銀髪ロリ体型ホムンクルスにTS転生したボクがエッチな目に逢いまくる話 もしくは 繁殖用女性型ホムンクルス実験報告書 作:雅媛
「個体No.00。本日をもって、キミの全業務を終了とする」
いつものようにボロボロになって部屋に戻り、娘を抱きしめていたボクに、管理者の男は淡々と告げた。
その言葉の意味を理解するのに、数秒かかった。
業務終了。それはつまり、実験体としての価値がなくなったことを意味する。
ついに、この時が来たのだ。
「……そうですか。ボクは、処分されるんですね」
ボクは震える手で、すっかり大きくなった娘――銀(シルバ)の背中を撫でた。
殺されるのは怖い。けれど、ここまでボクは耐え抜いた。この子が傷つかないように、ボクの体ですべての汚濁を受け止めてきたのだ。
せめて、最期にこの子の安全だけを約束させなければ。
「ああ、勘違いしないでくれたまえ。キミは処分しない。これからは『ペット』として、この部屋で余生を過ごしてもらう」
「え……?」
「代わりに、明日からは『個体A-01』――そこの娘に、全業務を引き継いでもらうからね」
時が止まった。
男は書類を見ながら、こともなげに続ける。
「A-01は成長完了だ。知能も身体機能もキミを遥かに凌駕している。研究員としての頭脳労働と、接待用の肉体労働。両方の適性を最高値でクリアしたハイブリッドだよ」
「――ふざ、けるな」
「ん?」
「ふざけるなッ!!!!」
ボクは獣のように咆哮し、男に飛びかかった。
下腹部の『淫紋』が命令違反だと判断し、強烈な電流と快楽を流し込んでくる。
膝が崩れ、失禁しそうになる。それでもボクは、歯を食いしばって床を這い、男の足にしがみついた。
「ダメだ! 絶対ダメだ! この子だけは守るって、約束したじゃないか! ボクがやる! ボクがまだやれる! どんなことだってするから、この子には指一本触れさせるもんかぁぁぁぁッ!!」
「見苦しいぞ。もうキミの『型落ち』の体では、スポンサーは満足しないんだよ」
「嫌だ! 嫌だぁッ! 銀、逃げて! ママが食い止めるから、早くッ!!」
ボクが狂ったように暴れ、警備員がスタンバトンを振り上げた、その時だった。
「ママ。落ち着いて」
鈴を転がすような涼やかな声。
そして、暴れるボクの体を、白衣を纏った細腕が優しく、しかし抗えない力で抱きしめた。
「銀……?」
目の前にいたのは、ボクと瓜二つの、しかしボクよりも遥かに完成された美貌を持つ少女。
彼女は慈愛に満ちた瞳でボクを見つめ、ニコリと微笑んだ。
「大丈夫だよ、ママ。私がやりたいの」
「な、何を言って……そんなの、ダメだ、あんな酷いこと……!」
「平気。私、ママと違って最初から『そう』作られてるから。研究でおじ様たちの手伝いをするのも、ベッドで可愛がってもらうのも、私のプログラムにとっては『喜び』なの」
銀は、あっけらかんと言い放った。
そこには恐怖も嫌悪感もない。まるで明日のランチの話でもするかのような軽さだ。
彼女はボクの頬にキスをし、耳元で囁く。
「ママは今まで私を守ってくれた。だからこれからは、私がママを養ってあげる。……いいわよね?」
その言葉には、不思議な強制力があった。
ボクの中の「男の魂」が気圧され、「メスの本能」が娘への従属を選び取ってしまうほどの、圧倒的な女王の如きオーラ。
ボクは呆然と涙を流したまま、崩れ落ちることしかできなかった。
*
それから、奇妙な隠居生活が始まった。
ボクたち親子には、研究所内の上層階にある、広くて清潔な部屋が与えられた。
銀の待遇は破格だった。彼女は昼間は天才的な研究者として働き、夜は研究所のVIPたちを相手にする高級娼婦として働いた。
ボクは部屋で、主人の帰りを待つペットのように、掃除や洗濯をして過ごす。
夕方になり、ドアが開く音がする。
「ただいま、ママ」
「お、お帰り……銀」
帰ってきた娘の姿を見て、ボクの胸は毎日張り裂けそうになる。
乱れた白衣、首筋に残るキスマーク、微かに漂う精液とコンドームの匂い。
今日も彼女は、誰かに抱かれてきたのだ。ボクの代わりに。
「ごめんね、ごめんね……ボクが無力なばかりに……」
「もう、また泣いてる。言ったでしょ? 私はこれが好きなの。おじ様たち、私の体を見てヨダレ垂らして、お猿さんみたいで可愛いんだから」
銀はケラケラと笑いながら、ボクを抱き寄せる。
その笑顔に嘘は見当たらない。
貞操観念というバグを抱えていたボクとは違い、彼女は純粋なホムンクルスとして、性を武器やコミュニケーションとして楽しんでいるように見えた。
二人は食卓を囲む。
かつては実験食ばかりだったが、今は銀が稼いでくるおかげで、豪華な食事が並ぶ。
「そういえばね、ママ。あの『搾乳実験』の時の司会の人、覚えてる?」
「え……あ、うん。あの、ひどい人……」
「あいつ死んだよ」
銀はスープをスプーンで口に運びながら、天気の話でもするように言った。
「えっ?」
「ほら、最近導入された大型ミキサーの点検中にね、誤って転落したんだって。ミンチになっちゃったみたい。お葬式、大変そう」
「そ、そうなんだ……事故って怖いね……」
「あと、最初にママに『淫紋』を刻んだおじさん。あいつは横領がバレて、地下の廃棄施設に送られたわ。今頃、失敗作の実験動物たちの餌になってるんじゃないかな」
「……!」
ボクは背筋が寒くなる。
ここ最近、ボクを虐げてきた研究員たちが、次々と不幸に見舞われている。
謎の病死、凄惨な事故死、精神錯乱による自殺。
「バチが当たったのかなぁ。……ママをいじめた悪い人たちだもんね」
「う、うん……そうだね……」
ボクは震えながら同意する。
そんなボクを見て、銀は聖母のように微笑み、ボクのお皿に肉を切り分けてくれた。
「安心して、ママ。この研究所は私が『快適』にしてあげる。ママは何も心配しないで、ずっと私の傍でニコニコしていてくれればいいの」
娘の蒼い瞳の奥に、昏(くら)い光が宿っていることに、ボクは気づかないふりをした。
彼女は天才だ。
研究所のシステムを掌握し、薬物を調合し、有力者をベッドで骨抜きにして操っている。
気に入らない人間、特に母親を傷つけた人間を、事故に見せかけて抹殺することなど、彼女にとっては赤子の手をひねるより簡単なことなのだ。
「愛してるわ、ママ」
「ボクもだよ、銀……」
ボクたちは抱き合う。
ボクの心には、娘を売春させているという特大の罪悪感が、黒いタールのようにこびりついている。
一生消えない罪の意識。
けれど、下腹部の淫紋は、強力な庇護者である娘に抱かれる安心感に反応し、穏やかなピンク色の光を放っていた。
外の世界では、今日もまた一人、ボクの仇(かたき)が悲鳴を上げて死んでいく。
そんなことなど知る由もなく、ボクはこの歪んだ箱庭の中で、最強の娘に飼われる幸福なペットとして、静かに瞳を閉じた。