名前は朝露雫(あさつゆ しずく)。綺麗で長い黒髪と、泣き黒子、スラっとしたモデル体型と、見るだけでも分かる大きな胸が特徴的な、男子と女子の憧れの的。
これはそんな美少女と、何も特別では無い主人公、月見秋(つきみ しゅう)の馴れ初め。
背中の中程まで届く枝毛の無いストレートの黒髪。細過ぎず太過ぎず、且つ見るからに長い足は黒いタイツで覆われているせいか余計にスラっと見えて美しい。伸びた背筋と綺麗な姿勢、それによってただでさえ大きな胸がより強調される。
そして何と言ってもその美しい顔。一見クールにも見える切れ長な瞳は、優しく下がる目尻によってか感じるのは柔らかい視線。通った鼻筋。薄い唇。シミひとつなく透き通った肌。細い輪郭。極め付けは泣き黒子。
これでもかと可愛さと美しさを盛りに盛った美少女の名前は
名前で呼ばれる事を嫌う彼女の事を皆は朝露さんと呼ぶ。
これは、クラスで一番綺麗な朝露さんと、大して目立つ訳でもない俺こと
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高校一年の入学式。
既に朝露さんの美貌は知れ渡っており、彼女が廊下を歩くだけですれ違った全ての人が彼女を見ていた。
入学から一ヶ月。
朝露さんの美貌に慣れた者は居らず、碌に友人を作れて居ないのは目に明らか。女子でさえ緊張して少し話すのがやっとの様子。だが対応はとても丁寧で、徐々に女子の輪には混ざり始めて居た。
入学から二ヶ月。
文武両道な朝露さんは期末試験の成績も良く、張り出された学年上位三十名の中にその名前を連ねており、クラスを越えて有名人になった。夏休みを控えた男子は彼女を作るべく玉砕覚悟で高嶺過ぎる朝露さんに声を掛けて玉砕した。何人の男子を玉砕したのかは定かでは無い。
入学から三ヶ月。
結局朝露さんが誰かと付き合う事は無かったらしいが、他の女子が好きな男子まで掻っ攫って砕き回った彼女は、夏休み前にはクラスで少し浮き始めていた。
そんなこんなで夏休み。家で宿題をやるのが苦手な俺は学校の教室で宿題をしようと思い教室に向かった。ここから俺達の物語が始まっていく。
誰も居ない筈の夏休みの教室。そこで俺は、誰もが振り向く美少女朝露さんを見た。しかしそれは俺が知る朝露さんでは無かった。いや、きっと誰も知らない朝露さんだろう。
……なにせ激しく荒ぶる、綺麗じゃない朝露さんだったからだ。
「うざいうざいうざいうざい……なんなのうざったいなぁ。話すなら話せよ。先ずは友達から始めろよ。急に告んな気持ち悪い。なんなら普段から視線が気持ち悪い。胸見てんのバレてるから気持ち悪い」
彼女は自分の席では無く机に腰掛けて、隣の机の足を蹴りながら愚痴を吐いていた。
確かその席は夏休み前に朝露さんに告白した大勢の男子の中の一人の席だ。彼がこの光景を見たらどう思うだろうか。もしかするとご褒美と答えるかもしれない。
「女も女だろ。無駄話ばっかり。髪綺麗とか可愛いとか美人とか……聞き飽きた……。なんだよそれどうでも良い。もっと……もっと普通の話しろよ。外見じゃ無くて内面知ろうとしろよ。上っ面しか見ない媚び売り共が。裏で有りもしない悪口と愚痴と噂言ってんの知ってんだよこっちは……男よりも気色悪過ぎる。綺麗を保つ努力もしないブス共が。性格までブスとか終わってんだよブス」
こっちは愚痴というより最早呪詛だ。陰湿なやり方が既に女子達の間では繰り広げられていたんだな。媚を売りながら裏では悪口、容姿の良さを羨みながらもカーストを意識しての擦り寄り、それでもやっぱり嫉妬が勝って根も葉も無い噂の創造か。
女子連中はイジメのプロか何かなのだろうか?
何はともあれ、触らぬ神に祟り無し。怒れる朝露さんは見て見ぬふり。知らぬが仏とはこの事よ。回れ右して帰ろうとしたところで、誰かが階段を上がってくる音が聞こえた。それも女子。これはまずい。朝露さんは未だ呪詛吐きの途中……やるしか無かった。
俺は教室の引き戸を開けて、ガバッと全身をこちらに向けて睨んでくる朝露さんに対し、口の前で指を一本立てる。
成績の良い人は理解力と判断力と冷静さもあるのか、一旦口を噤むと廊下を歩いてくる女子の声を認識し、俺に向ける厳しい視線を少し緩めてくれた。
俺はそんな朝露さんの元へと向かい、学校から出されている課題を彼女の机に広げる。
状況を掴みかねている朝露さんを無視して文房具を出し、蹴られていた机の椅子を引き寄せて腰掛ける。
「ここ、分からなかったんだ! 教えてくれてありがとう、朝露さん!」
若干の棒読み感はあったが、少し大きめの声で発したので廊下にも俺の声は響いただろう。
そして件の朝露さんは、流石の理解力と判断力の速さ。
「良かったらもう少し教えるわ。分からない所があればなんでも聞いて?」
すぐに話を合わせてくる。丁度その時、教室のドアについている窓からこちらをチラと覗く女子二人の姿が見えた。
ダメ押しにもう一言だけ言っておくか。
「朝露さん、勉強見てくれてほんとありがとうございます!!」
「夏休みにここで会ったのも何かの縁だもの。それに、教えるのも良い勉強になるわ。あまり気にしないでね」
お互いに目だけは真顔。口元や声質はそれとなく変えているが、冷えた視線がよくぶつかる。
そんな冷戦状態は女子達の話し声が聞こえなくなるまで続き、お互いにその気配を完全に感じなくなったところで俺達は改めて向かい合う。
「……ありがとう」
「どう致しまして。にしても、色々な苦労があったみたいだね」
「…………普通に話すのね」
「まあね。朝露さんを高嶺に追いやったのは俺達だ。罪悪感くらいある。だからせめて友達になりたいと思ったよ」
「変な人……でも、嬉しいわ。月見君」
厳しい顔付きを緩め、諦めた様に微笑む朝露さんの姿は何処か等身大に見えて、なんとなく俺はこちらの方が好きだと思った。……その直後だった。彼女は笑顔のまま圧力のある声を発してくる。
「でもね? 内緒にしてくれる保証が私は欲しいわ。分かるかしら?」
「言いたい事は、分かる。でも具体的にどうしたら良いのか分からない」
「私の弱みを貴方は握っているの。じゃあ貴方の弱みも見せなさいな」
有無を言わさぬ声音だった。助けた事をちょっぴり後悔した。でも、ここで引くのはなんだか自分が格好悪いと思ったので、何か弱みを考える。
「ごめん。無い。って言うか、物証の無い弱みに価値はないよ。録音もしてないしさ」
「……それもそうね。じゃあ、お礼……をすべきなのかしら?」
「お礼? 特にいらないけど。朝露さんに求める物とか無いし」
「それはそれで腹立たしいわね……仕方無い。…………トクベツ、だからね」
そう言った朝露さんは、机を回り込んで俺の真横に来ると、俺の頭と肩に手を添えてそっと抱き寄せた。
「友達……になるんでしょう? だったらハグくらい普通でしょっ? これはただ、それだけだから」
なんとなく、これに照れて腕を解いてしまうのはやってはいけない気がした。
距離感バグってるとか、漫画の読み過ぎじゃない? とか思ったけど一切口には出さず、されるがままでいるべきだと、本能と理性が共に告げて居たんだ。
理由は簡単だ。おっぱいが頭に当たっていたからさ。
「嫌じゃ、ない?」
「照れる要素と嬉しいって感情はあれど、嫌がる要素は微塵も無いね。毎日でもして欲しいくらいだ」
「そう。なら良いわ……ふふ。月見君みたいな人、私初めてよ」
「ああ、それで言うなら僕も朝露さんみたいな人は初めてだよ。お揃いってやつだね?」
「口の回る人」
いつまでも解かれない腕。柔らかくなっていく口調。思わず俺は上を見上げる。視界の八割がおっぱいでいっぱいだったが、谷間から朝露さんの穏やかな瞳と目が合った。
「……あのさ、今度さ。遊び、行く?」
「……どどっどこに?」
「ゲームセンターとか。カフェとか。すごく大した事無い所」
「……月見君。貴方は私の欲しいものが分かるの?」
「普通が欲しいのかなって。綺麗で近寄りがたい人を連れて行きにくい場所に連れて行くのも、それはそれで楽しそうだし」
そこでようやく俺から手を離した朝露さんは、おもむろにスマホを取り出してQRコードを見せてくる。
「ん」
「ん?」
「読み取りなさいよ……それで、友達に、なってください」
「ああ、そう言う。まあ分かってたけど」
「……じゃあ早くしなさいよね!?」
朝露さん、ちょっと笑ってる。……実は面白い人かもしれない。普通に飢え、負の面を見せた上でなった友達との気兼ね無いやりとりが嬉しい様だ。
俺もスマホを取り出してQRコードを読み取り、アプリの友達の欄に朝露雫を登録する。
手始めに絵文字のうんこを送ってみると、朝露さんは口元を緩ませながらうんこを返してきた。
「じゃあ、いつでも気兼ね無く連絡してよ。遊びの予定も詰めないとだしさ」
「そうね。……ねぇ月見君。明日も、学校来る?」
スマホを両手で大切そうにぎゅっと握りしめた朝露さんが問うてくる。
答えはイェス/はい/OKのどれかしか無いだろう。朝露さんとのトーク画面を開いて肯定を示すスタンプを送る。
震えるスマホに目を落とした朝露さんは『ハッピー』と文字の書かれたスタンプを送り返してくれた。
目の前で、声を届けるどころか触れ合える距離で、僕らは暫くスマホ越しに会話した。
時折目を合わせ、頬を緩ませながら、文字で会話し笑い合った。
そこに居たのは、綺麗では無い朝露さんだった。
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翌日。宣言通り学校に向かい、教室の前に着くと……何やら騒がしい。そっと教室のドアの窓から中を伺うと、なんか男子がいっぱい居た。少なくとも朝露さんは居なかったので、トーク画面で今何処に居るのかを問う。
『屋上』
その二文字が返ってくると共に、キャラが涙を流しているスタンプが画面に映った。
俺は取って返す様に階段まで戻り、足音は控えめに階段を駆け上がって屋上に続くドア前の踊り場まで辿り着く。そして正面にあるドアノブに手を置いた所で気付いた。うちの学校は屋上への侵入を禁止されていた事を。
ドアノブから手を外し、階段の踊り場の右側へと目を向ける。
そこにはスマホで口元を隠した朝露さんが、足を折り畳んで縮こまった様子で俺を見て、こっちに来いと手招きしていた。
スカートと足が絶妙に下着を隠すエロスにドキドキしながらも、俺は体勢を屈めて高い手摺の壁に隠れる様にして朝露さんの隣に腰掛ける。
『吹聴した?』
そんな文面が送信された。
『する理由が無い。おそらく昨日の女子だ。夏休みに教室に居るって情報が広まったんだと思う』
『もうさいあく。ブスはマナーも知らない。ああいう女ほんと無理』
『過ぎた事は仕方ないよ。だからさ、明日さ、暇なら外に遊び行こう。朝露さんはサングラスと帽子忘れないでね』
『うん! 分かった!』
顕著な二面性が文面にも表れた。隣で「ふふふ」っと笑うご機嫌な朝露さんが見れたから良かったけど。
『でも今日はどうする?』
『んー……今帰ると窓から見つかる可能性がある。暫くここで俺と暇潰しかな?』
返信を待っていると、肩を指先でちょんちょんと突かれたので隣を見遣ると期待の眼差しと言うものを体現するかの様な瞳がすぐそこにあった。
……なんだか大型犬に懐かれた気分だ。
取り敢えず声を出さずにやれるゲームという事で指相撲をしてみた。
最初の二、三戦は普通に戦ったのだが、朝露さんは指が長くて細くて柔らかくて、手を組むのでさえなんか気持ちよかった。あと指が長いから強かった。
だから四戦目では、俺が人差し指を解放して(ズル)勝ちを収める。
当然ポカポカと叩かれはしたが、楽しそう。
続く五戦目ではズル合戦になってただの取っ組み合い。物音を立てないと言う暗黙のルールがあったので俺がバランスを崩して床に背中を付けた所で勝ちを譲る。
気付けば朝露さんが俺に馬乗りになっていた。
だがそんな事は気にならないのか手を差し伸べてくる朝露さんの手を取り身体を引き上げられると、朝露さんを足の上に乗せたまま向かい合う形になってしまった。
これがかなりの密着度で、彼女の大きなおっぱいは身体が触れずとも俺の胸に既に当たっている程。
そんな状態でも平静を装っていると、悪戯な笑みを浮かべた朝露さんがそのまま抱きついてくる。そしてそのまま俺の耳元で囁く。
「毎日してほしいんだもんね?」
正直勝ち目は無い。童貞には厳し過ぎる戦いだ。勃起させていない事に金一封を貰っても良いぐらいの快挙の筈なんだけど。
ともかく、抗う術が無いのなら、このビッグウェーブに乗るのみ。彼女に身体を預け、背中に腕を回して控えめに俺からもハグをする。
「私、嫌じゃないよ。月見君となら、だけど」
俺の胸板で潰れる巨乳の感覚プラス、美人の耳元囁きプラス、この密着ハグ。俺の理性はすごく優秀だと思う。自分を褒め称えたい。
だが同時に限界もまた見えている。早いうちにこの状態から脱するために、俺も朝露さんの耳に囁く。
「朝露さん。そろそろ離れて。男には魅力的な女を見ると起こる生理現象があってね。これ以上はまずい」
「……いいよ、べつに。君なら。生理現象なら……仕方無いよ」
脳と理性が蕩けそうな言葉だ。流されてしまいたい。でもそこで流されては友達では無くなってしまうだろう。
それならこう言う時は……!
朝露さんの両肩に手を添え少し押して身体を離す。そして唇を思いっきり“ウ”の口にしてギャグの様な口でキスを迫ってみる。これには流石にどん引いて冷静になるだろう。
「それじゃあ……ぶっちゅぅ〜〜」
「…………ちゅっ」
「……えっ」
唇に、柔らかい感触……顔を赤くしていく朝露さん……えっ?
現実に理解が及ばない瞬間と言うのは、思考は出来ても思考が進まなくなると言う事らしい。唇に柔らかい物が当たった事までは分かるが、あとは状況証拠でしか判別が付かず、また判別して良いかが分からない。
そんな俺を見かねたのか、朝露さんは赤い顔のまま俺の頬を挟んで掴み、その美しい顔をゆっくりと近付けてくる。
まつ毛長。肌綺麗……甘い香り、顔小さっ……そんな事を考えている間に再度触れ合う唇。今度はそれはすぐには離れず、唇が繋がったまま間近で目と目が合い続けた。
「……まともに話して一日だけど、私、貴方なら……信じられる、から。嫌……だった?」
色白なせいで照れるとよく分かる真っ赤な顔。瞳は潤んで、不安に揺れて、手も少し震えていた。
「嫌な要素は一つも無い。……毎日でもしたいくらいだ」
きっと恋というにはまだ浅い。美人過ぎてこれが憧れなのか惚れた腫れたかすら明確じゃ無い。だから嘘だけは言わない様に答えた。
それでも顔を合わせ続けるのは難しかったので、彼女を抱き寄せる事で自分の顔を隠した。
「友達じゃ……なくなるかしら?」
「キスフレとか、そう言うの……ある、らしいよ」
「そっか。じゃあ、まだ友達……なのね……」
「うん。“まだ”、友達だよ」
友達で居られた事を喜ぶべきなのか。友達に留まってしまった事を悲しむべきなのか。自分の明確じゃ無い気持ちのままでそういう事は出来ないと思ったが故の現状維持。でも、朝露さんはどう思ってるんだろう。
「友達なら、もっとしても良い……わよね?」
朝露さんがどう思ってるかは分からない。ただ、無敵の人になった事だけは確かだった。
綺麗じゃ無い朝露さんは、なんだか少しイケメンだった。
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あれから俺たちは数え切れない数のキスをした。生理現象を抑える事は出来なかった。朝露さんは俺のそれに触れながらも「仕方無いから」と言い訳の様に呟きながら、ずっとキスをし続けていた。
途中からは俺も夢中で彼女の唇を味わい、気付けば夕方。偵察に出るのを言い訳に一旦朝露さんの元を離れて学内に残る人の少なさを確認してから、俺達は一緒に帰路に就く。
肩が触れ合う程度には近い距離感で、なんとなく彼女を家まで送った。家自体は普通の一般家庭の大きさで、豪勢な家や地下に駐車場があるとかそういう事はなかった。住んでる場所は俺の家から近くは無いが遠くも無い場所と言った所。
別れ際、スマホが鳴って確認すると、朝露さんから『明日は暇?』と尋ねられた。
俺は頷くことで返答する。
次いで震えたスマホに目を落とすと、『集合はここ』とだけ書いてあった。
俺はすぐに朝露さんに目を向けるが、彼女はスマホで顔を隠して後退り。家のドアを開けて身体を半分ほどドアの内側に入れた頃ようやく、こちらに小さく手を振り返した。
「……また、ここで」
そう声にて問うと、朝露さんは小さく頷いて、そしてドアを閉めた。
……………………。
気が付くと家に着いていた。どうやって帰って来たのか覚えてない。でも、道は覚えた。
その日、俺は悩みに悩んだ。きっと明日はもっとやばい。俺の理性の牙城は既に砂上の楼閣。
綺麗? 美人? 嘘つくなあんな可愛い人を俺は知らない。あれは俺だけが知る新たな朝露さんだ。だが、だからこそ大切にしたい。半端に向き合いたく無い。そうして悩んで悩んで、悩み疲れてそのまま眠ってしまった。
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翌朝。バッチリ眠った俺はやたら醒めた頭で朝露さんに電話を掛けた。ワンコールもしないうちに電話は繋がった。
『月見秋です』
『朝露雫……です』
『今から行っても良い?』
『……うん。良いよ』
『分かった。じゃあ少しだけ待ってて。それじゃあ』
赤い受話器のマークをタップして電話を切り、直ぐに準備を終える。家を出て、朝の九時とは言え既に十分に熱い真夏の日差しの中、汗を掻きながらも無事に朝露の表札の前に辿り着く。
インターホンを押すと、ドアの前で待機してたんじゃ無いかと思う速度でドアが開いて部屋着姿の朝露さんが見えた。
「月見君……いらっしゃい」
「お、お邪魔します」
朝露さんのTシャツとショートパンツ姿は目に毒で、でも保養で、普段は見えない生足がすごく艶めかしい。
案内された洗面所で手を洗い、二階の手前の部屋へと案内される。
内装は水色を基調とした物で揃えられており、可愛らしくも涼やかな部屋だ。ハンガーにかけられたうちの制服もある事から、ここが朝露さんの部屋なのだろう。
ローテーブルの前に置かれた座布団に座る様に言われて、おとなしく腰を下ろす。その間朝露さんは飲み物を取ってきてくれている。
他所様の家で、それも部屋で一人になると手持ち無沙汰で部屋を眺めてしまう。存外可愛らしい小物が多く、受ける印象がコロコロ変わる。
美人から呪詛吐き。そして可愛いにどんどんとシフトしていく。
それとずっと気になっているのが朝露さんの部屋の匂い。昨日嗅いだあの匂いに全身が包まれているのは非常に不味いと言うか。条件反射なのかもう勃起が止まらない。
更には、今日はご家族は外しているらしく、今この家に僕らは二人きりらしい。ストッパーが何一つとして無い。
程なくしてお茶を二つ手に戻ってきた朝露さんがテーブルにお茶を置き、対面ではなく俺の横に腰を下ろした。
「汗……かいてるわね」
「あぁ、ごめん。思ったより外暑くて……」
「うん、気にしなくて良いから。その……拭いてあげる」
一体どう言う意図からくる言動かは分からない。だが嫌なんて事は微塵も無いので大人しく拭かれる事にする。
朝露さんの綺麗な手で、ハンカチ越しに額や首筋をぽんぽんと優しく汗が拭き取られて行く。
ある程度の汗を拭き終えたら、今度は腕が回されてハグされる。
「毎日……だもんね」
「……うん」
免罪符の様に使われる言葉だ。
「キス……する、友達……だもんね」
「そう、だね」
きっと、朝露さんは人肌を知らなかったから。綺麗過ぎて、近寄り難くて、友達が居なかったから。それを与えて教えてしまったのが、偶々俺だっただけだから。
「月見くん……ちゅっ……ちゅうっ……はむっあむっ……」
「朝露さん……」
「んぅ……しずく、で良い」
「じゃあ、俺もしゅう、で」
仮に、だ。仮に恋愛に発展したとして。高校生の恋愛なんて長続きしない。一年持つかも怪しい。結婚するにしても最短三年かかる。きっと夫婦になる相手じゃ無い。
だから、ただの遊びで……今だけの関係なんだから、友達として楽しんでしまえば…………。
「雫、セフレって知ってる?」
「……知ってる」
俺の足の上に乗ってハグしていた雫。そんな彼女の胸に手を当てる。俺の手よりも大きな胸を揉む。胸の中へと指が沈んで行く。スポーツブラなのか、針金の硬さは無く、どこまでも柔らかい。
雫は火照らせた顔を背けるのみで、嫌がらない。俺の既に硬くなった陰茎と雫の股間がぶつかっていても、密着するのをやめたりはしなかった。
背けられた顔をこちらに向けさせてキスをする。ゆっくりとお互い服を脱いで行き、下着だけになる。
「こうなる気は、してた?」
「してた……でも、嫌じゃない。むしろ、期待……してたかも」
互いに顔を寄せ合い、より深く繋がるのを求めて、ぎこちなく舌を絡め合う。
雫の手が下着越しに硬くなって男性器に触れる。
俺の手が下着越しに湿った女性器に触れる。
恐る恐る弄り合う。キスをやめずにずっと。
おっぱいとは違う柔らかさで沈む肉。段々と湿り気がパンティを貫通して指にまでぬめる液体が絡んできた。
俺の下着も張った部分が既に染みを作っており、雫の指がそこをクリクリといじってくる。
そのまま下着越しに弄り続けた俺達は、やがてどちらからともなく身体を震わせる。
ぷしゅっとした音と共に、俺の手が滑る液体とは別の液体に塗れ、雫の下着越しに蠢く肉の感触を味わう。
同時に、下着の内側で暴発した俺の肉棒。ぎゅっと雫に掴まれた肉棒から精液を自分でも驚く程長く多く吐き出す。
お互いの快感が引いてきた頃。俺達はようやく繋がったままだった口を離し、べっとりと糸を引く唾液を眺め、濡れた下着など忘れて再度唇をくっつけ合った。
そのまま雫を後ろに倒し、再度口を離して問う。
「雫……したい」
「わたしも……秋……来て?」
俺は速やかの精液まみれの下着を脱ぎ、雫の足を持ち上げて彼女のパンティを引き上げ脱がせた。
その際にクロッチと女性器の間でいやらしく糸を引く愛液に興奮し、俺の肉棒がさらにそそり立つ。
お互いに前戯なんてもう要らない。雫の下の口に肉棒を当てるだけで膣口が亀頭を咥え込んでくる。
雫の身体が俺を欲し、雫の瞳が俺を待ってる。
咥え込まれた亀頭をそのままゆっくりと押し込んで行く。
「あっ……んああぁ……しゅう……しゅうが入ってくるぅ……」
徐々に雫の中に呑み込まれていく肉棒。抵抗など無く、入り込み、熱くてとろとろに蕩けた膣が包み込んでくる。
途中で引っ掛かりはあったが、もしかしたらあれは処女膜だったのかもしれない。
だがそんな疑問を持てる余裕など無い。ピッタリと包み込みきゅうきゅうと締め付けてくる雫の膣内が気持ち良すぎる。
「雫……」
「秋、もっと深くまで……秋が欲しい……きてぇ」
両手を広げて俺を求める雫に応える様に、俺は肉棒の全てを雫の膣内に収め、そのまま雫の上に覆い被さり抱き合いながらキスをする。
「秋……秋……」
雫は足を開いて俺の腰をがっちりと掴み、俺と深く繋がって居たいのだと求めてくる。きっと俺はもう抜けない。雫の生の膣内に、子宮に精をそのまま流し込むんだ。
挿れただけでも背筋を上る快感があったのに、全てを挿入し切って、さらに腰を足で挟まれ固定される。精神的な充足感と快感。
舌を絡め合い、恋人繋ぎをして、触れ合って居ない場所が無い程の密着。
唐突に激しく収縮し出した膣肉に揉まれて、そのまま俺も一番奥で精を吐き出す。
互いにキスしたままで呻くような声しか出なかったが、それでも俺達は繋がり続けた。この熱を離したくないと、より強く抱き合った。
何も無い俺を求めてくれて、愛してくれる。
朝露雫と言う人が愛おしくて、この人と友達である事が悲しくて、気付けば俺は一粒だけ涙を流していた。
やがて互いの快感がおさまった頃。俺達は唇だけを離し……
「秋、私……」
「雫、俺……」
「「友達は嫌だ」」
……全く同じ言葉を口にした。
依然として繋がったままの肉棒を膣肉がぎゅっと締め付けてくる。
繋いだ手がより一層固く結ばれる。
「俺、見合う男になるよ。これからずっと、雫の側に居たいから」
「うんっ……側に居て下さい。私の全てを受け止めてくれた貴方と、一緒に居たいから」
そう言って微笑む朝露雫は、とても綺麗だった。
===
こうして俺達は恋人になった。
ハグする友達でも無く、キスする友達でも無く、セックスをする友達でも無い。
お互いを好き合って寄り添い合う恋人だ。
あれから一ヶ月。
俺達は毎日会って、毎日ハグとキスをした。ほぼ毎日セックスもした。盛りのついた猿とはこの事かと自覚したけど止まらなかった。
初日以降はゴムを付けるようになったが、快感の度合いはかなり落ちる。時折我慢出来ずに雫がゴムを外したが、生えっちは互いにイキまくりで大変だった。
登校日の後は愚痴と呪詛が吐き出され、俺はそれを雫の頭を撫でながら聞く。
イライラがピークに至る前にキスで口を塞ぎ、怖い雫を可愛い雫に変えてしまう。
ストレスが多い時は雫と激しいセックスはせず、ただ甘やかす様にキスと愛撫をし続け、挿入しても動かずにただ繋がるだけのセックスをした。
でもそれに一番昂るのが雫で、甘やかした分だけ激しいセックスに様変わりする。
そんなエッチで面倒臭いところもある雫の事が好きだ。
さあ、明日は始業式。
雫と付き合っている事を明かす日だ。憧れの朝露さんは既に俺の物。それを知らしめてしまえば、雫が他の女子からのやっかみを受ける事も、名も知らない男子から告白される事も少なくなるだろう。
俺に降りかかるやっかみは……まあどうにでもなるし、どうとでもしてやる。それくらい出来ないと自分で胸を張れないものな。
「秋、ありがとうね」
「そうだな、ほんとな。胃が痛い」
「学校で慰めてあげましょうか」
「視線の針山地獄は嫌だな」
「じゃあ……ゲームセンター行きましょっ」
俺の隣で生まれたままの姿を晒し、歯を見せてニッカリと笑う本来の雫。
「良いな、それ。エアホッケーでもやろうか」
「いやー! 散々やったでしょう!? まだ私を負かし足りないの!?」
「俺に勝ったら帰りに鯛焼き奢る」
「やるわ」
負けず嫌いでちょっぴり食い意地がある、そんなありのままの雫が、俺は大好きだ。
綺麗だからじゃ無い。
綺麗で、可愛くて、恐ろしくて、怖くて、エッチで、甘えん坊で、面白い、綺麗なだけじゃない雫だから、好きなんだ。