ザッー、ザッー。
冷たい雨が降る中、傘もささずに行く宛てもないのに歩いた。
もう、ここに居る意味なんてない。
「なんで、俺の言うことが聞けないんだよ。」
また、殴られた。土方に殴られ始めて、どれぐらい経ったんだろう?
最初に、殴られた理由なんてもう忘れてしまった。
「違っ!何もしてない。」
抵抗すれば、また殴られるのはわかってる。わかってるけど、それでもなにも言わずに殴られるなんて嫌で……。
「何もしてないんなら、なんで笑いかけるんだよ。お前が話していいのは、俺だけだって言ったろうが。」
「別に話したって良いじゃん。なんで、ダメなんだよ。」
「ダメに決まってるだろ!お前は俺だけを見てろ!!」
痛っ!また……。今まで、目立つ所は殴らなかったのに、顔を殴られた。
「言うことが聞けないんなら、ずっと此処にいろ。」
「へぇ?」
どういうこと?殴られたって家に帰してくれたし、謝れば許してくれた。
「ご免なさい、ご免なさい、だから……。」
「もう、遅いよ。何度、そうやって謝った?何度、その言葉で俺が許したと思う?今日から、此処がお前の家だよ。」
冷たい口調で言われ、重たい扉が閉められた。
慌て扉に近寄るも、鍵をかけられてる。辺りを見渡すも、窓などは一切なく、あるのは換気の為の人が通れないダクトだけ。此処に来るのに目隠しされていた為、かぶき町からどれ程離れてるのかわかんない。
ベッドしかない、無機質の部屋。暖房が入っている為、裸でも寒くはない。
なんの娯楽道具もない部屋。やることなんてなくて、ベッドに寝て天井を見つめる。
ここは何処なんだろう?新八達が心配して探しに来てくれるよなぁ?
「いい子にしてたか?」
重たく冷たい扉が開いた。閉じ込められて何時間経ったのだろう?土方は、ビニール袋を持ってる。
入るなりすぐに、扉に鍵がかけられた。
「帰してはくれないの?」
「帰るって、ここがお前の家だろ?」
………言葉を失った。土方は俺を帰してくれないみたいらしい。
「だったら、せめて電話させて。」
「電話?」
「新八や神楽にさぁ、電話したいんだけど……。俺、帰んないと心配するだろうし……。」
本当は、心配して欲しいんだけど……。
「お前は、今日1日何してた?なんで、俺以外の奴とまだ喋ろうとするんだよ。」
痛っ、また殴られた。
「だったら、せめてトイレに行かせて。」
「トイレ?」
飲み物は置いていてくれた為、喉の渇き無かったが、土方が出入りしている扉以外なく、尿意が限界を迎えてる。
「ここですればいいだろう?」
「えっ?」
てっきり、連れて行ってくれると思っていた。予想外の言葉に目を丸くした。
「やだ。」
「あれもこれもやだって、口癖なのかよ。」
ギィーと音を立て俺の寝ていたベッドに乗ってきた。
「まぁ、ベッド濡れるしな。これにして。」
そう言って、持っていた袋からオニギリやお茶を出してその袋の中に俺の息子を入れられた。
「ほんとうにすんの?」
ニコッと笑い頷かれた。
見られるなんて嫌だけど、出さないとお腹苦しいし……。意を決し、目を閉じて排泄を始める。シャーァと勢いよく音を立てながら袋の中に溜まっていく。
土方のじっとりとした目線に、耐え兼ねて目を開けると小麦色した液が、かなりの量溜まっていた。
「もう、終わったみたいだな。」
「うーん。」
恥ずかしすぎて、土方の顔を直視できない。
「さてと……。」
「なに?」
袋を捨て、kissされた。唇が触れるだけの軽めのkiss。
殴られ始めてから、久しく触れられなかった為、嫌でも身体が反応してしまう。
「しようか?」
耳元で優しく囁かれ、顔が高揚するのがわかる。
「トシ……。」
「今度からは、名前で呼べよ。」
「っん………アッ!」
いきなり、胸の飾りを思いっきり吸われ声が出てしまう。乱暴に土方が服を脱ぎ、それを見ているだけでも息子が反応してしまう。
「トシ……こっちも触って。」
普段なら絶対言わない言葉を、言ってしまい恥ずかしくなる。異様な環境だから言わせているのか、自ら足を広げ土方を誘う。
「何処でそんな誘い方覚えてきたんだ?悪い子にはお仕置きだな。」
「違っ、お前だから……。トシだから、したの。」
懸命に釈明するも、土方の嬉しそうな顔がゾクリと背中を震わせた。
もう、此処に来てどのくらい経つのだろう?前は、食事……といってもジャンクフードだけどを持ってきて俺と話をしたり、セックスしたりしていたけど……最近ではそれもなくなった。
はじめの頃は、単に仕事が忙しいだけなんだと思っていたけど、どうもそうではないらしい。
ガッチャ。
鍵が開き、土方が入ってきた。また、食べ物を置いて出ていくのだとばかり思ってた。
「出掛けるぞ。」
「へぇ?」
今まで、幾度となく“帰りたい”……“外に出たい”……と言って殴られていたのに………なんでそんなこと言うだろう?
「服着ろうな。」
戸惑っている俺をよそに、着流しを着せられる。
「目隠しもしような。」
やっぱり、此処が何処かわからないようにするんだ。と思った。
「痛くないか?」
「ぅ………うん。」
いつもより優しい土方に戸惑ってしまう。
そのままお姫様抱っこされて、此処へ来て始めて外の空気に触れた。俺が来た時より風は冷たくなっていて、暫く歩いたと思ったら、降ろされバタンと閉められた。
あの場所を出てから、喋ってくれないから不安ですぐに同じようにバタンと音がしたと思ったら、エンジン音が聞こえ車に乗せられたのだとわかった。
何回か停まって、どのくらい離れたのか?全く離れてないのかはわかんないけど、車から降ろされた。
不意に寒くなくなり、建物内に入ったのだとわかる。
「目隠し、外していいよ。」
恐る恐る外すと、先程までいた場所とは比べ物にならない部屋の中に居た。
窓や時計は、相変わらず無いけど……ベッドの他にテレビもあるし、キッチンだってある。暇潰しの道具なのかゲームやマンガまである。
もちろん、別の部屋もある。向こうに何があるかはわかんないけど……。
「風呂入ってなくて、匂うから入ろうか?」
土方がいつもより笑って言う。今日は、機嫌が良いみたい。久しぶりに優しく抱いてくれるかなぁ?
「うん。」
その引っ越した日は、久しぶりに人間の生活が出来た。温かいお風呂に出来立ての食事…と言っても冷凍食品だけど、当たり障りのないテレビを見て何事もなく夜を迎えた。まぁ、夜かどうかなんてわかんないけど、土方がずっと居るってことは1日非番なんだろうなぁ?と思った。だから、夜なんじゃないのかなぁって………。
「昨日、買ってきた食材があるから今日からは、作ってくれないか?」
抱き締められテレビを見ながら、言われた。
「良いの?」
「もう、逃げようなんて思ってないだろ?」
「そりゃ、思ってないけど………。」
最初は、怖かったし、逃げ出したかった。神楽たちの事も心配だったし、何より不安だった。付き合っては居たけど、なぜ監禁するのか理解できなかった。
「料理できるだろ?お前の作ったご飯食べたい。」
「良いけど、あんまり凝ったの作れないよ。」
「うん、それでもいい。あんまり帰れないかもしれないけど……。明日からまた立てこもるからな。」
「ふ~ん。」
なんだか、こうやって話すのも久しぶり。
「眠たくなってる?」
「うーん。」
土方に身体を預けて、目を閉じた。
「寝ようか。」
ベッドに連れていかれ、寝かされる。
「おやすみ。銀時。」
優しく名前を囁かれ、眠りについた。
起きると、朝になったのだろうか?土方は居なかった。まだ、夜ご飯を作るのは早いような気がして、他にやることもなくてテレビをつけた。
『速報をお伝えします。たった今、ターミナル周辺で爆発がありました。この件に関しましては、情報が入り次第お伝えしていきます。』
爆発。揺れてはないから、ターミナルからは遠いんだろうか?
真撰組が、行くんなら今日土方は帰ってこないか。今まで、ずっと一緒に居たから一人になると寂しすぎる。
『爆発事件の続報をお伝えします。ターミナル内に居たと思われる人物の名前がわかりましたので、お伝えします。
アイタユウ。……………ハタオウジ。ヒジカタトウシロウ。』
へぇ?ヒジカタ?
同姓同名だと思っても、身体から力が抜けた。確かめに行きたい。土方から“出るな”って言われてるけど……。
ガチャ。やっぱり、鍵かかってる。どうにかして出なきゃ。
この部屋に刃物なんて……包丁しかないけど、ドア壊せるかなぁ?一応、木製だけど………。
なんとか、壊すこと出来たけど、手にはマメが出来てそのマメも潰れたけど。外に出る必要がないんだからと、土方に靴も捨てられたから、裸足でターミナルを目指した。
「トシ…、トシ…どこ?」
「銀?なんで、こんなとこに居るんだよ?」
「トシ…、ニュースで爆発の事見てトシ名前が出て心配で………。」
「そうか。」
少し、隊服が破れたり、怪我してるけど、大したことないみたい。
外に出たことを怒られるのかと思ったら、優しく抱き締められた。
不安だった気持ちが、ゆっくり解れていく。お腹にジュワ~っと温かいものが広がる。
不意に痛みが襲ってきた。
「トシ…?」
「お前が悪いんだからな。ちゃんと、言いつけを守らないから。」
土方が離れていき、立ってられなくなる。目の前が赤くなり、刺されたのだと理解できた。
「なんで?」
ポツポツと身体を冷やす冷たい雨が降ってきた。周りが騒いでるけど、よく聞こえない。聞こえるのは、雨の音だけだった。
「行こうか?部屋に帰るよ。」
土方が、重たくなった俺の身体を引きずる。
「俺も逝くからな……、銀時。」
笑いながら自分の腹にナイフを突き刺した。
完
今年最後かなぁ?病んでれの土方を書いてみたかった。ただそれだけ。デレて無いけど…