カチカチと時計が時を刻む。
「おい、起きろ。飯。」
短い単語を並べ話しかけてくるは、俺の恋人トシくん。
うっすら目を開けると、暗闇の中に蝋燭の火が見える。俺が明るい光がダメだから、夜はいつも蝋燭の灯り。
「もう少し……」
「五時過ぎたぞ。見たいテレビがあるんだろ?」
「う~ん。」
「早くしねぇと、お前の好きな肉食べるぞ。」
「やだ。起きるから。」
ムクッと起き上がる。この時期になると、もう窓に遮光カーテンをしなくても光は入ってこなくて、俺にとっては過ごしやすい秋が来た。
夏は陽射しが強くて、嫌な時期。夏なんてなければいいと思う。暑いし、蝉は五月蝿いし。
布団をたたみ、棺桶を閉めた。
「トシく~ん。」
トシくんに抱きつく。
「なんか、甘い匂いするよ?」
首筋を匂う。
「ケーキ買ってきたからね。」
「ケーキ♪食べる♪」
「後からな。ほら、離れて……」
トシくんに無理やり剥がされる。
「食事にしようか。銀時。」
「うん。」
いつも起きると用意されている朝ごはん。トシくんにとっては夜ごはんだけど………。
どうやって作っているんだろう?いつも美味しいんだよね。
「いつも美味しいって、お前のは生だろ?」
ん?俺、喋った?エスパーなの?
確かに、俺が食べているのは生肉だけど……。けど、産地とかで味違うし……。トシくん、ちゃんと選んで買って来てくれるもん。
「ねぇ~、トシくん……今日もいい?」
トシくんの食べている手が止まった。
「嫌だ。」
「ダメなの?」
「お前、この間痛くしないとか少しだけって言ったくせに、結局痛くしたじゃないか。もう、飲ませてやんない。」
「あれは、トシくんが暴れたからで……」
「電話が鳴っても、やめないお前が悪い。」
ほんの少し、トシくんの血が飲みたいだけなのに………。
「ご馳走さま。」
食べ終わっても特にすることがなく、ソファに座り明るさを抑えたテレビをつける。
トシくんと出逢ったのは、もう昔の事。トシくんがまだ小学生だった頃。傷だらけの俺に近づいてきてくれて、血を分けてくれた。トシくんは、孤児院の子で高校卒業と同時にそこを出なくちゃいけなくて、それで一緒に住むことになった。
俺は、別に一緒に住まなくてもよかったんだけど、トシくんがどうしてもって……。
この何年間かで、1歳年を取った俺にとって年々、年を取っていくトシくん。
いずれ、別れが来ちゃうよね。それも………永遠の………。
「………おい、銀時。」
「へぇ?何?」
考え事してて、まったく気づかなかった。
「指ならいい。ほら……」
俺の隣に、トシくんが座り目の前に人差し指が差し出される。
「いいの?」
「うん。お前、落ち込んでるし。」
別にその事で、落ち込んでいた訳じゃないんだけどなぁ。まぁ、いいや。食べちゃえ。
パクっ。牙に指が当たるとじゅわ~っと血が溢れてくる。相変わらず、トシくんの血は美味い。
「もう、終わり。」
指を抜かれる。まだ少し飲みたいけど、ここで言うと怒っちゃうからな。
開いてない筈の窓から、風が吹いたのかカーテンが捲り上がり赤くなった月が見えた。
完
吸血鬼×人間。上手く出来てましたか?年をゆっくりとる吸血鬼が早く年を取る人間に恋をしてしまった。切ない感じが出ていれば、いいと思います。