騎士団の花見の帰り道、ナズナは珍しく団長と二人きりに。女癖の悪いことで有名な彼だけど、ナズナのことなんて眼中にないはず。それなのに、少し酔った素振りを見せたら「ナズナが好きだ」と告白してきて――!?

※わりと何でも読める人向け。キャラ崩壊注意。ナズナさんが団長に襲われちゃう話です、団長がナズナさんを襲う話ではありません。ナズナさん視点なのでオリ主タグでなくオリキャラタグ入れてます。

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※わりと何でも読める人向け。キャラ崩壊注意。ナズナさんが団長に襲われちゃう話です。団長がナズナさんを襲う話ではありません。



唐ナズナ、なづさはまくのほしき君かな

 ほのかな明かりが薄く照らし上げる夜桜は美しけれど、夜ももう遅い。

 束(つか)の間の花休めにと花見に来ていた花騎士たちも、すでにその多くが帰路についていた。

 

「うえええぇ……もう飲めなぁい……」

「さて、私たちも帰りましょうか」

 

 文字通りグロッキー状態のホップの周囲を、ヘザーが円を描くように掃(は)いた。

 すると円の内側に大きな穴が開き、ホップが真っ逆さまに落下していた。

 

「ヘザーさん?!」

「私はホップを送っていくのでこれで失礼します。ナズナさん、後片付けをお任せしてしまってごめんなさい」

 

 片付けるものを増やしていかなかっただけで、十分助かる。

 

「いえいえ、これも幹事の仕事ですし気にしないでください!それよりホップさん、大丈夫でしょうか……」

「あ、皆さんお帰りですか?わたしもそろそろ帰りますねぇー」

 

 リンゴの手にしていたオブジェが膨張する。それが自分の体より大きくなると、彼女はよじ登って上に乗った。

 

「お疲れさまでしたー!」

 

 リンゴが座ると、オブジェは彼女を乗せたままくるくると回りはじめた。

 くるくるくるくる。いえ、くるくるなんていうものではなくて。

 ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅると回転数を上げていって、しかも左右にブレながら弧を描いていく。

 その軌道の先には大きな木がそびえ立っていて……!

 

「むがっ」

「きゃあっ!!」

「リンゴちゃん!もうっ、飲酒運転はダメじゃない」

 

 モミノキが容体(ようだい)を確かめると、リンゴは可憐なか(・)ん(・)ば(・)せ(・)に鼻血を咲かせながらふらふらと立ち上がって。

 

「あれぇー、モミノキ先輩がいっぱいます、天国でしょうか極楽でしょうかっ! 大きいモミノキ先輩も小さいモミノキ先輩もステキです、むっはぁー」

 

 リンゴが奇声を上げながら抱きついたのは、さっき激突した木の幹(みき)だった。

 

「私はこっちです。ごめんなさいナズナさん、リンゴちゃんと帰りますから後はお願いしますね」

「はい、道中お気をつけてください」

 

 リンゴを木から引きはがすと、モミノキも帰っていってしまった。

 残されたのは、わたし……と団長だけ。

 団長がこういう会に最後まで残っているのは珍しい。いつも、気がつくと誰かしらと一緒にいなくなってるのに。

 ともあれ、今年はまだ春にしては肌寒く、薄着のままだと風邪を引いてしまいそうで。

 

「団長様、わたしたちもそろそろお開きにしましょうか?」

「もうそんな時間か? 花は綺麗なのに……もったいないな」

 

 そう言う団長の手元には、酒の瓶(びん)が三本ほどキープされていた。

 

「飲み足りないならわたし付き合いますよ。花は綺麗ですけれど……ね」

 

 ちらりと目をやった先には、頭にブルーメ(ビールの泡)が咲いてそうな男が裸踊りを舞っていて。

 

「ナズナならいい店を知っていそうだな。期待させてもらおう」

 

 団長を説得すると、気の変わらない内にささっとお仕舞いにしてしまう。

 彼の花騎士はお行儀の悪い人たちじゃないから、片付け自体にそう手間はかからない。

 

* * * * *

 

 なんだかふわふわする。幸せ過ぎて変な声を上げてしまいそうだ。

 団長のお相伴(しょうばん)にあずかるだけのつもりだったけれど、少しは酔えたみたい。

 一服していたらだいぶ遅くなってしまったけれど、団長と一緒なら平気そう。

 

「もぅっ、幹事はお酒を味わう暇なんてなかったのに、どうして団長様のほうがピンピンしてるんですか!?」

「酒の味が分からなくなるまで飲んだら勿体無(もったいな)い。……悪かったな、任せっぱなしで」

「謝ってなんて言ってません!」

 

 なんでかって聞いてるんです。

 

「完璧な幹事役、恐れ入った。ナズナはきっといい嫁になる」

「そうじゃなくってですね、そうだといいんですけど、そうじゃなくて」

「嫁には行かないのか」

「な、失礼なっ!? わたしだって選ばなければいくらでも相手はいるんですよ?」

 

 そう、選ばなければ。世話焼きの母のことだから、そのつもりならいくらでも相手は探してくれるかなって思う。

 何度か、相手を探してる人がいるっていうことで話だけ聞いたことがあるけれど……やっぱり比べてしまう。

 だって、顔もよくて、仕事もすごくよくできて、しかも由緒正しいお家柄だなんていう人が上司なのだ。

 これで女癖さえ悪くなければ……いくらハイスペックでもチャラ男はいやだ。

 

 それに団長だって眼中にないと思う。わたしのことなんて気にしないで女の子と遊んでるし。

 気づいていても気づかないふりをするのも、団長補佐の大事な仕事。

 

「選ばないのか?」

 

 他人事(ひとごと)だろうに、彼は不機嫌そうに突っ込んで聞いてくる。

 

「選びます!!」

 

 すぐそこを歩いていた猫が、びくっと振り向いて立ち去っていった。

 思ったより酔っているみたい。早く、帰ったほうがいい……。

 

「わたし、ここ右に曲がったほうが早く帰れるので……お疲れさまです団長様」

「帰さない」

「えっ……ん……っ」

 

 軽く挨拶をして帰ろうと思っていたのに……突然、団長に抱きすくめられて。

 もともと足の浮く心地だったわたしの体は、ふらりと団長の腕の中に吸い寄せられた。

 夜風に当てられて冷えていた体に、団長の体温は危険な暖かさで。

 とても安心なんてできなくて、迷う間もなく唇を奪われる。

 一瞬だけど……取り返しのつかない一瞬だった。

 

「は……ふ……」

 

 驚いて言葉を失ったわたしを見ると、団長は再び唇を重ね合わせてきた。

 長くて、息の仕方を忘れてしまうのではないかと思うほどの。

 団長の呼吸からは、全然、お酒の匂いがしない……?

 

「ん……っ!」

 

 団長の唇が離れると、どっと空気が流れ込んできてそれに窒息しそうになる。

 そう仕向けたのは団長なのに、なぜか団長の腕の中にいることに安心させられて。

 

「団長様は、いつもそうやって女の子で遊んでるんですね」

「遊びだよ」

 

 ひとときの間も置かずに、彼は即答した。分かっていたことだから、驚くようなことはないはず。

 なのにわたし、なんでこんなにがっかりしているんだろう。

 クズがクズだって、それだけなのに……

 

「一番欲しい女がつれないからって、適当な女と遊んでごまかすのはもうやめた」

「はい?」

「俺はお前しか選びたくない。……ナズナ、お前が好きだ」

 

 !?!?!? 何を言っているの、この人……。

 一番惚れちゃいけないタイプだって分かってるのに……ドキドキしちゃって、止まらなくなる。

 気づくと、団長のこと抱きしめ返してて、それで。

 

「ふあ……っ」

「ナズナっ!?」

 

 わたしは、ふらっと意識を手放した……

 

* * * * *

 

「はっ!?」

 

 目が覚めると、見知らぬ部屋に寝ていた。

 団長が座ったまま寝ているのが見えて。あわてて、布団の中に身を押し込める。

 そのまま、服が乱れてないか調べる。よかった、変なことはされてないみたい。

 

「気がついたか」

 

 驚いて振り向いた。さすがに騎士団長だけあって、勘が鋭い。

 

「あっ……はい」

「意識を失うまで飲むなよ。誰かがついてなかったらどうなっていたか」

 

 誰もついていないから、団長の部屋に連れ込まれてるんですけど?

 

「ごめんなさい、いつもは酔うほど飲まないんですけど、気づかないうちに疲れがたまっていたんでしょうか……」

 

 団長が変なことをしなければ、気絶なんてしなかったと思う。

 その場面を思い返して……恥ずかしくなって、布団を胸に抱いて引き上げた。

 

「団長様が最後に言ったこと、本当ですか?」

「最後に言ったこと?」

「最後に言ったこと、です」

 

 目と目が合う。団長の目は青く澄んでいるけれど、その奥には何も見透かせない。

 

「今日は酔っているようだし、また改めて話をしよう」

「……それで答えになっていると思います?」

「今ナズナ、酔ってるだろ?」

「酔ってません」

「いや、酔ってる」

「もう酔ってないです」

 

 押し問答に飽き飽きしてきて、ふう、と息を入れ替えた。

 

「もしかして、酔ってふらついてたから遊んでただけなんですね」

 

 すると団長は少しバツの悪そうな顔で答えて。

 その態度が、彼に似合わず余裕なさげで、少しかわいいかもって思ってしまう。

 

「自分から飲みに誘ってきた女がまさか酔ってふらふらになっているとは思わないだろう?」

 

 自分から?

 誘っただろうか?

 

「うー……」

 

 そういえば、そうだったような気もする。

 

「とにかく、もう酔ってないんです。それに酔ってたんならなおさらそのときのこと聞いておきたくて。じゃないと……わたし、団長補佐の仕事、これまで通り続けられるかどうか」

 

 どのみち、もうこれまでの関係ではいられないかなって思う。

 でも、だからこそ、ちゃんと聞いておきたくて。

 

「酔ってないのなら、遠慮しなくていいな。ナズナ、愛している」

 

 ……これが、わたしの望んでいた答え。ただ、答えてほしかっただけだっていう。それだけのはずなのに。

 じんわりと心の底に抑(おさ)え切らない、あってはいけないはずの気持ちがあふれてきそうで……。

 

「まだまだですね」

「何度でも言ってやる。俺がずっと一緒にいたいのはナズナだけだ」

「酔った勢いだけじゃなくて、ちゃんと、キス、して欲しいです。初めてだったのに、わたし……」

 

 柄(がら)にもなく、すねてみてしまう。今なら、許される気がして。

 団長補佐は感情労働だ。泣き言を言う時間なんて、そんなにない。

 団長はゆっくりとわたしの前に経つと、頬に手を添えてわたしの顔を上向けさせた。

 ふわっと香るだけの、短いキス。

 

「……?」

「どうした?」

「思ったより、ドキドキしないなって思って……」

 

 目と目が合う。さっきの瞬間を思い出すと……それまでののっぺりとした印象が嘘みたいに恥ずかしくなってきて。

 

「なら、もっとドキドキさせてやる」

「あっ……ん」

 

 ぎゅっと抱きしめられて、彼の体温に包まれる。

 それだけじゃなくって、口の中、団長の熱が入り込んでく……!

 

「ん……ふ……」

「……は」

 

 もうアルコールは飛んだはずなのに、意識がうつらうつらとしてきて……。

 少し苦しくなって顔を離そうとしたら、自分の体を支えるのもままならなくて、くらっと後ろに倒れそうになった。

 

「あ……っ」

 

 壁にぶつかる前に、団長の大きな腕に捕えられた。

 どうしたって、逃がしてくれる気はないみたいだ。ほっとさせてくれる間もなく、息をふさがれる。

 

「ふ……あ……」

 

 体が熱い。アルコールなんかじゃなくって、もっと別の、もっと質(たち)の悪い何かに、胸をかき乱される。

 そのままキスに溺れそうになっていると、団長の指が太ももをなぞり始めた。

 自分の指より何回りも大きくて節くれだった指に、ぞくぞくとさせられてきて……!

 

「や……ん……」

 

 止めなくちゃって思うけれど、体に力が入んなくて。

 このまま、流されてしまってもいいかなって、思っちゃって……。

 

「あ……や……っ」

 

 なで上げる彼の手が、薄い布切れ越しに敏感なところに触れた。

 恥ずかしくて、うっすらと目に涙が滲(にじ)む。

 

「そんなにかわいいカオすんなよ。いつもだって、見えてんだろ?」

「ちが……! それはっ!」

 

 開いた裾(すそ)を抑えようとするけれど、やっぱり団長はびくともしなくて。

 

「他は女の子しかいないし、団長様はわたしの格好なんて気にしてないと思ってましたから」

「なら、俺以外に見せるなよ」

「はい……っ! あっ、ん……」

 

 ショーツの上からソコを撫でられると、また意識が飛んじゃうんじゃないかって思うくらいに何かがほとばしって。

 思わず後ろにのけぞると、背中を支えてくれた団長は……そのまま私を押し倒した。

 優しいのか、優しくないのか……よく分からない。

 頬(ほお)をなぞられると、それまでの性急さが嘘みたいに、ゆっくりと唇が落とされる。

 思わず目をつむった。流れ星みたいに、何度も何度も不思議な感触が顔に当たる。

 でも、唇同士には当たらなくて。

 

「足りない、です」

 

 あっ……と思ったときには、もう遅くて。

 けれど、恥ずかしいと思う間もなく、思考はキスと団長の熱で茹(ゆ)だる。

 時間の間隔も分からなくなるくらいにキスにまどろんでいると、団長の手が胸元を探っているのに気づいて。

 ぱちん、ぱちんと前のボタンが外されて、ワンピースがその役目を失ってく。

 

「や……っ」

「ナズナは、嫌か?」

 

 ……それ、今聞きます?

 けれど、わたしの返事を聞く彼は、演技じゃなくて必死になってくれているように感じて……。

 女の扱いなんて慣れているはずなのに、もしかして……だけど……と、都合のいいように考えてしまいそうになる。

 わたしって本当は都合のいい女だったのかなって、ちょっと思う……。

 

「や……さしく、してください……」

 

 彼の言ってることが嘘だったら嘘だったで、このまま帰してくれそうにもないし。

 どうせ何もしないでいてくれないなら、せめてひどくしないで欲しい。

 あれだけ浮名を流しておいてあまりトラブルも聞かないし……。

 わたしが馬鹿だったなら、わたし一人が我慢すれば、それさえできれば、面倒くさいことには……ならなくて……。

 そんなことを考えていたら、すっと目元をなぞられた。

 

「泣かなくてもいいだろ? 泣くほど嫌なら、俺だってそれ以上しない。できるだけ優しくする。……悪いが、優しくしきらないかもしれない」

 

 嘘ばっかり、と思うのに、その

 すくっと寄せられて、体が軋(きし)みそうなくらいに強く抱きしめられた。

 少し痛い……なのに、不思議と心地よくって。

 

「うー……」

「そんな可愛い声出すなよ。慣れない場って訳でもねえのに、抑えきれなくなりそうだ。ずっとナズナが欲しかった」

 

 きゅう、と体のどこかから音がしたような気がする。

 ドキドキ止まらなくって、団長に顔を見せたくない。だから、キスなんてされないように必死で抱きついていて……。

 ……!? やだっ! ぱっと体を離すけれど、みんなみんな、もう遅い。

 思えば、酔ってないって言いながらずいぶんと恥ずかしいことを口に出してた気がする。

 

「だ、んちょうさま……なんだか、ぽかぽかしてきて……落ち着かないんです、ふぁ、どうにかして、くらさい」

 

 みんなみんな、酔っててよく分からないから……っていうことにすることにした。

 どさりと倒れこんだのは、半分くらい演技じゃなくて。そんな余裕なんて、わたしにはない。団長とは違う。

 ふたたびベッドに転がると、胸をはだけさせられて、ふくらみを撫でられるのをそぞろに感じる。

 少し離れたところを回る指をもどかしく待っていると、頂に触れて、思わずぴくんと背を反らした。

 

「……っ」

 

 頬からあご、鎖骨へと落ちていくキスの間隔は、胸元の悶えるような落ち着きのなさのなかに甘やかで。

 それが合わさって……ぷくりと充血しだした胸飾りの突起を、彼の口先に捕らわれる。

 

「……っん、ふ……ん……」

 

 かろうじて変な声は出ないで済んでるけど、息をおさえるのが苦しい……。

 恥ずかしくて、団長の手を握る。頼りになって温かい、団長の腕。

 

「我慢しなくていいぞ」

 

 そんな声で惑わさないで。罠に、はまってしまいそうになる。もう、遅いのだろうけれど。

 口に含まれた胸の先を熱く甘苦しくなぶられて、その向かい側の頂きも彼の指先でなぞられて。

 すっかり固くなりきったその突起から感じる甘い毒は、じんじんとわたしの身を蹂躙(じゅうりん)していた。

 自分の喉から出てるなんて思いたくないような音が、響いていて。

 

「んっ、あっあっ……は、ん……」

 

 早く終わって欲しいのに、……でもこのままどうにかなってしまいたいような間隔に苛(さいな)まれていたら。

 いつの間にか見失っていた団長の手が、脇を擦って足の付け根へと滑(すべ)り込む。

 さっきみたいにショーツ越しに秘部をなぞったら……それを下にずらして、さらけ出そうとされて。

 その、布地の引き下がっていく感覚を、涼しくなったって、感じちゃって……。

 

「はっ、んっ、団長、さま……?」

 

 胸の先を捕らえていた団長が、そこから顔を離した。

 少し楽になったけれど、ばくばくと苦しい呼吸はわたしにうまく話をさせようとしてくれない。

 否、それどころか何を話そうということさえまとまらなくないのに。

 彼の指先は蜜口のまわりを何度かめぐると、つぷ、と中に突き入ってきた。

 

「うぁん……っ」

 

 はじめて触られたところは団長を押し返そうとするのに、彼はゆっくりと押し込んできて……抜いた。

 

「ここ、ぐしょぐしょになってるぞ」

 

 彼は害虫を策にはめるときみたいな、涼しげなのに底のしれない表情をのぞかせると、続けるでもなくてまた抱きしめてきた。

 かぶりつくようにキスを浴びせられて、長く息を止められる。

 引き締まった硬い体に囚われて、鼓動はどくどくと静かに、でも確かに早まってく。

 わたし、団長としちゃうんだ……

 

「……は。はぁ、はぁ……」

 

 息が楽になると、体を起こした彼と目が会う。

 団長の手を太ももに置かれると、見ていられなくてそっと脇に目をそらした。

 よく整理されていて木の温もりを感じる部屋だ。

 けれど、渋い色使いは確かに男の人の部屋で……見られていることを思い出して目を閉じてしまう。

 

「綺麗な色だな」

「……っ!?」

 

 団長の指のくにっと触れる感触をふたたび感じて、眉根がきゅっと寄った。

 明らかに熱くなってきているその指で割れ目をなぞられる。

 自分の指より何回りか太くて……これからもっと太いのが来るのかなって思うと、ちょっと不安にもなる。

 彼にソコを触られ、自分で触るのとは全然違うとろけて弾(はじ)けるような快感が伝わってきて。

 体は全然いうことを聞かなくってぬらぬらと濡れ始めて、声も隠しきれなくなってくる。

 

「やっ、ん、だんちょ、さま……っ、……く!? なにか、ヘン、なんです、っ」

「変じゃないぞ。少し敏感だが。そろそろ十分か……ナズナが相手だと、余裕がなくなっちまいそうだ」

 

 彼の手が止まる。

 とうとう、しちゃうのかなって思って体がこわばる。

 だけど、それからわたしの体の中に入ってきたのは、全然違っていて。

 ちろちろと、犬の舐めるような感覚が、あろうことか蜜口のまわりを這(は)う。

 ぬっとりと体温をともなった塊が、先を尖らせて入ってきて……!

 

「……やっ、そこ、そんなとこ、ダメです、もう……っ……あんぅっ!」

「ナズナのココはやめて欲しくないと言っているが?」

 

 彼は割れ目を深く舌先でえぐりながら、丁寧に花芽を転がしてきた。

 蜜をまとった指先で一番弱いところをもてあそばれて、すぐに硬くさせられる。

 研ぎ澄まされた感覚に団長の存在をいっそう強く感じて、ただ喘ぐことしかできなくなって。

 

「や、そこもっ……ん、んんぅーっっ!」

 

 静かな部屋には、いやらしい水音と恥ずかしい声ばかりが響いていて。

 落ち着いていられなくって、そこにあった毛布にしがみついた。

 たぶん彼のものだって思う、匂いにくらくらとする。

 そんなにいい匂いっていうわけじゃないのに、鼓動が高めさせられる。

 

 クチュクチュクチュクチュ……

 

 だって、ざらざらとした舌を嫌というほど感じては、まともじゃいられなくって。

 体はもっと気持ちよくなりたいと言うことを聞かない。

 これ以上感じたくないはずなのに、勝手に敏感になってく……!

 

「ん……くぅうんぅ……!あっ、うひゃうっ、……うー……やっ、だめ、きちゃう、来ちゃいます」

「イッていいぞ、ナズナ」

「ううっ、うー……うううん……っ!」

 

 強く花芽をしゃぶり立てられて、灼(や)けつくような快感が足の先から体中を走っていって……!

 

「……あ!はぁ、はぁ……うー……」

 

 ようやく息が落ち着いてきたから、うらめしそうに団長を見やる。

 

「ナズナはイくところまでかわいいな」

 

 彼は汚れをぬぐうと、肩を優しくなでてきた。

 そんなことしたって、騙されないんですからねっ! また変なことを言ってしまうと困るから、口には出さない。

 次は何が起こるのかなってドキドキしながら待っていたら、団長は服に手をかけて。

 程よく筋肉のついた男らしい体は色気があって……見てられなくて、顔をそらす。心臓の音がうるさい。

 

「ナズナのそんな姿を見せられてたら俺、これ以上待てねえ。ナズナが欲しい。挿(い)れるぞ」

「優しくしてくださぃ……」

「優しくしたいから、力を抜いてくれるか?」

 

 こくり、とうなづく。

 脅(おど)しにも感じられるような言葉なのに、不思議と少し、安心させられてしまう。そっと手を握って。

 蜜口に、団長の切っ先が触れた。

 

 おおきい……!

 

 入るのかな、どうしよう……と思っている間にも、彼は私の中に少しずつゆっくりと入ってく。

 次第に強くなる異物感。それが痛みに変わって。甘い蜜ばかりじゃなくて、つむると目尻からも涙がこぼれた。

 

「く……締め付けすぎ。痛いだろ」

「だいじょぶ、です……」

「我慢しなくていい。ナズナの感じていること、全て聞かせて欲しい」

 

 仕事柄、我慢することには慣れてる。それに、団長って信じてもいい人、かな?

 ……。

 甘えてもいい人、かもしれないと、思ってしまって。とにかくこの痛みを忘れさせて欲しかった。

 

「……。ちょっと、痛いです」

 

 やっぱり、抜いてくれたりはしない。

 けれど、そっと頭を撫でてくれた。頭頂を大きな手で撫でられると、じんわりと幸せな気持ちがにじんでくる。

 

「全部、入ったぞ。流石にキツいな」

 

 頭に感じるわずかな温もりだけに頼って体を開かれる痛みに耐えているうちに、奥まで届いたみたいで。

 ただただずきずきとするばかりなのに、不思議な気持ちが湧(わ)いてくる。

 きっと、もう少しで終わるっていう、そういう希望が見えてきたっていう、ただそれだけのこと。その、はず。

 

「……続き、しないんですか?」

「煽るなよ。抑えが効かなくなりそうだ。……ナズナ、動くぞ。少しだけ我慢して欲しい」

「……ん……!」

 

 わたしの中で、団長自身がゆっくりと動き出す。気を遣ってはくれているみたいだけど、やめてはくれないみたい。

 彼が動くたびに、伝わる痛みに顔がしかむ。

 

「はぁ、ん……つ、痛……」

「ナズナ……ありがとう。愛している」

 

 団長は、息を吐くみたいに好きって言う。手慣れているだけって思うのに、きゅう、ときてしまう。

 ううん、きっとこれはただの防衛本能なのに。

 ベッドは引き裂かれたわたしみたいにミシミシと軋(きし)む。

 痛いのに耐えるのもだいぶ慣れてきた。思っていたよりは、痛くない。

 それで、痛みに紛れてわたしの中の何かがうずいてるのに、気づいちゃって……!

 

「ん……や、ん……はぁっ……」

「少し慣れてきたか?」

「だいぶ、よくなって……ん……っ」

「へえ」

「えっ……」

 

 何か、おかしかっただろうか? 団長の反応に、少し不安になる。

 だけど、すぐにそんなこと考え続けていられなくなる。

 

「あっ……ん……んん……っふ、……ん……!」

 

 彼自身が、さっき気持ちよかったところに何度もこすれる。

 団長に集中的に弱いところを刺激されて、想いが快感で塗りつぶされてく。

 痛みをこらえていたはずの喉元は、いつの間にかヘンな声が出るのを抑えるのがつらくなってきていて……。

 

「ナズナの中、びくびくうねってる。初めてだっていうのに、エッチだな」

 

 えっち……? 経験の多い団長にえっちだって言われちゃうくらい、今のわたしは乱れてしまってるんですか!?

 けれどこの気持ちよさに逆らえなくて……。

 すがる手の先の彼を見上げる。その彼の言葉が、死刑宣告みたいに思えて。

 

「はっ、あっ、だって、団長様は、好きだって……! どうしてそういうこと言うんですか!? こういう女は。嫌い、んっ……ですかっ」

「ああ好きだよ。そういう反応も可愛い」

「なっ、違……っ、わたし、そうじゃなくて、エッチだからじゃなくて、だんちょさま、だから……んっ」

 

 ジュプジュプジュプジュプ……

 

 彼と離れたくなくって、その背中に腕を回した。団長の体温も、すごく熱い。

 いつの間にか遠慮のなくなった団長に敏感なところを休むことなく擦られて、ナカがきゅんきゅんと疼(うず)く。

 

「俺だから?」

 

 ……。

 えっちなんかじゃ……無い。えっちじゃなくて、えっちなことされて感じちゃってるんじゃなくて。

 だから……召喚の儀が成功しても、心の底にどうしても素直に喜べないわたしがいるのは……。

 

「わたし、団長さまのこと、好きになっても……んっ、いいんです、か……?」

 

 決して誠実とは思えない彼のことを好きだっていう気持ちを自覚するのは、だって、とっても苦しいことで。

 明日だって団長は別の女の子と一緒にいてもおかしくないって分かってるはずなのに……。

 彼に聞いたって仕方ないのに、自分で決め切らないわたしには、そうするしかなくて。

 

「俺の全てをかけてナズナの気持ちに応えよう」

「わたし、わたし、ん、ふ……っ!」

 

 きゅうと彼の体を抱きしめた。団長の抽送を感じるたびに、とろけそうな官能が花開く。

 最奥に感じる彼の振動も心地良いけど、それ以上に愛し合ってるんだっていう雰囲気を肌で感じて甘苦しくて。

 

「は、ん、だんちょさま、……気持ち、い、ですっ、……っお」

「ナズナも、……くっ、最高だ……」

 

 団長の息も荒くなってきているのが分かる。

 初めてで、彼に任せっぱなしなのに、それでも感じてくれてるんだって思うと、じわりと幸せがこぼれてきて。

 

 ヌチュ、グチュッ、ヌチュッ、グチュッ……

 

「あ、ふぅ……んっ、ふっ……」

「エッチな声だな」

「わたし、は、えっちなんかじゃ」

「ナズナは、エッチだぞ。もっとかわいい声で鳴いていい」

 

 彼の言葉に抗(あらが)いきれなくて、感じるままに声が漏れて……もっと感じたくって、腰も淫らに揺れてしまう。

 

「あっん、気持ちいい、……っ!! すき、団長さま、んぅ……」

「ナズナ、ナズナッ!」

 

 繋がっているところにはじける水音が興奮をかき立ててく。

 団長の切っ先を休むことなく打ち付けられて、押し寄せる快感にもだえるばかりで。

 他のことなんて何も考えられなくって、ただただ団長と求め合う。

 

「あ、あんっ、ふぁあん、あ……っ」

「やはりナズナが相手だと余裕がなくなる……くっ、ナズナ、このまま出すぞ」

「ん、あ、わたし、もう、もう……離さない、で……!」

 

 一瞬だけダメかもと考えたけど、すぐに霧散した。だって、彼と少しも離れたくなくて。

 団長の律動がひときわ激しくなって、どんどん限界が近づいてきて……!

 

「あ、ふぁ、ふああん、ああ、ぁぁん……!!」

 

 ぎゅっと彼にしがみつくと、嬌声を上げて絶頂を迎えた。

 団長も強く抱きしめ返してくれて、最奥まで一気に突き立てられるのを感じて。

 

「……ッ……くッ」

 

* * * * *

 

 夜が明けたあとも団長はわたしのことを好きでいてくれるのかな、なんていうのは杞憂(きゆう)だった。

 どちらかっていうとそんなことより考え直したほうが良かったんじゃないなんて考えたこともあったけれど、それも過去の話だ。

 付き合い始めてからの彼は、それまでの噂が嘘みたいに一途で、本当にわたしじゃないから遊びだったんだって分かった。

 ……一途過ぎて身が持たないと思うこともあるけれど。

 彼に押し切られる形で結婚し、あと何ヶ月かすれば子どもが生まれる。

 

 ぬちゅ……ぬちゅ……ぬちゅ……ぬちゅ……

 

 その愛おしい彼の切っ先に、ぬめぬめとした柔らかい塊を当てて動かす。

 男の人用のって、いやらしい形のものはあるけど可愛くてとっつきやすいものってあまりないなって思う。

 彼自身の角度に合わせて、垂直にその筒を這わせる。

 中の形が彼に擦(こす)れて、彼の顔が快感に歪んでいるのが分かる。もっと奉仕して差し上げましょうか!

 

 彼の気持ちのいいところに当たるように角度とかを見ながら抜き差しを繰り返す。

 始めは処女の如く、後は脱兎の如しとおもむろに早くしていって。

 

 ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ、

 

「ナズナ……ッ!」

「旦那さまの精子、いっぱい出してください」

 

 痛いって言われないくらいに早くその筒を動かして、彼自身を射精に導いてく。

 

「……ッ!」

 

 彼のイくときの切なそうな顔に、密かにうっとりとして。

 

「ハァ、ハァ、……ありがとう」

「まだまだですね」

「いや、もう満足した」

「もっと出しましょう」

 

 一瞬だけ怯えたような視線を感じたけれど、彼は止めない。

 

 つわりの時期になってからは、セックスはしてない。

 子どもができたことはもちろん彼には話していたから、彼はそれ以上求めてこなかった。

 

 けれど、だから不安で。

 

 だってちょっと前まで彼の女癖の悪さは有名な話で、今でも彼がその気になれば女になんて苦労しないはずなのだ。

 彼にその気がなくても、よりを戻したいという子はいるかもしれない。

 相手がその気になったらどうするのって聞いたら、彼はナズナ以外いらないというけれど……

 信じたいって思うけれど、信じ切るのはずっと難しい。

 わたしのことを気遣って全然求めて来ないから……外で他の子と遊んでるんじゃないかなって、不安にもなる。

 

 だからって、彼とラブラブしたいって思う気持ちはあってもえっちな気持ちには全然なれなくて。

 それに、吐き気におそわれたら事故にもなりかねないし……。

 そういうことで、機をみてはおもちゃで搾(しぼ)り出すことになった。

 どうしようもないといってもおもちゃに相手をさせるわけだし、嫌じゃないですかと聞いたけれど、わたしのすることは何でも嬉しいみたい。

 

 少し休憩を入れてから、ふにゃっとした彼自身を指で遊ぶ。

 すぐに硬くなってくる。ほら、まだまだ安心できないでしょう?

 たっぷり大きくなったら、おもちゃの中に彼自身を封じ込めて。擦れるときに息を留める彼が愛らしい。

 窓の外の、鳥のなく声や木が風邪にそよぐ音を聴きながら、ゆっくりゆっくりと動かして温めていく。

 彼が焦らされていると感じているのかそれともほっとしているのかは分からなくて。

 

「気持ちいいですか?」

「ああ……」

 

 だいぶ搾れてきているのが分かる。少し彼の弱いところを往復するようにしたら、あからさまに顔に出た。

 屈強な騎士団長の彼が弱っている姿を見るのはちょっと楽しい。

 子どもができて気遣ってもらえるようになるまではさんざん抱き潰されたし……ちょっとくらい仕返ししてもいいですよね?

 旦那様、わたしがこんな気持ちになるのはあなたにだけなんですよ?

 

 ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ……

 

「……ぅ……」

 

 背もたれにもたれかかって必死に快感に耐えている彼を、リズムを保って愛でていく。

 少しずつ早くしていくたび、彼の余裕がなくなるのがなんとなく分かる。

 

「ナズナ、もう、イキそうだ」

「いつでもイってください。全部注ぎ込んで欲しいです」

 

 ごしごしと彼のものをおもちゃで擦っていく。

 おもちゃが吸い付いて、えっちな擦過音がこぼれる。

 おもちゃの中で、彼のものが一層大きく膨張して。

 

「……っく!」

 

 彼の切なげな絶頂を感じとると、ぎゅーっと残滓を搾り出していく。

 

「気持ちよくておかしくなりそうだ」

「でも、まだ出ますよね」

「……もう出ない」

「……出ますよね?」

「出ない、ナズナが全部出してくれたから。それよりナズナを抱きしめさせて欲しい」

 

 行為の跡を拭き取ると、彼はだいぶ大きくなったお腹に気遣いながらそっと抱きしめてくれて。

 つわりのひどい時期は彼の匂いも嫌で近寄らないでと言っちゃったこともあるけれど、今は一番落ち着く匂いがする。

 

「旦那さま?」

「何だ?」

「旦那さまはまだわたしのこと、大切に想ってくれています?」

「当たり前だろ。ナズナと俺の子以上に大切なものなんてねえよ」

 

 ……。

 大切に想ってくれているのは本当は分かってる。けど、気になるのはそういうことじゃなくて。

 彼の手をにぎりながら、大切な子どものいるお腹をさすって。

 

「この子、だいぶ大きくなったでしょう?」

「すくすく大きくなってくれて嬉しい。さすがはナズナと俺の子だな」

「……この子が生まれてからも、大きいまま戻らなくっても、団長様は好きでいてくれます?」

「今だってナズナは可愛くて仕方ない。平気だ、いずれ戻るさ。今はゆっくり休んで俺の子を産んで欲しい」

「ありがとうございます……最近わたし面倒じゃないですか」

「気になることはナンテンに聞いてるよ。俺には代われないからな、できることならなんでも言ってくれ」

「……はい!」

 

 絶対元気な子を産もうと思いながら、彼にキスを強請(ねだ)った。

 旦那さま。いくら愛されても愛され足らないくらい、大好きです。

 


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