有名モデル兼女優の大学時代の先輩とクリスマスにコスプレセックスをする話 作:紫苑院さざんか
オリジナル:現代/恋愛
タグ:R-18 純愛 いちゃラブ 淫語 コスプレセックス クリスマス
クリスマスの夜に起きた、2人だけの秘密。
ぼちぼち投稿ペース戻していきたいと思います。よろしくお願いします。
クリスマス。
恋人たちが逢瀬を交わし、愛を育む日として認知されている祝日。
古くは聖誕祭以前の年末を祝うイベントがキリスト教に取り込まれた文化だという。
外国では家族で過ごし、プレゼントを贈りあっては1年の感謝と愛を伝え合うのが通例だ。
しかし、日本ではもっぱら性の6時間などという形で持て囃され、話題に上がることが多いに違いない。
そんな特別な日にさしかかろうとするクリスマスイブの夜7時───佐田裕貴は悩んでいた。
裕貴は同人作家をしているのだが、彼が今抱えている悩みは年末に控えた同人誌即売会における売り子が見つからない、というものだ。
頒布物は既に脱稿し、印刷所から滞りなく当日に配送するとの連絡を受けている。その点においては問題ない。
しかし、今年はガールズシップオムニバス……ガルオムと呼ばれる艦船の擬人化美少女ゲームモノが題材である関係上、可能ならば売り子はコスプレをして欲しいなどという願望を抱いていたのだが……。
大手個人サークルである「くろのわーる」の主の裕貴であれば、例年募集をかければ何人かは渡りをつけられたに違いない。
しかし、今年はタイミングが悪く……仕事で行けない、他のサークルに呼ばれている、今年は即売会には行かないので無理、といったような種々の理由から売り子が見つからないという状態に陥ってしまったのだ。
もう男性の売り子でもいいかもしれない、と連絡アプリであるVistoldを開いて……裕貴の手が止まる。
個人チャットについ先程に連絡が入っていたからだ。
簡素な文体で、「困ってるようね」とだけ。
そのらしさに裕貴は苦笑してしまう。
ポチポチとスマホで返事を打ち込む。心底心当たりがないかのような気軽さを滲ませながら。
「何がですか、それはそれとして先輩お久しぶりです。お加減はいかがですか……変わらないな、氷見先輩も……」
氷見麗花。
大学時代の先輩であり、当時は結構仲良くしてもらっていた間柄だ。とはいえ……ここ2、3年は連絡が途絶えているが。
氷のような印象を思わせる切れ長の瞳、白晢のかんばせ、腰まで伸びた青みがかったロングヘアが特徴の美女。
彼女が歩けば学内で見惚れない人間は居なかったし、学外でも彼女を芸能界にスカウトしようとする者の声かけは後を絶たなかった。
そして、そんな彼女は今その美貌を活かしてモデル・女優活動に勤しんでおり、今彼女の名前を知らない者は日本にはほとんど存在しないと断言出来るに違いない。
チラリと連絡を返しながら、賑やかしにつけているテレビの映像を見れば、そこにはCMの主演として笑顔をうかべる麗花の顔が映っている。
国民的女優……にあと一歩のところでたどり着くであろう彼女と自分が未だに接点を持っているだなんて、我ながら信じられない。
「まあ、とはいえこんな売り子をしてください!なんて悩み、先輩みたいな人に頼めるわけがないし、頼めたとしてギャラはいくらするのやら。他の人を探すしかないよな……」
現実的に考えてみる。
彼女のような引く手あまたの存在が大手個人サークルとはいえ、同人誌即売会のコスプレ売り子をしてくれるなんてのは夢のまた夢なのだ。
テレビにラジオに、CMもそうだし、インターネット上でも彼女の人気は留まるところは知らない。
やっぱりこのような事を頼む相手では無い。
いざとなれば自分一人で捌くことも考えなければならない。彼女に頼るよりは今からでも何とかする方が現実的だろう。
そう考えた裕貴は、まず売り子の募集を再度かけ、その後に丁寧に先輩に対してとスマホを取りだした。
その瞬間、家のチャイムがピンポーンと鳴る。
「んえ……誰だ?この時間に。……何も頼んだ覚えはないんだけどな……?干し芋から何か送られたか?」
はーい、と訝しみながら玄関のドアを開く。
その眼前に現れた姿に、裕貴は目を見開く。
「先輩……?」
「こんばんは。早速なんだけれど、寒いから部屋に入れてくれないかしら」
先程連絡してきたはずの、氷見麗花がそこに居た。
厚手のコートに手袋、謎に膨らんでいる荷物を大事そうに抱えて立っている。寒さにやられたのか、鼻の頭を少し赤くしながらも、その美貌には全くの陰りがない。
何度も見てきた記憶の中の彼女と寸分違わないその姿にあっけに取られる。
あれ、現役女優がこんなに気軽に男の部屋に訪れるものだっけ、とかここに彼女が来ているのを知られたら不味いんじゃないか、とか、そういう事じゃないんです下心とかはありません、とかそのような言い訳が一瞬にして裕貴の脳内を駆け巡る。
その混乱が顔に出ていたのか、麗花はクスッと笑った。
「あら、大学時代には気軽に家に上がり込ませてくれたのに。立場が変わったらやはり考え方も変わるものなのかしら」
「いえ、あの、氷見先輩。来てくれたのは嬉しいんですけど、クリスマスイブですよ?仕事とかあるんじゃ。というか僕一般人で」
「言い訳は後で聞くから。早く部屋に入れなさい」
「あっ、ちょっ、先輩」
痺れを切らしたのか、ぐいぐいと強引に部屋に上がりこもうとする彼女。
それを止めること自体は、男性である裕貴なら可能かもしれないが……それをやるには彼女をけがさせてしまうかもしれない。
その躊躇がアダとなったのか。
部屋に押し込まれ、麗花の後ろでドアがばたりと閉まる音が鳴る。
「……久しぶりね、佐田くん。私のこと忘れてしまったかしら?」
「……忘れるわけないじゃないですか。先輩の顔は毎日テレビで見てますよ」
そう返すと、ふぅんと気の抜けた返事が返ってくる。彼女の顔からは感情を読み取ることが余りできない。涼やかな表情を常に浮かべている彼女は、あまり感情を表に出さない。
「とりあえず、説明はするからあなたの部屋に入るわね」
「はいはい、分かりました。……寒いですから温まっていってください。お茶出しますよ」
そう言うや否や、遠慮を知らない素振りですたすたと機敏に裕貴の部屋に侵入していく麗花。
あの頃と変わらない、無遠慮な態度に疲れた心が癒されていくのを感じながら裕貴はその背を追うことにした。
▼▼▼
「ん、美味しい。私の好きな銘柄の茶葉を常備してるなんて流石」
「先輩に付き合ってるうちにそのお茶が気に入っちゃったんですよ」
ほんわかと湯気が立つお茶に舌鼓を打つ麗花。
あつあつのお茶をちびちびと飲むその姿は、まるで猫のような印象を受ける。
彼女の好きな茶葉は覚えている。元は彼女が裕貴の家に持ち込んだのが最初だったというように、裕貴は記憶している。
こんな距離感でありながら、2人は彼女彼氏だった、というわけではない。
むしろ色気の欠けらも無い関係性だったという方が適切だろう。
裕貴の家は彼女にとって寄り付きやすく、勝つ居心地のよい場所であった、という話。
彼女のその姿に、いつか同じようにお茶を出していた時のことを裕貴は思い出した。
彼女が裕貴の家に来る時はその猫のような姿をいつも見ていた。
それを見ながら自分も本を読んだり、ゲームをしたり。
彼女がいる時間に慣れ切っていた。
そして、それはしばらくぶりに会ったこの時にもシームレスに発揮できるくらいには身に染みついている。
「で、先輩はなんで急に僕の家に来たんですか」
「分かってるくせに」
彼女がジトッ、とした目線で裕貴に対して訴えかけてくる。
やおらスマホを取りだし、なにやら操作をしてはこちらにその画面を見せつけてくる。
『サークルくろのわーるからのお知らせです。年末の即売会の売り子さんが不足しております。もし助けていただけるようでしたら、連絡を頂けますと嬉しいです。今回は頒布物の関係上、コスプレが出来る方を募集します』
そこに表示されていたのは、先日募集をかけたときの投稿だ。
我ながら雑にも程があるな、新しく投稿し直す
必要があるかもしれないとか裕貴は考える。
その何も分かっていないような表情に麗花はムッとした顔で語り出す。
「募集してたじゃない。コスプレ売り子をさせたいんですって?なんで私に声をかけなかったの。あなたと私の仲はそんな軽いものだったのか、とショックだったのよ」
ここに美女がいるじゃない、そこら辺の女を誘うくらいなら私に声をかけてくれれば喜んでOK出したのに、などとぶつぶつ呟きながら怒っている彼女に、裕貴は面食らっていた。
言えるわけが無い。常識的に考えたとして、国民的女優に近い立ち位置の雲の上の人に麗花は成り上がってしまっている。
そんな相手にコスプレ売り子が集まりません!コスプレ売り子してください!などと頼む輩がいるなら、そいつは大馬鹿者だろう。
「先輩、考えてみてください。先輩のような高嶺の花どころか雲の上の人にこんな声をかけるやつは自殺志願者かなにかです」
理詰めで諭す裕貴。
その語り口に、ぐっと声を漏らして詰まる麗花。
理解はしているけれど、納得はできないという顔だ。彼女は愚かな人間ではない。海千山千、生き馬の目を抜くような芸能界で華麗に成り上がった才人だ。
その理屈が理解できないわけではないだろう。むしろ裕貴には、彼女が今ここにいることの方が不思議でならなかった。
この時間が下手な週刊誌などにすっぱ抜かれてしまったとしよう。その瞬間に彼女のスキャンダルになりかねない。
裕貴は氷見麗花の弱みにはなりたくはないのだ。良くしてもらった先輩だし、気心のしれた仲であるからこそ、彼女が羽ばたくための邪魔になりたくはない。
「それでも、あなたと私の仲じゃない。一言相談くらいはしてくれても良かったと思うの」
やっぱり感情では納得はできません、というようなふくれっ面で抗議をしてくる麗花。
世間で言われるようなクールビューティやら氷の姫君やらといった、冷血かつ冷静でいつ何時も落ち着いた女性であるというパブリックイメージは欠けらも無い。
まるで幼い少女が駄々をこねるようなその姿に裕貴はため息をつく。
「まあ、たしかに僕も先輩に遠慮してしまっていたところはあります。でもですよ、さすがにコスプレなんてさせられません」
はい、これでこの話は終わりです。とうち切ろうとする裕貴。
しかし、麗花はそれでおしまいにさせてくれるような女では無い。
ギラリ、と目を光らせスマホを取り出した。そのままススス……と裕貴の傍によったかと思うと、裕貴と自分を画角に収めて自撮りを撮る。
あまりの速さに反応ができなかった裕貴があんぐりと口を開けていると、麗花はその自撮りを見返して満足そうに頷いた。
「うん、綺麗に撮れてるわね。さて、佐田くん……これを私がSNSにupしたらどうなるかしら」
「脅迫じゃないですか」
正真正銘の脅迫だった。
というか、自分のキャリアを人質にしてコスプレ売り子をしようとする有名女優なんて聞いたことがない。
あまりのスピード感に頭を抱えてしまう。
このままコスプレ売り子をさせれば彼女が週刊誌にあらぬことを書かれるかもしれない。けれど、させなければ彼女の手で即座にスキャンダルになりかねない写真が世の中に放流させられるということになる。
つまり、どちらに転んでも詰みというやつである。
「先輩、本当に……そういう考え無しのことをやらないでくださいよ。コス売り子やることなんかよりも、あなたのキャリアの方が大事でしょう」
「嫌よ」
「突っぱねるじゃん。いやそうじゃなくて、なんでそんなに拘るんですか」
裕貴がそう尋ねると、強気な表情が一転してもじもじとしだす。そうして、視線をあちらこちらにさ迷わせたかと思うと、彼女はおずおずと口を開いた。
「わ、笑わない……?」
「笑いませんよ。理由があるなら、それをちゃんと教えて欲しいだけです」
裕貴の、真剣な眼差し。
彼がこういう目をする時は自分に嘘をつかない、ということを麗花は知っている。
笑われたくは無いけれど、これを秘めているのも胸が痛いから。
麗花は一呼吸を入れたかと思うと、彼の目をしっかりと見据えて語り始めた。
「私、嫌なの。佐田くんが私以外の女のえっちなコスプレが手に届く場所にいて欲しくないって、いうか……」
嫉妬。言ってしまえば簡単なものであった。あまりにも距離感が近く、これまでは単純に気づかなかった感情。
彼とここ最近離れて、場所が変わって、ようやく気づいた感情。
ああ、私は意外と嫉妬深い女だったみたい。
ずっと見ていた。彼のサークルアカウントもフォローしているし、作品もしっかり買っている。
さすがに女優モデル業が忙しくなったここ3年は頻繁にSNSでサーチできなかったものの、2年前に彼が壁サーに成り上がった時は密かに喜んだ。忙しいから連絡は出来なかったけれど、シャンパンを空けて、お祝いをした。
ずっと見ていたから。ずっと隣にいたから。
分からなかったことにようやく気づいた、ということを自覚してしまった。
そして、彼が今回気紛れにコスプレ売り子を募集したことで、焦ってしまった。
例年ならそんなことはしないはずだったのに。
裕貴はイケメンというわけではないものの、懐の広い男だ。一緒にいて居心地が良くて、その懐に居着いてしまうような男だ。
自分が良い証拠。異性だというのに、それを実感することなく彼と共に過ごした日々に耽溺していたように、今振り返れば思う。
だから──そんな彼の魅力にもし、気づいてしまった女がいたら?
そんな女にアプローチをかけられたとしたら?
麗花のように、なんとなくそこに居ることを許してしまうことだってあるんじゃないだろうか。
そして、そのままずるずるとどこか自分では手の届かない距離感になってしまうんじゃないだろうか。
それを考えただけでゾッとした。嫌な気分になった。
だったら今の自分の立場なんて捨て去ってもいいから、「あの氷見麗花」が唾をつけている男だということを、彼の隣に立って思い知らさ無ければならない、と感じたのだ。
自分の美貌がそこらの女を遥かに凌駕していることを、麗花は自覚している。
だから、その武器は使わなくてはならない。
女としての武器を振り回してでも、彼の隣は占有しなければならないという結論に達した。
この気持ちは恋だか、愛だかは分からないけれど───彼の傍でのんべんだらりと寝そべってお茶を飲みながら雑談をして、夜ご飯をごちそうになって、泊まって、大学に通う……なんてこともしたこの立ち位置だけは誰にも譲ってなんてやらない、と決意した。
「……ん、だから、そう。私はコスプレ売り子したい。あなたの目に映るそういうことをする女は私だけでいい、って」
その内心の濁流のような独白は、裕貴には届いていないものの、彼女の本心から出た言葉であることは理解出来る。
彼女にとって、どうやら自分は特別な存在になっていたことを察して、裕貴は赤面した。
「えっ、はっ、えぇ!?先輩が、その……嫉妬するくらい僕のことが好きだって、そういうことなんですか?」
全く気づかなかった……と零す。
裕貴にとってしてみれば、青天の霹靂だ。
元より距離感が近かったし、よくつるんでいたし、仲良くしてくれていた麗花には感謝している。
一度ならずとも彼女に対して想いを抱いたこともある。しかし、彼女は高嶺の花だ。自分の身の丈には合わないし、彼女の隣を歩けているその時の現状をうち捨ててまで賭けに出るほど裕貴は無謀ではなかった。
今、その時の居心地の良さを味わえているだけで幸せだったから。
彼の言葉で表すとするならば、氷見先輩と一緒に居れるんですからこれ以上のことを望むのは贅沢ですよ、といったあたりの反応になるだろうか。
諦めていたし、手に届かないと思っていた花が自ら手折られに来るなんて思うはずもない。
「ええ、そう。私もにぶちんだったみたい。自分の気持ちに全然気づかなかったけれど、今なら言える。私は佐田くんが好き、誰にも盗られたくないの」
ずいっと身を乗り出して麗花は裕貴に顔を近づける。完全に自分の顔の良さを理解している仕草だ。
コスプレ売り子をさせろと直談判に来たはずがなぜか告白をする現状に戸惑っているのは麗花自身だが、彼女はそれで止まるような女では無い。
本来ならそんな予定ではなかったけれど、ええい、ここまで流れに乗って来たのだから押し切ってしまおう。
麗花は自分の武器の良さを活かして一挙に畳み掛けることを決めた。
「う……その、まだ上手くまとまらないので……とりあえず落ち着きましょう」
「嫌よ」
「脊髄反射か?」
「好きって言って」
「無敵かな?」
落ち着くことを促す裕貴の言葉を、バッサリと切り落として拒否する麗花。
その上あまつさえ求愛を求めていく始末。
クリスマスだからといって浮かれすぎているし、白熱しすぎている。
その流れを断ち切るために、裕貴はやおら手元にあるお茶を飲み干して、一旦落ち着くことにした。
「ふぅ……落ち着きました」
「落ち着かなくてよかったのに」
「黙らっしゃい。勢いで流そうとしないでください。……じゃあ、再確認しましょう。先輩は僕が好き。だからコスプレ売り子をほかの女性にさせたくない、ということですか?」
麗花はこくり、と頷く。
もうとてもその通りだと言わんばかりに激しく。
しかもさっきと比べてちょっと距離が近い。好きになるからやめて欲しい、と裕貴は思った。
まつ毛長いんだな、とか綺麗な二重なんだな、とか今まで気づかなかったことに今更気づいてしまう。
「でも、さすがに先輩にコスプレ売り子なんてさせたらあらぬ顰蹙を買ったり問題が発生する可能性がですね」
「大丈夫、事務所に許可は取ってあるもの」
「仕事が早い!」
仕事が早かった。
なんでも、ここに来る前にこれこれこういう理由でコスプレ売り子をしたいので許可が欲しいという話を所属事務所の社長に通してきたらしい。
『ン〜〜、愛、ね。いいわよン麗花ちゃん。その男の子に許可が取れたらアタシのところに来なさい。後始末とか火消しはやってあげるから。ちゃんと落とすのヨ。……青春ね、羨ましいわン』
完璧に事務所のバックアップがあると言うならば……問題は無いのだろうか。
裕貴の心は揺れに揺れていた。しかし、それでも……と言い淀む彼に麗花もぷっちんと来てしまう。
「佐田くんも強情。じゃあ、私も奥の手に出る」
「奥の手ってなんですか。またろくでもないことを───」
「ここに、佐田くんの好きそうなコスがあります」
「その荷物全部コスなんですか!?」
その通り、と言わんばかりに荷物を開く。
中から出てくるコスの数々に、驚きを隠せない。神鷹、加賀、高雄……ガルオムの人気キャラクターのコスが次々と出てくる。
「私は胸があまり無いから巨乳キャラのは持ってこなかったけど、それでも佐田くんの好きなスレンダーキャラのコスは持ってきたわ」
だから、今からプレゼンをします。
そう言うや否や、裕貴の目の前で服を脱ぎ出す麗花。
慌てて目をそらそうとする裕貴を、麗花は見咎めて言う。
「ダメ。しっかりと見て。これはあなたへのプレゼンなの。私という女がどれくらい魅力的で、あなたの性癖に刺さるのかを丁寧にプレゼンしたいの」
だから、しっかり見つめて。体の隅々まで舐めるように。
そう言い渡すと、麗花はブラジャーとショーツを着用しているだけの姿になる。
そうして、ゆっくりと見やすいようにその場で回り始める。つぶさに裕貴に見せつけるように。
私はこんなに綺麗な体をしているのだ、と誇示している。その宣言に違わず、麗花の体は絶妙なプロポーションを誇っていた。薄い肉付きではあるものの、それでもしっかりと筋肉と贅肉がバランスよく乗っている。
美麗、という言葉が最も似合う黄金比のバランスと言っても過言では無い。
そして、彼女はそれ以上の価値を提供している。
「氷見麗花」という、世間に価値を認められた女。その裸体を見れるのはただ1人だけという価値だ。
その事にうっすらと裕貴は気づきはじめている。目の前で行われているストリップショーは、自分だけの宝物に等しいものなのだと。
そして、それを理解させるほどに麗花のなすがままにさせること。それはこの場のペースを麗花に握らせているようなものだということに気づかない。。
裕貴は知らない。
氷見麗花という女のポテンシャルは、芸能界に入ったことでより高みへと至っていることに。無頓着に自分の魅力を振りまいていた3年前とは違う。
より濃度が増した、女としての武器を、力を見せたい人間が好むような仕草と共に見せつけるだけの強かさを手に入れている。
このプレゼンは絶対に裕貴に麗花という花を摘ませるためだけに行われている甘い毒にも等しい行為。
「先輩……綺麗、だ」
絞り出すような声。好きだった女、けれど遠くに行ってしまったものだと諦めていた女が自分を摘めと誘ってくる。夢心地にも等しい現実に、裕貴の脳みそは既にグラついている。
そして、その呟きに麗花は女としての喜びを感じていた。
テレビ局の偉い人という名の気持ち悪い老人から送られる視線に感じるおぞましい感覚の、全く逆のそれ。
見て欲しい人にマジマジと見つめられ、その上で心から絞り出したようなか細い声に有頂天になりかけていた。
どんなイケメン俳優と一緒に居ても感じることのなかった胸の高鳴り。心臓が驚くくらいに跳ねている。
ドクン、ドクンと脈を打つ度に溢れる激情が身を焦がしていくような感覚に襲われる。脊椎に灼熱の炎を突っ込んだような熱量が、氷の女を溶かしていく。
彼の前でだけは、氷ではいられない。
彼の前でだけは、溶けてしまう。
そんな思いを抱えながら、裕貴の顔をそっと伺う。
彼の顔は、真っ赤に染まっていて、それでいてしっかりとこちらの体を見据えている。
無意識か、意識的かは分からないけれど。
今までの彼からは、考えられないほどのオスを感じる熱視線。
ぞくぞくと快感が背筋を駆け上がる。ああ、彼は今まで私にそういう興味を持った素振りなんてなかったのに。
私は今、彼に女として射止められている。
「ね、顔……真っ赤。そんなに恥ずかしい?」
「だって……こんな、綺麗な、女性の裸をこんな近くで見たら……」
「いいの?」
「え?」
「見てるだけでいいの?私はずっとあからさまに示しているつもりなのだけど」
触れてもいい、って。
ああ、そうだ。
触れられたいのだ。高嶺の花だなんて、バカバカしい。
そんな評価に意味なんてない。
手折られたい人に手折られない花に存在意義なんてないのだから。
麗花はそっと、裕貴の手に手を重ねて、スリスリと撫でていく。
自分から裕貴の手に触れて、近づくことで暗に示しているのだ。
貴方だけは、私に触れられる男なんだと。
誰にも触れられない女を、あなたは自由にできる特権があるのだ、とこれみよがしにアピールしている。
それはセックスアピールなどという生易しいものではない。
自分の全てをさらけ出した上で、それに触れて自由にしていいと許可すること。ともするならば、麗花は裕貴に魂すらもあげてもいいとさえ感じている。
それを丁寧に、じっくりと、未だに現実を呑み込めていない裕貴に対して教授している。
けれど……。
「まだ、踏ん切りがつかないかしら」
ぼそり、と呟く。
彼の美点である、理性の強さ。
彼女は与り知らないことではあるが、彼は本能では麗花を求めたが理性でそれをねじ伏せて諦めたことがある。
つまり、それは反面極上のメスを目の前にしたとしてもブレーキがかかってしまうという事実を示している。
そのブレーキが、目下麗花にとっての最大の障壁と言って間違いない。
だから、麗花は容赦をしない。
目の前の男の理性を1枚1枚引き剥がし、自分の体に、彼の女である証拠を刻み込んでもらう。
そっと彼の手を離し、猫のように体全体を裕貴の体に擦り付けるようにして密着する。
スリスリと、甘えるように。
そうして、そのまま裕貴の耳に口を寄せて囁く。
「私……あなたの女になりたいにゃ〜♡♡んぅ……ダメかしら……?あなたにめちゃくちゃにされたくて仕方がないのだけれど……」
裕貴はもういっぱいいっぱいだ。
目の前でストリップされ、なすがままにそれを見させられたと思ったら、彼女に手を出すように唆されている。
甘い香りがする上に、耳から流し込まれる艶めかしい声にクラクラしてきてしまう。
その様子に麗花はあと少しだな、と確信を強める。
絶対に手を緩めてやるものか。
「ふぅん。まだ崩れないのね……じゃあ神鷹のコスプレ、するわ」
彼は確か神鷹が最も好きなキャラクターだったはずだ。黒いロングヘアに、冷たさを覗かせる細い目。スレンダーな体躯に大きなお尻が魅力の、人気の高いキャラだ。しかも、クールな外見とは裏腹に2人きりになると主人公のことを旦那様と呼び、控えめにだが甘えてくるギャップがたまらない、という評価を彼がいつの時にかしているのを聞いた覚えがある。
それを利用する。
麗花もスレンダーな体躯に、むっちりとした尻を持っている。神鷹に非常に近似値である女だと言えよう。
そして、神鷹のキャラクター性は麗花にとっても好都合。なんせ、裕貴のことを旦那様と呼ぶことができるから。
ああ、素晴らしきかな。旦那様という言葉の響きよ。絶対に現実にせねばならない。
改造巫女服といった趣の神鷹のコスプレは、見事に麗花の雰囲気とマッチしていた。
大袈裟な物言いかもしれないが、リアル神鷹だと言える代物。
裕貴は目の前に最推しが現出したことに驚く。まさかここまで再現性が高いとは。
「ね、佐田くん……いいえ、旦那様?これで私がそこらの有象無象よりも旦那様の求めるものを提供できると気づいたでしょう?」
私を選べ。選んで。手を取って。
私ならあなたの推しになれる。私ならあなたのどんな欲望にも付き合っていけるから。
そんな、エロチシズムに満ちた媚び方に裕貴の本能は鎌首をもたげる。
目の前の女を貪れ、喰らえ、手篭めにしろ。
こんなにも求めてくる女に手を出して何が悪い?むしろ据え膳を食わねば失礼なのではないだろうか。
気がつけば、麗花の首筋に手を添えていた。
彼女を貪りたい。触れたい。その欲望に屈した。
ダメだろう、これは。彼女の性的な煽りに屈しない男は存在しないに違いない。
何しろ、何度も繰り返すが相手は”あの”氷見麗花なのだ。
世の中の男たちが一度は抱きたいと狙うであろう美貌の、高嶺の花だから。
そんな花が自ら膝を折っている。あまつさえ裕貴の最推しのキャラクターのコスプレの生着替えと、ロールプレイを目の前で演じて見せた。
そこまで挑発されて、我慢が効くほど僕は男を捨てているわけじゃないんだ。
ボソリと呟いた言葉に込められた、ねっとりとした情欲。手を伸ばしていいと認められてしまったものだから。
それに触れていいと許容されたのなら。
手を伸ばさない道理など、欠けらも見当たらない。
ふに、と柔らかい感触が手のひらに伝う。
いきなり胸、という訳にはいかないけれど。お腹に触れるくらいのことはさせてもらおう。
すべすべとしたお腹に手が触れる。
ああ、薄い。
けれど、確かに。これは女として成熟している色香を感じる。
「あ……」
それに対して、麗花の口から漏れ出る声は喜色に染まっていた。
やっと、やっとだ。
やっと、彼の方から触れてもらえた。
それだけのことに、まるで生まれ変わるような心地を感じていた。
肚の底から湧き上がる焔に身を任せて、彼に身を委ねる。
「先輩、いいや……麗花さん」
私の名前を呼ぶ声。
先輩、ではなく。
氷見麗花、という女の名前をそれこそ彼が初めて口にした瞬間といっていい。
関係性が明確に切り替わった、と認識した。
先輩と後輩。そのようなあやふやな、言ってしまえばいつ途切れてもおかしくない薄氷の関係性から、もっとプリミティブな欲望で繋がった気がする。
オスとメス。
男と女。
私が貪られる側で、彼が貪る側。
なによりも単純な力関係に、この現状が落とし込まれたことに安堵を感じる。
ああ、やはり……それが自然な関係だと体が叫んでいる。
今までが歪に過ぎた。
健全なオスとメスが同じ空間にいながら、体を重ね合わせなかっただなんて。
そして、私が着飾ってきた名声や評価なんて、この瞬間の幸福に比べたらゴミ箱に投げ捨てても構わないほどに意味の無いものだと実感する。
「は、はい……」
「好きです」
「ん……ぅ、好きって……」
「さっき、言ったでしょう。好きって言って、と」
それは、そうなのだけど。
順応が早すぎやしないだろうか。
けれど、漏れ出る声が全部がメスに染まっていることを自覚してしまっている。
我ながら、こんな声を出せるだなんて思っていなかったから。
麗花は顔が火照るのを痛烈に感じる。
さっきまではぐいぐいと自分から攻めていくことが出来ていたのに、いざ求めていたことをされるとこれだ。
女は、好きな男に迫られると何も言えなくなってしまうものだ。
なんなら、このまま股を開けと命令されたとしても、喜んで開いてしまうような気もする。
何一つ否定できない自分自身に呆れてしまう。
そうこうしている間にも、彼の熱い眼差しに射抜かれて。
私の体は疼きを抑えられなくなっている。
「はぁ……ん、キス……してほしい……」
媚びるような声でキスを強請る。
ちゅ、ちゅ、と彼の頬に口付けを施していく。身長差自体はそこまで無いのが残念やら、嬉しいやら。こうやって背伸びを無理にしなくても愛しい男におねだりができるのは加点ポイントかもしれない。
それに応えるように、彼が唇に口付けをしてくれた。
麗花は身悶えするような嬉しさに身を焦がす。
「ん……♪……はぁ……♡♡好き……好き……ちゅ……ん……ちゅっ……♡♡」
夢中になってしまう。
どうしようもない。社会性とかいう薄布ひとつ剥がせばご覧の有様だ。
やれコスパだの、やれ男の価値だの、やれ奢り奢られ論争だの。
そんなものは、この幸せと快感を知り得ない落伍者の戯言だ。
心の内より湧き上がる、この喜びを全身で享受出来ないなんて。
哀れにも程がある。
随分と遠回りした気がするけれど、それでさえも、この結末に至るまでのスパイスと考えればそれも味だろうか。
そして、そのようなことを麗花が考えているのと同様に。
裕貴も溢れる欲望に身を任せていた。
ずっと好きだった。
ずっと手に入れたかった。
叶わないと諦めていた、そんな相手と両想いだった。
じゃあ、逃がすわけが無いだろう。自分のモノにしなければならないだろう。
他所の男への優越感とか、そういうものすら眼中にはないのだから、もう僕は彼女に首ったけなのだろう。
激しく交わされるキス。呼吸を忘れるくらいに、啄むように。
互いに思い合い、他のことなんて知らないとばかりに目を合わせては溺れてしまう。
はぁ、と一呼吸入れるために唇と唇が離れる。たったそれだけのことなのに、熱が急速に消えていく。
「……今日は、クリスマスイブ。私、明日は予定開けておいたの、だけれど」
「奇遇ですね、僕も何も予定はありません。家で一日中のんびりしようと思っていたところです」
「じゃあ、その時間を予約してしまっても……いい?」
「もちろん。一緒に居させてください。好きな人といたいから」
「もうっ……!そんな、なんで急に女の子が喜ぶようなことばっかりっ。変わりすぎなんだからっ」
「こんな僕は嫌ですか?」
「嫌、じゃ……無いけど……」
どうしよう。こんな女殺しみたいなことを言うようになってしまった。
今までの彼からは考えられない。けれど、きっとそれは彼が蓋をしてきたものなんだろう。麗花はそう薄らと感じ取っていた。
きっと、彼はこういう感情に蓋をし続けてきた。
その箍が外れたのだとしたら。いいや、きっとそれを外したのは麗花なのだろう。
だから、麗花は考える。
その責任は取らなければならない。いいや、責任を取らせて欲しい……と。
「佐田くん」
「……?はい、なんですか?」
「性の6時間、って知ってるわよね」
「……まあ、縁が無い言葉ではありましたけど」
「私とそれを過ごしましょう。私にできることなら、何でもするわ」
何でもする。欠片も違えるつもりは無い。
あなたが望むなら、なんでも。
だから。
「だから、私をあなたのモノにして」
今日、私はあなたの女になる。
▲▲▲▲
「とは、いったけれど……一緒にお風呂に入りたいって素朴すぎないかしら」
「これがいいんじゃないですか。麗花さんを抱きしめながら温まりたいんです」
いっそほのぼのとしたような雰囲気を漂わせながら、2人は狭苦しい浴槽の中で抱き合っていた。
1人ではいるには余裕があるものの、2人で入るには少し苦しいくらいだろうか。
けれど、それが肌を重ねる言い訳に使えるのだから世の中は分からないものだ。
すべすべとした肌を撫でながら、手を麗花の腹に当てる。
裕貴はそれで満足なのかもしれないが、麗花からしてみればある種の焦らしプレイに近かった。
いっそこのあと前後不覚になるほど、抱き潰される覚悟さえしていたというのに。
けれど……一緒に洗面所で服を脱いだ時に見てしまった彼の逸物を考えると、まずはこうやって焦らされるくらいがちょうど良いのかもしれない。
なにせ、ちらりと横目で見た程度ではあるけれど大きかった。
麗花も、性欲がないわけではない。平均的な男性器のサイズを調べてみたりしたこともある。
その時の情報を脳裏に浮かべながら、比較してみるもののやはり裕貴は巨根と呼ばれる類の男であることは疑いようのない事実だと確信している。
だから、彼女は努めて気にしないようにしていた。抱きしめられているということは尻に彼のそれが当たるということを示していて。
その大きさに、少しだけ。そう、ほんの少しだけ慄いていたりするなんてことはないのだ。
「……私、何でもすると言ったのよ。好きなところを触ってもいいのに。ヘタレなのかしら。無いように見えるけれど、胸も少しはあるのだけど」
「……まだ、ちょっと実感が湧かないので。でも……麗花さんの香りは、いい匂いがしますね」
その言葉を聞いて、恥ずかしくなる。
体臭を嗅がれている、言葉にすればそれだけのはずなのにやたらと恥ずかしさが襲ってくる。
私だけがそんな気持ちになるのはちょっと、不公平ではないだろうか。
だから、無理やり彼の手を掴んで自分の胸を触らせる。
良いって言っているのだから触れ。むしろそのまま揉みしだけ。
「ん、もう……やらしい手つき……」
「そっちが触らせたんでしょうが。……でも、柔らかくて、しっかりと存在感がある……」
「ふふ、有名女優のおっぱいを触った感想はどうかしら」
「興奮しますよ、とても今心臓がドクドクしています」
「そう……確認してもいい?」
「ん、どうぞ」
少し姿勢をズラし、彼の胸に耳を当てる。
彼の言った通り、激しい鼓動が聞こえる。
それはつまり、彼の言葉を信じるなら。
自分の体に触れて、興奮しているということに他ならない。
あ、固くなってる。
不意に触れてしまった彼の男性器が硬くそそり立っていることにも気付く。
鋼のように、固く。炎のように熱く。
「固くなってる、のね」
はっ、はっ、と息が少し荒くなる。
こんなに、熱くて、固くて……それでいて、脈打っていて……。
じゅん、と疼く。自分の奥底で、蠕動するのを感じる。
「えっと……はい。その……」
「出ましょう」
即断即決。
というか、もう我慢ができない。
こんな焦らされ、据え膳にされて、それで手を出してくれないなんて許さない。
「我慢の限界。そうやって私のことを虐めるなんて酷い人」
「虐めてなんて!」
「いいえ、虐めてる。据え膳放っておくなんて女の扱い方が上手すぎて嫌になるくらい」
私、もうとろとろに仕上がってしまっているのよ?
無意識の加虐に及ぶなんて、オスとしての才能に満ち溢れすぎていて。それなのに、それにずっと蓋をさせてきたことに今更ながら恐怖すら抱いてしまう。
「ほら、その大きなモノを鎮めるにはどうしたらいいか……分かるわよね?」
私を使って。
あなたの女に奉仕を命じて。それでいいの。私はあなたに服従する女なんだから。
気丈に振舞っていても、その事実は痛いほどに私を苛む。
男に組み伏せられて、支配されて、満たされたいのだから。
ざばり、と水音を立てて風呂から上がる。
そして、そのまま彼の方へ向かって尻を向けてふりふりと挑発する。
「ベッドに行きましょ?今日は寝かさないわ。……違うわ、逆よね。私が寝かせて貰えない、かも……ね?」
あえて背を向けて浴室を後にする。
彼の目を見る勇気がなかったから。
けれど、見なくてもわかる気がした。
ぎらぎらと光っているに違いない。麗花の大きな尻を睨めつけているに違いない。
その大きな手で揉みしだきたいと虎視眈々と狙っているに違いない。
けれど彼はその気質から遠慮してしまうだろうから。メスとしてそれをちゃんと解き放ってあげないと。
「麗花さん……!」
後ろから声がかかる。
期待していいんでしょう?
ここまで煽ったから、ちょっとあとが怖いけれど……必要経費ってことで割り切ることにしましょうか。
▼▼▼▼
「遅かったわね。着替えちゃった」
「麗花さん、それ、神鷹の……」
「そ。あなたの大好きな神鷹。さっきも着たけれど、堪能する余裕なんてなかったものね」
「それを着てるってことは……」
「コスプレセックス、しましょ?」
コスプレセックス。
同人界隈では当たり前のようになされているらしいが、それに倣うことにした。
コスプレというものは、そもそもちょっと可愛いくらいの女でも数万だかのフォロワーが得られるくらいの劇薬と聞く。
だから、私がやればご覧の通り。
目の前の男は即座に臨戦態勢に突入しているではないか。
「ふふ……旦那様……神鷹は待ちわびておりました。今夜は可愛がってくださいませ。ずっと放置されて、寂しかったのですよ?」
前もって履修しておいた神鷹の口調に寄せる。仕事柄演じることはは得意である。それを活かさない手は無いだろう。現役女優がコスプレをして、ロールプレイをして、セックスを盛り上げる。なんて贅沢なのだろうか。
ベッドの縁に腰かけていた所を、そっと立ち上がって彼の体にぴっとりと寄り添うようにして立つ。
やっぱり、男の肉体と女の体では断然違う。
その違いを実感して、麗花は微笑む。
「旦那様の、こぉこ……かたぁくなってますわね……?不肖神鷹、ご奉仕させていただきます」
「ああ……」
手でそっと彼の逸物に触れる。触れただけでびくんと跳ね上がる。
そっと手で扱く。やわやわとした動きではあるが、快楽はどうやら感じ取っているらしい。
少し不慣れなぎこちない動きではあるが、それがかえって不規則な快感となって性欲を刺激していく。
「旦那様のおちんぽ……♡♡かた〜い……あつくて、大きくて……♡♡こんなモノで貫かれたらどんな女でもメロメロになってしまうんでしょうね……♡♡」
こうやって言葉で煽っていくのも忘れない。
神鷹なら、こうしたに違いない。
旦那様と呼ぶ、プレイヤーの写し身たる主人公に彼女が奉仕するなら、きっと2人きりの時しか見せない甘い声でお願いするのだろうから。
私は神鷹になりきらねばならない。
そして、彼に愛される。寝かせて貰えない。頭が壊れるほどに。
奥まで貫かれては喘ぎ声を張り上げて、膣肉で浅ましく媚びてしまうのだ。
それを想像するだけで……たまらなくなる。
そして……限界を迎える直前の彼の逸物から手を離す。びくんびくんと跳ねて、射精させろと訴えかけてくるその動きに少し名残惜しいものを感じながらも、もっといい提案をするつもりで。
「旦那様、手にお出しになられるより……神鷹めのここに……おまんこに、ぎっとぎとの濃ゆ〜い精液をお出しくださいませ……♡♡私にお情けをいただけますか……♡♡」
そのまま、これみよがしにスカートとショーツを脱ぎ捨てて、中腰になって秘部をさらけだしてオスを誘う。ふり……♡♡ふり……♡♡と彼の……逸物……いいえ、そう……おちんぽに媚びるような素振りを見せてしまってもそれは仕方の無いことだから。
けれど、彼から返事はない。
少し不安になる。いやらしく振る舞いすぎただろうか。彼の好みに合わなかったのだろうか。
そうやって、後ろを振り返ろうとした瞬間。
大きな手が私の腰を掴む。
「あ……♡♡」
逃げられないことを悟ってしまった。
こんなに煽ってしまったのだから、当然のことだ。オスをイラつかせた代償は体で払わねばならない。
残念なことに、私は処女であったから。そのことを完全には理解してはいなかったのが運の尽きというべきか。
「フーッ……フーッ……」
「優しく……して?……無理、よね……♡♡」
荒い息遣いが聞こえる。
ぴとりと入口に固いモノが宛てがわれる。
さようなら。私の純潔。
そして、召し上がれ。私の好きな人。
コスプレさせた極上のメスの処女をクリスマスに破る快感を味わって欲しい。
そして願わくば……手加減無しに。
「どうぞ、召し上がれ……♡♡」
それが、私の断末魔代わりになった。
どちゅり、と奥まで貫かれる。
一瞬理解が出来なかったものの、それが奥までおちんぽが刺さったことに気付く。
そして、遅れて、快感が────。
「あっ、ああっ、あああああああっ♡♡なに、これぇっ♡♡しらにゃっ♡♡こんにゃの、しらっ♡♡ぉ”っ♡♡」
脳みそが沸騰するような快楽が叩き込まれる。
けれど、ここでいやらしいのはえっちな本でありがちな激しい抽挿に走らなかったこと。
まるで、彼のおちんぽは私の膣内を舐るようにじっくりと味わっていくのだから。
ゆ〜っくり……ゆ〜っくり、私の膣をコスり上げてねっとりと楽しんでいる。
簡単に射精はくれてやらないという意地悪さに悲鳴を上げる私の体。
けれど、それ以上にじっくり楽しみたいと思ってもらえていることに、喜びさえ感じている。
ずち、ずち。
ねと、ねと。
ずろぉ〜っ……。
どちゅ、ごちゅ。
ぐちゃ、ぐちゃ。
おちんぽですり潰すように。
子宮を虐待するように。
悪い子を躾けるように。
涙を流す膣を慰めるように。
甘やかしながらも、虐め抜くという矛盾のような性行為を、彼のおちんぽは実現してしまえる。
「ぉお”〜っ♡♡んきゅっ♡♡お”っ♡♡い”っ♡♡あっ♡♡あっ♡♡」
そんな事をされているのだから、必然的に私の喉から漏れ出る声も苦痛と快楽がミックスされた声になってしまう。
やめて、ひどいことをしないで。
もっとおねがい、もっと愛して。
そんな所をいじめちゃダメ。
もっとそこを叩いて、捏ねて。
いっそギロチンにかけられてしまう方が楽に違いない。一瞬で終わりを迎える方が遥かに。
まるで、拷問と天国が共存しているようなひどいセックス。
本能で理解しているのだろう。こうした方が女を長く味わえて、より美味しく仕上げることが出来るということを。
酷い人。そんなことをしなくても、私の子宮と膣はもうあなたに心酔しているというのに。
そんなことは知らないとばかりに虐めるんだから。
奥まで突いて、捏ねて、叩いて。
女という肉の塊を柔らかく、味わい深くするための、淫らな調理工程のよう。
こんなセックスを教え込まれてしまっては、もう後戻りなんて出来ないじゃない。
けれど、これが望んだことなんだと。
メスとしての喜びなんだと心底理解させられてしまった私の脳裏には、そんな文句が泡沫のように浮かんでは消えていく。
メスの喜び。
逞しく、強いオスに組み伏せられてメスを吟味されて、味わい尽くされて未来永劫支配されること。
承認欲求なんて、目じゃないくらいに鮮烈なセックスを叩き込まれてしまった。
もう、これが無いと生きていけない。
離れられるわけが無い。ダメになってしまう。
おちんぽが抜いて、突き入れられる度に脳みそがぱちぱちと壊れていく感覚がする。
世の中の女は、こんなセックスを味わったことがあるのだろうか。
あったのなら、街ゆく女たちはみなスケベだ。だって、こんなひどいことをされているのに素知らぬ顔で街を歩いているのだから。
ないのならば、それはとても不幸なことだ。
こんなにも幸せな気持ちになれることを知らないのだから。
全てが壊れていき、全てが作り直されていく。
1秒前の性を知らない私は、1秒後のメスの権化の私に置き換えられていく。
多幸感が脳を支配して、占拠する感覚にどうしようもない安心を感じてしまう。
大きく、強く、偉大なものに捧げられている。そんな幸せ。
「あ”っ♡♡おっ♡♡でっ♡♡りゅ♡♡イッ♡♡イキ♡♡そうなのっ♡♡らしてっ♡♡おねがい♡♡」
そうして1秒にも数百年にも感じる虐待セックスを受け止めていると、ぷっくりと竿全体が膨らみ膣肉をぎちぎちと押し上げる。
ああ、射精するんだろうな。
私の子宮にぎっとぎとの精液を無遠慮にぶちまけて、たまごの逃げ場のないくらいにこびりつかせるんだろうな。
どこか冷静なまま、私は絶叫していた。
浅ましく、オスに種を乞う。
それがあるべき姿であるというかのように。
旦那様の種を受け止めるのは、妻の役目なのだから。
おちんぽを気持ちよくするのは、オナホの仕事だから。
気持ちよくコキ捨てて孕ませていただかなくてはならない。
だから。
「だ、ひて……♡♡」
その懇願をきっかけに放出された、ビュルビュル〜〜ッ……!と濃厚で、重たい射精を胎の底で受け止めながら……私は女に生まれたことを心の底から感謝して。
体を痙攣させてオスの欲望を受け止めるがままなることになってしまった。
あとは推して知るべし、と言ったところ。
煽りまくられたオスが、メスをたった1回の射精で許すわけが無いというのは、分かりきったことだから。
そのあとも。そのまた後も。その次も。
対面座位で。正常位で。種付けプレスで。
文字通りの「寝られない時間」を私は過ごしたのだった。
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「……うわ、ひどい有様」
裕貴は目を覚ました後、自分の部屋の惨状に瞠目した。
クズ籠はティッシュでいっぱいになっている。
籠った匂いが部屋中を漂い、さながら地獄のような様相を呈している。
覚えているのは、彼女と体を重ねた瞬間……までだ。
あのあと、どうやら自分は彼女を犯し尽くしたようで。
隣を見れば、幸せそうな顔で眠る麗花の姿がある。
裕貴の右腕に抱きつくその寝顔に見とれてしまう。
「……まあ、いいか。なるようになれ、だ」
彼女をそっと抱き寄せて、裕貴は再度眠りにつくことにした。
彼女が目を覚ました時に、改めて。これからのことを話し合うことにしよう。
コスプレ衣装は使い物にならなくなってしまったけれど、それでもそれ以上に大事なものが増えたから。
「おやすみ、麗花さん。愛してる」
2人で仲良く、眠るその姿は。
幸せという言葉を、形にしたようだった。
読了ありがとうございます。
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