健太の背中を洗いながら、百合は少年の視線を胸に感じていた。
といっても、健太に直接ジロジロと見られているわけではない。
少年の視線は、あくまでも鏡越しの控えめなものである。
(勘違いってことは、ないよね? 健太くん、わたしの胸を鏡越しにジッと見てきてるよね……?)
だが、それに気づいても注意することはできなかった。
全裸の少女が鏡に映っていれば、ついつい見入ってしまうのは当たり前だろうし、少年のペニスが
だから百合は、羞恥に染まった顔をうつむけ、少し急ぎ気味に健太の背中を洗っていった。
どちらかといえば、バスタオルすら巻いていない自分のほうが悪いのだ、と言い聞かせて。
第三者には『小学四年生の男の子を誘惑している、いけないお姉さん』と思われてもおかしくない状況なのだとも理解しながら。
「はい。背中、流し終わったよ」
そう言って百合は、お湯を溜めておいた洗面器を手に取り、健太の背中にバシャリとかけた。
そして洗面器を床に置くやいなや、少年の、
「ありがとう、百合ちゃん!」
というお礼に応じるよりも先に、タイルの上に落ちたままになっていたバスタオルを拾いあげる。
そして百合は、それを素早く自分の身体に巻いていった。
だが、すっかりお湯を吸って重くなってしまったバスタオルは、もちろん少女の身体のラインを隠してなどくれず。
(うう、それに昨日のバスタオルと違って少し小さめだから、なんか上手く隠せないよぉ……)
胸を完全に隠そうとすれば秘部が露出し、そこをどうにか隠そうとバスタオルを下に引っ張れば、桜色の可愛らしい乳首が顔を出す。
「なにやってるの? 百合ちゃん」
「う、うん。ちょっとね……」
そして、健太に見られながらも
彼女はどうにか、胸と股間の両方を隠すことに成功する。
だが、その隠し方はあまりにもギリギリすぎた。
胸の谷間が強調され、ただでさえ大きい胸が普段以上に大きく見えてしまっているし、秘部だって下手に動けばすぐさま露出してしまいそうだ。
(あう……。この格好、ものすごく短いタイトスカートを
端的に言って、全裸でいるよりもよほどいやらしく、男の情欲をそそる格好である。
しかし、肌を隠せるものがある状況で、百合が『敢えて隠さない』などという選択肢を採れるはずもなく。
必然、その気などないにも関わらず、彼女は目の前の少年を欲情させてしまうこととなった。
「百合ちゃん、百合ちゃん! 今度は前! 前洗って!」
「えっ!? でも健太くん、昨日、自分で洗えるって――」
「百合ちゃんに洗ってほしいの! ねっ! お願いっ!!」
そこまで強く頼まれては断れない。
蚊の鳴くような声で「う、うん……」と応え、百合は健太の前に回り込んだ。
そして少年の股間を見ないようにしながら床に両膝をつき、右腕からハンドタオルで擦っていく。
(見てるぅ……。健太くん、わたしの胸の谷間をすごくまじまじと見てるぅぅ……)
それでも少女は、それに気づかないふりをしながら健太の腕を右、左と洗っていった。
見下ろしてくる角度からの、刺すような視線に耐えながら、少年の身体を前屈みになって擦り続けた。
そして上半身、両脚と泡だらけにしていき。
「け、健太くん。ここも、洗うの……?」
「う、うん。おちんちんも、お願い」
「で、でも、ここは、ほら……」
「ぼく、どうしても百合ちゃんに洗ってほしいんだよ! お願いだから……!」
どこか余裕のない声でそう言われ、百合はおずおずとそこに手を伸ばした。
そして、手にしたハンドタオルでひと撫で、ふた撫で。
「こ、これでいい……?」
「う、うん。――うわっ……!」
ピクッと健太の
驚いた百合は、思わずそこから手を引いてしまった。
「だ、大丈夫? 健太くん。いま、ピクッて……」
「へ、平気。それより、なんかすごく気持ちよかったから、続けてほしいな?」
「う、うん。じゃあ……」
再びハンドタオルをあて、そっとペニスの先端を洗う百合。
「それだと、なんか、もの足りない感じ……」
「そ、そうなの? だったら……」
と、今度はハンドタオルで陰茎を包んで、上下に強く擦ってみる。
「――あっ! それ、すごくいいっ……!」
「じゃ、じゃあ、このまま続けるね……?」
「うん、続けてっ! 百合ちゃん、続けてっ……!」
どんどん余裕がなくなっていく健太の声。
(なんだろう、これ……。なんか、すごく……すごく、可愛い……)
そして同時に、百合は思う。
おちんちんとは、こんなに大きく硬くなるものなのか、と。
まるで、肉でできた棒のようだ、と。
(そういえば、前にネットで読んだエッチな小説に『肉棒』とかいうのがあったっけ。……あれって、もしかして『これ』のことなのかな?)
そんなことを考えながら、百合はその『肉棒』を擦る――否、しごく手の動きを速めていく。
「ど、どう? 健太くん」
「いいっ! すごくいいよおっ! それに、百合ちゃんのおっぱいがさっきからたぷんたぷん揺れてるのも、なんかすごくて……! なんだか、とっても……!」
「そ、そういうことは言わないでいいからっ……」
だが、悪い気はしなかった。
むしろ、指摘されたことで少女も少しばかりの快感を覚えてしまう。
半ば
その手の動きが、自覚なく健太を追いつめていく。
これは『いけないこと』なのだと、彼女にはなんとなくわかっているにも関わらず。
そして――
「――うわあっ! おちんちん、またビクビクってしたあっ……!」
「きゃっ!? な、なんでっ……!?」
揃って大きな声をあげてしまう百合と健太。
もっとも、百合の疑問は口だけのもので、心のどこかでは『あ、男の子のここを強く擦り続けてると、やっぱり最後にはこうなるんだ……』と思っていたのだが。
「ふわあ、気持ちよかったあ……。――あ、なんか水っぽいのが出てきてる……?」
ぼんやりした表情で、そんなことをつぶやく健太。
確認するまでもなく、先走り汁――カウパー
百合はそれをハンドタオルで優しく拭う。……こっそりと、軽い自己嫌悪の感情を覚えながら。
(わたし、一体なにをやって……。こんな
そんな百合の気持ちなど、知ったことではないのだろう。
健太が「もう一回! もう一回やって!」とせがんでくる。
だが、もちろん彼女はそれに応えない。
「それはだめ。だって、もう洗い終わったでしょ?」
言って洗面器にお湯を溜め、少年の身体についている泡を落とす百合。
それから、少しだけずれていたバスタオルの位置を調整しながら立ち上がり、
「あとは、髪かな。あ、髪は自分で洗える?」
「ううん、百合ちゃんお願い!」
うなずいて、百合は再び健太の後ろに回る。
そして、手にシャンプーをつけ、少年の髪をわしゃわしゃとやった。
それに健太がはしゃいだ声をあげ、そんな少年の様子に、自己嫌悪に陥っていた百合の頬もいくらか緩む。
「はい。じゃあ、お湯流すよ~。ちゃんと目を閉じててね~?」
「は~い! ――ぶわわわわっ!?」
「わわっ! 目だけじゃなく、ちゃんと口も閉じてないとだめだよ、健太くん!」
「うう、シャンプーが口の中に入ったあ……」
ぺっぺっ、とタイルの上に何度か唾を吐く健太。
それを百合は、後ろからお湯をかけて
そんなことをしているうちに、気づけば少女の口には苦笑に近い笑みが浮かんでいた。
健太を自分の手でイカせてしまった罪悪感や、そんな自分に対する嫌悪感。
そういったものが、彼との他愛ないやり取りのおかげでずいぶんと薄れているのに気づく。
「ありがとうね、健太くん」
「ありがとうって、なにが?」
わからないのも無理はない。
だが、それでも百合は少年にお礼を言っておきたかった。
「ふふっ、なんでもないよ。ただ、ありがとう」
「……変な百合ちゃん。ぼく、『ありがとう』って言われるようなこと、まだなんにもしてないのに」
「そうかもね」と微笑む百合。
そんな彼女のほうに、健太は勢いよく振り向いてきた。
「そんなわけだから、次はぼくの番だね!」
「えっ……?」
「『ありがとう』って言われるようなこと、だよ。ほら、昨日はしてもらうだけになっちゃったけど、今日はぼくもちゃんと百合ちゃんの身体を洗ってあげるから。
百合ちゃんからの『ありがとう』は、そのあと!」
そう無邪気に口にして、少年が椅子から立ち上がる。
「だから、はい! 今度は百合ちゃんがそこに座って!」
「え、ええっ!? いいよ、そんなっ!」
「遠慮しなくていいんだよ、お返しなんだから!」
「遠慮なんてしてな――やあっ!?」
言葉の途中で腕を伸ばされ、健太の指に引っかかったバスタオルが
「み、見えちゃっ……!?」
「ついさっきまで普通に見せてたじゃん!」
「み、見せてたわけじゃなくてっ……!」
「それにバスタオル巻いたままじゃ洗えないし! ほら、いいから座って座って!」
「だから、見せてたわけじゃ……。あうう……」
少年に促され、百合は仕方なく健太の座っていた椅子に腰かけた。
もちろん、バスタオルの代わりに両手を使って、大事なところを隠しながら。
(な、なんでこんなことに……)
正面にある鏡を見る。
背後にいる少年の表情を、鏡を使って盗み見る。
そうしたら、ボディーソープをハンドタオルに馴染ませている健太と鏡越しに目が合ってしまった。
「うん? どうしたの? 百合ちゃん」
「な、なんでもないよ……」
そうつぶやき、羞恥に身を焦がしながら背中を丸める百合。
「百合ちゃん、それじゃ上手く洗えないよ。ほら、胸張って、背筋伸ばして」
「う、うん……」
他意はない。
健太はただ、お返しに自分の背中を流してくれようとしているだけ。
そこに、厚意以外の感情は存在しない、はず。
そう自分に言い聞かせながら、百合は少しでも隠せる範囲を広くしようと両手を胸の前で交差させた。
そうしてから、健太が言ったとおりに背筋を伸ばし。
「ふんふんふ~ん」
少しして、タオルで擦られる優しい感触が背中に伝わってきた。
『お返し』ができてご機嫌そうな健太の鼻歌も、少女の耳に心地いい。
(ああ、これならそんなに恥ずかしくないかも。もちろん、バスタオルで前を隠していたい気持ちもまだあるけど……)
だが、それもそこまでは気にならなかった。
「お湯かけるよ~!」
言うが早いか、ザバーッと背中にお湯をかけられる。
それに百合は、前を向いたまま微笑んで返した。
「ありがとう、健太くん。とっても気持ちよかったよ。じゃあ、あとは――」
「うん! あとは前だね!」
「……えっ? ――あの、ま、前って……?」
少年の言葉に、微笑を浮かべたまま固まってしまう百合。
その隙に、というわけでもないのだろうが、健太が前にやってくる。
そして、
「はい、まずは右腕から」
「え、で、でも……」
少年の行為を受け入れるべきか否か迷っているうちに、健太が百合の右腕をつかんでくる。
そして胸を隠していたその腕を、あっさりと胸元から引き離されてしまった。
「いいからいいから。百合ちゃんは遠慮しないで大人しく座ってて」
「そ、そうは言われても……」
「はい、次は左腕」
「あ、ま、待って……!」
胸の膨らみをガードしている、もう片方の腕も
それに、少女はつい抵抗してしまった。
「どうしたの? 百合ちゃん」
「その、もう、いいから……」
「えっ……?」
たちまち、少年の瞳に寂しげな色が浮かんだ。
それを見て、百合は慌てる。
なんとか上手くフォローしなければ、と思考を巡らせ。
「あ、もういいっていうのは、健太くんに洗ってもらうのが嫌とか、そういう意味じゃなくて……」
もちろん、厳密には嫌――というより、恥ずかしいのだが。
「ほら、わたしは健太くんよりも年上でしょ? だから、ほら、ちゃんとひとりで洗えなきゃ、だめかなって」
我ながら、いまのは上手い言い方だった。
だが、少年は寂しそうな表情のままうつむいてしまう。
「百合ちゃん、ぼくのお返し、迷惑……?」
「迷惑じゃないよ。でもね――やああっ!?」
言いかけて百合は、すでに解放されていた右の手で、自分の秘部を慌てて押さえた。
うつむいている健太の視線が無毛の恥部に向いていることに気づき、急いでそこを隠したのだ。
しかし、少年は特に意識してそこを見ていたわけではなかったらしい。
瞳に寂しげな色を
「け、健太くん……」
「……わかった」
「えっ……?」
「ぼくだって、百合ちゃんに嫌な思いをさせたいわけじゃないもん。ただ、洗ってもらったお返しがしたかっただけだもん。だから――」
「ま、待って!」
ようやく百合の左腕を離した健太の腕を、今度は百合が引きとめた。
それも、反射的にとはいえ、女の子の大切なところを隠していた右手を使って。
(なんで、わたしはこうなんだろう……。また健太くんを異性として見て、ひとりで勝手に恥ずかしがって、健太くんを悲しませて……)
目の前の少年は、ただ純粋に『お返し』がしたいだけなのだ。
それがわかっていて、受け入れてあげるとも決めていて、それなのになんで自分は、と。
そんなふうに、自分を責めてしまう百合。
そして、だからこそ彼女は、自分から健太に左腕を差し出した。
恥ずかしさに耐え、美しく整った巨乳を自分から少年の眼前に
まるで、こうすることで自分に罰を与えよう、とでもいうかのように。
「迷惑なんてこと、ないんだよ。もちろん、健太くんに洗ってもらうのが嫌なわけでもないよ?」
「百合ちゃん……」
「ただ、恥ずかしいだけ。健太くんは子供だけど、でも、やっぱり男の子でもあるから……」
「だったら……だったら、無理なんてすることないのに! もっと本気で拒めばいいじゃん! 嫌いだって言って、拒めばいいじゃん……!」
泣きそうになりながらそんなことを言う健太に、百合は優しく首を横に振る。
「しないよ、そんなこと。だって、すごくすごく恥ずかしいけど、でも、嫌じゃないから。健太くんのことだって、嫌いになんてなれないから。
だから、許してあげたいって思うんだよ。受け入れてあげたいって、思うんだよ」
「それは、わかってるけど……」
そう、ぽつりぽつりとつぶやく少年。
そんな彼に、百合はにっこりと微笑んで。
「そう? なら、健太くんの手で綺麗にしてほしいな。わたしの身体」
「恥ずかしいって、百合ちゃん、言ってるのに?」
「うん。恥ずかしいけど、嫌じゃないから。だから洗ってほしいな、元気いっぱいで、ちょっとだけ強引な、いつもの健太くんに」
「元気いっぱいで、ちょっとだけ強引な、いつものぼくに……?」
「そう。ふんふんふ~んって」
果たして、少年には正しく伝わっただろうか。
そんな寂しげな表情は、しないでほしい。
さっきまでの明るさを、どうか取り戻してほしい。
そんな、少女の温かな想いが。
「ほら、遠慮しないでいいから、ね? わたしも遠慮しないで、ありがたく健太くんに洗ってもらうことにするから」
「あっ……。う、うんっ!」
そうして、ようやく健太はいつもの笑顔とテンションに戻ってくれた。
「じゃあ、洗うねっ!」
「うん、お願いね」
それだけ言って、百合は左腕を少年に委ねた。
頬を赤く染め、ほんの少しだけうつむきながら。
けれど、身体はどこも隠すことなく。
「ふんふんふ~ん」
上機嫌に百合の左腕を洗っていく健太と、それを受け入れる百合。
流れる時間は穏やかで、それに少女は恥ずかしくとも確かな幸福を感じていた。
少なくとも、少年の手が百合のたわわに実った胸の膨らみに向かう、そのときまでは――。