クール無表情ジト目甘ロリゴシック美少女リーニエがシュタルクを監禁してフェルンから逆寝取り重たく依存してしつこくドロドロ仄暗い執着共依存慰め合い黒い愛情バッドエンド不幸な鬱えっち。 作:ユキリス
原作:葬送のフリーレン
タグ:R-18 葬送のフリーレン リーニエ シュタルク フェルン 逆NTR NTR リーシュタ ヤンデレ メンヘラ 鬱 依存 共依存 バッドエンド 寝取られ シリアス ダーク
────愛を知らない少女はすきが欲しかった
「その斧捌き‥どういう事だ。そいつは師匠の技だ」
「わたしは魔力を読み取るのが得意でさ。人が動いている時の体内の魔力の動きを記憶して、動きを模倣出来るんだよね。こんなふうにっ」
まるで暴れゴマの様な、しかし極めて洗練された動きで少女は戦斧を繰り出してくる。
「くッ」
「屋敷で初めてあなたの動きを一目見た時確信した。わたしが昔記憶した最強の戦士と同じ動きをしているって。こんな偶然あるんだね。運命は面白いっ」
─わたしは戦士アイゼンの動きを模倣している
そう言う少女から振るわれる斧や剣、槍の腕は全て一流であり隙がない。
否応にも防戦一方になり相手の手数に対して防ぐので精一杯だった。
だがここで遠くから少女を呼ぶ声が響いては聞こえた。
どうやら仲間の魔族が助力を求めているらしい。
「なんだよわがままだなぁ。こいつ防戦一方でしつこいんだよ‥少しは出来るみたいだけど、でもそれだけ。実力もぜんぜん大したことないかな‥」
「はぁッ‥くっ‥そ‥」
少女の一方的な猛攻を受けてシュタルクは疲弊していた。
このままでは削り殺されてしまう。
そう考える間もなくリーニエという少女の投擲が飛んできて、致命傷は避けられているが体力の限界も近かった。
既にシュタルクは満身創痍。
もはや防戦一方で戦況は手も足も出ないといったところ。
この話し方が幼いところがありながらも冷たい表情を覗かせる少女は魔族。
そう、リーニエと名乗る美しい薄桃色の髪の少女は外見を保護欲を誘うものに擬態している。
魔族とは往々にして人間に油断をさせるため、美しい見目をしている者が多い。
サラリとした艶やかな少女趣味の二つ結びの髪型に、可愛らしい落ち着いた色のツインテールの結び目にはリボン。
これに加えて戦闘には不向きなはずのゴシック衣装を身に纏う。
首元にも結ばれたリボンがあり、傍目にはお洒落なただの美貌の少女といった具合だが、その紫紺の宝石の様な瞳には酷薄な色が宿る。
ぱっちりとした二重で童顔な顔立ちは整っていても未だ年幼い印象を見る者に抱かせる。
しかしそれが魔族の少女の思う壺で、その美少女然とした容姿は人間の反撃の手を自ずと緩ませる。
「お前、躊躇したな?わたしが可愛いから。見た目が人間の女だから」
「くそッ‥立てねぇ‥こんなっ‥」
「まだ動けるんだ。頑丈だね。でも、もう終わりにしようか。あ、けど少しもったいないかな‥。どうしよう‥。リュグナー様には内緒にしておこうかな」
「なに‥を、言って‥」
「わたしは人間に興味があるんだよね。だから、お前を飼ってあげようかなって」
「俺はっ、負けてねぇ」
少年は強大な魔族を前にして尚立ち上がる。
その学びは師から教えられた事。
倒れても立ち上がりさえすれば負けじゃない。
それはこの傷だらけの彼に唯一残された支え。
例え勝てないと分かっていても立ち上がる。
最後まで立っていた者が戦いの勝者。
それが彼に出来る唯一の事だった。
「やれる。まだ終わってねーぜッ」
「しぶといね。戦士アイゼンの技を受けて立っていられるなんて。けどそろそろおしまいにするか」
「言ってろよ。お前の技は師匠に比べたらやっぱり軽すぎる」
「ふーん。じゃあその戦士アイゼンの技で下してあげる」
少女の暖かみを欠いた酷薄な瞳がシュタルクを射抜く。
冷徹な紫紺の残酷な輝きに捉えられた。
「かはッ‥」
「大振り、血迷ったか」
一流の戦士の勝負とは文字通り一瞬で片がつく。
戦斧が脇腹を抉り込み、シュタルクの優しさが躊躇いを生んだ。
─そう、シュタルクは相手が魔族でありながら人の形をしているリーニエという名の少女を傷つけられなかった。
その善性さえなければ勝てた筈の一瞬の隙を見逃した。
或いはフリーレンであればなんの躊躇いもなくその魔法の元に殺していただろう。
これがフェルンであれば魔族などゾルトラークで貫いていた筈だ。
しかしシュタルクは二人よりも魔族の本質に気付けていなかった。
少しの油断が敗北を招いた。
相手が人間の可憐な少女の装いをしているのは油断を誘うためで、そんな狡猾な個体に当たったばかりに。
シュタルクは一流の戦士であるのに違いはない。
にも関わらず彼がリーニエを下すのに躊躇いを覚えてしまったのは偏に幼い少女を殺すのに良心を痛めたからだ。
「ちがう。まさかここまできて躊躇するなんて馬鹿だね。本当ならわたしに一撃入れられたのにそれすら躊躇うなんて」
「はぁっ‥まだっ‥」
「ふーん。まだやるんだ‥良い加減諦めなよ」
ただシュタルクも既に満身創痍ながらもここで完全に倒れるわけにはいかなかった。
脇に受けた傷は深くはありながらも出血はそれほどではない。
彼の師匠たる戦士アイゼンの一振りに比べればリーニエという少女、否魔族が繰り出す一撃など軽すぎる。
立ち上がると同時にシュタルクの戦斧が振るわれた。
「シッ」
「結構早くなったけどわたしの方が戦士アイゼンの技を使えてるかな。それじゃあ終わらせようか」
「師匠の技はもっと重かったッ。お前のは所詮、ただの真似事だ」
「確かにわたしの技は模倣。ならその真似事で引導を渡してあげよう」
「エアファーゼン」
リーニエは言い放つと同時に腰を深く落とす。
それは確かに最強の戦士アイゼンの技でありシュタルクも見た事がある。
とはいえこれにされるがままになる彼ではない。
シュタルクもまた戦斧を振り上げている。
「閃天撃ッ」
動いたのはほぼ同時。
互いに視線が交錯し、接敵した戦斧同士が迫る。
ここが勝敗を分けた。
シュタルクの技は大振り。
リーニエの素早い身のこなしに対しては悪手である。
だがそれはあくまでもブラフ。
あえて相手の斧をその身に受けることによって油断を誘うためのもの。
本命の重たい戦斧が真正面から少女に対して迫り来る。
つまり技の身のこなしではリーニエの方が優れていても、戦いにおいてはシュタルクの方が一枚上手だったのだ。
既に彼の斧は振り下ろされている。
避ける暇もなくまるで吸い込まれるかの様にして少女へと。
だがそこで少女はその冷酷な表情を崩し、そして言い放つ。
「たすけて、おとうさん。おねがい‥ころさないで」
と、彼女は哀れみを誘い、慈悲を請うかのようにそう言った。
これに対して─
「ッ」
シュタルクはそのまま斧を振り下ろそうとしたが出来なかった。
彼はこれまで家族を愛していたが家族には愛されていなかったとそう思っていた。
それだけ彼には家族というものが大切な事柄だった。
だから躊躇した。
相手が魔族であるにも関わらず、その戦斧を振り下ろすのをためらった。
ここで彼に殺意を失わせたのはリーニエの言葉。
彼女の言葉は確かにシュタルクの心に届いてしまった。
魔族の使う言葉などそれは欺瞞に過ぎず、それはあくまで表面をなぞっているだけだ。そこに真実はない。
にも関わらずその魔法の様な言葉は魔族が言ったという前提を覆す程に重い。
─お父さん
リーニエの発したその家族に対する言葉はシュタルクの動きを鈍らせるには充分事足りたのだ。
彼の狙いを破綻させるための唯一にして無二のその家族への想いを利用して少女の狡猾な思惑は見事ここに相なった。
それが例え、人間と対した時にただ生き残るためだけの魔族の習性から出た言葉であってもシュタルクには斧を振り下ろせない理由になってしまった。
「お前今っ‥」
すると斧を震わせながら問い掛けようとした彼に対して少女の表情は先ほどの冷たい色はなりをひそめて年相応の庇護欲を誘うもの。
これは所詮演技でしかない。
それを理解しているにも関わらず、頭では確かに分かっているのに身体が最後まで動かなかった。
少女を殺せなかった。
「やっぱり」
一拍置いて途端に哀れみを誘うための少女の表情に冷徹な色が戻る。
今し方まで浮かべていた庇護欲を誘うものから一転し、それは酷薄な魔族のものへと。
「この言葉を使うと殺せないんだね。人間は」
その言葉と同時、少女の手には魔法で生み出された剣が握られていた。
そして抵抗する間もなくシュタルクの身体に激痛が走ると共に視界が暗転し、そこで彼の意識は途切れ闇に飲まれていった。
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目が覚めて最初に感じたのは匂いだった。
林檎の甘い香りが鼻につきシュタルクは暗闇から意識を浮上させた。
「ここは‥」
見渡せば薄暗い部屋の中に一人。
手足には鎖の付いた枷が嵌められており、容易には抜け出せない様になっている。
辺りを見渡してみると壁には装飾が施されていてここがグラナト伯爵の屋敷の一室であるとシュタルクはその調度品から当たりをつけた。
状況を確認して彼は考える。
─フェルンは?
それにあの手練れの二人の魔族は今何処にいるのか。
そして戦いはどうなったのか。
するとそんな考え込んでいたシュタルクに、与えられる言葉がある。
「おはよう。目が覚めたんだ。意外と早かったね」
そう言って座っていた椅子から降りてシュタルクに歩み寄る影が一つ。
暖炉の光に照らされてその人物の身体を次第に照らしていく。
そして露わとなったのは少女の姿。
可憐にもその装いは少女趣味でフリフリとした柔らかな布地の装飾で飾られたゴシック調ドレス。
上から落ち着いた可愛らしい色の結ばれた襟元のフリルと、格式高いアンダーバストコルセット。
その下には見た目年相応の少女らしいパニエを身に付けている。
細くスラリとした脚には魔族らしくないオーバーニーソックスなどを履いているらしい。
─そうか俺はこの魔族に
負けたのだと、そうシュタルクは傷一つないリーニエを前にして漸く自らの敗北を理解したのだった。
「それでどう?あなたが言う真似事の技に負けた気分は?」
「俺は‥負けたのか‥」
「そうだよ。あなたはわたしに負けた。最強の戦士アイゼンの技で」
「そうか‥」
そう返されて現状を悟ったシュタルクが押し黙り、途端に重苦しい沈黙がこの場を支配する。
しばらくの時を経ても二人の間に会話はなかった。
少女はシュタルクを無言で見下ろしてその冷たい紫紺の瞳からはなんの感情も見出せない。
宝石の様な大きく可愛らしい双眸をしているにも関わらず、冷徹に項垂れたシュタルクを見つめている。
「フェルンはどうした?」
不意に沈黙に耐えかねたのかそうシュタルクは問いかけた。
けれどこれに応じる言葉はない。
無言でリーニエはシュタルクの前に佇んだまま無表情でシュタルクを依然として見据えている。
「おいっ‥」
「ああ、あの魔法使いの女か。アイツはフリーレンと一緒に逃げた。アウラ様も駒が減ったって言ってたから暫く籠城かな」
暖かな光が二人の横顔を照らし、暖炉の薪がパチパチと音を立てて火花を散らした。
「無事‥なのか?」
「どうだろうね。リュグナー様があなたを人質にして交渉してるから」
無論フリーレンが素直に応じるはずもなかった。
例えシュタルクを盾にされたとてそれは変わらないだろう。
何故なら彼女はそれほどまでに魔族の残酷さを理解しているから。
だからリュグナー相手にフリーレンとフェルンが一方的に敗北を期する事はない。
自らの様にリーニエの欺瞞に油断して嘘にまんまと騙される様な、そんな悪手は打たない。
その確信がシュタルクにはあったし、だからこそある程度は平静でいられた。
「俺を生かしておいて何がしたいんだ?」
「‥言ったでしょ。わたしはあなたに興味がある。だから殺さなかった」
「興味?」
「そう。同じ戦士アイゼンの技を使う人間。それなのにわたしより強い。でも負けた」
「‥‥‥」
「どうして?なぜわたしに勝てたのにあの時躊躇したの?やっぱり人間の男はわたしみたいな女の子を殺せないのかな。リュグナー様もそう言ってたし‥」
「‥‥‥」
「黙るんだ‥。それは別に良いけど。なら少し試してみるか‥」
すると沈黙を貫くシュタルクの前まで漆黒の靴のつま先がコツコツと子気味いい音を立てて薄暗い部屋の中で歩いてきた。
本来であればこの場を包む優しい色をした赤みがかったオレンジ色の暖炉の光は落ち着ける筈が、けれど目の前の少女に対してはそれは妖しく照らしている。
「ッ‥何をっ」
「どう?触れられると好きになる?まあでも話してるし一応は成功かな」
少女の言葉に無視を決め込んでいたシュタルクだったが、けれど唐突にしゃがみ込んだリーニエが頬を触れさせてきたのだった。
すりすりとシュタルクを抱きしめると頬を合わせて肌を触れさせている。
「こうすると人間って弱くなるんだよね。わたしは何度も見てきたし知ってるから」
「こんなことして一体何が目的なんだよ‥」
この様に身体を密着させていてもリーニエの透き通る様な可愛らしい声色には一切の淀みもなく色がない。
相変わらず冷たいままだった。
そして平坦な物言いで彼女は少女としての武器を人間であるシュタルクに試していた。
「あなたみたいに頑なに口を割らない意思が強い人間でもこういう幼い女の子相手だとすぐにみんな油断してくれる」
「‥フリーレンが本当に交渉に応じると思ってるのか?」
「さあね。でもそれはあなた次第だってリュグナー様は言ってたかな」
「無理だ。俺が何を言ってもフリーレンは魔族を殺すし容赦はしない。無駄足だったな」
「‥そうかもね。でも今の時点でわたし達が死んでいないのはなぜ?」
「‥‥‥」
スリスリと頬同士を触れ合わせる音とリーニエの性格に反した暖かな人肌がシュタルクへと伝えられる。
抱きしめられているからかフワフワとした少女の柔らかな衣装が押し付けられて自ずと緊張が解けてしまう。
相手が魔族であるにも関わらずやはりその外見が年幼い少女であるからか否応にも心理的な油断に囚われてしまう。
「‥けど、こんなこと何の意味もないぜ?」
「話さないんじゃなかったの?さっきまで無視してたのに」
「でも‥こういうのは違うだろ。お前にだって愛してくれる家族が居るんだ。自分を大切にした方がいい」
「なんだよわがままだなぁ‥。わたしの話を聞かないならあなたの要求も受け入れない」
「うっ‥」
妙に甘ったるい少女の体臭が鼻につくかと思えばそれはリンゴの香り。
それに混じって僅(わず)かながらに年頃の少女の汗の甘酸っぱい匂いがするが先ほどまであれだけ激しい戦いを繰り広げていたのだからそれも無理はない話だった。
ただし魔族である少女からその様な人間らしい所を見せ付けられたシュタルクは途端に警戒が解けてしまうのだ。
無論家族などリーニエに居るわけもないがそれはシュタルクが知る由もない話であり、彼女が語るそのお父さんとやらが本当に実在していてそれが真実だと思い込んでいる。
まさか曲がりなりにも命の危険に晒された少女が咄嗟に嘘を吐ける筈がないとそうシュタルクは依然としてリーニエを侮っていたのだった。
その間にもほっぺたをくっつけられて肌同士を擦り合わせたり、真正面から身体を密着させられてリーニエの両腕がシュタルクの背中に回される。
そして細い指先の五指でその背中の表面を撫でられたりなど、どうやら人間が親密な相手にする行為を模倣している様だ。
─エアファーゼン
確かに模倣する魔法というのがリーニエの力であり、彼女がその行為の意味する所の本質を理解しているかは定かではないがけれど好意の示した方だけは迫るものがあった。
なぜ人間に対しその親密な触れ合いが油断を誘うことに繋がるのか分かっていないのだろう。
もちろんそういうものだと理解はしているのだろうがそこに共感はない。
否、それは或いはまだ経験がない幼い魔族であるのも影響してのことか、リーニエという魔族の少女は未だ身体同士の接触から得る本当の心理的な油断を知らなかった。
「それでいつまでこんなこと続けるんだよ。もう充分だろ」
「ふーん。でも動揺はしてるんだ。少しだけ呼吸が乱れているし人間の男って動揺するとここが固くなるんだよね。やっぱりリュグナー様の言った通りだね。人間って面白い」
そう言いながらもシュタルクの取り乱した様子とは対称的にリーニエにはなんら感情の吐露がない。
今も尚、男に自ら身体を密着させているにも関わらず、それに加えて今し方、面白いなどと凡そ魔族の言いそうにないそんな言葉を吐いたのに毛程も声に揺らぎがない。
透き通った綺麗な鈴の音の様な声だが冷たいままだった。
この酷く冷徹な印象を受けるその声はシュタルクの耳元で囁かれた。
「人間の男は本当に幼い女に弱いよね。どうしてか分からないけどそれならわたしはどう?」
「それを俺に言って素直に答えるとでも思ってるのかよ‥。魔族はそんなことも分からないのか‥」
─分かり合えない
そうシュタルクが思うのも無理は無い話で、リーニエの一連の振る舞いを見ていれば共存など土台無理な事だと否応にも彼は理解させられた。
現在もこうしてリーニエからは確かに人と同様の暖かみが感じられるが、けれどその肌に伝わる温もりとは裏腹に彼女の言葉は酷く冷たい。
故に、身に染みてシュタルクは目の前の少女のそんな異常性が分かってしまった。
「別に答えなくてもいいや。面倒だけど仕方ないかな。リュグナー様の言った事が本当に正しいのか試してあげよう」
「待てっ‥」
言葉と同時にリーニエは自分の衣服に手をかける。
すると次の瞬間には襟元の可愛らしいフリルをシュルシュルと解いていた。
「どうしたの。ちゃんと話す気になった?」
「分かった。けどそういう関係にはなれない。だってお前は家族から愛されてるんだろ。ならやめようぜこういうのは」
「ふーん‥。またそれか。ならもう良いかな‥。そういう人間のルールなんてめんどうだし」
少女に躊躇う様子はない。
自らの胸元を露わとするにも関わらず無防備にも下着を露出した。
ふわふわとしたその生地はいかにも少女趣味であり凡そ魔族らしくない。
「あ‥そうだ。人間の男はこっちの方が好きなんだっけ‥」
「おいっ‥やめろって」
「そんなこと言って、動揺してるのバレバレだよ。大きくなってるし」
「そんなわけっ‥」
「なってるでしょ。わたしのここが気になるんだよね」
抱きついていた姿勢から途端に立ち上がるとリーニエはスカートのパニエの中を見せてきた。
スラリとして華奢なオーバーニーを履いた脚がシュタルクの眼前へと晒される。
フワフワとした真っ白なその布地の奥から年頃の少女特有の甘酸っぱい匂いがしてその魔族であるにも関わらず、少女らしい汗の匂いのする甘い香りが鼻につく。
むわぁ‥とした戦闘で身体を動かしたからか、生の年頃の少女から発せられる生々しい肉の匂い。
その香りは林檎の香水と入り混じり、格調高い少女趣味な衣装とのギャップから、魔族でありながらも生きてる生の少女の汗の鼻につく女のメスの匂いがオスの本能に訴える。
これもまた少女であるにも関わらず魔族ゆえの性質か、自身の少女の体臭であるところの汗臭さといったまるでそれこそ人間の少女の思春期のような本来であれば年頃の女こそ気にしそうな匂いに関して、リーニエ自身が無頓着であるのは、それはひとえにやはり人外が所以か。
シュタルクという人とはいえ曲がりなりにもオスであり異性の男の前で自分の少女らしくも恥ずかしいツンとした汗の匂いを晒すというのは、たとえリーニエが魔族であっても不本意であるとこれまでのプライドが高い言動から鑑みれば改めて言及するまでもなく明確だが果たして。
そして、その汗に混じった男を誘惑する媚びた少女の色香はシュタルクの理性を揺らがせるには充分だった。
それもそのはずリーニエという魔族は特段可愛らしい美貌の少女の容姿をしている。
とりわけサラサラとして枝毛一つない艶やかな、これまた可憐で少女趣味な薄桃色の髪を側頭部の両方に結いその気品もある様(さま)は、可愛らしい極めて優れた容姿に比して装(よそお)いも丁寧だ。
加(くわ)えてジト目がちでありながらも、パッチリとした確かな二重はやはりとくべつ少女らしく、とても可愛らしい容姿をしているのが改めて見て取れる。
さらに、切長の美しい眦(まなじり)は、そんな自ずと庇護欲(ひごよく)を誘う少女趣味な外見に反して触れれば切れてしまいそうな鋭利さをも、彼女を見る者に対して与えていた。
故に傍目に見ればそんな庇護欲を誘う見目麗しいただの少女として映る彼女の下着を前にすれば男であれば当然ながら生理現象を催しても致し方ないといった具合。
それに先ほどまで互いの生死をかけた熾烈な戦いを繰り広げていた手前、シュタルクのその命の危機を感じた人間としての動物的な本能が面に出てしまってもなんらおかしなことではないだろう。
「‥何をするつもりだよ」
「分かってるくせに。知らないフリをしても無意味。どうせあなたはわたしを好きになるんだから」
手触りの良いサラサラとした衣服の布地を顔に当てられてシュタルクは否応にも動揺してしまう。
それもそうだろう。
何せリーニエという魔族はその本性が例え残酷であったとしても、外見だけは可愛らしい美貌の少女なのだから。
これに応じて男の生理現象が起きてしまってもおかしなことではない。
つまり不可抗力だった。
「人間の男はわたしみたいな女の子が好きだってリュグナー様が言ってた。やっぱり本当だったんだ。これなら初めからこうしてれはよかったかな」
そう冷たい感情の色を感じさせない声色で言うリーニエは自らの洋服に手をかけた。
するとシュルシュルとスカートとパニエを落としていき、そこに露わとなったのはやはり相変わらず少女趣味なドロワーズ。
その姿には照れた素振りもなく羞恥を感じていないのか一連の動作に淀みがない。
「どうかな。あなたみたいに意思の強い人間に効果があるとはあまり思えなかったけどそれは杞憂だったみたい。嬉しいならもっとしてあげる」
そう口にして惜しげなく無造作に本来であれば恥ずべきであるが、にも関わらず無防備に晒された少女の下着がシュタルクの目の前にあらわれて、やはり少女の甘酸っぱい体臭が鼻につく。
おそらく少女に羞恥心というものはなく、あるのはプライドであり、その傲慢な肥大化した自尊心ゆえに自らを魅力的な少女であると自覚しているリーニエはシュタルクに下着を見せつけて仄かに口角を釣り上げて邪な笑みをその表情へと浮かべて見せた。
今こうして見せつけている自らの身体がどれほどシュタルクというオスを動揺させているのかを物語る衣服を押し上げる下半身の膨らみを見て取りリーニエは如何に自身が美しい少女であるかを改めて実感してどうやら酷く満足げである。
そしてこれは特段シュタルクというオスを翻弄する愉悦のみから得ている情動ではなく、やはりフェルンという、かの魔法使いに対する意趣返しが意味するところが大きい。
あの少女魔法使いのツガイであるこの男はわたしの虜であるという感覚こそがリーニエの心を満たしている。
それはひとえに魔族という人を蹂躙する本質からくる本能ゆえであり、あの魔法使いのオスを奪った優越感こそがリーニエの少女の部分をこれでもかというほどに満たしていた。
「どう?わたしのこと好きになった?わがままなシュタルク様でも満足できる?それともまだ人間特有の、がまん?」
「おまえっ‥」
「ふーん。あの女の言葉を模倣すれば良いのか。うん。でもやっぱりわがままだなぁ。わたしはこんなにシュタルク様のことが好きなのに。めんどうだからはやくみとめてくれないかな」
そう言って少女はシュタルクの真正面に立ち上がったままに彼の前の前に自身のドロワーズを持ち上げると押し付けてくる。
リーニエの匂いがシュタルクに鼻に押し当てられて、わずかばかりの湿り気を帯びた暖かい年頃の少女特有の甘い汗臭さが鼻をつく。
その年頃の体臭というのはいくら格調高い少女趣味の衣装で飾ろうが生の肉の女の体臭は隠せず、生々しい匂いが彼の鼻腔に当てられた。
甘酸っぱい汗臭い香りで少女のみずみずしい肌から発せられる、色気あるそのいやらしい匂いを顔に受けてシュタルクは息を呑む。
若々しい生の肉から香るリンゴの香水とオスの本能を誘惑する媚びたメスの甘ったるい体臭は、男の理性をがんじがらめにして離さない。
真っ白いあたかも初雪のようにみずみずしい触れれば吸い付く若々しいまるで思春期の少女のような肌から与えられる温もりは自ずとシュタルクの警戒心を心底から解きほぐしていき、人の頑なの強情な戦士としての心の隙間に入り込み隙をつく。
狡猾に人肌が如何にシュタルクの精神を揺らがせて動揺を誘うのかを、その可憐で美しい思わず油断してしまいそうになる可愛らしい顔と合わせて利用している。
たとえシュタルクが一流の戦士で強靭な精神を誇っていたとしてもそれは容姿がとくべつ優れている幼い少女の前では無意味だった。
なぜならオスはそこに性欲が絡むと途端にその強固な精神性も軸が失われてしまい無力になる。
それは男にフェルンという想い人の少女が居たとしてもあまりにもそれだけでは儚く、目の前のリーニエの甘い誘惑には抗えない。
ましてや平素では冷たい印象を受ける美貌の少女が自らの媚びた振る舞いで、その可憐な洋服を一枚一枚落としていくとあればそれは最早抗いようがないというのが酷な現実だろうか。
フリルの付いた可愛らしくも格式高い衣服を脱いでいき、シュタルクの耳元では甘ったるいまるで脳を蕩けさせるような声で付け入るようにしてくるのだから否応にも理性が崩されていくのは必然と称して差し支えない。
その魔族特有の傲慢さを表面上とはいえ押し隠し、本当にシュタルクを愛しているかのようにして接してくる。
それはフェルンという少女が居る以上はシュタルクの心に土足で踏み入るのと同義であるが、けれどそんなものは道徳心などリーニエからすれば些細な事に過ぎない。
ねっとりとした甘い声色で色気を帯びた吐息を乗せたリーニエの囁きはシュタルクのフェルンへの懸想をも曖昧にする。
エアファーゼンは緻密に細部まで模倣する。
その魔法はフェルンの口調や声色までも正確に演技されていた。
とはいえ振る舞いこそ瓜二つにできるものの、見た目は完全に異なり、むしろそのせいでより一層シュタルクに忌避感を与える結果になってしまっているが、けれどリーニエは人の感情が分からないゆえ、彼の心の機微にまで気付けない。
外見がまるで違うリーニエがフェルンの身振り手振りを模倣しても違和感があるだけだろうが、そこがやはり魔族には理解できない。
だがこれでシュタルクの動揺を誘えたのもまた事実、往々にして心の隙というのは認知的な不協和から生まれるものであり、狡猾なリーニエという少女はその弱味を見逃さない。
「はい。これでどう?少しはわたしを好きになってくれる?なかよくできる?」
「ッ‥」
そしてついにドロワーズに手をかけてその布を落とすと露わとなるのは真っ白の、湿り気を帯びた濡れて色を少しばかり濃くした純白のショーツ。
途端に汗で蒸れた女の子の体臭と、そして少女らしい粘(ねば)ついた甘ったるい匂いが鼻をつく。
クロッチの部分が眼前にあり、僅かばかりに愛液で色を変えている布地へと筋がぴっちりと浮き上がりその形を鮮明としている。
ただ、彼女を性的に興奮させているのはひとえに愛情などではなく、それは純粋な動物の本能としての性欲であり、そしてフェルンへの優越感だ。
これに加えてシュタルクを所有して自らの手中へと納めた悦びからくる歪んだ魔族としての支配欲からでもある。
「そういうのはもういい。だってどうせ話す気がないみたいだから。それならめんどくさいし、わたしも好きにさせてもらおうかな」
とうとう下半身の肌を晒した彼女は押し黙るシュタルクをみくだして問いかける。
「人間のオスって布もすきなんでしょ。下着ずっと見てたし。本当に人間って面白いよね」
シュタルクを心底からバカにして見下した言葉と同時にリーニエが動く。
すると次の瞬間彼女の股間がシュタルクの鼻先に押し付けられた。
柔らかなサラサラとした感触と共に、しっとりと湿った少女の暖かさが肌に感じられた。
そして確かに生きている生物としての汗の香りがツンと股間の割れ目に張り付いた布地から甘く匂う。
「どう?こーふんする?‥ふーん。やっぱり答えなくていいよ。すごく大きくなってるのわかる」
そう言って一人リーニエはくすくすと鈴の音のような声を僅かばかり漏らすと、つま先でシュタルクの股ぐらを踏み付けた。
少女の甘い桃色の髪が揺れる。
足先はそのまま靴を脱ぐと、シュルシュルと太ももまであるオーバーニーソを脱ぎ捨てた。
そして─
「おいっ‥」
「だまって。あなたはただ、わたしに従っていればいい。わたしはあなたを理解したいだけだから」
しゃがみ込んだ彼女はシュタルクの衣服も下着までたどたどしい手付きながらもどうにか脱がせてしまうと、上目遣いで言う。
「下着も脱いだほうがいい?履いてた方がこうふんするの?」
「‥‥‥‥」
「まあいいや。どうせ同じことだし」
言葉には応じないシュタルクをまるで見咎めるように見て、目を細めたリーニエはついでだとでも言わんばかりにショーツを下ろして足先から通した。
生まれたままの肌を晒した下半身に、フリルのあしらわれた格調高い少女趣味の胸元はすでに着崩れており、少女らしい膨らみが露出している。
どちらも扇情的にオスの興奮を煽るために敢えて衣服を着たまま晒しているようで、リーニエがシュタルクを観察する瞳は無機質でありながらも何処か恣意的(しいてき)だ。
「なんだよめんどうだなぁ。好きになってるならそう言えばいいのに」
そう性欲と愛情を勘違いした少女は言う。
語る様は自らがまるでシュタルクに執着でも無いとでも言わんばかりに声色は冷たいが、けれど振る舞いからは確かなドロドロとしたまた純粋な好意とは別の情動が垣間見える。
その姿からは愛というものを知らない少女の求める仄暗い欲望が、一つ一つの機微から見て取れた。
「んっ‥」
そして真正面からシュタルクに跨ったリーニエは顔を近づけた。
するとみずみずしい年頃の少女のぷるんとした薄桃色の唇がシュタルクの無骨な唇と重なり合う。
少女の方に緊張はなくその一連の動作は無造作だったが、しかし互いの口付けは長く行われた。
それはリーニエが何かを得るためか、柔らかな少女の肌が男の硬い肌に触れて、僅かばかりの水音を立てた。
不意に二人の傍らの暖炉の炎から溢れる暖かみのある光が薄暗がりを仄かに照らし出し、パチパチと薪が形を崩す音が少年と少女の唇と唇が触れ合う、いやらしい音を覆い隠す。
「ん‥んっ‥ん‥んんっ‥」
しっとりとしたリーニエの唇からは甘い吐息が溢れ、シュタルクの初めての口付けは甘ったるい、りんごの味だった。
互いの吐息にあてられて、そして気持ちが昂ったのかチロリとリーニエの舌先がシュタルクの唇に触れた。
「おい‥」
「うけいれて。‥ん‥ちゅ‥」
鮮やかな生々しい紅の舌肉が躊躇う男の無骨な唇に滑り込み、唾液に濡れた粘膜は口内へとねじ込まれた。
「んれぇ‥ん‥ちゅ‥れぇ‥れる‥れぁ‥」
互いにファーストキスであるにも関わらず二人の初めての口付けは酷く扇情的であり、そしていやらしい。
舌同士を最初は遠慮がちにぴちゃぴちゃと絡ませているというより触れさせていたリーニエだったが次第にそれは動きを変えていく。
彼女のテラテラと妖しい輝きを称えて唾液に濡れた舌肉は、淫らにそのままシュタルクと舌同士を絡ませ合い、まるでその様は蛇の交尾の様。
濃厚にお口同士で唾液を交換し、みっちりと唇同士を密着させてリーニエは目を瞑らずにずっとシュタルクの顔を覗き込んでいる。
どうやら彼がどういう反応をするか見たい様で観察する姿は何処か冷たい印象を受ける。
愛を知らない少女はそれを確かめるため、少年の唇と口内をもぐもぐと貪った。
その光景はまるで捕食者が獲物を蹂躙する時のように傍目から見れば酷く一方的で、外見こそリーニエは可憐な少女だが、その内面は人間とは相容れない魔族に過ぎないのを言外に証明しているかの様。
「した、だして。ん‥れぁぁ‥ぁん‥ちゅ‥んんっ‥シュタルクさま‥しゅたるくさま‥」
しかしながら事実は魔族の少女でありながら、その振る舞いは少年を純粋無垢に慕う少女そのもので、何度も何度もシュタルクの名を呼んでいる。
湿ったいやらしいリップ音が濃厚に舌を絡ませる度に、暖炉の灯りだけが煌々と輝く暗闇に溶けていく。
柔らかい少女の唾液に濡れたテラテラと妖しい輝きを称えた舌肉が幾度もシュタルクの舌に絡みつき、ねっとりと舌腹同士がれろれろと密着して粘膜を擦り合わせている。
「んっ‥ん‥ん‥ふ‥んんっ‥どう‥?すきになった?」
「っ‥そんなわけあるかよ‥」
「そう‥。ざんねん。でもそれならもっとしたら好きになる?どうすればシュタルクさまは、わたしをすきになる?」
「やめろ‥」
「んっ‥‥ぁ‥ん‥れぇ‥れるぇ‥はぁっ‥しゅたるくさま‥すき‥すき‥ん‥ちゅ‥れぇ‥すき‥すき‥れぁ‥ん‥んっ‥しゅたるくさま‥」
リーニエはシュタルクの拒絶をその声色から感じ取って尚もその名を呼び続けた。
フェルンの模倣をすればシュタルクの心を乱せるというのが分かっていたからだ。
人間というのは往々にして怒りの感情に囚われると途端に我を失うのはそれは相手が戦士であっても同様だ。
少女は人の強さも理解していたがまた同時にその脆さも知っていた。
だからこそ彼女は意図的にフェルンの真似をしてシュタルクの唇を貪っていた。
心に隙が無いのであればどんな手を使ってでもこじ開けてしまえばその精神も容易く絡め取られてしまうという現実は、未だ魔族に対して人が克服し得ぬ欠点だろうか。
そしてねっとりとした唾液の線を互いの唇の間にかけて濃厚な口付けを終えたリーニエはジッとシュタルクの瞳を覗き込んだまま言う。
「まぞくだから?」
「‥なんだよ」
「まぞくだから好きになれない?」
少女はあたかも自らが傷付いているかのような振る舞いで魔族であるにも関わらず、庇護欲を誘う表情を浮かべてみせた。
その形の良い眉根を八の字に寄せて端正な可愛らしい顔立ちを悲しげに。
「お前たちは人を喰うだろ。そうしなくても生きていけるのに」
これに受け応えるシュタルクは己に好意を示す少女に対する猜疑心と困惑から戸惑いがちにそう返す。
「それがきにいらない?」
「ああ」
「‥」
桃色の髪の可憐な少女はシュタルクを見つめたまましばし閉口した。
しかしすぐさまその艶やかな唇を開いた。
「わたしには人間の子供みたいに親がいなかった」
「ッ‥」
「ずっと一人で生きてきた」
言葉と同時、少女は今し方まで気だるげだったはずの双眸を垂れさせてそう語る。
瞳は潤み、憐憫を誘うその姿はまるで男の心につけ込むかのような振る舞い。
「一人はすごく、さびしい」
「お、れは‥」
予期しないそんな少女の弱音を受けてシュタルクは辛そうに、何かを堪えるよう自らの唇を噛む。
彼は己が肉親に愛されていなかったという思いから幼少の頃の記憶が頭にリフレインした。
目の前の寂しそうな少女と過去の自分の孤独な姿が一つに重なった。
「それに、あなたは魔族が人間を食べたと言ったけど、わたしは食べてない」
「そんなこと信じるわけっ‥」
「ほんとう。しんじて」
少女の訴えはシュタルクの目から見ても凄く切実で嘘をついているとはとても思えない。
ただし真実というものは往々にして残酷なもので、リーニエという少女の言葉は果たして嘘か誠か。
「わたしは、すごく人間がうらやましかった」
「‥おまえ」
「だから、あいして」
少女の双眸がシュタルクの瞳を覗き込み、次の瞬間にはしっとりとした唇の感触がある。
互いの唇が重なり合って、今度は舌を入れない唇と唇だけを重ね合わせる想いを伝えるだけの口付けだった。
少女の言葉を信じるのであれば愛情を伝えるキス。
だが少女の瞳は未だシュタルクを捉えていてその様は依然として観察するようであるのは一体何故か。
「‥お前と同じだ。俺は親がいたけどきっと似たようなもんだった」
「おなじ。でも、もうひとりじゃない」
「‥ああ」
リーニエのまるで思わず吸い込まれてしまいそうな紫紺の瞳は真っ直ぐにシュタルクを見つめて離さない。
その目は古井戸の様で、青年は魅入られていた。
更に少女の幼い唇は人の心を抉るかの様にして言葉を紡ぐ。
「こどくは、とてもつらい」
「そう、だな‥」
息が詰まるシュタルクは先ほどまでなら心許さなかったであろう少女の甘言に否応にも頷かされていた。
「あいされなかった?」
「多分‥な。俺が弱かったせいだ」
その問いかけに自ずとシュタルクは顔を逸らそうとするが途端にリーニエの両手が伸ばされた。
そして彼の頬を冷たい感触の肌が優しく包み込む。
「ちがう。あなたはつよい」
「そんなことっ‥」
さきほどまであれだけ頑なだった青年は、今では歳幼い少年のように取り乱している。
少女の手の中で表情を崩す。
「だってあなたはわたしよりつよい。あの時だってほんとうはかてたはず」
「‥負けたら同じことだろ。そんなの」
「ころせなかった?どうして?」
「‥昔の俺に似てたからかもな」
少女の言葉の一つ一つがじわじわと彼の心を優しく蝕んでいった。
往々にして破滅へと至る道というのは悪意ではなく、善意で舗装されている。
「やっぱり、あなたもすきがほしい?」
「そうかもな‥」
ゆっくりと、だが着実に青年の閉ざされていた精神は解きほぐされていき、その隙間に少女が手をかけた。
「すきってきもちをしりたい?」
「‥‥‥ああ」
そして遂に暫しの沈黙を経て彼は首を縦に振ってしまった。
シュタルクという戦士だった青年は、人類の敵である魔族に対してその心を屈服させられた。
「そう」
すると青年の返事を聞いて少女はにっこりとその可憐な美貌に笑みを貼り付けた。
それは傍目から見れば人形めいた、ただ綺麗なだけの気持ちの悪い少女の笑み。
ゾッとするほど美しい不気味な口元だけ笑っている自らの可憐な容姿を決して崩さない卑怯な微笑を浮かべてみせた。
「わたしも」
続けてそう言った少女は確かに笑みをその可愛らしい少女めいた顔立ちに浮かべているが、果たしてその瞳には依然として冷たい光が宿っていた。
暗くて、未だ底が見えない紫根のまるで宝石の様な双眼に映されているのはドロドロと濁った中身が窺えない代物で、しかしリーニエの振る舞いには明らかに執着が見て取れた。
本来これが人の少女であればそれは純粋に想い人への好意であるはずのものも、彼女のシュタルクに触れる手付きの節々から優越感、そして独占欲がことさら垣間見える。
外見だけは可愛らしい顔立ちの、美貌の少女であるリーニエのその姿から見られるそれは、彼女たち魔族の本質であるところの人とは相入れない動物的な支配欲に他ならなかった。
「しゅたるくさまがすき」
そして、まるで水底(みなそこ)のような仄暗い紫紺の瞳でシュタルクの目を覗き込むリーニエはそう言って、あれだけ欲していたはずの愛を最後まで理解できなかった。