが自慰して居た事なんて言ったら、恥ずかしさでおかしくなってしまうかも知れない。
「うぅ……まさかあんなところを見てしまう何て……」
「……吃驚」
「こんな時でも動揺しないなんて……お猫様の冷静さが今は羨ましいです」
黒ウサギは深呼吸を繰り返した後、私の顔を見てそう言うと立ち上がろうとする。だけどどうやら黒ウサギ、必死に部屋に入って座ったせいで自分がどんな体制だったのか頭の中から消えて居たらしい。正座の状態で長い間座り続けて居れば、当然その足には血が上手く回らない訳で……痺れるのは必須。立ち上がろうとした黒ウサギは付けた足に力が入らず、ゆっくりと倒れこんで来る。そして彼女の前には私が居て、近づいて来る黒ウサギの姿を見る事しか出来なかった。
「あわわわぁ!」
「!」
倒れて来た黒ウサギの身体を反射的に抑えようとするけれど、彼女の体重を支えられる力を私は持って居ない。故にそのまま後ろに倒れる事になり、私は黒ウサギに倒される様に背中から地に伏せる事になる。幸いだったのは、黒ウサギが前のめりに倒れて来た事で彼女の顔が私の胸に突っ込んだ事かも知れない。運良く私も何かに頭を強打する等と言うことも無く、黒ウサギの重さを感じる事となる。
「ふぉ、ふぉねこふぁま!?」
「ん! ……黒ウサギ……降り、て」
私の胸に顔を入れ、驚きながら黒ウサギが喋ればその振動で身体に淡い痺れが走る。思わず出そうになる声を抑えて私は黒ウサギに降りる様にお願いをした。……だけど何故か黒ウサギは私から降りてくれず、見て見れば黒ウサギの瞳は何処か蕩けた様な表情になって居た。もし今の状況で黒ウサギが『魅了』何てされてしまえば、さっきの光景を見た事もあってかなり不味い事は明らか。嫌な予感がして、急いで動こうとした私はすぐにそれを止められる事になる。
「んぁ!」
「お猫様……良い匂いがします。それに柔らかいです」
黒ウサギは確かに私から退いてくれた。だけどその後、私が逃げる前に突然服の上から先程まで埋もれて居た私の胸を掴んで来る。それも触るだけで無く揉むようにして。普段の黒ウサギなら絶対にしないのに、何かに憑かれた様に恍惚とした表情で触って来る黒ウサギに感じるのは間違い無く恐怖だけ。リズの時もそう、こうなった時。相手は私の事等考えずに攻めて来る。
「憧れのお猫様が今、私の目の前で無防備に倒れて居ます……我慢何て、出来ません!」
リズの場合の妖艶になったのとは違い、黒ウサギは開き直った様に欲望に素直になり始める。そして私の身体に改めて近づいて来ると、その顔を私の顔に近づけて来る。しようとして居る事はすぐに分かり、私はそれに反応する間もなく唇を奪われる。唯合わせるだけならまだ逃げる事はきっと出来た。だけど黒ウサギがして来たのは深いキスであり、口の中を這う舌に頭の中も同時に掻き乱される。
そうして黒ウサギがキスに満足した頃には既に身体は動かず、それを察したように黒ウサギは私の身体を軽々と持ち上げるとベッドの上に移動し始める。今現在ノーネームに十六夜達は居ないし、レティシア達は出入り口付近を掃除して居たからしばらく奥に入って来る可能性は低い。普段は常識人だから何もしてこないと何処かで油断して居たのかも知れない。でもこの身体の体質に相手は関係ないらしく、出来る事なら彼女の欲は心も含めて準備をしてからと思って居たけれど、それはもう叶わないことらしい。
次回、今章最後のR18要素有りです。