桜なんて、あっという間に葉っぱだけになって、うららかな春の日どころか初夏の陽気が忍び寄る、大型連休の最初の日。
世の中がお休みだからこそ、私のしているような仕事は、稼ぎ時ともいえるのかもしれない。
今日も今日とてバイトのシフトを入れていた私は、そんなことを考えながら、駅前の一等地に相も変わらずにそびえたつ、大きなビルに入っていく。
私の目的地は、アウトレットと、アミューズメント施設と、オフィスビルを兼ね備えた、ごった煮のようなそのビルの3階フロア。
昨今の色々な事情から、ほぼ全体が性風俗のテナントで埋め尽くされたそのフロアに、私のバイト先がある。
「ちょっと早く着いちゃったなぁ……。」
ビルの入り口の自動ドアをくぐった時点で、バイトのシフトが始まるまでには、まだ30分ほどの時間があって。
だから私は、のんびりと余裕をもって、エスカレーターに乗り込んでいく。
そうしてたどり着いた3階のフロアには、本当に性風俗のお店しか入っていない。
その上、土曜日のお昼の時間帯だというのに、むわり、と熱気が満ちるほどに人がいっぱいで、かなりの賑わいを見せている。
その光景は、人間いうものがいかに欲望に忠実かと、そんな真理を示しているかのようで。
私は、色々なお店を物色する人々の様子を観察しながら、バイト先であるお店に歩いていく。
「おはようございまーす。」
そうして私が、シフトの時間に余裕をもってたどり着いたのは、フロアの少し奥まったところにある、見た目には小洒落たカフェテリア風のお店。
何人もの若い女性のお客さんが順番待ちをしている、ちょっとアンティークな要素もあるその可愛らしい落ち着いた店構えは、街の中にあればきっと、人気の喫茶店と勘違いされて注目されていたことだろう。
けれどここは、駅前ビルの3階にある、人気風俗店エリア。
生き馬の目を抜くような生存競争を水面下で繰り広げているこのフロアで、それだけの人だかりを生み出すこの店は、つまりはかなりの実力店だということを示している。
きっと、お店の前に人だかりを作っていた彼女たちは、私がこの店のキャストだということに、何となく気づいていたのであろう。
その証拠に、お店の中に声を掛けながらスタッフ専用の通路に入る私には、お客さん達から、何処かギラついた視線を注がれていて。
なんというか、そんな情熱的に見られてしまうと、仕事に向かって気持ちが整うというか、スイッチが入ってしまうというか。
ぞくり、と腰に走る怖気に思わず、こくり、と喉を鳴らしてしまうのは、仕方のないことだと思う。
「あ、おはよ……、ちーちゃん♥」
「おはよう……って、すごいことになってるね……♥」
そうして休憩室を兼ねた更衣室にたどり着いた私を出迎えたのは、このお店でバイトをし始めた時からの付き合いで、一番仲の良い同僚の子。
可愛らしい、けれどあちこちの布面積が少ないメイドの衣装に身を包んだ彼女は、どうやら私よりも一足早い時間のシフトだったらしい。
既に一仕事終えたのか、ぐったりとした様子で、休憩のために用意されたスツールに、恥も外聞もない様子で大股を開いて座っていて。
たっぷりと刺激された後の、余韻が抜けずに勃起したままの真っ赤に腫れたおちんぽを、冷ますかのようにさらけ出している。
「常連になってくれたお嬢様を、何時もみたいにからかったら、すごい上手くなってて……。」
「あぁ、いつもの……。」
私の同僚であるこの娘は、人間は成長するものだということを、ついつい、忘れてしまいがちで。
風俗通いに慣れていないような、初来店のお嬢様の担当になる度に、ついつい煽ってしまうという、癖がある。
けれど、実のところ彼女のその行動は、大方の人間の想像通り、後々の布石にしかなっていない。
そういうのが刺さるようなご趣味のお嬢様達は、たちまちに常連になって、何度も彼女を指名しながら、まさにその体を表すように雌伏して。
そうして突然、今日のように思い切りこの娘にやり返して、お嬢様に絶対勝てないことを、理解らせてくる。
「どれだけ搾られちゃったの?」
「両腕拘束と、冷え冷えメンソールのオプションで、6回……♥」
「うわぁ、どおりでおちんぽ真っ赤っかなわけだ……♥」
ひぃひぃ、と泣き顔でおちんぽを休ませている同僚の様子に興味を引かれた私は、彼女と同じデザインの制服に着替えながら、どんなプレイだったのか、聞いてしまう。
そうすれば、涙目の彼女は、ぽつり、と自分のされた仕打ちを白状してくれる。
彼女の言う、両腕拘束のオプションは、想像できる内容の通り。
アームバインダーで両腕を後ろ手に束ねて、拘束するあれで。
それだけでも、腕も肩も動かせないからそれなりに辛いのに、さらに追加されているもう一つのオプションの方も中々にくせ者だった。
冷え冷えメンソールは、単純に言えば、キンキンに冷やした、甘い味付けのハッカ水。
つまりは、冷たいドリンクで冷えたお口で、さらには、メンソールのひりひり感を際立たせながら、フェラチオされるということで。
体を捩って逃げることもできないまま、そんな強烈な刺激を受けることになるなんて、想像するだけでも、ドキドキしてしまう。
「うぅ……。まだ、ちんちんがヒリヒリしてる気がするぅ……。」
「でも、気持ち良かったんでしょ?」
「え……? まぁ……、うん♥」
私が働くこのお店のコンセプトを一言で表すならば、可愛らしく着飾ったふたなり女子のおちんちんをおしゃぶりして、めくるめく快感に、迸る射精に、悶えてしまう様子を愉しむ、と言うもので。
私の目の前で、ひんひん、と泣き言を漏らす彼女も、そんなお店で働く、立派なキャスト。
だから、そんな強烈な理解らされ体験も、思い返すころには、へらり、と笑顔を見せるくらいには、楽しんでいるようだった。
「ん……?」
「ちーちゃん、どしたの?」
私は、そうして同僚とだべりながら、すっかりと着替えを終えて。
支給されている精力剤を飲んだ後は、インカムとスマートウォッチを身に着けて、そうすれば後は、指名が入るのを待つばかり。
私は身だしなみを確認するために、着替え終わった全身を鏡に映して、よし、と気合を入れて。
どたばた、とこちらに駆け寄る足音が耳に入ったのは、そんなタイミングだった。
「わぁあ! 千里ちゃん、丁度良かった!」
「え、えっ? 店長?」
次の瞬間には、どたどたばたん、と慌てて休憩室に駆け込んでくる、小柄な人影。
ビックリしてそちらを見れば、そこに居たのは、あわわ、と大慌てに慌てた表情の、店長さん。
店長さんは私のことを確認するなり、足を縺れさせながらこちらに駆け寄ってきて。
そうして、ちょっと嫌な予感を感じ始めた私を逃がさないとでも言うように、がしり、と私の両手を握りしめてくる。
「えっと、どうしたんですか……?」
「あ、ちょっと、ちょっと大変で……っ。」
私はそれとなく手を引いて、店長の手からそっと逃げようとしてみたけれど、相当に必死なのか、彼女は意外と力強くて。
さらに店長は、その小柄な体を生かすように、媚びるような上目遣いで私の目を見つめてくる。
これは、逃げられないやつ。
それを悟った私は、諦めるように、はぁ、とため息をついて。
そうして店長の次の言葉を待つことにする。
そうしていれば店長はやがて、ひぃ、ふぅ、と息を整えて、ようやく落ち着いたころに口を開いて。
「実は、別のお店で急なお休みがいっぱい出ちゃって……。」
「はぁ……。」
「あの、急だけど、ヘルプ、入ってくれない……?」
「う、分かりました……。」
「ほんと!? 良かったぁ……。」
店長のお話を聞いてみれば、うちの系列のお店で、急なお休みが重なってキャストが足りなくなったとのことで。
つまりは、そのお店にヘルプで入れる人を探しているようだった。
私は、店長の必至な様子に押し切られるように頷いて、そうして、今日だけ他のお店に行くことを了承するのであった。
────
私がヘルプに入ることになったお店は、いつもバイトしているお店と同じフロアの中にある、同じ人がオーナーの、つまりは系列店というやつで。
正直を言えば、同じ系列のお店なんだから、縄張りを被らせて喰い合わなくても良いだろうに、なんて思ってしまうけれど。
そこはそれ、多様化する性癖に合わせるべく、同系列ながらコンセプトは若干違っているということらしく。
どうやら今のところは、お客を奪い合うこともなく、上手くやっていけているらしい。
「あ、千里ちゃんだっけ?」
「はい、今日はよろしくお願いします。」
「急にごめんね、ほんと助かるよ。」
お店の名前を頼りにたどり着いたそのお店は、外観は何だかレストランのような店構え。
暖簾を垂らした広々とした入り口の上には、大きな横長の看板がかかっていて。
こちらのお店もやはり盛況なのか、ちらり、と覗いた入り口の向こうには、何組かのお客様が順番待ちをしていて。
その光景に既視感を覚えて記憶を探ってみれば、何と言うか、焼き肉屋さんのような……?
そんなことを考えていれば、外を窺っていたお店のスタッフさんから、すぐに声を掛けられる。
それもそのはず、店長に急かされた私は、何時ものお店の制服である、股下5cmと言うありさまのメイド服のまま駆け付けていて。
そんな格好で、ぼんやりとお店の前に立っていれば、ヘルプに来た人物だと、すぐにわかったらしい。
「とにかく、入って入って。」
「は、はい。」
「もう、すぐにヘルプに入ってもらうんだけど、暗い所とか、狭い所とか、大丈夫?」
「えっ? あぇ? えっと、大丈夫、ですけど……。」
「よかったぁ。えっと、うちの店は、難しいことは何もなくて、ただ、たっぷり気持ち良くなってくれれば、それでいいから。」
「は、はぁ……。」
そうして、矢継ぎ早に飛んでくる、いくつかの確認事項。
どうやら、キャスト不足で本当に忙しいらしく、引継ぎはこれで終わりらしい。
そのご様子に、心配性な私としては、上手くやれるかと不安になってしまうけれど。
私の案内をしてくれているスタッフさん曰く、難しいことは何もないとのことで。
なんだか変なバイトの募集のようなうたい文句に、少しだけ、不審な気持ちが出てきてしまう。
「うん、うん。6番テーブルね、おっけー。」
「……。」
「それじゃ千里ちゃん、着いてきてっ。」
「は、はいっ。」
とは言え、自分がお仕事するお店以外に入るのは、初めてで。
私はついつい、物珍しさに負けて、あたりの様子を確認してしまう。
ホールには、個室になっているテーブル席がいくつもあって、それは自分の仕事しているお店と、そう変わらないだろうか。
気になることと言えば、お客様であるお嬢様達が、大体、二人連れ以上でいらしていること。
だからなのか、様子を窺う私の耳には、楽しそうにはしゃぐお嬢様達の声が、良く届いて。
そうして、その声に隠れるように微かに響く、キャストの物だと思われる、くぐもった呻きのような喘ぎ声。
いったい、あの個室の向こうではどのような快感を押し付けられてしまうのか。
そのような事を想いながら、借りてきた猫のように警戒をしてあたりを窺っている内に、どうやら私の着くテーブルが決まったらしい。
案内係のスタッフさんは、私に一声かけると、着いてきなさいとばかりに歩き出して。
私は、どぎまぎ、と興奮に高鳴り始めた心臓を抱えて、少し慌てながら、スタッフさんについて行く。
「お待たせしました、テーブルの準備をさせていただきますね。」
「お、来た来た♥」
「わぁ、可愛い子、楽しみぃ♥」
そうして私が連れていかれたのは、二人のお嬢様が待ち受けている、テーブル席。
その二人が挟み込むようにしているテーブルは、なんだか少し、特殊な造りをしているようだった。
テーブルの中央には、なにやら、私の握りこぶしくらいの小さめの丸い穴が開いていて。
そうして、その穴のふちは柔らかいクッションで保護されている。
さらには天板が開くようになっているのか、その丸い穴を通るように、端から端まで深い溝が刻まれていて。
多分、よく考えなくても、そのテーブルの構造が、このお店のコンセプトを体現しているのだろう。
正直、この後自分の身に何が降りかかるのか、何もわからなくて。
私の胸の内には、いたずらに不安ばかりが湧きだしてきてしまう。
「それでは、指を挟んだりしないように、テーブルから離れてください。」
「「はーい♥」」
天板が開くという私の予想は、しっかりと的中したようで。
ホールスタッフさんは、困惑する私をよそに、テーブルの端にある天板のロックを、がちゃり、と外して。
がたん、と音を立てながら天板を持ち上げて、左右に開いていく。
思ったよりも薄いその天板の厚さは、1cmくらいだろうか。
そうして、その天板の下から現れたのは、人が一人ぴったり入れるほどに狭い、背もたれのない座席のようなスペースで。
まさかとは思うけれど、そこに入れだなんて、言わないよね……?
「はい、千里ちゃん、下着脱いで座って?」
「やっぱり……。」
けれど悪い予感と言うヤツは、往々にして的中するもので。
やはり私は、そのスペースに座らされることが決定しているようだった。
私は促されるままに下着を脱いで、テーブルの下から現れたその座席に腰を下ろして。
すると、スタッフさんが私の足元のあたりでガチャガチャと物音を立て始める。
何事かと思って見下ろせば、脛のあたりを押さえるような形で、クッションの着いたバーが起き上がって、私の両足を固定して。
それは例えるならば、絶叫マシンの安全バーが体をシートに押さえつけるかのような。
「え? えっ……?」
「千里ちゃん、痛くない?」
「大丈夫、ですけど……。あの、これって……。」
「おっけー。それじゃあ、そのまま後ろに寝そべってくれる?」
「は、はぁ……。」
いつものバイトなら、机に座って、お嬢様と対面でお話をしたりするのだけれど。
けれども今日は、私の事を左右から見下ろすお嬢様達と、ご挨拶すらしていない。
もはや勝手が違いすぎて、何が正解なのかすらわからなくて。
混乱し始めてしまった私は、スタッフさんの言いなりになることしかできなかった。
私は、両足を固定されたまま、人ひとりがやっと寝そべることが出来る狭いスペースに、上半身を倒していく。
そうすれば、私の背中を受け止める、丁度良い寝心地のマットレス。
一応お店の方も、このスペースに体を潜ませるキャストの事は、配慮してくれているらしい。
「それじゃぁ、閉めるねぇ?」
「えっ……? あっ!?♥」
そうしてそのスペースに私がすっぽりと収まってしまえば、その後はもう、大方の予想するとおり。
スタッフさんは、困惑する私を無視しながら、開いていた天板をまず半分閉じて。
続いて私の股間に、つまりは、緊張のせいで、ふにゃり、としたままのおちんぽに手を伸ばしてくる。
スタッフさんは、まだ柔らかい私のおちんぽを指先で摘まんだまま、真ん中の穴にそれが丁度通るように、残り半分の天板も閉じてしまって。
やがて、薄暗くなったスペースの中に、がちゃり、とロックのかかる音が響いて。
「テーブルの高さ、調整しまーす。」
そうして私は、狭くて暗い空間に、ただおちんぽだけを外に出しながら、閉じ込められてしまう。
聞えてくるのは、狭い所為で大きく聞こえる自分の息遣いと、僅かな身じろぎの度に聞こえる、衣擦れの音。
それと、薄い天板の向こうからくぐもって聞こえてくる、スタッフさんのどこか楽しそうな声。
「お待たせいたしました。本日はご来店いただき、ありがとうございます。」
「ご注文いただいているコースは、120分搾り放題のコースで、お間違いないでしょうか。」
「はい、間違いないでーす♥」
「それでは、使用する道具のご注文を伺いますね。」
聞えてくる声に耳を澄ませてみれば、どうやら、プレイの詳細に関する説明が始まったらしい。
そうして私は、聞こえてきたその内容に、思わず、戦慄してしまう。
だって、スタッフさんの説明をそのまま受け取るなら。
私はこの狭い空間に閉じ込められたまま、120分も、おちんぽを搾られ続けるということで。
「んー、どうする?」
「えっと。あ、これ、化粧筆とか、面白そうじゃない?♥」
「やっぱり、基本のスティックバイブとかも外せないよね♥」
「じゃぁ、それと……。あ、ガーゼもあるじゃん。」
「オナホも行っとく?」
「このおちんちんおっきそうだし、サイズ小さいオナホの方が楽しそうじゃない?」
「おっけー、じゃぁ、Sサイズで。」
「ひ、ひぅっ……♥」
続いて聞えてくるのは、机の上に無防備にさらけ出されたおちんぽを、どう責めてやろうかと愉しく相談する、お嬢様達の声。
その声を聞いた途端、私は、自分の尊厳だとか、プライドだとかが、へし折られるのを自覚してしまう。
だって、私は何時ものお店ならば、指名No.1とかで、ちやほやされていて。
私自身、そうなれるように、色々と努力して、接客して。
けれどこのお店では、キャストは完全に、ただの部品の一つ。
お店のスタッフも、お客様も、用があるのは私のふたなりおちんぽ、それだけで。
そこには、自分の人気だとか、努力だとか、そういう物は全く、評価されてもらえなくて。
自分が置かれている場所が、天板の隙間から漏れる明かりしかない薄暗い空間と言うのも相まってなのか、ひぐ、と込み上げてくるものを感じてしまう。
「ご注文の品はお揃いでしょうか。」
「うん、大丈夫です♥」
「追加のご注文がありましたら、遠慮なくスタッフをお呼びください。」
「はーい♥」
「それと、ローション、コンドーム、紙エプロンはテーブル脇にありますので、ご自由にお使いください。」
「「はーい♥」」
「それでは、ごゆっくりお楽しみください♥」
そうして私がおセンチに浸っている間も、時間と言うヤツは無常に進んでいって。
一度離れていたスタッフさんが戻ってきて、ことん、ごとん、と天板の上に何かが置かれていく。
そうして、私の耳に響くのは、ぴ、とタイマーが起動する電子音。
その音が響いた後は、スタッフさんの気配が遠ざかって。
やだ、待って、置いて行かないで。
私のそんな願いもむなしく、120分という長い時間が、始まってしまうのだった。
────
「ねね、最初、どれ使う?」
「んー、とりあえず、紙エプロン取ってー。」
「はいはい。」
薄い天板の向こうから聞こえてくるのは、私のおちんぽをどうしようかという相談に、がさがさ、と紙のエプロンを広げて身に着けていく音。
「このおちんちん、緊張しちゃってるみたいだしぃ……♥ 最初は、ソフトに化粧筆にしようか♥」
「おっけー♥ ローションは?♥」
「これ、パウダー用の筆だから、ローションない方がいいかなぁ。」
「ふぅん……♥ 詳しいじゃん♥」
「通い慣れてますので♥」
がさがさ、とした紙エプロンの音が落ち着けば、続いて耳に届くのは、天板の上の道具を選んでいるのか、ごとごと、と重く響く音。
人間と言う物は、五感が制限されてしまうと、他の感覚を鋭敏にさせて、危険を察知しようとするらしい。
私は、暗くて狭苦しいスペースに押し込められて、だからつまり、視覚をほとんど封じられていて。
だからなのか少し、聴覚が鋭敏になっているようで。
けれど、そうして敏感になってしまっているのは、決して聴覚だけではないこと言うことを、すぐに思い知らされてしまう。
「んひっ!?♥♥」
「お、ちんちん、ぴくってした♥」
「コチョコチョすると、ひくひくってして、かわいー♥」
次の瞬間に、わたしのおちんぽに、そわり、と触れる、柔らかい感触。
その感触は、ちくちく、とくすぐったさを伝えながら、そりそり、と私のおちんぽを這いまわっていく。
始めは一つだけだったその刺激は、すぐにもう一つ追加されて、私のおちんぽの左右から、挟み込むように、優しすぎる刺激を伝えて来て。
「ふ、んひっ、はふ、んっ……♥♥」
「ちょっとずつ、勃って来てるねぇ♥」
「あ、先っぽ、持ち上がってきた♥」
くすくす、と笑うお嬢様達のセリフを思い出せば、どうやら私のおちんぽを刺激しているのは、メイクブラシだと、想像できる。
しかも、パウダー用だと言っていたから、筆先がふっくらと広がっているタイプの筆で。
そうして、その筆遣いには、持ち手の性質が、多分に滲み出てしまっているようだった。
おちんぽの右側から押し当てられる筆は、さふさふ、と小刻みに動いていて。おちんぽの根元を、カリの段差を、亀頭を、とポイントごとにしつこく刺激してきて。
一方で左側から押し当てられる筆は、ふわふわ、するする、と根元から先までを何度も、行ったり来たり。
私のおちんぽは、そうして与えられる二つの刺激を敏感に受けとって。
さらには、ずく、ずく、と拍動するかのように血液を集め始めて。
刺激をむずがるように反応していた、ひくひく、とした動きは、おちんぽが硬くなるにつれ、びく、びくっ、と大きく振れるようになっていって。
「はぁ、んんんぅっ……♥♥」
「うわ、えっぐいちんちん……♥」
「これ、絶対当たりじゃん♥」
そうして、そわそわ、と与えられるソフトな刺激にも、私のおちんぽは貪欲に反応して。
その慣れ親しんだ、滾りゆく感覚に、すっかりと勃起しているのを自覚する。
それはつまり、テーブルの天板に空いた穴から、勃起おちんぽだけを突き出した、間抜けな格好をしていると自覚することでもあって。
その様子を眺めるお嬢様達のからかい交じりの言葉も相まって、相当に、恥ずかしい。
けれど、このお店に遊びに来たお嬢様達にとってすれば、そんなの、全く関係がない。
それどころか、テーブルから生えたように見える私のおちんぽは、ただただ、玩具が良い反応をしていると認識されている程度で。
「勃起したし、これもつかおっか♥」
「どこに当てたらいいかなぁ?♥」
「裏筋のあたりとか、効きそうじゃない?♥♥」
「おっけー♥」
「んぉっ!?♥♥♥ くひ、ひっっ♥♥!?♥♥♥♥」
だから、つまり、良い反応を見せてしまった私への責めは、さらに苛烈になるということで。
お嬢様たちの会話の合間に聞こえてきてしまった、み゛ぃぃ、と低く震えるような、機械音。
その音に嫌な予感を覚えた私は、おちんぽを必死に、ひこひこ、と跳ねさせて、逃げようとして。
けれどどんなに体を捩っても、狭い所に押し込められている私には、逃げ場なんてどこにもない。
やがて、お嬢様達の宣言通り、カリのエラが裏側で合わさる、丁度裏筋のところに、ひんやりと硬いものが押し当てられてしまう。
その硬いものは、みぃぃ、と唸りを上げながら、じぃぃ、と強く振動していて。
次の瞬間には、裏筋から亀頭全体にかけて、じりじり、びりびり、と痺れるような感覚を伝えてきて。
「んぉぉおっっ♥♥ くふ、くひっっ♥♥♥ んんぅぅっっっ♥♥」
「やば、めっちゃ暴れてる♥」
「ちんちん逃げようとしてて、生意気♥ えい、えいっ♥」
そうして、一瞬遅れて届く、脳みそまで弾けるような快感信号。
私は、大きすぎるそれを受け流すこともできずに、びくり、と全身を跳ねさせて。
そうして、両足を押さえつける安全バーを蹴り上げてしまう。
当然、しっかりとした造りのそれは、私が暴れたってびくともしない。
けれど、多少の遊びがあるせいか、私がそうして暴れる度に、ごとん、がこん、と音を立てて。
そうして、私が悶絶していることを、その音だけでお嬢様達にお伝えしてしまう。
私が普段バイトしているお店も、今日ヘルプでお呼ばれしたこのお店も、その根柢のコンセプトが、ふたなりの女の子を射精させて遊ぶ、と言う物なのは、同じ。
それはつまり、程度の差こそあれ、お店を訪れるお嬢さまたちの質と言うか、そういうものも、似通っていているということで。
だから、目の前に収納されたふたなりおちんぽの持ち主が悶絶すればするほど、その責めがエスカレートするのは自明と言える。
お嬢さまたちは、びりびり、とした振動から逃げようと跳ね回る私のおちんぽを、そのスティックバイブで追いかけて、追い詰めて。
そうして、しっかりと押さえつけて、二本目も使って挟んで。
さらには、これまた二本のメイクブラシで、さふさふ、と亀頭ばかりを磨き始めて。
そんな苛烈な攻めに、マゾっ気のある私のおちんぽが、耐えられるはずもない。
「んぉっっ♥♥ だめ、いく゛っっ♥♥ んぉ、うっっ♥♥ んぉぉっっ!?♥♥♥」
「あはっ♥ すご、めっちゃ飛んだっ♥♥」
「うわぁ、どくどく、びゅーびゅーって、気持ちよさそう♥♥」
ちくちく、とくすぐったいソフトな刺激と、びりびり、と重いおちんぽに伝わる振動と。
その両方を同時に味わわされてしまえば、あっという間に訪れてしまう、私の限界。
ずしり、と腰のあたりに溜まり始めた快感の塊が、必死に内またの筋肉を引き締めて射精をこらえる私をあざ笑うかのように、下腹全体にあふれ始めて。
そうしてとうとう、ぐびゅりっ♥、とおちんぽの根元をこじ開けるかのように、頑張ってせき止めていた精液が迸ってしまう。
そうして、熱い塊が一度迸って、尿道の中を通り抜ける快感を味わってしまえば、もう止められない。
私のおちんぽは、びゅぐり♥、びゅりゅるっっ♥♥、とその身を跳ね上げながら、何度も、何度も、精液を迸らせて。
そうして、天板の下に閉じ込められている私にも届くくらい、青臭い匂いを届かせて。
「ほら、ほら、出しきっちゃおうねー?♥」
「いっぱい、びゅー♥、びゅー♥、ってしてるの、かわいぃよー?♥」
「んぉっっ♥♥ ううぅっっ♥♥ ん、ふーっっ♥♥ んんぐっ……♥♥♥」
そうして、射精が収まった後も、お嬢様たちの責めは、終わらない。
お嬢様達は、射精の後で敏感になっている亀頭を、そのメイクブラシで、さらさら、と刺激し続けて。
射精の余韻を長引かせて、私のおちんぽが余韻を逃がすためにカラ打ちを繰り返すのを、くすくす、と笑いながら楽しんで。
やっと、快感の余韻が引いたところでようやく、私のおちんぽを自由にしてくれる。
私は、ようやく解放されたことに安どして、はひ、はひ、と興奮に上がり切った息を整えようとして。
「それじゃぁ、次は……、どれ使う?♥」
「オーソドックスに、オナホにしてみようか♥」
「ひ、ひっ……♥♥♥」
そうして、自分の耳に届いたお嬢様達の言葉に、私の息はまた、悲鳴を呑み込むかのように引き攣れてしまう。
支給されている特別な精力剤の所為で、一度勃起したおちんぽは、射精してもなかなか、萎えることを許されない。
さらには、お嬢様達の前には、まだまだ、使ってない玩具がたくさんあって。
そうして、120分というプレイの時間も、まだたっぷりと残っているに違いなくて。
つまり、今の今までに与えられた快感は、まだまだ序の口ということで。
私は、三段論法のように至ってしまったその結論に、震える喉を、こくり、と鳴らして。
そうして、お嬢様達から与えられる快感を、ただ享受することしかできないというその恐ろしさに、身震いしてしまうのだった。
────
「んぉ゛っ♥♥♥ んふ、んんんぅっっ♥♥♥」
「あは♥ また出ちゃったぁ♥♥」
「すっご、全然萎えないね?♥♥」
それから一体、どれくらいの時間が過ぎたのか。
私は、お嬢様達に弄ばれるまま、何度も射精して。
もはや私の頭の中を支配しているのは、きもちいい、と、射精したい、という感情ばかりだった。
ブラシとバイブによる責めの後、お嬢様たちが手に取ったのは、その宣言通り、貫通タイプのオナホール。
私のおちんぽに比べて、ホールのサイズが明らかに小さいそれに、お嬢様達は無理矢理に私のおちんぽをねじ込んで。
みちみちに密着するほどのきつさのせいで、ゆっくりとしか動かせないそれで、にゅぷぅ、にゅぽん、と私のおちんぽを扱いて。
そうして2度ほど射精させられた後に、ホールの貫通穴から捻じ込まれる、スティックバイブ。
振動を与えられながら扱かれる快感に、私はあっけなくイかされて。
もはやオナホールの中に満ちているものが、ローションなのか私の精液なのか、分からないような有様になっているに違いない。
「はぁ……、はぁ……♥♥♥」
「そろそろ1時間過ぎたし、ちょっと休憩しようかぁ♥」
「休憩って、何するの?♥」
そうして、息も絶え絶えな私の耳に聞こえてきたのは、ここで休憩させてくれるという、お嬢様たちの有難い申し出だった。
正直を言えば、信じてはいけないことだと思う。
けれど、狭くて暗い中に押し込まれたまま、射精の快感が何度も続くという不慣れな体験に、私の精神は少し、悲鳴を上げていて。
だから、その休憩と言う言葉に、少しくらいの希望を持ってしまっても、仕方がないことだと思ってしまう。
「休憩は、これを使いまーす♥」
「あ、最初に頼んでたガーゼ? どうするの?♥」
私は、テーブルの下の狭い空間に押し込められていて。
だから、卓上でどのような行為が行われているか、次におちんぽに何をされてしまうのかを知ることは、絶対にできないわけで。
そんな私の状況を慮ってくれているのか、お嬢様達は、無言のままに私に何かをするわけじゃなく、ちゃんと、何をするかを伝えてくれていて。
だから私は、私の事を苛めるお嬢様たちを、優しい、だなんて錯覚をしてしまっていて。
「お皿の上に拡げたガーゼに……♥」
「ローション? あ、なんか想像できてきたかも♥」
私を閉じ込めている天板の上では、がた、ごと、と何かを準備する音と、ぶびび、とローションをひり出す音が聞こえて来て。
私はその様子を、お嬢様達の会話も相まって、容易に想像することが出来てしまう。
だからつまりそれは、自分の末路も、想像できてしまうということで。
会話の端々に差し込まれる、くすくす、とした笑いに、嫌な予感が、そわり、と湧き始めて。
「ぬるぬるのこれで、ちんちんの先っぽを、ごしごし、してあげるの♥」
「うわ、それって、休憩になるの?♥」
「中々射精できないみたいだから、休めるんじゃないかなぁ♥」
「うわ、えぐ……♥♥」
「私の友達がふたなりさんと付き合ってるんだけど、浮気した時のお仕置きは、いつもこれだって♥」
「やっぱ、お仕置きなんじゃん♥♥」
「あ、あ……、やだ、やだっ……♥」
そうしてとうとう、剥き出しになったお嬢様たちの本性が付きつけられる。
お嬢様達は、決してやさしいわけじゃなくて、ただ、私の反応も含めて、愉しんでいただけで。
それどころか、私に細かいところまでをしっかりと想像させることで、良い反応を引き出そうと、下拵えをしていただけで。
そのことに気付かされてしまった瞬間、私の中の強がる気持ちは、ぽっきりと折れてしまっていた。
もはや、止めることもできずに、押さえつけてきた弱気だとか、恐怖だとかが、頭の中一杯にあふれて来て。
それにとどめを刺すように、私のおちんぽの先に、ぬたり、と被せられる、薄い何かの感触が伝って。
「そっちの端っこ、持ってくれる?♥」
「おっけー♥」
「んぁぅっ♥ やだ、まって、まってぇ……♥」
「……何か、聞こえたぁ?♥」
「ううん、なぁんにも♥」
「「じゃぁ、ごしごし、しようね♥」」
「せーの♥ いち、にっ、いち、にっ♥」
「いち、にっ、いち、にぃっ♥♥」
「んひっっ!? ううぅ、ああぁあぁっ……!?♥♥」
そうしてとうとう、その地獄のような責めが、本格的に始まってしまう。
お嬢様達は、いちに、いちに、と声を合わせながら、私の亀頭に押し付けた、ローションにたっぷりまみれたガーゼを、左右から鋸のように挽きあって。
そうすれば、目の粗い硬めの生地が、ぞり、じょり、と敏感な亀頭を、擦りたてていく。
普通ならば、ひりひり、と痛みを生んでしまいそうなその強い刺激も、たっぷりのローションで滑り良く擦れて。
ぎりぎりで痛みに届かない程度の快感が、絶え間なく亀頭に伝わって。
「はぐっっ♥ ううっっ♥ んぉ、おっっ!?♥♥ ううっ!?!?♥♥♥」
「めっちゃ暴れててウける♥」
「頑張って射精できたら、終わりにしてあげるからねぇ?♥」
「あ、あっっ!?♥♥ ううぅ、んんぉ、おおおぉぉっっ♥♥♥」
お嬢様達の会話が聞こえるくらいなんだから、私の必死な喘ぎ声だって、彼女たちに伝わっているに違いない。
なのにお嬢様達は、そんなの気にしないとばかりに、私への優しさなんてかけらも見せずに、ごしごし、と亀頭への刺激を続けてくる。
お嬢様たちの言葉を信じるなら、この刺激で射精すれば、この地獄のような快感も、終わる。
私は、その言葉に藁のように縋って、ただ、その鋭い快感に身を任せて。
「んんぉっっ♥♥ ううぅ、なん、でぇっ♥♥ イけなぃぃっっ♥♥ お、んぉおおっっっ♥♥」
「必死すぎ、かわいー♥」
「はぐっっ♥♥ ううぅっっ♥♥ んぎ、いぃっっっ♥♥ ひぎゅっっ!?♥♥♥」
「イけないねぇ?♥♥♥ 辛いねぇ?♥♥」
おちんぽの、亀頭ばかりに与えられる強い快感。
それだけの刺激があればすぐにイけるだなんて、私は少し楽観的に考えていて。
けれどそれから、数分が過ぎても訪れる気配のない、絶頂感。
亀頭に纏わりつくガーゼの快感は、先ほどまでのオナホの刺激なんて足元にも及ばない程の強烈な物のはずなのに。
なのに、その快感は腰に溜まることもなく、するり、と消えていく。
そうして後に残るのは、泣き叫びそうなくらいに気持ち良いはずなのに、射精に結びついてくれない、もどかしさ。
「うううぇっ、えええぅっっ♥ ぐす、ふぐっ。 ひぅっっ♥♥ うわぁぁぁ……っ。」
「なんか、ガチ泣きしてない?♥♥」
「なにそれ、可愛すぎるんだけど……♥♥♥」
「ううぅっっ♥♥ やだ、やだ、やだぁぁっ♥♥♥ イかせて♥♥ イきたいぃっっっ♥♥ んんぅ、ううぅっっ。」
お嬢様達は最早、私の泣き声に気付いていることを取り繕うこともしないで。
私の悲鳴を、懇願を、くすくす、と笑いながら聞き流して。
そうして、私の亀頭を刺激するその動きを、緩めるなんてことも、してくれない。
お嬢様たちの動かすガーゼは、私がどんなにおちんぽを跳ねさせても、ぴったりと吸い寄せられるように追いかけて来て。
そうして、じょりじょり、ぞりぞり、とぬるついた刺激を押し付けてくる。
「ね、中々射精しないけど、なんで?」
「んー?♥ これだと、刺激されるのって亀頭だけでしょ?♥」
「うん。」
「ちんちんって、竿も刺激しないと、イけないんだって。」
「うわ、えぐ……♥ ほんと、お仕置きじゃん♥」
そうして快感に悶え続ける私に、唐突に突きつけられる、答え合わせ。
その解説が本当ならば、私はこの刺激では永遠に、イけないらしい。
けれど、快感に蕩け続けて回転の鈍くなった私の頭には、その事実を理解するのに、少しの時間が必要で。
「んぅぅっっ♥♥ ひぎゅ、んぐ、ぉ、お、おおおぉぉっっ♥♥♥」
「タイマーが鳴ったら終わりにしてあげるから、頑張って?♥」
「あんた、ほんと、ドSだよねぇ♥」
それでも、じっくりとその事実を噛み締めて理解した私に告げられるのは、この快感がまだあと何分も続いてしまうという事実。
その絶望的な事実を伝えられた私の脳みそは、正常な意識をほとんど手放してしまって。
私は熱に浮かされるかのように、ただ喘ぎ声を上げながら、お嬢様達に翻弄されてしまうのであった。
────
「はーい、お時間でーす。」
「あれ、もう終わり?♥」
「反応が良いからつい、夢中になっちゃった♥」
そうして、私を快感の地獄から掬い上げたのは、ぴぴぴ、と大きく鳴り響く、タイマーの音。
私は、その音に救われるまで、ずっとずっと、亀頭ばかりを苛められて、ほんのたまに、気まぐれに射精させられて。
その後はまた、じっくり、たっぷり、亀頭をガーゼで磨かれて、おちんぽから潮まで噴かされて。
その間の事なんてほとんど記憶になくて、ただ泣き叫んでいたことしか、憶えてない。
ともかく、この快感地獄も、タイマーを聞きつけたスタッフさんが個室に入って来た時点で、終わりを告げて。
それを理解した私は、声を張り上げすぎて、ヒリヒリ、と痛む喉を震わせながら、ほっと一息をつく。
「千里ちゃん、どうだった? 大丈夫?」
「はい……、何とか……。」
やがて、お嬢様たちをお見送りしたスタッフさんは、がちゃり、とテーブルの端にあるロックを外して。
がたん、と音を立てながら、私を閉じ込めていた天板を、開いてくれる。
私は、久しぶりに感じる眩しさの中、スタッフさんが差し伸べてくれる手を掴んで、よろり、と上体を起こして。
そうして、差し出されたドリンクに口をつけて、その中身を煽っていく。
とにかく、ヘルプに入った先がこんなにハードだなんて、思わなかった。
これだけで終わらないのは分かっているけど、少しだけでも、休憩室とかで休ませてもらって……。
私は、そんなことを考えながら、両足を固定しているバーをスタッフさんが外してくれることを待ち望んで。
「あ、はい。千里ちゃん大丈夫みたいなんで、次のお客さんお願いします。」
「え……?」
その直後に響いたスタッフさんの言葉に、私は思わず、びしり、と硬直してしまう。
どうやらスタッフさんは、私が水分補給をしている間に、受付の人と連絡を取っていたらしい。
さらには私の、大丈夫、という軽率な言葉は、スタッフさんに都合よく受け取られていて。
「それじゃ千里ちゃん、すぐにテーブルの準備するから、横になって。」
「あの、ちょっと……。」
「今日はあと3組くらい捌いてもらうから、頑張ってね!」
「ひぃ……。」
こうなってしまえば、今さら何を言おうとも、最早、後の祭り。
私は、少し強引に、再びあの狭い空間に押し込められて。
ばたん、とテーブルの天板が、閉じられる。
もう絶対に、このお店のヘルプになんか、入らない。
新たに個室に入って来たお嬢様達に弄ばれながら、私は固く誓うのだった。