※この作品はR-18です。

ぐっちゃん先輩一夜の過ち(事後)   作:akdblack


原作:Fate/GrandOrder
タグ:R-18 FGO Fate/GrandOrder 虞美人
FGOの虞美人先輩がマスターとなんやかんや一夜を共にする話です。
作中は原作ゲームと違う設定があります。

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ぐっちゃん先輩一夜の過ち(事後)

 私は全力で駆けていた。

 オケアノスの草原には生命が満ちていて、自然から魔力を汲み上げる私が疲労を感じる事はない。

 このまま地平の果てまでも走り続ける事ができるだろう。

 けれども背後から響いてくる、さながら火砲が炸裂しているかのごとき疾走は、今にも私の影を踏まんとしていた。

 土石を砕き草木を折り飛ばしながら迫るは、漆黒の巨躯をもつ禍々しい大男。希臘の英雄ヘラクレス。

 仲間の英霊らと足止めの手段を幾つも行使しているのにも関わらず、奴を突き放す事はできやしない。

 私を踏み潰し、マスターと女神の少女に追い付くまではしばしの猶予もなかった。

 ほんの数秒の時を稼ぐのすら、命がけでも足りないのだろう。

 

「……だからまあ、安いものよね」

 

 振り返りざま、霊基が弾けんばかりに魔力を廻す。

 

「貴様に幾つの命があろうとも! 幾千年連なる我が命、我が呪いの前では蟷螂の斧に過ぎないとしれ!!」

 

 今日六度目になる呪血尸解嘆歌。

 地と空を黒く染め上げる呪詛の暴風雨に巻かれて、神話の英雄は跳ね飛ばされていく。

 しかし、一回目以降は何度やっても大した傷は与えられず、庇った腕を幾らかえぐり取っているだけ。

 宝具の威力とランクが足りてないのかしらね……? 英雄らしいけれどアイツなんかずるくない?

 とはいえ手管を変えた術によって、ここら一帯が呪詛の泥沼に深く浸かっては奴と言えども足を取られている。

 その代わり泥が消えても草木が育まれるまでには幾十年とかかるだろうけど―――ま、しょうがないわね。

 

「ちっ、呪いもまた効きづらくなってる……啖呵切って全身全霊をかけてこれって……サーヴァントって魔力少なくて不便だわ。

 大体あいつの人――じゃないけど使いが荒いのよね。はぁ、あと何回しないといけないのよこれ……」

 

 肉体を再構成させながら、マスターへ追い付くために走った。

 戦いはまだ始まったばかりで、奴を止めるためには私の永遠をもう幾らか費やすしかないようだった。

 

 

 

 鈍い頭痛に苛まれながらも目を開き白い天井を見上げた。

 自分がどこにいるのかわからず瞬きを何度か繰り返す。

 そのまましばらく経ってから周りを見渡し、カルデアの一室と気付いて身を起こした。

 いや、遅れてきた痛みのため、額へと手を当てたまま一時は動けなかった。

 

「……つぅ…………」

 

 どうにか起きると、ぐらりとした感覚と共に額の奥には疼きのような鈍痛が続いていて、重く崩れ落ちそう。

 

「あ……私……飲んでから寝て……つっ…………もうっ、飲まされすぎたわ…………」

 

 昨夜は特異点修復の祝いなどと言い出したサーヴァント達が中心になっての宴会があったのだ。

 付き合う義理などあろうはずもないのに、強引に勧められて断りきれなかったのは迂闊としか言いようがない。 

 

「くっ荊軻め……勝手に乾杯して勝手に飲んで……しかも勝手に飲み比べにして……

 というかなんで宴会なのよ……サーヴァントでしょうが私達は……」

 

 私は身体を傾けて、またベッドへと身を沈める。

 背に何か硬めのクッションのような感触があったが、頭の痛みの前には些細な事にしか感じない。

 

(霊体化して再構成すれば治るんでしょうけど……それもつまらないわね……)

 

 数えるほど……いや、もしかしたら初めてかもしれないのだ。

 聞いた事しかない人間の言う二日酔いという体験は。

 生前――そう言っていいものなのかは曖昧だけれど――酒を浴びるほど飲んで酔っ払うなどという人の如き無様な真似はするはずがなかった。

 カルデアに英霊として召喚されてからが初めての経験だったでしょう。

 夢を見たのも……そうね。とても永く見ていなくて新鮮に思えるわ。

 幾つか前の特異点の記憶だけれど、不思議とはっきり思い出す事ができた。

 

「それにしても……平行世界へ呼ばれるなんて……ね……」

 

 私――虞美人が召喚されたカルデアには、芥ヒナコという所員が存在した形跡がなかった。

 呼び出されたばかりの私に映ったものは半壊したカルデアと二人の少年。

 秦を台無しにした忌々しい後輩と――大盾を持った年若い騎士のギャラハッド。

 冬木という街で戦いを終えて、状況を把握した私は嫌でも理解せざるを得なかったわ。

 ここは人理焼却が為された2015年のカルデアに、とてもよく似た別の世界だということに。

 

 何らかの理由でマリスビリーが私をマスターの保険などにする必要がなかったのでしょう。

 Aチームには知らない人物が何人か増えており、予定されている英霊も数多く、設備も幾つか増設されていた。

 どうやら私の知っているカルデアよりは運営が順調だったのが原因のようだった。

 結局レフ・ライノールの爆破までは防げなかったみたいだけど。

 でも、そんなことは些細なこと。

 以前のカルデアとは違ってデミサーヴァントの計画が存在しなかったほうが衝撃的だった。

 つまりは。そこで生まれるはずだった彼女がいないという事で、そこに少しだけ寂しさを覚えた。

 

 そのせいか代わりみたいにいるギャラハッドとはまともに話せていないのが気まずいのよね……

 蘭陵王を彷彿とさせる義理堅く清廉高潔な男で、人間にしてはなかなかの奴なのだけれど。

 まるで彼女の、マシュ・キリエライトの居場所を奪っているように私は思えてしまうのだ。

 つまらない感傷でしかないが、それが私に在るというのが不思議ではあった。

 人間はみんな嫌いなんだけどね。

 

 …………まあ悪い事ばかりではないのよ。

 過去ということはこれから先もカルデアへと英霊達が召喚されるのは間違いないでしょう。

 私がカルデアに長くいることで項羽様との縁が結ばれて、新たに召喚される可能性も高まるというものよ。

 それに後輩がマスターというのは百歩譲るとして、もしも芥ヒナコが凍結されている過去に虞美人として私が召喚されたとしましょう。

 どう説明すればいいのか困るに決まってるわ。生憎と私は人間相手に何かを誤魔化せる自信なんてこれっぽっちもないもの。

 人間は悪辣で嘘つきだから。そこだけは褒めてもいいわね。もちろん皮肉だけれど。

 ……他人の空似で通じるものなのかしら。他の英霊達はどこかで自分と出会って困ったりはしないのかしらね……?

 

「というか、もっと酷い事もありえる……?」

 

 最悪の想像に眉を顰めた。 

 まかり間違ってこれから先にクリプターとなったAチームとの戦いに参戦したら、私自身はいなくても秦では間違いなく項羽様と争う羽目になるじゃない。  

 どうなるかはわからないけれど、そんな未来は望みたくないわ。

 …………未来を考えて不安になるのって思ったよりも、気分悪い。

 こんなの人間みたいで二重に嫌になる。はぁ……。定命の者も苦労してるのね。

 

「全くとんでもない。サーヴァントなんてなるもんじゃないわね。

 ……後輩がどんな旅をしてるかと思ったら、爆弾代わりにされたり悪い冗談そのものの特異点もあったし……それに……それに……」

 

 私は考えこむようで、いい加減気づいていた。

 過去を思い出しつつ気づかない振りをしていたのだ。

 昨夜どれだけ飲んだかも思い出せない酒量。いつもどおりではあるが裸の私。自室ではないがとても見覚えのある別の部屋。

 なにより背に敷いた、枕にしては妙に柔硬くて幅と厚みのある触感。

 私は動揺で手が震え出すのを感じながら、身を起こしてシーツをめくった。

 

「やらかしたー……」

 

 そこには全裸で眠っている後輩がいたのだった。よく見なくてもシーツの端から黒髪が出ていたし。

 うっすら思い返すと宴会最中に後輩と抜け出した記憶がある。

 未成年だと言うのに、昨夜の私は後輩の部屋で荊軻のごとく飲ませるのを強制したりもした。

 顔を赤くした後輩は何年か前のせいか、秦で遭遇した時よりもどこか子供っぽくて少し可愛く思っちゃったりだなんて。

 それで……こいつ結構頑張ってるし? 何度も何度も死にそうになっているから、たまには先輩の私が優しくしてやろうとか考えたんじゃないのかしら多分。

 少しからかってやったら生意気にも目つきが真剣になってんのよね。

 戦ってる時の顔に少し似てて……前後不覚だった私は迫ってくる後輩を引き離せなくて。

 後輩の顔がどんどんと近づいてくるのを思い出して、私はぎゅっと目を瞑った。

 それから先の出来事も幾つか思い出してきて熱を感じる。当然ながらただ添い寝しただけというはずもない。

 頭痛ではない何かに頭を抱えていると、後輩がもぞもぞと動き出して目を開き視線がぼんやりと向いた。

 

「ん……あ……おはよう先輩」

「おはようじゃないわよ後輩」

 

 嬉しそうにはにかむ顔が気に入らず、私はシーツを叩きつけるようにして後輩へと被せた。

 

 ……一応言い訳をするとね、人間達の歓待を受けた記憶はそれなりにあるわ。

 山の奥地で暮らしてたりするけれど、よく人里へ降りてたりもしてたから。

 人間嫌いなのになんで人がいる所にですって? いいじゃない私の勝手よ!

 ただ昨夜のように、精霊だと隠す必要もない気楽な宴は初めてだったのよ。

 人間ではない英霊達も多くてまあ話しやすいし、日ノ本の妖怪や西欧の精霊の発祥を聞くのも案外いいわね。

 神霊は正邪どれであろうとも人間と深く関わってるのが面倒そう。

 あと荊軻と地元ネタっていうのかしら? たまたま同じ時代の場所知ってたから存外に話が通じるし、飲み比べじゃなくても

飲んでるうちに楽しくなっちゃってから、後輩を連れ回してたのよね。

 ……ええ。迂闊に過ぎるわ。

 まるで日本の学生が二十歳を迎えたばかりに、初めて飲み会とやらに参加して浮かれて暴走したみたいじゃない。

 ……まあ…………少しばかりそれに近い出来事なのは否定できないわね………………………………………………

 

 そんなわけで私はカルデアの端っこにある使われてない住居用の部屋で気配遮断しながら隠れてたわ。

 なんとなく目立たないように眼鏡つけて三つ編みを身体に巻き付けたまま、膝を抱えて小さくなってた。

 何故かだって? もちろん、どんな顔して後輩に会えばいいかわからないからよ。

 もうかれこれ半日近く経ってるみたい。

 いっそ次の特異点が見つかってレイシフトするまでこのままでいようかしら?

 それがいいわね。そうしましょう。

 

「先輩! 隠れてないで出てきて!」 

 

 けれども忌々しい後輩は許してくれなかったようね。

 突如ドアを開けて室内を見渡すと、影が薄くなるくらい隠れてるのに私のほうへと真っ直ぐ歩いてきて、しゃがみこんできた。

 

「よくわかったわね……それに仕事あったんじゃない?」

「魔力つながってるでしょ。なんとか切り上げてきたよ」

 

 気配遮断を見つけるまでに苦労したのか、それとも仕事が忙しかったのか息を荒げてる。

 なんでこいつこんな必死になってんのよ。

 いいからほっときなさい。どうするかは次のレイシフトまでに考えとくから。

 

「俺、先輩のコト本気だから。昨日のことはお酒だけのせいになんてしたくない。だから先輩も話を聞いて」

「ぬぐぅっ……」

 

 コ、コイツ考える時間くれる気がない。流石は将来人理修復を成し遂げる予定のマスターね。

 兵は拙速を尊ぶとでも言う気? なに覚悟決めちゃってるみたいな顔してるのよ。

 ちなみに、元カルデア所員だというのを隠してる私をこいつが先輩と呼んでいるのは、馴れ馴れしく虞美人なんて

呼んでくるものだから、ついムカついて口を滑らせて、私のほうが先輩なのよって言っちゃったのよね。

 精霊で長く生きてる人生の先輩だからって付け足して誤魔化したけど、今思うと矛盾してるわね。人の生なわけないでしょ。

 いいから。韓非子の勉強だと思って受け入れなさい後輩。

 ……わかってる。これから気を付ける。気をつけるってば。ええ。きっちり決めてあげる。

 

「ふん。仮にもマスターだからと優しくしてやったらのぼせおって……自惚れるでない!

 しょせんは一夜の戯れ。精霊たる私が本気で人間と契るはずがなかろう!」

「そういう仙人ロールプレイはいいから」

「ろーるぷれい……!?」

「それ戦う時や知らない人と初めて会った時とか、何かを誤魔化したい時の口調だよね。壁を作ってるっていうか。

 先輩の素の口調バレてるんで俺には通じない。ちょっとあからさま過ぎるとこあるよね」

 

 この野郎……忌々しいやつめ……

 定命の人間風情が精霊たる私を見透かしたような物言い。不敬にもほどがあるわ!

 ……しかし、まあ……情状酌量の余地はある。

 気づいたらこいつの部屋にいる事が多いのよね……普段は他の英霊と打ち解けないっていうかなんだかんだ話せてないっていうか。

 かと言って自分の部屋にいるのも退屈だし。後輩が仕事してるあいだにタブレットで漫画とか読んでたの。

 芥ヒナコしてた時には私の本しか持ってなかったから、初めて漫画なんて読んだんだけど、まあまあいけるわね。

 人間全部嫌いだし、文明とか文化なんてのも少しうっとおしいけれど、それ全部を否定してもしょうがないから。項羽様が守ったものでもあるしね。

 後輩も私がそういうの読んでるの嬉しそうだったし。

 ともかく! ロールプレイという表現は先輩への尊敬の念が足りてない。

 そこんとこわかってる!? が、当の後輩は睨んでもあまり答えていない様子。

 まったくわかってるのかしら……

 はぁ……まあ、いいでしょう。後輩相手にいちいち気を張る必要なくて、鯱張る物言いはあんまりしてなかったし。

 マスターでもある後輩をあんまり怖がらせのもよくないから。これもサーヴァントなりの気遣いってやつ。

 …………ちっ、しょうがないわね。今回は許してあげようじゃない。次はないわよ。

 

「お前……わかってるの? 私には項羽様がいるのよ」

「先輩が項羽様を一番大事に想ってるのはよく知ってる。項羽様の話を始めたら三時間は聞いてる。

 項羽様を召喚しなさい。それがお前の役目だからっていつも言われてるから」

「ふむ、ならばよろしい」

 

 項羽様の偉業は歴史に伝えられていても、真実は私しか知らないものね。

 ええ、後輩には余すことなく伝えないといけないから。

 っていうか聞いてくれるの後輩しかいないのよね…………休みの度に三時間は長かったかしら?

 そうね。限りある時しかない人間には話し過ぎかもしれないわね。こちらも気をつける。

 これからはなんとか一時間半ぐらいにしてあげる。

 次に話す内容は、項羽様が召喚されてほしいけどもう戦ってはほしくないから、ご機嫌を

損なうことなく平穏にカルデアで暮らしてもらう方法よ。

 項羽様がもしも召喚されたならば、人理を救う守護者として戦うのは間違いありません。

 けれども、項羽様は現世で戦乱を収めるために戦い続けていて、しばしの休暇をとられてもいいでしょう。

 なので後輩がマスターとして……項羽様に主従の関係を押し付けるのはいやね。

 だったら軍師として……だから戦ってほしくないんだってば!

 うーん……やっぱり無理あるかしら……? そもそも英霊は戦うために呼ばれるものだし…… 

 

「先輩先輩ちゃんと話聞いてて」

「なによ。聞いてるわよ。項羽様にいかに平穏に暮らしていただくかという話よね」

 

 項羽様の先行きを考えていた私を見る後輩は、はぁっとため息をついた。

 

「うん全然聞いてない。平常運転過ぎる。昨日の話だよ」

「あ、そうねっ、ええわかってるわ……」

 

 少しばかり夢中になったかもしれないわね。大事なことだから。

 

「いいよ。項羽様の話する時の優しい顔した先輩も好きだし」

「むぅ……」

 

 直截な言葉は思いの外、ぐらりときた。少しだけ傾いた。

項羽様を引き合いに出されるのは嬉しさよりも恥ずかしさのほうが大きいわね。

 後輩に言われるのはいっそ恥辱だわ。けれどそんなに嫌じゃない。不可解ね。

 こいつめ……さては特異点行くたびに英霊を引っ掛けるみたいに私までたらしこもうって腹ね。

 ……いや、この表現は流石に英霊らに失礼かしら。

 戦って。守って。立ち向かって。後輩の行動と心に彼らは付き合ってくれてるのだから。

 カルデアに召喚されて半年以上も苦楽を共にした私も例外ではないでしょう。悔しくも、だけどね。

 

「私はおまえを嫌いじゃない。……まあ人間にしては好ましいかもしれないわ」 

「先輩……!」

「だとしてもよ。人間の中ではという話。私は人間が嫌いで項羽様を愛している。

 おまえがどれだけ私を想おうとも、私の身も心も魂さえも項羽様に捧げるべきものよ。

 例え項羽様が望まなくてもね。私が私である限りそれは譲れない」

「う……そう、だよね……」 

「ええ。おまえはどこまでいっても二番でしかない。私はそういう女……だから言ったでしょ。

 一夜の戯れと。おまえとは遊びよ遊び。本気になられても困るのよね」

「う、ううう……」

 

 よし。悪女ロールプレイ決めてやったわ。

 ちょっとばかり絆深めてるからって、言う通りになるなんて思わないことね。

 なんだか泣きそうになってるけれど諦めなさい。人と精霊なんて相容れないものなのよ。

 とは言ってもこいつはそんな事気にしないんでしょうけど。

 人外の英霊とも別け隔てなく付き合える奴なんだから。

 ……想いだけは受け取ってあげるからそれ以上は秘めておくことね。

 そんな事を考えながら悪い笑みで勝ち誇っていた私だったが  

 

「だったら二番でもいいよ! それに、項羽様を召喚しなければ俺が先輩の一番だ!」

 

 ガーンとベッドで後輩を見た時以上のショックに襲われた。

 

「なんですって!? ガキみたいな事言ってるんじゃないわよ!

「だってまだ未成年ですー! 先輩こそ子供の俺を誘惑した責任とってよ!」

 

 こいつめ~~……こんなわがまま言い始めるなんていい度胸じゃない。

 マスターとサーヴァントじゃなければ、中国史実に残るあらゆる拷問を試したくなるほどの言動。

 以前の私だったら、執行者と退魔師と陰陽術師と吸血鬼狩りと魔女狩りと獣狩りに追われた時の経験と合わせて残虐かつ惨たらしい死を与える所よ。

 っていうか追われてた敵が多くない? いやになるわ。はぁ……ってそれよりも誘惑ってなによ。

 断片的にしか覚えてないから何をどう誘惑したかなんてわからないのよ!

 私はそんなふうに後輩を睨みつけていたのだが

 

「ごめん先輩……」 

「へっ?」

 

 いきなり謝られて、力が抜けてしまった。

 さっきまでの勢いはなく申し訳なさそうに後輩はこちらを見ていて、叱られた子犬みたいね。

 

「かーっときてつい……言い過ぎちゃった……」

「ああ、そう……わかればいいのよわかれば」 

 

 待ちなさいよ。怒る前に謝られたらどうすればいいかわからないでしょう。

 こいつがいきなり私に逆らうなんて思ってもいなかったから、戸惑ったじゃない。

 ……………………まあ、冷静に思い返すと後輩のわがままというか項羽様を召喚したいのは私の都合なんだけれど。

 そう考えると、今までは言うことをずっと聞いててくれてたけど、そうする必要は別にないのよね。

 本当に……いやこんな事で嘘つくわけないわね。私を慕ってるのならば、そりゃ恋敵を召喚したくはないわよねぇ……

 流石にこれは……ううう、どうも調子狂うわね……秦でやらかしてくれた憎たらしい後輩と同じ顔なのに

少し子供っぽいせいか、なんだか悪い事した気になってくるのよ……

 私って、子供が苦手なのかしら……?

 昔も正体がバレた時に家族の中から子供だけつい残しちゃって、数十年経ってから術師と共に罠にかけられた事あるし……その時はちゃんと皆殺しにしたけれど。

 

「先輩が項羽様を好きで、きっと項羽様も先輩を大事にしてたんだろうって。

 でも俺だって負けてるわけじゃないって言いたかったのに、変なこと言っちゃって―――」

「もう……しょうがないわね……ほら」

「ん、先輩?」

 

 みなまで言わせず後輩を引っ張るようにして一緒に立ち上がった。

 頭でも撫でてやろうとしたものの、長く座ってたせいか、足がなんだかだるい。

 って、ちょっと……! 凄く痺れてるじゃない……!

 

「なっ、ぁっ……」

「うわわ」

 

 無様にも、私は後輩を押し倒すみたいにして床へと倒れ込んだ。

 くっ、たかだか十時間くらい丸くなって座ってただけでしょうが!

 

「えっと、その……もしかしてオッケーってことなのかな?」

「むぅ……いいとか悪いとかじゃないわよ。……おまえがあんまり情けない顔してるから、面白くてよく見ようと思っただけ」

 

 私は適当に言い訳しながら、後輩の上に乗っかってた。

 まだ足痺れてるの。もう少し待ってね。

 

「ひゃっ」

「先輩……」

 

 なのに後輩は何か勘違いしてるのか、そのまま抱きしめてきた。

 近い。近過ぎて匂いも体温も伝わってくる。とても暖かいのになんだかぞくっとする。

 ……華奢な見かけのくせ、わりとがっしりしてるのね。

 異聞帯の秦ではなく、人型であったこちらの世界の項羽様とは比べるべくもないが、触れる胸板は存外に広くて厚くて堅い。

 私の身体がすっぽりと収まってしまっている。

 仕事をしていたためか少しツンとくる汗や体臭を感じた。

 う、これは……こんな風に抱かれている感覚を、久しいというにはあまりに永くて忘れていて。

 大体二千年と何百年ぶりかも……まてまて、あんまり力入れるな足にひびくぅっ…… 

 

「こっち向いて……」

「ぅん、……ん、んんっ……!」

 

 口付けをされた。う、んっ……触れた唇からぞくぞくが広がってきて……

 不意打ちなのに、昨日もしたみたいだし、それとも後輩だから? 嫌ではなかった。

 ただ、じんじんとした痺れが足からも広がってきて、つい涙が。雫が頬を流れて後輩へと伝っていった。

 

「ごめん……項羽様がいるのに。でも我慢できなかった」

「ち、ちがうわよそんなんじゃ、ないから……そのままでいなさい」

「うん……」

 

 頷いた後輩は私をぎゅっと抱きしめたまま動かなかった。

 痺れがそうしてる内に楽になっていくけれども、後輩の誤解は解けなさそうね。

 勘違いしてるでしょ。本当に違うの。

 後輩に抱きしめられて接吻されたからって泣くわけないでしょ。純粋に痺れのせいだから。

 私を気遣ってるのか、抱いてる力は柔らかくて髪を優しく撫でてくる。

 子供扱いされた意趣返し? それとも慰めてるつもり?

 余計なお世話よ全く。まあおまえがしたいんなら別にいいけど。

 

「もう一度キスしていい?」

「おまえがしたいならすればいいじゃな……ん、ふっ…………」

 

 どれだけしたかったのか、言い切る前に引き寄せられて唇が塞がれた。

 憎らしいことに嫌どころか心地がよくて、後輩の気持ちが伝わってくるように思える。

 眼鏡が引っかかってるのに後輩は止まらない。

 ん……あ、もう……ちょっとは遠慮しなさいよ……舌まで入れようとしてきちゃって……。

 私が吸血種だと人間どもにみなされてるの忘れてない? 今は牙生やしてないけど血ぐらい吸えるのよ?

 でも後輩は舌先でつつくように唇へと触れてきてて、そんなの関係ないという有様だ。

 

「……ん、ちゅ……ん、れろっ……ん、ふ……」

 

 しょうがないから私のほうからも少しだけ唇を開くと舌を入れられた。

 あ、これって……その、気持ちいいのね……昨日もこんなキスをしたの覚えてる……

 最初は遠慮がちなくせ、だんだんと勢いよく吸い付くみたいに舐めてきてる。

 本当に犬みたいなんだから後輩は。

 

「ちゅっ、む、ん……ちゅぇっ……んぉっ……んんっ……」

 

 気づけば私のほうからも舌を合わせていた。

 ぬめった肉の感触は、永きにわたる生の中でも数少ない鮮烈な味わいがあった。

 たかだか粘膜を擦れ合わせているだけなのに、何かが満たされるように心地よく思えたのだ。

 夢中になっている後輩も私の口の中を好きなだけ掻き回してくる。

 まるで乾いた獣が飲み水を必死で舐め取るかのごとき様で、いつもの後輩とは全然違っている。

 

「はぁ……先輩……好きだ……先輩……」

 

 呼びかけながらキスを続けられ、お互いの口内を息を止めてまで吸い合う。

 くせ毛の髪と頭を抱きしめながら、私も止めれなかった。

 そんなつもりはなかったのに、私だって渇いていたのかもしれない。

 

「ふぅぁっ……! ふ、んんぅっ……!」

 

 さなか、お尻を握るように揉まれて声が出た。

 自分でも不思議なくらいぎゅぎゅっとされただけで、痺れ以上のぞくぞくとした感覚があったの。

 思わずキスを止めてしまうくらいに。

 

「ふ、はぁっ……昨日もだけど……先輩って凄く感じやすいんだね……」

「知らないわよっ。おまえ、少しは遠慮しなさ――んんっ……!?」

 

 顔を抱かれてまた唇を塞がれる。

 同時に腰から脚までを荒々しく後輩の手が触れていって、服越しでも熱さが伝わってきそう。

 ……は、ぁ、はぁっ……こんなにも私に夢中になっている後輩は子供ではなくて男を感じさせた。

 そう、私は後輩に男を感じてしまっている。

 唇も舌も肉も体温も匂いも味も鼓動も、全部が心地よく思えてしまっている。

 それが逆にイラつくので後輩が落ち着くまで待ってから、私はにぃっといやらしく笑う。

 ただ、上手くできているかは自信がない。

 

「……おまえ結構けだものね? 女を酔わせて押し倒すような男だものね」

「めっちゃ言いがかりだ……昨日も先輩からキスして押し倒してきたんだから、我慢できるわけないよ」

「え」

 

 朝の記憶と違って後輩じゃなくて私から顔を寄せていた可能性もある?

 っていうか、なにちゃんと自己主張しちゃってんのよ。

 泣いてる私を慰めてるみたいな流れだったじゃない。ちゃんとしてよね。

 

「覚えてない? 酔ってふんわりと笑っている先輩はとてもとっても可愛かった」

「ちょ、や、やめなさい。知らないってば……」

「んで『なにこれぐらいで慌ててんのよ。さては接吻が初めてなのね。……へー面白いじゃない』

 先輩はそう言ってから俺の服の中に手入れてきて……」

「ま、まてまてまって」

 

 そんなの全然覚えてないわよ! そんなのやるわけないでしょ!

 ………………うぅ、でもちょっとありそう。

 挑発したの本当みたいだし……後輩をからかいたかったような気はするのよね……

 こいつ言う事はよく聞くけど私の扱いが微妙に軽いしこき使うし。マスターというのも気に入らないし。主導権を握っておきたいのよ多分。

 …………ちっ。言い訳にしても無理があるわねこれは。覚えていなくてもこれだけ接していれば嫌でもわかるわよ。

 忌々しくも後輩に触れてみたいという気持ちが少しはあるってぐらいね。

 あああああ……本当に忌々しいったら! それに恥ずかしいわね! 

 身を起こして、顔を片手で覆い隠すと熱いくらいに熱を感じる。

 怒り以外で、顔が熱くなるほどに血が昇っているのも何世紀ぶりか。

 

「ふん、言いたい放題言って。おまえこそどんだけ興奮してるのよ。ねぇ」

「うっ……」

 

 私は振り払ってから、お腹に当たる後輩の腹辺りへと体重をかけるようにして揺する。

 服越しでも伝わる熱く硬い主張している雄。

 こうなったら、生意気な口なんて叩けないようにしてやればいいのよ。

 これはあくまでも指導だから。後輩もそのつもりでいてよね。

 

「立ちなさい。けだもの後輩に付き合ってやろうじゃない」

「うん。先輩としたい」

 

 ちゃんと威厳あるように言えたわよね?

 痺れも抜けてきたので、ベッドへと腰掛けた。

 私を慕うあまり暴走して令呪とか使われたくないから。

 まあしないとは思うけど人畜無害の犬みたいな顔して後輩も男。

 手綱を握ってないとどうなることやら。

 私はキスの時に邪魔だった眼鏡を外して、服を脱ぐために再構成しようとしたのだが。

 

「先輩、ちょっと待って」

「へ?」

 

 おい、何故眼鏡をかけさせた。

 ベッドに乗ってきた後輩の微笑みが気色悪い。

 

「その……こっちの先輩も久々だから見てたいなって……」

「おまえ、なんだか変な趣味で私を欲望の毒牙にかけようとしてない?」

「そんなことないよ。あ、ついでに髪も三つ編みのままで。服は……セーターっぽいのだけナシで」

 

 なんでしょう。不安になってきたわ。隠れようとして人間の振りしたの間違いだったかしら。

 人間が服に凝る所は少しは理解できるけれど、これはなんか変。

 後輩のよくわからない拘りを不気味に思いつつも、しょうがないので私は言う通りにした。

 眼鏡をかけ髪は編み込んだままで、服装はいつもの黒の衣装だけを纏う。いわゆる再臨一と二段階目を合わせた姿ね。

 これは後輩曰く露出が高すぎるらしい。布少ないほうが楽なのに。

 他の英霊にも似たようなのいるでしょ。

 

「先輩はどんな格好でも素敵だけど、今のもすごくエッチ、いや綺麗でいいと思います」

「……おまえそれで褒めてるつもり? はん、人間の好みなんて得体がしれない」

 

 服なんてあってもなくてもたいして変わらないじゃない。

 おまえが良いというのなら、まぁ別にいいけど。 

 服を脱いで寄ってきたこいつは、私の腰と背中を抱いてきてから、ふわりという感じでベッドへ寝かせてきた。

 

「おまえ、なんか慣れてない?」

「いっぱいいっぱいです。触っていいですか?」

「いちいち聞くもんじゃないわよ。おまえの好きにしなさ……ぅぁっ……」

 

 言い切る前に触られて、迂闊にも声が出てしまう。 

 

「その、先輩の胸、ふわふわ過ぎて気持ちいい……先輩……」

「あ、んぅ、んん……さ、わりすぎ、は、あぁっ……!」

 

 性懲りもなくまた触ってくる後輩。そこが好きなのはわかってるから。

 手の動きは優しいようでたまに強く触れてくるのが堪らない。

 指が擦れる心地よさと、苦痛を何十倍にも薄めたかのような感覚は、多分これが快感というものだろう。

 久しく忘れていたそれは、戦って宝具を使う苦痛よりもずっと慣れない。

 両胸を揉みしだかれた私は、自分でもわかるぐらいに身体が反応してしまっていた。

 

「……ん、ちゅぷっ……ん、れろっ……」

 

 触れられてキスをされるのが酷く心地いい。

 後輩の身体が、肌と肌が触れ合って触れている全部がピリピリとしていて、つい私からも抱きしめ返してしまう。

 数秒、或いは数十秒。口付けたまま酷く曖昧に時が流れていく。 

 

「ちゅ、れろっ……」 

「ぁ、おまえ、どこを舐めて……ん、ぁっ……」

 

 唇が下り、首筋を舐められた。

 まるで味を確かめるみたいに舌を滑らせてくるのだ。

 それどころか血を吸うみたいに吸い付かれると、屈辱にも気持ちがよかった。

 

「……くぅ、意趣返しのつ、もり……? 人間は吸血鬼に負けないとでも……?」

「そんなんじゃないから。俺はただ先輩のどこにだって触れたいだけ。はむっ」

「ひゃぅっ……!」

 

 甘噛みされると不覚にも変な声が出てしまった。

 獣がじゃれあうような、それとも交尾の時に抑えつけるような、そんな感覚があった。

 まるで私に上下関係を教え込むみたいなのに不思議と嫌ではなくて、敏感になっているそこへ触れる舌と歯が気持ちがいいの。

 

「先輩……すごく顔が蕩けてる。可愛い……」

「えっ……? ちょ、っちょっと、あんまり見るんじゃ、んんんっ……!」

 

 隠そうとしたが、また噛まれると抵抗できなくなってしまう。

 後輩の荒くて熱い吐息がずっと続いていて、強く吸われると変な風に身体が動いてしまう。

 可愛いだなんて言葉が不思議と恥ずかしく感じる。

 

「こっちも……」

「あ、そ、そんなとこ、まちなさ……ぁ、くぅっ、んっ……!」

 

 胸の先まで吸いつかれると声が抑えられない。

 獣や人間の赤子がそうしてるのを見た事は何度もあるが、実際に授乳のような行為をしたりされた事なんてなかった。

 反対の胸まで好きに揉まれているのも気持ちがいい。

 

「じゅっ、ちゅじゅぅっ……!」

「あ、す、すいすぎ…だから、ちょ、あふぅ、ん……!」

 

 また噛まれる。

 痕がつきそうなくらい強く、でも傷はつかないそんな力加減に、ピリピリとした感覚が強くなる。

 ぎゅぅっと反対の胸を絞られるように揉みつつ、そちらにまで後輩は吸い歯を使ってくる。

 知らない感覚に悶えてされるがまま、私は後輩の頭を抱くことしかできてない。

 そうして、ひとしきり乳房を嬲った後も後輩はまだ止まらなかった。

 

「先輩って感じやすいんだね」

「し、しらないってば、そ、そんなの……って、そっちも!?」

「大丈夫。優しくするから……」

 

 後輩はあろうことか、滑らせるようにして胸から股座へと矛先を移したのだ。

 

「ふ、ぅうぅっ……んっ……」

 

 逃がさないと言わんばかりに足を抱えられたまま、舌の広い所を私のそこへと触れさせる。

 ……そこって、そのつまり、豆っぽいとこというか……なんか恥ずかしいわね……

 

「先輩って……毛が生えてないんだ……ちゅっ……」

「け、毛? く、人間はちがう、のっ? あ、ちょ、こ、んなことも、するの……ね……ひゃぅ、んっ……」

 

 堪えきれずに声が出ちゃう。

 後輩は優しくと言った通りほとんど動いたりしてない。

 ただ唇を触れさせたり唾液を補給しながら濡れた舌をあてがってるだけ。

 でも僅かな身じろぎや吐息が敏感になっている所をじっくりと炙っているかのよう。

 

「せんぱいのここ、凄く濡れてる……れろ……」

「ふぅ、んんっ、くはぁぅっ……!」

 

 ぬるっとした柔らかな舌先が中へと入り込んできて、ぎゅっと足が閉じた。

 いや、閉じようとして後輩の顔を挟んでいるが気にせずにむしろ嬉しそう。

 それどころか音を立てるように啜ってくるのだ。

 

「こ、こらぁ、吸うのは私であって人間じゃないでしょ!? はぅっ、んんっあぁっ!」

「そういうものかもだけど、零れちゃうから……ちゅっじゅぅっ!」

 

 私の中の浅い所を舌で掻きまわしてくる。

 後輩に追い詰められていた(不覚な事に!)私には耐え難いほど気持ちがいい。

 体液で濡れきれってる粘膜が後輩の舌と混ざって溶けてしまいそう。

 幾らでも舐められるとばかりに動きは止まらず、快感が腹の中から広がっていくみたいだった。

 勝手に出てくる涙で後輩の髪がぼやけて、視界がうっすらと白く染まっていって。

 

「あ、ああ、ああ……なんかこれっ……きちゃっ……はあぁっ、ううぅぅっっっ、んっ!!!」

 

 あっさりと達してしまった。

 気持ちがよくて、身体が快楽で引っぱられて延ばされているかのよう。

 私はベッドの上で全身をしならせるように仰け反っていた。

 溢れてしまっているそこを後輩は吸い尽くそうとしていて、快感がまだ続いている。

 何分経っているのか時間の感覚がわからないまま、いつまでもそのままでいた。

 

「も、もういい加減に離しなさい」

「ん……つい夢中になっちゃった」

 

 ようやく顔を離した後輩は、その……私から分泌されたやつで濡れまくってるので手近のシーツで拭いてあげた。

 

「なによもう、こんなにしてまで……そんなに舐めるの好きなの? 犬なのかしら?」

「だって先輩が舐められるの好きみたいだから」

「は? 私を舐めるような奴は人間だろうが魔性だろうがみんな死んでいったわ」 

「そういう意味じゃないってば。俺は先輩に気持ちよくなってほしいだけ。どうだった?」

「……いちいち聞くんじゃないわよ。こんな事されたのなんて初めてだったからわかんないわ」

「へぇ……項羽様にも?」

「な……! 項羽様にさせていいわけないでしょ! ま、まま股ぐらを舐めさせるなんて……!」

 

 想像しただけで顔が熱いわ。だって項羽様によ!?

 乞い願えば、慈悲深い項羽様は快諾してくれるかもしれないけど、それだけに不敬と言わざるを得ない。

 はしたないにもほどがあるわよ……

 

「可愛い顔もだけど、恥ずかしそうな顔の先輩も初めて見たかも」

「おまえが変な事言うからでしょ……って」

 

 言い切る前に、さっきより幾分雑に押し倒された。軽い口調とは裏腹に後輩の瞳には焦がれと情欲がじりっと灯されている。

 それは数百年前、人に紛れていた私を欲した男達の熱の色。

 彼らの欲は生涯叶うことはなかったのだけれど―――私だっておまえのそんな目を見るのは初めてだから。

 

「ごめんね先輩。続きがしたい」

「はん、自ら引き合いに出して嫉妬してるんじゃないわよ。おまえが項羽様に並ぶわけが……あ、んっ、んんぁ……!」

 

 あっさりと、私にこれ以上喋らせたくないみたいに、後輩は私の中へと入ってきた。

 

「こ、こらっ、途中だから……は、あっぅ、やっ……」

 

 すでに舌で慣らされたそこが後輩と触れ合うと甘美なほど気持ちがいい。

 昨夜のぼやけていた記憶とは違う、鮮烈なほどの肉の快感。

 ただ入れられただけなのに、うそっ、あ、これ、ヤバい……こんなのは知らない。

 

「はっ、ふぁっ……! くっ、少し待ちなさ……」

「待たない」

「や、あっ、んんんっ……! あ、ふぅ、っぅっうっ……!」

 

 いつになく強気な後輩が動き始めると声が抑えれない。

 繋がってる部分から嫌になるくらい水音がしてる。

 それだけじゃなくて、上から覆いかぶさってる後輩の身体と肌が擦れるだけでも気持ちいい。

 

「先輩とできて、物凄く嬉しい……キスもしたい……」

「……っ、はぁっ、ちゅっ、んぇ……ちゅっ、ん、あっんんぅっ…………」

 

 差し出された唇を無抵抗で受け入れた。

 舌で舌を絡み取られて、いや―――私からも絡み合わせて、お互いの唾液を交換しあって啜る。

 その間も後輩は身体を休めたりはしなかった。

 キスしながらも、私の中をじんわりとゆっくりと撫でるみたいにしてくるのだ。

 

「んっ、れおぉっ……ん、ぁはっ! ……っぷっ……んむっぅっ……」

 

 時折、声が出て身体がビクッってなるくらいに感じる所を擦られた。

 でも後輩は逃がしてくれない。漏れる端から吐息を吸ってきて息が詰まってしまう。

 少し苦しくて頭が眩みそうになるのに、それすら気持ちがよかった。

 

「せん、ぱい……好きだっ……もっと、もっと先輩を……」

 

 なによそれ。

 慣れてそうと思ったら嫉妬したり切なそうにしたり忙しすぎない?

 少し面白くて笑える。でも、私に夢中になってる後輩はちょっといいかも。

 また泣きそうな顔しちゃってもう。……あ、腰がぴくびくってしてきてる。そろそろなのね。いいわよ。

 言葉を返す代わり、抱いてくる強さ以上に私も抱きしめ返した。

 

「く、先輩……気持ちがよすぎて……でるっ……!」

「あっ……んっくぅっ、あああぁ、あぁっ……!」

 

 熱くて勢いのある精が中へと解き放たれて、私もまた達した。

 はっ、くぅっ……気持ちよくて、ぎゅぅって後輩のモノを中で締め付けていて、何度も震えているのが伝わって。

 強くて、長い。そんな快感が繋がったとこから全身に溢れてきそう……

 ……はぁ、っぅぅ、出されるのって……これ……とても気持ちいいのね……召喚されて契約した時よりもずっと深い繋がりで……

 こいつめ。気持ちがよさそうな顔で出しちゃって……ほらきなさい……

 

「んっ、ちゅっ……ぇ、れおっ……ん、ちゅ、えぉっ……」

 

 抱き寄せて口付けた。

 後輩ったら、こっちでも飲ませたいのかどんどん唾を流し込んでくるから、舌ごと吸ったわ。

 音が響くくらいに絡め合わせて、なんでか美味しい唾液を飲み込んでいく。

 気持ちがよくて、ぎゅぅっと抱きしめて、私達は深く繋がったまま、ずっとこうしていた。

 ……つもりなんだけれど、後輩が私の身体をポンポポンと叩く。慌ててるみたいに。

 いいところなのに、なによもう。

 

「……か、はぁっ……はぁ、はぁっ、せん……ぱい……はぁはぁっ、息もたな……くるしい……」

 

 む、貧弱な奴め。これだから人間は。ほんの数分ぐらい我慢しなさい。

 さっきは私にいっぱいしてきたくせに。

 

「しょうがないわねぇ。休んでていいから」

「うん」

 

 私に乗っかったままの後輩を苦しくない程度にぎゅっとしてあげる。

 これは私がしたいわけじゃなくて落ち着かせてるだけだから。 

 なのだけれど、むむ、この後輩ったらまた大きくしてるわ。回復が早いのねぇ。

 

「……先輩、もう少しお願いしていい?」

「付き合ってあげるって言ったでしょ。いちいち聞かないで」

 

 ちょっとだけどきどきしたのばれてないわよね。

 んで、そのまま続けると思ったんだけど後輩はひょいっと私を抱き上げるように上体を起こした。

 あ……抜けちゃうと、なんかその……物足りない感じ。

 

「先輩ってホントスタイルがいいよね。腰が細くて引き締まってて柔らかいのに無駄なお肉がない」

「なによ突然。何千年も前からこうだから。変化が欲しいなら他の女にしなさい」

「先輩がいいの。……でもたまに宝具使った後に変わってるよね。身長が1センチくらい低い時があった」

 

 えー……よく見てるのを褒めてあげるべきなのかしら……

 細かくてなんか気持ち悪いわね。

 

「……それで、続きするのしないの?」

 

 どうでもいい話をしている後輩は、私を抱いたまま腰や肩、うなじに背中などを優しく撫でていた。

 スタイルとやらを確かめてるのかしら。

 内側に熱が残っている私にはそれだけでも心地がいい。けど物足りない。

 でもそれは後輩も同じね。

 すぐに持ち上げられて屹立したモノが私に宛がわれる。

 

「んぁっ……! く、ふぅぅんっ……!」

 

 気持ちがよくて、よすぎて、鼻にかかったような、普段の私には考えられないくらい高い声が出てしまう。

 すぐに後輩は打ち上げるみたいにして腰を使い始めた。

 

「ふぁ、あふっ……! はぁ、んんっ! はぁっくぅっ、んんんっ……!」

 

 まるで遠慮のない突き上げに揺らされて、私は後輩にしがみつく。

 動きのたび、お腹から頭までが快感で貫かれているみたい。

 知ってか知らずか、それとも今までの行為で覚えられたのか、凶悪なモノで私の気持ちいい所ばかりを後輩は擦ってくる。

 この態勢―――対面座位って言うのよね。とても密着感があって、体重で深いとこまで突き刺さってくる。

 そのくせ後輩は微妙に私を持ち上げてるから、塩梅のいい所に当たってる。

 

「は、ぅ、くぁはっ……そこ、よく、てっ……ふっあぁっ!」 

「俺も、気持ちがいい! ずっとこうしてたい!」

「ふふふっ、はっぅっ、んっ……おまえの言う通り……ね、くふぅっんんっ……!」

 

 私が気持ちいいのと同じくらいに気持ちがよさそうな後輩の荒い吐息。

 なんだか嬉しい。私もお返しに腰を使おうとする。けれどどうにもならなかった。

 しがみついて揺らされるがままだった。

 だって後輩の激しい動きにお腹が熔かされちゃいそうだもの。

 

「先輩……すごくエッチな顔してる」

「知らないから、はっ、あっ、ぁはっくぅぁっ……そ、んなの」

 

 こいつめ。また辱めを……くっ……悠久の流れで積み重なった我が経験が通じないと言うの!?

 …………なんて嘘よ嘘。こんな経験なんて全然ないわ。人間嫌いだし。おまえだけなんだから。

 もー我ながら考えるだけでも恥ずかしいわね!

 ほら、唇貸しなさいよ。余計な事喋る口を黙らせてあげる。

 けれど後輩は微妙に顔を引いてる。もしくは頬擦りで誤魔化してくる。

 どうやら呼吸困難になったので警戒しているみたい。後輩の癖に生意気。 

 

「なによ。私の口づけが受けれないっての? おまえ私が好きなんじゃないの?」

「好き好き。めっちゃ好き。先輩のためならなんでもできる。愛してる」

「そ、嬉しいわ。でもなんか軽くない? まあいいけど……んー……それじゃあね……べーってしなさい」

 

 今度は言う事聞いたので、伸ばされた舌に私も合わせた。

 ……これ好き。飲食に拘りはなかったのだけれど、粘膜と粘膜を触れ合わせるのは堪らないほど心地がいい。

 舌だけを伸ばして啄むみたいに舐めあうのもよかった。

 口元を涎で汚しながらも、後輩の気持ちいい舌を味わい続ける。

 あ、でもこれ、よくなってきて……

 

「ん、れろぅっ……、ん、じゅぶっ……んん、あっ……! はぁあぁぅっ……!」

「せ、せんぱ……締めすぎっ……!」

 

 後輩が音がしそうな勢いでまた射精をする。

 は、あぁ…………満たされて……る……なんでこんなに気持ちいいのかしら……

 後輩もそうなのよね? ずっとこうしていたいわね……

 ひとしきり満足するまで舌を吸って、抱きしめあっていた。 

 

「はぁっ……ふふふっ……おまえ……早く果てすぎじゃない? そんなに私とまぐあうのがいいの?」 

「すっごくよかったけど先輩が先にいったからだよ。

 先輩がイクと入口から中まで搾り取るみたいにぎゅぅぎゅぅーって締まったり動いたりしてなんかもう凄い。多分宝具」 

「ほうぐ!? おまえねーそんな英霊がいるわけ……いないわよね?」

「そうかもしれませんが先輩のうつくしい……いや可愛さは宝具級です」

「美を宝具にしてるのはわりといるわね……っていうかそこじゃないわよ。返事になってないしなんで言い直した」

「先輩が綺麗系っていうか可愛い系お姉さんなのを再確認したから」

 

 むー……完全に舐められてるわね後輩に。

 けれどあんまりむかつかない。むしろ楽しいかも。なんでかしら?

 ……ま、いいわ。面倒なのでまた舌をべーってしてやると後輩が嬉しそうな感じで顔を寄せてくる。

 なんか可愛いわねこいつ。後輩ってこういうものなの?

 吸い付かれて口内を掻き回されてると、もっともっとしたくなってしまう。

 

「ちゅっぷ、んちゅっ、ちゅ、ちゅちゅっ……はぁ、ん、もっと……んぇ、れちゅぅ……」

 

 後輩の舌……やわくておいし……加減したげるから、ちょうだい……

 夢中に、でも呼吸を阻害しない程度に舌を絡ませ、唇で食んでから吸った。

 唾液を掬い取るようにして舐めて、喉が鳴るくらい飲みこむ。

 そうするともっと飲んでって感じで送り込んでくるの。

 私は舌で包んでから吸うようにして飲んだ。

 

「っ、んっ……こくっ……ちゅ、ぷっ、んぇっ……ん、ごくっ……れお、ちゅじゅっぶぅっ……!」

 

 けだもの後輩は飲ませるだけでは飽き足らず、舌で私の口中を隅々まで舐めてくる。

 犬ってこういうとこあるわよね。今は尖ってないからって犬歯のところまでお構いなくという感じ。

 十分くらいしてようやく離れた時にはお互いの顔がべちゃべちゃになっちゃうくらいだった。

 

「……はぁっ、先輩キスが好きなんだ」

「そうみたいね。気持ちいいし胸が高鳴ってくるわ。おまえもそうなんでしょ?」

「うん、ドキドキするし凄く興奮する。先輩の味も美味しい。透明感のある甘さっていうか……」

「説明までしなくていいわよもう。……ちゅっ」

 

 なんとなく軽く口づけをしたしされた。まるで恋人みたいに。

 こういうのって初めてで楽しいんだけれど、享楽に耽るってこういうのを言うんじゃないかしら……

 どうしよう。後輩が私に溺れちゃうのはまずいかもしれないわね。

 カルデアがどうこうなるというのは無いにしても、傾国の美女になんてなる気ないんだけど。

 ここはびしっと言わないといけないかしらね。

 あ、でもそのまえにもっかいだけ……

 

「先輩、ちょっといいかな」

 

 後輩が身を離すと抱きかかえられ、くるっと回されて私だけが背後を向いた姿勢になった。

 えっと、まだしたいってことかしら? これじゃキスしづらいんだけれど?

 

「もっと気持ちよくしてあげたくて。あとおっぱいを後ろから触りたい」

「……おまえねぇ素直さが美徳とは限らないのよ」

 

 とは言ったものの、もうおっきく硬くなっててお尻に当たってるのが気になってる私。

 それとなく衣装を部分的に消して邪魔にならないようにするとお礼を言われた。

 しょうがないじゃない。後輩がしたいって言うんだから先輩が聞いてあげないと。

 でも先に触れてきた所は言う通りに胸だった。

 

「ひゃんっ……! やっ、んんっ……」

「乳首がすっごい硬くなってる。先輩めちゃめちゃ興奮してるよね。さっきからずっと当たってて気持ちよかったよ。

 吸いついてくるみたいにすべすべしてて、柔らかいのに張りがあって……手が幸せ……」 

「やぁっ、くぅ、んんっ……!」

 

 背後から両腕を回してきて、乳房を揉む力はいつになく強い。

 しかも胸の先を摘まむというよりは挟んで擦るみたいにして弄ってきてる。

 されるのはわかっていたのに気持ちよさに耐えれそうにない。

 

「はっ、くふぅ、んんっ……! ちょ、ちょっとつよすぎ……だからぁっ……」

「そういうのも好きかなって。こんな感じのはどう?」

「くっ、はぅっ……んんっ! はっ、ああぁっ……!」

 

 強く乱暴な手さばきは、少しの痛みとそれを上塗りして固めるかのごとき快感で身体がびくついてしまう。

 ぎゅっぎゅって揉みしだかれて挟んだ指で乳首を引っ張られると、気持ちよさで視界がちかちかと瞬いてしまうほど。

 見れば鷲掴みにされた胸が絞られて指の間から溢れようとしてる。

 う……こんなに朱くていやらしく形が変わるのなんて私は知らない。

 

「おまえ……興奮し、すぎ…………はっぅ、くぅ……そんなに……胸がいいの?」

「いい、めっちゃいい! 先輩、俺がどれだけ先輩を好きかわかってないでしょ」

「人間の事なんてわかるわけないでしょ……あっ、ダメっ、つねったりしちゃ……」

「わかってもらうまでします! 腰上げてください」

「ちょ、ちょっと待ちなさい……同時には……くふぅ、んぅうぅっ……!」

 

 子供が泥遊びでもするかのごとく乳房を弄り倒しながら、反対の手で抱き上げられて後輩が挿入してきた。

 だから、ま、まっててば。あ、そこは……

 

「ひっぐぅ、んんっ……! 感じ、すぎてる、からぁ……!」

 

 後輩は膝立ちになった私の胸を両手で滅茶苦茶にしてきて、何度も突き上げてくる。

 私から零れてる体液が足を伝ってシーツを濡らしてるほどに感じてる。

 荒波の渦中にある船みたいになっている私は、後輩の腕を支えにして揺らされて、思う存分に中を捏ねくられてしまっていた。

 

「くぅっっ、やぁああぁっっ……!」

 

 あまりに簡単に達してしまうが後輩はまだ平気なようで、少しだけ動きを緩めた後に腰をぐぐっと押し付けてくるのだ。

 

「ま、まだイってる最中だから、あ、んぅっ……! くぅ! ふ、ふかいのぉ……」

「ここもいいんだよね。きゅっきゅってしてる。俺もいきそう」

「くっふぅんっ……! イクならはや、くぅ……ふっ、くぁっ……な、ななにこれっ、そんなところ……ふっ、ふっ……はっ……!」

 

 何かを探ってるみたいに臍のほうへと後輩は先端を擦らせてきて、新たな刺激にふっとした息がでちゃう。

 また一つ後輩に知られてしまった弱点。

 ノックするみたいに拍子をとって叩かれると支えることなんてできずに崩れ落ちそうになってしまう。

 

「ダメ。もう少しこのまましよう」

「あぁ! はっぁはぁあぁぁっ! ぅうぅっっ……!」

 

 けれど後輩はそれを許してくれない。

 抱きしめるというよりは束縛するように、交差させた両腕で上体を弓なりに反らさせられた。

 斜め下から何度も何度も突き上げられる。

 お腹のほうに擦って当たると快感が頭まで貫いてくる感じ。

 昂ぶりを抑えようと、歯を食いしばり耐えようとしても御することはできやしない。

 後輩によって引き上げられた快楽は私の限界を越えてしまっているよう。

 

「俺も、あと少しだから……もうちょっと頑張って」

「あ、ん、やぁっ……! むり、ふぁ、くっ、んんっ……!」

 

 繋がってるトコを中心にして身体が引き絞られるのを感じる。

 涙で視界がぼやけてる。眼鏡が落ちそう。

 でも後輩ももうすぐみたいで、小刻みに腰を振って私の中をどんどんと責め立ててくる。

 もちろん胸を麺生地でも捏ねるみたいに激しく揉んでくるのも忘れてない。

 そんな乱暴なのでもすごく気持ちがいい。というかそのほうが好き。

 後輩には私を全然頑張らせようという気が感じられない。後輩失格。

 

「んっんんぅっ……! きてるっきちゃってっ……るっ!」

 

 あ、ダメなの……もう無理……後輩が達するための動き全部が私を追い詰めてる。

 足先から頭まで、張りつめていた糸が幾つも幾つも広がって弾け飛びそうになっていって。

 

「もう、一緒に、先輩……!」

「い、いいわっ……! は、はやくおまえも、私も……! ん、ぁあっ! ああぁあぁっ……!!」

 

 一番深い所で放たれて融け合った。

 抱くというよりは握り潰すかのようなきつい抱擁。

 その代わりのように私も後輩のを包んで離さない。

 なのに抱かれている感覚よりも気持ちいいのが勝ってて、強すぎて、視界が真っ白に染まっていく。

 怖いくらいに快感が全身を満たしていって、何もかもが茫洋と散っていきそう。

 

「はぁあっぅっ……はな、さないでよっ……ねぇ、んんぅ、んんぅっ、くぁっ……!」

「うん……このままで……!」

 

 後輩との感覚だけを頼りに、埋め尽くさんとする奔流に抗しようとする。

 でも後輩の射精が続く度に私が満たされて、でもバラバラになって。

 あっさりと、感じるままに、私の意識は崩れて流されてしまっていた。

 

 ・

 ・

 ・

 

「先輩、先輩」

「え?」

 

 気づいたら後輩に抱かれていたわ。

 

「もしかして……私死んでた?」

「死んでないよ! 少しの間、失神してたみたいだけど……ごめんね」

「謝らなくていいわよ。少し似てたの。消えていく感じが。

 失われるんじゃなくて……塗り替えられているような……そんな気持ちいいのがいっぱいになってて……そういう消え方もあるのね」

「だから死んでないし消えないってば。気持ちよくなってくれたのが嬉しいけど、無理させちゃったね……」

 

 後輩が心配なのかぎゅってしてくる。

 ホントに死んでないのか気になるけれど、こっちからも抱きしめてあげた。

 不安な顔してるわね。あんだけ私を責めてきた癖になにやってるんだか。

 

「安心なさい。ちょっとびっくりしただけ。……その、おまえとしたのが……うむむ……よすぎたみたいね」

「ありがとう……俺も先輩とセックスできてよかったです。すごくすっごくっ、よかったです」

「んぅ、こ、こら、あんまり触るんじゃないわよ。まだなんか残ってるっていうか……」

 

 これなら死んでないのねきっと。死んでたら感覚もリセットされるし。

 その代わりにぎゅぅってされてるだけでぞくぞくしちゃってる。

 後輩の頭を胸で抱いてるだけなのに、髪がふわふわしてるのが気持ちいいんだもの。

 ……うぅ、私ってこんな敏感だったのね……後輩の手でわからされるの一生の不覚だわ。

 私の一生ってめっちゃ重いんだからね。責任取りなさいよ全くこの後輩は。

 

「……気になるんだけど女抱くのお前本当に初めてなのよね? こんなに上手い? っていうのかしら? やっぱ慣れてない?」

「先輩と昨日が初めてです。ただ……」

 

 ただ、なによ。なんか目が泳いでる。

 

「その、先輩といつかこうなりたいな。したいなって前から考えていて……それが盛り上がったっていうか。

 あと魔力繋がってるせいか反応とか感覚が少しわかるかもです」

「ふーん……そんなに先輩といやらしい事したいって考えてたの?

 しかもマスターの立場をいいことに、出歯亀みたいに人の身体を調べて?

 後輩がむっつりエロガキだって知って先輩びっくり。世界を救うために身命を賭しているマスターだと信じていたのに……」

「うー…………」

 

 よしよし。恥ずかしそうにしてる。やられっぱなしは癪だし。

 幾星霜の時を生きてきた私が十幾つの後輩に失神されるまでイカされた事実はあるけれど、この際闇に葬りましょう。

 そういうの何十……いや何百回くらいかしら? それなりにやってきたから得意なのよ。

 

「冗句よ冗句。若い男なんてそんなもんなんでしょう? おまえが行おうとしてる事は人の身には余る大儀。

 せめて、一時の憩いでもおまえが人間らしく在れるならば―――まあ仕方ないわね。先輩が受け止めてあげなくもないわ。

 私にも酒宴で羽目を外した責任があるしね。それを人の言う恋人かどうかは知らないけれど……おまえが好きに決めなさい」

 

 一線は引かせてもらうわ。

 後輩が私に何を求めようともそこが妥協できる範囲ね。

 

「ありがとう先輩……我儘を聞いてもらって。先輩には項羽様がいるのに」

「あーもうそういうのやめなさい。おまえとのこれは、あくまでもお情け。

 私と項羽様の繋がりは、何が起きようと誰であろうとも、髪の毛一筋たりとも影響しないわ……って

 自分から言い出したくせ落ち込むのやめなさいよ。

 ほら、顔上げて。今だけは……ええと、まだまだ特異点修復は終わらないわよね。それまでは、当分の間は、慰めてあげようじゃない」

「先輩って実はめちゃくちゃ優しいよね。そういうとこホント好き」

 

 にっこりとするんじゃないの。表情がコロコロ変わるのがかわい……じゃない。忙しい奴め。

 

「ふん、長生きしてれば気の迷いの一つや二つ……じゃ足りないくらい色々あるわよ。おまえこそ覚悟しなさい。私はお安くない女だから。

 いつも以上にこき使っておまえが勘弁してくださいって泣くまで搾り取ってあげる」

「是非とも。歓迎です先輩。……あと一つだけお願いしていいですか?」

 

 なにか気迫のようなものを込めて言うわね。

 

「なによ」

「愛してます先輩。俺は先輩が好きだから、先輩も俺を好きって言ってほしいな」

「……おまえの事は好ましいと伝えたじゃない」

「できればはっきりと気持ちを込めて!」 

「調子に乗るんじゃないの。まあ、こうやって愛玩してやる程度には構ってあげるから我慢しなさい」

 

 唇を寄せて生意気な口を塞いでやった―――何故だろうか、先程よりも後輩の味を酷く甘く感じるのが不思議だった。


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【R18】TSうすほそ転生魔族ちゃんが人間の男に救われて一緒に暮らす話。(作者:ソイレント・グリーン)(オリジナル:ファンタジー/ノンジャンル)

タイトルの通りです。


総合評価:2602/評価:8.94/完結:20話/更新日時:2026年08月27日(木) 07:04 小説情報


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