短編なので、寄り道がてらに御覧になっていただけたら幸いです。
拙作ではありますがよろしくお願いいたします。
その夜、男はどうしようもない程の衝動に駆られていた。目の前で無邪気な寝顔を晒している女を我が物にしてしまいたいという衝動である。四肢にはまだ、か弱い幼さを残しながらも胸の曲線や顔立ちのそれはもうすっかり大人びていた。
女が身に纏う桜色の着物が少しはだけ、首もとが露出している。男はそっと女の髪を撫でてみた。絹のような髪がゆらりと動く。女はふと目を覚まし、愛しい男が優しい笑顔でこちらを見ているのに気づいて顔を赤らめた。
男はゆっくりと女を抱き寄せた。安心できる陽だまりの薫りが男の鼻をくすぐった。陽だまりの薫りで自らの体内を満たそうと抱きしめる腕にぎゅっと力を入れた。女は愛しい男に抱きしめられたのが余程嬉しかったのか、その弱々しい二つの腕を男の背へと伸ばした。
男は髪にうずめていた己の鼻を下へと徐々に降ろし、先程まで露出していた鎖骨に当てた。いつも着物に覆われている女の肌とはこんなにも陽だまりのようであるのかと、その心地良さにまかせ、その鼻を更に下へ。と、同時に女を抱いていた両の手で女の躯の曲線をなぞる。女の躯がピクリと跳ねた。男の鼻はいつしか女の成長したふくよかな胸の先端をとらえていた。気づけば、女の着衣はさらにはだけ、胸が殆ど露になっていた。雪の如く真っ白でいて透明なその躯は、桜色の着衣に映え、まことに美しかった。女の脚を愛でていた男の両の手は秘部に達してる。
女は少し苦しそうな吐息を漏らし、背を仰け反った。だが、あくまでも男にその身を委ねていた。
男がその躯を愛でる度に女は咲き乱れた。
男は本当に美しいものとは、春を彩る桜でも、夏空を映す海でも、秋の野山を染める紅色の木々でも、冬の富士を駆ける千鳥でもない、この女なのだと思った。この美しさの前ではどんな景色も花も霞んだしまうようだと、そう思ったのだ。
己の欲情に任せ、愛で続けた。
そして、何度も何度も、女を咲かせた。
空が白もうとした頃、女が疲れ果て涙を浮かべるのを見た。気づかない内に、男は自分の満足だけを求めてしまったのだ。男は心から申し訳ないと思ってすぐさまに、女を優しく抱き止めた。
愛しい男の温かくたくましい腕を感じて、女は安堵に似た心持ちを覚えた。いつの世も、女は弱くいつ自分の居場所を剥奪されると知れない。だが、自分にはこの人がいる。ここが、この腕の中が私の居場所であろうと安らぎを感じた。
お互いの存在を深く確かめ合った二人は、再び静かな朝を迎えようと眠りについた。月明かりに照らされた屋敷は一時の静寂に包まれるのだった。
夜空に浮かぶ満月は二人の姿に一体、何を見、何を思うのであろうか、西の空へゆっくりと歩み始めるのであった──。
御覧いただきありがとうございました。
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