異宗派のクソ女に村を焼かれ監禁セックスをさせられている俺の、歪んだ恋と復讐の物語 作:品川カタン
小さな窓を見ると外側に霜がついていた。そこで、今日は雪が降っているのだろうと思った。
この地方では、一気に冷え込んだ時に必ず雪が降る。そうして皆、これから本格的に寒くなるなと言い合ってタンスの奥からもっと厚い毛布を取り出したりするのだ。
ステンドグラスで飾られている窓は、外の景色を眺められるほど透明度が高くない。だが、水滴や水の乾いた跡が見える程度には薄いようだ。
(去年の俺の誕生日、そういえば雨が降っていたな)
十九歳の誕生日。俺はあの時、色々な人から祝われた。
家に帰ったら父さんが用意したバースデーケーキと、友達が四人。一人の子は、俺に花束と一緒に手紙を渡してくれたっけ。
『お、おめでとう……クロードくん……! 次なる司祭となる偉大な貴方に、大きな祝福を……!』
『ありがとう、██。全然俺は偉大って人間じゃ……』
『い、いいや、偉大です!! 貴方のような素晴らしい模範生、私も見習わなければなりません……!!』
学舎では少し恥ずかしがり屋だったあの子が、そうやって饒舌になったのを見て、ちょっと驚いたのを覚えている。貰った手紙はなかなかの文章量で、内容も圧が強い感じだった。要約すると「貴方は将来、絶対に良い司祭になるでしょう」みたいなことが書いてあった気がする。
(まあ、みんな死んだけどな)
思い出が蘇り、一瞬だけ切ない気持ちにもなったが、同時に虚しくもなった。
あれほどに悲劇的な最期を迎えた者たちを差し置いて、俺は一人の女……それも扇動者と共に時間を過ごしている。
焼かれた村のみんなを思い出し彼女を憎み、背中の傷に触れ痛みを共有し、そして暗い世界へと手を引っ張られていく。俺はその不幸を強く嘆きながらも、孤独ではない自分自身に安心した。
俺は、今の状況を幸福だと言葉にして言えるだろうか。時々自分自身を包む憎悪の炎が、彼女の首を切ってしまえと燃え上がることがある。だが、やはり俺は孤独ではないと思えた。憎悪と共存する安心が、確かにそこにあった。そして、これだけ穢れた行為を重ねようとも、まだ人の死という現象を悔やむことができる自分自身に、特に必要性のない希望を見い出せていた。
俺は中途半端な人間だ。
その明るさを手放せないのは、俺が人間として生きるための道徳を忘れることを怖がっているからだろうか。それとも、思い出が愛しいからだろうか。
「…………」
どちらなのかは、俺にも分からない。いや、もしかしたら、どちらでもないのかもしれない。
だが──それでも、この残虐な行為に対して復讐をしなければならないと思う気持ちがあることは、事実だった。そして、彼女に恋をしているのもまた事実だった。
そんなことは、両立できないと思うだろうか? だが、俺にとってはどちらの心も真実だった。俺は、間違っている人間だからだ。
(……聖魔法を、使えるようになったら──)
そして、今日も階段を下る音が聞こえる。
今日は何をするんだろうかとか、どんな話をするんだろうかと考えることが、特に特別ではない日常となった。最初の頃はブーツで床を踏みしめる音が響く度に緊張していたが、最近はそんなこともない。
(ま、今日もいつも通りやって終わりか)
そう思っていた。
ギィ、と音を立てて扉がゆっくりと開く。その先で、フロローはニコニコ笑っていた。
「……?」
笑っているのは別にいつもの事だ。だが違和感がある。前に、頬を怪我してここに来ていた時とは、また別の違和感が。
表情は笑っているのに、奥底の感情が見えなくて不気味だ。表情にほとんど変化がなく、ただひたすらニコニコしながら閉じた扉の前で俺をじっと見ている。考え事をしている、という表現もあまり当てはまらないように見える。どちらかといえば、何かを隠すために表面へラベルを貼り付け、中身を見えなくしているような、そんな違和感があった。
「フ、フロロー。お疲れ様──」
「ねーねー、ミザヤの情報収集した時に見つけたんだけどこれってどういうやつ〜?」
俺の言葉を遮るようにフロローが急に寄ってきて、一枚の紙を見せてきた。情報収集ってなんだ、と思いながらも顔を上げると、なんとも奇妙な偶然だろうか──俺が昔貰った手紙がそこにあった。
「……あ」
あの子から貰った手紙だ。
俺の机の中に入れておいたはずだが、パスラのやつらに盗まれたのだろうか。そもそもこいつら、村を燃やすだけじゃなくて強盗までやっていたのかなんて考えて黙っていると、フロローがさらにぐいと前に紙を突き出してきた。
「あ、じゃないんだよね〜〜あ、じゃ」
フロローが俺に紙を押し付けた後に、少し屈んで上目遣いで見つめてくる。
「あ、別に怒ってないよ〜〜? ただどういうやつか聞いてるだけだもん!」
大きな金色の瞳が、俺のことをじっと覗き込んできた。
俺は状況を上手く理解することができなかった。
手紙はまあ、正直もう燃えていると思ったし、なんなら今の今まで存在を忘れていた。思い出すきっかけといえば、誕生日のことを振り返った時くらいで、別に特別な思いがあった訳でもない。それを今更持ち出されて「これって何?」と聞かれても、特に答えられることなんて限られている。
フロローがこの手紙について、問い詰めるような口調で聞いてきたのが一番不思議だった。
「いや……昔普通に貰った手紙だよ。同級生の子で──」
「普通の割には結構色々書いてるんだね〜! なんか君のファンって感じ! あはは! さっすがミザヤ司祭の息子だね〜こんな熱烈アプローチ受けて!」
怒っていないとは言っていたが、明らかに不機嫌だ。
「あーただでさえイライラしてたのになー!!」
フロローは俺のことを片手で引っ張り、乱暴にベッドへ放り投げた。こうやって苛立ちをぶつけられることは前にもあったが、今回は様子が少しおかしい。戸惑いで言葉が出ずにいると、フロローが俺のズボンに手をかけて、有無を言わさずに下ろしてくる。
「ちょっ……!!」
「ま〜〜ムカつくけど
乱暴に放り投げられ、ズボンを脱がされたままベッドの上で呆然としていると、フロローが持っていた小さなバッグからとあるものを取り出した。
「これ、すっごい効果的って聞いたんだよね〜! 取り調べにぴったりかも! あははっ!」
取り調べ、なんて大袈裟な言葉を使いながら、ローションと黒いストッキングを見せてきた。
「な、なんだそれ」
俺が尋ねている間にも、フロローは質問を無視して手の中にローションをたっぷりと垂らして黒いストッキングにそれを染み込ませていく。お前が普段使っているものならそんなに汚していいのかとか、そんな陳腐な心配が口をついて出そうになったが──なんと、それよりも先にフロローがにっこりと笑いながらまだ勃起していない俺の物にローションで濡れたストッキングを被せてきた。
「んっ!?!?」
「はーい♡♡ じゃあ今から質問することぜーんぶ答えてねー♡♡」
──フロローが苛立ちを滲ませながらも楽しそうに話した瞬間、ヌルヌルになったストッキングを左右に動かし始め、俺の亀頭を刺激してきた。
「うああっ!?」
「ほら暴れちゃダメ!♡♡ しっかり座ってて!♡♡ 聞きたいことあるんだからさ」
「うあっ、待っ、待って!!! 待ってくれ!! いったん、一旦とめて!!」
容赦なく左右に動かされ続け、亀頭へびりびりとした快楽の刺激が走る。その瞬間に、俺の物が勃起してしっかりと立ってしまい、硬くなった亀頭へさらにストッキングを擦り付けられてしまった。
ローターというもので亀頭を執拗に責められることは確かにあったが、今回は桁違いの気持ち良さが俺の全身に広がった。本当に、誇張抜きで脳を刺すみたいな快感だ。
「ダメって言ってんでしょー!♡♡ ちゃんと質問答えますって言わないともーーーっと続けるよ!♡♡ 一時間くらいやっちゃおっかな〜!♡♡」
「うあっ、答える、答える!! 答えるからっ!! うあ、うああっ!!」
刺激で我慢汁が溢れてローションと混ざる。無機質な製品の匂いと男の体液の匂いが鼻について、恥ずかしさで死にそうだった。フロローはそれでも絶対に手を止めず、ぐちゅぐちゅと音を鳴らしながら俺に問いかけてきた。
「あの手紙の子ってどういう関係だったの?♡♡」
「どうっ、同級生!! 普通の同級生です!!」
「え〜〜でもあんな手紙もらってたんじゃ普通の同級生に見えないよ〜〜! クロードくん、もしかして本当は好きな子いるのに私のこと好きとか嘘ついちゃってるのかな〜って思っちゃった……」
「ちがう、ちがう!! 本当に!! 誕生日の時に、手紙、もらっ、貰っただけで!! あんまり喋ったこと、うあっ、なかったから!!」
常に電気が走っているみたいな刺激が来て時々頭が真っ白になった。フロローに竿を扱かれた時はすぐイキそうになるのに、今回はあまりにも慣れない刺激の強さに逆にイクことができない。それなのに、漏れそうな感覚がダイレクトに尿道へと与えられている。
「そうなんだー♡♡ どんな子だったの?♡♡ 私知りたい♡♡」
「あんまりっ!! あんまり喋らない子だった!! だからわからないっ!! 本当にわからないってば!!」
柔らかいストッキングが左右に撫でるように動いているだけなのに、絶叫のような喘ぎ声が出て俺は悶え狂っていた。腰が浮いてガクガクと震えている。あまりにも感覚が俺の勃起したものの先っぽに集中しているせいで足の先の感覚がなくなってきて、ただひたすらに快楽を一身に受け続ける羽目になった。思考の回路が焼き切れるような感覚がする。俺は、自分がどんな言葉を発しているのかさえ、だんだんわからなくなってきた。
「ふ〜〜ん、じゃあさじゃあさ! ぶっちゃけ聞いちゃうけどその子のこと好きだった?♡♡」
「すきじゃないっ!! 全然好きじゃない!! どうでもよかったっ!!」
「ふ〜〜ん、じゃあ私は? 私のこと好きって言ってたのは嘘じゃない〜〜?♡♡」
「うっうそじゃない!! 好きだ!! 本当に、本当に好きだから!! あい、愛してる!! うあっ!! で、出るっ!! 出ちゃうっ!!」
「きゃ〜〜そこまで言われるなんて照れちゃう!♡♡ 私の偉いワンちゃんは嘘つきじゃなかったね〜〜♡♡」
フロローが顔を近づけてくる。唇を重ねる直前、ぼそりと呟いた言葉を──俺は、聞き逃さなかった。聞き逃すことが、できなかった。
「これで君が最初っからパスラ派だったら、どうでもいい結婚とかする必要なくなったのになぁ」
結婚。
どうでもいい結婚?
「何────」
与えられる快感で頭が全く働かない中、そのことについて尋ねようとした途端、フロローがキスをして俺の口を塞いできた。柔らかい舌が俺の口の中へねじ込まれてきて、にゅる、にゅるとお互いの舌が絡み合っていく。その甘美な感触が本当に俺の頭をおかしくさせていたのか、奇妙な浮遊感を感じてまるで宙をふわふわと漂っているような不安定さがあった。
「でるっ、でるっ、もれるっ、でるっ!!」
「らひていいよ〜〜♡♡ 頑張ったからとくべつ♡♡」
舌を絡められながら返事をされて、俺はその拷問みたいな快楽の末に絶頂した。びゅる、びゅるるると精液と潮が混ざったみたいなものがベッドの向こうまで飛んでいた。
全身に力が入りすぎて、腹筋が痙攣している。死にかけの虫のようにぴくぴくと動いている自分の身体を見て、「もうこんなことをされるなんてごめんだ」という思いと同時に、「自分の意思もなくこんなに好き放題されて気持ち良くなれるなんて、少し良いかもしれない」という気持ちまで湧いてきた。だけど、それは男としてのプライドを捨てているんじゃないかと思い、首を振ってなかったことにした。
「は〜〜ストレス発散できて楽しかった〜〜♡♡ クロードワンちゃん、ありがとうね〜〜♡♡」
思わずベッドに倒れ込んだ俺を見て、フロローがニヤニヤしながら頭を撫でてきた。
いつも通りだ。
いつも通りの笑顔で、いつも通りの話し方。多分、ストレス発散ができたというのも事実だろう。
だけどやはり、俺は見逃せないことがあった。
「…………結婚、するのか?」
聞いた瞬間だった。
フロローは撫でている手をピタッと止めて、その表情も一緒に強張った。
笑顔のまま、彼女は少しの間硬直していた。ほんの数秒の沈黙が、まるで数時間も続いているように感じられた。そして、その末に「そうだよ〜」と、なんてこともないように軽く答えてきて、濡れたストッキングをゴミ箱の中に放り込んだ。
「…………」
「あ、でも君については安心して〜。私だって執行係の人間だし、みんなに命令すれば別に悪いようにはならないと思うよ〜? お父様も、ミザヤ司祭の息子を監禁しておけば見せしめにできるって言ってるし……生活は心配しなくても──」
「嫌なら、断ったら?」
また、沈黙が走った。
フロローの表情を見た。
彼女は、目を細めてどこか遠くを見つめていた。遠くといっても、その場所は定かではないだろう。ただ、本当に本当に遠い果ての一点を見つめているように感じた。その果てには、自分ごときではどうやっても辿り着けはしないだろうとでも言うように。いや、辿り着くという考えすらもないように。
「いつなんだ?」
思わず、尋ねた。
「来月の頭……二週間後は一月一日だよ。いっちば〜ん偉いパスラの信者の男と結婚するんだよねー」
「……信者と結婚するのを断れないんだな。指導する立場なのに」
フロローが小さく吹き出した。
「あっはっはっ!! ……ミザヤ司祭の息子なのに、そんなこと言っちゃうんだ!」
「だって──」
「ローロタルの教えでは、父になる人が一番強いでしょ」
その低い声に込められた圧力に、俺は何も言えなくなってしまった。
そして、俺にはわかってしまった。
その声に滲み出ているのは、確かに……諦観だった。
「………………」
「お父様が一番偉い。私はただの娘、指導する立場だったとしても──結婚したら、夫がいちばん偉くなるんだからさ。あんまりこれ以上変なこと言って、私のこと困らせないでよ〜」
フロローが歩いていく。振り向かず、背中を見せたまま扉から出ようとする。
「じゃ、またね〜〜」
バタン、と扉が閉まる音が聞こえた。
俺は、寝転がったまま……ただ、天井を見ていた。
(結婚、フロローが、結婚)
正直なことを言うとだ。
俺はあの時、フロローが浮かべた諦めの表情を見て、本当に美しいと思ってしまった。父からの支配に慣れてしまい、従うことしかできない人生。孤独で、誰にも理解をされなくて、フロロー自身ではない〝他者〟が、彼女を定義していく。その呼び名は、様々だろう。「パスラ司祭の娘」「執行係様」「信心深く名誉ある信者」…………。
「はっ」
笑いが出た。
「ははっ、ははっ、はははははっ!!」
そうか、
一月一日。俺の誕生日まで、もうすぐだったのか。
「来月頭、か……」
ここまでに色々なことがありすぎて、最近は日付を数えるのを忘れていた。それでも、俺にだけ聞こえる聖なる魔法の合図が、もうすぐだもうすぐだと俺の体の底から語りかけてくるのを感じていた。
そして、それが二週間後に迫っていることを、今になってはっきりと理解した。
(俺の誕生日。俺が聖魔法を使えるようになる日に、フロローが結婚する)
拳を握った。
(そうか、じゃあ単純だな)
そして、目を瞑った。
(復讐は……思ったよりも簡単に進められそうなんだな)
もしも本当に神がいるならば、この時ばかりはお礼でも言っておこうと思った。俺に素晴らしいチャンスとタイミングを、与えてくれたのだから。
まあ、それも結局は──ただの習慣として消費され、本質的な祈りにはならないのだろうが。
(まあ、良いか。神なんてどうせいないんだから、何をしても変わりないし)
俺はそのまま眠った。
更新優先にしつつ次の話あたりでスケベ挿絵入れたいですね。あとから差し込む形にもなるかも。