触手って何かいいよなと思ったことからこれを書き始めました。
エロ成分強めになっているので弱い方は飛ばしながら読んで下さい。
取りあえず合計四万文字越えの作品となっているのでよろしくお願いします。
初めて連載の形をとってみました。
最後まで読んでもらえたら嬉しいですね。
ではでは。
「ねぇロンギヌス。たまには、もう少し露出の多い服を買ってみたら?」
カドケウスが、服を胸の前であてて、その見た目を鏡で確かめているロンギヌスに向かって言った。
「え?」
ロンギヌスが振り向いた。彼女が手にしているのは丈の長いワンピースだった。
「もっと色気を出しなさいって言ったの」
カドケウスが両手を腰に当てて不満そうに言った。
ロンギヌスは困ったように笑った。
「そんな事言われても……」
カドケウスは肌をあまり見せないロンギヌスが、何だか勿体ないと思ったのだった。
「まったく、ほんとアンタは守りが固いんだから。ずっとそんなんだと、その内マスターに飽きられちゃうよ」
「え?……そんな事言わないでよ、カドケウスちゃん」
ロンギヌスはおろおろしている。
「せっかくすごい綺麗な肌をしてるんだから、もっともっとそれを見せていかなきゃ」
「そんな……」
「もう!ロンギヌスはもっと大胆になるべきね。もっとこう、自分の容姿に自信を持ってさ。それに頑張ってバストアップ体操で大きくしているその胸は、いつ見せるんだって話よ」
「……はわ……」
「ま、そんな事言っても無駄か。でもちゃんと覚えておいてね。アンタは可愛いんだから、行くときはどんどん行くのよ。取り敢えず、アンタも『マスターを落とし隊』のメンバーの一員なんだからね」
カドケウスはビシッと指をロンギヌスの顔前に突きつけた。
ロンギヌスはアハハと苦笑いをしてそれを流していた。
マスターを落とし隊とは、色恋に頑ななマスターを何とか色仕掛けで陥落させて、その色事に慣れさせたマスターともっとイチャイチャしたいと願うメンバーの集まりの事である。
これはカドケウスが一応のリーダーを務めていた。メンバー構成は秘密である。
「さあ、いつまでもそんな事してないで、何も買わないなら次の店に行くわよ」
呆れた様子のケーリュケイオンが、二人を急かすように言って、さっさと店を出ていった。
「あ、待ってよ。お姉ちゃん。行こっ、ロンギヌス」
「あ、うん」
ケーリュケイオンとカドケウスとロンギヌスはまた街の大通りに出て、お喋りをしながら三人で仲良く並んで歩き出した。
その頃、マスターは歩きながらグイッと大きく伸びをしていた。
「さーてとっ……」
とても気持ちの良い抜けるような青空の下で、マスターは一人気楽に街の中を散歩していたのであった。
今日は久し振りの完全オフの休みの日で特にやるべき事もない。
だからと言って今日と言うこの日を、ずっと家でゴロゴロしているのも勿体ないので、取りあえず色々と買い物でもしようかと思って、まずは街に出て来たのだった。
マスターがしばらくのんびりとめぼしい店を物色しながら大通りを歩いていると、どこからかタタタっと小気味よい足音が聞こえてきた。
すると突然後ろから、誰かがマスターの首筋に嬉しそうな声で叫びながら抱き付いてきた。
「ま~すたっ~!!」
それは弾むような声で、言わば黄色い声とでも言うのだろうか、何か甘えたような少し幼げな声であった。
「おっと!」
マスターは突然のその衝撃に多少姿勢を崩しながらも踏ん張ってその場で耐えた。
取りあえずその高い声と、首の前のほうに回ってきた服の袖口の特徴で、マスターはすぐにこれが誰だか分かった。
「シユウか」
「うん。そうだぞ!しゆうだぞ。しゆうはますたーに会えて嬉しいな!ん?……ますたー。ますたーは何でここにいるんだ?」
シユウは両足も前に突き出してマスターの胴を挟み込み、もうマスターの背中に完全にへばりつく姿勢になっている。
取りあえず、もう当分は離れないと言った感じだ。
マスターはこんな感じのシユウの扱いには慣れているので、そのままシユウを背負った状態で歩き始めながら答えた。
「俺は散歩と買い物だよ。それで、シユウは何してたんだ?」
「ん~っとなあ、今日のしゆうはペ~ちゃんと遊ぶやくそくしてんだぞ!」
シユウはマスターの背中を揺すりながら答えてきた。
「ん?……ああ、ペルーンとか。お前達は仲良いもんな」
「うん!ぺ~ちゃんは、しゆうと好きなもんが似てるからすっごい好きなんだ。お山とかおまんじゅうとか雷とか……あともちろんますたーとかな♪」
マスターとシユウは楽しげに会話をしながら、取りあえずはマスターの予定通りに、ボチボチと買い物をしながら街の通りを歩いていた。
だがしばらくすると、マスターはシユウとペルーンの待ち合わせの場所へと向かう事になった。
シユウが自分でペルーンと約束をしていると言っているのに、一向にマスターの背中から離れようとしないからである。
シユウを背負ったマスターが、その待ち合わせ場所になっている噴水広場にまでやって来た。
広場の真ん中にある大きな噴水のほうを眺めると、そのペルーンが噴水の縁石に手持ち無沙汰の様子で座っているのが見える。
シユウを待っているのだろう。
マスターが声をかけようと近づいて行くと、先にペルーンのほうがマスターの存在に気が付いた。
「あ~!マスタ~だ~♪……って、んにゅ?あれれ?」
ペルーンが首を伸ばすような感じで、マスターの背負っているものの正体を確かめようと遠くから覗き込んでくる。
マスターの肩に、何かすごい見覚えのある特徴的な服の袖口が見えたからだ。
シユウはと言うと、この待ち合わせの約束をした公園に入ってから、マスターの背中に隠れてずっとじっとしていたが、ついに我慢出来ずにヒョイとそのイタズラっぽい顔を覗かせてしまった。
ペルーンはシユウのその顔を見つけて叫んだ。
「ああ~っ!しゅうちゃんだ!……あ、ずるい~!何でマスタ~におんぶしてもらってるの~?あたしも~!」
ペルーンが勢いよくマスターの胸に飛び込んできた。
マスターは慌てずにそれを待ち構えて、ペルーンを危なげなく胸に抱き止める。
背中にシユウ、胸にペルーンと言った感じでサンドイッチにされたマスターはやれやれとため息をついた。
どちらも小柄で軽いとは言え、こうやって二人揃ってしがみつかれるとやはりしんどいはしんどい。
彼女達はそのままの姿勢で、二人で楽しげにお喋りをし始めている。
マスターはシユウとペルーンをその格好のまま背負って、手頃な石の椅子を見つけるとそこにヨイショと腰をかけた。
面倒見のよいマスターは、彼女達がこの状況に飽きるまで、とりあえず付き合ってやろうと思ったのであった。
だが、彼女達はもうマスターそっちのけで、マスターの耳元付近で顔を見合わせてかなり楽しげだ。
しばらくずっとそのままの状態が続いてしまい、マスターは目を閉じながら今この場に自分のいる意義を、とりあえずは見いださないといけないなと思い始めた。
だが、そんな矢先にどこからか声をかけられた。
「あの、マスター?……何をされているのですか?」
それはかなり聞き慣れた声だった。
マスターが声をかけてきた人物を確認する前に、背中のシユウが先にその人物に話かけていた。
「あ、ロンお姉ちゃん!」
ロンギヌスがマスターの視界に入ってきて、マスターの顔を覗き込みながら話しかけてきた。
彼女は何か楽しそうに笑っている。
「ふふふっ、遠くから見たら何かと思いましたよ。二人の少女を体に引っ付けた男の人が、公園の真ん中に座っているんですもの。でも、それがウチの隊のペルーンちゃんとシユウちゃんって分かったら、すぐにその男の人が誰だかピンと来ました」
「何だかすごい楽しそうねぃ♪」
また別の方角から違う声が聞こえた。
だがこれもよく知った声だ。
その声がしたほうを向くと、カドケウスがいつの間にかそばに来ていた。
彼女は頭の赤いリボンをふよふよと揺らしてニコニコと笑っている。
「お姉ちゃん、ほら、見て見て」
カドケウスがケーリュケイオンを手招きして呼びかけた。
少し遠巻きに見ていたケーリュケイオンもそばに来て、マスターと目が合うと不敵に笑いながら言った。
「あらホントに楽しそうね。これ。そうね、今度私達もやらしてもらいま……」
「いやまて!まてまて!……やらないぞ!やらないから!」
マスターは慌ててその言葉を遮った。
「え~っ?」とカドケウス。
「不公平ね」とケーリュケイオン。
「……そんな事言っても、お前達はこんな事をするようなたちではないだろう?」
マスターは変な方向に話が行かないように必死だった。
だが二人はニヤニヤ笑いながら答えた。
「でもスキンシップ的にはとても良い体勢よね。服を脱いでやるのなら特に……」とケーリュケイオンは妖しく笑う。
「うん。最近特にマスター成分足りてないから、私はすっごいやりたいな。……ねえ、お姉ちゃんはどっち側がいい?譲るよ。前?それとも後ろ?」
カドケウスは目をキラキラと輝かせている。
マスターは苦い顔で言い放った。
「いやお前達、ホントにしないからな!?……はあ、シユウとペルーンもそろそろ降りなさい」
「「え~っ?いや~」」
二人は揃って駄々っ子のような返事をして、またそれぞれがマスターを強く抱きしめてきた。
そんな二人をロンギヌスが優しく諭した。
「こ~ら。あなた達は楽しいだろうけど、一人で二人を相手をしているマスターはどうなんだろうね。疲れちゃうんじゃない?あなた達の大好きなマスターが疲れて体を痛めちゃったらどうするの。……そんなの嫌だよね」
「うー」
「ふみゅー」
「「はーい……」」
二人は素直にマスターから降り始めた。
「でも、すごい気持ち良かったんだけどなぁ」とペルーンは指をくわえるような仕草で、名残惜しそうにマスターを見つめた。
「え?」とロンギヌス。
「なんかねぇ。ああやって抱き付いていると、マスターのお胸の音がトクントクンって伝わってきて、ほっとして何か温かい気持ちになるの」
「へ、へぇ……」
それを聞いたロンギヌスは、羨ましそうにチラチラとマスターのほうを盗み見ていた。
それに気が付いたペルーンが無邪気に言い出した。
「ロンちゃんも一度試したら分かるよ。……一人でやるならマスターもそんなに疲れないよね。ちょっとだけやってもらいなよ!」
「ええっ!私はそんな事……っ!?」
(さっきのペルーンちゃんみたいに私もマスターの胸に……はわわ)
ロンギヌスは一人その姿を想像して悶々としていたが、一度湧き起こってしまったその妄想の誘惑には堪えきれずに、フラフラとマスターの前に歩み寄っていった。
「あ、あの!マママスター!!私っ……」
ロンギヌスは胸の前で両手を組み合わせて、一大決心をするようにして言い出したが、マスターは明るく笑って、まるで取り合ってくれなかった。
「はう……」
ロンギヌスは落ち込むように、その場でうつ向いた。
いつの間にか、そんなロンギヌスのそばにカドケウスが影のように寄り添っていた。
「……残念でした」
カドケウスはロンギヌスの脇腹をツンとつついた。
「ひゃうっ!……なな何っ!?」
ロンギヌスは飛び上がって驚いた。
「やっぱり色気が足りないのよ。い・ろ・け。マスターがつい魔が差してしまう感じじゃないとやっぱ駄目ね。……もっとここを見せればいいんじゃない?」
カドケウスがツンツンとロンギヌスのお腹をつつく。
「ひゃああ!わ、わき腹はダメぇ~!」
ロンギヌスはその場から脱兎のごとく逃げ出した。
カドケウスは面白がって、人差し指をピンと構えたままその後ろ姿を追いかけていく。
マスターはこのドタバタ劇を見て大きなため息をついたのだった。
「……それで?お前達は何をしてたんだ?」
マスターはとりあえずあの場にいた全員を連れて、近くの喫茶店に入っていた。
ロンギヌスは真っ赤なトマトジュースを、笑顔でとても美味しそうに味わいながら飲んでいて、そのマスターの質問は耳に届いていないみたいだった。
カドケウスはと言うと、アイスティーを飲みながらシユウとペルーンのそれぞれのパフェをつまみ食いさせてもらうのに忙しそうだ。
残ったケーリュケイオンが紅茶を優雅に飲みながら、マスターの質問に答えてきた。
「私達も三人で街に遊びに来ていたところ。目的としては一応買い物が主ね。マスターはペルーン達と出掛けてたの?」
「いや。俺も休暇で街に買い物に来てたんだ。そしたらまずシユウに捕まってな。そんでシユウがペルーンと遊ぶ約束をしてるって言うんで連れて行ってやったら、いつの間にかあんな感じになっちまったんだ」
「ふふっ」
ケーリュケイオンはそれを聞いて、あの時のマスターの奇妙な格好を思いだして微笑んだ。
鼻のてっぺんにクリームをつけたカドケウスが話に加わってきた。
「ねぇ!マスター。今日は休暇で一日暇なんでしょ?それならこれからみんなでどっかに遊びに行こうよ!」
「ええっ?今からそんな計画をたてるのか?……おい、カドケ。白いのついてる。こっちに顔寄せてみ」
マスターは甲斐甲斐しくカドケウスの鼻のクリームを紙ナプキンで拭いてあげた。
「それならしゆうは、西のお山に行きたいぞ!」
シユウが話を聞きつけてパフェから目を離し、元気な声で提案してきた。
「あ~それ!いいな♪私も一度のんびりあの山、お散歩してみたかったんだ~」
ペルーンもその話しに即座に乗ってきた。
どうやら自然が大好きなこの二人は前からその場所に行きたかったようである。
だがその提案を聞いた他のキル姫達の表情はそんなに思わしくなかった。
「西の山……ですか……」と思索顔のロンギヌス。
「う~ん……?」とカドケウスは困った様に眉を寄せる。
「……マスター」ケーリュケイオンはマスターの判断を仰ぐかのようにじっとマスターを見つめてきた。
マスターも腕を胸の前で組み悩み始めた。
ここからそんなに遠くないその西の山は、地形がなだらかな割に自然がとても豊かで、ピクニックにはもってこいの場所なのだが一つだけ問題があった。
それはその山に不思議を多く目にする少し危険な場所があるからだ。
それは山の反対側の麓にある深い森の事であり、街の者からはその森は『幻惑の森』と呼ばれている。
その森に散策者が近づくと、いつの間にか何処からか湧き出た濃い霧に包まれてしまい、その霧の中で不思議な体験をする事になると言う、とても奇妙な場所なのだ。
その散策者がそこでする体験は様々だが取り分け多いのが、単純な一本道であったのに何故か道に迷ってしまったり、見た事の無い奇怪な生物との遭遇だったり、あるいは数日間神隠しになったりと言ったところだが、最悪のケースではそのまま行方不明になってしまう事もある。
とにかく、その不思議な事が起こる原因は未だ分かっておらず、この国ではその幻惑の森を特定危険区域にして立ち入りを禁止し、またその場所がある西の山全体を立ち入り制限区域として、人の出入りを制限して人々の安全を図っているのであった。
だが今マスターが悩んでいたのは、一般人ならばその制限に引っかかりその山には一切入れないが、キル姫を率いた奏官と言う立場ならば、採集、調査と言う名目でその西の山までならそこに入る事は、普通に許可されていたからであった。
実はその西の山には、異族との戦闘による傷に良く効く薬草が自生していたり、さらには治癒効果の高い温泉が湧いている事があったりと、奏官達が利用する機会はあるにはあるのだ。
実際マスターも西の山には何度も行った事はあり、その時には特に何の問題もなく過ごせていた。
マスターは今ここにいるメンバーを見渡して考えた。
(……う~ん。斧のキル姫2人と槍のキル姫1人、そして杖のキル姫2人か……。戦力的に言っても特に問題はなさそうだな。隊の練度としては少し甘いが、ロンギとカドケリュがいるから、取りあえずそれも大丈夫か。あとはまあ、目的が遊びに行くと言う事だけが少々引っかかるが……まあ、そうだなあ……それは、シユウとペルーンの若いキル姫二人の行軍訓練を兼ねてと言えば、後々の許可申請に対する言い訳も何とか成り立つか)
マスターはそう考えると心を決めて皆に向かって言った。
「よし!それじゃあ行くか。西の山に」
マスターのその答えを固唾を呑んで待っていたシユウとペルーンは大喜びではしゃぎ始めた。
ケーリュケイオンは少し心配そうな顔つきでマスターを見つめて言った。
「……いいの?」
マスターは笑いながら答えた。
「ま、大丈夫さ。ちゃんとお前達も一緒に行くんだから問題はないだろ。それに今回はそんな奥に行く気はないしな」
ケーリュケイオンは肩をすくめた。
「……マスターがそう言うのならば、私が特に言う事は何もないわね。それに、実は私も、あの山へはまた行ってみたかったし♪」
楽しげに微笑んだ姉を見てカドケウスが質問をしてきた。
「お姉ちゃんもあそこに行った事あるんだっけ?」
ケーリュケイオンは頷いた。
「ええ、何年か前に調査のクエストでね。その時にはちょうど温泉が湧いていて、ちょっとだけ入る事が出来たのだけどそれが凄い気持ち良くてね。あの地に湧く温泉はホントお肌がすべすべになるのよ」
「ええ?いいなあ。私達の時はそんなのなかったよ。ねえロンギヌス?」
カドケウスはそう言うとロンギヌスほうを見た。
「うん。そうだったね」
ロンギヌスは頷いた。
マスターが口を挟んできた。
「しょうがないさ。あれはもう運みたいなものだからな。でも今回はどうか分からんよ。もしかしたら入れるかもしれん」
それを聞いた皆は早く行こう早く行こうとマスターを急かし始めたのであった。
マスター達一行は手早く装備を整えて西の山へと向かった。
街からその西の山までは、簡単な街道が整備されているので移動はとても楽で、それに向かう先が山と言っても、その山はなだらかで大きな丘みたいなものであり、そんなに起伏も激しくない。
しばらく歩くと、登り坂の途中に立ち入り制限の立て看板があり、それを越えてマスター達一行はついに西の山の丘陵地帯へと足を踏み入れたのだった。
その頃からだろうか、背の高い木々が増え始めて、木々が次第に街道沿いに大きな林を形成し始めてきた。
そのせいで、次第に緑の匂いも濃くなり涼やかな風が吹き始めて周囲の雰囲気がだいぶ変わってきた。
そして緑が濃くなるにつれて動物の数も増えてきたのだろう、その緑の陰のそこかしこに動物の動く音や気配がするようになってきている。
シユウとペルーンはその林の中を2人で楽しそうに走り回っていた。
何か物音がすれば2人でそのほうに駆け寄り、珍しい草花を見つければ2人でしゃがんでじっとそれを見つめていた。
ケーリュケイオンはと言うと、カドケウスと共に有用な薬草を選別して集めるのに余念がなかった。折角だから薬の材料を集めようとしているのだ。
ロンギヌスはマスターと雑談をしながら周囲の様子をきちんと警戒しながら歩いていた。
そうして歩いている内に、ペルーンが遠くに響く微かな水音を察知したようだった。
もしかしてと、皆が期待に胸を膨らませながらそこに向かって歩いて行くと、崖の一部から水が蕩々と湧き出している箇所を発見した。
しかもその湧き出る水は白い湯気を立ち上らせていて、それがちゃんと温度の高めなお湯であると簡単に推測出来るほどである。
そして幸運にも、その湯が落ちる先は大きな泉となっていて、しかもそれがちゃんと膝上ほどの深さがあり、広さも5人で充分入れる広さがあった。
皆がきらめく瞳でその温泉を見つめ、そしてマスターの許可を今か今かと待ちわびている。
マスターは一人でその泉に近づいて、お湯の温度と質を調べた。
丁度良い湯の温度で、それに水質的にも特に問題なさそうだ。
マスターは皆に向かってどうぞと手で示した。
それを見たシユウとペルーンが一目散に服を脱いで、真っ裸になるとその温泉目がけて飛び込んでいった。
残ったロンギヌスとケーリュケイオンとカドケウスは真剣なジャンケンのすえ、ロンギヌスが勝って先に湯に入る権利を得た。
ケーリュケイオンとカドケウスは諦めて大人しく周囲の見張りにまわった。
全裸になったロンギヌスがタオルを胸に湯に浸かる頃には、シユウとペルーンは一通りはしゃいでのんびりとし始めていた。まあ、のんびりとは言え温泉の中を泳いだり浮かんだりしているのだが。
ロンギヌスが手で腕をさすりながら呟いた。
「ほんと気持ちいい……。わあ。お肌がこんなに滑らかになるなんて」
ロンギヌスはそっとタオルを胸から外して、自分の胸の膨らみを見てじっと考えた。
(このお湯の中であの体操したら、効果が凄いあったりして……)
ロンギヌスはどうしても、このお湯のぬるぬる感を試してみたくて仕方がなくなり、カドケウス達には見えないように体の向きを変えて、そっとお湯の中で自分の胸を揉んでみた。
「……うんっ……」
あまりの気持ち良さに声が出てしまい慌てて口を塞いだ。
ちらりとカドケウス達のほうを見たが、どうやらあそこまでは届いていないようだった。
ロンギヌスは唾を飲み込むと改めて胸を揉み出した。
(んっ、くうっ……)
何でだろうか、いつもと違って凄い気持ちが良い。このお湯の感触のせいなのだろうか。多少ぬるぬるするくらいなのだが。
ロンギヌスは目を閉じて夢中で胸を揉んでいたが、何だか体の正面のほうにお湯の流れを感じて、うっすらと目を開けた。
そこには間近にシユウとペルーンのこちらを見つめる不思議そうな顔があった。
「ひゃあ!」
ロンギヌスは驚いて身を引いた。
ペルーンが興味津々に訊ねてきた。
「ロンちゃん、何をしてるの?」
シユウが無邪気にさっきのロンギヌスの真似をしてきた。そうして、まだあまり膨らんでいない自分の胸を揉む。
「こうやってお胸を触っていたぞ」
ロンギヌスは慌ててやめさせた。
「待って待って。真似しないで!これはね、え~っとえと……何て言ったらいいのかな?」
「でも、とっても気持ち良さそうだったよね」とペルーン。
「ん~?そんなに気持ち良くなかったぞ……」と不満顔のシユウがまた真似をして自分の胸を触り始めた。
「だめだめ!……あ~ん。もう、忘れて~……」
ロンギヌスは泣きそうだった。
その時、空間に亀裂が走ったような甲高い奇妙な音が辺りに響いた。
ロンギヌスはハッとして身構えて周囲を見回すと、自分達から少し離れた場所の空間がひび割れていて、その奥に真っ黒な空間があるのが見えた。
すると、突如そこから何かピンク色のツルのような不気味な物が飛び出してきた。
ロンギヌスは訳が分からない内に、一瞬で右手首を捉えられてしまっていた。
ロンギヌスは咄嗟に立ち上がり、それを必死になって左手でほどこうとしたが、がっしりと捕まえられていて全くほどけない。
ぬるっとしたその細長い物体はとても柔らかいくせに弾力があり、しかも力がえらく強い。
そうしている内に、さらに何本ものツルが空間の亀裂から次々と飛び出してきて、ロンギヌスの体にどんどんと巻き付き、その裸体にまとわりついていった。
左手首、右足首、左太もも、更には胴体にも巻き付いてきて、ロンギヌスはもうほとんど身動きが取れなくなってしまっている。
そしてそのツルはその空間の裂け目にロンギヌスを引きずり込もうとしてきた。
ロンギヌスは本能的に命の危機を感じて大きな悲鳴をあげた。
「……いやっ!?やめてっっっ……!助けてっっっっ!」
あれは植物のツルと言うより動物の触手と言ったほうが正しいのかも知れない。
動きがとても滑らかだし、その色と質感が動物の内臓のようなとてもグロテクスな感じがするからだ。
そのロンギヌスの悲痛な叫びでシユウとペルーンが我に返り、勇敢にも素手でロンギヌスを引き寄せる触手に飛びかかった。
武器のない丸腰の彼女らはその触手を掴むと、歯を剥きだしてそれに思いっきり噛みついていった。
その攻撃方法にも多少は効果があるようで、ロンギヌスを引きずり込む速度が多少鈍ってきた。
「えいっ!!」
掛け声とともに飛んで来た魔弾が触手に当たりその一本が弾け飛んだ。
「はあっ!」
さらにもう一撃がまた一本触手を行動不能にする。
マスターがケーリュケイオンとカドケウスをつれて救出にやって来たのだった。
だがその亀裂からは、次々とまた新たな触手が伸びてきてロンギヌスを拘束し引きずり込もうとしてくる。
このまま触手を一本一本倒していっても、これではたぶんジリ貧になってしまうとマスターは即座に予想をつけた。
それに、何とか邪魔をしてくれていたペルーンとシユウも新たに伸びてきた触手によってだいぶ遠ざけられてしまっている。
「ね、ねえ、ちょっと!どうするの?マスター。このままじゃロンギヌスが……!」
カドケウスが切羽詰まった声で言った。
ケーリュケイオンは黙って真剣な顔で魔弾を放っている。
彼女達は最大充填速度で魔弾を全力で放っていた。
その為に彼女達の疲労もみるみる内に蓄積していく。
マスターはこの状況を変えるべく一計を案じた。
「あの触手にこのまま攻撃していてもたぶん時間の無駄だろう。そこでだ、お前達のキラーズ<螺旋の蛇>の力であの割れ目をこじ開けて、あいつの本体を露出させてくれないか。そうしてからあいつに総攻撃をかけたい。どうだ?出来るか?」
「……お姉ちゃん」
カドケウスはあまり自信なさげにケーリュケイオンを見つめた。
だがケーリュケイオンはしばらく考えを巡らしてから答えた。
「まあ、出来る……と思うわ。それしか方法はないのでしょう?マスタ-。それなら、私達はそれをやるだけよ」
ケーリュケイオンは杖を構え直してカドケウスに向かって言った。
「やるわよ!カドケ!手伝って」
カドケウスも気を取り直して答えた。
「うん!お姉ちゃん!」
二人は杖を振り息を合わせて呪文を唱えた。
「「螺旋の蛇の二柱よ!あの怪物の本体をここに見せ給え」」
「ディボート……」
「トリート……」
「「……ケインっ!!!」」
二人から放たれた二本の黄金の光は絡み合い螺旋状に渦を巻いて、猛スピードでその空間の割れ目に向かって飛んで行く。
そしてその光は、半分以上体を取り込まれて泣き叫んで激しく抵抗するロンギヌスをすり抜け、その亀裂の中へと入っていった。
その刹那、ロンギヌスの前の空間が激しく震え、まるで硝子が割れたかのような大音響をたて、その場に怪物の姿が露わになった。
それは3メートルほどはある肌色の丸みを帯びたクネクネ動く円柱に大小の触手が無数に生えているようなとても奇妙な姿をしているものだった。
その怪物は姿を晒されて焦ったように身悶えると、触手を次々とロンギヌスの体に足していき、ロンギヌスを強引に自分の頭上に持ち上げようとしてきた。
だがこの場に姿を晒してからは、あまり力が出せないらしく、なかなかうまくいっていなかった。
しかしロンギヌスのほうも必死になって暴れて抵抗はしているようだが、こちらもどうにもならないようだった。
一方、カドケウスのほうは螺旋の蛇の力を使ってもうへとへとだったが、やっと姿を現した化け物に一撃を食らわせてやろうと杖を再び構えた。
だが隣に佇むマスターを見て魔弾を放つのをためらってしまった。
「……マスター?」
マスターはあの化け物を見て茫然としているような感じだった。まるで、この目で見ている物が信じられないと言った感じに。
カドケウスは不安になって姉のほうを見た。
だが、いつも冷静沈着である姉のほうも、姿を晒したあの怪物に目を奪われているようだった。
「……お姉ちゃんっ!」
カドケウスは姉を小声で呼び掛けてみた。
ケーリュケイオンはその声でハッと我に返った。
「……え?ああ、カドケウス……」
「どうしたの?早くロンギヌスを助けないと!」
「え、ええ。そうなのよね……でも……」
ケーリュケイオンはしばらく逡巡していたが、首を横に振って呟いた。
「……これは私に判断出来る事ではないわね。マスターの指示を待ちましょう」
「ええっ?」カドケウスは驚いた。
この緊急時に何をこんなに躊躇しているんだろう。
「……マスター。マスター、指示を願います」
ケーリュケイオンは静かにだが、はっきりとした口調でマスターに問いかけた。
マスターもそれで少しは心が落ち着いてきて、また再び色々と考え出す事が出来た。
「あ……、ああ。そうだな、すまない。だが、どうすればいい?まさか、あんなものを実際に目にする時が来るとは夢にも思わなかった。……ちくしょう!早いとこロンギヌスを助けてやりたいが、果たして俺達があいつに手を出してもいいものなのだろうか……?」
マスターは文字通り頭を抱えた。
苦悶するマスターを見てカドケウスは姉のほうを訊ねるような瞳で見つめた。
ケーリュケイオンは、マスターを見つめていたその気の毒そうな目を、カドケウスに移すと説明をしてあげた。
「あの触手の怪物の正体……貴女は知らないのだと思うけど、実はあれはとても神聖で高位な物とまで言われている幻の生き物なのよ。そして、ああ言った生き物は神獣と呼ばれ、教会がその保護を提言していて、私達は手を出してはいけない事になっているの。それに、あの怪物はけっこう名を知られていて、その名前を『神獣ローパー』と言うわ。何でそんなに有名かと言うと、ある文献にあいつが排出する液体はエリクシールという魔法の秘薬と同じ効果を持つと書かれているからなの。その秘薬はとても貴重で非常に高価な物よ。そんな物を無尽蔵に生み出すのだから、皆目の色を変えるのも分かるわね。……あと、あまり言いたくはないけど、神獣に対する教えの中の極端なものには、ああ言った神獣に襲われるのはとても誇らしい事であり、もし襲われたのならばその者は抵抗はせずに、乞われるまま素直にその命を捧げるべきと言う教えもあるそうよ」
「そんなのって……」
カドケウスは到底納得出来ないと言った感じであった。
マスターは横でその話しを聞いていたらしく、吐き捨てるように言った。
「ふん!俺は取りあえずそんなのには従えないけどな。……けど、あの神獣は俺が知っている文献によると、人に危害を加えるという事はないとされているんだよ……。だから俺は今、あいつを攻撃するのをためらっているんだが」
「でも……でも、ああ、ロンギヌスが……」
カドケウスはロンギヌスを見上げて言った。
ロンギヌスはついに何本もの触手によって高々と持ち上げられてしまっていた。
手足や胴体には無数の触手が巻き付いて不気味に蠢いている。
ロンギヌスはもう抵抗を諦めて、怪物のされるがままにしていた。
それは、重度の疲労のせいでもあったが、その触手の動きがかなり強引だが、一応怪我をしないように何かしら配慮をしてくれているような感じもあったからだった。
ロンギヌスが疲れ果てて息を荒くついていると、他とはまるで違う細めな半透明のぬめ光る触手が目の前に迫って来た。
その触手の先端は何やら透明な液体を湛えている。
その触手は他とは違う動きをしてきて、何とロンギヌスの口の中に入ってこようとしてきた。
もちろんロンギヌスは抵抗したが、別の触手に頭を抑えられて、ついにその触手に口内への進入を許す事になってしまった。
その触手に噛みついてやろうと試みてもみたが、その前に顎を抑えられてしまい何も抵抗出来なかった。
その口内に進入してきた触手は細かく脈動すると、ロンギヌスの喉の奥に何かの液体を流し込んできた。
吐き出す事も出来ないロンギヌスは、もうそれを飲み込むしかなかった。
その触手は相手が飲み下したのを見届けると、またどこかに引っ込んでいった。
不思議と後味の爽やかだったその得体のしれない物を飲み込んだロンギヌスは、大きな悲鳴をあげ続けて傷めた喉の痛みや激しく抵抗した為の全身の疲労感が、いつの間にか全く感じなくなっている事に気が付いた。
どうやら体力が全回復して、傷も何もまるでなくなっているようだった。
しかも体の奥底から力が湧いてくるような感じまでする。
ロンギヌスはこの怪物の行動をただ不思議に思っていたが、次の怪物のその動きに羞恥で顔を真っ赤に染めた。
「……いや……、ちょ、ちょっと待って!……嫌っ!」
その触手達は全裸のロンギヌスの両足を持ち上げて、彼女の股を大きく開かせてきたのだ。
抵抗しようと足をばたつかせてみたが無駄だった。
ロンギヌスは、怪物の頭上で、まるで分娩台に乗せられた妊婦のような格好にさせられていた。
「……ああ……」
ロンギヌスの慎み深く隠さねばならない場所が、完全に露わになった。
その部分が外気に触れて、敏感な部分にまで風を感じてしまい、彼女は恥ずかしくて泣きそうになった。
だがそれは、また形状の違う触手が、その開かれた股間の彼女の隠すべき部分に近づいて来るまでの間だった。
他とはまるで異なる複雑な形状の先端を持つ太い触手が、次第に彼女に近づいて来る。
その先端は、口を限界まで大きく開いた大蛇のようであり、その口の内側の表面は細かい襞がびっしりと生え、それが細かく蠢き、まるでイソギンチャクの頭のような卑猥な動きをしている。
ロンギヌスは怯えて腰を引こうともがいたが、どうしようもなく、彼女はその不気味な先端が自分の股間の敏感な部分にくっついてくるのを黙って見届けるしかなかった。
それが吸い付くようにロンギヌスの秘部にヒタリと密着してきた。
「……あ、んっ……!」
あまりの感触にロンギヌスは声をあげてしまった。
細かい柔突起で敏感な部分全体を触られてしまい、もうそれだけで腰が抜けそうだった。
しかもそれが細かく震えるように動き出してきたから、それはもうたまったものではなかった。
「あ、あああ、あ……ひゃあああんっっっんんっっ……!!!!」
ロンギヌスは首をのけぞらしてその快感に堪えていた。
しかしそれもすぐに崩壊していく。
「……ああ、嫌……いやいや……駄目、駄目ダメダメだめだめっっっっっ……」
マスター達はと言うと、完全に攻撃に出るタイミングを見失ってしまっていた。
この神獣ローパーがまるでロンギヌスの体を触手で愛撫しているように見えたからだ。
ロンギヌスの色っぽい喘ぎ声が頭上から聞こえ、マスターはこれからどうすれば良いかを必死に考えていた。
カドケウスは顔を赤らめてロンギヌスの悶える姿を見守り、ケーリュケイオンは冷静な表情で対応策を考えていた。
神獣ローパーの愛撫はまだ延々と続いているらしく、ロンギヌスはずっと喘いだままであった。
カドケウスはもう見ていられないと目を逸らしたが、その時にロンギヌスの股間にへばりついている触手の、その本体側から何かの膨らみが、少しずつ上にずり上がってきているのに気が付いた。
それは1個の丸い形状の物であり、それが管の内部をゆっくりと進んでいくその光景は、それが排卵管を進む卵である事に容易に連想がいった。
カドケウスはその想像に顔を青ざめた。
(あいつはあの管でロンギヌスの胎内に卵を産み付けようとしてるんだ……!)
カドケウスは急いでマスターに、自分が見た物の状況と自分の考えを説明した。
だがマスターは歯を食いしばり拳を握りしめるだけで何も指示を出そうとしない。
もどかしげにカドケウスは言った。
「マスター!このままだとロンギヌスがあいつに孕ませられちゃうよ!あんな奴の卵を胎内に宿したら、あの子がどうなるか分からないよぉ!!ねぇ!」
マスターはカドケウスのほうを見ずに、苦しそうな声で答えた。
「……くっ!分かってはいるっ!分かっているんだ!!だが、もしもあれが本当に神獣の繁殖行為だとするならば、もう手が、出せん……」
「そんなぁ!」とカドケウス。
「……まぁ、そうね。この世界において神獣がどれほど尊い物かを知っている者ならなおさらよね……」
ケーリュケイオンがマスターを擁護するかのように言った。
あの触手の膨らみがついにロンギヌスの股間の部分まできてしまっている。
顔を仰け反らしているロンギヌスはまだその事実を知らない。
これからその管の内部の卵がロンギヌスの胎内に挿入されていくのだろう。
そう考えるとあの触手の執拗な愛撫は、母胎の挿入時の痛みを和らげる為に必要な行為だったのだろうと推測出来る。
マスターは早く止めたいと願う本心と到底止められないと思う理性で心が引き裂かれそうだった。
そしてついに、その触手の球状の膨らみがロンギヌスのあの秘部にまで届きそうになってきていた。
マスターはもう諦めるしか手はなくて、歯を食い縛り、その目をきつく閉じたのであった。
だが、マスターが諦めて目を閉じたその瞬間、周囲に大気を震わす凄まじい大音響が轟いた。
こんなに空が晴れ渡っているのにも関わらず、何とあの神獣ローパーの上に大きな雷が落ちたのである。
気になる方は中編をよろしく。