TS娘が支配欲の強い先輩に無理やり孕まされる話 作:世界一位
文化祭の熱気もすっかり冷め、冬の足音が近づいてきたある日の放課後。
僕は、担任の先生や軽音部のメンバー、クラスメイトたちに囲まれていた。
「雪兎……お前、本当に明日でいなくなっちゃうのかよ……っ。急すぎるだろ!」
「みんな、急にごめんね。……家庭の事情で、どうしても遠くに引っ越さなきゃいけなくなって」
泣きそうな顔で肩を落とす大樹たちに、僕は困ったように微笑み返した。
表向きは「親の都合による急な転校」ということになっているけれど、実際は違う。これから少しずつ大きくなっていくお腹と、絶対安静の出産に備えるための休学だ。
「でも、雪兎ちゃん……せっかく響也先輩と結ばれたのに、遠距離になっちゃうなんて可哀想……」
「うん……。先輩も卒業間近なのに、ここで離れ離れなんて辛いよね……」
麻衣や女子の先輩たちが、心底気の毒そうに同情の声を漏らす。
その優しさが嬉しくて、僕はふわりと首を横に振った。
「ありがとう。でも、大丈夫だよ。引っ越しても、響也さんとはずっとお付き合いを続けるって約束してるし……もう二度と会えないわけじゃないから」
「そっか……! よかったぁ、別れちゃうのかと勝手に心配しちゃった!」
「遠距離恋愛、絶対乗り越えてね!」
ホッと胸をなでおろして応援してくれる彼女たちに、僕は「うん」と頷いて微笑んだ。
本当は、遠距離恋愛なんかじゃない。僕たちは離れ離れになるどころか、すでに誰よりも深く、もう一生切れない絆で結ばれている。彼の子を身ごもって、これから彼と一つ屋根の下で愛を育むことなど知る由もない彼女たちの前で、僕はただ、恋人との秘密を隠すように曖昧に笑って誤魔化すしかなかった。
「それにしても雪兎ちゃん……なんだか最近、すごく綺麗になったよね」
「えっ?」
「うん。なんというか……前よりもずっと、女の子らしくなったっていうか。すっごく幸せそうな顔してる。寂しいけど……向こうに行っても元気でね」
その言葉に、僕は思わず頬を赤くして、そっと自分の両頬に手を当てた。
あの日、完全に彼と結ばれてから、僕の中で燻っていた男としての意地は跡形もなく消え去ってしまった。自分が響也さんの女の子であることを心から認め、彼の子を宿した歓びを知ってしまったことで、無意識の仕草や表情までもが、すっかり柔らかく変わってしまっていたのかもしれない。
しんみりとしたお別れの空気が流れる中、ふと、少し離れたところで見守っていた軽音部の女性顧問の先生と目が合った。
あのキャンプファイヤーでの一件以来、僕と響也さんが恋人同士であることは学校中の誰もが知っている。けれど、僕が以前からずっと彼との関係に思い悩んでいた過去を知っている先生だけは、周囲のように悲観する様子はなく、ふっと柔らかく微笑んでくれた。大好きな彼に選ばれ、女の子として隣を歩く覚悟を決めた今の僕の満ち足りた姿を見て、心底安心したように小さく頷いてくれたのだ。
「……ありがとう。僕、今……すごく幸せだから、心配しないで」
先生の優しい眼差しにも応えるように、心からの本音を伝えると。みんなは少し寂しそうに、でも温かい笑顔で僕を送り出してくれた。
――それから、数ヶ月後。
季節は巡り、桜の蕾がほころび始める春。
僕は、都内の閑静な住宅街にある、セキュリティの厳重な高級マンションの一室にいた。
響也さんが僕たちのために用意してくれた、広くて暖かい『愛の巣』だ。
妊娠がわかったあの日。響也さんは、僕を一切の不安から守り抜くために、信じられないほどの行動力を発揮した。
僕の両親への説得と謝罪、学校側の休学手続き。そして何より、厳格な彼の実家との壮絶な交渉。僕なら泣きそうになるほどの重圧や障害を、響也さんは僕を一切矢面に立たせることなく、すべて一人で完璧にねじ伏せ、解決してしまったのだ。
『俺のすべてを懸けて、ゆきとお腹の子供を守り抜く。だから、ゆきはただ……安心して、俺たちの愛の結晶を育んでくれればいい』
その言葉通り、今の僕に与えられている使命はただ一つ。心穏やかに、響也さんの元気な赤ちゃんを産むことだけだった。
ガチャ、と玄関の扉が開く音がした。
「ゆき、ただいま」
「あっ、響也さん……! おかえりなさいっ」
エプロン姿のまま小走りで玄関へ向かうと、そこには、胸に卒業式のコサージュを付けたままの響也さんが立っていた。
今日で、彼は高校を卒業した。明日からは本格的に実家の後継ぎとしての厳しい生活が始まるけれど、それでも、この家に帰ってくれば僕がいる。
「卒業、おめでとうございます……っ」
「ありがとう。……ああ、やっぱりゆきの顔を見ると安心するよ」
響也さんは優しく僕を受け止めると、ふっくらと丸みを帯びてきた僕の下腹部に、宝物のようにそっと大きな手を添えた。
「……また少し、大きくなったね。俺たちの子供が、順調に育ってくれている」
「はい……。大きくなったお腹の中で、赤ちゃんも、パパが帰ってきてすごく喜んでるのがわかります」
響也さんの大きな手が、服越しに僕のふくらみを撫で回す。
それは、ただの父親としての優しい手つきじゃない。もっとねっとりとした、自分のメスを孕ませた雄としての所有欲と、情欲に満ちた撫で方だった。
彼にいやらしく撫でられ、手のひらの熱を感じるだけで、僕の奥底は条件反射のようにきゅぅっと甘く疼いてしまう。
――ぽこっ。
その時。響也さんの手のひらを押し返すように、お腹のなかで小さな命が元気よく動いた。
「あっ……!」
「ふふ、元気だな。俺の手がわかるのか? ……早く俺たちに顔を見せておいで」
「んっ♡ ……ふふっ……♡」
愛する人の子種を受け入れ、自分の身体のなかで大切に命を育んでいる。響也さんに撫でられ、胎動を感じたその圧倒的な事実に、僕の胸の奥からとめどない母性が込み上げてきた。
(早く、元気に産まれてきてね……僕と響也さんの、かわいいあかちゃん……♡)
もう、僕の中に男だった頃の欠片なんて微塵も残っていない。ただ、彼の子供を産むためだけのメスになれたことが、誇らしくて、嬉しくてたまらなかった。
「……俺がいない間、何か問題は起きなかったかい? 気分が悪くなったりしなかった?」
愛おしそうにお腹を撫でながらも、ふと過保護なほど心配そうな顔をして、響也さんが僕の顔を覗き込む。
「はいっ、大丈夫ですよ。響也さんが手配してくれたお手伝いさんもずっと側にいてくれましたし、不便なことなんて何もありませんでしたから」
「そうか。ならいいんだが……ゆきに何かあったらと思うと、気が気じゃなくてね」
「毎日そんなに心配しなくても、僕はもう大丈夫ですよ。……ちゃんと、強いお母さんになりますから、安心してください」
そう言って、僕は彼を宥めるようにふわりと微笑んだ。
――でも、最初からこんな風に笑えていたわけじゃない。
思えば、妊娠がわかったばかりの頃や、この部屋での生活が始まった当初は、まだ高校生という若さで母親になることへの重圧や、どんどん丸みを帯びて変わっていく自分の身体への戸惑いで、頭がいっぱいだった。
なにより、元が男の僕が、大好きな響也さんの赤ちゃんをちゃんと無事に産んであげられるんだろうかという不安で、何度も押しつぶされそうになって泣いてしまった。
けれど、不安に押しつぶされ、パニックになりそうになる僕を、響也さんはいつだって途方もない優しさで受け止めてくれた。
僕が
不安な言葉を口走ってしまう僕の唇を、息もできないほど深いキスで塞いで、頭の中が空っぽになるまで甘く蕩けさせてくれた。
「怖い」と泣き叫ぶ僕の身体に、理性が完全に溶けてなくなるような強烈な絶頂を何度も何度も与えて……僕が辛いことを全部忘れるまで、一番奥深くに熱い愛情を注ぎ込み続けてくれたのだ。
『大丈夫だよ、ゆき。大好きな人の赤ちゃんを産むのは、当たり前でごく自然なことだ』
『俺に愛されて、俺の子供を産む。……それが、ゆきにとっての「しあわせ」なんだ。そうだろ?』
まるで、甘い魔法をかけるように。何度も、何度も。
僕が泣き疲れて、すべての思考を手放して「はい」と頷くまで。響也さんは決して僕を見捨てず、朝までずっと、そうやって丁寧に『僕にとってのしあわせ』を教え込み続けてくれた。
目の前が真っ白になるほどの絶頂の波の中で、耳元でねっとりと囁かれる優しい言葉。
響也さんの、息が詰まるほど深くて、重たい愛情。
そんな彼の情念と、抗えないほどの快感に心地よく絡め取られ、身体の芯から愛される歓びを知っていくうちに……僕の心からはすべての不安が消え去り、彼なしでは息もできないほど、すっかり安心しきってしまったのだ。
ここに、僕と響也さんの命が宿っている。
好きな人の赤ちゃんを身ごもり、学校を辞めて、彼と夫婦のように寄り添って生きている。以前の僕なら想像もつかなかった未来だけれど、今はこれが、僕のたったひとつの尊い真実だった。
「愛してるよ、ゆき。俺の人生には、もうお前たち以外いらない」
「はい……僕も、愛してます。……あなただけの女の子として、ずっと一緒に生きていきます」
響也さんの大きな手が僕の顎を掬い上げ、甘く、ねっとりとした唇が重なった。
「んっ……ちゅ、じゅぷっ……♡ んあぁっ……♡」
優しく、けれど逃げ場のない深い口づけ。侵入してきた熱い舌に自分の舌をすり寄せ、濃厚な唾液を飲み込み合う。口内を隅々まで蹂躙され、響也さんの匂いと味が口いっぱいに広がっていく。
息もつかせぬほど執拗に舌を絡められ、徐々に頭が酸欠でぼうっと霞んでいく。思考が甘くドロドロに溶けきった状態のまま、塞がれた唇から無意識に嬌声がこぼれ落ちた。
「ひゅ……き……ゅ、ちゅ……好きぃ……っ♡」
何度も角度を変えて貪られる中、彼に完全に征服され、隅々まで支配されているという絶対的な安心感が、背髄をぞくぞくと甘く痺れさせる。
「んちゅ……れろっ……ぁ、んんっ……♡」
彼に身も心も作り変えられ、身籠り、すべてを捧げ尽くす。その事実がたまらなく愛おしくて、僕は圧倒的な気持ちよさに、ただひたすらに溺れきっていた。
果てしなく長い口づけの後、名残惜しそうに唇がゆっくりと離れる。
すると、熱く濡れた僕の唇と響也さんの唇の間に、きらきらと光る細い唾液の糸が架かった。それはまるで、僕たちを永遠に繋ぎ止める逃げ場のない鎖のように、ぷつりと切れることなく妖しく光っている。
熱く痺れたままの頭で、その銀糸をうっとりと見つめていると。
響也さんが愛おしそうに目を細め、僕の耳元で低く、甘く囁いた。
「……俺も、ゆきが好きだよ」
「あっ……♡」
ついさっき、これ以上ないほどの愛を囁かれたばかりなのに。
その甘い一言だけで、僕の中で決定的な『スイッチ』が入る。途端に熱を持った身体を彼にすり寄せ、無意識に自ら脚を擦り合わせていた。
「……響也さん……あの、僕……」
潤んだ上目遣いで彼を見上げ、甘く強請るように服の胸元をぎゅっと握りしめる。
出会ったばかりの頃の、性に対して無知で無垢だった純粋な瞳はもうない。今の僕の目には、彼に与えられる強烈な快楽への期待と欲情が入り混じった、ひどく不純で淫らな色が浮かんでいた。
「えっち……いっぱい、えっちしたいです……っ♡」
響也さんは、僕が自分から恥ずかしい欲求を口にできた時に、思いきり甘やかして褒めてくれる。
そのご褒美を何度も与えられるうちに、僕の頭はすっかり心地よく溶かされてしまった。『自分からえっちなおねだりをするのは、恥ずかしいことじゃない。大好きな響也さんを喜ばせて、うんと気持ちよくしてもらうための、当たり前なことなんだ』って。
自分から交尾をせがんですり寄る僕の頭を、響也さんは愛犬を褒めるように優しく撫でた。
「よしよし、本当にいい子だね、ゆき。……お腹も無事に安定期に入ったことだし、今日はご褒美に、朝までたっぷりと愛してあげるよ」
「あっ……やたっ♡ えへへ……響也さん、いっぱい、愛してください……っ♡」
『ご褒美』という言葉を聞いた途端、頭の芯がドロドロに溶けて、だらしなく顔が綻んでしまう。
男だった頃の理性や尊厳なんて、もう完全に抜け落ちていた。難しいことは何も考えられない。ただ大好きな彼にめちゃくちゃに抱き潰されることだけを無邪気に喜ぶ、頭がとろとろの甘えたメスになっている今の自分が、たまらなく心地よかった。
満足そうに、ひどく甘く、暗い情念を滲ませて微笑んだ響也さんに抱き上げられ、僕たちは甘い吐息を交わしながら、二人だけの仄暗い寝室へと向かっていく。
深く、どこまでも官能的な快楽に全身の力を抜き、彼の腕の中で完全に蕩けきりながら。
僕は彼に与えられたこの甘い世界の中で、自分が『世界で一番幸福なお嫁さん』なのだと、ただ幸せに微笑んでいた。
一旦、これにて本作は完結となります(・ω・)ノ
雪兎たちの後日談については、もし需要がありましたら、いつか描いてみたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。