生き残るのは一組のみ!
主人公は、自分に魅力がないと思っている女友達を "わからせる" ことができるのか!
────この緊張感が、堪らない。
俺は、眼の前の ”がしゃどくろ” が振るう太刀を、紙一重で交わす。
そのまま身を一回転させて、築地塀に着地した。
これは、夜叉行路というゲーム。
最近話題沸騰中のやりこみ型和風ゲー。
辻斬りどうしでマッチングして殺し合い、武器を奪い合うシンプルなゲームシステムだ。
己の反射神経と技巧が如実に試される、玄人向けの無骨さがウリである。
まぁでも、デバイスの違いはあるだろう。
がしゃどくろの二撃目を上体をそらして交わし、自分の身体をねじるようにして、右手の打刀でその足を払う。
がしゃどくろはかしゃんと音を立てて倒れる。
エフェクトのかかった声が、マイクエフェクトの点滅とともに認識できる。
驚くだろう、今回の俺の動きは、新型のVRチューナーを使っているから、反射からの敏捷性のレベルが違う。
「悪いな、システムの差で勝っちまって」
肋骨の奥にある核めがけて打刀を打突しようとして──────
ピロン。
《おいそろそろ始まるぞいくぞ》
視界の上部にバナーが振ってきた。
「は?」
数秒だけ、その数秒だけ視界を奪われる。
バナーが上にもどったあと、俺がみたのは、迫りくる大太刀の錆びた刀身だった。
ーーーーー
俺はリスポーン先でログアウトしたあと、コンソールを開き、連絡をかけてきた件の女に文句を返す。
《バナー降りてきて死んだんだけど》
《草。なんでミュートしてねんだよ》
《ミュートしたらお前機嫌悪くなるじゃん》
《ならんわ!!!!!れ!》
エクスクラメーションの誤字をみて、「フリック入力で打ってんのか?」と呟く。
その俺の背中を、誰かが叩いた。
「よっ!」
振り向くと、そこには桃色の髪をした小柄な女がいた。
小柄で、あつぼったい白のジップアップパーカーを着ている。
いまのチャットの相手こそが、彼女だ。
「おぉい……おどかすなよ」
「へっへっへ、ウェアラブルキーボードをいじくりながら俯いているお前の間抜けヅラは見ものだったぜ」
「なんのパロディ?」
彼女の名前は、リーパー。数年前からよくゲームをする知人である。
本名は無論知らない。
今いるこの場所──VRエントランスJP201──のように、バーチャル空間だけでの友好関係だ。
「なぁ、おい! それにしても今日だぞ今日!」
「うるさいうるさい、今日は今日だろ。明日もきっと今日になる」
「ちげぇよ、グランテールだよ!」
彼女は俺の裾を引きながら、エントランスの上部に吊られている電光掲示板を指さした。
そこには電脳世界であってもなお眩しい光量で「円塔の叙事詩『グラン・テール』」の文字が踊っている。
新発売のソフトウェアだ。
こいつはもちろん、俺もすでに予約購入済みのソフト。
名前こそ違うが、とある有名ゲームのオープンワールド版なのである。
「ほら早くいくぞ! こうしている間にも回線が混雑しちまう!」
「お前あのゲーム好きすぎだろ、いいか、こういうのは少し待たせてパッチ修正とかが入ってからでないと……」
「ああもう、うるせぇな! 女といっしょにゲームできるんだからいいだろ! 来いや!」
フレンドになっているものどうしはその体に触れることができ、俺は彼女にソフトウェアの移動ゲートへと連れて行かれる。
だが俺は少し懸念があった。
「でも、最近は電脳ハッカーとかも出るぞ? 万が一とか」
「あ? どこ情報だよそれ」
「俺のとこには早く回ってくるんだよ」
趣味が長じてコンピューター系のアドバイザーをしている俺には、つい最近の事件である仮想通貨の改ざん利用を行ったハッカーたちの話が回ってきたのである。
電脳ハッカーは、闇バイトなどを起点として不合法な購買行為や情報取得による恐喝などで金銭を手に入れることを主な目的としたものである。
おもに海外で頻繁にとりあげられている問題で、ここ日本サーバーでは比較的静かだが、それでも確実に存在はしているのだ。
「ほら、早く!」
俺は手を引かれ、移動用ゲートを潜る。
視界が一瞬浮遊感とともにゆらめき、ロードのエフェクトのあとに、地面に足がついている感触と、手のぬくもりが戻る。
見上げると、壮大な大自然が、視界いっぱいに広がっていた。
「すげぇ!」
おそらく俺たちがいるのは塔の上。
悠々と流れる雲、視力補正によって明瞭に見える山々。
どんなテクスチャを使っているのか気になるほどの雄大なそれらが、俺たちを迎え入れた。
昔見た刑務所に入った銀行員の映画みたいに空を仰ぐリーパーが微笑ましい。
口は少し悪いが、根はちょっとオタク気質な女の子だ。
あと、口が悪いのも俺としては嫌いじゃないし。
子どものようにはしゃぐリーパーを見ながら、
俺は、とりあえず攻略を探そうとコンソールを開く。
「…………」
「おいあの虹みろよ! …… って、どうしたんだよ?」
コンソールのボタンのいくつかが、グレーアウトしている。
ログアウトボタンや移動ボタンも含めてだ。
これはサーバーの自動切り替えなどが年に数回行われるときに数分だけ発生するものだ。
いま、この瞬間に……?
周囲を見回すと、同じくこのゲームに新規参加したであろう男女の組が、感動したようにため息をついて空と山々を見上げている
おかしい。
「どうしたんだってば、おい、変だぜ?」
「リーパー、なんか変だぞ」
「私じゃなくお前だろ」
「違う、この状況がだ」
ゲートがゆらぎ、また参加屋が現れた。
また、男女一組だ。
そう、また。
「ここには、男女のペアしかいない」
「え?」
見たところ、俺たち以外のほとんどのが恋仲かそれに準ずる関係値であることがわかる。
おそらく前作のものであろううんちくを言いながら、一人のチャラそうな男が、女の肩を抱いて俺たちの横を通り過ぎた。
「んでさぁ! 多分これから俺たちが降りていくんだよ! 前作の逆で、今度は塔を降りて地上を目指す。俺の考察ではー……ん、あれ?」
「ゆきじー、どーしたのー?」
男が、止まる。
片手で虚空をぺたんぺたんと叩いた。
「んだこれ、液晶かよ……」
叩くたびに、少しだけ景色がゆらぐ。
それで他のものたちも少しばかりの落胆とともに騒ぎ出した。
リーパーが振り向く。
「ま、まぁでも! こんな近い液晶でこれくらいリアルなんだから、塔のなかはもっとやばいだろうな!」
「そうねー。生きて帰れたらもう一度来るといいんじゃないかしらぁ?」
リーパーの気丈な声に、誰か、女性の気の抜けた声が答えた。
いつからそこにいたのだろう。
ちょうどみなの中央あたりに、一人の女が立っている。
黄色と黒の警戒色のフードに身を包んだ、隈のひどい黒い長髪の女性だ。
「お、君一人なの? よかったら俺たちと」
「ちょっとゆきじ浮気!」
さきほどのちゃらそうな男が話しかけようとする。
それに、その蜂のようなカラーリングの女が、手で触れる。
バチリリリリリリリ!!
チャラ男が、倒れる。
突然の音。
スタンガンか?
VR空間で?
いや、でも。
うずくまったチャラ男は、口に泡をためながら呻いている。
気絶してはいないようだ。
「いぃ、いてぇ、いてぇ……」
「ちょ、ちょっとアンタゆきじになにしてんのよ!!」
「一人目」
「はぁ?」
バチリリリリリリリリリリリリ!!!
さきほどより一層大きな電撃音が、チャラ男の彼女らしき女性と、蜂女の間から発生した。
女性の身体が、ところどころ焦げて煙を発しながら、地に伏せる。
「わたしはぁー、いわゆる電脳犯罪者ってやつよ。知ってるー?」
蜂女が、倒れた女の頭を踏みしめながら尋ねた。
あまりに突然のことに、リーパーは呆然としたあと、震えはじめ、俺の後ろに隠れようとして──、何を思ったのか俺の眼の前にかばうように立った。
「て、てめぇ、敵モブか? そういうコンセプトか?」
「はー? 電脳犯罪者って言ったじゃん。証拠にコンソールでフレンド申請欄確認してみなよ。この女の欄、黒塗りになってるよ」
フレンド欄におけるネームの黒塗りは、エラーでもなんでもない。そもそも生体反応の一切がなく、それでいてログインしている状態に起こる。
つまり、死んでいるときだ。
電脳空間を使って人を殺すのは、そう難しいことではない。
情報というものは、過剰に送信したり特定の神経に集中特化させれば、用意に人を殺すことができる。
だがそれは、理論上の話。
普通ならハードウェアのセーフティが厳重にプロテクトするはずだ。
数人が俯く。どうやらコンソールを見ているようだ。そして彼ら彼女らの顔が、徐々に驚愕に歪む。
本当だったのだろう。
だが俺は、それよりもこの蜂女から目を離さないことのほうが重要だった。
「いっとくけどログアウトもコールもできないから。ここは運営にこっそり間借りしてつくった私の専用サーバー。私の命令きかないやつらはみーーんな死ぬし、生き残れるのも二人だけー」
きゃははは、と蜂女は笑った。
「今日はねー、みんなにゲームしてほしーんだよねぇー」
「……ゲーム? ゲームって、この?」
一人の青年が尋ねる。
蜂女は首を振った。
「ノンノンノンノン。大ヒント! 君たちはみんなカレカノでぇーす! これで推理してみそ?」
やはり男女の組ばかりサーバーに入ってきたのは、何らかのスクリプトをサーバーコードに組み込んでいたのか。
「わかんないよーだから教えてるね。これからみんなには、"セックス" してもらいまーす!!」
空気が凍った。
その言葉で、みなの思考が一瞬停止したのがわかった。
「は?」
誰かのおもわずといった懐疑が聞こえる。
「だーかーらー、みんな恋人なんでしょ? だから愛を確かめて、一番愛が続いたやつらだけ逃がすの! もちろん部屋も用意してるよー!」
さきほどまで山脈を移していたスクリーンが消え、扉のような長方形の模様がいくつか現れる。
それぞれ1から11。番号が振り分けてあった。
「私ねー、恋愛って所詮は性欲だと思うんだよねー。それをみんなに証明してもらうとおもって」
「ふざけるなよ……お前……」
業を煮やした一人の年嵩のある男性が立ち上がったが、蜂女は手をブンブンと振った。
「ちょっとやめてよー、ここでアナタを殺したら部屋がひとつ余っちゃうじゃん。それにパートナーのほうも殺さないといけないし。ここは私のサーバーだから、別に触れなくても殺せるしね♪」
蜂女が、男性の背後で震えている、男性と同年代ほどの女性に目を向ける。
男性は、怒りで身を震わせたあと、葛藤の末、身を引いた。
蜂女はそばでうずくまるチャラ男の後ろ首を撫でながら言う。
「これから、部屋に入ってー、30分ごとに
バチバチと音がして、チャラ男がどさりと地面に突っ伏した。
死んだのだろう。
11個の部屋に、24人の参加者。最初から1組は見せしめで殺すつもりだったのだ。
じゃじゃーんと言いながら、女はカメラらしきものをその場に置く。
わざわざそんな見た目のアイテムまで作ったのか。
「その映像は持って帰って私が仲間たちと楽しみます! どうせならエッチだけじゃなくて喧嘩もたくさんしてね、そのほうが面白いから!」
倒錯。享楽。理解不能。
踊るように動きながら、ハイチーズとなぜか俺の方にカメラを向けた。
俺は微動だにせず睨み続ける。
「あれーお兄さん、ご不満?」
「本当に生き残った奴らを逃がすのか疑問だ」
「あらやだ、嘘つかないよ。逃がす逃がす。どうせ私は捕まんないし。それに、ちょっとしたテクで、ここでの性交は男女対象識別コードありきで通常のVR風俗利用回数の30倍で記録するよ。もう積年のフーフ並のちぎりだよ?」
そんなものまで操作するのか。
ここまでくると、いっそ本当に愉しみたいからやっているような気がしてきた。
「あと、俺たちは対象外なはずだ」
「んー? どして?」
「俺たちは、恋人じゃない」
俺はリーパーの方を見ずに言った。できるだけ蜂女の注意をリーパーに向けたくはなかったが、蜂女はリーパーのほうをじろりとみて笑った。
「たしかにねー、そりゃ恋人にはしないか。こんなBカップ程度のちんちくりんはいやだよねー。私みたいなないすぼでーのほうがいいっしょ?」
「生憎、お前"は"俺の趣味じゃない」
「あり、もし私に気に入られれば出れたかも知んないのに」
それは、俺だけが、ということだろう。
いや、いけない。俺も気が動転している。
考えるべきは、リーパーの安全だ。
みな気づいていないが、スクリーンの上から、数名がこちらを見下ろしている。
おそらく、蜂女のおともだちだろう。
「んじゃー入った入った! お部屋にみんな入ったらカウントダウン開始ね! レツゴー!」
全員その場から動かなかったが、蜂女が手元に静電気を起こすと、そそくさと部屋に向かった。
部屋に入ると、リーパーがドアを強く閉じて、ふぅー、と息をつく。
体が震えていた。
部屋のなかは、殺風景だ。
座椅子と、机と、そして少し大きめのベッド。
窓がついているが、外の光景は見えない。
少し耳を澄ますと、横から物音が聞こえる。
部屋の橋には、タブレットのようなものがある。
近づくと、マイクボタンが見える。
なにか声を吹き込むのか?
『さーて! 改めてルール説明!』
天井が音で揺れる。
覚醒マイクが、わざわざ物理的反響をともなって部屋に響いた。
『非仮想的神経占有エンジンによって、みんなは五感も痛みも、精力まで現実と同じものになっています! あとねークラッキングで大体の個人情報もわかってます! 一人やたら保護が強くて覗けないやつがいたけど!』
個人情報ね。
ここを出ても、それがある限り脅されているようなものってことか。
『みんなには30分ごとに射精してもらいます! 別にセックスしてもいいし口淫とかでもいいし、なんらか自家発電でも問題ないよ! そして、30分経っても射精できなかったペアはビリビリでおっ死んじゃうことになります! 女さんは頑張って男さんのマスを刺激してあげてね! 最後の1ペアになったらそこでゲーム終了! 晴れて自由の身です!』
「ふざけるな!」と隣の部屋から声が聞こえる。
『あー、私に文句言いたいときは隅にあるタブレットのマイクボタンを手動で押してね! でも最初あたりはうるさいからほぼミュートにしとく!
じゃ、カウント始めるから頑張ってね~』
俺たちが入ってきたドアに、29:59の文字が発生する。
30分。短いようで長い時間だ。
ここは完全に外部と遮断したサーバー。
いくらハードウェアに防衛機能をつけていても、それへの足がかりがない。
一瞬でも視界画面の操作権を取り戻せれば光明はあるのだが。
このままでは、少なくとも20人が死ぬ。
『────────あっと忘れてた! エンジンを十全につかうために、みんなにはリアルの姿になってもらうね!』
衝撃の一言が、鼓膜を揺らす。
瞬間、前髪がばさりと目にかかった。
おもわず、あたりを見る。
そこで、リーパーが、おそらく今の俺と同じような表情でこちらを見ていた。
リーパーだ。いつもと変わらない。見た目は何も変わっていない。
だがおそらく、俺の見た目は
「えっと、お前、意外と似合ってる、というか、髪型以外あんまり変わらないんだな」
緊張しながらも、和ませるようにリーパーが笑った。
「お前こそ、まったく変わらない。そのピンクの髪もリアルと同じだったのか?」
「ま、まぁ! 同じほうがリアルと感覚差がなくて動きやすいしな!」
「髪色の説明にはならんだろ……」
そうだろうか。
FPSでは、ヘッドショットの位置がずれないようにゲーム内アバターを選択するのが通例だ。ほとんどの場合、好みのゲームアバターに合わせて日頃からVRアバターの身長も揃えるのが普通のゲーマーだろう。
いや、リーパーも昔はもっと身長が高かった。
ボンキュッボンなお姉さんだったのを覚えている。
出会って1年経ったあたりで少しずついまのアバターに変わっていったのだ。
「えっと、その、実は私けっこう驚いてるんだぜ? そのアバター、絶対に作りモンだと思ってたし」
「職業柄、VRで人と話すことも多いからな。こっちのほうが信用されるんだよ」
「そっか、そう、確かに。それでオールバックだったのか……」
「なんだ、馬鹿にしてんのか」
「ちげぇよ! その、前髪下ろすの、かなりイケてるぞ……? なんていうか、モテそうっていうか……」
場に沈黙が落ちた。
なんなんだ。勘違いするぞ。
そりゃ前髪なんてゲーム中は邪魔なだけだろ。
手持ち無沙汰に、リーパーが髪を耳にかける。
耳が赤くなっているのがわかった。
壁の向こうから怒号が聞こえる。
女が「そんな見た目なんて知らなかった! 騙してたの!?」と叫んでいる。その金切り声が薄く耳に残る。
「その、とりあえず、俺、向こうで抜いてくるから」
「えっ、……あ、ああ、うん……」
気まずい。
ドアを見上げると、残り15分と書かれていた。
時間が経つのは速いな。急がないと。
部屋の隅に立つ。
しゅっ、しゅっ、と右手で己の息子を煽てる。
クソ、なにがどうして俺とアイツが。
数分後、果てた俺は、少しリーパーに距離をおいてベッドに座った。
「終わった」
「う、うん……、その、ありがとうな」
タイマーは、完了というタグが付いて、赤表示から緑表示に変わっている。
ちゃんと計測されたようだ。
時間が経って、タイマーが00:00を計上すると、ブザーが鳴った。
『はぁーい第一回目が終了! よくできました!』
ぱちぱちと、向こう側で手を叩く音が聞こえる。
『脱落者なーし! 幸先いいね! 従順だ! っと、なんだなんだぁ?』
プルルル、と音がして、蜂女が興味深げに何かを操作する。
すると、蜂女以外の声が聞こえてきた。
部屋にあるマイク機能を使ったのだろう。
『頼む、妻だけでもここから出してくれないか』
それは、最初に蜂女に抵抗しようとした少し年配の男性の声だった。
『俺もとは言わない。妻だけでいい』
『えぇーいまさらぁー? あそっか、一回射精してもう勃起しなくなったんでしょ! 焦るよねーその気持ち……わからない! なぜなら私、女だから!』
『……ッ! 俺は若くない! そうなるに決まってる!』
『正直にいいなよ、年取ってしわくちゃの熟女がパートナーじゃ興奮しないって。容姿の減価償却推し進んでますねって! 俺は制服を着たうら若きおにゃのこじゃないとびゅっびゅできませんってさぁ!』
『、!!、お前、どこまで人をバカにして────』
『じゃ、次会えたら会おうねー!』
マイクボタンのある液晶を見る、灰色になっていた。
30分ごとに誰か早いものがちでコールできるのか、それともやつの気まぐれか。たぶん後者だな。
「な、なぁ」
リーパーが何かを言おうとしている。
「なんだ?」
「その、助け、来るかな」
「どうだろうな。企業も政府も対応はカウンター型だ。前例がない事件だから、少なくとも1日くらいは遅れるはずだ。その頃には、このゲームは終わってるだろうな」
「そっか、そうだよな……」
少しの沈黙のあと、意を決したようにリーパーが顔を上げた。
「そ、その! 私、実はさ、お前のこと好きだった! かも、しれなぃ……」
尻すぼみになる言葉に、俺は笑うこともできなかった。
好き? こいつが、俺を?
「無理はしなくていいぞ、俺はそんなにシチュは気にしないし、お前を襲う気はない」
「ちげぇってば……、だって、わかんねぇんだよ。恋愛が何なのか。あんまりそういうのしてこなかったし、でも、お前のことは好きだと思う。大好き。異性として、かっこいいと思う」
潤んだ目が、こちらを捉えていた。
俺は思わず、その表情から目が離せなくなった。
「私ってさ、胸もないし、ちっさいだろ? わかってる。事実だから。だから、えっと、その、た、勃たないと思う! けど! 死んじゃう前に、好きっていうのは、伝えときたくて……」
リーパーが俺に背を向けるように座り直した。
泣いているのが、後ろ姿からでもわかった。
「分不相応な大学に受かって、留年して、周りに知り合いもいなくなって、奨学金止まってバイトで生活費稼いでるときにお前に出会ってさ、話してると楽しくて、他のこと忘れられて、ゲームやってても、このキャラよりお前のほうがかっこいい、なんて、比べたりして……、ぐすっ、ごめん、」
そうだった。
出会った初期の頃、こいつは俺に少し、いやかなり依存気味だった。
他に友好関係がなかったからだ。
だから一度、こいつを諭して、他のメンツを紹介したりしてた。
それでできたコネでこいつは配信業とかの手伝いで小金をもらったりもしてたな。
オフ会とかも重ねて、リアルでの人間関係も広がったと言っていたのと覚えている。
「わかってたんだよ、色々手を回してくれたのも、私がゲームにだけ入れ込まないようにって。試験前になると、わざと予定増やしただろ? ちょっとさみしかったけど、電話かけたら事情聞かずに話だけ聞いてくれて、深夜なのに、私アホだからさ、なんもいえなくて、ずっと、おんなじゲームの話ばかり……で…………」
小さい肩が震える。
俺はそれを、後ろからそっと抱きしめた。
「リーパー」
「……ぁ……はぃ……」
「俺と、結婚を前提に付き合ってくれ」
驚いた顔で、リーパーが振り返る。その目元は泣き腫らしていた。
「俺はお前が好きだ」
「嘘だ、優しいから、最後に欲しい言葉をいってくれてるだけ……だろ?」
「どこが好きか言ってやろうか?」
「嘘つき……」
「まず体がエロい。いい感じの稜線が、体のラインがエロい。あと緊張すると髪をかきあげる仕草がかわいい。なんやかんや思慮深いところも好きだ。なにをすべきかを断定せずに常に最適解を考え直すのを忘れない賢い女性だ。拗ねるとちょっと腕を組む回数が増える。でもちゃんと言葉にして伝えようとする。今みたく、自分の気持ちを言葉にできる。なのにちょっとウェディングドレスに憧れてる女の子っぽいところも好きだ。ちょっとマイナーな鼻歌を歌ってるとこも、それを聴かれて恥ずかしそうにしてるとこも好きだ。美味しい料理を食べたら感動して俺に写真を送ってくるところも好きだ」
「もういい! もういいって! 嘘つき! 嘘つき!」
「ちょっと人間不信なところも好きだ」
いつのまにか、リーパーを半ば押し倒すような態勢になっていた。
リーパーは俺から顔を背け、言葉を聞かないように必死だ。
そしてその目が、部屋のタイマーをみているのに気がついた。
振り向くと、残り5分を切っている。
「ごめん、時間がない。ここで出すぞ」
「だ、だめ!」
「このままだとお前が死ぬ!」
「挿れて、私に挿れてから出して!」
リーパーが無理な態勢から、服を脱ごうとした。
ベルトを外し、ボディスーツ的なズボンを下げる。
脱いだそれを足でベッドの下に飛ばした。
線の細い、白い肌と、無垢な双丘が露わになる。
全身の血流が、自分の肉棒に集まってくるのがわかった。
「はやく、はやくっ」
「……悪い、いれるぞ」
ここまでされて我慢できるわけがない。
ずん、と一気に挿入した。
「あ、お゙ッ!!」
リーパーの
キツいが、それだけじゃない。
なかの膣肉が、キュウキュウと吸い付いて、ひだがマッサージのように肉棒全体を愛でてくる。
呼吸に合わせて動き、膣の奥へ、奥へと肉棒をいざなおうとする。
初めてでこんなフィットするものなのか?
いや、たぶん、相性が異常にいいのだ。
「やっ、ばいっッ♡ なに♡ なにこれ♡♡」
リーパーが腰を動かす、快感から逃げるように身を捩る。その動作が、あまりにも扇情的だった。
びゅるるるるるるる!!
後先を考えない大量の精液が出る。
「はっ♡♡ ひッ♡♡」
ブザー音が鳴る。
それすらも気にならないぐらい、俺は快楽に呑まれていた。
数秒たって、息を切らしながら、間に合ったことに気づく。
『はい二回戦しゅーりょー! いやーやっぱみんな二回目からはちゃんとセックスしてるね! とりあえず二組だけ失敗したから、殺すね』
ビリリと音がなり、隣の部屋から、ゴトン、となにか重いものが倒れた。
『やっぱさっきのおじさんは出せなかったみたいだね。あと一組はリアルとの容姿の差で勃たなかった感じか~。私としてはちっこいやつも死ぬと思ったけど、なーんか和姦してるしさー』
「リーパー、大丈夫か?」
「だい、だいじょぶ……」
リーパーの股ぐらをみると、少し血が出ていた。
まさか、処女?
「おかしーよ、処女なのに、あんまり、痛くなかったし……」
「俺も童貞だが、こんな気持ちいいと思わなかった」
「童貞なの?」
嘲笑われるか、と思ったが、予想と反応が違った。
「やった、私おまえの童貞もらっちゃったんだ」
こいつ……
肉棒が再起する。
リーパーをゆっくりベッドに押し倒す。
「あっ」
リーパーの手首を掴んでいる手が、ほどかれる。
そして、リーパーは俺の手を恋人つなぎの状態につなぎ直して、むふ、と自慢気に笑った。
「お前エロすぎるだろ」
ずちゅ、と挿入する。
さきほどの緊張がなく、俺の肉棒はさらに大きくなっていた。
こつん、と、奥のほうに届いた。
「────んぇ?」
そのまま、一心不乱に腰をふった。
「あ゙あ゙あ゙ッ♡♡♡♡
髪を振り乱して、リーパーが嬌声をあげる。
仕草一つ一つが、効果的に俺の劣情を煽る。
「イっちゃうッ♡♡♡♡ ダメっ♡♡ 奥ダメッ♡♡ コラ゙ッ♡ 離せよッ♡ 離せってばぁ♡♡♡」
思わず、そのイキ顔にキスをした。
きゅううううと、膣内が締まる。
さきほど出したばかりなのに、ありえない量の精液がリーパーの赤ちゃんをつくる部屋にぶちまけられる。
「んちゅ……ベッドヤクザ……♡♡ 私で童貞捨てたぅ、癖にぃ……♡ キス、しても……許さないからな……♡♡」
俺は、リーパーの腹部を持ち上げ、そのまま突き上げた。
「お゙あ゙ッッッッッ♡♡♡♡」
ぷしっ、とリーパーの股ぐらから潮が吹かれる。
痙攣するのも構わず、俺は本能のままにピストンを繰り返す。
「ああああ゙あ゙ああ゙あ゙あ゙ッッ♡♡♡♡」
枕を掴んだまま、海老反りになってよがるリーパーに、興奮が止まることを知らない。
精力には自信があった、だが、自分がこれほどまでに理性が溶けるほどの劣情を抱けるとは思わなかった。
「突くな゙ッ♡♡♡♡ お゙♡ わたじば♡♡ オ゙ナボじゃ゙ない゙って♡♡♡♡♡」
よだれを垂らしながら、あえぐリーパー。
そのまま、体重を乗せて種付けピストンをする。
「はっ♡♡ ひゃ゙ッ♡♡♡」
びゅるるるるるるるっ!!
本日4回目の射精を行う。
本能が番となるべき雌を逃さないように、上から覆いかぶさって、全体重を乗せ、射精が終わるまで拘束する。
「ひぅ♡ ぐぃえッ♡♡」
まったく性欲がおさまる気がしない。
俺は、少しだけリーパーを休ませると、すぐに行為を再開した。
『……あのー、30分に一回でいいんですよー?』
なにか流れているのが聞こえるが、それが理性に到達する前に、本能に負けて、眼の前の雌との交尾に意識が引っ張られる。
------
後ろからのしかかり、動物より動物的な獣の交尾にふける。
「あ゙ッ♡♡ あ゙ッ♡♡ あ゙ッ♡♡ あ゙ッ♡♡ あ゙ッ♡♡」
「リーパー、好きだ、好き、愛してる」
「あ゙ッ♡♡ あひッ♡♡ ひぐッ♡♡ ああ゙あッ♡♡ 」
「射精すぞ」
「わた、わたひもッ♡♡ だいしゅ、だい、ああ゙ああ゙ああ゙あ゙ッッ♡♡」
こんなにかわいい女が、この世に実在したのだろうか。
絶対に逃がしたくない。
ここで孕ませて、人生を独占したい。
『いつまで乳繰り合ってんだ! 話聞けよッ!!』
うるさいな。
こちとらお前の5000倍はいい女を自分のものにするので必死なんだよ。
------
「ほら、イけ」
「バカっ♡♡ そんな簡単にイㇰわげッ♡♡ ん゙あ゙♡♡ 頭撫でんな゙ッ♡♡ イクっ゙て、イグッ♡♡」
『はぁー、もういいや、とりあえず残り5組ねー』
------
「ねっ♡♡ ぎゅーってしてっ♡♡ ぎゅー、ぎゅーしろっ♡♡」
「こうか?」
「いひひ♡♡ おまえのこと、大好きだからなっ♡♡ んぇおッ♡♡♡ すりすり、奥スリスリやめろッ♡♡♡♡」
『残り三組ねー』
------
「なんかっ♡ おかひっ♡ おかしいって♡♡ イくのとまんない♡♡ いま、動かないで♡♡ 動いちゃ
ダメ♡ ダメダメダメダメ♡♡ 待って、待っお゙お゙お゙お゙あ゙♡♡♡♡」
『どうせ弾切れするのに、馬鹿じゃないの』
------
「鬼畜すぎ♡♡ 全部ナカ出し♡ そんなに、妊娠させたいの?♡」
「ああ、子ども産んでほしい」
「♡」
『…………』
------
「もうダメ♡♡ ナカ出しダメッ♡♡ 入んない♡♡ せーし入んないっ♡♡」
「足でホールドするのやめてくれないと抜けないって」
「無理ッ♡♡ 気持ちよすぎてッ♡♡ 力はいっちゃうッ♡」
『…………』
------
「射精なが゙♡♡ 童貞ってウソ ゙♡ 絶対ウソ ゙♡」
「ほんとだよ」
「嘘つきっ♡ えっち上手すぎっ♡♡ まって、まってごめんダメダメダメ♡♡ ん゙♡♡ い゙ぅ゙♡♡♡ 」
『……あのー、もう終わったんだけど?』
------
「他の♡ はっ♡ 女の子とッ♡ えっちしたら♡ 駄目だからな♡♡」
「お前以外じゃこんなに出ねぇよ」
「私も♡ 私じゃなきゃ♡ こんな体力おばけ♡ つきあえないもん♡♡」
『……早く出てきてくれないかな?』
------
びゅるるるるるるるるるるるる!!!
過去最大といえる量を、胎内に放つ。
リーパーとぴったりとくっついて、射精が終わるまで、キスを続ける。
伸ばした舌を、やさしく絡め取るようにリーパーの舌が迎え入れる。
お互いの歯の形や口蓋の形を確かめるように舌を回す。
互いに鼻息を荒くしながら、唾液を交換しあい、舌で押し合い、引き合った。
「ゔーー♡♡」
リーパーの足が、俺の背中に回される。
離れたくないとでもいうかのように、さらに密着する。
「ん、ぷ、んちゅ、あ」
リーパーの耳を手で揉みながら、唇を食む。
痙攣しながら少しずつ弛緩していくその肉体を、全身で味わった。
「う、んふ……」
リーパーが気絶する。
あれだけイキ狂っておきながら、よくここまで意識を保てたものだ。
俺は、彼女の体に服を着せ、できるだけ優しく抱えた。
どっと疲れが押し寄せるが、リーパーの軽い体で、それでも簡単に持ち上げることができた。
扉を開けると、ジト目の蜂女がいた。
ピロン。
「優勝か」
「はいそーですよ。3位は10発、2位は15発、1位は脅威の34発。30分に何回出すの? バカじゃないの?」
「こいつが魅力的だっただけだな」
「なんやこいつ。3位の相手は同人声優だったから耳元で声変えながらセクロスして、2位はスプラッタ趣味で相手を拷問しながらの強姦で最後にはテクノブレイク。かたや1位はただの和姦。おもしろくねーー」
凄まじい話だな。
「そうか。これまでにもこういったことをしてきたのか」
「デスゲームなのは今回が初めてだけどね。知ってる? 悪徳商売って利益よりも好奇心で始まるんだよ? 今回は実験。これからへのたたき台」
よく言うよ。
「非仮想的神経占有エンジンは、システムと神経の接続カスケードを極限までなくすことによって現実とほぼ同じ効能を引き出せるようにする」
「お、よく知ってんね。履修してた?」
「アジア電脳法第5条において『人間が現実の事象であると誤認するおそれのある程度に高度な写実性又は再現性を有するコンテンツ』は禁止されているため、企業のほとんどは開発に着手しておらず、その結果、政府側もエンジンを逆探知する方法を確立していない」
「……」
蜂女の手中で、ビリビリと雷が鳴った。
だが遅い。
俺は、念じた。
瞬間、蜂女を含む、周囲にしたその仲間たちが、感電する。
サーバーの管理権限をクラッキングした。
トロイの木馬は俺自身。
俺は、電脳空間のホワイトハッカー兼アドバイザーをしている。
そうなると、実験的な仮想空間に赴くこともしばしばある。
そのため、一定以上時間が経つと、起動中のソフトウェアより上層に挟まる形で、視界に、"バナー" が降りるようにしていた。
そこから元のハードウェア待機空間を操作し、必要なクラッキングツールを呼び出す。
俺に対し電撃を放ったのを逆探し、サーバーの管理権限を簒奪する。
「あとひとつ、お前は思い違いをしている」
俺は、すやすやと眠っているリーパーを見ながら、蜂女に告げた。
「2位のやつは、死んでいない」
座標取得から、それぞれの立っている接地点を起点に、マップを構築した。
そして、生存者に気付いた。
一つの部屋のドアが、音を立てて開かれる。
血まみれの男が、立っていた。
弛緩で立ち上がれない蜂女が、目だけをそちらに向けた。
「本命アカウントから別アカウントをドミネイトして乗り込んでいたんだな」
「そうです。いやはや、備えがあれば憂い無し」
「何がしたかった」
「知恵比べ」
「そうか」
男は俺と違って、この蜂女が出ることを知ったうえで、このゲームに乗り込んだのだろう。
「俺は帰る」
「そうですか。サーバー権限は?」
「渡さない」
「ふむ、じゃあナイフを作ってくれませんか」
俺は少し迷った。
こいつも気絶させるか?
いやしかし……
リーパーを見る。
できるだけ危険は避けたい。
「無理だ」
「そうですか、おもちゃが壊れたから、彼女で遊ぼうと思ったのに」
蜂女が、筋弛緩しているはずなのにぶるりと震えた。
相手を拷問して2位だったというのは本当なのだろう。
在野というのは恐ろしい。
やはり、虎の尾を踏まないように小市民的に生きたいものだ。
俺は、ゲートをくぐった。
白い瞬きが、いつものように俺たちを飲み込んだ。
後日、俺はVR風俗利用回数の異常増大でリーパーと事情聴取に呼び出された。
そっちかよ。
完
リーパーのイメージ画像は、作者のpixivアカウントで見れます
ガチR18が並んでいるのでお気をつけを。
https://pixiv.net/artworks/140329617
今書いている長編作品です。良ければお読みください。
https://novel18.syosetu.com/n9872lu/1/