一途な彼女がどうなるか実験 作:実験
画面の向こうの莉緒は、さっきまでのレース風の下着を既に脱ぎ去り、一糸纏わぬ姿でいた。
風呂場に移動したらしく、さっきまで一緒に身体を洗っていた白色の浴槽と壁が背景として映し出される。
莉緒は浴槽の側面に背を預け、M字開脚の状態で座り込んでいた。股のスジが前面で強烈に存在を主張しており、画面上部では両の乳房が少しだらしなく垂れ下がっていた。
画面は恥ずかしそうな目でこちらを見つめる莉緒の顔までギリギリ収めている。
(本当に、やってる……)
リビングのソファでスマホを握りしめる俺の喉が、ごくりと鳴った。さっきまで俺と笑いながらピザを食べていた彼女が、同じ家の中で、別の男のために肌を晒している。その事実だけで頭が沸騰しそうだった。
莉緒はまだ躊躇う様子だったが、あまり時間をかけてもリビングにいる俺が心配すると思ったのだろう。早速指の腹を股のスジに沿って動かし始めた。
上下にゆっくりと、何度も往復する。そう回数を経ていないにも関わらず、すぐに水音が聞こえ始めた。
『んっ……ふ……あっ……』
指は次第にぐちゅぐちゅと秘部の中へ、より激しく侵入と離脱を繰り返す。
もう片方の手は口元を塞いでおり、快楽に喘ぐ声をリビングにいる俺に聞かせまいと必死に抑えていた。
『ん、はっ……い゛っ……』
声が裏返り、腹筋に力を入れるように莉緒の身体が瞬時緊張し、直後に弛緩する。
口に当てていた手が糸を切られたみたいにしてすとんと落ち、瞳をやや上に剥いただらしない顔が露わになる。莉緒の秘部はまだひくひくと痙攣しており、透明な体液が糸を引いて浴室の床を汚していた。
生配信開始からわずか二分。俺から「秘密」を守るために行った、本気の最速マスターベーションだった。
『こ、これでいい……?』
莉緒はメッセージ経由ではなく、直接声でカメラに向けて問いかける。
顔は赤く紅潮し、目は潤んでいて、息も切れ切れだった。
『蓮……?』
カメラの前の莉緒は小声で言う。思わず俺はメッセージで返そうとするが、このサーバールームでは蓮と莉緒が直接会話しているのだったと思い出す。ここで俺が返事をしてしまえば一巻の終わりだ。俺は荒い息を吐きながら、透明な傍観者として画面を見つめ続けた。
一分経っても蓮からの返信はなかった。流石の蓮も、あまりに早い自慰にびっくりしたことだろう。実際、俺もまだズボンすら脱いでいなかった。もし返信するのが俺だったら大人しくここで身を引いていただろう。
だが迷いに迷った蓮は自分の欲に忠実になると決めたようで、
蓮:『早すぎ! もう一回見せて!』
莉緒の目が怒りに震える。叫びそうになる衝動をこらえて、小声で蓮を圧した。
『どうして!? 誓ったでしょ……!?』
蓮:『「ちゃんと自慰したら」ってな。もうちょっと時間をかけてよ』
蓮:『まだパンツ履いたままだよ笑 せめて一緒にイこう?』
蓮:『あとさ、今度は俺の名前呼びながらやってよ』
その要求に、画面越しの莉緒が息を呑むのが分かった。それを覗き見ている俺の心臓も、ドクンと大きく跳ねる。
莉緒の目元に涙が浮かび、まだメイクしたばかりだっただろうアイラインの化粧が僅かに滲む。
莉緒は明らかに怒っていたが、それをぶちまけることができずにいる。すべては俺のために──莉緒は、蓮に逆らえずにいた。
『お願いだから、ちゃんと見てて……!』
蓮:『りょうかい』
莉緒は何度も舌打ちし、溜息をついたあと、再び指を股に持ってくる。
さっきと同じ上下運動。
だが既に一回イッている以上、再びオルガズムに達するには更に強い快楽が必要だったのだろう、今度はもう一方の手で乳首を摘んだ。
『あっあっ……ん゛っ……れ、蓮っ……』
屈辱に唇を震わせながら、莉緒が別の男の名前を口にする。
指と柔肉の激しい摩擦に加え、コリコリと弄る乳首からの快楽に、莉緒は淫らな叫びを上げる。今回は両手をオナニーに使用しているせいで口元を塞げず、洗面所の方から微かに声が漏れてしまっていた。
俺はたまらず宅配ピザの袋から手拭き用のウェットティッシュを掴み取ると、ソファから立ち上がり、足音を殺して廊下を歩いた。
洗面所のドアの前まで移動し、ほんの少しだけ扉に隙間を作って耳をそばだてる。
『んっんっんっ……れんっ……い゛けッ……おっ』
イけっ、イけっと何度も莉緒は自分の身体を鼓舞する。
手元のスマホ画面に映し出される莉緒の乱れきった姿と、ドアの隙間から直接鼓膜を震わせる「生の喘ぎ声」。
視覚と聴覚から同時に流し込まれる背徳のサラウンドに、俺はたまらずその場でズボンとパンツを下ろし、限界まで膨れ上がった自分の陰茎を激しく扱き始めた。すぐそこに俺がいるとも知らず、莉緒は別の男の名を呼びながらイこうとしている。俺も莉緒の鼓舞に合わせ、一緒にイきたい。
莉緒は十分快楽を得ているようだったが、あまりに前回から間隔が短かったせいか、なかなかオルガズムに到達できないようだった。今度は八分きっかりを要して、
『ほぁっ』
というよがり声でフィニッシュした。莉緒は腰を浮かして弓なりに仰け反る。
『あっ……れ、蓮……ふっ、んひっ……ちゃっ……ちゃんと見てっ……んっ! 見て……った……?』
画面の奥の莉緒は、快楽の余韻に脳を焼かれながらも、壊れかけの理性で何とか問う。痙攣がやまず、力が入らないのか、だらしなく大きく左右に拡げられたままの股からは小さな失禁も止まらない。
すぐに蓮からの返信が出現する。
蓮:『見てたよ! すっげ! ガチでエロかった!笑』
『んっ……そ、そっか。良かった……あっ』
莉緒は外見的にも内面的にもぐちゃぐちゃになったまま、なんとか笑顔らしきものを作る。
俺もしばらく画面に釘付けになっていたが、股間を見下ろすと、いつの間にか用意していたウェットティッシュの中に射精していた。計十分間、二度に及ぶ莉緒のオナニーと生の嬌声に、俺の心と身体は強く高揚し切っていた。
『じゃ、わっ、たし……悠真くんのところに行かなくちゃ……』
絶え絶えの息のままルームから退室しようとする莉緒に、
蓮:『待って』
『ふぇ? ……まだ何か……?』
とろんとした顔で問う莉緒に、
蓮:『もっかいできる?笑』
『はっ……!?』
莉緒は意図せず大声で訊き返し、びっくりして口を押さえる。洗面所のドア前に立つ俺の耳にも、今の声ははっきりと届いた。
蓮:『おい! 大声出したら悠真にバレるぞ!』
『一緒にイッたんじゃないの……?』
蓮:『イッたんだけどさ……』
と妙に照れくさそうな文体で返す蓮。
蓮:『実はまだビンビンなんだ……見る?』
というメッセージと共に、再び屹立した蓮のモノの写真が投下される。
性欲モンスターだ。こいつは。
『もう無理! これ以上はできないって』
蓮:『いけるいける笑 教室のときだって何度もイッてたじゃん。女のカラダって、男と違って何度でもイけるってネットで見たぜ』
そう返す蓮の言葉には、悪意のような感情がない。
蓮にとって莉緒は、本質的には商品でしかない。
それゆえに蓮はサディズムではなく、素朴で純粋な性欲からこんなオーダーを出しているはずだった。
『悠真が待っているの。お願いだから、もういいでしょ?』
そう懇願する莉緒は、酷く痛ましかった。だが、そんな莉緒に対する蓮の返答は痛烈で、本質的だった。
蓮:『悠真だけじゃ、莉緒は満足できないだろ』
『え……?』
涙で潤んだ莉緒の瞳が、小さく引き絞られる。
蓮:『そんなにエロくて感度がイかれたカラダを持っているのに、それを扱ってくれるのが悠真なんじゃ、宝の持ち腐れだってことだよ』
蓮:『莉緒には俺のような理解者が必要なんだよ。激しく限界までシゴいてくれるような』
蓮:『莉緒も同じこと、思っているだろ? だから教室でも強くは抵抗しなかった』
配信ルームに流れた蓮のこのメッセージに、俺は不思議と惨めさや怒りは感じなかった。
そもそも俺が「実験」と称し、一途な莉緒に対して行っていることは、「彼女の奥底にある、俺すら知らない淫らな部分を他人に暴かせたい」という欲求から来ているものである。
あえて蓮に気づかされるまでもなく、莉緒が俺にはもったいないくらいの存在であることなど分かっていた。蓮──確かに褒められるべき人格者ではないが、少なくとも肉体的には莉緒を満足させられるだけの素質があり、彼自身が言うところの「理解者」なのだと俺は思っている。
『蓮、やっぱり分かってない』
という莉緒の声が、画面の奥から響いた。驚いて配信を見ると、顔を上げた莉緒が射貫くような目線でこちらを見ていた。
『私があなたの言いなりになってしまうのは、私が弱いから……悠真に落ち度があるわけじゃない。悠真は本当に、私にはもったいないくらい一途な彼氏なの。悠真は私を裏切らない。だから──もう、これで終わりにして』
そう言って、莉緒は配信を終了しようと画面に手を伸ばした。
だが、莉緒の身体が動いた拍子に、肘が当たって浴室の低い棚に掛けられていたタオルがずれ落ち、その下に隠すように置かれていた「ある物」がカメラの端に映り込んだ。
薄いピンク色をした、細身で小ぶりの電動バイブレータ。
俺には見覚えがあった。莉緒が「悠真くんとのお泊まりで使ってみたい」と言って、二人でこっそり買ったおもちゃだった。入浴のついでに洗い、そのまま今夜俺と使うつもりで持ち込んでいたのだろう。
それを見逃す蓮ではない。
蓮:『おい、後ろに置いてあるピンクのやつ何?』
『え……』
莉緒がビクッと肩を跳ねさせ、慌てて手でバイブを隠そうとする。だが遅かった。
蓮:『それ、彼氏と使うつもりだったんだろ。いいじゃん、使えよ。それでお前のエロい中身、もっと見せてよ』
『やだっ……! 絶対に嫌だよっ』
蓮:『やらないなら、今から彼氏にお前が俺と何度もセックスしてイキまくって中出しされたこと全部喋るけど?』
決定的な言葉だった。
二人の密室でのやり取りのはずが、壁一枚隔てたすぐそこにいる俺にもすべて筒抜けになっている。その圧倒的な情報格差が、俺の脳を焼き切るほどの興奮をもたらしていた。
莉緒の顔から血の気が引き、絶望に染まっていく。
大好きな彼氏のために用意した初めてのおもちゃを、弱みを握られた男の指示で、自分の身体にねじ込まなければならない。その屈辱はいかほどだろうか。
『……っ、ごめんなさい……悠真くん、ごめんなさい……っ』
莉緒はボロボロと涙をこぼしながら、震える手でピンクのバイブを手に取った。
そしてM字開脚の姿勢に戻ると、ぐちゅり、と嫌な水音を立てて、バイブの先端を自らの秘部に浅く挿入した。
だが、蓮はすぐには動かさせない。
蓮:『なあ、そのバイブと悠真の、どっちが大きい?』
『っ……ゆ、悠真くんのに、決まってるでしょ……っ』
蓮:『そっか。じゃあさ、悠真と俺の、どっちが大きい?』
意地の悪い質問に、莉緒が息を詰まらせる。脳裏にあの凶悪な質量がよぎったのだろう、一瞬言葉に詰まりながらも、莉緒は涙目でカメラを睨みつけた。
『……悠真くんよ。悠真くんの方が、ずっと……っ』
蓮:『ふーん笑 まあいいや。じゃあ奥まで入れて、スイッチ入れろよ』
冷めたような蓮の指示に、莉緒は泣きながら首を横に振り、だが逆らうことはできず、バイブを根元まで押し込んでスイッチを入れた。
『ん゛────!』
暴力的な振動が最奥を打ち据え、直前までの莉緒の威勢ごと、理性を剥がし飛ばしていく。
『ああっ……! イッ、イってるっ、イってます、ん゛っ……』
無意識のうちに敬語になって絶頂を報告する莉緒の姿に、俺の背筋にゾクゾクと悪寒にも似た快感が走る。
莉緒のM字開脚の姿勢は、今や尾骶骨を接地点とするV字になっており、秘部に格納されたバイブの隙間から、限界を超えた体液がだらしなく溢れ出ていた。
激しい絶頂の波に飲まれ、バイブを握る莉緒の手が一旦止まる。だが、蓮は容赦しない。
蓮:『手、止まってんぞ。もう一回動かせよ』
『ひっ、あ、あぁっ……!』
言われるがままに、莉緒が再びバイブを抜き差しし始める。そこへ蓮が追い討ちをかけるようにメッセージを投げつけた。
蓮:『なあ、そのバイブと、悠真と、俺の……どれが一番気持ちいい?』
残酷な問いかけだった。莉緒は涙と汗でぐちゃぐちゃになった顔を必死に横に振り、大好きな彼氏の名前を答えようとして──
『ゆ、悠真くんのが、いちば……あっあっ……ゆ゛っ、ゆうまっ、イぐっ……!』
もはや人語なのかすら怪しくなった莉緒の嬌声から漏れた自分の名前に、スマホを握る俺の手に限界まで力がこもった。俺がすぐ外にいるとも知らず、俺が一番だと答えようとしながら、別の男の指示で理性を飛ばしていく。
四度目、五度目、六度目と莉緒の身体は多発的に絶頂へと至る。
蓮:『おい莉緒! ガチでエロいけど、ヤバくね?』
という蓮のメッセージを読む余裕は、今の莉緒には全くないだろう。
『ごめっ、なさいっ! ごめっ、なさいっ! ゆるして! あっ……』
莉緒の声が謝罪と懇願に切り替わる。俺のために、莉緒は人間でなくなりつつある。
幾度目かの絶頂。股から頭頂へ向けて一本の直線が穿たれたかのように、莉緒の身体がピンと張る。そして止めどない潮が噴出し、対向側のドアを叩く音が響いた。
もう充分と判断した莉緒は手でバイブを乱暴に自分の秘部から引き抜く。
『ん゛あ────!?』
バイブを取り出したにも関わらず、莉緒の腹部が痙攣し、快感に首が仰け反る。
激しすぎるオナニーが、莉緒の性感帯で許容できる快楽の閾値を超えてしまったのだろう。オルガズムがずっと続いていた。
『あえ!? んっ……んっ……と、とまれぇ、ふっ……んっ……い──』
更に上乗せされる絶頂が、莉緒の脳に過負荷をかけた。泣きながらイキ狂う莉緒の顔は、人間としての尊厳すらも失った、凄まじい無様っぷりだった。
そんな莉緒の健気な狂態に合わせようと、俺もまた再び硬さを取り戻した陰茎を激しく擦り上げていた。しかし、高まりすぎた興奮は俺をさらなる暴走へと駆り立てる。
俺は服を整えると、洗面所のドアの隙間から声を投げかけた。
「──莉緒?」
配信画面を見る。莉緒は相変わらずイキ狂っていて、俺の声が届いていないようだった。
俺は洗面所のドアを開けて一歩中へと踏み込み、浴室の扉のすぐ前に立った。そして今度は声量を上げて名前を呼ぶ。
「莉緒?」
その瞬間、配信画面の中の莉緒はびくんと肩を震わせて、浴室の扉に視線を向けた。目は限界まで見開き、恐怖が表情にあらわれている。
「──大丈夫?」
俺の声は莉緒のスマホを通じて蓮にも聞こえたのだろう。メッセージが更新される。
蓮:『悠真の声がしなかったか?』
蓮:『まずいって。浴室の鍵をかけて』
だがそのメッセージは莉緒の目には留まらない。
俺は手元のスマホの配信画面を見る。そこに映るのはこの扉の一枚先で、恐怖に染まった瞳で顔を覆っている莉緒の姿だ。
「莉緒、開けるよ」
俺はドアノブに手をかけ、ゆっくりと下げた。
今この扉を開け放ち、カメラの前で股を晒してイキ狂う莉緒のあられもない姿を直視したいという猛烈な欲望と、ここで開けてしまえばこれまでの「実験」も二人の関係もすべてが決定的に破綻してしまうという理性が、俺の中で激しくせめぎ合う。
結局、俺は扉を開け切ることはせず、ガチャリとノブを下げる音だけを響かせて手を離した。今の莉緒を絶望の淵に叩き落とすには、その「開けられるかも知れない」という恐怖の一撃だけで十分だった。
案の定、ドアノブが下がったその直後、配信画面の奥の莉緒は、限界を超えた快感と恐怖に瞳をトロンと上擦らせ、ふっと軽く意識を飛ばしてしまっていた。
俺は静かに洗面所から退き、リビングへと引き返した。
数分後、画面の中の莉緒がハッと我に返り、まだ快感にビクビクと痙攣する身体をなんとか起こした。
サーバールームには、まだ蓮が退室せずに残っていた。意識を飛ばした莉緒のだらしなく開かれたままの股間と、あられもない姿を画面越しに眺めながら、自分のモノを扱き続けていたのだろう。
莉緒は震える手で這うようにしてスマホへ手を伸ばし、配信を止めようとした。
まさにその瞬間、画面に蓮からのメッセージが浮かび上がる。
蓮:『なあ、本当は悠真と俺の、どっちが欲しい?』
莉緒の指がピタリと止まった。
カメラの画角から逃れるように、莉緒の身体がずるりと横へ崩れ落ちる。画面には浴室の白い壁と、莉緒の震える肩先だけが映り込んでいた。
冷たいタイルの上で、莉緒は荒い息を吐いていた。
悠真にも、奇跡的にバレていない。今すぐ配信を切って、悠真の元へ戻らなければならない。
なのに、蓮の最後の言葉と、あの異常な太さの記憶が、限界まで達したはずの身体の奥底で、まだドクドクと熱い疼きを上げ続けていた。
悠真に抱かれた時には決して感じることのない、脳が焼き切れるような性欲の蓄積。
莉緒は諦めたように、震える右手を自らの秘部へと這わせた。
『……っ、れん……っ、あっ……』
蕩けきった思考の中で、莉緒の唇から、求めてはいけない男の名前が甘く漏れた。
画面には映っていなくても、スマホのマイクが拾う粘り気のある水音と、蓮を呼ぶ吐息。
リビングでそれを聞いていた俺の胸に、強烈な興奮とともに、焼け付くような嫉妬と焦燥が渦巻いた。これ以上、この姿を蓮に見せ続けるわけにはいかない。
俺はルームマスターの権限を使い、手元の操作で配信を強制的に終了させ、同時にサーバー上のアーカイブデータも完全に抹消した。もちろん、俺のスマホ単体での画面録画データはしっかり保存してある。
(ごめんね……悠真くん……ごめんなさい。私、満足していないわけじゃないのに……っ)
配信が切られていることにも気づかず、涙で頬を濡らしながらも、莉緒は夢中で自らの指で、先ほどの「暴力的な太さ」を思い出すように激しく秘部を抉り、果てた。
その後、シャワーで汗と体液を洗い流し、浴室を出てタオルで身体を拭いていた時のことだ。
洗面所の台に置いたスマホの画面が、チカチカと点滅した。
蓮:『さっきのオナニー、マジで最高だったわ笑』
蓮:『最後、俺の名前呼んでたろ? 俺のモノ思い出しながら、もう一回イッたんじゃねーの?』
それは、蓮からの追撃のDMだった。
リビングに戻った俺が、配信終了直後に蓮から届いた興奮冷めやらぬDMを抜け目なく『偽蓮』として中継し、送りつけたものだとは、莉緒は知る由もない。
画面を見た瞬間、莉緒は金縛りにあったように立ち竦んだ。すべて見透かされ、筒抜けになっていたという事実が、彼女の羞恥と絶望を極限まで煽り立てる。
(なんで……思い出すのよ……!)
本人の意思とは無関係に、蓮の言葉だけで高鳴ってしまう鼓動。再び下腹部が熱を帯びる感覚に、莉緒は強烈な自己嫌悪と苛立ちを覚えた。
あの男は、ただのクラスメイトだ。大好きな悠真くんとは違う、愛なんて欠片もない、ただ身体を貪り合うだけの最低な存在。
なのに、どうして彼に乱されてしまうのか。
(悠真くんのところに行かなきゃ……)
莉緒は逃げるように服を着た。彼氏の顔を見れば、この汚い欲求も、蓮の影も、すべて消え去ってくれるはずだ。そう信じ込むようにして。
◆
それから三十分後。
俺がスマホで動画サイトを見ているふりをしていると、莉緒がリビングに戻ってきた。
「莉緒、遅かったね」
「ごめぇん、悠真くん。ちょっと、のぼせちゃって……」
そう言って笑う莉緒の顔は、苦しい嘘だとはっきり分かるほど不自然だった。
だが、度重なる絶頂によって極限まで血流が高まり、うっすらと汗ばんだその肌と、とろんと潤んだ瞳は、今まで見たどんな彼女よりも蠱惑的で、強烈な色気を放っていた。
「大丈夫? ほら、水」
俺はサイドテーブルに置いてあったペットボトルの水を手渡した。
「あ……ありがとう、悠真くん」
水を一口飲み、少し落ち着いた様子の莉緒が、歯を磨いて自室のベッドに腰掛ける俺の隣に座る。
「ねぇ、悠真くん……」
「ん?」
そっと肩に寄りかかってきた莉緒が、上目遣いで俺を見つめた。
「……えっち、しよ?」
微かに震える声。限界まで自慰を強いられ、身体の芯がまだ疼いているはずなのに、彼女はそれでも俺を求めてきた。
直前に送りつけた蓮からの追撃DMで乱された心を、大好きな彼氏に抱かれることで落ち着かせたい。蓮の影を完全に消し去りたい。その一心で、彼女は必死に「悠真だけを愛する普通の彼女」を演じようとしているのだ。
「……いいの? のぼせちゃったんでしょ?」
「ううん。悠真くんと、したいから……」
莉緒は蠱惑的な、だけどひどく困ったような笑顔を作り、俺の首に腕を絡ませてくる。
「今日は、私がしてあげるから」
そう言って、莉緒は俺をベッドに仰向けに寝かせると、自ら下着を脱ぎ捨てて俺の上に跨った。
さっき一度抜いたばかりだというのに、目の前の莉緒の淫靡な姿と先ほどの狂態の記憶で、俺のモノは既に限界まで怒張している。莉緒はゆっくりと身をかがめ、俺の頬や首筋に何度もキスを落としてきた。
俺も彼女の細い腰や、豊かな胸を指先で優しく撫でる。
「……んっ。悠真くん、すき……」
「俺も好きだよ」
「悠真くんの、さりげない気遣いができるところ……さっきみたいに、お水くれたりとか……すき」
「急にどうしたの?」
「ううん、言いたくなったの……。悠真くんの、落ち着く声も好き……お顔も、とくに横顔がすごくかっこよくて……好き」
ちゅっ、と俺の頬に唇を押し当てながら、莉緒は熱に浮かされたように愛情を囁き続ける。
さらに彼女は、自分の胸を揉む俺の手を取り、その指先にそっと口付けた。
「悠真くんの、この長くて綺麗な指も……全部、ぜんぶ大好き……」
(そうだ……私は悠真くんがこんなに好き。誰よりも愛してる。だから、さっきのあれは全部嘘。私の心は悠真くんだけのもの)
莉緒は、自分がどれだけ悠真を好きかを確認するだけでなく、「自分はこんなにも悠真を愛しているのだ」と自分自身に必死に信じ込ませようとしていた。
直前まで別の男の指示で理性を失い、その名前を呼びながら絶頂を迎えていた自分自身への強烈な嫌悪感。それを塗り潰すための、祈りにも似た自己暗示だった。
(俺のことがこんなに大好きなのに。俺の顔も、声も、気遣いも、全部こんなに愛しているのに……。お前はさっき、俺以外の男の言葉で股を開いて発情してたんだな)
彼女の口から溢れ出る純愛の言葉が強ければ強いほど、その裏にある裏切りの事実が強烈なコントラストとなって、俺の奥底にある歪んだ興奮をさらに煽り立てた。
「ああ、悠真くん……」
「莉緒、凄くいいよ……」
「あっ、ああっ……いい……っ、あっ、ああっ♡」
(……悠真くんのが、奥まで入ってくる。嬉しい……本当に、嬉しい)
莉緒は俺の胸に手をつきながら、必死に心の中で自分に言い聞かせていた。
大好きな人に求められ、繋がっている。ただそれだけで、彼女は多幸感に包まれることができるはずだった。
──だが。
(……ちがう。悠真くんのも大きくて、奥まで届いて凄く気持ちいいのに……)
悠真の上で腰を揺らす莉緒の身体が、微かに強張る。
悠真のサイズは決して小さくない。むしろ普通以上の立派なモノだ。
だが、蓮の規格外の太さと、内臓を削るような段差を記憶して拡がりきっていた莉緒の膣内は、そのサイズをすんなりと受け入れてしまい、無意識に横の暴力的な質量が足りていないと感じてしまっていた。
(なんで……)
莉緒は、物足りなさを必死に誤魔化すように、そして自分自身の汚れた感覚を打ち消すように、自ら激しく腰を打ち付け始めた。
「んっ……ふ……ぁっ……」
(もっと……もっと激しくしなきゃ……悠真くんが一番だって、悠真くんだけで満足できるって、信じたいのに……っ!)
莉緒は腰のグラインドを深め、尻を俺の股間に強く押し付けてくる。
自分を気遣って必死に奉仕しようとする彼女の健気さと、その奥で別の男のサイズを探してしまっているという残酷な事実。
たまらなくなって、俺は上に跨る莉緒の腰を掴むと、一気に反転させて彼女をシーツに押し付けた。
「きゃっ……悠真く……っ、ん゛っ!」
下からの突き上げではなく、上から体重を乗せた容赦のないピストンを開始する。
別の男の指示でドロドロに発情させられたこの身体を、俺自身のモノで完全に上書きしてやるかのように。
激しい打撃音と水音が、夜の部屋に響き渡る。
「あっ、ああっ! 悠真くんっ、すごいっ……あああっ!」
「莉緒、すげぇ気持ちいい。いくよ……っ!」
俺は莉緒の最奥に、熱いものをたっぷりと吐き出した。
莉緒は限界まで達した身体をビクビクと痙攣させ、とろけた顔で俺の胸にすがりついてくる。
だが、俺の興奮はまだまったく収まっていなかった。
「……ねぇ、莉緒」
「ふぇ……? 悠真、くん……?」
息も絶え絶えの莉緒の耳元で、俺はいつもの優しい彼氏の顔を崩さずに囁いた。
「俺のも、一番気持ちいいだろ?」
「っ……うんっ! 悠真くんのが、いちばん……」
「良かった」
「え……っ、あ……♡」
俺が再び硬さを取り戻したモノで奥を突き上げると、莉緒は悲鳴のような甘い声を上げた。
「愛してるよ、莉緒」
「あ、ああっ……! わたしもだよ悠真、くんっ……♡」
「世界で一番大切だよ」
「〜〜〜〜〜うん!」
さっき莉緒がくれた愛の言葉にお返しをするように、俺は彼女の耳元に甘い愛の言葉を何度も囁きながら、激しく腰を打ち据え続けた。
大好きな彼氏に真っ直ぐな愛を囁かれ、何度も激しく抱かれている。
悠真はこんなにも自分を想ってくれているし、自分が悠真を心から愛しているという気持ちにも、嘘なんて微塵もない。
……それなのに、何度も果ててクタクタになっていく中で、どうしても脳裏に『あの男のモノ』がちらついてしまう。
何度も直視させられ、奥深くまで受け入れさせられた暴力的な大きさが、大好きな彼氏に愛を囁かれながら抱かれている最中だというのに、無意識にフラッシュバックしてくるのだ。
(……れん……)
熱に浮かされた脳裏で、無意識にその名前を呼んでしまい、莉緒はハッと息を呑んだ。
(やだ……ちがう、どうして?)
悠真が優しく愛を囁いてくれればくれるほど、頭の中で別の男の名前を呼び、その凶悪な形を思い浮かべてしまっている自分自身の裏切りが、莉緒の心を容赦なくえぐり取っていく。
愛する悠真で頭をいっぱいにしたいのに、別のオスの影がこびりついて離れない。
その事実が、莉緒はどうしようもなく嫌で、汚らわしくて、強烈な絶望と罪悪感に苛まれ続ける。
心は悠真を愛し抜いているのに、脳と身体は別のオスを記憶してしまっている。
その矛盾に涙を流し、絶望しながらすがりついてくる。
これ以上のカタルシスが、果たしてこの世に存在するだろうか。
俺は、愛おしくて堪らない彼女の柔らかな身体を、夜が明けるまで何度も、何度も抱き潰した。