リリア軍曹との激しい一夜が過ぎ、俺の名前はセイジョー隊の全員に知れ渡ることとなった。
下は13歳のロリっ娘処女兵士から、上はセイジョー隊の隊長であるマリッジ中尉まで。こうして考えると属性盛り盛りな人たちを相手にしてきたんだなと思わなくもない。
他の男性諸君は未だに荷馬車に詰め込まれ、窮屈な生活を強いられているという。そんな中、一人だけ特別待遇まで昇格し、マリッジ中尉の男になった俺。これで話題にならない方がおかしいか。
偶に男性諸君の数人とすれ違うことはあるが、誰も彼も俺の事を奇異な物を見る目をするか、信じられない物を見ました的な視線を送って来やがる。まぁ、この世界の男性からしたらそういう存在であることに否定はしないが。
話は変わってセイジョー隊。
どうやら今日中には本国であるウラスージ国へと到着する見込みらしい。と言うような内容の話を、今まさに俺を背中から抱きしめながら馬に乗馬しているマリッジ中尉から耳にした。
さすがに隊長であるマリッジ中尉自らこうして馬に乗せることは無いだろうなぁと思っていた矢先の事だったから驚いたものの、どうやら俺の事を本国の全員に周知してしまおうという魂胆らしい。
その際、滅茶苦茶嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
あんなに素直な笑顔を見せるなんて……余程嬉しい事らしい。
「……お、そら、見えてきたぞ」
「おぉ……」
王都ウラスージ。
馬に乗っている状態では、王都を囲うように建てられているレンガ造りの城塞と、恐らくは王都の中心であろうウラスージの城の上部分しか見えない。だが、右から左までかなりの広さがある。これを建築するのにどれだけの年月がかかったのだろうか。
……やはり、その建築に関わった肉体労働者は女性なんだろうなと思えば思うほど、乾いた笑みしか零れない。
「ペースも王都に着くのを待ちわびていたか」
「そ、そうだね」
「うむうむ。やはり、自分の部屋でゆったりと寛ぎたいものだな。これからはペースもいるから、ゆったり出来るか分からんが」
そう言って彼女は豪勢に笑っていた。
あははと合わせて笑ったが、どれぐらいのスパンでセックスを求められることになるのか分からない現状、少し怖い。俺の死因、テクノブレイクになるんじゃなかろうか。
「王都に着いたら、お前たちは一度城に運び込まれ、セレス様に謁見することになる」
「セレス様?」
「うむ。ウラスージ王女であるセレス様にお会いできる唯一の機会になる」
あー……
王女かー……
王都があり、軍隊がある階級社会だ。その頂点にいるのも女性というわけか。
しかし、一つ不安があるとするなら、今こそマリッジ中尉に見初められてこうしているが、もしかすると王女にも見初められる可能性があるという事だ。
少し自惚れがあるかもしれないが、この世界の男性と女性が持っている価値観からするに、王女にも夜伽を命じられることになるかもしれない。端的に、セックスをしろと。
しかし、この壮大な防壁は万里の長城を思い出させてくれるが……それよりも立派だ。アニメで見た話だが、巨人が存在する世界で、それの侵攻を防ぐために建設された防壁も高かったが、下から見上げるこの景色はそれに優るとも劣らないぐらい圧倒的な存在感がある。実際にはそこまで高くないんだろうが。
建築関係には少しだけ手を出していたことがあるから、こういった建築物を見るとどうしても胸が高まる。この防壁を越えた向こうにある景色は、どれほどのものなのだろうと、想像するだけでドキドキが止まらない。
「なんだ? そんなに嬉しそうな顔をして。そんなに王都で俺とするのが楽しみなのか?」
少し強めにギュッと抱き締められ、上を向くとにまにまと緩んだ表情を浮かべているマリッジ中尉の姿があった。
一応鎧と言うか、装備を着込んでいるから直接肌と肌が密着しているわけでもないし、心臓の鼓動が伝わっているわけではないと思うんだけど、何故嬉しそうにしていることが伝わったのだろうか。
馬に揺られ、俺は息子をさわさわされ。
そのまま軍隊は前進し、遂に俺たちはウラスージ王都へと到着したのだった。
セイジョー隊は隊長が一番前に、それから少し下がって数人の兵士が。その中にミリナとリリアが混じっている。この数人を前とすると、中央から最後尾までにに荷馬車に詰め込まれた男性諸君と糧食、そしてそれを警護する兵士が配置されている。
そもそも何故この軍がこうして派遣されることになったのかも知らないのだが、まさか、単に男性を確保するために軍隊を遣わしたなんて事は無いだろうな……?
わぁっ!!
「うわぁ……」
「さすがに驚いたか。これがウラスージ王都だ。今回も派手な出迎えだが……ふむ。こうしてペースを抱えているだけでこんなにも熱烈に歓迎されるとはな。面白いものだ」
凄まじい歓声で出迎えられたセイジョー隊だったが、最前線を進む俺とマリッジ中尉の存在を確認した民衆は一気にクールダウン。そして混乱の最中へと叩き込まれたようだった。
キャーからギャーへ。
歓声が阿鼻叫喚の地獄絵図に塗り替わっていた。
『なんで、なんであの人が男を……!』
『く……なんて羨ましい事を……』
『あー……あー……絶望だわー……』
『あんな待遇される男……どれだけ優れた子種を出してくれるんだろう』
わーお……皆、飢えた狼みたいな目で俺の事を見ている気がする。
チラとマリッジ中尉を見上げると嬉しそうな表情をしているし。はたまた民衆は血涙を流さんばかりの視線を送りつけてきているし。なんて雰囲気だ。これがこの国の常識なのかもしれないが、そんなあからさまに妬ましげな感情をぶつけて来れる民衆ってのはどうなんだろうか。
――ウラスージ王都中央部・城内――
熱狂的な民衆の歓迎もそこそこに、そのまま真っ直ぐマリッジ中尉に城へと連れて来られた。
さすが王都にある城だけあって内装も豪華だ。
「うぅ……」
「あぁ……もうダメだ……」
何というか……内装を楽しんでいるんだが、後ろから聞こえてくる呻き声と言うか何と言うか、絶望に塗れたコーラスが強制的に耳に入ってくる。マリッジ中尉は慣れた感じで前を歩いているが、俺からすれば気が気でない。
ここまで城内を歩いてきて、これほどまでにデスマーチを歩かされていると思わされる道程は他にないだろう。
「あれが普通なんだ。ペース、お前が異常なだけで」
「ナチュラルに抉ってくるの止めません?」
「何、ペースだったら大丈夫だろう? ……こうして堂々とイチャつけるのもペースのお蔭だ」
「わっ」
急に肩を組まれ、そのまま歩かされる。
後ろからは男の絶望の声が。そしてすぐ近くからは女の嫉妬の声が漏れ聞こえてくる。あかん。
「おら、お前たちはこっちだ! ついて来い!」
「あれ、彼らは何処に?」
ぞろぞろと城内を歩いていると、ここまで一緒に連れて来られていた男性諸君が別の場所へと連れていかれようとしていた。
「うん? そりゃあ、これから品評会があるからな。王女様にお目通りも兼ねてるんだ」
「ひんひょうかい……?」
「そうだ。ペースは俺が頂いたが、そうじゃない男どもは品評会で他の女たちに品定めされて買われていくんだ」
「あっ……」
なるほどねー……
そう言う事かー……
この世界だと男性が褒章になるのか。まぁ、男性に対する女性の考え方からしてそれが一番わかりやすいのか。それ以外にも昇進だったり土地を貰ったりだとかあるんじゃないの? でもまぁ、人身で全てが丸く収まるんだったらそうするか。
「ちなみに、その品評会を見ることって?」
「あぁ、出来るぞ。別にペースが見て面白いものでもないんだがな。まずは王女様に挨拶に行くぞ。なに、俺の後ろで跪いていれば大丈夫だ」
「はぁ……」
意気揚々と言うマリッジ中尉に連れられ、城内の中央にある王女の間へと連れて来られた。顔を下に向けたまま前へと歩かされ、全く王女様の顔を見ることが出来ない。
「面を上げよ」
恐る恐る顔を上げ、その顔に驚いた。
ブサイクだったのだ。
真顔になってしまった。
ブサイクだったのだ!
今の今まで俺的に美人だとか、可愛い人だとかしか思えないような人しかいなかったから驚いていたのだが、残念ながら王女はその例に漏れてしまったようだ。そして、その近くにいる女性たちも残念な感じ。何がどう残念なのかは、さすがに名誉のため詳細を記すことは止めておく。
「マリッジよ。よくぞ男たちを連れてきてくれた。これでまた、女どもはしばらく静かになってくれるだろう」
「はっ! 有難き幸せ!」
「ところで、そこにおる男はどうしたのだ?」
「実は、この者を私の側男にすることになりましたので、ご報告を」
「なんだとっ!?」
急に王女とその周辺に控えている女性たちがざわつき始めた。
お互いに顔を見合って何か囁きあっている。しかし、あまり……その、可愛くない人達が顔を寄せ合っていても胸に来るものがない。むしろ、胸やけがしそうな勢いだ。
兵士であれだけ綺麗どころが揃ってるから、もしかすると王女は天使をも超越する見た目をしてるんじゃないかと期待していたんだが……儚い思いだったな。
「な、なるほど……し、しかし、マリッジがそこまで言うのであれば、相当良い男なのか?」
「はい。今まで出会ってきた男の中でも、一番の男です」
「ぬ、ぬぅ……そ、そうか」
未だざわつきの収まらない状況ではあったが、マリッジ中尉はそんな中、軽く王女に挨拶をして下がっていった。無論、俺も一緒に下がることになったのだが、後ろから妙に視線を感じたような気がして、ぶるると鳥肌が立っていた。
「はぁぁっ! 久しぶりに良い思いしたぜ! これも、ペースのお蔭だ」
「はぁ……でも、良かったんですか?」
「うん? あぁ……王女、どうだ?」
「は? あ、いや、なんとも……」
「いや、なんともって事はないだろ! その、あれだ……! 綺麗とか、可愛いとか、その……何か思わなかったのか?」
不安そうに眉間を寄せるマリッジ中尉を見ていると、ほっこりする。
「大丈夫ですよ。僕は、マリッジ中尉の男なんですから」
「な……っ、あっ、もう! ほんと、可愛い奴め! 今日も激しくするからなっ!!」
「あ、はは……」
激しいって、どれぐらい激しいのかにもよるんだが。
だけど、こうして素直に喜んでくれる人がいるってのは良いもんだ。
さて、今日はどこまで求められるんだろうか。