六花アカネ夢芽が「あなた」とラブラブエッチする短編集 作:前野へーた
2026年6月、休日の夕方。
ラウンドナイン・ネリマ店の三階ボウリングのフロア。どこかのレーンでピンが弾ける音と若い声の歓声とが絶え間なく響く。
何ゲームか投げ続けて、ユウの喉はからからだった。半円のソファを立って、混み合ったフロアを横切り、ドリンクバーへ向かう。
紙コップ
一緒に来ていたアカネと六花が、レーンわきのソファに座っているのが見えた。
すれ違う男たちがちらちらと彼女たちに目をやる。
藤色ボブの小柄なアカネは頬杖をついてスマホを見ている。黒髪の六花は、清楚なブラウスのリボンを手持ち無沙汰にいじっていた。
視線に我関せずの態度が逆に男を誘うのか……今日もう三組目になるナンパが始まった。
アカネが面倒くさそうに息をつく。
「ヒマっちゃヒマだけどぉ」
気のない声だ。六花はアカネの隣で少し困った顔をしていた。
ナンパ男たちは前のめりでへらへらしている。ヒマなら一緒に遊ぼうとでも言っているようだ。
アカネがやっと顔を上げて赤い瞳で男たちを一瞥する。大きめTシャツの胸元がぷるんと重たげに沈んだ。
「なし。うーんごめんねー?」
「ちょっとアカネ。言い方きつくない?」
六花が横からやんわり割って入る。膝をそろえて座り直すと短めフレアスカートの裾がめくれ、むっちりした太ももが一瞬のぞいた。
「ごめんなさい。二人で連れを待ってるので」
その連れがいま氷の鳴るコップを持って突っ立っているなんて、男たちは思いもしないだろう。鼻白んだ顔で口ごもり、そそくさと離れていった。
と、アカネがこちらに気づいた。ぱっと表情がほどける。
「あっユウ! おっそーい」
ソファを立って小走りで駆けてくる。小柄な体が弾むたび、たゆんたゆんと胸が半拍遅れて揺れた。
「三つも持ってあぶなーい。呼んでくれたら手伝ったのにぃ。もー無理しないでよね?」
ユウから自分のコップを受け取り、右の二の腕にやわらかい胸をむにゅりと押しあてる。温めたミルクみたいな甘い匂いが、ふわりと鼻をかすめた。
反対から六花も来て左腕をむぎゅっと抱えこむ。肩に頭をあずけると、黒髪からいい香りがふわり。六花がいつも使っている椿のシャンプーのものだ。
「アカネがぎゅーってしたら余計こぼれるでしょ。……はい運んでくれたお礼」
六花はかかとを少し上げユウの頬に唇を寄せた。
それを見たアカネが目をまるくする。
「あっ六花だけずるーい」
そう口を尖らせてからユウの顎に指を添えて、くいっと自分のほうへ引き寄せる。
「んー」
六花よりずっと長く頬を吸うと、離れぎわ、目を得意げに細めた。
「ぁは。私のほうが上手でしょ?」
両の頬にやわらかい感触が二つ残る。ジュースを三つ運んだだけでこれだ。ユウは口元がゆるみそうになるのを何とかこらえる。
二人はユウをソファの真ん中に座らせて、左右からぴったり挟みこんだ。ユウは身動きも取れないまま二人の体温に包まれる。
アカネが自分の紙コップをちゅっと吸い、ストローの先をユウの唇へ突きつけた。
「はい。ユウも同じの飲も? おいしいよ」
口をつけてやると、満足げに赤い目を細める。
「間接キスずるい。ユウ、あたしのも飲んで」
六花も反対から自分のコップを寄せてくる。ストローの先がユウの口の端をちょんと突いた。
ユウは六花のストローも咥え、二人ぶんの間接キスに口を貸す。
「ユウ~♡」
アカネが二の腕に頬をすりつける。六花も負けじと肩口にぐりぐり額を押しつけてきた。左右から体重をあずけられ、やわらかいものがあちこちで形を変える。
ズボンの中身がずくりと重くなるのを、ユウは膝を寄せてこらえた。
「……あ、そろそろボウリングしないと」
「私の番だっけ?」
アカネが立ち上がると、六花がすぐに左から胸を押しつけ、指を一本ずつ絡めてくる。恋人つなぎだ。
ととっとアカネがレーンに立って、ボールを構えた。大きめのTシャツの裾から生脚がすらりと伸びている。
小さな背中を丸め、細い腕で送り出した。ボールはころころと力なく右の溝へ落ちる。ガーターだ。
「あー! もーぜんぜんダメ」
アカネが唇をとがらせて振り返る。上目づかいで両腕を広げてみせた。
「ユウなぐさめて? ぎゅーってして?」
「アカネ下手すぎ」
六花がくすっと笑って立ち上がる。今度はアカネが右から手を取って恋人つなぎしてくる……さらに自分のショートパンツの太ももに導いた。ひんやりした肌の内側だけが火をもったように熱い。
「見てて。あたしがお手本」
六花が細い上半身をすっと伸ばしなめらかに踏み込んでボールを放つ。かがんだ拍子、ミニスカートが立派すぎる尻の丸みにぴたりと張りついた。
ピンが小気味よくぜんぶ弾け飛ぶ。ストライクだ。
「ふふっどう? ユウ褒めて?」
六花が振り向いて得意げに眉を上げる。桜色の頬がいっそう色濃くなっていた。
得意げな顔のまま六花はソファの後ろへ回り込んだ。背もたれ越しに両腕をユウの首へゆるく巻きつける。冷房で冷えた頬がこめかみにぴたりと触れた。
「あたしすごいでしょ?」
声が耳の内側をくすぐる。
「次ユウの番」
「かっこいいとこ見せてよ」
左右から肩を押されてユウはソファから腰を上げさせられる。アカネが小さな爪の指をぴっと一本立ててみせた。
「決めたらいいことあるよ?」
ユウが投げるとピンが二本残って、それも次で倒れた。スペアだ。
ソファのアカネがスマホを掲げて「今の録りたかったー!」と足を鳴らす。六花は両手で小さな丸を作り「ばっちり見てたよ」と口を動かした。
席に戻ると二人が同時にハイタッチしてくれた。自分たちの真ん中にユウを引っ張り込んで左右から抱きついてくる。
「かっこよかったよ」
「やっぱユウは違うねー」
ふたつの声が代わるがわる耳をくすぐる。アカネがストローを口元へ運び六花が乱れた前髪を指先で整えた。左右をやわらかさに埋められてユウは指一本動かす必要もない。
喉の渇きはコーラでとっくに消えている。なのにもっと奥のほうがじりじりと渇いていく。ユウは生つばを飲んだ。
右ではアカネの襟ぐりが前かがみのたびに深くなる。左では六花のスカートのきわから素肌がのぞく。目を上げようとしても視線がそのふたつへ滑り落ちていく。右の胸元へ左の膝の上へそしてまた右へ。視線が二人のあいだを何度も往復して定まらない。
やりたい。
「ねえユウ、プリクラ撮りに行かない?」
「六花てんさ~い。プリで盛りたい!」
少しもったいない気がした。ボウリングのフリータイムはまだたっぷり残っているが、この混みようでは次のグループに譲らなければマナー違反だ。
スマホで撮ればいいじゃんと口に出す……その前に、二人がユウの手を左右から引いて立たせた。
◆◆◆
二人に手を引かれてユウはエスカレーターで二階へ下りる。プリクラのコーナーはゲーム機の奥ピンクと白の明るい一角にあった。奥をのぞくとプリ機が一台ずつ並んでいる。
分厚いカーテンで仕切られて中は外から見えない。三人で入れば誰の目も届かない箱になる。
そこまで思ってユウはようやく二人の魂胆に気づいた。
入口の料金表の隅に赤い字で但し書きがある。
〈※防犯のため男性のみでのご入場はご遠慮いただいております〉
アカネがその一行を指でつつきにんまり笑う。
「ね、スマホじゃだめでしょ。人の目があるところじゃ……ね? だいじょーぶ。私たちと一緒ならヘーキだから」
六花も反対の腕にしなだれかかって声をひそめた。
「入っちゃえばあとは……ね? あたしたちだけの箱だもん。……声我慢できる?」
左右から腕を引かれてユウはプリクラ機のカーテンの奥へ連れ込まれていった。
◆◆◆
「ねえユウチュープリ撮ろ?」
「ほっぺじゃなくて……くちびるね?」
答える間もなく二人がユウの腕を左右から取ってカメラの前へ引っぱり出す。プリクラのブースは三人も入ればぎゅうぎゅうのインスタントな密室だ。正面のモニターにユウを挟んで身を寄せる六花とアカネが映っている。
左の二の腕に六花の胸が押しつけられる。ブラウス越しでもはっきり分かるお椀型が二の腕の形にふにっとひしゃげた。石鹸と汗とそれから椿油の匂いがふわりと混じって鼻をくすぐる。潤んで焦点のゆるんだ目がじっとユウを見上げてきた。ずり落ちかけたカーディガンの下で白いブラウスの裾が少しだけはだけている。
右の二の腕にはアカネの胸。綿菓子みたいに小さな体のくせに大きめのTシャツを内側から押し上げる胸だけが火をもったように重たく熱い。崩れた襟ぐりから汗ばんだ谷間がのぞいていた。ぷっくりした桃色の唇はもう濡れて半分ひらいている。
ユウは思わず生唾を飲んだ。
『さ〜かわいく撮ろうね〜♪』
やたら明るい女の声が案内を始める。
『スリーツーワン!』
機械音声が数える。左腕を抱いた六花がするりとユウの頬へ顔を寄せた。真っ黒な髪がさらりと肩を撫でていく。張りのある唇がユウの唇にふにっとやわらかく重なった。ただ軽く触れているだけ。なのに押し当てられた唇の熱とやわらかさとかすかな湿り気がじんと伝わってくる。
パシャッとシャッターが鳴った。
『わ〜ラブラブ〜♪ 盛れてるよ〜!』
機械の声が三人が何をしているかも知らずに能天気にはしゃぐ。
六花がゆっくりと唇を離した。離れぎわ濡れた下唇がユウの唇に吸いついてつっと細い糸を引く。
『つぎはほっぺによせよせポーズ♪』
「次わたしぃ」
右腕に絡んだアカネが待ちきれないと身をよじる。ガイドの指示なんて聞いちゃいない。二の腕に胸をぐいと乗せてくる。Tシャツ越しのやわらかい重みが二の腕に押しつけられて先の尖りまでゆっくり形を変えた。
ユウの顔が右を向くとすぐにアカネの顔が寄ってくる。ぷっくりした桃色の唇がちゅちゅっと鳥がついばむみたいに何度も押しあてられた。少しずつ角度を変えて唇の面がぴたりと深く重なっていく。
温めたミルクみたいに甘い息。
六花は左からユウの腕に胸を擦りつけて自分の番を待っている。お椀型の先がブラウス越しに二の腕をかすめるたび六花の睫毛が小さく震えた。潤んだ目はユウの唇だけをじっと見つめている。
「ねぇ……次はあたしの番じゃん」
少し鼻にかかった甘えたずるい声。待ちきれないのか六花は自分の唇をぺろっと舐めて濡らした。
「六花目とろっとろだよ? えっちな顔してる」
「……アカネこそ。さっきからユウの脚に太もも擦りつけてるじゃん」
「バレた? だってさ待ってるあいだもずっとしたくて」
二人が顔を見合わせてくすっと笑う。見交わす目がどちらも同じ欲にうるんでいた。ユウの脚にはアカネのひんやりした生脚が絡みついたままだ。
『スリーツーワン!』
明るいカウントがまた急かしてくる。
「あんダメぇっ。次ラストだもん♡」
シャッターが鳴る前にアカネが横から割り込んだ。離れかけたユウの唇を追いかけて尖らせた唇を口の端にちゅっと押しつける。
「えー? 順番でしょ。アカネずるいってば」
六花も負けじと反対の口角に唇の先をちょんと届かせた。左右から二人の唇がユウの口の端を代わるがわるついばむ。ちゅちゅと軽い音が両方の耳のそばで二重に鳴った。
『いいね〜仲良し〜♪』
機械はご機嫌に褒めるけれど二人ともユウの唇を一秒だって譲る気がないらしい。こんな取り合いをされているなんて大学の連中が知ったらきっと目を丸くするだろう。
「あーもう。取り合いっこ、キリないってば」
アカネがユウの唇からちゅっと離れ上気した頬のまま赤い目で六花を見た。
「じゃあ休戦♡ 六花いっしょに攻めよ」
「……うん。あたしもそのほうがいい」
六花がこくんとうなずいてユウの腕に頬をすり寄せる。鼻にかかった声が語尾を甘く引きずって消えた。
「ユウのこと好きすぎて……あたしおかしくなりそう」
二人が目を見交わしどちらからともなく舌を出した。アカネの赤い舌と六花の濡れた舌先がユウの目の前でちろっと触れ合う。それだけでユウの背すじを熱いしびれが駆け上がった。
アカネがユウの右手を取る。ビッグTシャツの裾から汗ばんだ脇腹へと導いていった。指の下で素肌が火みたいに熱い。
「ほかの男とかマジ無理。ユウじゃなきゃヤダ」
反対の手は六花が握った。ブラウスの裾から差し入れさせて自分の腰のくびれへぴたりと押し当てる。驚くほど細いのにそこから下は急に張り出して汗ばんだ肌が掌に吸いついてきた。
「あたしも……キスされただけでほら。脚に力入んないの」
その言葉どおり六花の膝がユウの脚の上でかくんと崩れた。むちっとした太ももがユウの脚に重たく乗りかかってくる。
と思えば六花はユウの指を一本口に含んだ。ぬめった舌が指先に絡んでちゅっと吸いつく。潤みきった目が上目遣いにユウをうかがった。
アカネも負けじとユウの耳元に唇を寄せる。
「私たち二人がかりでも……ユウなら受け止めてくれるでしょ?」
左右から二人の胸とやわらかい腹がユウを挟んで押し寄せる。腕をからめてもう逃がさない。ユウの返事なんて二人とも待っていなかった。
「せーので行こ」
「うん」
息を合わせて赤い唇と桜色の唇が左右から同時に近づいてくる。
「「いただきまーす♡」」
ユウの唇の合わせ目を二枚の舌先がつうっとたどる。焦らすみたいになかなか奥へは入ってこない。ユウがたまらず舌を突き出すと待っていたとばかりに二枚が左右から絡みついてきた。
六花の舌が上から巻きつきアカネの舌が下からニュルニュルと擦り上げてくる。ヌメついた二枚がユウの舌を左右から挟んでねっとりとしごいた。混ざり合った唾液がとろりと甘い。口の端から白く泡立ったそれがつうっと糸を引いて顎へこぼれた。ぬちゅくちゅと濁った音が絶え間なく立つ。
二人が両側からユウの頭を挟んで逃がさない。カーテンの外の店のざわめきがすうっと遠のいていく。三枚の舌が生む水が跳ねるような音だけが頭の芯でやけに大きく響いた。
三枚の舌を絡めたまま二人はそれをカメラへ突き出す。プリクラだからこの顔も写したいのだろう。
『は〜いカメラ目線でね〜♪』
ガイドの声に二人は舌を絡めた顔のまま応える。
『スリーツーワン!』
パシャッ。シャッターの光が一瞬だけ三人を白く照らす。
『最高〜! とびきり盛れたね〜♪』
舌がほどけると二人ぶんの乱れた吐息がはっはっと戻ってくる。
「あむ……ちゅちゅる……」
左で六花が濡れた唇を震わせる。
「ん……ぴちゅ……ふぁ……」
右でアカネが鼻にかかった甘い声を漏らした。二つの荒い息がユウの左右の頬をじっとりと湿らせていく。
『まだ撮れるよ〜のこり三十秒〜♪』
撮り直しできると画面が三十秒を数えはじめた。
「のこり二十秒」
アカネが画面をちらりと見て数える。その声を合図に六花と二人がかりでユウの上下の唇を舐めしゃぶりはじめた。六花が上唇をアカネが下唇をちろちろと舌先でなぶる。まるでまだ足りないとでも言うみたいに。時間切れが近づくほど二人の舌は忙しくなっていった。
べったり甘えられて左右から形の違う二つの胸を押しつけられてそのうえこの贅沢な舌フェラだ。ユウの奥で気が遠くなるほどの獣欲が抑えようもなく膨れ上がっていく。
「ねえアカネ見て……ユウのすごいことになってる」
「ほんとだ♡ キスだけでこんなに?」
「もう……あたし我慢できないかも」
「私も。……ねユウ。この続きしよ?」
赤い瞳と青みがかった瞳が同じ欲にうるんでユウを見上げている。ユウは知らずごくりと喉を鳴らした。断る理由なんてあるはずもない。
『のこり二十秒〜♪ そのまま〜いいよ〜♪』
能天気なガイドの声がまだ撮影を続けている。それをいいことに二人の手がどちらからともなくユウのズボンの前へ伸びてきた。
六花が左からアカネが右から布を押し上げる硬いかたちをそろそろと指でたどっていく。
「ユウ、布ごしでもうこんなにビンビンだね♡ えっちぃ〜」
アカネが指先で先端の位置を探り当てて赤い目を細めた。
「もう……見てるこっちまで変になっちゃうよ」
六花も根元のあたりを手のひらでやわく押してはぁと熱っぽい息をこぼす。
布越しに食い込んでくる二人分の指の腹。それだけでユウのそこはファスナーを内側から押し破りそうなくらい痛いほど張りつめていた。こんなことをされて平気でいられる男なんているはずもない。
『いくよ〜スリーツーワン!』
カウントに合わせてアカネが手早くベルトを緩め六花が下着ごとズボンを引き下ろす。
「せーので……ばあっ♡」
押さえつけられていたものが弾かれたみたいに勢いよく飛び出した。太く反り返って先端はもうにじんだ先走りでてらてらと濡れ光っている。
ちょうどそのときパシャッとシャッターの光が瞬いた。露わになったその瞬間を機械は容赦なく撮っていく。撮られた——そう思ったとたんユウの背すじがかっと熱くなった。
「わ……っ。すごい勢いで出てきた……」
六花が目を丸くして小さく息を呑む。立ったままのユウを左右から挟んで、二人はそろって視線を落とした。天井のライトに照らされた幹がその見下ろす目の先で血管を浮かせてびくびくと物欲しげに脈打っている。
『わ〜元気いっぱいだね〜♪ ばっちり盛れてる〜!』
何も知らないガイドが能天気に褒めそやす。その明るい声の下で二人の細い指がそそり立った幹へ左右から絡みついてきた。
「見て六花、先っぽ、もうこんなにトロトロ♡」
アカネがにじみ出た先走りを指の腹で先端にくるくると塗り広げる。ぬちゃぬちゃと粘っこい音。
「アカネの塗り方えっちすぎ……あたしのもあげるね」
六花が手のひらに落とした唾液をペニスの根元へとろりと垂らす。真っ白な指が玉袋から幹の根元へとぬるぬる円を描いてやさしく塗り込んでいった。
二人分のぬめりに下から上から包み込まれ……ユウの腰はこらえきれずに勝手にびくびくと跳ねた。
『もう一枚いこ〜♪』
パシャパシャと追加撮影の連写が始まる。フラッシュがたかれるたびに上下する二人の手が示し合わせたように少しずつ速くなっていった。
右のアカネが張り出した先を包み、左の六花が根元を握って、二人で息を合わせてしごき上げる。その合間にユウの頬へ首すじへ代わるがわる濡れた唇を落としてくる。甘い匂いとやわらかい胸の感触が左右からユウを埋めた。
「撮られてるのにこんなにガチガチにして……ユウへんたい♡」
「もう……あたしたちもじゅうぶんへんたいじゃん」
二人がくすっと熱っぽく笑い合う。吐息が両耳にかかった瞬間、下腹の奥で熱いかたまりがぐぐっとせり上がってきた。もう、そう長くはもたない。
こんな二人を独り占めにできるのは世界で自分だけなのだ——そう思うと限界はすぐそこまで来ていた。
『たくさん撮れたね〜♪ あとはらくがきしてね〜♪』
撮影の終わりを告げる能天気なガイドの声。けれど三人はもう画面なんて見ちゃいない。手コキを続ける二人の腰へ今度はユウのほうから手を伸ばした。
右手をアカネの白いショートパンツのなかへ。左手は六花のフレアスカートをめくってその奥へ。二人ぶんの太ももの付け根に同時に指を潜り込ませていく。
「んはあああ……」
「あぅっうううんっ……」
拒むどころか二人は甘い声を上げて脚をゆるめた。ユウの首すじに舌を這わせながら握った手だけは休まず上下させてくる。
指の腹に生ぬるい湿りが触れた。六花の白いレースもアカネの薄紫のレースもクロッチがぐっしょりと濡れて布が割れ目にぴたりと貼りついている。
蒸れた甘い匂いが狭いブースにこもった。キスと手コキだけで二人ともこんなにして——そう思うと二人の手の中のものがひとまわり大きく張りつめる。
左手で六花のショーツの上から濡れた筋をつうっと撫で上げる。
「やんあっんんっ……変な声出ちゃうってば……あんっ」
六花がむっちりした尻をぷりぷりと振り立てて鼻にかかった艶っぽい声をこぼした。撫でるたびレースの下からとろりと新しい蜜が滲んでくる。
右手ではショートパンツのなかの薄紫のショーツのクロッチを指先でくすぐるように引っかいた。
「ひゃっ……んそこだめぇ……こしょばいのにぞくぞくしちゃう♡」
アカネは小さな腰をもどかしげに揺すってはっはっと息を荒らげる。薄紫の布越しに奥のひくつきが指先へ伝わってきた。
左右の手のひらは二人ぶんの体温としたたる蜜でぬめっていた。
手だけではもう足りない。ユウがそう思ったのが伝わったみたいに、六花が幹に絡めていた指をそっとほどいた。ユウの正面にぺたんと床へ膝をつく。狭いブースの床にひざまずいて濡れそぼった幹をうっとりと見上げた。
ユウの左手が自然と、黒髪へ下りていく。右手はアカネのショートパンツの中に入れたまま。位置が入れ替わって跪いた六花をユウが見下ろす格好になった。
「ユウのおちんちん、かわいくて大好き……あたしのお口でいっぱい気持ちよくなってね」
六花が頬を幹にすり寄せて甘えた声で囁く。すぐそばで吐き出される熱い息が先端をくすぐった。
「六花ほんとにユウのこと好きだね♡ 私も手伝ってあげる」
アカネが立ったままユウの首すじに舌を這わせて赤い目を細める。
六花がぷっくりした桜色の唇をまるくひらいた。張りつめた先端をあたたかい口のなかへゆっくりと迎え入れていく。やわらかな粘膜に幹をぬるりと包み込まれた瞬間ユウの腰がかくんと浮きかけた。
舌が裏筋にねっとりと絡みついてくる。六花は上目遣いにユウを見上げたまま頬をすぼめて頭をゆっくり前後させはじめた。じゅじゅと控えめな水音が狭いブースにこもる。
「そうやさしく……六花の舌ぜんぶ使ってあげて♡」
アカネがユウの頬にまぶたにこめかみについばむようなキスを降らせながら耳元で実況する。
「ユウ、とろっとろの顔してる。六花の口そんなに気持ちいいんだ?」
右手の下では薄紫のショーツ越しにアカネの割れ目が指の腹をきゅうと挟んでくる。二人分の熱に前と横から包まれてユウはたまらず奥歯を噛んだ。
六花の唇の輪が幹を根元までずぷりと呑み込んだ。張りつめた先が喉の奥のせまい所をくにゅりと押しひらく。六花はえずくのをこらえ鼻で細く息をしながら頭をだんだん速く振りはじめた。ぐぷぐぷと水音が湿って大きくなっていく。
「いいよ六花そのまま……」
アカネが揺れる六花の頭をあやすように撫でる。それからユウの耳へぷっくりした唇を寄せた。
「ねえユウ、六花のお口、そんなに好き? ほらもう腰が逃げてるよ♡」
図星だった。ユウの下腹の奥で熱いかたまりがぐぐっとせり上がってくる。指の下ではアカネのショーツもあふれた蜜でぐしょぐしょにぬかるんでいた。アカネははっはっと息を弾ませている。前からは六花の口に、横からはアカネの声に——二人がかりでもうどこにも逃げ場がない。
もう出る——。
込み上げてきたものがあと一突きで弾ける、その寸前だった。
六花がつぷんと音を立てて口を離した。糸を引いてそそり立つ先端にはあと熱い息だけを吹きかけていたずらっぽく目を細める。あと少しで届いた射精感が行き場をなくしてじんと幹の奥で疼いた。
「ん……ユウが、オクチに出したいっ……て言ってくれたら、ここでどぴゅっ~てさせてあげる♡」
『らくがきまだまだ時間あるよ〜♪』
能天気なガイドの声が間の抜けた合いの手を入れる。それでも二人は焦らす手をゆるめない。
「ほら六花におねだりして?♡ どこに出したいかちゃんと教えて」
アカネが耳元でくすくすと囁く。声も出せずにユウはただこらえきれず腰を突き上げた。あと少しで弾けそうな射精を六花の濡れた唇へねだるように。
六花がふっと目もとをゆるめ、そそり立つ幹をもう一度根元まで深く呑み込んだ。今度は焦らさない。頬をすぼめてじゅるじゅると強く吸い上げてくる。
同時にアカネの空いた手が下から玉袋をやわく包んだ。溜まったものを送り出すみたいに六花の口のリズムに合わせてやさしく揉み込んでくる。
「ほら……ここ、もう、パンパンだよ♡ 我慢しなくていいから……出して、ユウ」
下腹から腰へ熱と震えがぶわりと広がった。尿道の奥がどくどくと脈を打ってせり上がるものがもう止められない。撮られているのもカーテンの外に人がいるのも——そんなこと頭から吹き飛んだ。
声を殺していたユウの喉からこらえきれず呻きが漏れる。
もう限界だった。
六花が根元まで咥えたままじゅうっと吸い上げる。アカネの手が根元を下から上へぐっとしごき上げた。
「あ、きた……っそう、出してっ……ぜんぶ六花のお口にねっ♡」
「——っく……ぅ」
尿道の内側が熱くきゅうっと収縮する。腰が太ももががくがくと痙攣した。
どくっ。
熱いものが体の芯から駆け上がる。
どくっ。
六花の口の奥へ勢いよく注ぎ込まれる音。
どくっ。
頭のなかが一瞬まっしろに焼き切れた。
甘くて痛いくらいの快感が体の芯から、あとからあとから溢れ出す。ユウはただ腰を震わせてそれを六花の口へ吐き出しつづけた。
六花は脈打つたびにこくりこくりと喉を鳴らして受け止めていく。アカネの手が名残おしそうに幹の根元をしごいて最後の一滴まで六花の口へと送り出した。
「うそすご……こんなに出た♡ 六花一滴もこぼしちゃだめだよ」
やがて六花がつぷんと口を離す。とろけた目でユウを見上げたままあーんと口を開けてみせた。舌の上には白く濃いものがたっぷりと溜まっている。
六花が白い喉をこくりと上下させる。
こくん。
溜めていたものを音を立てて飲み下した。
「ん……ぜんぶ飲んじゃった♡」
からになった舌を六花がちろりと見せて笑う。
「……えらいえらい。ちゃんとユウの飲めたね♡」
アカネの手が脱力したユウの太ももを労うようにゆっくり撫でた。
出したばかりなのに心臓はまだ早鐘みたいに鳴っている。膝がかすかに震えていた。頭の芯はとろけたまま、うまく戻ってこない。それなのに——二人の甘い匂いと体温に挟まれた腰の奥はもう次を欲しがってじくじくと疼きはじめていた。
◆◆◆
カーテンで閉じた狭いブースに青白い撮影ライトが降っている。むわりと精液と汗の匂いがこもっていた。
ユウは仕切りの壁に背を預けて立っている。ずり下ろされたズボンと下着が膝のあたりで止まっていた。
足元で六花がユウの股間から顔を上げた。膝をついたままユウを見上げあーんと口を開けてみせる。舌の上にはもう何も残っていない。
「わ。六花ってばぜんぶごっくんしちゃった♡」
右で中腰になっていたアカネが赤い目を輝かせて手を打つ。
「……だって」六花が濡れた唇をぺろりと舐めた。
「ユウのであたしのおなか、いっぱいにしたいんだもん」
鼻にかかった甘え声が恥ずかしそうにそれでいて誇らしげに揺れる。
「あはっ出たー。六花のそれ」アカネが横から六花の頬をつんとつつく。
「わかるけどね。私もユウのこの匂い嗅いだだけで……もう腰がとろけちゃうもん」
二人そろってうっとりと潤んだ目でユウを見上げた。この顔を向けられるのは世界でユウひとりだ。
剥き出しのままユウは頭の芯がじんと痺れて脚から力が抜けていた。出したばかりだ。なのに二人ぶんの視線に舐められているうちに下腹の奥がまた重くなってくる。さらけ出したものが二人の目の前でもう一度ゆっくり芯を持ちはじめた。
「ふふっ。見て六花。ユウってばもうこんなに」
「……ほんとだ。うれしい」
六花がうっとり目を細める。二人は顔を見合わせると左右から同時に立ち上がってきた。六花のまだ濡れた唇が首筋に吸いつきアカネのやわらかい胸が二の腕でひしゃげる。二人ぶんの汗と甘い匂いにユウは同時に包まれた。
六花が乱れた髪を手で直しかける。けれどその手は途中で止まってまたユウの胸へすがりついた。
「もうあたし……ユウなしじゃいられない体になっちゃった」
消え入りそうな声で六花がそう白状する。
アカネはユウの脚のあいだへ手を伸ばし力を取り戻したものを指先でつうっとなぞった。
「一回出したくらいじゃぜんぜん足りないよね? ……私たちもユウも」
ちろりと唇を舐めて上目づかいでユウを見る。
とブースの外で陽気なガイドの声が響いた。
『らくがきのこり一分だよ〜♪ はやく仕上げてね〜♪』
落書きの制限時間が迫っている。でも二人は聞こえないふりだ。六花はユウの顎にアカネは頬にちゅちゅっと名残おしそうに唇を落としつづける。
六花がその場でもう一度腰を落としかけた。
「ねえいっそ……ここでもう一回しよ?」
「もー六花ってばがまんできないんだから」
アカネが笑ってけれど自分もユウの腕をぎゅっと抱きしめる。狭い箱の中で二人はもう続きをしたがっていた。
でもカーテン一枚の外は休日の店内だ。陽気なガイドの声がもう一度せかしてくる。
六花が名残おしそうに身を起こしてユウのずり下がったズボンを引き上げてくれる。アカネは緩んだベルトをきゅっと締め直した。
「はいできあがり。……つづきはおうちでね?」
身なりが戻ると二人は左右からユウの腕にぎゅっとしがみつく。とろけた声をそろえた。
「「ねユウ。部屋いこ?」」
返事を待つ気は二人にはないらしい。六花がバッグを引っつかみアカネが手を引いてユウをカーテンの外へ連れ出す。
三人は明るい店内へ出た。まだ疼いているものを持て余したままユウは二人に連れられて本番へと歩き出した。