キスをされている。だけど服が気になって全然集中できない。僕があたふたしていると、服の下に鈴木くんの指が入ってくる。
「ふぅんっ!んっ…」
口が塞がれているので、こもった声しかでない。恥ずかしくなってきた僕は目を閉じて指にだけ集中する。鈴木くんの指は僕の胸の先や湿った部分を優しく撫でている。
「んぅ…」
僕の露出した太もものあたりはもう既に湿ってきてしまっている。あぁ、借りたものなのに汚してしまったな。そう思っていたら、唇から感触がなくなり空気が触れる感覚が戻る。
「あっ…」
思わず声をあげてしまってすごく恥ずかしい。羞恥心なのか興奮なのか分からないけど顔がすごく暑い。そっと目を開けて見ると僕の体をまじまじと見ている鈴木くんが目に入る。流石にこれ以上体をみられるのは恥ずかしくて体をよじる。
「山本さん、服をずらすね」
「うん…」
胸を触れていたときに既にずれていたけどビキニのようなものをさらにずらされて完全に胸元が露出している。さらに下も脱がそうとしているらしいけどなかなか上手く行かないようだ。脱がしやすいように少しだけ腰を浮かしてあげる。
にちゃあ…
そんな音が聞こえてきそうなくらいベトベトになってしまっている。
「うわぁ、糸を引いてるね。」
「ご、ごめんなさい!借り物なのに… あっ洗って返すから」
「洗濯とか気にしなくていいよ。それに嬉しいんだ。気持ちいいってことだよね?」
すぐに言葉が出てこない。気持ちいいんだけどそれを口にするのは恥ずかしくて嫌だ。だから、小さくうなずくだけにする。
「っ…ごめん、我慢できそうにない。」
その後は、なぜか最初よりも激しく求められた。
ーーーーーーーーー
今日は僕の家に鈴木くんが来る。初めてしたとき以来だから汚いと思われないように念入りに掃除した。お母さんが不思議そうにしてたけど適当にはぐらかしてしまった。今日はお母さんは仕事だし帰ってこないだろう。
「あ、もうこんな時間…そろそろ帰るね」
気が付いたら外はもう暗くなっている。鈴木くんを送ろうと玄関まで降りると、玄関が行きなり開いた。
「あら?こんばんわ、その子はお友達?」
ばれてしまった。空いた扉からは不思議そうな顔でお母さんが鈴木くん見ている。帰ると思ってなかったから僕は帰ってきたときの対処を何も考えていなかった。
「えと、えっと…」
「こんばんわ!」
僕はあたふたしていて、鈴木くんは大きな声で挨拶をした後固まってしまっている。なにかしゃべってよぅ。
「あら~」
お母さんはにんまりとした後、僕たちの横を通りすぎていく。
「ごめんなさいねぇ。お邪魔だったかしら?ゆっくりしていってね。あっ、ご飯を食べていく?」
「いっいえっ…僕はもう帰ろうと思っていて、お邪魔しました。」
鈴木くんはそういうと、すたこらと帰ってしまった。どうしよう、にこにこしているお母さんと僕だけになってしまった。
「ねー、愛の彼氏?教えて欲しいなー」
ここまで来たら隠し通すことは無理だろう。
「うん、付き合ってるよ」
始めて見たんじゃないかというくらい、お母さんははしゃいでいる。
「好きなところは?」
「優しいところ…」
こんな感じで質問責めをして来ている。
「馴れ初めは?馴れ初め!」
心臓が跳ねる。絶対に言えるわけがない。心臓の音がうるさいくらい響いている。からからになった喉で
「恥ずかしいから言えない。」
「そっかぁ…ごめんね、はしゃぎすぎちゃった。好きな人とのこと家族には言いたくないよね」
そう言って、お母さんは学生時代の思い出を語っている。お母さんは娘が嘘をついて付き合っているなんて夢にも思っていないんだろう。ただ幸せそうなお母さんを見ていると胸の痛みで苦しくてしょうがなかった。
ーーーーーーーーーー
お母さんは朝からご機嫌だった。お母さんのテンションに少し疲れながら学校に登校する。
僕が教室に入ると少しだけクラスが静かになる。最近は周りからあまり僕に対して関わってくる人が少なくなっている。からかわれたりすることがないから最近はすごく気が楽だし、鈴木くんと放課後に会うのも楽しみだ。
ただ、なんでだろう…皆が僕を見てひそひそと話すことが増えている気がする。今まであまりそういうことがなかったから何か悪いことをしたのかなと思うと憂鬱な気分になる。だからなるべく教室では下を向いて時間が早く過ぎるのを待っていた。
授業も終わり家まで歩いていると誰かが後ろを歩いている気配がする。気になって後ろを振り向くと
「あっ…」
「天音くん?」
天音くんが、ばつが悪そうに立っていた。そういえば最近は鈴木くんとばかりで天音くんとは話をしていなかった。だからだろうか、天音くんと何をはなしていいか分からなくて少し気まずい。二人して黙り込んでいると、天音くんが意を決したように口を開く。
「山本さんが鈴木くんと付き合っているって本当?」
「え?」
天音くんから鈴木くんの話が出ると思ってなかった僕は言葉が出てこない。鈴木くんの話を天音くんにしていないのになんで知っているんだろう?そんな疑問が口から出る寸前、
「でも、山本さんと鈴木くんて接点なかったよね?また、誰かの嘘だよね?」
「違うよ、付き合ってる。」
思わず否定してしまった。
「どうして?」
「それは…なんでそんなこと聞くの?」
「山本さんが好きだから」
気まずくて下げていた顔を思わず上げて天音くんを見る。すごく真剣な顔で僕を見ていた。
「クラスも違うし、今まで全然関わっていなかったのに急にって変だよ。何かあったんじゃないの?それに…」
天音くんはそう言って僕に手を差しのべようとして…
僕は手を弾いていた。
「え?」
「ごめん、鈴木くんに勘違いされたくないから」
天音くんからの好意を向けられても、僕は天音くんと一緒にいるところを見られて鈴木くんから勘違いされたくない。ただそれだけの感想しか抱けなかった。
「ごめん」
「あ…」
一言だけ言うと、天音くんは今にも泣きそうな顔をしてその場を走り去っていく。残された僕はどうしていいか分からず立ち続けることしかできなかった。
家に戻った僕は何もする気が起きなくて、天井をずっと見つめていた。
「なんで、あんなこと言っちゃったんだろ…」
僕はいつもそうだ。相手の気持ちを考えずに言葉にしてしまう。もっと上手な言い方があったんじゃないかと思っても、何度も同じことを繰り返してしまう。誰かと話をするのは好きだ。だけど、自分の言葉で誰かを傷付けるのは怖い。それに、天音くんは僕のことを…
携帯から通知音がする。鈴木くんから、今から僕の家に行きたいと連絡が来ている。その文章を見た瞬間に憂鬱な気持ちが吹っ飛んでしまった。いいよと送ってしまったが、部屋の掃除をしなきゃ。今日もお母さんがいないから、もしかしたらその…するかもだし!
そわそわしながら待っていると、チャイムが鳴る。
「鈴木くん、部屋でちょっと待ってて。すぐに飲み物とか取ってくるよ」
「飲み物はいいよ」
「そう?」
どうしたんだろう?今日は鈴木くんの雰囲気が少し暗い。何かあったのかな?
「今日は山本さんに聞きたいことがあってきたんだ」
「…何かな?」
「山本さんは僕のことが好きなんだよね?」
「そうだよ」
「本当に?」
「…どういうこと?」
僕の声は少し震えていたかもしれない。心臓がばくばく言っている。喉もからからになってきている。
「僕に告白したのは罰ゲームって本当?」
「…」
何かを言わなければいけない、だけど頭が真っ白になって声が出ない。
「何も言ってくれないんだ。本当のことなんだね。」
返す言葉が見つからない。だって全部本当のことなんだから。
「君のクラスの子が教えてくれたんだ、遊びだったんだって。こういうことを何度もしてて酷いと思ったから教えてくれたって言ってた。」
「あ、遊びじゃない。好きなのは本当で…」
「じゃあ、なんで写真なんか撮ったりしたの!!」
「…写真?」
今、僕はすごく情けない声が出ていたと思う。心臓が破裂しそうなくらい音がしていて、吐きそうで、視界が涙でぼやけてきている。
「これのことだよ」
鈴木くんが見せてきた写真は始めて鈴木くんとしたときの写真だ。もう、言い訳なんてできるわけなかった。
「こんな写真、君以外に撮れないよね?」
「…」
「何も…言わないんだね。この写真を皆にばら蒔いてたんだろ。もういろんな人がこの写真のことを知ってる。ひどいよ!好きだったのに!」
「あ、あ…ごめ、ごめんなさい、でもこれは」
「もういいよ、二度と僕に近づかないで。さよなら」
「ち、違うの!これはっ!」
「何が違うんだよ、この嘘つき」
そう吐き捨てると鈴木くんは部屋から出ていく。部屋には僕の嗚咽だけが響いていた。