レーベを助けるために画面から出された指示を受けるが…
「………私にどうしろと?」
少女が一人でにそう呟いた。現在、少女一人しかいない薄暗い密室。遠くを見ようとしてもよく見えない。そんな状況の中、声音一つ変えずに冷静な少女、マックスシュルツ。
彼女は何故ここに倒れるように眠っていたかわからない。そもそも自分が気を失う前の記憶も無かった。
幸い夏服のワンピースはそのまま、下着も問題無かった事が不幸中の幸いだ。
「言っても無駄…ね、出口はどこ?」
しばらく待っても助けが来る気配すらない、誰かの呼び掛けも無い。そのため、自らが動き出して出口を探そうとしていた。
ブゥン
「なに…これ?」
自分が立ち上がろうとした時、壁と思われる場所が電光掲示版のように光り出し、文字が浮き出ていた。
「え…と、「後ろにある柱に靴と靴下を脱いで片足で立て?」………これ?」
後ろにあるのは今にも折れそうな細い棒が床から伸びてきた。ぱっと見両足で立つのがやっとだと思った。
しかし、よく見たらマックスの顔が若干歪んだ。
「……これ、半円だ……」
薄暗く、電光によって眩しかったこともあり、半円が円に見えていただけだった。更には大きさも違い、片足でやっと…いや、爪先立ちしてやっとだった。
正直、罠としか思わなかった。ここまで不自然なのだ。だからそのまま待とうとした瞬間。
ブオン
「!??レーベ!」
前に出されたモニターからは、天井から垂れた鎖によって万歳で拘束されたマックスの姉妹艦レーベレヒトマースが映し出されていた。夏服や身体に目立った損傷はないが、目に涙の跡があるのが見えた。
「……乗れって事?」
相変わらず返事は無い。しかし、乗らなければレーベが何をされるかわから無かった。不安になりつつも靴下、靴を脱いでマックスは片足…左足を柱に乗せた。
次に電光掲示板から出されたのは、「上にある鉄製のプレートに両手で触り続けろ」と言うものだった。上を見れば確かにそれがあった。自分の肩幅よりも若干大きい丸いプレートがあった。マックスは指示された通りにプレートに触る。
「これ………ギリギリね」
プレートに触ろうとすると左足はつま先立ちをしなければ手のひら全て触れない位置にある。なので、つま先立ちでプレートに触り続けるという過酷なものになる。
これで終わりかと思ったらまた文字が出てきた。
「「最後に、右足を斜め上にあるプレートに足で触り続けろ」…これ?」
いつの間にか出てきたのかわからないが、右上に四角いプレートが見えた。マックスはそれを足で触ろうとしたが、ある問題があった。
「はんつ…」
そう、マックス、レーベの2人の服装は上着のセーラーワンピース一枚なのだが、下着を隠してる範囲が少ししかなく、足を上げてしまえば簡単に見えてしまう。幸いここに人はいないが、レーベが捕らわれている為、何処かで誰かが見ている事もありうる。しかし、拒めばレーベがどんな目にあうかわからない。
意を決して、下着が見える事もお構いなく右上のプレートに右足で触れた、と思ったら。
「これも…ギリギリ…ね」
プレートは意外に遠くにあり、左足同様、つま先だけで触れた。これで、マックスの両足は、場所は違えどピンと足を伸ばざるを得なくなった。今のマックスの見た目はYの字のようだった。
準備が全て終わったところで電光掲示板から文字が浮かび上がる。
「ルール
今、柱以外の床は全て収納され…え?」
読んで怪しい、いや、明らかにおかしいと感じ、すぐに周りを見渡すと、すでに床は部屋の向こうに仕舞われる最中で、もうジャンプしても届かない場所まで移動していた。下は間隔で照明が設置されているが、それがはるか下まである。
逃げ場を失い、いよいよ焦りが見え始めるマックスだったが、掲示板の最後までを読む。
【今からあなたは柱から落ちてはいけません。落ちれば失格となり人質に刑を執行します。
ただバランスをとるだけでは味気ないのでこちらから妨害致します。貴方に一個マジックハンドが向かいますので耐えてください。
次に、プレートはいくら離しても構いませんが、離した回数分マジックハンドが増えます。爪先立ちを止めても増えます、注意して下さい。
制限時間は、妨害自体軽いので制限時間は30分に設定します。
貴方が「スタート」と言えばゲーム開始です。
では、頑張ってください。】
それを最後に、電光掲示板は文字が続かなくなった。それを確認したマックスは深呼吸して覚悟を決めた。
「いいわ、やってみせよう」
「スタート!」
こうして、悪夢の時間を自らが開始してしまった。
…のは良いが。
(…まだこないの?)
一向に邪魔者が現れる気配がなかった。マックスはそれを確認して気を緩め始めた。
さわ…
「ぐひっ?!」
ビクン、と体全体で反応を示したマックス。気を緩めた瞬間、なにか柔らかいものが左足に撫でた。
恐る恐る下を向けば、そこにはマジックハンドが羽を持ち、側面を使ってマックスの隙だらけの左足を撫でていた。
「ちょっ!くすぐりはぁ…いはっ!きいて、なぃぃひゃ!?」
普段、くすぐりなんてたまにレーベとくすぐりっこするくらいの戯れの一種。その戯れによって苦しめられるとは思ってもみなかったマックスは、なんとか耐えようと努める。
「くひひ…ふふふ……うはぁ……くすぐったぃ…」
羽根の動きはただ側面を使って足をなでる程度の物で爆笑したりはしなかった。
ふと、時間を見ればまだ3分しか経っていなかった。
「嘘…まだそれくらいしか経ってないの………」
突然、羽根は興味本心でなのか意図してなのか、マックスの伸びきった足裏にさわぁ…と優しく撫でた。
「ぐふぅぁあっ!!!」
あまりに唐突な場所の変更により、マックスの左足は爪先立ちを一旦止める。しかし、そうすれば腕はプレートから届かなくなる。
「ブー!ペナルティです。一体追加します」
アナウンスが聞こえて、マックスは体制を立て直しながらどこに来るかわからない追加のマジックハンドの行方を探す。
「ぐふふふふふ!足裏はひきょ…きゃっ?!そこぁ…!」
追加のマジックハンドは右足の裏、つまり、斜め上に足で触れてる場所だった。
両足の裏に優しく刺激され苦悶の表情を見せるマックス。
「くはっ!あひ?!今足の裏はきついいいぃぃ…」
右足がくすぐりに反応する度に縮こませようとし、左足は今すぐに爪先立ちを止めようとして、足が震えていた。
汗はじわりとかき、脂汗もにじみ出ていた。
「ひきょ…ひきょうよ………ふひゃん!」
「ブー!ペナルティです!」
「んは…も、もうむり…いぎゃあっ?!2本目ぇ!いやだああはははははは!!ひはははははははは!」
「ブー!ペナルティです!」
「はひっ!もうやっ!あぎゃああっ?!!もう2本目はやめてええええ!」
マジックハンドは、今まで責めていない足首や足指にも羽根を這わせて、マックスのバランスを崩そうとする。マックスは見事にマジックハンドの術中にハマり、さらに羽根を増やされる羽目になった。
追加の羽根はそれぞれ片足に一本づつ配置された。
ただでさえきつい体制なのに更に羽根を追加されてしまい遂には笑い出してしまうマックス。
残り時間、20分
「んひゃあははははははははは!きついってぇ!!ひゃあああっ!」
支柱となっている左足を意識すれば右足の刺激を強くする。右足を意識すれば左足を強くする。振り子のように左右に翻弄されていき、体力を少しづつ、しっくりと削っていく。
またもや手を離してしまい、ペナルティが来る。今の所、マックスには足の裏に2本づつ羽根が配置されている。スペースはあるが、責めの妨げになる。そこで、マックスが一番触られたくないであろう場所に触れようとする。
「も、もうふやさなぃ…ひゃあぁぁあああっ!わきっ!!!そこはいやぁ!!」
次に迫ったのはノースリーブで万歳で多大に露出している脇の下だった。右脇にくすぐったさが来てからはもう遅く、即座に右脇を閉じてしまうが。
「やぁああっ!入りこっ!はいりこむなぁ!はぁぁああああっ!!」
脇を閉じても、すでに羽根が入り込んでしまったらどうすることもできず、むしろ閉じてるおかげで羽根に圧がかかり刺激が強くなっていく。
「あははははははははっ!!いやだ!もう離れて!!………ぁひゃん!!?いはははあははははあははっ?!!両方はやだああああああ!!
右脇を閉じたことはペナルティになるということ。当然羽根を持ったマジックハンドがやってきて、左脇に羽根で撫で回した。これ以上来ないためにもなんとかして右脇を伸ばしたいが…
「無理!むり!むりぃ!」
一度閉じてしまえば脇に刺激が来るたび閉じ続けなければいけないため中々伸ばすことは出来なかった。
「ブッブー、ペナルティです!」
無情に響き渡るアナウンス。一定時間触らないでいるのもペナルティの対象らしい。
「そ、そんなこといってもぉ…うぎゃっ!もういやだってえぇえぇ!!!」
「あひゃっ!うひゃっ!ひいぃいぃひひひひひ!??」
「そこやだ!そこいやだああぁぁあ!!!」
必死に脇を伸ばし、足は所定の場所にくっつき続けようと努め、人質のレーベを思い必死に耐えようとする………
「もうゆるしてぇ…くすぐられたくないいいぃ……」
今のマックスの状態はひどい有様だった。
両腕、両足ははプルプルふるえ脂汗が下にポタポタ落ち、よだれが垂れて、足裏には水たまりができていた
最早限界は当に過ぎているが、時間は残り10分切っていた。
しかし、マックスに群がっているマジックハンドの数が多すぎた。
片脇だけでも5枚の羽根が這っている。足裏は6枚。そんな状況ではいつ欠落するかわからない、それくらい責めが熾烈なものだった。
「ぐひひひひ!もういいでしょう?もうやめにしよぅ…」
空に懇願するが、聞いているかもわからない相手だ。意味はないだろう。
「ひひっ!ひひっ!…うひゃあ!もうかんべ、ぎゃああああっ!」
未だに敏感な場所に触れられるとつい反応してしまう。2回のペナルティだった。このローテーションでいけば脇に来るだろう、そう踏み込み脇に意識する。
しかし、マックスの予想は、最悪な形で大きく外れることとなる。
「いひぃ、いひひひ、ま、またっ!グヒャあああああいああああ!!!」
さわさわさわさわ
羽根が襲った場所、それは太ももだった。側面で優しく、筋肉をさすって解すみたいに責める。右の太ももを狙われたにしても強烈だった。
「あぎぅあいああああああっ!それぇ!いやぁぁぁ!あ、やだぉあああああああああああああああ!!!崩れる!体制崩れるううううう!!!」
最も触られたくなかった場所、即ち左の太ももにも攻撃が開始された。特に左はもう立ってることが奇跡と呼べるような状態の場所を、あくまでも優しく、自らが落ちるように仕向ける。
「もうやだ!落として!せめてみんなで落としてええええ!!?」
諦める、だから落とせと懇願したところで、妨害しか命令されてないマジックハンドには反応は愚か、はいじゃあやりましょうとも言えず、結局はマックス自身が落ちなければならなかった。
「ぐひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!もうだめええええええええええええ!!!」
遂に、マックス自身が降参した。落ちたことでその意思を表したのだ。
残り時間は1分を切ったところだった。
最後にチラッと上の、先ほどまでいた場所に視線を写すと、マジックハンドがひらひらと羽根を振っていた。
暫く落下が続いた。その最中、様々な考えが浮かぶ。
(これで、レーベは刑執行、私はそのままあるかもわからない地面に向かって落下。レーベは恨むかもね…。耐えられなくて、ごめんなさい。)
ガシッ
「うわっ!」
唐突の出来事だった。落下中、マジックハンドによりマックスの片足を掴んだのだ。それだけでなく、両手にもマジックハンドが掴み、落下の衝撃を和らいだ。
今更何よ、と言いかけたところで2本のロープが降ってきた。何?と疑問符が飛ぶが、前に設置してあったのだろう、掲示板が光だし、文字が浮かんだ。
「最後のチャンスをやろう。ロープを足で持った状態で20分耐えてみせろ。そうすればレーベと君は無条件で解放する」
「ただし、あと5秒で持たなければレーベは今度こそ刑執行だ!」
マックスはしのごの言わずに足でロープを持った。レーベを助けられるなら、と言う一心からの行動だった。
「ただ、また妨害が入るが、数は先ほどまで妨害していたマジックハンドがそのまま引き継ぐのでよろしく」
そこまで表示されたところで光は消えた。
マックスはえ?といった顔をしていた。
(待って?先ほどって事は…あれの数は少なくても20体………)
ふと、振り返ると、羽根を持ったマジックハンドが今か今かと待ち構えていた。
「嘘………」
マックスがどういった顔をしてるかわからない、しかし、何のためらいもなく、掲示板にスタートと制限時間が表示された。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ぐふふ!君の相方は健気だねぇ…ま、良いオカズに変わりはないか」
ここは、今までマックスに掲示板で指示を出していた場所、そこに肥満体型のおっさんがつまみを食べながら、すぐ後ろに拘束されているレーベのお尻を撫でていた。
「ま、次も厳しいけど、失敗したらまたチャンスを与えよう、そうして、永遠と耐え続けなければいけない耐久地獄の始まりだぁ♡」
こうして、マックスには永遠の地獄が始まろうとしていた。
END