※この作品はR-18です。

Escape! 猫の世界巡り   作:ウルハーツ

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飛鳥の誘い。着せ替え人形

【残り期限・8日】

 

「ハク、今日は私に付いて来なさい」

 

 白夜叉との修業を早朝に済ませた私はノーネームで朝食を食べ終えた後、部屋の中で今日の予定を考えて居た。だけどそんな時、突然部屋にやって来た飛鳥に私はそう言われる。その言い方からして私に拒否権は無いらしく、考えたけれど何か予定がある訳でも無かった私は飛鳥の言葉に了承するために首を縦に振った。すると「じゃ、行くわよ」と言って飛鳥は右腕を上げ、首を左に少しだけ動かす。それによって少しだけ広がった右肩に、私は猫の姿になると飛び移った。……飛鳥は何時からか私と何処かに行く時、猫の姿にして自分の肩に乗せたがる。位置は悪く無いし、落ちない様に気を付けてくれているけど……辛く無いのだろうか? 普通、肩が痛くなると思う。

 

 飛鳥に連れられ、ノーネームの出入り口に近づけばそこには畑の仕事をするために動いて居る黒ウサギの姿。周辺には子供達の姿も見える。と、子供の1人が私達の存在に気付いて大声で挨拶。その声に一斉に他の子供達も気付き、私達に挨拶をして来た。そうして最後に黒ウサギは飛鳥の存在に気付き、挨拶をする。と、飛鳥の肩に乗って居た私を見て一瞬顔を赤くした。

 

「お、お猫様! おひゃようございますっ!」

 

 固まりながら必死に挨拶をすれば、途中で噛んでしまう黒ウサギ。自分の失敗に更に顔を赤くし、子供達に顔が赤い事を指摘されれば仕事に戻る様に強めに指示を出して一斉に散開させる。子供達の一部は怒られた事に不服そうに、少し大きい子は楽しそうに笑みを作ってそれに従がった。……そうして黒ウサギが私達の前に残り、彼女は私では無く飛鳥を見て会話をする。

 

「お2人はお出かけですか?」

 

「えぇ、ちょっと散歩にでも行ってくるわ。せっかく貰った休みに籠って居たく無いもの」

 

「散歩ですか。……お猫様も一緒にです?」

 

 先程まで固まって居たのに飛鳥との会話になると普段の姿に戻る黒ウサギ。彼女は自分の質問に返した飛鳥の答えに、横眼でチラチラと私を見ながら首を傾げる。私自身、ついて来る様に言われただけだから飛鳥の目的は今知った。どうやら今日は飛鳥が休みを貰ったらしい。で、暇であろう私を一緒に連れて行こうと考えた様子。

 

「えぇ、特に問題は無いでしょ?」

 

「! そう……ですね。飛鳥さんとならきっと危険は無い筈。それでは私は仕事を再開しますので、気を付けて行ってらっしゃいです!」

 

 飛鳥の言葉に何処か言いにくい表情を浮かべながらも笑顔で返した黒ウサギ。彼女は最後に私達を見送る言葉を言うと共に仕事を再開するため、離れて行く。その際に私へ一度視線を移してから去って行くことで、飛鳥もまた何かを感じた様子。私と黒ウサギの姿を何度か見て何かを考え始めた。

 

 あの日以降、まともに黒ウサギと話す機会はまた無くなってしまった。雰囲気からして嫌われている訳では無さそうで、嫌われる理由も無い筈。私達がした事自体、純粋な黒ウサギにとっては思いだすだけでも赤面物。私と話すのに勇気が居る様になってしまったのかもしれない。私も恥ずかしいとは思うけど、この顔では恥ずかしがることも表現出来ない。だから何時も通りに、何時か話せる時まで待つ。……別れの日は近いけれど。

 

「……貴女達、何かあったのかしら?」

 

『……』

 

 飛鳥が考えるのを終えると共に私に聞いて来る。流石にあの内容を説明する訳にも行かず、かと言って何も無いと言うのはどう考えても嘘。だから私は飛鳥の言葉に頷く事も、首を横に振る事もせずに目線だけ返した。飛鳥はしばらく私の目を見続けて居たけれど、やがて諦めた様に「まぁ良いわ」と言って歩き始める。どうやら飛鳥なりに気を使ってくれた様で、深くは聞いて来ない様子。私は飛鳥の気遣いに感謝しながら、彼女の肩の上で揺られ続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街の中に入った飛鳥と私はそのまま飛鳥の気の向くまま、移動し続ける。十六夜・飛鳥・耀の3人はこの近辺では既に有名人に近い存在になって居る。突然現れた強者であり、ノーネームでありながらギフトゲームに何度も勝ち続ける者達。目立たない方がきっと無理。だから、お客として来る分には歓迎されるけれどゲームの相手としては流石に逃げ出すものを増え始めて居た。3人の存在によって【ノーネーム=弱者】と考えを止めた者もきっと少なく無い筈。

 

 歩き続けて居た飛鳥に連れられ、やがてたどり着いたのは1軒のお店であった。そこには飛鳥のドレスとはまた違う綺麗な服が並び、飛鳥はそのお店の前に立ってしばらく窓越しに服を見て居た。と、今度はお店の中へと入り始める。どうやら欲しい物があったらしい。入れば最初に聞こえたのは店員に寄る歓迎の声。飛鳥はそれを受け乍ら店の片隅に移動すると、

 

「ハク、人に変わりなさい」

 

『?』

 

 突然そう私に告げる。理由は分からないけれど、私は言われたとおりに人の姿になる。と、すぐに飛鳥によって試着室の傍へと移動させられる。気付けば彼女の手には先程窓から見えて居た服が数着。

 

「服を脱いでこれを着て見なさい」

 

 そこでようやく私は飛鳥が服を見て居た理由に気が付いた。どうやら飛鳥が欲しかったのは自分の服では無く、私の服だったらしい。白夜叉に貰った今の服は、人の姿の時にだけその姿を現す。基本白夜叉が気を利かせてくれたお蔭で洗う必要が無いらしく、他の服を着る必要もそれで無くなった。が、飛鳥としてはどうやら納得行かないらしい。私の意思は関係ない様で、強引に持って居た内の1枚を渡すと同時に試着室のカーテンが閉められてしまう。……今現在私の手には初めてこの身体になった時に来た様な真っ白のワンピースがある。

 

「早くしないと何時まで経っても出れないわよ」

 

 着るべきなのかと迷って居た時、カーテン越しに飛鳥がそう言ってくる。どうやら物音がしない事で動いて居ないと分かったらしく、告げられた言葉からするに私はこの服を着ない限り帰る事も他の場所に行くことも出来ない様子。何となく出そうな溜息を殺し、私は仕方なく着て居た服を脱ぎ始める。今の服を着る際、サウザンドアイズの女性店員に着方・脱ぎ方は教えて貰った。上下とも繋がって居た服はやがて地面に落ち、私は飛鳥に渡されたワンピースを頭から被る。……何か懐かしい感じがする。下着がある分、少し安心感もある。

 

「……着た」

 

「じゃ、開けるわよ?」

 

「ん……」

 

 飛鳥に着たことを告げると、一度断りを入れられた後にカーテンが開かれる。きっと飛鳥の目の前には普段とは全く違う服装をした私が居るんだろう。開いたカーテンを片手に目を見開き、「思ったよりも……」と呟いた飛鳥。その先に続けられる言葉が良いのか悪いのか、私には分からなかった。と、飛鳥はしばらく私を見続けた後に再び違う服を渡してくる。それはつまり、今度はそれを着ろと言う事なのだろう。試着室の目の前に飛鳥が居る以上、断って逃げる事は無理。……仕方ない。

 

 その後、私はしばらくの間飛鳥の着せ替え人形の様に様々な服を着る事となった。元から着ていた白夜叉曰く甘ロリと言う服と最初に渡された白いワンピースを初めとし、ピンク色のカーディガンや水色のノースリーブ等と色々な服を私に渡しては着る事をある意味強要してくる。私が着替える事を楽しいと思えるのかは分からないけれど、飛鳥は見る度に頷いてはまた渡して来るために満足はして居る様子。結局その後、飛鳥は最初に私に渡したワンピースを一番気に入ったらしく、私はそれをプレゼントされる事になった。

 

『久遠 飛鳥 変化欲 MAX・求知欲 MAX・支配欲 82/100』

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