大人になりたいプディンセスと、彼女に思いを寄せるシューバリエの初体験です。
「……ねえ、タルト」
「なあに、ディン?」
マドルチェ・シャトーの一角にあるお菓子の聖堂。そこを管理するフレッシュマドルチェ・シスタルトの私室にて、マドルチェ・プディンセスはぷくっと頬を膨らませ、不意に訊ねた。
「オトナになる、って……どうすればいいと思う? どうすればなれると思う?」
問われたシスタルトは立てた指先を唇に当てて、視線を天井に向けながら考える。
その質問の答えではなく、プディンセスがそんな質問を自分にするに至った経緯を。
「んー……急にどうしたの、ディン。なにかあったの?」
たいていこういう場合は、ここに足を運ぶまでのプディンセスにあった出来事に原因があるとシスタルトは把握している。果たしてその推測は的中しており、プディンセスは頬を膨らませていた空気をため息に変えて吐き出した。
「……今日、グラスフレと勉強をしたの。グラスフレとする勉強は楽しいから、いっぱい新しいことを学んだわ。でもね……どーーっしても、満足いかないことが、あってぇ……!」
「うんうん」
「教室に! ……並んでる教本を手に取って、これを学びたいわって伝えても、『それはまだ早いです』の一点張り! じゃあいつ教わるのかって聞けば、『大人になってから……』ですって! いつよ、それは!?」
「……ふんふん(どんな内容だったのかな……)」
「それだけじゃないわ! わたしが気持ちよくシャトーをお散歩してると、どこからかバトラスクやマーマメイドが現れて、『そちらに行ってはいけません』、『お嬢様には危険でございます』って! ここはわたしのシャトーなのよ!? ……未来の! どうしてわたしが足を運んではいけない場所があるのかしら!」
「それはそれは……(たぶん、あの部屋かしら……)」
身振り手振りを交えつつ、まるで劇のようにアクロバティックに不満を語るプディンセスの姿は、シスタルトにとっては見ていてとても楽しいものだった。
真摯に語る体と口の言葉の両方を、シスタルトは静かに頷きながら耳を傾ける。聞き手に徹し、そして答えをくれるシスタルトのことを、プディンセスはシャトーの一員としてだけでなく、ひとりの友人として信頼していた。
そういったような理由から、プディンセスは時折シスタルトの私室に足を運んでは愚痴や不満を打ち明ける。部屋の外では姫君として飲み込まねばならないものを、この部屋ではひとりの少女としてそれらを優雅に吐き出すのであった。
そうしてプディンセスの劇は不満や愚痴から結論というフィナーレに至り、ぽすんとカーペットの上に座り込むと、ぷるぷると顔を左右に振りながら最後に残った疑問を口にした。
「……ええ、理由はわかっているわ。わたしが子どもだから……よね。子どもだから学べない、子どもだから足を運べない、だから理由は『まだ早い』。ちゃんとわかってる、でも……じゃあ、どうしたらわたしは子どもじゃなくなるの? どうしたら、グラスフレやバトラスクやマーマメイドはわたしを大人って認めてくれるのかしら! もーーったくさん! スポンジに塗りたくるクリームみたいに甘やかされてばっかりで、わたし、ふやけちゃいそう」
そうして、最初の質問に至る。
ぱちぱちと小さく拍手するシスタルト。ふんと得意げに鼻を鳴らして、ぺこりと頭を小さく下げるプディンセス。
今度はあなたの番。目でそう伝えると、受け取ったシスタルトは困った顔をしながら、それでも答えた。
「……きっと、時間を重ねるしかないんじゃないかな。子どもから大人になるのは、どこかきっかけがあるわけじゃなくて……ゆーっくりと、移り変わっていくものだから」
「でも、ゆっくりの中にも認識が変わる瞬間はあるでしょう? はじめは透明な卵白も、かき混ぜれば真っ白なメレンゲになるわ。混ぜて混ぜて、『いま』って思うタイミングはあるはずでしょう? それはいったい何かしら、いつかしら? 歳を重ねていればいずれ訪れるそれを、たった今経験してしまえば、わたしは大人になれるんじゃないの?」
「……う、うーーん……。え、と。要するに、みんなに大人と認めてほしいってことよね、ディンは。大人って認めてもらえる何かを成し遂げたい、と」
「ええ! シスタルトは存じない? みんなが大人とわたしを認めてくれるような、なにか!」
シスタルトはずっと寄せていた眉から力を抜くと、真摯にプディンセスの目を見つめ返して答えた。
「じゃあ……やっぱりそれは、ゆっくりと歳を重ねること、だと思うわ。今の自分を受け入れながら、歳を重ねていく。ゆっくりと一歩を重ね続けて、ある時、重ね続けた生を振り返ったときに、大人になれるんだと思うの」
「…………」
「うん……だから、あせることはないわ。大人になりたい、どうすればなれるのか。順序立ててそう考えることができるディンは立派よ。あとは……時間さえ重ねれば、誰に劣ることもない女王様になれると思う」
素直に嬉しい、しかし求めていたものではない言葉に、プディンセスは複雑な顔を浮かべた。
シスタルトのその言葉に、ありがとう、とはっきりとお礼を伝えながら、プディンセスは眉をひそめて俯く。
それから、ぽつりと。
「大人ね、タルトは」
「えっ?」
「わたしもタルトみたいに……」
その呟きに、こんこんというノックの音が重なる。
最後まで口にできなかったプディンセスの言葉のかわりに、扉の向こうからはシスターの声。少しくぐもった、よろしいでしょうか……から始まる言葉に、シスタルトは扉越しにはっきりとした声で答える。
すぐにここを離れねばならない用事ができたようだ。プディンセスは話の内容を完璧に理解したわけではないが、それだけは察することができた。
「ごめんなさいディン。また今度、たくさんお話しましょうね」
「ええ、タルト。今日も頑張って」
小さく手を振って振り返され、友達との歓談の時間はぷつりと終わる。
ひとりシスタルトの部屋に残ったプディンセスは、はあとため息をひとつついて、晴れぬ悩みを抱えながら天井を見上げた。
「結局……我慢して、待つしかないのかしら」
大人になりたい。……というより、子ども扱いをされたくない。
わたしは立派な、ひとりのプディンセスだ。シスタルトとこうして話すように、他の誰とも対等な関係でありたい。頭の中にもやもやと渦巻く悩みを解きほぐし、理解するに至ったプディンセスは、ふとある結論にたどり着く。
「タルトは……大人っぽかったわ。歳も背丈もわたしとさほど変わりないのに……違いはどこかしら、何かしら」
シスタルトの大人らしさの理由。それをこの私室で探してみようと。
普段、彼女は何をしているのだろう。何を見て、何を読んでいるのだろう……純粋な疑問と好奇心からプディンセスはシスタルトの部屋を隅々まで見回す。
壁の本棚に並ぶ本の背表紙、クローゼットに学習机、それからベッド。どれも自分のものと似たようなものが揃っている。今しがたプディンセスが見つけた、あるひとつのものだけを除いて。
「これは……?」
ベッドの下の空間に、真っ黒なブラックチョコレートのチェストが収まっている。
その収納はプディンセスの部屋にはないもので、引き出してみると、いくつかの本が敷き詰められていた。背表紙に書かれたタイトルもまた、プディンセスの知らないものばかりだった。
その内の一冊を抜き取って、広げてみる。文字ばかりの内容にくらりと目が回りそうになったが、最初のページから一文字ずつ一行ずつ、ゆっくりとプディンセスは読んでいく。すると次第に文字の濁流は形を成していき、まるで知らない光景がプディンセスの脳内にぶわりと広がっていった。
「…………ちょっ、と……借りて……みよう、かしら」
シスタルトが私室のベッドの下に収納していた、その本のジャンル。
それは俗に、官能小説と呼ばれているものであった。
*
「はー……」
それから数日。プディンセスはシスタルトの私室からこっそりと借りた小説をこれまたこっそりと返し、そしてまた借りてを繰り返していた。
対象年齢の高い小説は、用いられる表現も難解であったりすることが多い。グラスフレから重い辞書を借りて言葉を調べながら読むうちに、自然とプディンセスが本を読み終える時間は短くなっていった。
今は自分の部屋で、読み終えたばかりの小説の余韻に浸っている最中である。
その頬は赤く、吐息には熱がこもっていた。
「……架空のことと、わかってはいるけれど。それでも、憧れてしまうわ。愛し合う二人が手を繋いで一線を飛び越えて、そうして大人になる……。なんて素敵なのかしら」
ぎゅーっと読み終えたばかりの本を抱きながら、プディンセスは憧れを口にする。愛する異性と結ばれて、一夜を共にして、大きな一歩で大人へと成長する……シスタルトの持つ官能小説の多くは、そういった内容で占められていた。
夫婦となり、子を持ち、家庭を持つ。一夜の行為は確かに盛り上がれど、彼らの関係はそれひとつで終わるわけではない。その先には彼らで選び背負う未来がある。あの熱くとろけて絡みあう行為は、そのはじまり、きっかけだ。だから、あの行為は大人になるために必要な……。
「……」
ぱち、とプディンセスは目を開く。
本を抱きしめながら、あることに思い至る。
そっと自分の股に手をやりながら、今日の警備担当が誰かを思い出す。
「そう……そうだわ。あるじゃない、大人になる方法が……!」
*
「――姫様? ええと……僕への個人的な頼み事とは……いったい、どのような?」
「単刀直入に言うわね、シューバリエ」
姫の私室には、その警備を担当する兵士がひとりあてがわれる。警備といってもこの国は平和そのものであり、国内外問わず誰かから襲われる心配は全くといっていいほど無い。そのため警備というよりも、日替わりで姫の私室に招かれて姫と過ごす役割の者と言ったほうが適切である。
そして今日、プディンセスはその担当が来るよりも早く、自ら宿舎へ赴いて彼を部屋へと招いた。今日の担当はマドルチェ・シューバリエ。彼はシスタルトと同様に、プディンセスが個人的に慕っている相手であった。
もっともシスタルトと違い、シューバリエ自身は従者である自分が姫と懇意になるわけにはいくまいと意識しているのだが――。
「わたしとまぐわってほしいの。それで、わたしを大人にしてほしいのよ!」
「…………はえ゙」
ぽんと自分の胸を叩き、シューバリエにその旨を伝えるプディンセス。
息が詰まると同時に声が出て、謎めいた声を発してしまうシューバリエ。げほごほとしばらく咳き込んだ後、シューバリエは聞き返す。
「ひ……姫、様。その……その言葉の意味を、失礼ですが……ご存知なのでしょうか?」
「勿論よ? 大人になるために必要な行いでしょう? 誰と何をすべきか、すべて学んだわ。この本で!」
自信満々に両手で持った本をシューバリエに突き出すプディンセス。
表紙やタイトルはシューバリエの知らないものだったが、その雰囲気から、その本がいわゆるいかがわしいものであるとは認識できた。
「……それで……その本に、書かれていた内容のような行いを……致したい、と。そう申しておられるのでしょうか……姫様?」
「ええ、そうよ? だからあなたを呼んだの。今日の警備担当はあなただから、今日一日、わたしの部屋にあなたがずうっといても自然でしょう? だから今日しかないの。お願い、シューバリエ?」
きゅっと握った手に手を重ねて、ずいと顔を近づけてシューバリエに願うプディンセス。
その頼みは、シューバリエという少年にとって僥倖という他ないほど幸運なものだった。
けれど彼女が口にした言葉は、騎士である彼にとって浅慮という他ないものと受け止められる。その理由を、シューバリエはあくまで平静を装いながら訊ねた。
「し、しかし……。なぜ……なぜ、僕を? 姫様であれば、女王様……母君に相談すれば、もっとそういったことに長けた殿方を用意してくださるかと……」
プディンセスは、その返事こそ浅慮と言わんばかりにすらすらと答える。きょとんとした顔つきで、小首をかしげながら。
「シューバリエが好きだからよ? 好きでもない、初対面の相手とそういうことをするのは不埒でしょう? こういう行いは好きな相手、よく知ったとても親しい相手とすると書いてあるわ。わたしにとってのそんな男性は、シューバリエしかいないと思ったのよ」
「……はぇ――……っ!?」
思わず目を丸くするシューバリエ。『なぜ』という自らの問いに対する、あまりにも単刀直入で大きな返事。
装っていた平静が崩れ、赤面し、胸を押さえながらシューバリエはプディンセスの顔を見つめ返す。
愛しい少女の顔である。恋心を抱きながらも、向けてはならないと堪え続けた相手の顔。今でも、その想いは変わらない。
プディンセスの顔はだんだんと赤くなり、シューバリエの顔からふっと目を背ける。
「や……やっぱり、だめ、よね。わたしのわがままに、他人を撒き込んじゃうのは……」
「い……え、いえ、光栄にございます、姫様! ぼっ、ぼ、ぼ僕でよろしければ、い、いかようにもお使いください……!」
一瞬影が落ちそうになる彼女の顔を見て、シューバリエは声をあげた。
悩むより先に、彼女を悲しませてはなるまいという言葉が声を出させた。
プディンセスの顔はふわりと明るくなって、すぐさま輝かしい笑顔を宿す。
「本当!? ありがとう、シューバリエ……! これでやっと、やっと子ども扱いされることもなくなるのね……! うふ、ふふふっ、ああよかった、わたし、シューバリエに怒られたり拒まれたりしたらどうしようってどきどきしちゃって……ふふっ、嬉しい……!」
「えっ……ええ、ぉ、おめでとう……ございます……??」
ぴょこぴょこと跳ねて喜ぶプディンセスの姿に、困惑しつつも手を叩くシューバリエ。
それからふとプディンセスの体が静止すると、彼女は膝立ちのまますりすりとシューバリエとの距離を縮め、その頬に手を伸ばす。
「……よ……ろ、こぶのは、まだ、早いわね。これから……これからしないといけないんだもの、ね……?」
「そ……う、ですね。まだ……まだ致してはおりません、まだ……」
まだ。……まだ、わたしは子どものまま。シューバリエの頬を撫でながら、心の内にそう繰り返す。
愛しい、親しい従者の顔は目の前にある。本の内容を思い返す。初めはいつも、どの作品でも、たいていが――そう。
「シューバリエ、その――」
「…………っ」
呼吸を整えて、覚悟を決めて。彼の唇を触れようとした瞬間。
彼の方から、顔を近づけられる。そして感覚が追いつかない内に、唇と唇が触れ合った。
「ふむ――っ!? んむ……っ、ん…………!」
キス。はじめてする、キス。唇と唇が重なり合って、時折もぐもぐと小さく咀嚼されるように彼の口が動く。
プディンセスは心の内に思う。案外……唇って、硬いわね。向こうに歯があるからかしら。どきどきしたけれど、いざしてみると――。
なんてこと、ない……。わ……? あれ、でも――――。
「ん……っ、んぅ……むっ、ぅぅ……!♥ ん、んぅぅっ……!♥」
終わらない。唇の隙間に、彼の舌がねじ込まれる。自然とそれを受け入れて、自分も彼の唇を食む。
後頭部をそっと撫でられ、抱き寄せられて、息が苦しくなっていくほどに、体の奥の熱も熱くなっていった。
くるしい。息ができない。でも、する間も、惜しい。もっと。もっとしたい。もっとキス、したい――。そう思い始めて、ぼうっと思考がぼやけ始めた頃。
「ぷぁ――っ!!」
「あ――――っ」
口が離れる。唾液がわずかに糸を引いて、ちぎれて落ちる。
呼吸が荒い。顔が熱い。ただ、少しだけ長いキスをしただけなのに――プディンセスの体は、先程とは別のものに変わったかのように、熱く火照っていた。
「……っ、ぃ……まのが……キス?」
「……はい。大人の……、恋慕の関係にある男女が致す……キス、です」
「そう……。これが、キス……♥」
目の前には、顔を赤らめたシューバリエ。その口には、自分の唾液がべっとりとついている。
そして、シューバリエもそれは同じものを見つめている。彼女の口に付着する、自分が愛しい女性とキスを交わした事実。
高まった感情はシューバリエから抵抗を失わせ、彼の手はプディンセスの頬を撫でたあと、するすると首筋を伝って胸元へと滑り落ちていく。
「ん……っ」
それから、プディンセスの小さな胸をふにふにと刺激し始める。
プディンセスはその手に自分の手を重ね、求めるように撫で返しながら、自分の胸を優しく刺激してくれるシューバリエの目を見つめた。
(ぁ……愛撫……だわ。わたしの体に、触れてくれてる……。やっぱりみんな、こういうことに詳しいのね……でも……っ)
「その……ごめんなさい、シューバリエ。いくら大人になりたがっても、体はどうしようもないもの、男性が夢中になるような体型ではないでしょう……?」
申し訳なさそうに謝罪しながら上目遣いにプディンセスが見たシューバリエの顔は、プディンセスの思っているそれよりもずっと真剣で、隠さない興奮で満ちていた。
ごくりと生唾を飲み込んで、シューバリエは答える。興奮で乾く喉の奥から、言葉を押し出すようにして。
「いえ、いえ。姫様の体は、本当に魅力的で、興奮……して、しまいます。…………っ」
「そ……う? 本当に? そ、れなら、よかった……♥」
「し、しかしながら、それ故、少し……問題が」
シューバリエは興奮が衝動に変わってしまうのを必死で堪えながら、その旨をどうにか言葉にして伝える。
彼女の体、彼女の姿。今までよりもずっと近くにある、彼女の存在が、どうしても……。
「姫様が、ぁ、あまりにも魅力的で……自制ができず、不快な思いを、させてしまいかねないと言いますか……!」
自身の胸に手を当てて、そう口にするシューバリエ。
それはプディンセスを案ずると共に、自分の心を守る言葉でもあった。要するに、自分を相手に選んでくださったという信頼を失いたくない、嫌われたくないという想い。
言葉の裏にあるそれを、明瞭にではなくとも感じ取ったプディンセスは、くすりと微笑んで答える。
「……構わない、わ。だって……こういう行いは、殿方がリードしてくれるものでしょう? ……シューバリエのしたいことをして。たぶん、それが、わたしのされたいことと……一緒だと、思うの」
信頼を損なうかもしれない、という心配。それをも包みこんで、すべて受け止めてしまいたいという、プディンセスの想い。
互いに互いを想いながら、たどたどしく言葉を交わした後、こくりと頷いたシューバリエは少しずつ体を動かし始める。
プディンセスの胸を撫でる、さする、揉む。それからその先、ドレスの裾に指を引っ掛けて。
「……っ♥」
小さな不安を宿した彼の瞳に、大きな期待と興奮を宿した瞳で彼女は応える。
するするとドレスがゆっくりとずり落ちて、瞬間――ふるん、と小さな乳房が揺れ、シューバリエの目の前で露わになる。
小ぶりで未発達な、けれど膨らんだ乳房。木苺のようなぷっくりとした乳首。
「……っ、…………っ」
「ふーっ……♥ ふーーっ……♥」
釘付けになるシューバリエを、大きな期待と小さな不安を抱えながらプディンセスが見つめる。
次に口にする言葉は何かしら。思ったよりも興奮できない? それとも、きれい、かわいい、美しい? その顔は、何と言いたいのかしら、シューバリエ……?
そんなプディンセスの期待とは裏腹に、シューバリエが口にしたのは言葉ではなく。
「……ひゃっっ!!?♥♥」
目の前の木苺、プディンセスの乳首だった。
頬張り、吸い付き、背中に回した手で彼女の細い体を抱きしめて、じゅるじゅるれろれろと唇も舌もすべて使ってシューバリエはプディンセスの胸を舐めしゃぶる。
(吸われっ、いきなりっっ、や、くすぐったっ……気持ちいいっ……??♥ 求められ、てるっ、こんなに、激しく……♥)
プディンセスもまた、胸を吸うシューバリエの頭を抱きしめ返して優しく撫でた。
甘美な未知の快楽に身もだえながら、ぎゅっと腿を閉じて嬌声を飲み込むプディンセス。
……なんて、ことはない。そう、なんてことのないこと。だって、まだ胸を吸われているだけ。赤ん坊にされるのと同じことをされているだけ。ただ吸い付き方と舌使いが、やけにいやらしくて愛おしく感じてしまうだけ――。
自分の胸に懸命にしゃぶりつくシューバリエに対し、まるで我が子を愛でているような優越感を覚えていたプディンセスの心に、二度目の不意の快楽が訪れたのはすぐのこと。
「ひ――っっんぅ゙っ、っっ!!?♥♥」
びくん、と強く体が跳ねて強張り、背中をのけ反らせるプディンセス。
強く閉じた腿の内側に、シューバリエの指がにゅるりと侵入していた。そして彼女の股間を、指の腹で引っ掻いていた。
プディンセスの愛用する下着――ドロワーズは、排泄の邪魔にならぬよう中心が開いている、股間だけがむき出しのもの。
母親からはそこも覆った新しいものを使いなさいと命じられていたが、履きなれたこれが好きだとプディンセスは拒んでいた。
「待って、待ちなさいシューバリエっっ、やめて、そんなっ、ところ……っ♥♥」
旧型のドロワーズの形が示すように、プディンセスにとって、股間とは排泄の為の器官に過ぎなかった。
知識を得てそうでなくなった今、下着を履いているのにも関わらず、むき出しのそこをシューバリエに弄られている。
シューバリエはよく知っている。ともすればわたし以上に、女の体というものを。
ちゅぷりと乳首を口から離したシューバリエが、プディンセスの顔を見上げながら言う。
「……とても温かくて、心地いい感触ですよ、姫様。……姫様は、ご存知でしょうか?」
「……っ? な、にを……っ?」
シューバリエの口調や声色が、先ほどとまるで別のものに変わっていることにプディンセスは気づく。
顔を赤らめながら、息を熱く荒げながら、口角はわずかに上がっている。彼が覚えている感覚の正体は、先ほどの彼女が抱いていたものと同じ。
にゅるりと、シューバリエの指がプディンセスの股間から離れて。
シューバリエは、自分の指にねっとりと付着した透明な蜜をプディンセスに見せつけた。
指を開いてもどろりとくっついて橋を作る、プディンセスが溢れさせた熱い蜜。
「女性の体、というものは……強く興奮したり、快楽を覚えると……性器が濃厚な蜜を作り、男を受け入れる準備をするそうです。……まさしく、今の姫様のように」
「…………~~っっ」
ごくりと生唾を飲み込んで、笑顔を浮かべるシューバリエ。
感じている。僕の手で、愛しい姫様が興奮してくださっている。僕を、受け入れてくださっている――。
そんな想いがふつふつと湧き立たせる、優越感。自分の手で感じさせた女を前にした、男の興奮。
プディンセスが読んだ本の中に、今と全く同じシチュエーションがあった。
あのシーンの中、男性は嬉しそうにしていて、女性はひどく恥ずかしそうな様子で……今の自分と彼が、まさしくそれだと気づいた時。プディンセスもその女と同じように、顔から火が出そうなほど強い羞恥を覚えた。
「~~っ……シュー……バリエ……っ!」
「はい。なんでしょう、姫様……? もう少し刺激をご所望でしたら――」
「立ち上がりなさい、今すぐっ!!」
「――はいっ!?」
プディンセスの一喝で、シューバリエの内にあった優越感は一瞬で吹き飛ぶ。
女は姫と、男は従者と戻る。跳ねるように体を直立させたシューバリエに対し、プディンセスは逆に体を屈めた。
先ほどまでは彼の頭を撫でていた手で、今度は彼の尻を抱き寄せて股間に頬を擦りつける。大きく硬く、熱く膨らんだそこを、頬で愛撫する。
「ひ、姫様っ……? なに、をっ」
「男性の体、というものは――」
それから彼のズボンを下着ごとずるずると脱がしながら、意趣返しと言わんばかりに語り始める。
本で読んで学んだ知識。実際に目にするのは初めてでも、その表現は何度も読んだ。
「強く興奮したり、快楽を覚えていると……性器が大きく膨らんで、硬くなるのでしょう? ……っ、ふふ、今の、貴方の……この、ぉ、おっ……お……ちんぽ……の、よう、にっっ」
ぶるんっっ、とプディンセスの前に現れるシューバリエの性器。鼻先を飛び越え、額にまで触れそうなほど大きなそれを前に、戸惑いながらもプディンセスは笑みを作って見せた。
亀頭の先、鈴口からは透明な雫が溢れている。そこを指先でちょんと触れると、シューバリエが声を上げて腰をびくつかせた。
「ひっっ、めさま……っ!? いけません、そのようなところに触れてはっっ」
「もうっっ、女々しいわねシューバリエ、わたしにはおんなじことをしたくせに……! あなただって……こんなに蜜を出して、濡らしているくせに……っ♥」
初めて見る、親しい男性のむき出しの性器。それは思った以上に雄々しくて凶悪な形をしていて――けれど姫である自分が畏縮してなるものかと、声を張ってそれに口を近づける。
本の中の女性たちはみんな、男性のこれを口で味わっていた。そんなシーンがあるということは、男性はきっとこれを口で刺激されることに憧れのようなものがあるのかもしれない。なんて、考えながら。
「…………は、むっ♥♥」
「ひ――――っ」
口を広げて舌を伸ばし、ぱくりと亀頭に吸い付いた瞬間。シューバリエは、プディンセスが口にしたそれよりももっと甲高い嬌声を上げた。
がくがく、びくびくと震え始める彼の腰を、逃がすまいとプディンセスは抱き寄せ掴む。同時に、先端だけでも口が塞がるほど大きなそれに対し、挑戦するようにじゅるじゅると口の奥まで引きずり込んだ。
「ひっっ、ひめさまっ、なにをっっ、ひめさまぁあ゙っっ!!?!? ぉ゙っ、おおぉぉぉおっ……!!♥♥」
「ぐぶ、じゅるっ、ずぢゅるるるるるるぅぅぅう……っ♥♥ んむ、ぐっ、はぐ、はむっ、んんっ……!♥」
口の奥、喉にほど近い部分まで飲み込んで尚、シューバリエの性器の付け根まではほど遠く。
頭を前後に揺らし、咥えられる部分だけを懸命にしゃぶり、どろりと垂れる唾液を潤滑油がわりに根元の部分を手で扱く。
確か、地の文の表現はこんなような感じだったわ。うまく出来ているかしら……。思った以上に息が苦しいし顎が疲れるけれど、でも。
「ぉおおぉおっっおやめ、おやめくださひっ、ひめさま、ぁあ゙ぁぁあああっっ……!!♥♥ っぎもぢ、ぃい、だめだっ、だめ、だめっ……!!♥♥」
大好きなシューバリエのこんな声が聴けるなら、いっか。
キスをしていた時のように、強い興奮がプディンセスから息苦しさを奪っていく。
ただ懸命に、念入りに、執拗に――口と指で竿を、舌全体で亀頭や雁首を、扱くというよりも磨くような思いで刺激する。
可愛い。愛おしい。大好き。そんな想いが、そうさせる。
「ぢぅ……ぢぅ、ぢぅ、ぢゅる、ぢぅぅぅぅぅぅぅ……っ♥♥ ぐぷ、ぐぷ、ぐぷっ、ぐぷっっ、ぐぷっっ……♥♥」
「ぃ゙っっぐぃぐいぐいぐいぐいぐっっ、離して、離してくださいひめさま、ひめさま、ひめさまっっ、プディンセスっっ!! ――あ゙っっ」
ぶんぶんと頭を振って快楽から逃れようとするものの、感じたことのなかった未知の快楽に、シューバリエの性器は呆気なく屈し。
ひときわ強く、びくんと腰が跳ねると同時に。
「むぐ――っっ!!♥♥」
“びゅぐ――っっ、びゅぅぅぅううっ、びゅるるるるる……っっ!!♥”
「んぐ、んっっ、ぐ、んぐ、ぐっ……♥♥」
プディンセスの口内でシューバリエの性器が跳ねて、破裂するように溢れ出た精液が注ぎ込まれていく。
それを必死で飲み下すものの、窒息寸前だったプディンセスの体は耐え切れず、ごぷ、とぷっ――と口の端からシューバリエの精液が溢れ、ぼたぼたとカーペットの上にそれが流れ落ちていく。
液状化した快楽がようやく尽きる頃、きゅっとすぼまった唇と膨らんだ頬がシューバリエの性器の先からつぷりと離れた。
ごく、ごくと喉が鳴り、口の中に残ったものを必死で飲み込み終えた後。
「ぶは……!! はぁ……はぁ……っ、はぁ……♥ っ、ひどい味だわ……本当に……ひどいっ……♥」
射精と飲精を終え、二人はともに息を整える。
普段口にしている甘いお菓子とは比べ物にならない、ひどい臭いと味の液体。それを一滴も無駄にしたくなくて、手に付着したものにすら舌を伸ばして絡め取るプディンセス。
目の前で、唾液と精液にまみれて屹立したままの性器を見たとき。あるいは、下から彼の恍惚そのものといった表情を見上げたとき。
官能小説の中で、女性たちが好んでこんなことをする理由がわかった気がした。
「……気持ち良かった? シューバリエ……♥」
「ぅ……あ、っ……は、はぃ…………っ」
愛しい女性の口を汚してしまった。遥かに身分の高い彼女に粗相をしてしまった。
あらゆる後悔や罪悪感、そしてじくじくと股間の奥に居座る快楽に、頭と心がぐちゃぐちゃになりながらシューバリエは答えた。
「そう。うらやましいわ、シューバリエ。……だって、わたしは……ぜんっっ、ぜん。気持ち良くなんて、なかったもの」
そう言ってプディンセスは、するするとドレスの裾をまくり上げて、抱えた。
露わになるのは彼女の脚と、ドロワーズを履いた股間。ぐちゃぐちゃに濡れて、ぽたぽたと蜜を溢す膣。
目の当たりにした瞬間、シューバリエの性器は再び強く跳ねた。それを見て、プディンセスも笑みと蜜を溢れさせる。
「……ひ、姫様っ……。…………っっ」
謝罪すべきか、奉仕すべきか、いや、今は――。興奮は逡巡となってシューバリエの内を巡り、その体を硬直させる。
乾いた口ではうまく言葉も発せない。彼とは裏腹に、プディンセスは潤った口で甘い言葉を口にし続けた。
「ここ、が。……男性を知らない、まだ子供のままの、ここが。ずっと疼きっぱなしで……もう、我慢ができないの♥ はやく、はやくシたい、大人になりたいって……ずくずく疼いて、たまらなくてっ……♥♥」
背にしたベッドに、そっと腰かけて。それから、寝転んで。
まくり上げたドレスを片腕で抱えたまま、片手で小さく手招きをする。
誘われるがままにシューバリエはプディンセスと密着し、大きく広げられた彼女の両脚の間に腰を挟まれる。
にゅるりと、どろどろに濡れた性器の先がプディンセスの恥丘を撫でた。
「はやくっ♥♥ はやく、シましょう、シューバリエ……っ!♥♥」
「…………姫、様っっ」
根元を掴み、先端を彼女の膣に押し付けて。
それから、ぐっと腰を突き出し――。
「ん゙っっ…………!!♥♥ …………っ、……?」
――にゅるん、と。挿入は為されず、ただ彼女の膣に性器が擦りつけられた。
「……シューバリエ? その……?♥ んっっ……!?♥」
その後も、性器はひくつく膣口を貫くことなく、ただ外側の唇をなぞり続ける。
刺激は、心地いい。これも知らない快楽だから。自分に彼のようなものは生えていないけれど、先端、と言えるような部分を刺激されるのは、特に気持ちいい。でも――。
欲しいのは、それじゃない。もどかしさばかりが積もっていく快楽に、プディンセスはシューバリエの顔を見た。
挿入がうまくできないだけなのかと思ったけれど。その目は、今日見たどんな彼の表情よりも真剣そのもので――。
「でき――ません。姫様」
「……っ??♥ え……? なん、で、どうし、てっ……??♥」
「この行いは――セックス、というものは、愛し合う二人で行わなければならないのです。そうでない関係の両者が体を重ねてはっ……、ただ、淫らで、不純なだけの行いと、なって、しまいます、からっ……!!」
息を切らして、歯を食いしばって、必死で彼は堪えていた。目の前の愛しい女性と体を重ねたい、という欲求を。
その表情の意味がわからずに混乱し、思わずプディンセスは聞き返す。
「っ、こ、ここまでシて、それはないじゃないっ……? た、確かに淫らで不純かもしれないけれどっ、わ、わたしは、あなたにならいい、って、思っ、て……っ!♥」
「――ですから、僕はっっ」
シューバリエは、唇が重なってしまう寸前まで顔を近づけて、プディンセスの目を見つめながら言った。
「あなたのことが、好きです。愛しています。結ばれたいとすら思っています、孕ませたいと思っています!! ――好きです、大好きです、姫っ……いえ、プディンセスのことが、大好きです……!!」
「…………はへっっ??♥」
告白。深い深い愛情を込めた、告白。
まっすぐに貫くような恋慕の好意をぶつけられたプディンセスの時間が止まる。
思考を強制させたのは、股間に走る柔い快楽。にゅるりと、また膣の上を性器が滑る。
「ひぅ――っ!!?♥♥」
「お聞かせください、プディンセスっっ……!! 返事を、どうか、返事をっ!! そうでないのなら、拒むと仰るのであれば、今すぐに離れて消えますからっっ……!! プディンセス、プディンセスっ……!!」
「待っ、まってシューバリエ、それは、それはひきょぅ……っっ!!♥♥ 言う、言うからっっ、返事をお伝えするから待ってっ、止めてっ……♥♥」
荒れた呼吸を互いに整えながら、擦りつけ合っていた体を静止させる。
鈴口からは熱い蜜を、膣口からは濃厚な蜜を、互いにびゅくびゅくと先走らせながら。
こくりと唾を飲み込んで、両手をシューバリエの頬に沿えて、プディンセスは思う。
「~~~~っっ……」
――彼のことを考えると、体が熱くなる。彼と過ごす時間を、できるだけ多くとりたいと思う。
今日、彼を選んだのだって、彼と長い時間、二人っきりでこうやって過ごしたいって思いもあったから――。
快楽でいっぱいになっていた頭に、理性が戻る。そして、その理性が、自分の心に彼への好意を伝えている。
信頼や親愛だった感情が、熱く深い恋慕に移り変わっているのを感じたとき。
「……好き」
ああ、今なんだ、とプディンセスは思った。今から、わたしは大人になるんだ。そう思った。
伝えた好意を受け止めて、そして好意を伝え返してくれる相手がいる。彼もわたしも、互いの体を求めている。
ぐ、っと先端が膣口にあてがわれる感触があった。今度は上へと滑らずに、的確に貫いてくれるのだと本能で分かった。
「好き、好き、好きっ、大好き……!! シューバリエのことが大好き、だから――犯して、孕ませて、わたしを……あなたの、ものに、して――っっ」
いつか読んだ本の中の一節。幸せそうな女性が口にした台詞を、無意識に引用して。
伝え返した好意は、子宮を突き上げる性器の感触で応えられた。
「ひぅ――――っっ」
「――――ッッ!!♥」
ぱんっっ――と、大きな音が鳴る。腰と腰がぶつかり合って、混じった蜜と蜜が弾けた。
膨大にすぎる快楽と多幸感に全身を焼かれる錯覚。たった今結ばれて繋がれたという事実が、心と脳の両方を熱く焦がした。
「あ゙――っっ、い゙、ぁっ――っっ♥♥」
「……プディンセス、プディンセス……っ、プディンセスッ!!♥」
「待っ――――♥♥」
そして、ただの一突きで行為が終わるはずもなく。
シューバリエの両腕がプディンセスの腰を抱きかかえ、一心不乱に突き上げる。
蕩けるように破かれた処女膜の痛みなど容易に消え失せてしまうほど、プディンセスの体と脳は快楽と悦びで満ちていき。
その小さな体という器を満たして尚も注ぎ込まれ続ける快楽は、プディンセスから言葉すらも奪い去った。
「ふぅっっ、ふぅうぅっっ、ん゙っっぅぅうううううううっっ――!!♥♥ くふ、ぅっ、ふ、ふっ、ふぅぅ゙ぅぅううっっ!!♥♥ あ゙ーーーーーーっっ!!!♥♥」
「~~~~ッッ!!♥♥」
感じる快楽を受け止めきれていないのは、腰を動かしてそれを貪るシューバリエも同様に。
歯を食いしばり、隙間から唾液を垂らしながら、芯だけを残して消え失せてしまったようにすら思える性器で愛しい女性を犯し続けた。
気持ちいい、気持ちいい――大好きな、大好きな彼女の。……プディンセスの、おまんこ。
「ぁ゙――――っっ」
不意に、その瞬間は訪れて。
快楽に溺れ続ける彼女に、心の用意をさせる間も与えずに、シューバリエの性器が膣奥を貫き、果てた。
“びゅるるるるるるるぅっ……びゅぐっ、ぶびゅるるるるっ……♥”
「ぉ゙……ぉぉおおおおおっっ……♥」
プディンセスの口に搾り取られ、飲み干されたばかりである筈が、溢れるそれの量は口に注いだそれとは比べ物にならず。
小さな膣を満たし、溢れ、結合部からぼたぼたと流れ続ける。その感触とシューバリエの震えが、プディンセスに彼の絶頂を教えた。
同時に、自分の中に、今まさに彼の精が注がれているのだということも。
「ぁ……っ♥ ぁ、あ、イっっ、~~~~っっ……♥♥ シューバリエっ、ぃ、っしょに、いっしょに……っ♥♥」
昂った心が子宮を揺らし、小さな体がびくんと跳ねながら、愛しい彼の体を抱き寄せる。
互いに互いの体を抱きしめながら、絶頂する性器で、絶頂する性器を味わい合った。
深くまでつながったまま、長く長く――長く、長く……。
「……っ、…………ぁ、う……っ、く……ふぅっ……♥」
「…………んっ♥♥」
絶頂が終わる頃、残った余韻を味わい合う頃。
どちらともなく、唇を寄せ合ってキスをした。互いの存在を確かめ合うように、想いを伝え合うように。
舌を絡ませながら、ふとプディンセスが言う。
「……し、ちゃった……。どう、しよう、かしらっ……わ、らひっ、……ぉ、おかあさんに、なるの、かしら――」
口を離し、唾液を飲み込んでシューバリエが答える。
「僕が……支えます、から。一緒です、から」
あれほど焦がれた、大人になる瞬間。それが今、なってしまった、そう思えて。
不安そうな顔を浮かべるプディンセスの額と髪を、そっとシューバリエが撫でる。
「……そう、よね。ずっと、一緒よね。だって――」
だって。もう、恋人同士だもの。想いを伝え合って、体を重ねた……。
…………。
「……――――あ」
その瞬間だった。
プディンセスの脳裏に、ぴり、と微弱な電流のような気付きが訪れる。
それは言葉にして、『ああ、そっか』、『そうなんだ』、というような。
「恋人……同士。わたし、シューバリエの恋人で……シューバリエは……わたしの恋人、なのよね」
「……はい」
見開いた目と、より紅潮した頬が、シューバリエに向けられる。
「じゃあ」
「えっち、する、のは」
「正しいこと……よね?」
息が荒れる。ぎゅ、っと膣が締まる。
何を仰っているのだろうと考えていたシューバリエも、その言葉の意味を理解して、彼女とよく似た顔を浮かべ始めた。
恋人同士になってしまったのだから。
つがいになってしまったのだから。
やがて夫婦になるのだから。
……世継ぎを作らなければならないのだから。
だから、すべては、正当なこと。正しいこと。
そんな建前を得てしまった二人の行為を止められるものは、最早どこにも無く。
「シューバリエ……?」
「……プディンセス」
シていいんだ。いいんだ。いくらでも。これから、ずっと、何度でも。
我慢なんてしなくていい。だって、それが――自然なことで、正しいことだから。
「シューバリエ? シューバリエっ!? 待って、そんな乱暴――に゙ぃっ!!?♥♥」
片脚をベッドに乗せ、プディンセスの片脚を抱きかかえて、シューバリエは再び腰を叩き付け始める。
制止の言葉も嬌声も、耳にしながら聞き入れずに、ベッドも部屋も軋むほど激しく。
「待っでっっおねがっ止まっ――ぉ゙っっ!!♥♥ ぁ゙っっ、あ゙、ィっ――――!!♥♥ ぉ゙おおおぉぉおおっっ……♥♥」
鈴を鳴らすような姫の声が、濁って汚れて淫らに乱れていく。
ベッドシーツを握り締めて、だくだくと精液と混じった蜜を溢れさせて、絶頂して、絶頂して、絶頂して。
そんな彼女の体を片時も放すことなく、膣を性器で塞いだまま、体位を変えて何度も犯す。
ベッドに上って、彼女の尻をわし掴んで後ろから犯す。彼女の体を抱き上げて、胸を弄りながら犯す。
「しゅーばりぇ、しゅーばぃえっっ、~~~~っっ♥♥ ぉねが、やすませ――♥♥ や゙っっ♥♥」
足りない。足りない、もっとシたい。もっと犯したい。もっと、彼女の乱れる姿が見たい。
自らの腰の上に座らせ、下から突き上げて犯す。覆い被さって寝転がり、気をやった彼女を構わず犯す。
何度も、何度も――何度も、何度も。
「あ゙っっ、ぁ、あーーーーっっ♥♥ ま゛ッて、しゅ、ぁ、え゙っっ♥♥ イぐっっィぐイぐ、ひぐぅぅぅううっっ!!♥♥」
射精する時は、決まって膣奥へ。そして、強く抱きしめて。
胸の中で彼女の喘ぎを受け止めて、排泄するように注ぎ込む。
自分の精を。彼女の内側も、外側も、真っ白く染め上げてしまうほど。
「愛してる……愛してる、愛してる、あいしてるっっ、プディンセス…………っっ!♥」
「――――ぇ゙あ……っっ、え゙へ…………っっ♥♥ ィ゙っ……♥♥」
お気に入りのベッドも、ベッドシーツも、カーペットも、何もかも互いの体液で汚れ尽くしてしまって尚、二人のまぐわいが終わることは無く。
やがて体力の限界を迎えて、どろどろのベッドの上で同時に気を失ってしまうまで、プディンセスとシューバリエのセックスは延々と続けられた。
*
しでかしてしまったことの大きさは、プディンセスにもよくわかっていた。
本来はきっと、もっと段階を踏むべきなのだろう。タルトが言ったように、少しずつ時を重ねていくべきだったのだろう。
その段階も時もすべてすっ飛ばしてしまって、自分は今、シューバリエという伴侶を持つ大人になってしまった。
「あ……姫様。おはようございます」
「おはよう、シューバリエ。……あの、もうかしこまらなくてもいいのよ?」
「し……しかし、ですね……。まだ……その、僕らの関係は、女王様には知られていないと言いますか……」
「そのこと……なのだけれどね」
プディンセスが最初にその行いを打ち明けて相談をした相手は、グラスフレでもバトラスクでもなく。
クイーンマドルチェ・ティアラミス――自身の母である女王だった。
「じょ……女王陛下に、自ら打ち明けてしまったのですか、姫様っ!?」
「秘密にするわけにはいかないもの、それに――シャトーでいちばん詳しいのは、たぶん、ママだもの。え、えと、それでね、その――」
それを聞いたティアラミスは、叱責するでも憤慨するでもなく。
ただ、そう――とだけ答えて。
『大人になったのね、プディンセス』
その言葉とともに、一本の鍵を彼女に渡した。
「前に、バトラスクに止められたところがあるの。そこを進んで、この鍵で開く部屋をね――自由に使っていいと、言われたわ」
「……そう、なの……ですか。では、その部屋とは――」
こくりと頷き、プディンセスはシューバリエに耳打ちをした。
「大きなベッドと……えっちなことを、するための……道具が……たくさん、あるそうよ。今後は自室でなく、そこを使いなさい、って……」
そうしてマドルチェ・シャトーの夜は、更けていく。
二人が混じり、新たな命が授けられ、一族の血は繋がっていく。