現実というのはいつも唐突に突きつけられる物だ。
目の前で起こっている光景を覗きながら、大輝はそう思った。
(なんだよ……これ……)
「おぉ~、それやば」
──ブポッ、ジュポッ、ジュプッ。
耳を澄ませば、快感に喘ぐようなオタ友の声と共に、何かをしゃぶる様な音色が響いている。
「んふふふ~。お前らこれ好きだもんな。んぶっ、じゅるる……ほう? ひもひいい?」
「最高でござるなあ。伊織殿のフェラチオはプロに匹敵しておりますぞ」
「鳥海、それどこの店? ちょっと比べてみたくなるじゃん」
「では猿橋殿にも後でお教えしま──痛っ!?」
「いってえ!」
「お前ら、オレがフェラしてる時にそんな事いうの失礼だろ」
伸びてきた黒髪を揺らす伊織と呼ばれた女が、15cmを優に超える二本のチンポを交互にしゃぶりながらも、不満そうにそのデカチンをぎゅうっと握り抗議していく。
自身の奉仕よりも気になる事があったのが悔しいのか、その力加減は少し強めだ。
すると、どこか三枚目と云った風体の猿橋が口を開いた。
「悪い悪い。でもちょっと話してただけじゃん」
「お前らが急に舐めてくれって言うからしてあげてるのに……」
「これは失礼を伊織殿。誠に申し訳なく。ちなみに猿橋殿、こういう時はただ謝るに限りますぞ」
「トリはよく分かってるじゃん。じゃあこっちだけシてあげる♡」
チュッと片方のチンポに口づけをし、そのままマーキングするように何度も繰り返していく伊織。
それを受け、如何にもオタクと云った風貌の小太りの男、鳥海が喜びの声を上げる。
「おほっ、チンキスとはやはり分かっておられますなあ」
「そりゃこの手のはよく見てたからな~、こういう時便利だって思うよ。好きだろ? こういうの。でも気持ちいいか? やっぱり手で扱いたり舐める方がいい?」
「そんな事はありませんぞ。伊織殿の様な美女が私のイチモツにキスを捧げる。これほどのシチュが現実になっているだけで素晴らしい物でござる」
「あはは、トリは恥ずかしい事言ってくるなぁ。これでござる口調と見た目さえどうにかすれば幾らでもモテそうなのに」
「はっはっは、難しい事をおっしゃりますなぁ」
チンキスからの亀頭舐め。その間も太い肉竿を扱きながら男をイかせようとする様には、とても元の性を思い起こさせるものはなかった。
「伊織ぃ、俺が悪かったからこっちもやってくれよぉ」
「ん~、ちゅっ……やだ。謝らないで泣き落とししてくるシコ猿にはフェラしてやらない」
「マジかよー」
「女心分かってる相手ならいくらでもシてあげてもいいんだけどな~。ん~、何かチンコの見え方も変わってきたかも。トリの方が男らしくて素敵かな」
「嬉しい事を言ってくれますなあ」
片方には熱心な手コキと舌による奉仕、片方にはチンポの根本を握りしめながらも見向きもしない。どこから見ようとも好色な女の有様だ。
その様子を見ながら、大輝はただ震えていた。
「ごめんなさい伊織の口の方が良いです。だから俺をほっとかないでくれ~!」
「……しょうがないなぁ。はむっ、んちゅっ……はぁ、イカ臭くて、しょっぱくて……ほんっとマッズ♡」
満足気な笑みを浮かべ、欠片も思ってないであろう声色で文句を吐きながら、伊織は二本目のチンポにも奉仕を始める。それもさっきよりもエロく下品に。
先端だけをくぽっと唇で覆い、唾液を潤滑油にしながら舌で丁寧に舐め回してカリを唇で刺激し、時折奥まで咥え込んでは前後に繰り返して、また舐め回す。
何度も、何本も、男のチンポをしゃぶってきたビッチがするような、そんなエロいフェラチオ。
だが大輝は知っている。彼女──百瀬伊織がそんな事をする"女"ではなかった事を。
フェラチオをする側ではなくされる側で、去年までは大輝も含め、四人の"男"でオタク仲間として過ごしていた事を。
──グポッ、グポッ、グポッ。
伊織が二本のチンポを交互に咥え込んでは吐き出す音が室内に響き、漏れる音が男たちの耳を支配していく。
「そんな事したら出ちまうって」
「これはいけませんな、我慢が効きませんぞ」
「んっ、んっ、んぐっ、ぷはぁ……射精させる為にやってるんだから当然じゃん。時間だってそんなにないんだから早くイっちゃえって」
喋っている合間もシコシコと高速でチンポを扱き、舌で丁寧に舐め回している。男たちの呻きと共に、部屋に淫らな響きと匂いが充満していく。
それでも彼女は取り乱す事も無く、平然としたまま二本のチンポを弄んでいた。
「じゃあ、こう言ってあげた方がいいか?」
こほん、と小さく咳払いをすると、どこか凛と涼やかだった声が、甘く媚びる物へと変わっていく。
「……ねぇ、早く
淫猥な言葉を吐くと同時、彼女の頭が激しく動いていく。舌と唇と手を全て使い、デカチンからザーメンを絞り出そうと懸命に。
チンポから送られる刺激だけではないとばかりに、音でも楽しませる様に下品なフェラ音を立て、目でも楽しませようと頭を振り上目遣いで見つめていく。
伊織の手や舌の動きに合わせて、男たちの腰も自然と突き出していた。
「うくっ……そのまま……!」
「やべっ、出ちまう……伊織、飲んでくれるよな……?」
「んふふ♡ いーよ、らひて♡」
コクコクと頷くと、伊織は貪欲なまでにチンポに奉仕をし続けていく。
──ドピュッ、ドピュッ。ビュルルルル……!
その姿に限界が来たのか、二本のデカチンポから粘ついたザーメンが勢いよく吐き出され、それを顔に浴びながらも当然の様に飲みこんでいく伊織。ゴクゴクと喉を鳴らすたびに、彼女の表情は蕩け切っていった。
「はぁ、はぁ……はぁ~っ♡ ……くっさくて美味しい♡」
「精液まみれの顔エッロ。マジ最高」
「この雌顔……たまりませんなあ」
「わたしをこんな風にしたのは二人じゃん。スケベ、変態♡」
伊織は顔面にぶっかけられたザーメンを指で掬い、一滴も零さないと言う様にねっとりと舐め上げた。その舌つきも先程までデカチンポに奉仕していた時と変わらない手慣れたものだった。
まるで最初から女として、雌として生まれていたかのように。
その様子を見ながら、大輝はただ立ち尽くしていた。
動くことも静止の声もあげられず、只々幼馴染と友人たちの信じられない光景を見ながら、その股間にテントを張る事しかできなかった。
◇◇◇◇◇
「よく似合ってるな、それ」
「だろ? もっと褒めていいぞ」
20xx年、春。肌寒さの中、暑気と陽射しも少しずつ強くなってきた大学の帰り道。
何処にでも居る好青年といった男──犬飼大輝は、何の気なしに傍らの女性を褒めた。
視線の先にはカーディガンとスカートと云う、何ともゆるふわな服装で歩く女性。彼の幼馴染である百瀬伊織がいた。
そこに、彼らの大学から出来た友人の鳥海と猿橋からも援護が入る。
「いやはや、確かにお似合いですぞ。正に絶世の美女」
「ホントになー。もうマジで女じゃん」
「褒めろとは言ったけど、そんなに女、女って言わないでくれよ……なんかへこむから」
「ははは」
高校まで男として過ごしていた伊織が奇病に罹り、その体が女性のものになってしまったのがおよそ一年前の事。
当然ながら様々な苦労があり、受け入れるには相応の覚悟が必要であったが、それでも本人は女になった事を受け入れていた。受け入れざるを得なかったという側面が多分にあったのかもしれないが。
病というには原因もその一因かも知れない枝葉も判明せず、また思春期から成人前の男子に起こるという限定的な症状。先例もあったのだが、それらには全て、死ぬまで元に戻らなかったという一文が添えられていた。
男に生まれた記憶は捨てられず、されどその体は科学的には99%が女性。残りの1%は科学に絶対がないという不確実性からくる物だ。最早、奇跡を祈る以外は諦める他なかったのだろう。
かくして伊織は女として生きる事を決意する。だからと言って今までの人生や付き合い、はたまた新たに出来た友人との関係が全て断ち切られるわけではない。
そんな訳で彼改め、彼女は、今まで通りオタク仲間と付き合っていた。
「それよりさ、お前ら今回のガチャ回した? オレ迷ってるんだけど」
「私はスルーですかな。性能的には大層強いそうですが」
「俺は速攻回したぜ。……天井って青いんだなぁ」
「サルはちょっとは躊躇しろよ……せめてトリくらい余裕持とうぜ?」
「無茶いうなよ、久しぶりのロリキャラだったんだぞ? けっ、これだからデカパイの民どもは……デカパイの民になってる奴もいるし」
猿橋がジトッとした目で見れば、それを受けた張本人は眉をピクリとあげていた。
「なりたくてなったんじゃないわ。てか、そんなに見るなよ変態」
「見たくて見てるんじゃねえわ。デカすぎて視界に入ってくるお前の胸が悪いんだろが」
「はぁ~? 目線下に向けといてよく言うよ。それに大きけりゃいいってもんでもないんだぞ? これマジで重いんだからな?」
伊織が心底重そうにその胸を持ち上げる。どたぷんと擬音がなりそうな二つの果実は、背が低くなった質量がそのまま纏められたのではという程にたわわに実っていた。
三桁はあるであろう爆乳は、同様に実っている形のいいデカ尻と共に、今の彼女にとって一番の自慢でもありコンプレックスでもあった。
「肩は凝るし、合う下着は少ないし高いし、おまけに男には見られるしで最悪だよ」
「ふむぅ……女性の苦労というのは聞く物ですが、実際に成ってしまうと確かに苦悩が募りますなあ」
「朝の支度とか、鏡見る度にでっか……美人……誰これ、ってなるけど自分だからな~」
「さりげなく自慢しやがったぞこいつ」
「あっはっは、ひれ伏せ持たざる者共よ~!」
「嫌だよそんなん。男のまま巨乳だったら逆に怖いだろ」
「激しく同意しますぞ」
二人同時にうんうんと頷く。
男にとって巨乳というのは、基本的に好ましいものだ。単純なエロとしても、女性的な魅力を感じる部分としても。それが嫌いというのは、何らかのトラウマ持ちか極度の貧乳好きやロリコンくらいだろう。
貧乳はステータスだという言葉も、あくまで巨乳が価値観の優位に立っているからこそ言われる事である。
だがしかし、男の顔のまま巨大なおっぱいが備わった体になれと言われたら、大半の者は頭を下げ許しを請うだろう。あくまでも、女性に備わっているから良いのだ。その胸に、体に触れたいという欲があるからこそ。
「それで大輝はどうだった?」
「えっ!? いや、流石に俺も嫌だよ。デカくても小さくてもさ」
「そっちじゃない! ガチャの話だガチャの!」
ツッコミながらも大輝の足を蹴飛ばす。その仕草は可愛らしいものではあるのだが、込められた力はなかなか鋭い。
「ああ、そっちか……。回したいけど今月そんなに余裕ないしなぁ。おはガチャの一発で引いたらラッキーってくらいで我慢するしかないかな」
「それが良いですな。財布を軽くしすぎてまでやるものではありませぬ」
理性ある者が共感しあう横で、理性の無かった者はどこか諦めきったような目をしている。
弄る機会と見たのか、伊織はニヤニヤとしながら近づいていた。
「それで猿橋くん、今日の夕飯は何だい?」
「モヤシって美味いよな……」
「そっちの二人はこうならない様にしろよー」
「分かってるさ」
「勿論ですとも」
「うるせー、ばーかばーか! お前らもさっさと俺と同じモヤシロードを歩め、ばーか!」
他愛も遠慮もないやり取りは、彼らの関係を雄弁に語っていた。伊織の変異がある前──と言っても大学に入ってからではあるが、こういうやりとりは何時ものことだった。
サークルを探していた伊織と大輝に、見つけたオタク系サークルが合わないと抜けた鳥海と猿橋。
そんな折に偶然出会った事から始まった四人の関係は、猿橋が欲望に忠実に走った後に二人から小言が入り、それを伊織が囃し立てる。あるいは伊織がふざけた後に三人がツッコミを入れるなど、気の知れたもの同士の気楽さがあった。
それ故に少々下品な話をすることもしばしば。だがそれでも、この歳になってから出来た友人としては得難い相手であるようだった。
「そういえばこの後どうする?」
伊織がふと、三人に尋ねていった。
時刻は午後三時。今日の講義は早々に終わり、そして明日は休日。このまま各々で帰るにはどこか物足りなさを感じる時間帯だ。
「犬飼、鳥海、お前らバイトは?」
猿橋が伊織に続けて二人に質問をしていく。その流れは実に慣れたものだ。
今日に限らず、予定が入っていなければ、彼らは自然と四人で集まることが多かった。
「バイトはしておりませんからな。いつでもフリーの身でござる」
「俺はこの後ある。元々早く終わるからシフト入れてたしな」
「ふむ、大輝殿は抜けると。猿橋殿は素寒貧の様ですがバイトのご予定は? モヤシロードから脱せられそうですかな?」
「うっせ、働きたくたって急にバ先にいけるかってんだよ。これだから金持ちは……」
「こればかりは仕方ありませんなあ。私も自分の意思で裕福な生まれという訳ではありませんので」
「けっ!」
不毛な言い争い──どちらが悪いのでもなく、どっちが勝っているのかという物でもないのだが、それでも言葉にせずにはいられないようだ。
実に悲しきは貧しさか。もっともこの場合は自業自得と言っていいだろうが。
「ほーらサールー、ムカつく気持ちは分かるけどそこはぐっと抑えなって。じゃないと……」
「猿橋殿を鑑みて今日は私のおごりで鍋にでもしようと思ったのですが……まぁ、たまには各々でコンビニなりハンバーガーでも食べる事に致しますかな」
「へっへっへ……旦那ぁ、お代は部屋の掃除でもよろしいですか?」
揉み手をしながら卑屈に機嫌を取ろうとする猿橋。
露骨ともいえる変わり様に、残りの三人はどこか呆れながら見ていた。
「ちょっろ……」
「猿橋おまえ……」
「お二人とも、そこはノリがいいと申してあげるべきでしょうな。猿橋殿の心の器を守るべきかと」
「うっせー! そんなもんとっくに割れとるわ! 金と飯とエロより大事なもんがあるか!」
開き直る猿橋に、伊織がにやけながら問い詰めていった。
しかし、そこに非難の色がある訳ではなく、あくまでもも茶化しや悪ふざけの色だけが浮かんでいた。
「金、金、飯! 男として恥ずかしくないのか!」
「男以外の発言は認めねえ!」
「え~ん大輝~、サルが虐める~」
「おまっ、そういうネタだろうが!」
泣き真似をし、一歩引いていた大輝にすがりつきながら伊織がまたもふざける。
それを好機とみたか、残りの二人も乗っかっていった。
「よしよし、あんな事言われて可哀想に」
「オレなんか男じゃないっていわれたぁ~。……もう女だけど」
「昨今のコンプラを考えるに今のはいけませんなあ、猿橋殿」
「おまっ、お前らぁ……!」
「ま、これに懲りたらあんまり調子にのって散財するなよ?」
伊織がトドメとばかりに締めると、ケラケラと笑う四人衆。そのまま彼らは互いの目的地まで軽口を言いながらも共に歩んでいった。
彼らが集まりに使う、鳥海の借りているマンションへの分かれ道。今日は予定がある大輝と予定の無い伊織たち三人が分かれる場所でもあった。
「それじゃ大輝、また後でな~!」
「お先に失礼いたしますぞ」
「じゃな、犬飼」
「ああ、またな。あっ、そうだ伊織」
「ん? どしたん?」
別れる寸前で何かを思い出した大輝に呼ばれ、伊織は立ち止まる。
振り返るとそこには何時も通りの幼馴染の姿。だがその顔にはどこか朱が差しているように見えていた。
「あー……やっぱいいや、また後でな。バイト終わったらそっち行くし」
「おけ。またなー」
少し言い淀んだのち、大輝は手を振った。それを見て伊織は満面の笑みと共に、鳥海宅の方に戻っていく。
それは彼らのいつもの風景。
残り数年、モラトリアムの中で変わる事のない日常だった。
◇
只の学生が住むには少々広く豪華な部屋。マンション自体もセキュリティは万全で、家賃は学生が出す額には見えなかった。広めの一室をゲームなどを置いてゆったりと遊ぶ部屋にしてあり、そのすぐ隣の寝室にはキングサイズの大きなベッドが置いてあった。防音もしっかりとされており、どれだけ騒ごうとも声も音も外には響かない。
親心の賜物か、それともただ生活レベルの違いか。いずれにせよ、此処で遊び過ごすのが彼らにとっての日常であり、他の三人にとって居心地のよい場所だった。勿論、部屋の主にとってもだが。
部屋を提供される代わりに残りの面々で家事を持ちまわったりと、泊りがけで気を使う事なく寝る事もあり、ルームシェアの様相を見せている。些か借主に負担が多い部分はあったが、当の本人たちが気にしてはいないのだからそれで良いのだろう。そんな快適空間に彼らが集まるのも自然な流れと言えた。
そしてこの日も、室内には三つの人影があった。テーブルを囲みながら鍋をつつき合っていたが、今では食後のひと時と云った具合になっている。
約一名、かなりぐったりとした様子なのはご愛嬌だろうか。どこか青い顔をした猿橋がぼんやりと天井を仰いでいた。
「あー……マジで美味かった……」
「食べてすぐ寝ると牛になるぞー、名字変えるか?」
「そうなると我らの語呂が悪くなってしまいますな。残念ですが猿橋殿改め、牛橋殿にはこれでご縁がなくなるという事で……」
「なんでじゃい! ……うっぷ、ちょっとマジで食いすぎたから勘弁してくんね?」
「はいはい。ならもうちょっとそっちよけてくれ、片付けの邪魔」
「へ~い」
「それだけ食べて貰えると、御馳走したこちらとしても嬉しくはありますな」
「作った人間としてもだな」
伊織たちが感嘆しながらも鍋と皿を回収し、テキパキと洗い物を進めていく。
元々料理をしていた事もあってか、伊織の手際は実に慣れたものだ。他人の家であろうとも迷いのない動きは、彼女らが長い事入り浸っている証でもあった。
「今夜は何をしますかな? 先週配信されたアニメでも消化でもいたしますかな?」
「うっす。おなしゃーす」
「洗い物済ませるから先見てていいぞー。オレ途中まで見てるし」
カチャカチャと食器の鳴る音をBGMに、テレビからは可愛らしい少女たちのお色気に満ちたシーンが流れる。
それを見ながら鳥海が楽しげな笑みを零し、猿橋は目を閉じかけながらも何とか堪えようとしていた。
画面の中の空想たちはそれに気を止める事なくその中で踊り続け、その美貌と際どい所で見えない衣装やカメラワークでオタク二人を魅了していった。
少しの間そうしていると、洗い物を終えたのか手を拭きながら伊織が二人の元へと戻ってくる。
座りやすい様にという気遣いからか、鳥海が空けたスペースにちょこんと腰を下ろした伊織。そしてグラスに注いだチューハイに口をつけようとしたその時、
「そういやさ、伊織ってパンツ女物なん?」
──ガシャン!
それはあまりに直球な言葉。デリカシーもへったくれもない問いかけに、悲鳴の代わりにグラスがその役目を終える音が答えていた。
「ごめんトリ、後で弁償する。……百均のだけど」
「しなくてもよろしいですぞ。それより怪我はされていませんかな?」
「大丈夫。ありがとな」
「いえいえ。で、猿橋殿どういう意味でござるかな?」
「本当だよ……急に何言ってくるんだ、この馬鹿猿は」
言葉の意図を測りかねているのか、それ以上は喋らず続きを求めていた。
伊織たちが後始末をする中、言葉を放った張本人はなんて事も無いかの様に話を続ける。
「わりぃわりぃ。女になってからどうなんかなーって。もうじき一年くらいだろ?」
「なんでそこで下着が出てくるんだよこの馬鹿」
「いやだって、今ミコちゃんのパンツ見えそうだったからさ」
ミコちゃんはTVに映るキャラの事だが、猿橋が言ったようにカメラアングルはかなりギリギリまで接近している。
最近にしては珍しく、エロをメインに取り入れているアニメなのだから当然かもしれない。その分、一般的な人気のない作品ではあったが。
「それで実際のところどうなん? 女の体って」
「どうって……別に普通だよ。いや、普通になったのか? ……多分」
「普通ってなんだよそりゃ。そういう事じゃなくてさ、エロい事した? つか、オナったとかヤったのかって聞いてんの」
「ぶはっ!?」
今度は割れたグラスの代わりに開けていたビールを吹きだしてしまった伊織。
そんなアニメを流しているからなのか、猿橋は何とも直截に性的な話をしだしていた。
「いやはや、これ程までにノンデリ男とは思いませんでしたな。しかしその無謀さは誉れ高いですぞ」
「げほっ、げほっ……捨てちまえそんな誉れ!」
むせながらも抗議をする伊織に、どこ吹く風な男たちはあれこれと言葉を並べてくる。
「だってよぉ、やっぱ気になるじゃん。女の性感って男よりすげえって聞くし」
「この馬鹿猿は……な・ん・で、そんな事をお前に教えてやらなきゃならないんですか」
食べ過ぎで膨れた腹を軽く押し、更なるダメージを負わせていく伊織。
「ぐえっ! おま、馬鹿やめ……マジで今は腹押さないで……」
「ふざけた事言ってくるからだ馬鹿。仮にオレがナニをしてようがお前に関係ある? ん? ほら言ってみ」
「そらまぁ……ねえんだけどさ」
「関係ないかも知れませんが、私も是非聞きたいでござる」
「トリ!?」
まさかの増援に伊織が狼狽えた。しかし、それを意に介する事なく鳥海は言葉を放ち続けていった。
「悪意や好色ではなく純粋な興味と前置きしてお聞きするのですが、伊織殿が女性になってからどういった心境なのかは気になっておりましたからなあ。アニメや漫画にはよくあるものの、実際その身に降りかかるとなると色々思う事や感じる事はあるのでは? 私もTSを一ジャンルとして追っている者。実体験としての話が聞ければと思うわけでして、女性として生きると決めた伊織殿は服にせよ体の事にせよ、如何なお気持ちなのかな、と」
そしてそれを聞いていた男が、苦しそうに寝転がりながら一言。
「あいつ──」
「よしなよ。……でも、そんなに気になるもんか? だってオレの事だぞ?」
そんな彼らに、伊織が心底不思議そうに問いかければ、男たちは二人して首肯を繰り返していく。
「気になる」
「気になりますな」
「嘘でしょ……」
この場にもう一人がいればまた違ったのだろうか。
しかし、二人の男からやたらと力の籠もった目を向けられ、何とも言えない空気のせいか沈黙を選べそうにないと悟り、大きく嘆息したのち、伊織はゆっくりと口を開いていった。
「そりゃあ……シたけどさ……」
「ヤったのか!?」
「そっちじゃねえよ馬鹿! オナ……オナニーだよ」
「ふむふむ、やはり女体の快楽は気になってしまう物なのですかな?」
「そう言われるとなんか嫌なんだけど……でもまぁ、そういう事かな」
そう告げた本人は、どこか居心地の悪さを感じながらも、羞恥を酒で押し流していく。
アルコールのせいか、それとも気恥ずかしさのせいか。しかし、その顔が赤くなっているのは明らかだった。
「だって仕方ないだろ? 今までみたいにシコれないんだし……女になったってムラムラするし。……なぁ、オレなんか悪いことした? なんでこんな事言わされてんだろ」
「そう気になさらず、伊織殿。酒の席でもありますし、そもそも健全な大学生であればそのくらいはやっていて当然といいますか。むしろセックスやオナニーの一つもしていない方が異常でござる」
「俺ら童貞だけどな」
思わずといった風にツッコミが入れられると、即座に切り返しが飛んできた。
「猿橋殿、そこは素人を付けるべきでござろう。半年前、共に店に行ったではありませんか」
「いや、行ったけどさ。つーか今言うなよ」
「……え~、最低~、伊織幻滅したかも~」
「ほらー、こいつがノってきたじゃねえか」
「あははは、暫くはこれで弄ってやるからな」
愉快そうに笑いながら、食後の酒宴を進めていく三人。
普段よりも少しテンションの高い伊織に合わせて、残りの二人もグラスや缶を空けては酒を足していく。それを飲み干す度に彼らの顔もどんどんと赤らんでいった。
元々酒を飲むのは苦手ではない伊織だったが、この日は少しペースが速すぎる様だ。そして酔いに任せた三人の会話は、どこまでも下の話になっていく。
「だからさ~、下着なんかは逆に女物着けない方が落ち着かないんだって、あれ。すぐ慣れるのだって全然変じゃないと思うぞ」
「ほほう?」
「どういう事だ?」
「収まり悪いんだよ、胸にしろ股間にしろさ。胸は重い物がそのままの意味でぶら下がるし、下はチンコの分にあるスペースでスカスカして着心地悪いし。一日だけならそれくらい我慢出来るだろうけど……女になった後ずっとよ?」
「成程なあ……」
女に変わった本人から言われると納得できるフシがあるのだろう、男たちがうんうんと頷いている。
「だからそっちが想像してそうな、嫌々女物着け続けるって事はないよ。嫌でも慣れるし、オレだって今となっては楽しいもんだし」
「楽しいのでござるか?」
「そーそー、楽しいよ。デザインとか色々あって面白いし、下着から自分をコーディネートするって感じがね。男って下着だけで印象変わる事ってないだろ?」
「ないな」
即答する猿橋。服の下を着飾ってもそれは自己満足に過ぎないと言わんばかりである。
「でも女だと全然違うんだよ。単純に白か黒かってだけでも全然変わるし、可愛い系とセクシー系でも印象が真逆になるからさ。男にはなかった楽しみを堪能してる最中って所かな」
「エロ下着? エロ下着か!?」
「ねぇトリ、こいつ追い出してもいい?」
「男の気持ちは分かるでしょうからスルーしてやってくれませぬか。彼も色々必死なのでござろう」
哀れみを感じさせる鳥海と、冷ややかな目つきで見る伊織。そしてその先には、興味と欲望に正直すぎる馬鹿がいた。
もし此処に大輝がいれば止めたのかもしれないが、この場にはそれ以上彼を諫める者はいないようだ。
「それにしても大輝殿は遅いでござるな。この時間だととっくに上がりのはずですが……」
四人目が来ない事を訝しむ三人。何かあれば連絡をしてくる程度には常識もあるのが大輝であった。
そんな時、伊織のスマホが短い通知音を告げる。
「ありゃ、急用入ったから今日来れないってさ。まあしょうがないか」
「そうでしたか。では今日はこのまま三人ですな」
「だなー。とりあえずこれ観るか」
ひとまずと云った雰囲気の中、三人の目がテレビに向かい、夜が更けて行く。
テレビの中では、相変わらず際どい格好で踊ったり戦ったりしている少女たち。
三人は特徴的なシーンが流れる度に、どこがよかったのか、これが見たかったと感想を口に出していく。時折、作品内のパロディ元などを語るなどをして、オタク話に華を咲かせては楽しそうに笑いあっていた。
しかし、時が経つに連れてやはりと云うべきか、三人揃ってその顔に赤らみが差していた。
立て続けにエロ寄りの作品をハシゴし、そこに酒の力も加わったせいか、それぞれが性の快楽を得たいという欲望がふつふつと湧き上がっている様でもある。
ソファや床など、思い思いに座っていた伊織たちも、いつの間にか彼女を挟んでソファに並んで腰かけていた。
画面にはヒロインがモンスターに拘束されたり襲われたりと、所謂ピンチなシーンが映し出されており、普段であればそれを茶化しながら、あるいはもっとやれ等と言葉にするものだが、今この時に限っては静かにそれを見つめている。
酔いと眠気と興奮で、とろん、とした目を向ける伊織は、両隣が密着しているのも、さりげなくないボディタッチを訝しがる事も無く、画面をぼうっと眺めていた。
軽く触る程度だった接触が、徐々にその領域を侵しては広くなっていく。猿橋に至っては肩ではなく太ももの方まで手を伸ばしている有様だった。だが、それに気付きながらも強く止めようとはしない伊織。
「なぁ……なんでそんなに触ってくんのさ」
「いけませんかな? 伊織殿にはこういったヒロインがどんな気持ちになるのか是非我々に教えて頂きたいのでござるが」
「女の感じが分かるのお前だけだしなぁ」
「えぇ……? そんな事言ってお前らおっぱい触りたいだけだろ……変態どもめ」
そう言いつつも本気で嫌がろうとはしないのは、やはり彼女も何か感じる物があったからだろうか。
その証拠と云わんばかりに、二人の手が服の中に入ってきたのも受け入れている。
「いやマジでデカいな。おまけにめっちゃ柔らかい」
「これがIカップの重み。ずしりときますな」
「胸はカップが重さじゃないんだぞ~? あっ、こら、ブラずらすなって……」
「なら伊織が外してくれよ。俺、ブラジャーの外し方とか分からんし」
「右に同じでござる」
「ったく、ちょっと手抜いて……んしょ」
二人に求められるままにホックを緩めれば、たぷん、と柔らかそうに弾む伊織のデカパイ。シャツの上からでも分かる、まさに爆乳とも形容すべき代物。垂れ過ぎず、適度に重力に身を任せているそれは、何とも男好きのする形をした豊満すぎる果実だった。
それに惹かれ、手を伸ばしていく鳥海と猿橋。そこへ伊織から待ったの声が掛かる。
「あのさ、お前たち気にならないの? オレだよ? お前らの友人の伊織ちゃんだよ?」
「酔っ払ってるからって間違える程ボケてねえって」
「私の目には伊織殿の御尊顔がハッキリ映っておりますな」
「そうじゃなくてさ……男だったんだよ? いいのかよ二人とも、そんな奴のおっぱいに喜んでて」
酔いに任せた発情が理性によって止まる。
だが、それと共にあるのは罪悪感ではなく、友人から向けられる欲求不満に対する申し訳のなさからくる物だ。
幾ら女になったからと言って、未だ中途半端と言っていい状態の自分が、この男二人の欲望を受けてしまってもよいのか。その悩みを聞いてなお、二人の手は止まらない。それどころかより一層伊織の肌に触れていった。
「伊織殿は今やどこからどう見ても立派な女性ですぞ」
「そうそう。むしろこっちの方が嫌なんじゃねえのって聞きたいくらいだぜ」
伊織の爆乳が、左右から不定のリズムで揉まれ続ける。ムニムニと形を変えていくそれは、酒の力も相まって彼女から平常心を失わせる。二人の手の中で弄ばれるそれを見ながら、時折漏れるのは艶っぽい声。
いつのまにか上下を脱がされかけ、先端にあるピンク色まで晒されていた。
「んっ、あふっ……その、別に嫌ではない、かな?」
「そうなん? でも男とするんだぜ?」
「ん~……正直言っちゃうとさ、少し前からその辺の忌避感とか無くなってるんだよな」
「と、言いますと?」
一呼吸入れると、伊織はその心の内を明かしていった。
「病気のせいなのかは知らないけど、もう女なんだからっていうのは去年からずっとあってさ。それに最近はオナニーだけじゃ物足りなくなってたし、どうせ女として生きてくんだからヤってみたいなぁっていうか」
「つーことは、俺らでもオッケーって?」
「そっちが嫌じゃなければ」
そう言いながら伊織はゆっくり体を倒し、ソファにその身を預けていった。
上着もスカートも、ショーツさえも全て脱がされたその身体。彼らより頭一つ小さくなった身長に不釣り合いな爆乳とデカケツ。
瞳と股間を潤ませながら全身を火照らせており、男たちの目論見通りと云わんばかりに、見事なまでに発情している姿だった。
「では私が上と行きますかな」
「なら俺は下な」
「えっ、二人同時はちょっと怖……んっ!」
二人の手が伊織へと向かえば、そこにあるのは元とは違う性の証。
取りだされ握られた爆乳は、大きな手によってぐにゅぐにゅっと形を変え、その柔らかさを誇示していく。
マンコをくぱっと開かれ、ぬめる愛液と共に膣穴が露わにされると、その上に備えられたクリトリスは、包皮から剥けて真っ赤になった頭を出していた。
そこに顔を寄せ、じゅるる、と音を立てて吸い付いていけば、その下品な音に反応した伊織が可愛らしい鳴き声をあげていく。
「ひゃっ、あぅ、あ、あっ、あぁ!」
「すげー、滅茶苦茶感度いいじゃん」
「良い声とは思っておりましたが、実にいい喘ぎにござるな」
「やっ、ちょっと待って、おっぱい握る……ぁんっ、やぁ! こら、そんな……いっ、ぁ……あ、はあああっ!」
受ける愛撫はただ胸を揉まれ、割れ目を舐られているというだけ。テクも大してありはしない。しかしその効果は劇的なもので、伊織は甲高い悲鳴をあげていく。
痛みや気色悪さによる物ではないのは明確であり、快楽から来る嬌声が次々とその口から溢れだし、部屋中に響きわたった。
「はぁ、ああ、あっ、ああああ! ヤバ、あっ、なんでこんなに気持ちいいんだよ……んひぃ!」
「伊織殿の可愛い姿に、私もチンポが爆発寸前でござるよ。とは言えまずはそちらから。ほらほら、このまま一気にイってしまってよろしいですぞ?」
「マン汁すっげ。イってねえかこれ」
「あ、ダメだって! それ以上は、ひぁぁあ!?」
大声で叫ぶのと同時、マンコから吹きだした潮がビチャビチャと音を立てていった。
ビクンビクンと身体を痙攣させながらイっている伊織の様子を、二人はニヤつきながら見つめている。
「あっ、はっ……うそぉ? オレ、こんな簡単に……」
「エロエロな伊織さんまじヤバいっすわ」
「これでこそ我らの姫と言えますでしょうな」
「ひ、姫って、あのなぁ……んんっ」
少し落ち着いたかと思うのも束の間。休む間も与えず、今度は指での責めが襲いかかっていく。
クリと膣肉を同時に攻めるような責め方は、伊織の身体には強すぎるものだったのだろう。先程以上の感度を以て全身を駆ける快楽を受け取り、それが声を上げ悶える事以外の全てを奪っていた。
マンコから愛液を滲ませつつ、無意識に男を誘う様にその腰が揺れている。
「んひっ、だめ……そこ弄られたら、気持ちよくなる……」
「おっ、これすっげぇ。どんどん吸いついてきやがる」
「それにこの顔、何とも蕩けたエロ顔ですなぁ。これはもう私も限界でござる。伊織殿」
喘ぐ伊織の前に突き出されたのは、鳥海のペニス。既にはち切れんばかりに怒張しているデカチンポは、伊織にとって初めて目にする物では無い。だが、それ故に何をすべきなのかを理解してしまったのだろう。
「んあっ……あぅ、はあぁ……。お、オレがしゃぶんの? これ」
「そうですぞ。ほら、お頼みできますかな」
「う、うん……分かった」
好奇心と場の流れに任せるまま、目の前のチンポへ顔を寄せていく。そこに強い嫌悪感は見えなかった。
(男のチンコってこんなに大きいんだっけ? なんかすごいな)
伊織の胸の奥で何かが湧き上がる。
それが何なのか、彼女自身も分かってはいないものの、今まで感じた事がないほどの興奮が頭を支配していた。
そしてその唇が触れた途端、まるでそうなるのが当然であるかの様に、自然と舌を動かして行き、そのまま先走り汁が滴る亀頭へとしゃぶりつく。チュウっと吸えば、鈴口から広がっていく生臭い風味。
「んっ、はむ、これデカい……んむぅっ」
「おおっ、これは」
「あっ、ずりぃ。しゃーねえ、こっちは伊織をイかせてやるか」
その言葉とともに、今度は指が伊織の中に入れられていった。
太さや大きさを考えれば、目の前のチンポと指を比べるのは不適切ではあるが、それでも一気に拡げられた様な感覚に驚き、目を見開く伊織。
膣肉に触れる指の刺激は、彼女の想像以上に心地良かったようである。
「やめっ、んぐ、んっ……そんな、されたら……ふあぁぁ!?」
「伊織はマンコが弱点だな。すっげえ反応よくておもしれ~」
「はっ、はぁっ、や、ぁ……ひっ、んっ、んむぅ!?」
「ほれほれ、チンポにも集中集中」
「わかってるってば……んちゅ、れろ」
膣内に入った指がGスポットと思しきザラつきを撫でると、それまでよりも強く反応し、膣肉全体の蠢きが強くなっていく。疎かになっていたフェラチオを促せば、打てば響く様に動いていく。
伊織は男たちの玩具になったかの様にそれを受け入れては、与えられる快感をただひたすらに享受していった。
マンコを弄られ、チンポをしゃぶっているという事実に酔い痴れているのか、その瞳を妖しく蕩けさせている。
──チュポ、チュポ、クチュクチュッ。
上下から発せられる水音と、時折混ざってくる鼻にかかる甘い声。それらを奏でているのが他ならぬ自身であると気付きながらも、伊織にはどうにも止められない。
むしろ、どんどんエスカレートしていくだけだった。
「おっ、いいですな。そのまま頬張り続けてくだされ」
(凄い……大きいのが口に入ってくるなんて。……これが男の……チンコの味なんだ)
「んっ、んん……っ……あむ」
(……でも変なことじゃないんだし……だってオレは女で、こいつらは男で……)
「中々上手なんじゃねえの? 。ほら、マンコにも集中しとけよ」
「んぷっ、やめっ、吸うなぁ……ぁ……はぁっ、ぁあっ」
(今更やめてって言うのもあれだよな……。それに気持ち良いし……もっとして欲しいかも)
伊織がデカマラに舌鼓を打つ一方で、猿橋が負けじと伊織の弱点を更に探り当てるべく指を出し入れしていく。その指遣いには明らかな慣れが出てきており、そのせいか伊織の腰のくねりも次第に激しくなってきていた。
(何これ……気持ちよすぎる……。オナニーなんかと比べ物になんない。こんなのダメだ……癖に、癖になる……)
伊織の中で何かが変わろうとしていた。いや、もう既に変わってしまっているのか。もはや、彼女にとってそれは大きな問題ではない。
(男としたい。犯されてみたい。このチンコで滅茶苦茶にされたい)
その思考自体が、彼女の心に変化が訪れた証左であった。
(チンポしゃぶりたい。ザーメン出させたい。セックスしたい。マンコほじってほしい)
何かに弾かれた様に伊織が動き出す。
口内に含んだままのチンコをより深く咥えこむ為に。膣壁が擦れる感覚に悶えつつも、その快楽をもっと愉しむ為に全身を使っていった。
──グチュグチュッ、グポッ、クプッ!
水音が更に激しく粘ついたものへと変わっていく。その様子に気付かないはずも無い二人が、揃って口角をつり上げた。
「んぐ……れろ、ちゅぅぅ~」
「おおっ、この吸い付きはたまりませんなぁ」
「どうした急に積極的になって」
「わかんない……でも何かこうしたくなって。ねえ……オレのフェラって気持ち良い?」
「勿論最高ですぞ」
伊織のフェラテク自体は拙かったものの、知っていた事を思い出しながら吸い付く様は、鳥海の欲望を満足させるには十分であった。
「オレのマンコ……変じゃない?」
「んなわけねーだろ。正直、指で触ってるだけじゃ我慢できねぇくらいだよ」
未使用の処女マンコは、ピンク色に艶めいてひくひくと動いている。その奥から愛液を溢れさせ、それが猿橋の指へと伝っている光景は、彼らの劣情を煽り、理性を焼き切ろうとするかのような妖しさに満ちていた。
「……そっか。じゃあ、さぁ」
一拍置いてから、伊織は自ら股を開いていく。
「……セックスしよ? 二人ともヤりたいよね?」
どこか男だった頃の口調が鳴りを潜め、女性的なものになっているのは、この状況に酔わされているからだろうか。
その一声を受けた途端、男たちは己の中の興奮と衝動の高鳴りのままに行動を始めていた。
「マジでいいのか?」
「うん。……ちょっと、いやかなり興味あったし。それにここまで来てやめらんないでしょ」
「そりゃそうだけど」
「伊織殿がそのおつもりなら、私は喜んでそのマンコを使わせてもらいますぞ。私も是非に伊織殿の生膣の感触を知りたかったところですのでな」
「言い方! ……でも、そうして欲しい、かな?」
「では早速──」
「馬鹿! 俺が先だろ! 鳥海はさっきからずっとフェラしてもらってんじゃん」
「しかし伊織殿の処女を頂けるのですぞ、この機会はこちらとしても逃すわけにもいかないのでござるが」
「も~、喧嘩すんなって。どっちもちゃんとヤらせてあげるから」
伊織が仲裁するものの、二人の興奮が冷める気配は無かった。それを呆れつつも内心では喜ばしく思いながら、その場のノリ任せに進んでいく。
「んー、それじゃジャンケン。勝った方が先で恨みっこなし。文句いうならセックスしてあげない」
「……しゃあねぇ、それでいこうぜ」
「仕方がありませんな」
「じゃあいくぞー、ジャーンケーン──」」
伊織の号令と共に行われた決闘。
示された結果に二人は素直に従うものの、だがそれでも不服そうな空気は隠しようもなく、一方の顔からは悔しさが滲んでいた。
「という事で、最初はサルからね」
「ええい! 私はなぜあそこでパーを出さなかったでござるか……!」
「悪いな鳥海。伊織の処女は俺が頂くぜ」
「こら、煽らないの」
軽口を叩き合う中、猿橋はすぐさま伊織に覆いかぶさって行く。
その股間にはガチガチに勃起したデカチンポが、今か今かと主張しており、彼の興奮の程が見て取れようと言うものだった。
「ゴム着けたぞ。伊織、挿れて大丈夫か?」
「いつでもどうぞ。……優しくして欲しいけど、ちょっと痛くしてもいいよ」
「……なんかキャラ変わってね?」
「嫌だった? 女らしくした方がいいかなって思ったんだけど」
「悪い事はねえけど、無理してるとかじゃねえよな?」
「今更な気遣いかもしれませぬが、伊織殿は伊織殿らしくても構わんのでござるよ?」
心配そうな二つの声色に、伊織は苦笑すると共に安堵した。
それから少し思案するかのように間をおいて、
「こっちの方がいいかなって思っただけ。それとも元のままでいた方が好みか?」
「俺はそっちのが好きかも」
「私はどちらの伊織殿でも」
「あははっ、やっぱ馬鹿だなー、お前ら」
伊織の表情は先程より柔らかな物になっていた。だがそれは一時のみで、すぐに妖しく蕩けたそれに戻る。
「ほら、早くきて? ね?」
誘惑の言葉を受けて、ゴクっと唾を飲み込んだのは一人だけではなかった。
「い、いくぞ……」
「うん」
伊織は軽く微笑んだまま、股をM字に開いてゆっくりと両脚を持ち上げた。すると、愛撫のお陰か十分に濡れそぼったマンコが差し出される。その奥にある膣穴は、まるで誘う花の様にヒクヒクと収縮を繰り返していた。その光景を見て、猿橋は生唾を飲み込んだ後、
──ズブッ!
勢いよく腰を落としていった。亀頭が処女膜を突き破り、そのまま膣奥へと届かせる。伊織の体がビクリと跳ね、僅かに歪んだ表情に快感以外の感情が入り混じっているのは確かだろう。だが、それは僅かの事であり、すぐに元の興奮した顔つきへと変化していく。
「いっ! んっ、はっ……はああぁっ」
「これが伊織の処女マンコ……。結構きついなこれ……締め付けヤバすぎだろ」
「ふむ、伊織殿は中々に良い具合なのですな。さぁさぁ、猿橋殿はさっさと出してそこを開けて下され」
「うっせーよ、俺の番なんだからちょっと黙っててくれ」
「伊織殿もそんなケチ臭いチンコなんかより、私のデカマラにご興味があるはずでござろう?」
「お前は喧しいな! おい、伊織はどう思うよ。俺のチンコのが良いよなぁ!?」
「わ、かんないってば……まだ始めたばっかなんだし……んっ!」
問いかけに応えつつも、伊織の意識は腹部に集中しているのか上の空だ。
しかしそれも仕方がないだろう。初体験の相手がこの二人とは言え、女になりその体の快楽を知ってからは、どこかでずっと待ち望んでいた行為なのだから。
自らの中で膨れ上がっていく感覚のまま、身悶えては甘く喘ぎながら、その瞳に情欲の炎を宿している。やっと訪れた本当の気持ち良さ。女になった自分自身を心の奥底で悦ばせてくれる物を受け入れていた。
「それにしたってさ、サルのチンコ大きくない……?」
「そら男ですから。それなりにサイズくらいあるってもんよ」
「だってこれ、お腹の奥まできちゃってるじゃん……」
伊織の手が自分の下腹部を軽くなぞった後、その中に入ってくる存在の大きさと固さを実際に確かめた。
そして再度、その場所を撫でるように触れていき、その感触が伝わると同時、彼女の中で何かを刺激されたらしく、
「んっ、んううぅ~ッ!!」
──プシャッ! ビュッ、ビュッ!
猿橋の身体へとかかっていく飛沫。
潮こそは噴いてはいなかったものの、それに匹敵するだけの勢いのある愛液に、男たちは目を見張った。
「お前……」
「うそ、動いてないのにイっちゃった……?」
「いやはや、これは驚きましたな。伊織殿の身体は実に淫乱でござるな」
「待って待って、わかんないんだけど。なんでこんな……あぁっ! うごかなっ、あたってる!」
「無茶言うなって! こんな雑魚マンコ、イかせまくりたくなるだろ!」
そう言うやいなや、猿橋が激しいピストンを繰り出していた。
──パン、パンッ、パンッ!
処女相手だというのに遠慮のない動き。
その責めは伊織の予想を遥かに上回る激しさでありながらも、今の彼女にとっては好ましく、喜びすら感じるほどだったらしい。
「あああぁっ! ダメ、待ってって! あっあっあっ! ひぁっ!?」
猿橋が腰を打ち付けるたび、部屋には結合部からの音が響き、同時に甲高く悲鳴じみた嬌声が響いていく。その声の甘さ、そして艶かしさに鳥海は生唾を飲み込むと共に、我慢ならなくなってしまったのだろう。
「伊織殿、咥えて下され」
「あっ、はぁんっ! む、むりっ、そんな余裕……んぐぅっ!?」
伊織の言葉を無理矢理断つべく、口の中へと捩じ込まれた二本目のデカチンポ。
喉の奥まで突っ込まれ、息苦しいはずのそれはしかし、伊織をより一層興奮させていく要因になっていった。
──パンパンパンパン!
──じゅる、じゅぽっ、ぐぽっ!
前後の穴から発せられる卑猥な響き。伊織は自分の中で膨れ上がる感覚に戸惑いつつも、抵抗らしい抵抗を見せようとしない。
「あっ、あぁっ! だめぇ、おまんこやばいってぇ……んぐっ!? んぷっ!? んんんんっ!」
ただひたすらに快感を受け入れながら、ひたすら喘ぎ続ける事しか出来なかった。その様は二人の獣欲を満たしていく。
伊織が初めてだという事も忘れたのか、只々己の衝動を解消しようと必死になる二人の男たち。きゅうきゅうと締まるマンコをデカチンポでガツガツと蹂躙し、口内と喉奥でデカマラを扱き上げていく。
(これ……やば……♡ チンコでくし刺しにされてるみたい……♡)
全身の至る場所から与えられてくる刺激に身悶える伊織。脳天へと抜けていくような痺れは、快楽以外の何者でもない。心の中では、これほどの幸福感を感じた事があっただろうかと思わずにはいられなかった。
その時、不意に膣を責め立てるリズムが変わると、その速度も増して行き、より力強いものに変化する。そしてそれがもたらした結果は明白だった。
「おっ、おごっ! ひぬっ、ひんじゃう……! ちんぽであだまバガになりゅぅぅ!」
「っく、そろそろ俺も限界だ……!」
「私も……そろそろっ!」
「ひぐっ、いぎっ♡ おにゃがのおぐ……あちゅいよぉっ♡」
マンコと口マンコを抉られる度に涎を垂れ流している穴は、チンポの形に変形させられていくような錯覚すら覚えるほど。一突きされるたび、背徳的な快感が全身を襲い続け、伊織は頭の中まで真っ白に染め上げられていた。
「んっ、んっ、ん~~~っ!」
「出すぞ、伊織!」
「伊織殿、ザーメンをくれてあげますぞ!」
──どぴゅっ、びゅぶるぅぅぅ!
──びゅるびゅるっ、ぶびゅぅぅ~~!
「んんっ~~~~~~!」
口内に広がる雄臭い匂い。そしてゴム越しに子宮へと注がれていく熱い飛沫。
雄の精液によって、伊織は自分という存在そのものが塗り替えられたかのような気分を味わい、その熱に全身をビクつかせてガチイキを決めていた。
(すご、いっ、こんなの、初めて……あたまのナカまで全部……♡)
マン汁を漏らし、更に潮吹きまでしながらイってしまった伊織。だが、その表情は心底から満足気な物だった。
「ふぅ……」
「っべー……めっちゃ出た」
二人が身体から離れた後も、ソファに転がったままの伊織はビクビクっと腰を痙攣させ、その快楽を噛み締めていた。
もし心の内が瞳に表れるとしたら、そこに浮かんでいるだろうハートマークに彼らが気付かない訳もなかった。
猿橋と入れ替わりで覆い被されば、それに気づいた彼女の両脚は、鳥海のデカマラを受け入れるべく自然と開いて行く。まるで最初からそうするべきであるかのように。
マンコとその中心にある小さくも柔らかな穴は、先程と変わらずに雄を待ち受ける様にその全てをヒクつかせ、そんな姿を見せられた男が欲望に身を任せるなと言うのが無理な話だろう。
「伊織殿、今度は私の番ですぞ」
「ちょ、ちょっと待って……まだ休ませ……んああぁぁぁっ♡」
──ズンッ! グリュゥッ!
猿橋のそれと大差はないはずの、しかし雌のマンコを抉るに十分すぎる太さと長さのデカマラは、処女だった伊織の穴を容赦なく蹂躙していく。再び膣奥に突き入れられる衝撃に、一瞬にして身体の力が抜けてしまっていた。
「やっ! ダメダメ! ほんとにヤバいってば! まだイグ!? イクッ♡ イッじゃうううぅぅぅ」
「流石は伊織殿ですな。私のモノをこうも締め付けるとは、実に良いマンコでござる」
「あぐっ、ひぎっ! あっ、うああぁッ!!」
「すっげー喘ぎ。容赦なさすぎでウケる」
「イった後というのは本当に敏感なんでござるな。男と違って萎えて逃げる事もできないのは辛いかもしれませぬが……それでもこうして感じているのを見るのは愉快愉快」
「んっ、んぅ……ま、まっでぇ……♡ ほんとにイギしぬがら……おがしぐなるから゙あ゙ぁぁ」
懇願する伊織だったが、言葉とは裏腹に手足は目の前の男を求めて離そうとしなかった。そして彼女のマンコもまた、更に奥へ奥へと誘う様にそのデカマラへとしゃぶりついている。
それを眺めながら、猿橋はその手に持っていたある物を彼女へと見せつけていく。
「ほら伊織、これみてみ」
「あっ! んっ! いぎっ!? ……そっ……それって」
「これお前ん中に出てたはず精液。出過ぎで自分で引いてるわ」
伊織の眼前に突きつけられたのは、先程まで使われていたコンドーム。中には大量の精液が溜まっていた。その量と雄の証を前にして、伊織の中の何かが疼く。
「うわ……すっごぉ……こんなに出したの?」
「俺的新記録かもしんねえわ。シコっててもこんなに出した事ないし」
「そっか……わたしのマンコでこんなに……」
快楽に喘いだ結果を見せられ、うわ言のように呟く伊織。その瞳はどこかうっとりとした様子で、使い終わったコンドームを見つめていた。
だがその表情も、膣内を抉っていくデカチンの責めによって蕩けたものに戻されていく事になる。
「お喋りもよろしいですが、私も続けさせてもらいましょうかな。……ほら、ここが良いのでしょう!」
「うぁあぁぁッ! そこっ! だめっ! だめだめだめ! やあああぁぁ!」
──パンッ、パンッ! パチュッ!
腰が動かされる度に肌の打ち合う音が響き、その度に伊織は絶叫にも似た声を上げて身悶えていく。
膣の最奥を小突かれ、押し込む様にこね回されてしまうだけで伊織の身体から力が抜け、意志に反して口からは悲鳴が漏れる。
「んぎっ、いぐ! またイク! イッちゃ……! あ、あ、あ、ぁぁああ~~~ッ!」
「どうですかな? 女の子の味を占めた感想はいかがでござるか?」
「わかんにゃっ、わかんないよおぉぉ!! ダメッ、イク、イグイグイグイグッッ!!!」
──ビクビクッ! プシャァッ!!
「イッぐぅぅぅぅぅぅぅッ♡」
再び伊織が盛大にアクメした瞬間、部屋の中にはツンと鼻につく雌汁の臭いと共に、アンモニア独特のそれが漂っていく。ちょろちょろという音と、二つの液体が入り混じるそれは、獣たちの本能を刺激してやまずにはいられない。
「うっわ、マジか」
「イキ潮どころかイキションまでするとは、伊織殿は少々女性として優秀すぎるかもしれませんなあ」
「……あっ……あひっ、おま、んこ……イっちゃっ……やだぁ、止まんな……みるなぁ……♡」
おもらしと共に漏れる言葉は、先程までのセックスが夢や幻でなかったか告げる可憐な声であり、それでいてどこか儚ささえ感じさせるものであった。
しかし二人は理解していた。それは彼女が演出している物ではなく、快楽によって引き出されてきた真なる物の一面であることを。それを引っ張り出したのは、自分たちのチンポによるものだと。
「実にいい光景ですが、私もまだイっておりませんのでな。少々本気でやらせてもらいますぞ」
「ほら、こっちも相手してくれよ」
「ま、待っ──あっ♡」
二人が欲望のままに動き出すと、伊織も再び身を震わせていった。これからもっと女の快楽を与えられるという事実に、歓喜の声を上げながら更なる深みへと溺れていく。
その夜、二匹の獣と共に何度も犯され、数えきれぬ程イかされ続けた伊織。
彼らの性欲が尽き、息も絶え絶えといった頃には、すでに太陽も昇り始めた時刻。しかし彼らの相手を務めあげた伊織は、朝日と同じように満ち足りた笑顔だった。
「あー……ヤった。ヤりすぎた。俺らこの先の人生の分までセックスしてたんじゃね?」
「心なしか私の腹も少々減ってしまっているような……」
「ねーわ。ちゃんと出てるから安心しろって」
汗とそれ以外にまみれながらも、軽口を言い合う猿橋と鳥海。
「どうせ女性と縁が無いと諦めてはおりましたが、いやはや酸っぱい葡萄でしたなあ」
「おいバカ、そんな悲しい事言うなよ」
「ははは、これは失敬。確かにこれ程の女性を抱けるというのは我らの様なオタクはおろか、世のイケメン殿らも早々体験できぬであろう代物でござったな」
「つーかマジでエロ過ぎるだろ伊織。……伊織?」
「あっ……♡ あひぃ…………♡ おまんこ……しゅごいぃ……♡」
彼らの足元には、ぐったりと横になって全身を投げ出した伊織の姿があった。
全裸のままで横たわる彼女からは、雄と交わりつくした雌独特の臭気が漂っている。
身体中の至る所に白濁の斑点が飛んでおり、その顔もまた精液まみれ。目の焦点もあっておらず、今も夢見心地のままだ。しかし、その表情は蕩けた笑顔を浮かべており、どこまでも幸せそうに見えた。
「おおう、これはこれは……」
「ヤベー、完全にアヘってるぞ。ヤリ過ぎたか?」
「もはや我らも完全に萎え切っておりますからなあ。実に恐ろしきは童貞オタクの性欲でしょうか」
「俺が言うのも何だけど、もうこれ絶対他の女抱けねぇよな。つか抱こうとは思えないんだが」
「これ程の名器と美女であれば仕方ありますまい。ところで猿橋殿、申しわけないのですがそろそろお暇して頂きたく……」
「は? そんな事言ってお前、伊織を独占する気だなこんにゃろー」
「いやいや決してそのような事。多分、恐らく、きっとしないでしょう」
「信じらんねーわ」
性臭まみれの部屋の中で、互いを罵るような声が飛び交う。しかし言葉とは裏腹に愉快そうな笑い声をあげながらだったが。
そこにあるのは、狙っていた雌を堕としたという感慨。彼らのもっとも近くにいて、その色気と美貌を無意識に振り撒く女を。
彼らとて、変わってしまった伊織を即座にどうこうという気は一切なかった。だが、それでも次第にその興味の矛先が向いてしまう事も仕方ないだろう。彼らとて健康な男なのだから。オタクである事や性格が変わっていたとしても、その根底にある生物的な欲求にまで背を向けられる筈もない。
ましてや彼らからすれば、とっくに伊織は女なのだ。それも極上の見た目をした、他の雄よりも気安い仲を形成できた相手なのだ。
元の性別がどうだのと言った事も、そもそも男として付き合ってきた時より伊織が女になってしまった後の方が長いのだ。
これがかつての姿がゴリラの様な見た目であればまだ違ったのだろうが、生憎と今の彼女は、元々の顔をより女性的に美しくしたような容貌をしていた。
それが彼らを変化させる決定的な要素となった。
「折角なら犬飼もいりゃよかったんだけどな」
「こればかりは巡り合わせでしょうなあ。私としては大輝殿にかっさらわれなくて何よりと言えますが」
「あいつ、伊織に惚れてるよな」
「認めたくはないものだな、と云った所でしょうな」
それは大輝が今一歩を踏み出せていない事に対してであった。彼は伊織に惹かれ始めながらも、それが見た目だけの性欲ではないか、女になって大変だろう伊織に失礼ではないかと理性で抑えていた。
そして混乱もしていた。己は同性愛者だったのだろうかと。
伊織と大輝は十数年の付き合いである。それだけに、彼には幼馴染への友情という物が深い部分に根ざしてしまっていたのだ。
だからこそと言うべきか、彼は未だに伊織を殊更意識せず、今まで通りに接するべきだと思っていた。
当の本人はとっくに気持ちを切り替え、新たな日常へ溶け込もうとしていたというのに。
全ての物事に不変はなく、見た目に惹かれてしまう事も決して悪ではないというのに。
大輝にはまだそれを受け入れる度量はなかったようだが、それ以外の男にとって、それは幸運と呼んでも良かったのだろう。
そうして一頻りやり取りを終えた後、男たちから伊織に声が投げられた。
「おーい、伊織ー、風呂入るかー?」
「ん……わた、し……うん……はいりゅ……」
「入った後は食事にいたしましょうぞ。その後は勿論我らの相手をして頂きますが、よろしいかな? 伊織殿」
「うん……セックス、するぅ…………♡」
甘くとろけた答え。
伊織はもうすっかり女になってしまっていた。それもとびきり淫乱な雌に。
「今日休みだから……ずっと、するの…………したいよね?」
「もちろんですとも」
「当たり前だろ」
「じゃあ決まり……。お風呂、一緒にはいろ……二人とも♡」
身体を起こしていく伊織。だが腰に力が入らないのか立ち上がれないようで、結局二人の手を借りていた。
「あー、そうだ。ヤるのはいいんだけど、犬飼来たらどうする?」
「私の──もとい、我らだけの伊織殿にしたい所ではありますが、来たら来たで混ざって貰えばよいのでは? ……ああ、勿論伊織殿がよろしければの話ですぞ」
「ん、いいよぉ……♡ 皆とセックスするぅ……♡」
そのまま三人は風呂へと赴き、またもや嬌声が聞こえてくるまで余り時間はかからなかった。
そして彼らの肉欲にまみれた関係が、この日から始まったのだった。
◇◇◇◇◇
時は戻り、四人の通う大学の構内。その一室で繰り広げられていた奉仕は尚も続いていく。
「も~、射精したでしょ。そろそろ終わりにしないと」
「ちょっと無理。伊織のザーメン顔エロすぎるし」
「この通り一発で終わる程度のやわな物ではないですからなあ」
大輝の耳に入ってくる会話は、この欲望まみれの密会が、昨日今日の事ではないのを容易に想像させる遠慮のなさがあった。
「ですが、伊織殿がそんなにエロい下着を見せてくるから悪いのですぞ?」
「パンツ見たいって言ってきたのトリじゃん……見せる方だって恥ずかしいんだよ?」
「見せながら発情していた本人が言う台詞ではありませんな」
「んっ♡ そうだけど……おまんこ弄っちゃだめぇ♡」
(なん、だよ……その声……)
この十数年、一緒に過ごしてきた幼馴染の聞いた事の無い媚びた声。女になってからも決して言わなかった"雌"の言葉。
それらが大輝の中で渦巻き、掻き混ぜられ、何もかもをぐちゃぐちゃにして行きながらも、目の前の光景から逃げ出す事が出来なかった。
ここから離れようと理性が思っていても、本能はこの痴態を記憶に刻まなくてはならないと思わせる何かがあった。
「ほら、スカート捲れって。俺だけ見てないのずるくね?」
「しょうがないなぁ……はいっ、どーぞ♡」
「うはっ、この前履いて欲しいって買ったのじゃん。サンキュー伊織」
「どういたしまして。リクエストだもんね」
(……っ! 伊織お前……そんなのをそいつらの為に……!)
次の瞬間、男友達によって持ち上げられたスカートの中身を見て、大輝は心臓が止まる思いをする。それ程までに衝撃的な光景だった。
黒地のレース。それだけなら今や女性として生きる事を決めた伊織にはなんら不思議ではない物。しかしその面積は非常に小さく、後ろ姿の彼女の尻を見る限りほとんど覆いきれていない。大輝から見えない前面も極僅かにマンコを覆っているだけで、むしろその薄目の陰毛と食いこみ気味の割れ目が見え隠れし、そこに機能的な物は一切無かった。
ただ男を、雄を誘う為だけに存在する淫靡極まるエロ下着。そうとしか形容できない代物であった。
むっちりとした柔らかい尻肉が、極僅かな布を挟み込んではいやらしく男を挑発している。パンツの紐を解くだけで、いや、ほんの少しずらすだけでもその奥へと侵入できる事だろう。
そしてそんな格好の伊織は、相手によく見えるようにと尻を突き出してはフリフリと男を誘っていく。
「どう? 二人の大好きな伊織ちゃんのお尻は。興奮するでしょ?」
「んだよ、あんな事言って自分だってヤりたいんじゃねーか」
「素直じゃないのはいけませんなあ」
「嘘じゃないし~? 誰か来たらやばいのは本当だし、講義終わったら大輝とも合流しないと駄目なんだから」
ドクンと大輝の胸が跳ねるが、誰もその様子には気が付かない。伊織を弄ぶ男たちの手つきと口ぶりには何も変わらず、このまま直ぐにでもセックスを初めてしまうだろうと想起させられたからだ。
それでもなお、大輝は立ち尽くしていた。まだ信じていたかったのだ。伊織がこんな事する筈がないと。今までずっと一緒に居た幼馴染で、一緒につるんで、今は少しずつ惹かれていた相手を信じたかったのだ。
「あっ、んぅ♡ トリっ、駄目だってば、乳首弄られたら声でちゃう……♡」
「嫌よ嫌よとはよく言ったものですな。もうこんなに尖らせてござるというのに」
鳥海が指を動かすたび、伊織は甲高く鳴きながら体を震わせた。その度に髪を振り腰をくねらせていく。
そんな姿を見ながらもう一人が舌なめずりをすると、伊織の腰を掴み、一息にショーツを脱がしていく。手慣れた動きに淀みはなく、当然のように伊織もそれに抵抗する事はない。むしろ脱がせやすいように自ら尻を突き出していた。
「あはぁ♡ ……もう、サルのエッチ」
「もうマンコぐっちょぐちょじゃんか。ほら」
「ひんっ♡ んくっ……ふっ、ぁあ、おまんこ弄っちゃ……あッ♡」
グチュリと響いた淫靡な響きに、大輝も無意識に生唾を吞み込む。今の彼ならばきっと砂漠に落ちた針の音すら聞き取れるだろう。
惚れた女の喘ぎを聞きながら、大輝は自分の股間が固くなる事を感じた。こんな時にと思いつつ、それでも彼女に対する欲情が抑えられなかった。
──グチュグチュ、グチョッ、ツプッ。
「あっ、ああっ! やだ、かき混ぜ……んぅぅ!? そこ、お尻はダメぇ!」
「しょうがねえじゃん、時間ないんだろ?」
「時間と関係……ああぁぁぁっ! ダメだって、そんな両方一緒にしたらぁ♡ んひぃぃ!」
「大ありだっての、マンコしか使わなかったら順番待つしかねえじゃん」
「それにその様子では今日もしっかり綺麗にしているようで。伊織殿もアナルとマンコ同時に犯されるのを期待していたのでは?」
「それ、はぁっ……そうかもだけど……んぅっ……♡ もう、分かったから早くぅ……はぁ、早く挿れて……♡」
(やめろ……頼むやめてくれ……!)
耳を疑いたくなるようなやり取り。だが、伊織の嬌声には否定のニュアンスが欠片も込められていなかった。
それを信じたくない男が傍にいたが、それが彼女の心と体を変える事はない。
「ねぇ……早くチンコ挿れてよぉ♡ 二人のデカチンポでおまんことお尻一杯になるくらいズポズポしてってばぁ♡」
尻たぶを広げて、その奥の窄まりと雌穴がヒクついている光景を晒しながらのおねだり。そこに大輝の知る伊織はいなかった。
ただ肉欲と性愛に蕩け切った、浅ましい牝犬の顔をしただけの誰かがいるだけだった。
「ほんっとにエロくなっちまったよなぁ」
「元々体はエロすぎではありましたが、ここまで目覚めるとは我らも思いませんでしたな」
「二人がずっとセックスばっかしてきたからでしょお……ほら、もう限界だから、ね? お願い……わたしのおまんこ好きに使っていいからぁ♡ 早くおちんぽちょうだぁい♡」
まるで別人に乗っ取られてしまった様に下品で淫猥に変えられた声色で、大輝の脳と体を痺れさせる。そしてそれは、そうさせた張本人たちも同様だったのだろう。
大輝からすれば羨ましいとしか思えない程に逞しくなっている肉棒。正にデカチンとでも云うべきそれを見て、そこはかとない敗北感を抱いていた。
決して彼の物も短小という物ではない。平均サイズではあったが、皮もずる剥けで、確かに大人のそれではあった。
しかしながら、それでも目の前で伊織を犯すであろう太く逞しい代物を見てしまえば、どうしても同じ男として劣等感を刺激されてしまったのだ。
──ズブブッ。
「あっ、あぅ、はぁ……くふぅ! 入ってきたぁ……あはっ、すっごぉ……お腹の中、いっぱぁい……」
「うっお、やっべぇ……アナルキツ過ぎ、もっと緩めろって」
「無理ぃ……サルの、んぅ、デカチンのせいで……んおっ!?」
「こちらもお忘れなく」
「お゙っ♡ おぐっ、突かない、れぇ♡」
二人に抱え上げられ、前後から極太デカチンで胎内を埋められた伊織。喘ぎ声は今まで以上に甲高い物となり、まるで快感が絶頂を通り越したかのようなものへと変わっていく。
その様相に、大輝もまた息を呑んだ。彼にとってはあまりにも非日常的で異質すぎる状況であるのには違いない。
だが現実がただ只管に続けられていった。目の前では伊織が嬉々としてデカチンで犯されながら喘ぎ声を漏らしている。
それはまさしくセックスの、女の悦びに満ちた物。
──パンッ、パンッ、パンッ!!
「んひっ、ひぁッ! 強、すぎ……! 奥グリグリするのダメぇっ! イっちゃう!」
「声でかすぎだって、バレんぞ?」
「んっ、んぐっ、むり、だっ、てばあっ♡ んむぅ♡」
口を開ければ嬌声が響いてしまいそうなのだろうと感じた鳥海が、唇を奪うことで伊織の声を遮っていく。
「れろぉ♡ ちゅる、ぷはぁ、んぶっ! んっ、ちゅっちゅっ……あむぅ」
伊織はそれに抵抗せず、むしろ積極的に自分から舌を差し出していく。
今や構内でも他の男たちからの視線を受け始めた美女が、小太りの冴えないオタクと濃厚なディープキスをしている光景。
男たちで遮られているとはいえ、その声と僅かに見える手足が揺さぶられ求める様に絡みついていく様子は、それを覗く人間にも本心から楽しんでいなければ出来ない行為であると理解させてしまう。
それを証明する様に、彼女たちの交わりの音は大きくなる。肉同士がぶつかる音に粘ついた水音が混ざり、より大きな一つになっていった。
「あー、マジやっべぇ、これ……! 伊織のアナル超気持ちいいわぁ」
「吸い付いてくるマンコもイくのが勿体ないくらいですなあ」
「あっ! あっ! ダメぇ! お尻の中掻き回すのもぉ……おまんこずぽずぽされるのぉ……! あ、だめ、イッちゃ、ああぁぁッ♡」
「マジで声やべえから黙らせてやってくれ鳥海」
「承知しましたぞ……ほら伊織殿、こちらへ」
鳥海が腰振りに合わせながら頭と顎を撫で上げていき、優しく唇に舌先をつける。伊織はそれを嬉しそうに受け入れ、自ら積極的に吸いつきながら、唾液を混ぜていった。
「んぶっ! ふっ……んちゅっ、ちゅっ……ぷあっ、んぐ、んんっ……♡」
「ぷはっ、伊織殿は私とのキスはお好きですかな?」
「しゅきぃ……キスするの大好きぃ♡」
「おいこら、お前が前だから譲ってやってるだけだろ。伊織、俺とするのだって好きなんだよなぁ? じゃなけりゃこんなん許す筈ねーしよぉ」
「んぉっ、お゙っ! しゅきぃ! サルとするのも大好きぃ♡ ……あむ、んちゅ、じゅるるぅ♡」
「うひひ、女に言わせんのっていいよなぁ。あー、マジ興奮するわ……!」
「うぐっ……もう私も限界近いでござるよ……」
三人が何度も繋がっているのを物語る会話を交わしつつ、伊織の喘ぎ声の合間に挟まっていく。
──パンッパンッパンッパンッ!
「んひぅ! あっ、いっ……! も、やばぁ……いっ、あっ、イクっ、ダメ、イっちゃう……!」
二本の極太デカマラに同時に犯され続けていた雌の限界は、すぐそこまで訪れようとしていた。それを示すかのように、ビクついた膣肉と肛門がキュっと締まり始める。
それに伴い、貫いていた二人もまた最後の瞬間を迎えようとしていた。
「あ~、やべっ……伊織ぃ、出すぞ。たっぷり出してやっから全部飲めよ……! 今日はアナルでだ、零すなよ」
「ぐっ、い、伊織殿……拙者は生で出しても?」
聞こえてきた言葉に、大輝は信じたくないものが込み上げてきた。これほど淫らに男を受け入れる伊織の姿だけでなく、その先、これから起こる結末。どのような結果になったところで彼の望まぬ未来に変わらない事を感じていた。
そして伊織の叫びが、その直感を現実に変えた。
「出して、出してぇ! アナルもおまんこもザーメンでドロドロにしてえ♡」
彼女は望んでしまった。自らの中に雄の精液がぶち撒けられ、最奥部に種付されても構わないと宣言していた。
それは紛れもなく雌としての本音だったのだろう。大輝の知らなかった伊織の本性だったのだろう。
彼が見惚れていた姿は、いまや他の男の物になっていると決定的に知らしめていた。
大輝の胸の内を絶望と後悔が渦巻き、その想像通りの結末が訪れようとしていく。
──ドクッドクッ、ブピュゥゥゥ……ビュク、ビュクッ!
「んああぁぁ! 熱いのきたあああ! あっ♡ イ……イクぅぅぅぅぅぅ!!」
伊織は体中に走る痺れる様な衝撃に背筋を弓なりにし、恥ずかしげもなく大声をあげてイキちらかした。
彼女の意識が昇る中、それでも尚注がれ続ける二人分の精液を受け止める為、子宮を疼かせてその入り口を広げ、肛門を絞めて吸い上げる。
まるで種を望むように膣壁が蠢き、その欲求が満たされるように膣内は白い粘液が満たしていった。
「あはあぁ……しゅごい、いっぱい出てる……。はぁ、はぁ……♡ おまんこもお尻も……熱いよお……♡」
絶頂の余韻に浸っているのか、全身の震えが収まるまでの数秒間、伊織は恍惚の笑みと蕩け切った表情で呆けており、大輝の知っていた可憐で凛々しかった幼馴染の顔など見る影も無くなってしまっていた。
いつの間にか彼も股間からペニスを取りだし、自慰にふけっていた。その度に心が擦り切れ、何かが剥離していくような錯覚すら覚えるほどに。
しかし、見せ付けられる伊織の雌の痴態を見て、かつてない程に股間のものが固さを増していき、射精に向けて上り詰めようとしていた。
それは大輝にとって初めてとなる、好きな女を思い描いてのオナニーであったのだから仕方がないのかもしれない。もっとも、実際に目の前で繰り広げられた淫行は、彼が頭で描く情交より遥かに激しい物ではあったが。
「はー、マジたっぷり出たぁ。伊織、まだ俺のが欲しいか?」
「……うん♡ もっとセックスしたいかも……♡」
「男冥利につきますなあ。とはいえ流石にここで続けるわけにも行きませんな。そろそろ時間になりましょうぞ」
「え~……わたしのおまんことお尻、まだ足りないんだけどぉ♡」
名残惜しそうにチンポが引き抜かれると共に、ゴボォと中からザーメンがこぼれ落ちていく。
ボトボトと垂れる白濁液が、どれほど彼女の中を埋め尽くしていたかを物語っていた。
「あっ、もうやだ、恥ずかしい……」
「俺ら出しすぎ、ウケる」
「伊織殿がエロすぎるのが悪いのでござるな」
「……ばか」
セックス後のピロートークというにはあまりにも下卑たそれを聞きながら、大輝も果てていく。
扱いていたペニスから出たのは、先程伊織を汚していた者たちの量と比べれば大分控えめな物であったが、その快感は思考を真っ白にしてしまうほどだった。
しかし、それと共に大輝の中に冷静さが訪れていった。
(くそっ、くそっ! なにやってんだよ俺は……!)
「ねぇ、お尻から垂れてない? トイレ行きたいけど、このまま履いたら下着グチャグチャになりそうで……」
「あんなエロ下着、いいじゃん汚れたって」
「洗濯するの大変なんだからね!?」
「相変わらずノンデリでござるなあ。それよりも伊織殿、早く済ませないとそろそろ時間でござる」
「あ、うん。ごめんトリ、拭くの手伝って」
「お任せあれ」
(帰ろう……どんな顔してあいつらに会えばいいんだよ……)
中の三人が終わりの気配を見せると、大輝はその場から立ち去った。
これ以上は見ていられない。鉢合わせしたら何を喋ればいいのか分からない。何よりも、覗きながらオナニーをしていた情けなさを、彼はどうすることもできなかったのだ。
幸いな事に、四人の誰もがその行為がバレる事は無く、大輝はその足の向くまま帰宅の道を選んでいた。
一人が人知れず去り、伊織たち三人がそれを知らずにいつもの調子で会話をしていく。
「いやー、初めてヤってから随分やってるけど全然飽きねえよな伊織のマンコ」
「する度に具合が良くなっておりますからな。それにしてもこれを味わえない大輝殿が少し哀れに思えてきましたぞ。とはいえ、これは我々の秘密ですしな」
「わたしは別にバレてもいいんだけど……でも幻滅されちゃうかな?」
三人がその肉を貪り合うようになってから、半ば恒例化した会話。それは二人にとってある種の優越感に溢れていた。
伊織の処女が奪われて以降、何度となく繰り返してきた三人、あるいは伊織と二人きりのセックス。それは別段大輝だけを仲間外れにするつもりではなく、単純にタイミングが合わずに機会に恵まれなかっただけの事だった。
どこかでバレていれば、何だかんだとなし崩しに混ざっていた事だろう。鳥海たちに独占欲がないわけでもなかったが、大輝は伊織の昔からの友人であり、むしろ自分たちが割って入ったような気もしてもいたのだ。この肉欲の中に混ざるというのであれば、自分たちが断るのも筋違いだと思っていた。
しかしその機会は訪れなかった。
バレても構わないはずだった密会は、いつしかバレてはいけない秘密になり、見せても構わなかった筈の雌に堕ちた姿は、見せたら何かが壊れてしまうのではと錯覚する程に淫猥で下卑た物となり、三人の間には後ろめたい空気すら流れるようになってしまったのだ。
「あと少し経てば夏季休暇になりますなあ。その時は一週間……いやひと月程、私に独占させてもらえれると嬉しいのですが」
「それはいいけど、代わりに俺も後で独占できるっていう条件付きな」
「こーらー、人の事を勝手に決めるんじゃないよ。わたしの意思はどうした、わたしの意思は」
「ない」
「ありませんな」
「人の事をなんだと思ってるんだお前らは!」
二本の腕にそれぞれ絡みついたまま、伊織が怒りつつも楽しそうな顔を見せていく。三人の間に流れるのは確かな情愛と信頼感。そこには明らかな恋愛ではないにしても、お互いを結びつけあう確かな繋がりがあった。
ただ一人の友人だけを除け者にしている後ろめたさ。それでも三人はこの関係が終わるまで続けて行きたいという想いを持ち、そしてそれを破る覚悟など誰も持ち得ていなかった。
ガチャっと開かれるドアの音と共に、彼らは今日の日常に戻っていく。
すると、足元の何かに伊織が気付いた。
「ん? なにこれ……って精液?」
彼女が目に止めたのは、壁にひっかけられていた精液であった。それは紛れもなく先程まで覗いていた大輝が吐き出していた物だったが、彼女たちがその事に思い至る事は当然ない。
しかし、それを見て何が起こったかは理解していた。
「……もしかしなくても、覗かれてた?」
「その様ですな」
「伊織があんなにアンアン叫ぶからだぞ」
「そ、それは……ふ、二人があんなに激しくしてくるからだし!」
「ですがまあ、これでどうにかという事もないでしょう。覗き魔もこの通りこっそり自慰をしていたようですし、何かを糾弾するとかはないのではござらんか?」
「乱入してくりゃ淫乱伊織ちゃんが童貞奪ってやっただろうになぁ?」
「誰が淫乱だ! 全く……。それに、そいつが童貞かなんて分かんないだろ」
「いやー、こんなコソコソシコってるのは童貞だろ」
「右に同じく」
「お前ら結構酷い事言うのな……わたしでセックス出来るからっていい気になって……」
そう言いつつも、伊織の声に悲壮さは欠片もない。あくまでも戯れ言の延長戦程度でしかないのだろう。その証拠に、鳥海と猿橋から手を放そうとしてはいないのだ。
そして三人はいつもと同じように、軽口を言いあいながら歩いて行く。それは、この先もずっとこの時間が続くと信じきっているような足取りだった。