箱庭世界で10000人の淫魔ハーレムに愛し尽くされる話 作:タナト
僕は孤児院の廊下にいた。どうしてここにいるのだろうかという疑問は湧いてこなかった。このままじっとしたらあの人が行ってしまう。そんな焦りが頭の中を満たしていたから。
「はっ、はっ!」
僕は玄関に向かって走った。でも体がひどく重くて、廊下が異様に長く感じる。
「お姉ちゃん!」
僕が汗だくになって玄関にたどり着くと、怖そうな大人たちに囲まれて連れていかれるあの人がいた。
彼女と離れたくない、このまま行かせてしまうと彼女自身が不幸になってしまう。僕の中で、自分の欲求と彼女を想う思いが、ないまぜになる。
「行かないで!」
僕は何度も叫ぶけど、彼女には聞こえないみたいだ。それだけじゃなくて、叫ぶたびに声が出せなくなっていく。絶望と焦りが僕の中で最大になった時に、彼女が振り向いて……。
「行かないで!」
僕は目が覚めた。僕の視界に入ったのはもうすっかり馴染んだ館の寝室の天井だった。
「ご主人様?大丈夫ですか?」
隣から綺麗な声が聞こえる。横を見ると眠そうな目をこするルミナがいた。昨日の夜は彼女と交わっていたのだった。
(そうだ。僕はもう孤児院から解放されたんだ……)
今でも僕がこんな幸福を得てよいものかと、不安に思うことがあるけれど、愛してくれる淫魔のいるこの館が、僕の存在する場所なんだ。
この現実が幸せ過ぎて、さっきの悪夢の方が現実であるように思えて、自分に言い聞かせる。
「大丈夫。私はずっとご主人様のそばにいる。他のみんなも、同じ気持ち。ご主人様を不幸にするものは絶対に消す。だから、安心して……」
ルミナは僕の不安を見抜いているのか、僕を抱きしめて頭を撫でながら、僕の心をほぐす言葉を言ってくれる。
“ガチャッ!”
「ご主人様!大丈夫でしょうか!?」
一拍おいて、アリシアが焦った様子で部屋に入ってくる。
「ど、どうしたの?」
アリシアが何を焦っているかが分からず、聞き返してしまう。
「は、はい!ご主人様の不安を感じましたので、馳せ参じたところです」
淫魔が心を見通すのは知っていたけれど、離れていても感じるとは思わなかった。
「私たちはご主人様にいつも幸福で満たされていてほしいのです♡だから、ご主人様の不安には敏感なのです♡」
寄り添うように僕を抱きしめているルミナが、疑問に答えてくれる。
「ルミナ!あなたがそばにいながら、ご主人様に悪夢を見せてしまうだなんて!」
悪夢を見たことまでしっかり見抜かれている。そこまで来ると逆に怖いかも。
「ご主人様、ごめんなさい。いやらしくて幸せな夢を見せるのは、淫魔の得意技だったのに……ご主人様とセックスできたのが幸せ過ぎて、気が抜けていました」
淫魔は夢魔とも呼ばれていたはずだ。彼女たちのテリトリーで問題が起こってしまったことを気にしているのか。
「ご主人様の中に不安要素があるのが我慢ならないのです。ご主人様の心を温めるために何かできることはあるでしょうか?」
アリシアはかなり切羽詰まった様子で訊いてくる。
「大丈夫。みんなと出会えて、ここで暮らせて今とっても幸せだよ。今日はちょっと思い出が出てきちゃっただけ」
正直に言ってここに来るまでの僕の人生は、思い出したいものではない。でもここにきて淫魔のみんなと心と身体を交わらせて、その悲しさを洗い流してもらえている。過去をすっぱり忘れたいというのも贅沢な話だろう。
「それならばいいのですが……あの女性、ロザリー様のことがご主人様の心に何か引っかかりを残しているのではないかと……」
ロザリー……その名前を聞いて僕の心臓が大きく鳴る。
「どうしてあの人のこと知ってるの?」
「はい、私たち淫魔は魂の共鳴によって主となるべき方を探します。そうして見つけたあなた様の半生を観察させてもらっていました。故に知っています。あなた様が特に強く心を通わせた女性のことも……」
なんだか恥ずかしくなった。みんなと愛を交わすことで僕があの人に抱いていた感情が、恋と呼べるものだと分かってきた。そんな想いも、彼女たちにはお見通しなのだろう。
ロザリー……あの夢に出てきた女の人の名前だ。僕より少し年上の孤児お姉さんで、淫魔のみんなにも負けないぐらい美人で優しい女性だった。彼女は孤児たちみんなと仲が良かったけれど、僕が一番仲が良かった自信がある。あの人とかかわっている時間は、辛い孤児院生活の中で、数少ない癒しだった。
そんな彼女も、やがて僕の前から去って行った。彼女の美貌を聞きつけて悪名高い金持ちが彼女を引き取ろうとしたのだ。そいつは人の心がないやつで、女性を囲っては死ぬまで使い潰すような鬼畜であるという話で有名だった。僕も、他の孤児たちも行くべきじゃないと止めたけれど、高額な寄付金を払ってくれるという話があり、彼女は嫁に行くことにした。まるで生贄に行くみたいで、絶対に彼女を行かせるべきじゃないと思ったけれど、ただの孤児でしかない僕には叫ぶことしかできなかった。
「ありがとう。私がんばるから、みんなも、君も幸せになってほしい」
そう言って彼女は涙を流しながら孤児院を去って行った。
彼女はそのまま男の元へ行ってしまったけれど、結局生活が楽になることはなく、彼女の消息も聞くことはできなかった。
「彼女に、ロザリー女史に会いたいですか?」
「え?」
アリシアは澄ました顔で言ってきた。
「そんなことできるの?」
「ええ、そしてその方がご主人様の想い人であるのなら、この館の新たな淫魔としてお迎えすることもできます」
「ちょ、ちょっと待って、ロザリーお姉ちゃんは、ただの人間だよ!?」
突拍子もないことを言いだした彼女に僕はただただ困惑してしまう。
「はい、この館の機能あるいは我々淫魔の能力としてあらゆる世界に干渉し、その世界にいるご主人様好みの女性を淫魔として、引き入れるというものがあるのです」
「そんなこともできるの?」
「はい、人間界にいたころのご主人様のお知り合いだけではなく、心惹かれたアイドルや、女優などえりすぐりの美女を無制限に召喚することができます」
「そ、そんなことできないよ!そういう人にもその人の人生があるんだろうし……」
僕のような世捨て人ならともかく、社会とつながりのある人が突然呼ばれるのも困ってしまうんだろうし。
「大丈夫です。召喚する人物は、並行世界の中で特にご主人様に共鳴して、ご主人様に仕える未来が人間の世界で生きるよりいいと考える人物を選定することになります。ご主人様のご懸念は当てはまらないと考えております」
並行世界、共鳴……難しい言葉が並んでいるけれど、僕と行きたいと思ってくれる人を呼ぶということだろうか。そうだとしても……
「でも僕の会いたいロザリーお姉ちゃんは、1人しかいないよ。それに一度会えるにしたって……」
結局は、あの男に奪われてしまうんだ。
僕はそんな絶望的な現実を意識して俯くしかなかった。
「ならば、その男に奪われる前に逆に奪ってしまえばいいのです」
「え?」
「千里眼にて観測しましたが、その男の元に嫁に行くことで、ロザリー女史が幸せになれる未来はありませんでした。ですから本人のためにもご主人様と別れた直後の時間軸から、彼女をこの館に召喚するのがよろしいと考えています」
あの男の元に行くことでロザリーお姉ちゃんは幸せになれない。なら、彼女の運命を変えてしまうとしても、僕のところに来てもらった方がいいのかもしれない。
でも、すぐに別の不安が頭に浮かんだ。
「でも、ロザリーお姉ちゃんがここで暮らしたいと思うかは分からないよね」
僕は会いたいし、あんな男のところに行ってほしくない。でもそれだけで勝手に連れてきてここに縛り付けるようなことをするのは違う気がする。
「はい。その点についても問題ありません」
アリシアは僕の心配を分かっていたように答える。
「召喚した人物には魔法で精神に干渉することもできます。望むのであれば記憶や認識を変え、ご主人様を愛するようにすることも可能です」
「そんなことまでできるの?」
「はい。しかし、ご主人様はそのようなことを望まれないでしょう?」
「うん、それは嫌かな……」
僕のことを好きになってくれるのは嬉しい。でも魔法で無理やり好きにさせたところで、本当に僕を好きになってもらえたことにはならない。
「ですので、まずはロザリー女史をこの館に召喚し、事情を説明しましょう。その上でこの館に残るか、元の世界へ戻るかを本人に選んでいただけばよいのです」
「でも、元の世界に帰ったら結局あの男のところに行くんじゃ……それにここにいたいって言ってくれたとしても、あの金持ちの怒りを買ったりするんじゃ……」
「そちらも問題ありません。孤児院への寄付金や、あの男との関係、その後の生活についても我々の魔法でどうとでもできます。ロザリー女史が元の世界で暮らすことを望むのであれば、安全に暮らせるようにすることもできます」
「そんなこともできるんだ……」
アリシアたちの魔法なら、大抵のことはどうにかなってしまうらしい。
それなら僕が勝手にロザリーお姉ちゃんの人生を決める必要もない。ただ一度会って、今の僕のことを知ってもらって、それからどうしたいのか聞けばいい。
「……会いたい……ロザリーお姉ちゃんに会いたい。呼んでもらってもいい?」
「もちろんです♡」
アリシアは嬉しそうに微笑むと、ベッドから少し離れて手を前に出した。
「それでは、ご主人様と別れた直後。ロザリー女史があの男の屋敷へ到着する前の時間から召喚いたします」
アリシアの目が紫色に光り、何もなかった床の上に大きな魔法陣が現れる。
僕はその光景をじっと見つめていた。本当に会えるのだろうか、もう二度と会えないと思っていたロザリーお姉ちゃんに。
そんなことを考えているうちに魔法陣から強い光が溢れ、思わず目を閉じる。
光が収まったのを感じて目を開くと、そこには1人の女性が立っていた。
「……え?」
栗色の長い髪に琥珀色の瞳。嫁入り衣装のドレスをまとった、忘れるはずもないあの日の姿だった。
「ロザリー……お姉ちゃん?」
「……ここ、どこ?」
ロザリーお姉ちゃんは周囲を見回して困惑していた。ついさっきまで馬車の中にいたのだろうから、突然こんな場所に連れてこられれば当然だ。
そして、僕の声に気づいてこちらを見る。
「……え?」
目を大きく見開いたまま固まる。
「君、なんで……?」
僕も何を言えばいいのか分からなくなった。ずっと会いたかった人が本当に目の前にいる。それだけで胸がいっぱいになる。
「突然お連れして申し訳ありません、ロザリー様」
僕たちが固まっている間にアリシアがロザリーお姉ちゃんの前へ進み出た。
「あなたは……?」
「詳しい事情をご説明いたします。少々情報量が多いため、直接お伝えした方が早いでしょう。失礼します」
「え、あの……」
困惑するロザリーお姉ちゃんに、アリシアはそっと顔を近づけて額を合わせる。
“ポワァー……!”
すると2人の間に淡い紫色の光が灯った。
「……っ!」
ロザリーお姉ちゃんが驚いたように目を見開く。
たぶん僕がこの世界に来たことや、この館のこと、淫魔のみんなのことを直接頭の中に伝えているのだろう。
少ししてアリシアが額を離した。
「以上が、ご主人様がこちらへ来られてから現在までの大まかな事情になります」
「……こんな奇跡みたいなことが君に起こったの……」
ロザリーお姉ちゃんは呆然としたまま僕を見つめる。
「うん。僕も信じられないくらいなんだけどね」
「本当に君なの?」
「そうだよ……」
僕は、シーツをローブ代わりに羽織った姿で彼女に歩み寄る。
“ムギュ!”
いきなりお姉ちゃんに抱きしめられた。
「お姉ちゃん……!?」
抱きしめたいのは僕の方で、彼女に抱きしめられるのは想像していなかった。
「怖かった。君にも2度と会えないし、これから幸せなことは何もないと思ってた」
「お姉ちゃん……」
僕も胸がいっぱいになって、泣いているお姉ちゃんを抱きしめ返した。
「お姉ちゃん……」
ずっと会いたかった。
孤児院にいたころは自分でも分かっていなかったけれど、今ならあのころ僕がお姉ちゃんに抱いていた気持ちがなんだったのか分かる。
「僕ね、ずっとお姉ちゃんのことが好きだったんだと思う」
「……え?」
お姉ちゃんが少しだけ顔を上げる。
「昔はただ、ずっと一緒にいたいって思ってただけだった。でもここに来て、みんなと一緒に暮らして、好きってどういうことなのか分かってきて……それで気づいたんだ」
言っているうちに恥ずかしくなってくる。でも、もう一度会えたのだからちゃんと言っておきたかった。
「だからずっと心配だった。お姉ちゃんがあの男のところに行ったあと、どうなったのか何も分からなかったから……今日、アリシアに会えるって言われて、それで呼んでもらったんだ」
「…………」
お姉ちゃんは何も言わなかった。
ただ僕の顔を見たまま、少しだけ頬を赤くしている。
「勝手に呼んじゃってごめん。でも、ここに残るかどうかまで僕が決めるつもりはないよ」
「その点は、こちらからご説明いたします」
アリシアが僕たちの間に入るように一歩前へ出た。
「ロザリー様には2つの選択肢がございます。1つは人間の世界へ戻り、自由に暮らしていただくことです。もちろん、自立した生活ができるように一定の援助はお約束いたします」
「援助……?」
「はい。孤児院への寄付、あの男性との関係、住居や生活基盤についても、こちらで問題なく整えることができます。それがたやすく可能だということは先ほどお伝えした通りです」
お姉ちゃんが少し驚いた顔をする。
「そしてもう一つは、この館に残ることです。こちらを選ばれるのであれば、ロザリー様を淫魔へと変え、ご主人様と共に生きていただくことになります」
「私が……」
「無理に選んでいただく必要はございません。どちらの道を選ばれても、ご主人様はロザリー様が不幸にならないことを望まれております」
お姉ちゃんは黙り込んだ。元の世界へ戻れば、孤児院のみんなともまた会える。
でもここに残れば、僕と一緒に暮らすことになる。
いきなりそんなことを言われても、すぐには決められないだろう。
「ゆっくり考えていいよ」
「……うん」
僕がそう言うと、お姉ちゃんは小さく頷いた。
そこで僕も少し緊張が解けてしまったのか、身体から力が抜ける。
「あ」
肩に引っ掛けていたシーツがずり落ちた。
「…………」
お姉ちゃんの動きが止まった。
「ご、ごめん!」
慌ててシーツを拾い上げる。
でも、お姉ちゃんはすぐには顔を逸らさなかった。何かを考える余裕すらなくなったみたいに、ただ呆然と僕を見ている。
「……お姉ちゃん?」
「…………」
返事がない。
頬がさっきより赤くなっていて、視線を逸らそうとしているのに、なぜか僕の方へ戻ってきてしまう。
見てはいけないと思っているのに、目が離せない、そんな感じだった。
「ご主人様のお身体を見て魅了されてしまったのでしょう」
ベッドの方から、ルミナの落ち着いた声が聞こえた。
「アリシアが伝えたのは、この世界の仕組みだけではありませんから」
「ルミナ?」
「この館で私たちがどのように暮らしているのか。ご主人様に愛されることが、どれほど満たされることなのか。それもある程度は伝わっています」
ルミナはいつもの無表情に近い顔で、お姉ちゃんを見ている。
「頭ではまだ迷っていても、心の方はどうしたいか決まっているのでしょう」
「……っ」
その言葉に反応するように、お姉ちゃんの肩がわずかに震えた。
「ご主人様のそばで生きることが、どういうことなのか♡人の世界で生きていては、決して得られない快楽と幸福が待っていると」
ルミナはいつもと違う蠱惑的な声で言った。
「…………」
お姉ちゃんはまだ何も言わない。
ただ顔を赤くしたまま僕を見つめていて、その目にはさっきまでとは違う熱が混じっていた。
僕と再会できたことへの安心だけではなく、もっと別の何かを、急に強く意識してしまった目だった。
「お姉ちゃん」
「……なに?」
ようやく返事が返ってくる。
「お姉ちゃんがいいなって思う方を選んでいいから……僕にとってはお姉ちゃんが幸せになるのが一番大事だから」
「……うん」
そう答えた声は、少しだけ上ずっていた。
「はーっ♡はーっ♡……」
お姉ちゃんはしばらく熱い息を吐いて、俯いていた。
「あの、淫魔さん!本当に私も、淫魔になれるんですか?あんなふうに愛してもらえるんですか?」
「もちろんでございます」
アリシアは迷うことなく答えた。
「ロザリー様が望まれるのであれば、我々と同じ淫魔として新たな生を得ることができます。人間であったころよりも遥かに強い生命力と魔力を持ち、これまでとは比較にならないほど深く、愛する方との幸福を感じることのできる身体へと生まれ変わります」
「…………」
「そして何より、この館においてご主人様から愛されることに不安を抱く必要はございません」
アリシアは僕の方を見て、優しく微笑んだ。
「ご主人様が我々をどれほど大切にしてくださる方なのかは、先ほどお伝えした記憶ですでにご理解いただけているかと思います。誰かを使い捨てたり、気持ちを無視して自分のものにしたりする方ではございません」
ロザリーお姉ちゃんは黙ったまま僕を見る。
「この世界を選ばれるのであれば、ご主人様はロザリー様を愛し続けるでしょう。我々がそうされているように、一時の気まぐれではなく、これから先ずっとです」
「ずっと……」
「はい。それにロザリー様も、すでにご存じなのではありませんか?」
「え?」
「私がお見せした記憶の中で、ご主人様と共に過ごす我々の幸福もお伝えしておりますので。ご主人様の類まれな雄としての魅力を感じて子宮が疼いているのではないですか?」
お姉ちゃんの顔がまた赤くなる。さっきから僕を見る目がおかしかったのも、そのせいなのかもしれない。
「ですから、私からこれ以上言葉を尽くす必要もないでしょう。この館に残ることがどのような人生なのか、ロザリー様はすでに感じ取っておられるはずです」
「…………」
しばらく、お姉ちゃんは何も言わなかった。俯いて自分の胸元を握りしめている。
僕としては、ここで一緒に生きてほしいと思っていたけど、元の世界に帰ると言われても仕方がないとも考えていた。お姉ちゃんにはお姉ちゃんの人生がある。
だから答えを急かすつもりはなかった。
「お姉ちゃん、無理に……」
「違うの」
僕の言葉を遮るように、お姉ちゃんが顔を上げた。
「迷ってたのは、ここにいたくないからじゃないの」
「え?」
「急にいろんなことが起こって、私の人生が全部変わっちゃったから……本当にこんな幸せを選んでいいのかなって思ってただけ」
お姉ちゃんは少し恥ずかしそうに笑った。
「それに、君だけじゃないんだよ」
「……?」
「好きだったの」
胸が大きく鳴った。
「私も、ずっと君のことが好きだった」
「……僕を?」
「うん。弟みたいに大切だからって、自分ではそう思おうとしてた。でも離れるって決まった時に分かったの。もう会えなくなるのが、あんなに苦しかったのは……それだけじゃなかったんだって」
お姉ちゃんは一度目を伏せて、それからもう一度僕を見る。
「だから、もし本当に選んでいいなら……」
少しだけ迷うように息を吸う。
「私、ここにいたい」
「お姉ちゃん……」
「君のそばにいたい。今度こそ離れたくない」
そして、アリシアの方へ向き直った。
「私を淫魔にしてください」
その声には、もう迷いがなかった。
「私もこの世界で、この子を愛して生きたい。この子にも……ずっと愛してほしい」
アリシアは満足そうに微笑んで、深く頭を下げた。
「かしこまりました、ロザリー様……ルミナは手を貸して。ロザリー様はこちらへ」
アリシアはロザリーお姉ちゃんの手を引いて、少し離れた場所に立つ。呼ばれたルミナは、悪魔らしい衣装に着替えてお姉ちゃんを挟むように立った。
「では転生の儀式の“準備”を開始いたしましょう」
「えっと……私は何を……」
「大丈夫です。私たちに身を任せて……決して不幸なことにはなりません」
さすがにこれから起こることまで知らされていないのか、ロザリーお姉ちゃんは不安そうにしていた。そんなお姉ちゃんを、普段あまりしゃべらないルミナがフォローしていた。
「…………」
「アリシアとルミナを信じてあげて」
何かを確認するような視線をお姉ちゃんが送ってきたので、僕が淫魔のみんなに抱いている信頼感を伝えた。
「そうです。ここから先、あなたを待つのは愛と快楽の幸福だけ♡転生の過程もとても気持ちのいいものですよ♡」
「は、はあ……♡」
お姉ちゃんは、飛び切り美人なアリシアに迫られて、たじたじになっている様子だった。
「じゃあ、お任せします……」
「はい♡……では転生に必要な種となる魔力を注入します♡体が熱くなるでしょうが、害はありませんので♡」
“フワーッ♡”
アリシアが手をかざすと、ロザリーお姉ちゃんを中心に魔法陣が展開して、ピンクの光がお姉ちゃんを包んだ。
“パラパラパラパラ……ボインッ♡ブルン♡”
「きゃっ♡」
「…………!?」
なんと、パラパラと塵になるようにお姉ちゃんの衣服が消えていった。お姉ちゃんの綺麗でグラマラスな体が部屋の全員に晒されてしまう。大きなおっぱいとお尻が弾む音がこっちまで聞こえてくるみたいだった。
その裸は淫魔のみんなに負けないくらい魅力的だったけど何とか理性の方が勝って僕は目を閉じることができた。
「ロザリー様どうか隠さないで♡淫魔となれば、服を着ているも着ていないも些事となるのです♡特にご主人様の前では……♡」
「そう♡それにあなたの身体はすでに私たちに負けないほど美しく、そしてエッチです♡もっと見せた方がご主人様も悦ぶと思います♡」
「エッチって……」
ルミナのあけすけな言葉にお姉ちゃんも戸惑ってるみたいだった。何か助け舟を出そうと思ったところで……。
「ご主人様も目を背けず見届けてあげてください。きっと、生涯残る瞬間になりますから……♡」
「恥ずかしいけど変わってしまう私を見ててほしい感じはあるかも……♡」
「う、うん……」
アリシアが、何よりお姉ちゃん自身がそう言うなら従うしかなかった。
恐る恐る目を開けると、やっぱりとってもきれいな女体がそこにあった。そしてルミナの言う通りとってもエッチだ。
嫁入り前に念入りに洗われていたお姉ちゃんの肌は白く輝いていて、たわわに実ったおっぱいとお尻を魅力的に際立たせている。そしてナチュラルなウェーブがかかった背中まで伸びた栗色の髪も、部屋に入る光を受けて輝いている。
そして天使みたいに整った顔についたはちみつ色の瞳が熱を帯びた視線をこちらに送ってくれている。
「それでは、始めます♡間違っても膜は破りませんから、安心してください♡」
「今からぶっかけるものも毒ではないので安心してください♡」
「膜……毒……?」
何やら不穏な言葉が聞こえ、お姉ちゃんは警戒してしまう。しかしもう儀式は始まってしまっていた。
“シュルシュル……ジュポン♡”
“シュルシュル……ジョパー♡”
「そこはんっ♡!……キャーッ♡!」
アリシアの尻尾がなんとお姉ちゃんのオマンコに入り込もうとし、ルミナの尻尾は筒形になって粘性のある液体をお姉ちゃんの全身にぶっかけた。
「な、何するつもりなの!?」
「オマンコから、淫魔への転生に必要な因子と魔力を注入します♡先ほども言った通り、膜には絶対に傷は付けませんので、どうか身を任せて……♡」
「私の塗り込むローションも外側から魔力を浸透させる為のモノです♡全身に塗り広げる必要があります♡」
「そ、そうなの!?……んああっ♡……にゃ、にゃにこれぇぇぇ~~~♡♡♡あちゅい~~~♡♡♡」
ロザリーお姉ちゃんが状況を認識する前にさらなる変化が彼女を襲った。ピンク色のエネルギーが尻尾を通してお姉ちゃんの中へ注がれていく。そしてそれが彼女の身体を熱くさせているようだった。その感覚にお姉ちゃんは顔を赤くして震えていた。その様子は僕とセックスをして発情してしまった淫魔たちの様子とよく似ていた。だからこそ僕はチンポを硬くしながら、見入ってしまった。
“ヌチャヌチャ♡……ヌリヌリ……♡”
ルミナは震えるお姉ちゃんの身体に、両手と尻尾でローションを塗り広げていった。
「はぁ……♡あなたは想像以上です♡肌の滑らかさ、弾力、人にしては最高の域にあると言っていいでしょう♡淫魔へ転生すると人など比較にならない美と色香を得ることになりますが、元がこれなら伸びしろにも期待できます♡」
「熱い♡身体がビリビリ……背筋がぞくぞくするの♡……ひやんっ♡」
アリシアの綺麗な指がお姉ちゃんの首筋をなぞると、彼女はビクンと身体を跳ねさせた。ローションと魔力で感度が上がっているみたいだ。お姉ちゃんはうつろな目をして熱に浮かされるみたいになる。体の至るところで汗が光っていてとっても色っぽい。
純白のお姉ちゃんの肌……お金に物を言わせるような男に渡さなくてよかったと思うとともに、早く僕のモノにしたいという欲望が持ち上がってくる。
(でも、僕の運命に付き合わせるようなことしていいのかな……)
「ご主人様、迷わないでください♡」
「ご主人様に愛される生以上に幸せな生き方は、ないです♡」
「そう、私が選んだ道……変わった私を受け入れてほしいって思ってるよ♡」
アリシアとルミナ、そしてロザリーお姉ちゃん本人が僕の欲望を肯定してくれる。そこまで言われたらさすがに抵抗感がなくなって、僕のものになっていくお姉ちゃんに興奮が高まって『完成』の瞬間への期待も大きくなっていく。
「うう……すごい♡身体はじんじんして、何かが蠢いてる♡」
「そう♡あなたは蛹♡今まさに至高の快楽と幸福を得られる淫魔へ羽化しようとしている幸せな蛹♡」
「だから、恐れないで♡心と身体を開いて♡ご主人様だけを想ってください♡そうすれば、よりよく変われます♡」
「あ、ああんっ♡♡♡」
アリシアは尻尾から、ルミナは手についたローションから、淫魔の魔力をお姉ちゃんに注ぎ込んでいく。何かこみ上げるものがあるのか、お姉ちゃんはすごく色っぽい声を上げた。
2人の淫魔が美しい女の人を魔の道へ堕とす。見ているこっちがドキドキするような淫靡さと背徳感が溢れる光景だった。
「くぅ、あああぁぁっ♡!」
“キーンッ♡!”
お姉ちゃんが一際大きな嬌声を上げると全身がピンク色に光って、淫魔のみんなにも時々現れる紫色の不思議な文様が浮かんできた。
「ああ♡ついに淫魔へ転生する準備が出来ました♡それはあなたを魔の道へ導く淫紋の一種です♡」
「疼く♡……渇く♡……身体が何かを欲っしてるぅ……♡」
お姉ちゃんは苦しげな声を出して、身をよじって呻き始める。
「だ、大丈夫お姉ちゃん!?」
「辛いでしょう?淫魔になりかけている肉体と魂が最後の一押しを求めて暴れているのです♡」
僕が心配になって駆け寄ろうとすると、アリシアは心配することはないというようにジェスチャーをして説明を続ける。
「ど、どうしたらいいのぉ~?」
高熱に苛まれているように苦しげな様子のお姉ちゃんを見るのはとても辛かった。
「その渇きを満たし、あなたに人と魔の境界線を越えさせるモノはたった一つ……♡」
「ご主人様の子種汁……ザーメンです♡」
「ああ♡ザーメン♡……オチンポォ♡」
アリシアとルミナから教えてもらうまでもないのか、お姉ちゃんはふらふらとこちらへやってくる。
「ご主人様♡あなた様の尊い御子種をロザリー様の子宮に注いでいただくことが儀式の次なる過程でございます♡」
アリシアはとても愉しそうにほほ笑んでいる。それはつまり今ここでお姉ちゃんの初めてを……。
「君のオチンポ私にちょうだぁ~い♡私の初めて、貰ってぇ~♡」
お姉ちゃんの甘ったるい媚び声が僕の脳まで蕩けさせるみたいだった。
「僕で……ううん……約束する!お姉ちゃんのことは僕が必ず幸せにするから!」
僕でいいのかと言いかけたけど途中で言い直した。ここで受けとめなければ、僕を選んで来てくれたロザリーお姉ちゃんに失礼だ。
「分かってる♡信じてるよ♡……だから、ちょうだい♡」
涙を浮かべて種媚びするお姉ちゃんは、こちらから襲い掛かりたくなるほど魅力的だった。
「ささ、ご主人様♡ここにあなた様の逞しいオチンポを待ちわびているオマンコがあります♡」
「どうか、その一突きで、ロザリー様の辛い飢えを満たしてあげてください♡」
左右から現れたアリシアとルミナがお姉ちゃんの身体を倒して正常位でセックスしやすいように、体勢を整えてくれる。
“ボロンッ!”
「あ、おっきい♡昔見たのと全然違う……怖いぐらいかっこよすぎ……♡」
“ビキビキッ!”
お姉ちゃんの放つ色香をもろに受けて、十分に勃起している。アリシアたち淫魔との交わりで、人間だったころよりずいぶん太く、長くなったチンポをお姉ちゃんが褒めてくれる。
お姉ちゃんには小さいころ、勃起も知らなかった小さなチンポを見られてしまったことがある。でも今、成長した逸物を褒めてもらえてとても誇らしい気持ちになった。
あの金持ちも、それなりに性豪だと聞いたことがある。でも僕の方がお姉ちゃんを気持ちよくできる自信がある。何より僕には愛がある。
「いくよ」
僕はお姉ちゃんのオマンコに亀頭をあてがって言った。
「来てぇ♡私の全部奪って♡」
「お姉ちゃん!」
“ズポォ……!ブチン!”
「んあああぁぁぁ~~~♡♡♡」
処女膜を一気に破る一突きで、お姉ちゃんの初めてをもらう。
膜を破る痛みは、アリシアが魔法でなくしてくれる。だからお姉ちゃんが感じるのも、僕が感じるのも、快楽だけだった。
「おお……」
お姉ちゃんの口から甲高い嬌声が出て、僕もあまりの気持ちよさに呻いてしまう。お姉ちゃんのオマンコは淫魔のみんなと変わらないぐらいの快感を僕にくれた。さらにお姉ちゃんが淫魔になってくれればもっとすごくなる。それを求める自分に素直になりつつ、それに見合うものをお姉ちゃんに与えられるように、全力で膣壁にチンポを擦り付けることを意識して、ピストンを始めた。
“ジュパン♡ジュッパン♡ドチュンドチュン♡”
「おおおぉんっ♡……オチンポすっご……♡♡こんなのすぐイっちゃうぅぅぅ♡♡♡」
鈍く低い声がお姉ちゃんから聞こえる。いつもきれいだったお姉ちゃんからは考えられない声。今、お姉ちゃんは笑っている。きっと、気持ち良くなってくれている。僕のチンポでこれまでお姉ちゃんが感じたことがない気持ちよさを与えられている!
「いいよ!イって!僕のチンポで、もっと感じて!」
もっと気持ちよくなってほしい、幸せになってほしい。そして、それをするのは僕でありたい。そんな想いとともに、腰を出し入れして、絶頂に近づいていく。
お姉ちゃんのオマンコは、これまで抱きしめてくれた時のように、柔らかく抱きしめてくれて僕を幸せにしてくれる。
「あああんっ♡♡出してぇ、あなたのモノにしてぇ~~~♡♡じゃ~めんで、わたしをかえて~~~♡♡♡……むっちゅ♡ちゅ~~♡」
“ジュパン♡ジュッパン♡”
僕たちは、抱き合ってキスをした。お姉ちゃんの唇は、柔らかい以上に甘かった。これからも、何回でも、ずっと味わっていたいと思った。
お姉ちゃんの身体は、淫紋の効果なのか、とても熱くなっていた。
「ああ♡これから、愛の奇跡が起こります♡」
「2人とも、頑張ってください♡」
アリシアとルミナの声援が聞こえてくる。お姉ちゃんのオマンコは焼け付くほどに熱く感じて、2人の境界線が分からなくなって……
“ドピュル!ビュルビュルル~!ビュクビュクビュルル~~!”
「あ゛ああぁぁっ♡♡イ゛くイ゛くイ゛くイ゛くイ゛ぐ~~~♡♡♡」
射精の衝撃で、お姉ちゃんは唇を離してしまう。それでも僕は、お姉ちゃんを放したくなくて、離れたくなくて、必死に抱き着いて、その大きなおっぱいに顔をうずめた。チンポとオマンコが気持ちよくなっていること以外は、分からなくなっていく……。それでも、ドクンドクンと、確かに命の音が聞こえ、お姉ちゃんがここにいるのだと分かった……。
「ああ♡……ああ~~~♡♡♡」
中出し絶頂が終わった後も、お姉ちゃんの中にはすごいエネルギーが蠢いているようだった。淫紋も眩しいばかりに光っていた。僕はその現象に圧倒されて、オマンコからチンポを抜いてしまう。
“ジュププ、ジュポン!”
「んあああんっ♡♡」
「ロザリー様♡!今こそ、ご主人様のオチンポ様に口づけをして、愛を誓ってください♡!そうすればあなたは、淫魔となり永遠にご主人様のモノになれます♡!」
「はぁはぁ♡……きみ♡だんなさま♡」
身体を駆け巡る大きな力に翻弄されながらも、確かに僕と目を合わせて意志を伝えてきてくれる。僕の淫魔に、妻になりたいと……。
「わたし……ロザリーは、あなたに永遠の愛を、誓います♡……ちゅ♡♡♡」
ロザリーお姉ちゃんは、とびっきり綺麗で、可愛くて、エッチな顔で僕のチンポの先にキスをしてくれた。
“キーンッ♡”
瞬間、ロザリーお姉ちゃんと僕の間に、切れない絆が結ばれたのを感じた。そして今度はお姉ちゃんの身体が濃い紫色のオーラに包まれて、空中へ浮かぶようになる。
「ご主人様に仕える新たなる愛の使徒の誕生です♡♡」
アリシアがそう宣言すると、お姉ちゃんの身体に本格的な変化が起こり始める。
「うぅぅんっ♡♡ 身体、熱い……♡」
“プルンッ♡♡……ボインッ♡♡♡”
最初に、全身へ浮かんでいた淫紋がお姉ちゃんの中へ沁み込むように消えていく。ただ一つ、へその下の文様だけを残して、彼女の身体そのものが淫魔へと変わり始めた。
身長が少し伸び、もともと十分に豊満だった肉付きがさらに良くなっていく。
“むちっ♡……ぷるんっ♡♡”
「あぁんっ♡♡おっぱいも、お尻もぉ……大きくなってるぅ……♡」
バランスが悪く見えるぎりぎりのところまで、おっぱいはより大きく、重たく膨らみ、お尻も横へ後ろへと肉付きが増していく。
それでいて腰回りには余分な肉がつかず、身長が伸びたこともあって、お腹から腰にかけての悩ましいくびれは、むしろ一層強調されていた。
「んぅぅっ♡ 身体が、変わってくぅ……♡♡」
お姉ちゃんは押し寄せる快感に耐えきれないように腰を捩り、豊かになった胸とお尻を何度も震わせる。
畳みかけるように、変化は続いていく。
“むにゅっ……♡”
「ひゃんっ♡♡」
腰の後ろ、尾てい骨の辺りが内側から押し上げられるように盛り上がる。
“にゅるっ……にゅるるるっ♡”
「ああっ♡♡生えてくるぅ……♡♡」
豊かになったお尻の少し上から、艶のある黒紫色のものが生々しく伸び出してきた。最初は短い突起だったそれは、身体の奥から押し出されるたびに細長く伸びていく。
太すぎず細すぎない、しなやかな尻尾。
先端だけは少し幅が広がり、淫魔らしいハートにも矢じりにも見える形へと変わった。
“しゅるんっ♡”
「あはぁっ♡♡♡」
完全に生えきった尻尾が、お姉ちゃんの意思を待たずに大きく跳ねる。それは豊かになったお尻の丸みをなぞるように腰の横へ回り込み、先端で太腿を撫で上げた。尻尾自体が意志を持って、快楽を求めているみたいだった。
「やぁんっ♡ 尻尾が、勝手にぃ……♡」
くすぐったさまで快感へ変わってしまうのか、お姉ちゃんは身をよじり、甘い声を漏らし続ける。尻尾もその感情を映すように、落ち着きなく左右へ揺れていた。
続いて顔立ちにも変化が及ぶ。
ぷっくりした唇には落ちることのない艶やかなルージュが乗り、まつ毛が伸びて、もともと綺麗だったお姉ちゃんの美しさをさらに際立たせる。
そして人ならざる者の証として、耳も細長く尖った形へ変わっていった。
「う、うぅん……♡♡」
お姉ちゃんは全身を駆け巡る感覚から逃れようとするように身体を丸め、肩を震わせる。
「あっ……背中、熱い……♡また、来るぅ……♡♡」
“にゅぶっ……♡”
「あひゃっ♡♡」
肩甲骨の辺りが内側から押し上げられるように盛り上がった。白い肌がぐに、と膨らんだかと思えば、その中心から黒紫色の何かが生々しく顔を出す。
“にゅるっ……ずるるっ……♡”
「あっ♡ ああっ♡♡ 出て、出てくるぅ……♡♡」
お姉ちゃんが快感に喘ぐ間にも、それは皮膚を突き破り、身体の中から押し出されるように伸びていった。
太い根元が形作られ、そこから骨組みのような部分が何本も枝分かれしていく。その間に薄い膜が張られ――やがて、大きな蝙蝠のような翼になった。
生まれたばかりの翼は粘液に濡れ、黒紫色の表面が妖しく光っている。
“バサァッ!”
「あああっ♡♡ キモチイイっ♡♡♡」
お姉ちゃんは新しい器官が身体へつながった瞬間の爽快感に翻弄され、思い切り背を反らした。
その動きに合わせて大きな翼が左右へ広がり、同時に尻尾もぴんっと伸びる。黒に近い濃紫色の翼膜が光を透かし、その表面を淡い魔力の輝きが走った。
“パサッ……パサッ……”
「はぁっ♡あぁっ♡くぅ……♡♡」
お姉ちゃんが肩を揺らすたび、生まれたばかりの翼もぎこちなく羽ばたく。そのたびに新しい感覚が身体へ流れ込み、お姉ちゃんの口から途切れることなく甘い声がこぼれた。
「まあ、とても立派な翼です♡これなら、ご主人様を抱いてお空を散歩することだってできますね♡」
アリシアが満足そうに微笑む。そして、最後の肉体変化が始まった。
“むにゅ……♡”
「んぅっ♡ 頭までぇ……♡♡」
お姉ちゃんの髪の間、左右のこめかみより少し上がぷくりと盛り上がる。そこから皮膚を突き破り、艶のある黒い角がゆっくりと押し出されてきた。
“ぶちゅん……♡”
「はああんっ♡♡♡」
傍から見れば痛そうなのに、お姉ちゃんはむしろ恍惚としていた。
“にゅぷぷ……♡♡”
最初は小さな突起だったものが、次第に長く、太くなっていく。後ろへ向かって緩やかに湾曲した一対の角。
それが完全に伸びきった時、お姉ちゃんの姿は、もう誰が見ても人間ではなくなっていた。
長く尖った耳。
大きな蝙蝠の翼。
豊かなお尻から伸びる、しなやかな黒紫色の尻尾。
艶やかな一対の角。
そして、へその下にだけ残った紫色の淫紋。
人間だったころの面影をしっかり残しながらも、そこには一人の美しい淫魔がいた。
“シュルルル……♡”
最後に、周囲を漂っていた紫色の魔力がお姉ちゃんの身体へまとわりつく。
「あっ……♡」
光が布へと変わっていく。
胸元から腰へ。腰から脚へ。黒と深い紫を基調としたドレスが、お姉ちゃんの新しい身体を包み込んでいった。
翼を自由に動かせるよう、背中は大きく開いている。腰の後ろも尻尾の付け根だけが綺麗に開き、そこから黒紫色の尻尾が自然に外へ伸びていた。
豊かになった胸や腰、お尻の輪郭に合わせて仕立てられたようなドレスで、それでいて腰回りには柔らかな布が幾重にも重なっている。しかし鼠径部や太ももは誇る様にさらされている。股間の部分は深い深い切れ込みのレオタードだった。
裾には薄いレース。肌を半分見せることで僕を誘惑しているみたいだ。所々には小さなハートを思わせる意匠。
淫魔らしい妖しさがありながらも、お姉ちゃん自身の優しい雰囲気は消えていない。そして、お腹は大きく開いていた。そこから覗くのは、転生の始まりからただ一つ消えることなく残っていた紫色の文様。
人間だったロザリーお姉ちゃんが、淫魔へ生まれ変わった証だった。
“フワァ……”
身体を包んでいた紫色の光が完全に消える。
「…………」
部屋が静かになった。
ベッドの上に降り立ったお姉ちゃんは荒い息を整えながら、まず自分の手を見る。
次に翼を見て、頭の角へ恐る恐る触れる。
最後に腰を動かしてみると、尻尾もそれに合わせてしゅるんっと大きく揺れた。
「私……本当に淫魔になったんだ……♡」
そう呟いてから、お姉ちゃんは少し恥ずかしそうに僕を見る。
翼を小さく畳み、尻尾を腰へ沿わせるようにくるりと巻くと、ドレスの裾を摘まんで一回転した。ふわりと広がるドレスの後ろから、長い尻尾も遅れて綺麗な円を描く。
まるで物語の中のお姫様を見ているみたいだった。
“もにゅもにゅ♡”
「おっぱいもお尻もすごく大きくなっちゃった♡これ、あなたの好みってこと?♡」
お姉ちゃんの問いかけに僕は照れながらうなずいた。
「そっか、それならよかった♡この私なら、もっと君に好きになってもらえるよね♡」
僕は何度も頷いて答える。
「ねえ、君♡ううん……私のご主人様♡……今、とても幸せなんです♡あなたと永遠に愛し合うことができるから♡人を超えて進化してあなたのために何でもできるってわかるから……♡」
瞳に怪しい光を宿したお姉ちゃんはこちらににじり寄ってくる。
お姉ちゃんは両手を胸の前でぎゅっと組み、そこに収まりきらないものを押さえ込むように指を食い込ませた。
「ねえ、ご主人様……私、どうしちゃったんだろう……胸がいっぱいなの♡あなたが好きって気持ちで、苦しいくらいいっぱいなのに……まだ増えてくる♡止まってくれないの♡好き♡大好き♡♡愛してる……♡♡♡何度言っても足りないくらい、あなたを愛してる……♡」
熱に浮かされたように囁きながら、お姉ちゃんは片手で胸元を押さえ、もう片方の手で僕の頬を包んだ。親指で確かめるように何度も肌を撫で、そのたびに琥珀色の瞳が甘く細められる。
「ずっとそばにいたい♡朝も昼も夜も、目を覚ました時も眠る時も、ずっと♡あなたの役に立ちたい♡あなたに尽くしたい♡何でもしてあげたい♡笑ってほしい♡安心してほしい♡別れた時の寂しい思いなんて二度としてほしくない♡私の手で、私の声で、私の全部で、あなたを幸せにしたい……♡」
お姉ちゃんは僕の手を取ると、両手で大切な宝物のように包み込み、頬へ押し当てた。目を閉じて何度も頬ずりをしてから、その手を唇へ、胸元へ、最後には激しく脈打つ心臓の上へ導いていく。
畳んでいた翼が我慢できないように開き、僕たち2人を外から隠すようにゆっくりと閉じてくる。黒紫色の尻尾は落ち着きなく揺れたあと、僕の手首へ巻きつき、離すまいとするようにきゅっと力を込めた。
「もっと愛したい♡もっと尽くしたい♡ご主人様が幸せなら、それだけで私も幸せなの♡だから、ずっと一番近くであなたを守らせて……♡」
その言葉は祈りのようでありながら、どこか切迫していた。お姉ちゃんは僕の肩へ額を押しつけ、すがりつくように腕を回す。翼まで僕の背中へ回り込み、腕と翼と尻尾のすべてで抱きしめようとしていた。
けれど、そこでお姉ちゃんの身体がびくりと震えた。甘く細められていた目が大きく開き、呼吸が一段深くなる。片腕は僕を抱いたまま、空いた手が自分の腹部へ下り、紫色の淫紋を押さえた。
「あ……なに、これ……?」
お姉ちゃんは喉を鳴らした。唇を湿らせても乾きが消えないらしく、何度も浅く息を吸う。僕へ絡みついた尻尾はさらに強く締まり、翼もそわそわと小刻みに震え始めた。
「身体の奥が、空っぽみたい。さっきまで幸せでいっぱいだったのに、同じくらい強く、欲しいって叫んでる……」
胸を押さえ、腹部を押さえ、それでも足りないとばかりに、お姉ちゃんは僕へ両手を伸ばした。指先は震え、触れた僕の服をきつく握りしめる。
「欲しい……あなたが、ご主人様が欲しい♡もっと愛してほしい♡もっと触れてほしい♡もっと近づいてほしい♡心の中も、身体の奥も、あなたでいっぱいにしてほしい……♡さっきの愛したいって気持ちに負けないくらい、欲しくて、欲しくて、どうしようもないの……♡私、飢えてるの、死にそうなくらい渇いてるの……」
お姉ちゃんは僕の胸へ頬を押し当て、鼓動を聞こうとするように耳を寄せた。それでも飢えは収まらないのか、今度は顔を上げ、僕の目を覗き込む。逃がさないように視線を絡めたまま、何度も、何度も僕を呼んだ。
「それは転生を終えた直後ならば、当然です」
熱に浮かされたお姉ちゃんとは対照的に、アリシアが静かな声で告げた。
「転生には膨大な魔力と生命のエネルギーが使われました。今のロザリー様の身体は、それを補えるものを本能で求めています♡そして、生まれたてで淫魔本来の欲望が際立ってしまっているのでしょう……」
ルミナはお姉ちゃんの淫紋へ目を向け、それから僕へ視線を移した。
「そして、新しく生まれた淫魔の身体が何によって最も深く満たされるのか……もう、お分かりでしょう?」
お姉ちゃんの瞳が熱を増した。僕の服を握っていた手を一度だけ離し、震える指で胸を押さえ、腹部の淫紋をなぞり、それから今度こそ迷わず僕の両手を取る。
「……私の身体の奥が求めてる♡ご主人様の命を、愛の証を、私の中へ迎えたいって……♡お願い、ご主人様♡私にください♡あなたの愛で、心も身体も満ちきって、もう何も考えられなくなるくらいに……そして、あなたの子種を♡私の飢えが全部、あなたで満たされるまで、たくさん……♡」
その言葉を浴びた瞬間、僕の胸の奥で何かが急速に膨らむのを感じる。
僕だけを映して潤む瞳。熱に濡れて艶めく唇。転生したばかりの身体から立ちのぼる、甘い香りと抗いがたい色香。息を呑むほど美しくなったお姉ちゃんが、翼も尻尾も腕も使って僕へ縋りつき、恥じらうどころか全身で僕の愛をねだっている。
「ねえ、ご主人様……私を見て♡」
お姉ちゃんは甘く媚びるように首を傾げ、僕の手のひらへ頬を擦り寄せた。上目遣いで反応を確かめながら指先へひとつずつ口づけ、最後には僕の腕を胸元へ抱き込む。翼は逃がすまいと背中まで包み、尻尾は親愛を隠す気もなく腰へ何度も絡みついてきた。
「私はご主人様だけを見てるから♡綺麗だって思ってほしいし、可愛いって言ってほしい。もっと近くで、もっとたくさん愛してほしいの……♡」
艶やかな唇が、『ご主人様』を繰り返す。そのたびに声は甘くなり、眼差しは熱を増し、身体は少しでも深く僕へ重なろうとする。僕の欲望が反映された大きなおっぱいが押し付けられて、僕の股間を刺激する。
「私の身体も、心も、これから先の時間も、ぜんぶご主人様にあげる♡だから、ご主人様もぜんぶ私にちょうだい♡私をご主人様だけの愛でいっぱいにして……ねえ、お願い……♡」
そこまで甘く、そこまで一途に求められて、理性など保てるはずがなかった。
「僕も……お姉ちゃんの全部が欲しい」
気づけば、僕はその細い腰を強く抱き寄せていた。お姉ちゃんの瞳が喜びに見開かれ、すぐに甘く細められる。
「うれしい……♡もっと言って、ご主人様♡私がご主人様のものだって、私が欲しいって、愛してるって何度も聞かせて……♡」
考えるより先に言葉が出た。
「愛してる。誰よりもお姉ちゃんを愛したい。お姉ちゃんの心も、身体も、未来も、僕の愛でいっぱいにしたい。僕以外の何も入らないくらい、僕自身で埋め尽くしたい」
「はい……♡私をぜんぶ、ご主人様の愛でいっぱいにして……♡」
お姉ちゃんは蕩けきった笑みを浮かべ、翼を震わせながら僕の首へ両腕を回した。僕はもう堪えきれず、その身体をさらに強く抱きしめ、求める唇へ自分の唇を重ねる。
この人の愛を僕ひとりで受け止めたい。僕の愛でこの人を幸せにし、心も身体も、尽きない飢えの奥まで僕自身で満たしたい。愛し、愛され、互いの境目さえ分からなくなるほどひとつになりたい……そんなどす黒い欲望が、胸の中で歓喜とともに爆発していた。
その様子を見つめていたアリシアが、祈るように両手を合わせ声をかけてくる。
「うふふ♡幸せな宴はここからです♡新しい淫魔の誕生を記念して、今夜は心も身体も溶け合ってしまうくらい、たっぷり愛し合いましょう♡」
ここからは人間の世界では味わえない地獄のような快楽の時間が始まる。