【完結】Angel-04 この世界の女には人権がない 作:コベヤ
窓の外から、大人や子どもたちの声が聞こえてくることがあった。
でも、そんなのはどうでもいいことだった。
シアーカーテンを閉めきった部屋には、ぼんやりとした淡い光が、薄い膜のように漂っている。
外の陽射しが白い布地に遮られ、柔らかく拡散したその光が、部屋全体を淡い灰白色に染め上げていた。
あれから何年か経って、Angel-04は美しく成長した。
すらりと背が高くなって、手足は細くしなやかに伸びたが、腰のラインは女らしい丸みを帯びた。
艶やかな黒髪は腰よりも長く、彼女の白い背中を覆うように伸びている。
今日は、クローゼットの中から薄いレースのワンピースを選び、彼女に着せることにした。
動きの不自由な左手で肩紐を整え、指の欠けた右手でファスナーをゆっくりと引き上げる。
白く透けるような布地が彼女の滑らかな肌にそっと触れる様子を、俺は残された左目で静かに眺めていた。
少女を鏡の前に座らせると、俺は長い時間をかけて彼女の黒髪をブラシで梳いた。
欠けた指の代わりに、手のひらの付け根を添えながら、丁寧に、ゆっくりと。
彼女は黙って、俺のぎこちない動作をすべて受け入れていた。
鏡越しに少女をそっと眺める。
鏡に映る彼女の瞳は穏やかで、それでいてどこか遠くを見ているようだった。
するべきことの全てが終わると、俺は少女の隣に座り込んだ。
そのまま、何もせずに、ただぼんやりとしている。
言葉もなく、動きもなく、ただ彼女の体温だけを感じながら。
時折、夜の最も深くなる時間に、考えることをやめられなくなる。
傷つけ合うことでしか相手を想うことのできない人間の行き着く先は、一体どこなのだろう。
互いの肉を噛み、骨を削り、血を啜り、最後には相手の──
その思考は突然の激痛によって断ち切られた。
いつものように、少女が俺に覆いかぶさり、歯が首の皮膚を深く破っていた。
鋭い痛みが全身を貫き、血がゆっくりと溢れ出す。
痛みとともに、彼女の生々しく濃密な感情が、俺の身体の奥深くまで流れ込んできた。
好意でも嫌悪でもなく、恐怖でも愛情でもない。
そのすべてから外れた本能的なつながりそのもの。
その瞬間だけ、俺は確かに「生きている」と感じられる。
少女は俺の傷口から流れ出る血を、ただ丁寧に舌で舐め取った。
俺は彼女の長い髪に顔を埋め、その甘い匂いと温もりに包まれる。
やがて、俺は考えるのをやめる。
考えることなど、とうに意味がない。
なぜなら俺は、天使に出会えたのだから。