※この作品はR-18です。

〝アウラ、跪け〟   作:青い灰

4 / 4

エロないよ(笑)
主人公(さおやく)の設定を物語にしたものです。
本当にエロないから見なくても大丈夫です。




閑話 誰にもなれず、誰でもない

 

 

 

 

花畑が広がっていた。

色鮮やかな華々の咲き誇るそれは、かつていた弟子の一人が好きだった魔法で作り出したものだ。

 

ゼーリエは、そこに懐古、そして静寂と共に佇んでいた。

そして、その静寂は一人の来訪により切り裂かれる。

 

 

「ゼーリエ様、文が届いたのですが……」

 

 

ゼーリエは溜め息をついた。

文など幾らでも届く。やれ外交の話だの、魔法の話だのと、各地のお偉方から届く手紙は数えきれないほど来る。そしてその処理は弟子たちに任せてあるというのに………

 

訪れたのは、その任せた弟子のうちの一人だった。

 

 

「お前たちに任せてあるだろう」

 

「いえ、それが………私どもでも気付かぬうちに、

 ゼーリエ様の椅子の上に置かれており………」

 

「はあ?」

 

 

ゼーリエは首を傾げる。

その弟子も困惑しているようだった。

 

弟子たちの中には魔力探知に長けた者も多い。それが何人もいておきながら、いつの間にか?有り得ないとも思ったが、だが同時に、そんな悪戯を仕掛けそうな知人を思い起こす。

 

 

「読み上げ……いや、見せろ」

 

「……よろしいのですか?」

 

「構わん」

 

 

ゼーリエは弟子から手渡された手紙の封を解く。

強力な封印が施されたそれも、ゼーリエにとっては簡単な、だが、とても古く、懐かしい魔法でもあった。

 

そして、その文字に目を通す。

何より先に、その名を探して───────見つけた。

 

 

 

「はっ………まだ、生きていたか」

 

 

 

ゼーリエは笑った。

 

直近では〝人間を殺す魔法〟を〝一般攻撃魔法〟への転用を思案し、そしてそれに伴う防御魔法の〝人を殺す魔法〟への耐性の付与、その一般化を提案だ(・)け(・)して、そして何もせずにその姿を消した。それももう、何年前になったか。

 

 

『〝飽きた。勝手にやれ〟』

 

 

ゼーリエはそれだけ言われ、そして風のように姿を消した。そして今、こうして文を送ってきた、ある男を思い出す。

その姿を、鮮明に。

 

大剣を片手に振るい、時には杖を以て魔法まで振るう。

ひたすら、ただひたすら魔物を屠り続けていたその姿を。

 

そして、その場に腰を下ろして手紙に目を通す。

 

 

 

『服従させる魔法』を会得したこと。

七崩賢の魔族、そしてもう一人の魔族を捕えたこと。

 

 

それはまるでレポートのような、淡々としたもの。

だが所々の文字から、ゼーリエは懐かしさを感じた。

 

そして。

 

 

「………えぇ」

 

 

それら魔族の〝使い心地〟と〝結果〟についてまで。

全く、あの男は、本当によく分からない。時折名乗っていた研究者気質ではあるのだろうが、飽きやすかったり、時には執着したり、それが遥か昔に見た戦いにも顕著だった。

 

それがまさか、魔族の肉体に向かうとは。

恐ろしいものだと、ゼーリエは軽く引いた。

 

 

「…………………止めた方がいいのか?これは」

 

 

ゼーリエは考えた。

この男、研究のためならば何でもする男だ。魔族への恨みはあるだろうが、とはいえその研究が人間にまで向かい出せば流石に不味い。その辺の倫理は弁えてはいそうだが………

 

と、その時、文を持ってきた弟子が口を開いた。

 

 

「ゼーリエ様、その手紙の………

 差出人が何者か、聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「…………あぁ、そうだな。

 伝えておいた方がいいだろうな」

 

 

 

ゼーリエは、昔話を語り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────

 

───────

 

 

 

 

 

〝珍しい客だ〟

 

 

言う。

リーニエが客だと言い引っ込んだが、出てきてみればさて、客にしても魔族ではないか。兜から伸びる二本の角、そして両手に握られた巨大な斧。………どこかで見た気がする。

 

 

「……人間か。まぁいい、一つ聞くぞ」

 

〝聞こう〟

 

「お前が断頭台のアウラを葬った人間か」

 

〝倒した、という点では間違いではないな〟

 

 

笑う。

今やアウラは最早、ただ欲しがるだけの獣だ。かつての名、断頭台をまた聞くことになろうとは思わず、故に笑った。

魔族もまた、笑みを浮かべる。

 

 

「礼を言ってやろう。

 『服従させる魔法』が切れ、まさかとは思ったが……

 俺もまた従えさせられていたうちの一人でな」

 

〝魔族に礼を言われるとは、久し振りだな〟

 

「その短い命の中でか?

 クク、珍しいこともあるものだ。

 魔族とそう何度も相対し、生きているとはな」

 

 

魔族が構えると同時に、背中の大剣の柄を掴んだ。

どうやら、抜かせてくれるらしい。

 

 

 

〝お前たち大魔族がそうであるように〟

 

 

 

大剣を固定するベルトがバチン、と激しい音を立てて外れ、地面に落ちる。久方ぶりに、身体を動かしたい気分だった。

 

 

 

〝俺の名を知り、生きていた者はそういない。

 少々、長く生きてきてな〟

 

 

「成程な。では名乗ってやるとしよう。

 俺はグロース。人間は、戦斧のグロースと呼ぶ。

 俺の名前をこそ、貴様の死出に覚えていくがいい」

 

 

 

思い出した。魔族のなかでも武を極めた将軍。

そのうちの一人の名が、確かそんな名前をしていたか。

 

 

 

 

 

〝ならば────────〟

 

 

 

 

 

ただ、その魔族に大剣を向ける。

研究サンプルは二匹で十分。これ以上は不要だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

────

 

────────

 

 

 

 

 

ゼーリエは語り聞かせる。

 

 

 

 

 

「古い時代、とある人間の研究者がいた」

 

 

 

 

「その研究者は長く続く戦いに対して、こう考えた」

 

 

 

 

「人間の成長力、そしてエルフの長寿があれば」

 

 

 

 

「遥かに強い存在が生まれるのではないかと」

 

 

 

 

 

「そうして、生まれたものがあったそうだ」

 

 

 

 

 

 

「生まれたそれは、おぞましいものだった」

 

 

 

 

 

 

「研究者はその赤子を捨てたらしいが、

 だが、エルフの親に里へと連れられていったらしい」

 

 

 

 

 

 

 

「エルフの里は、古い魔族によって焼かれたが…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そいつはまだ、生きている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がまだ、お前たちのように未熟だった頃の話だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼーリエは、思い出す。

 

濁りきった男の目を。

だがそれ故に透き通った重い剣筋と、洗練された魔法を。

 

 

 

 

─────

 

─────────

 

 

 

 

 

 

 

〝ならば〟

 

 

 

 

〝誰にもなれず、誰でもない。ただの半端者〟

 

 

 

 

 

 

 

 

〝我が剣を、その骨肉に、その死に、刻むがいい〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝俺の名は──────────〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰でもない男は、大剣を振るう。

 

 

 

 

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