雑誌:少年サンデー
漫画:サラダデイズ聖夜の死神より
あらすじ。
死神を名乗る女性との永遠の別離より一年。
聖夜の夜。佐野光一は教会の前で祈っていた。
もう一度彼女と会いたいと。
その曇りなき願いは聖夜の空に届き。
彼は死神の少女と分かたれる事故の瞬間まで時をさかのぼるという奇跡に見舞われるのであった。
そして、光一は死神が消滅するという運命を変えてしまい。
彼女と共に帰宅した家にて……
聖夜の死神と聖夜の奇跡 後編
缶コーヒーで祝杯をあげたい気分。
「むう、それは今私が言おうとしたのに…… 光一、君は人間のくせに私の心でも読んだのか? それに、それに何故泣く? おまえは私が好きで、私はおまえが好きで、好き合えて嬉しい筈なのにどうしておまえは泣くんだ……?」
成る程ね、自分が言おうとした事を先に言われてしまったのが不満なのか。
そしてどうして泣くか? そんなの、君にもう一度逢えて、君を助ける事が出来て、君と想いを通じ合わせる事が出来たからに、決まってるだろう……。
勿論伝えても分からない。死神である君でさえもこの奇跡はきっと信じられないだろう。一年のタイムリープなんて奇跡は。
コーヒーについてはまあね“前”とは違う“今”なんだから、こういうのも有りなんじゃないかな?
笑顔を浮かべて俺に言った君の最後の言葉を、嬉し涙を流す笑顔を浮かべて俺が言う。俺と君の終わりだった言葉を、俺と君のこれからの始まりの言葉にするのもさ、許されても良いだろう。
「まさか。俺みたいな普通の人間に死神である君の心が読めるはずないだろ?」
「う、うむ。た、確かにそうだ、そもそも人間に心を読まれるなど死神失格だ」
失格じゃ無いな。君の想いを俺は知っていたのだから。俺の反則って奴だよ。
「で、では何故泣くんだ? 私と好き合うのが嫌なのか?!」
そんな事、そんな事。
「──あるわけないだろ」
一瞬だけ声が低く、強い想いが籠ってしまう。この一年間くすぶらせてきた想いの発露だ。
「え?」
怒ったようにも聞こえてしまうその想いに戸惑う彼女。俺はすぐに空気を戻して取り繕う。
「あ、ああ、いや、うん……、嬉しい、からさ」
「嬉しい……?」
「嬉しくって仕方が無くってさ、だから、だから泣いてるんだ」
嬉しいさ。人生で一番、今この瞬間が愛おしいんだよ。
君と居れる、君と過ごせるようになったこの奇跡の時間の始まりが。
「きっとさ、俺と君の心は深く繋がり合ってるんだよ。だから君の言おうとした事と、俺の言った事が一緒だったんだ、何せ心が繋がってるんだからな」
ああ、そうさ。繋がってる。一年前のあの日から、この一年前の奇跡の今まで、俺はずっと君だけを想い続けてきたのだから。
「う、うん……、そう、だな……、私は光一が好きで……、光一も私が好きで……、心が繋がってるから、思うことも同じ…… そ、そのとおりだな、なんだ簡単なことではないか!」
俺の言葉に納得したようで、彼女はさっきの不満そうな表情とは打って変わって、頬を真っ赤にしながら嬉しそうに笑う。
それに、俺も思いつきでそう言った訳じゃない。心から思ってる。
俺と、この死神の女の心は、深く繋がり合ってるんだって。
だからこそ、聖夜の死神と俺に、聖夜の奇跡は起きたんだって俺は思うのさ。
神様が、サンタクロースが、こんな俺なんかに、奇跡という名の一度限りのプレゼントをくれたんだよ、きっと。
一度限りにして、ただ一つだけ心から願った想いの奇跡を。
「こ、光一、その……、私達の関係は……、所謂、こ、恋人、というものなのだろうか?」
緊張気味に告げる彼女。
「好き合う人間の男と女は恋人同士なのだと聞く。私は死神だが女で、光一は人間だが男……だ、だから」
この一年、君だけを想ってきた俺は、君以外の女性を見る事は無かった。
叶わぬ恋、永遠に、死ぬまで秘め続けるだけで終わっていた筈の恋が、今この時、この瞬間、奇跡と成って実った。
「ああ、という物じゃなくてね。正真正銘、君と俺は恋人同士だな」
新しく産まれた道。この新しい道を作る切っ掛けをくれた神様なりサンタクロースなりに感謝しながら、俺は、彼女と俺の関係を、自らの意思で確定させた。
「そ、そうか……、私と光一は恋人同士か……」
そう、それ以外に、君と俺の関係は無いんだよ。それ以外に君と俺の在り方は無いのさ。
「そうだよ、君と俺は恋人だ──運命と奇跡で結ばれた恋人同士なんだよ──」
確定させた関係のままに、俺は彼女の両肩を掴むと。
「んんっ──?!」
そのまま彼女をベッドに押し倒してキスをした。
彼女の青みを帯びた長すぎる黒髪がベッドで渦を巻いていた。その黒い渦の流れを強引に変えてしまうかのようにして彼女を押し倒していた。
我慢出来ない。我慢なんて出来る物か。だって、君に取ってはついさっきの出来事でも、俺に取っては一年と待ったこの時なのだから。
「んっううう~~?!」
彼女は突然のキスに驚いたようで、俺に唇を塞がれたままくぐもった声を上げる。
求めていた。恋い焦がれていたこの一年の想いを込めての口付けを、拗らせていた愛情を、俺は彼女へと贈る。
一年、一年君を想い来たのだから、想いが弾けて爆発しても、それは宜なるかな、だ。
「んう……、ふ……、んちゅ……っ、こ、こうい、ちっ、んン──んちゅ」
初めてのキスだというのに、ただ触れ合わせるなんて物じゃなくて、彼女の唇の中へと強引に舌を押し込んで、彼女の舌に俺の舌を絡まらせる、ひどく身勝手で居て深くて濃厚なキスだった。
わずかに戸惑いを見せる彼女だったけど、それも恋人ならと直ぐに受け入れてくれたようで、逆に俺の口内に舌を入れてきて、俺と彼女は舌を絡め合わせた。
唾液を擦り付け呑ませ合い、こくこくと喉を鳴らせて嚥下して。
歯茎をなぞり、口腔内を舐め合い、舌の裏側をお互いに想いを込めてなぞらせながら、そうして再び舌は絡み合う。
「んっ ふむぅ、んんっ、こう、いち」
「う、あむ、んちゅっ、死に、がみっ」
俺は彼女と逢えなかった一年を埋めようとするみたいに、舌を絡ませて彼女の唾液を飲んだり、自分の唾液を送り込んだりと深く深く口づける。
ああ、そうさ、俺はこんな瞬間を、君とのこの瞬間を、一年間求め続けていたんだ。抑えられる物か。抑えられてたまる物かよ。
「んっ、んんっ」
叶わなかった。本当ならば叶う筈の無かった想いの成就。叶うはずの無かった口付け。叶うはずの無かった彼女との唾液の交換と、舌を絡ませるという深い深い交配。
死神の女の唾液の味は人間と同じで甘酸っぱく、舌は温かくてぶよぶよして艶めかしい。人間と何ら変わらない温もりが此処にあった。
舌を絡ませ合い、歯茎を舐め。彼女の歯と口内を舐め尽くし、彼女の舌を俺の口内へと導き入れては同じ事を繰り返す。
甘く、切なく、でも確かな口付け。22歳だが精神は23歳の俺の、人生初にして、初めてのキスを、初めて恋する彼女と行えるなんて。クリスマスに乾杯だな。
そうやって数分の間必死に彼女の唇を求め続けたあと、ゆっくり唇を離すと。
彼女の唇と、俺の唇の間を、混ざり合った唾が銀に輝く糸を引いて、つーっと伸び、架け橋のように繋いで落ちていった。
垂れて消えた銀色にして透明の糸は、俺と彼女が確かな口付けを行った証。
「こ、こうい、光一……、わ、私は、私はキスをするのは、その、は、初めてだが……。き、キスとは、このような舌を絡め合うものなのか?」
問う彼女。相変わらず頬は真っ赤だ。可愛らしくも美しい彼女の頬のその薔薇色は、とても男心を擽る物だった。
「俺も、口付けなんて初めてだよ」
したことは無いけど、見たことはあるという彼女は、キスとは唇を触れ合わせるものではないのか? と、紅潮した顔で恥ずかしげに聞いてきた。
そういえば君は初めて会う男──俺の前で、「暑いから」と平気で裸になるくらい、男と女の関係について知らないんだったね。一年振りだけれど、君との全てははっきりと覚えているよ。
その暗い青色のコートの下が素っ裸なのも、ね……。
「こういう深いキスは、愛し合う男と女がするものなんだよ。俺は君が好きで、心の底から愛しているからしたんだ。勿論、君の言う触れ合わせるだけのキスも好きな相手だからこそするんだけどね」
世の中には軽い感じでキスをする人もいるけど、俺がしたいのは君という一人の女だけさ。
これから先も君だけとしかキスはしない。未来永劫に誓ってる。死んで彼女にあの世へと連れて行ってもらったその先でも、俺は君だけを愛するんだと。
「な、なるほど、偏にキスと言っても色々有るのだな。し、しかし光一、おまえはその、それほどまでに私のことが好きなのだな。この様な熱く深いキスを行えてしまう程に、嬉しい、ぞ?」
ああ、好きだ。佐野光一は君という、名も知らない死神の女を、この世の誰よりも愛してる。奇跡を起こして、新しい道を作ってしまうくらいにね。
「ああ、というより君を好きな俺の気持ちは こんなキス一つで表せられるものじゃない」
あんなのは君を求める意識のほんの触り程度に過ぎない。
この一年、君を想い続けた俺の恋心は、あんなキス一つで表現できる物じゃ無いから。
「そ、そんなにか」
驚きを持つ彼女。俺の君を喪ったという後悔に苛まれた一年を知らない彼女からしてみると、俺との恋は始まったばかりだから、そう受け止めるのが普通かも知れない。
だが、俺は一年以上君を愛してきたんだ。だから。
「そう、そんなにだ。言葉に尽くせやしない。言葉で表現は出来ない。だから俺は……、俺はもっと君を愛したい。君と、君と愛し合いたい」
「愛し、合う?」
彼女はよく分からないといったように首を傾げる。
普通なら、この流れから何を指し示しているのか分かりそうなものだけど、やっぱり死神にはそういったの無いのか?
ああそうだよな。君はあの時、死体すら残さずに消滅した、正真正銘の死神だものな。
ここは率直に言うべきかな?
「君と愛し合い抱き合いたい、つまりその、性交……とか、セックス……とか、そういうのだけど……、その、分からないかな?」
ここまでハッキリ言うと彼女の顔色が変わった。
恥ずかしそうでもあり、また憤慨しているようにも見える。
「ば、バカにするなっ、私だってそれくらい分かる! 人間の男と女が行う番い、まぐわい、生殖を行う行為だっ!」
せ、生殖行為?? いや、確かにそうなんだけど、間違ってはいないんだけど、人間以外の動物みたく言われても困るな……。
「光一は私を何も知らない死神だとでも思っているのか?!」
変わらず顔は真っ赤。でも怒る彼女。
だけども、彼女は抱き合う行為を生殖行為という面でしか知らないみたいだから、少し補足して説明してみた。
「ご、ごめん、生殖行為ってのは合ってる……けどね、それと同じくらいに深く愛し合う男と女がする行為でもあるんだ」
「深く、愛し合う、男と女? 生殖行為だけの意味ではないのか?」
やっぱり知らなかったみたいだ。当然か。彼女は人間じゃ無く死神。人間の俗世について深くは知らなくても然もありなん。
「うん。子供を作るというのは間違いじゃ無いんだけど、愛し合う意味こそが主目的な行為だと俺は思ってる」
人間の男と女に取っては単なる生殖行為じゃ無い。
セックス、愛し合うってのは、とても大切で尊くて、唯一人の大切な相手と行う行為なんだ。
勿論、世の中の全員が全員そうじゃないけれど、少なくとも俺と彼女の間ではそうだと思う。
俺が彼女以外の女性を求めるだなんて事、永劫に無いし。
「愛し合う男と女が、お互いの愛を高めて膨らませ合って交換し、求め合う……。それが交接、性交、セックスの、もう一つの意味であり、答え、かな」
「そ、そうなのか?」
「そうさ、愛し合う男と女がセックスをして、その結果で二人の愛の結晶である子供ができるんだ……つまり、もっとも強くて深い愛情表現ってわけだな」
ああ本当に君を求める想いが暴走しているなと感じるよ、自分自身でね。
こんな恥ずかしい事を、何ら恥ずかしげも無くすらすらと口にしてしまえるんだから。
一年前の俺では不可能だった事を、一年後の俺は口に出来る。
この一年、俺はどれ程、彼女を想って生きてきたかを理解させられる。
そんな俺に彼女は、今度は俺の目をジッと見つめて、呟くような声で応えてくれた。
「それならば光一……私も、おまえと愛し合ってみたい」
「いいの?」
「あ、ああ、私は光一が好きだから」
自身の胸に手を当てる彼女。
そして、俺の胸を触れる彼女。
「そして光一は私が好き……、……私と光一は愛し合っている。ならばこそ、私と光一は愛し合うべき、だと、セックスを行うべきだと私は思う……」
恥ずかしげに、でも自信を持って答える彼女に俺は。
「ああ、そうだな。そうだね。俺と君は愛し合ってる。だから──嬉しいよ……こんな、幸せな事は無いな……。俺も、君と、深く深く、どこまでも深く、愛し合いたい」
叶わなかった筈の想いを遂げる。
この一年を後悔のままに歩み、そして再び巡り会えた奇跡と共に、俺は君を愛したい。
「光一……」
「服、脱がせてもいいか?」
「いい、ぞ」
俺は、ベッドに座る彼女と向き合う形となって、彼女の青っぽい黒といった喪服の様な衣服のボタンに手を掛け、一つ一つ外していき、ボタンを全部外すと服を左右に開いた。
「うわっ!」
「ん? どうしたのだ?」
左右に開かれたコートの下は、シャツどころか、ブラジャーすら着けていない素っ裸。
服を開いた瞬間には、程よい大きさの彼女の胸が、ぷるんと顔を覗かせた。
「いや、改めて見るけどコートの下がもう裸ってのが不思議と言うか、そのあり得ねーというか」
「うん??」
そう、そうなんだよ。この子、服の下は何も着てない裸なんだよ。
一年前に俺の部屋が暑いからって服を脱ぎかけて、下に何も着てないの見てたからよく覚えてるけど、改めて見たらすげーな。分かっては居ても少し驚きはするってもの。
「な、なあ、おまえ、なんで服の下に何も着てないんだ?」
以前は聞くのに抵抗があって聞けなかったけど、彼女と恋人になれた上に、これから性交をしよう、愛し合おうという状況だから聞きやすいというのもあるので、一応聞いてみた。
「ん? なんだ? これ以上服を着ないといけないのか? そんなに服を着たら暑いだろう?」
「あ、暑いって……」
「それに、そんなにいっぱい着込んだら邪魔だ」
どうも死神というのは人間とはかなり感性が違うみたいだ。
考えてみたら、この寒い時期にコート一枚で平気だという彼女にとって、これ以上服を着たら暑いだけでしかないんだろうな。
その上、人間の女性が持つような裸を見られたら恥ずかしいといった感性も持ち合わせていない様子だから、余計に服を着る必要はないってことか。
「じ、邪魔、ね」
「そうだな、邪魔だ」
「は、はあ、そっか」
俺は人間と死神の感性の違いに少し戸惑いながらも、彼女の身体から完全に服を脱がせて裸にさせた。サイハイのソックスだけは穿かせたまま。
「は、あ……」
「どうした?」
「い、いや……」
衣服の下はとても綺麗だった。染み一つ無い抜けるような肌は死神だからだろうか色白で、枕を背にしている彼女の膝下まで届くほどの真っ直ぐな長い黒髪は、腰から下の毛をベッドの上で渦巻かせている。
胸は大きくは無いがけして小さくも無く、程よい大きさで、緩く膨らむ胸の実りの頂点に桜色の乳首と乳輪が花開かされていた。
その乳首の上を垂れ下がる横髪が隠し、すらりと伸びた手足も想像以上に美しく、限りなくモデル体型に近いと言えるだろう。
美しい顔立ち、美しい髪、美しい胸部、美しい手足、そして隠さずに居る秘所、その全てが見かけは俺と同年代の女な彼女の扇情さを引き立て、この世ならざる美を造り上げていて。──ああ、そうだ彼女はこの世ならざる存在、死神だったと思い起こさせた。
「き、綺麗だよ、凄く……きっと、死神の中でも君が一番、綺麗なんだと……、思うよ」
思うままを吐き出した俺に、彼女は瞳を泳がせながらそんな事は無いと否定する。
でも、俺は思うのさ。間違いなく、おまえは最高に美しい死神だって。
◇
続いて自分の服も脱いで裸になる。
上着を脱いで、シャツのボタンを外し、上半身を裸に。
膝まであるグレーの靴下以外は全裸の彼女は俺の傍らでそれをじっと見つめてくる。見られるの少し恥ずかしいな。
彼女の様な美しさや光る物を持っていない、所謂俗物な普通の男の俺としては。
「こ、光一も、良い体つきをしているな……おまえの身体を見ていると、その、唯でさえ熱い胸がもっともっと熱くなって、ドキドキとしてくるぞ、コドウが止まらない」
世辞じゃ無い。世辞を言えるような娘じゃない事は知っているから、これはきっと本心なのだろう。
しかしだ、美しい君と比べると俺なんて平凡だぞ? けど、嬉しいね。愛してる彼女にそう言われるのは。
俺は続けてズボンのベルトを緩めて、ホックとジッパーを外し、下ろし、ズボンを脱いでいく。
序で下着を脱ぎ捨てて裸になる。
彼女の前で裸になる。彼女と二人生まれたままの姿に。
恥ずかしくはあるけれど、それが叶う今が嬉しくて仕方が無い。
「こ、光一、なんだそれは? おまえの股間の肉が、その、大きくなって、立っているぞ?!」
「えっ? あ、ああ、そりゃあ大好きな君と愛し合えるってなったら、俺のモノもこうなるって」
「愛し合える…… 性交するからそうなる……むう見知ってはいるが、どうしてなのだ?」
「どうしてって…… 性交がどういうのか知ってるって言ってたじゃんか」
「生殖行為という以上のことは知らないぞ。無論、死神は生殖行為などしないからやり方も知らない」
そういうことか。彼女は知識として知ってはいても、やり方とか身体がどんな反応をするかとかは知らないんだな。
死神に性行為が無いっていうなら尚更だ。
「ええーっと、俺のモノ、男性器、男根、ペニスが大きくなってるのは、簡単に言えば君と性交する為の準備みたいなものだな」
それがペニスだという事は知っていると差し挟んできた上で彼女は。
「準備? では光一は準備が出来ているということか。なら私の準備はどうすればいいのだ?」
女性視点での疑問をぶつけてきた。何百、何千と、死神として人間をあの世へと送ってきた彼女。そんな彼女もこれが初恋。純情さんなんだなあと思う。
「それは今から俺がするから任せてくれ」
俺はそれだけ言って、彼女をベッドに寝かせる。
そうしてベッドに仰向けになっている彼女に寄り添うような感じで横になると、閉じている彼女の足を開かせて、彼女のてらてら光る美しい股間の割れ目を指でなぞった。
「はああっ……ああううっ! な、なんっ……、だっ……、なん、だ、これ……は……? 光一……っ 何なのだ……っ これは……?」
きっと彼女はココを触ったり、自慰なんかもした事もないだろうから、性の感触というのは初めてなんだろう。
その初めて味わう感覚に、彼女は戸惑いと驚きが混じったような声を上げて俺の顔を見る。朱色の頬は益々色付いていた。
こすこす──遠慮なく陰唇周りを優しくさすりこする。くちゅくちゅと液が漏れてくる。
「ふああっ!……っひ、ううっ!」
一年前の俺が爪を切っていて良かった。彼女のこの柔肌を傷付けたくないから。
彼女のここは人間と同じでとても柔らかい。触れたことは無いけれど人間の女性その物と同じなのだろう。
「どうだ? ココ、気持ちいいだろ?」
「う、あっ、き、気持ち……いい? そ、そう……だ……なっ……気持ちいいっ……ぞ。うう、あ……気持ち、いい……何故、こんなに、気持がいいんだっ……?」
身体を少し捩らせる彼女。ああ、感じているんだ。
「女の子はね、ココを触られたら気持ち良くなるんだよ。多分、人間とか死神とか関係ないんだと思う」
「そう……、なのか…… ああ……ぅっ!」
俺は割れ目をなぞっていた指を、潤い始めた膣口に差し入れて、傷つけないように注意しながら撫でる感じで彼女の膣内を擦る。
「はあっあ、ゆ、び、光一……のっ 指が……っ 私の……、中に……っ」
「きちんと中をほぐしてないと痛いからな」
「痛……い……? 性交は……セックスとは、生殖行為とは、き、気持ちいいのではっ……ないのか……っっ?」
「勿論だとも。気持ちいいよ。って言っても俺も初めてだからホントは良く知らないけどさ。でも初めてする時には大抵の女の子は痛いらしいから、ココをほぐしておくのが大事なんだよ」
「そう……か……っ」
そうやって彼女と言葉を交わしながらも、中をほぐし、愛撫し続けていると、次第に粘り気のある愛液が湧き水のように出てきて、襞を擦る俺の指に絡みつき、やがては膣口から溢れ出して彼女の股間を濡らしていった。
「ふあ……ぁ……、光一……身体が……熱い……っ」
普通に呼吸をしていた彼女の息も、荒く熱いものに変化してきた。
そろそろ良いのかな?
俺はいけそうな感じになってきたところで彼女の膣に差し入れていた指を引き抜いた。
「ふあっ……ん、光一……?」
「もういけそうな感じだ」
べっとり糸を引いている指先。愛液の付着した指を口に入れて舐め取りながら、愛撫を止められたことに説明を要求しそうな彼女に準備が出来たと伝えた俺は、一度身体を起こし彼女の脚を大きく開かせてその間に身体ごとは入り、彼女の股間に自分の腰を寄せて、いきり立つ俺自身を彼女の割れ目に数回擦りつけた。
「んっ、こ、光一……あっ」
「わかるか? コレを今から君のココに射し込むんだ」
「その、ペニス……、その、光一の肉の棒を……っ、私の……っ、中に……?」
「ああ、そうして俺と君の身体を一つに繋げる、身体を一つに繋げて愛し合うんだ」
「そ、そう、なのか……、光一……、わかった……っ、早く愛し合おう……」
彼女に最後の確認をとった俺は、すりつけていたモノを、愛液に濡れた彼女の入り口に添えると、腰を前に出した。
ず……ぶぅ……。
「あはぁぁ……ああっ、こ、光一がっ……熱いモノがっ、私の中に……っ、入って……アアっ」
「挿れていっているからっ……ねっ」
びくんと跳ねる彼女の裸身。長すぎる真っ直ぐな黒髪が彼女の身体の下に渦巻いている。
俺は彼女の腰を支えつつ、ベッドに渦巻く黒髪を右手でそっと掬い上げ、彼女の身体の横へと流し置いた。セックスの行為中に絡まったりしたらいけないからな。
亀頭部分が彼女の柔肉に包まれて、温かくも湿った感触を感じた俺は、そのままゆっくりと奥に向かって俺自身を沈めていく。
ずぶずぶずぶ──
くああっ……! き、気持いいっっ!
「んッぅぅぅ──ッ!」
亀頭に続いて竿の部分も彼女の中に入っていく。気持ち良さも一入で、言葉として表現できる物じゃない。
あ、っく、気持ちいいっっ──!
膣内を満たす愛液がモノの進入に圧迫されて押し出され、時折泡立ちながら割れ目の隙間からぐぢゅうと溢れ出てきた。 一つに成れていく幸せを噛み締めながら奥へと進みゆく。
(ん?)
竿の中程までが入ったところで急に引っ掛かりを感じて進み辛くなった。
これが世に聞く処女膜って奴か? それとも単に肉の襞が俺を圧迫してきているだけなのだろうか?
何れにしても、これを抜けるには彼女に痛みを与えるだろうな。それでも今の俺に躊躇いはない。
彼女と早く奥の奥まで一つになって愛し合いたいから。
覚悟を決めて腰に少し力を込めた俺は、彼女の奥まで一息に刺し貫いた。
ずぶぅッ ぶち……、何かを破り裂き切る感触がモノを通じて伝わってきた。瞬間──。
「んあああ~~ッッ!!」
背を仰け反らせて彼女が叫ぶ。絶叫だった。女性のこんな声はそういったビデオでしか知らない俺に取っては少し慌てさせられる物だったけど、しっかりと彼女の身体を抱き締める。
ペニスの根元までを彼女の膣内に埋め込んだ俺は、切っ先を最奥の奥まった行き止まりへと差し込み、彼女と股間を重ね合わせたまま、その背に手を回して彼女の身体を抱き起こす。
痛いか? とは聞かない。彼女の声からそれは分かっていることだしな。
それに、この優しい死神は無理して笑って「痛くないぞ」と言いそうだ。
「全部……んう……、入ったよ……俺のペニスが、君の中に、君の奥の奥まで入ったよ」
だから俺は事実だけを語りかけるように伝えながら、彼女の背に流れてベッドに広がっている長い髪に指を絡めながら撫で梳いた。
膝よりも長い髪の毛は想像以上にしっとりと、それでいてさらさらしていて何回撫でても指に引っかかることなく俺の指の股を擦り抜けていく。
その彼女の髪に鼻を埋めて匂いを嗅いでいる俺の身体を、彼女も優しく抱き留めてくれた。
「ああ……光一が、私の中にいるのがわかる……ぞ……大きい……奥まで、私の奥まできている……あ、ああ光一っ」
少しの間、彼女とそうしてじっと抱き合ったまま、髪を匂ったりキスをしたりしていた俺と彼女。
会えなかった一年分。後悔の一年分を、彼女の身体で感じたい。
俺の欲しかった、俺の求めていた温もり。俺の愛する死神。
もう、何処にもいかないでくれ。もう二度とこの手から離したりしないから。もう二度と君の忠告を無視したりしないから。だから俺の傍に、君の傍に。
やがて彼女と共に再度ベッドに横たわると、ゆっくり腰を動かして、抽挿を始めた。
「ああ……っ……はあっぅぅ……ああっ、こう……いち……っ」
俺のペニスが彼女の膣内を出たり入ったりしながら襞を擦る。こすれ合う俺と彼女、深く触れあう俺と彼女。
二度と有り得よう筈もなかった彼女との深き触れ合い、彼女の口から漏れる切ない声。
ああ、聞きたかったんだその声を。
感じたかったんだ君の温もりを。
心が求める、身体が求める、俺の美しき死神よ。この腕の中で永遠に。
そして死のその時、俺を共に連れて行ってくれ。
「あっ……ぁぁっ……んうう……こう、いちっ」
「ああ、気持ちいい、……君とこうして、愛し合えるだなんて、俺はなんて幸せなんだろうなあ……」
「私も……だ……っ こ、こういち、と……っ、愛し合えて……っ、しあわせ……だ……っあ、ああ、は、あァう、こ、光一、こうい、ちっ」
腰を前に押し出し、亀頭が子宮口を押し上げるほど深くまでを挿れると、ペニス全体が彼女の柔く暖かな膣の中に埋め込まれて、俺の股間と彼女の股間がぴったりくっつき。
愛液がびちゅっと放射状に押し出されて、互いの股間や脚をべっとり濡らしていく。
その愛液の中にはもう既に漏れ出ている俺の先走りの液も混ざり込んでいる事だろう。
俺と、彼女が、混ざり合う……いい、響きだな。
「はあっ……、ああ~~っ、あぅぅぅ~っ」
全身を電気が駆け巡るような感覚と背筋がぞぞっとなる感覚が貫いていく。
ペニスに感じる襞のざらつきと温かさ。
ぬめり絡まる愛液が肉の中にまで染み込んでくるような感触。
「あっ、ああん……っ あ……っ、こうい、ちっ、きもち、いいぞっ、こ、これが、愛し合うっ、なのかっっ?」
「ああ、そうさっ、これが愛し合うって事だよ、身体を重ね合わせて、心を重ね合わせて、互いを想い愛し合う、お互いの好きを伝え合う尊い行為なんだよっっ」
「す、き……。そ、うだっ。わた、しは、光一が好きだっ、光一、好きだ……、あ、愛しているぞ光一……っ」
「俺も、俺も君が好きだよっ、君を愛しているよっっ」
切なく喘ぐ彼女の顔の周りに広がる艶やかな長い髪。
程よく実った二つの胸の膨らみは、ペニスを突き込む振動に合わせてぶるんぶるんと震えている。
触り撫でると柔らかく。両方を外回りに揉みし抱くと。
「あっああ、こ、こういちっ、む、胸っ、そんな揉みし抱いてはっ、ダメ、だっ」
きっと気持ちいいのだろう。俺は右胸の桜色の丘を、その乳房ごと口に含み吸い上げる。
ちゅううっと思い切り。
「はっあうううう、こ、こういち……お、おま、え……赤子のよう、だ」
彼女はそんな俺の頭を優しく撫でてくれる。母親を求める赤子の様な俺を。
口の中では勃起している桜色の乳首をころころと転がしては弄びながら、彼女の母性を求める。
「はうう、こ、こういち……おまえは赤子か……?」
その言葉に一度右胸を解放しては、俺の唾液でびしょびしょに濡れた乳房を一舐め。
「ひゃあん、こ、こらっ」
思い切り吸い上げてみた右胸には俺のキスマークがついているかの様に色が変わっていた。色白な彼女の肌だとよく目立つ。
「次は左」
「え? ひゃうん」
くちゅ、ぺちゃり。左胸への口付けの音と、吸い付く音。濡れた……音。
ちゅうう。
「ん、んんんっ、に、人間の、母親とはっ、こ、この様な感じなのか?」
さあどうだろう。俺は男だから分からないし、大人になっておっぱいを吸った相手は君が初めてだから。
君以外の乳房を吸う事もこの先無いしね。ああ、でも甘くて美味しいよ。たとえミルクは出なくても。
ちゅうちゅう。
「はあっ、こら、おまえ赤ん坊、かっ、はああっっ」
赤ん坊じゃないけれど、君も気持ちいいだろう? 感じているんだろう?
このままずっと乳房にかじりついていたいね。そんな気分。
でも、とそっと乳房を解放してあげると、先ほどよりもぐっと艶めかしい彼女の姿になっていた。
肌に浮かび上がる汗は、その一粒一粒が光り輝いているように見え、赤みを通り越して夕日の色みたいになっている頬は熱を発している。
汗を吸って黒みを増した輝く長い髪は夜のとばりの様に美しく、俺の身体を挟む脚は緊張に力が入っていた。
「凄く綺麗だな、君は……」
いつまでもこうしていたい。こうやって君と一つになっていたい。君の喘ぎを聴いていたい。
幾度となろうか思いを馳せる。もう逢えない、逢えなかった筈の死神の少女との思わぬ再会と、こうして結ばれた奇跡に最大の幸福を感じながら。
ただひたすらに睦み合う俺は、快楽を感じたいからというよりも、幸せを感じていたいが為にずっと抱き合っていたかった。
けど、どうしてもその時は訪れるもので、また我慢することも出来ない。
いや、その時が訪れたならば、また再開させればいいだけじゃないか。
俺と彼女はもう離れられない一つとなったのだから。
擦れ合う肉と肉の感触は嫌でも俺を高みへと導いていく。
「あっ、あっ…っ、あァ…! こう、いちっ! んはっああっ……っっ、」
彼女の方も言葉には出さないけど、徐々に締まり狭まってくる膣肉が絶頂の時が近いことを差し示している。
俺は一度大きく腰を引いた。この後どうするかはもう決めている。
ギリギリまで腰を引いたことで膣から抜けかけていたペニスを、俺はもう一度彼女の膣奥深くまで入れて根元まで射し込む。
「はああ──あううううっっ!!」
股間同士を隙間なく重ね合わせたままに、亀頭の先で子宮の入り口を捏ねてこじ開けた。
「ああっ、ああぅぅっ 光一っ……光一ィィィ!!」
そして、最後に俺を呼ぶ彼女の身体を強く抱き締めながら、俺は力と想いの限り、込み上げてきた精を死神の彼女の子宮の中へと解き放つ。
「くうっっ」
「ああアアあァァぁぁ────―ッッッ」
ドクンドクンとコドウの様に、俺の精が彼女の中に解き放たれた瞬間、彼女の身体が大きくビクンッと震えて俺の身体を挟み込んでいた両脚が伸ばされた。
「~~~~───!!!」
声も無くの喘ぎ。声無き絶頂。伸ばされた両の脚だけが、グレーの靴下に包まれた両の脚だけが、物を言うかの様にして‟ビクンっ、ビクンっ”と痙攣し、彼女の膣の肉はぎゅううと強く強く俺のペニスを締め上げる。
「ああっ……はぁぁぁ……ァっ……な、何か……が……っ……っ、私の中にっ……はいって……っ……くる……っ、どろっとした、何かが、光一から出てきて、私の、中、へ、っは、うう」
「これが精子だよ。君の言う男と女の生殖行為の果てだ……これが俺の精子で、君は俺の精子を受け入れている……っ」
「せい……し……? これが……精子っ……とても……あついもの……っ……なのだな……っ。っ、そ、うか、私、は、光一と、生殖行為を……したのだな」
「えっと……、い、嫌……だった?」
「いいや、嬉しいよ。心がとても温かく充足している……そうか、私もまた光一を求めていたのだな」
俺の精子を受け入れている死神の彼女は微笑を浮かべている。
その笑顔は死神というより、天使に見えた……
「これが、はあ、はあ、愛し……合う、」
「そうさ、これが愛し合う、だ」
後は言うまでもない事だな。
「光一、私は光一ともっと、愛し合いたい……」
「俺もだ。俺ももっと君と愛し合いたい」
一度では終わらない愛し合うという行為は。
「ん…ァあ、あ、こうい、ちっっ……あァ、あはぁっ、ア……ああ」
「ん、くう、愛、してる……よ」
二度、三度、十、数えるのも無意味なくらいに行われ、そして。
◇◆◇
数年後 12月24日クリスマス・イブ──
「あ、佐野光一!!」
「ヘエ~ 今日発売なんだ新しいアルバム!!」
「この人っていいよね~」
「うん。私、ジャズってあんま聞かないけど佐野光一は好き~~なんかすっごいせつないっていうか~~~~」
俺が仕事帰りに彼女と待ち合わせした場所にいたとき、丁度通りを歩いていた2人組の女性が、今日発売の俺の新作アルバムの話をしていた。
知らない人に自分のことについて話をされているのはなんだか変な感じだな。
数年前には考えられなかったことだ。
1999年12月24日のJAZZコンテストは逃した。
それは仕方のない事だ。会場に行かなかった、間に合わなかったから。
でも、そのお陰で俺は掛け替えのない物を手に入れた。
夢よりももっと大切な──
「光一!」
そんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。
誰かなんて分かっている。
「おう」
俺が振り向くとそこには膝下まで届いている青みがかった長い黒髪に、髪と同じ色のコートを着た女が立っていた。
この時期特有の冷たく乾いた風が、彼女の長い髪を大きくなびかせた。
「本当に大丈夫なのか? つあーとか言うのの準備で忙しいのでは?」
彼女は俺の恋人であり、将来俺が死んだとき俺をあの世に連れて行ってくれる死神だ。
死の運命が消えた以上、病死か寿命か、とにかく俺が死ぬそのときまで俺と一緒にいないとダメなんだそうだ。
恋人か、恋人っていうのは正しくないな。恋人だったのは少し前までのこと。
死神である彼女には戸籍がないからできないだけで、俺と彼女の間ではもう結婚しているからな。
俺と彼女の薬指に付いているリングがその証さ。
当然だけど俺と彼女は一緒に住んでいる。朝は共に起き、食事はまあ彼女は缶コーヒーが殆ど。
仕事には付いてきてくれ、夜には一緒に夕飯を食べて、その後はたっぷりと愛し合う。
まあ、待ち合わせなんかしなくても夜遅くには家に一緒にいるわけだ。
「あぁ、無理言って、スケジュール空けてもらったんだ」
それに今日は記念日だからな。
「俺らにとって特別な日だからな、クリスマスは」
「そう、だな。……うれしい」
照れる彼女もまたかわいい。 クールで無表情が多い彼女は夜の時間以外は中々照れてくれないんだ。
「それに──―家族揃っての初めてのクリスマスだしさ」
俺は彼女の腕に抱かれている子供を見て言った。
彼女の腕に抱かれている子供、赤ちゃん。誰の赤ちゃんか? 当然、俺と死神の彼女の間に産まれた赤ちゃんに決まっている。
この子はつい先日生まれたばかりの、俺と彼女の間にできた子供なんだ。因みに女の子。
彼女が妊娠したと分かったときは、誰よりも彼女自身が驚いていた。
『まさか死神である私が人間の、光一の子を身籠もるとは……』
ってね。
大昔に人間と死神の間に子供が生まれたことがあるっていう話しを聞いたことはあるって言ってたけど、それは奇跡的なことなのだという話しだった。
もちろん彼女は。
『絶対に産むぞ! 私と光一の子なのだからなっ!!』
そう意気込んでいた。
奇跡、か……奇跡、ね。
あはは、どうやら俺はとことん神様とサンタさんに縁があるみたいだ。
いや、ここまで奇跡をくれた以上、さんじゃなくてサンタ様か。
「あ、そうだ光一、なにか飲まないか、私は今日は紅茶がいい」
照れ隠しなのか少し焦りながら言う彼女。
ただ、紅茶はない。
直ぐ脇に設置してあった自販機にお金を入れて、俺が購入したのは。
「はいはい……」
ピッ ビーッ ガタンッ
「あっ!?」
俺が押した自販機のボタンはもちろん。
「はいよ」
「…………」
コーヒーだ。
「ま、待て、私は紅茶と、」
「ダメ、今日は絶対にコーヒー。それに君もコーヒーの方が好きだろ?」
「う……」
俺は言葉に詰まる彼女にコーヒーを手渡しながら、そっとキスを贈る。
「ん──」
子を産むのは初めてだった彼女。とても痛くて苦しかったが光一が傍に居てくれたから頑張れたと、嬉しい言葉をくれた彼女。
その彼女と俺の子が彼女の腕に抱かれてすやすやと眠っている。
俺は俺の嫁さんである死神の彼女の腕に抱かれている我が子の頭に手を置いて、優しく撫でた。
「こ、光一、メリークリスマスだっ」
「ああ、メリークリスマスっ。俺が死ぬまでメリークリスマスなっ」
「死んだらあの世でメリークリスマスだぞ♪」
「それもそっか。おまえは俺を連れて行くために俺の傍に居るんだもんな」
その頃には俺もお爺ちゃん。死神である彼女は歳を取らない。羨ましい。
「私は嬉しいぞ。この子の成人式や孫の顔まで見れるのだから」
「永遠の命を持ってるおまえなら曾孫、玄孫、来孫とかまで見ようと思えば見れるだろ」
「私も仕事が忙しいからそう暇もない。休みの日には見に行きたいね私と光一の家系の系譜を♪」
俺の嫁さんの死神は、恥ずかしげに微笑みながらお返しのキスをプレゼントしてくれるのだった。
メリークリスマス
短編集内の各お話と投稿予定(未定)の続きやお話で読んでみたい作品はありますか?(ご期待に副える事が出来るかどうか分かりませんが、一ご意見としてお伺いしたいと思います)
-
コードギアス
-
コードギアスR2
-
此花トゥルーリポート
-
FF4×FF6
-
カオシックルーン
-
学園黙示録
-
ルパン三世 ワルサーP38
-
幕末風来伝 斬郎汰
-
ニードレス
-
ヨルムンガンド
-
少女少年
-
北の告発
-
サラダデイズ
-
クレセントノイズ
-
ひとひら(甲斐×理咲の近親相姦物)
-
ESアザーワイズ(戒×瑠璃)
-
遊戯王GX(十代×カミューラ)
-
魔装機神(マサキ×モニカ)
-
椎名君のリーズニングファイル
-
RAVE(ハル×絶望のジェロ)