俺のことを「先生」と呼んで慕ってくれる可愛いお嬢様と5年ぶりに再会して、大人にしか出来ないイチャラブドロドロセックスする話 作:D・炒飯
オリジナル:現代/恋愛
タグ:R-18 ハッピーエンド 純愛 イチャラブ 和姦 処女 童貞 フェラチオ 膣内射精 中出し
就活に失敗し、諦観と傷心を抱えて地元に帰って来た主人公、明良は、そこで5年ぶりに彦谷彩枝という女性と再会する。
彼女は幼い頃、明良に助けられたことをきっかけに彼のことを「先生」と呼び慕うようになり、明良もまた彼女を「お嬢さん」と呼んで可愛がっていた。
名家の令嬢である彼女に提案されるまま、彦谷の家で再び彼女の「先生」として過ごすことになった明良。
自分を厚遇する彩枝に戸惑いながらも、少しずつふたりの心は近づき、やがて関係が変わっていく……。
イチャラブハッピーエンド小説です!
※小説投稿サイト「ノクターンノベルズ」様にも掲載しています※
https://novel18.syosetu.com/n8824kk/
普段ノクターンノベルズの方で活動しているのですが、ハーメルンにも高い評価を得られた作品を転載してみることにしました。
オリジナルかつR18の作品がどれだけ読まれるかわかりませんが、このページを開いた読者の皆様には楽しんでいただければ幸いです。
バスの排気の熱を背中に感じながら、歩道に足を下ろす。俺しか乗客のいなかったバスはプシュー、と溜め息を吐いて、無人のバス停を後にした。その四角い後ろ姿とタイヤがコンクリートを撫でる音が開けた景色に吸い込まれていく。
俺はキャリーバッグの持ち手から手を離し、ぐっと伸びをして長旅で凝り固まった体を解すと、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
急激に頭に血が巡って、くらりと眩暈がした。目頭を押さえてそれを追い払う。目を開くと、依然として無人のバス停があった。
大学進学を機に上京して5年。就職に失敗し、1年程ふらふらしていた俺は、親にうるさく言われ、生まれ故郷に戻ってくることにした。
かつて城が
いや、ともすれば5年前に増してこの場所は寂れているように見えた。学生の頃「いつ潰れるかわからない」と思っていた商店は本当に潰れていたし、それなりには存在していた民家もまばらになっていて、収穫を終えたとうもろこし畑の如き物寂しさが街全体に付きまとっていた。
そして、街の様子は何も成せずにここに戻って来た俺自身と重なるようで、早くも俺は帰って来たことを後悔し始めていた。東京からどこに行くにしても、ここではなかったのではないか、と。
重い足を引きずるようにして歩く。何はともあれ、一度実家に顔を出さねばならない。あまり歓迎されないだろうな、と嫌な想像ばかりが浮かぶ。
過干渉な母と、気の短い父から説教じみたことを言われるに違いない。なるべく心を空洞にしながら歩いていると、目の前で信号が赤に変わった。
ありがたい。足を止める口実が出来た。それともこのまま、別の方向に歩き出してしまおうか。携帯電話に着信履歴が溜まって、その後怒り心頭の両親の相手をする方が、仕事だの恋愛だののことに口を出されるより余程マシだ。
問題の先送りでしかないぞ、と警告する自分を頭の片隅に追いやって、俺はその考えを実行に移そうとした。
だが一歩を踏み出す前に、俺を呼び止める声があった。
「先生? アキ先生ですか?」
春の鳥が囀るような、高く、澄んだ声だった。物静かな通りにそれは良く通って、するりと耳に入ってくるのである。
そして俺は、その声に聞き覚えがあった。何より、こんな何者でもない俺を、先生だなんてけったいな敬称をつけて呼ぶ人は、ひとりしかいないのだ。
幻聴でないことを確かめるため、俺は声のした方に振り向く。
「サエお嬢さん? 本当に?」
「はい、はい。
頬にえくぼを作って、嬉しそうに笑う女性。
腰まで伸びた艶のある黒髪、雪のように白い肌。世の男達の多くが理想にするだろう美を備えている彼女の名は、
この灰色の故郷に何かひとつ輝くものがあるとするならば、彼女の存在と、共に過ごした日々だった。
「戻ったのはついさっきです。これから実家に帰ろうとしていたところで」
「まあ、ではお疲れでしょう。ごめんなさい、呼び止めてしまって」
「いえ、お嬢さんに会えて寧ろ活力が湧いてきたくらいです。雰囲気が変わりましたね。大人っぽくなられた」
「まあ、先生も女性の相手が上手くなったのではなくて? ふふ、もう5年ですもの、彩枝も大人の女になったのですよ?」
俺とお嬢さんは5つ離れていて、彼女も俺と同じ4月生まれであるから、成人していることになる。少女の成長と時の流れの早さに驚かされるばかりだ。
「先生、途中までご一緒しても? ご実家に行くなら、方向は同じですし」
「ええ。是非」
お嬢さんと話しながら行くなら、幾分か心も軽くなる。俺は先ほどまでの愚かな発想を捨て去って、お嬢さんと一緒に信号を渡った。
「お懐かしゅうございますね。昔もよくふたりでこうして歩いていました。私みたいな小娘を連れていて、お友達にからかわれたのではありませんか?」
「とんでもない。羨ましがられました。彦谷家のお嬢様とお近づきになれる男はそうはいませんから」
ところどころコンクリートがひび割れた、ふたり分の広さしかない歩道で、なんとか彼女の体に触れないようにしながら歩を進める。
彦谷の家はこのあたりでは有名な地主で、山のふもとに大きな屋敷を持っている。サエお嬢さんは何不自由ない暮らしを保証されていて、俺のような下賤の人間とは住んでいる世界が違う人のはずだった。
「そうですね。私もあの頃、先生より親しい殿方はいなかったと思います」
それが何故このように先生などと呼ばれているのかと言えば、まだお嬢さんの小さい頃に偶然に彼女を助けたことがあったからだった。
この街のシンボルである城跡のある山はそう高くもなく、登山するのに苦労はしない場所だが、しかし天然自然の代物であることに違いはなく、子どもひとりを飲み込むには十分な脅威を持っている。
その日お嬢さんはひとりの女中を連れてそこに登ったのだが、道中走って登っていくお嬢さんに年増の女中はついていけなくなり、気付いた時には見失っていた。
山頂まで登ってお嬢さんの名前を叫ぶのだが、返事は無く、たまたま登山していてその声を聞いた俺が、捜索を名乗り出たのであった。
そして探してみれば、案外にあっさりと見つかった。お嬢さんは疲れた体を、山頂にある大きな木の洞の中に横たえて眠っていたのだ。
「あの時は目を疑いました。名家のお嬢様だという割に、こんなお転婆なことをなさるのか、と」
「あまりあの時の話はしないでください。彩枝にも恥というものがあります……!」
赤くなった頬に手を当てて抗議するお嬢さんを見て苦笑しながら「すみません」と謝り、昔話を切り上げることにする。
さて。大したことをしたつもりはなかったのだが、俺は女中やお嬢さんの父から痛く感謝され、彦谷の家の敷居をまたぐことを許された。
俺が幾分お嬢さんより年上だったのもあって、遊び相手や家庭教師の真似事などするようになり、いつの間にやらお嬢さんは俺を「先生」と呼び慕うようになったという事情である。
「そういえば先生、こちらで何のお仕事をなさるか決まっているのですか?」
そう、今の俺は先生などという敬称で呼ばれるべき人間ではないのだ。仕事はない。つまり金も地位もコネもない。ないない尽くしのダメ人間である。
この利発で品の良いお嬢さんの前ではつい見栄を張りたくなってしまうのだが、それがどんなに虚しいことであるかは俺自身よく分かっていた。一瞬悩んで、やはり正直に打ち明けることにする。
「それが何も。そもそもこうして帰って来たのも、向こうで仕事に就けなかったからですし……」
ああ、恥ずかしい。5つ年下の女性にこんなことを話すことのなんと惨めなことだろう。しかしこれが真実なのだ。どんなに耐え難かろうと変えようがない。それに嘘を吐く方がよっぽど人として恥ずかしい。
「まあ! 先生はこんなにも良い方なのに。彩枝なら絶対に離しませんのに」
「はは。ありがとうございます。そんな状態ですから、これから親と顔を合わせるのも気が重いんですよ。実家で寝泊まりしなければならないと考えると、肝が冷えます。ではこれで。気が向いたら、また話しかけてやってください」
一礼してお嬢さんに別れを告げる。彼女と過ごした時間の余韻で、まだ少しの間は心を強く持てるはずだ。
そうして歩き出そうとしたところ、キャリーバッグの持ち手が急に重くなり動かなかった。見れば、お嬢さんがそれを掴んで留めている。
「まだ、何か?」
お嬢さんは俯いていて、表情を窺い知ることが出来ない。俺はキャリーバッグから手を離し、お嬢さんの言葉を待った。
「先生、それなら……それなら、また、私の先生になってください。彦谷のお家は広いですし、先生が寝泊まりする場所だってあります」
「それは……」
唐突な話であった。けれども願ってもない話でもある。
この話を飲めば、俺は仕事と、寝泊まりする場所を一度に手に入れることになる。両親とて反対はしないだろう。嫌な話だが、俺の両親は俺が彦谷の娘に上手く
そして今はお嬢さんも成人。このことを話せば彼らの頭の中には昔よりもっと色々な、浅慮で薄汚い考えが浮かぶことだろう。だが、それ故に……
「お嬢さんに、そこまでお世話になるわけにはいきません」
「そんな、遠慮なさらないでくださいまし。彩枝は先生が哀れで、施したいからとこんなことを言っているのではないのです。彩枝が本当にそうしてほしいのです。ね、先生、良いでしょう? 彩枝と暮らしてくださいな」
キャリーバッグを掴んでいたお嬢さんの手は今や俺の手を包んでいて、細く白く、俺より少し体温の低いそれの感触と、上目遣いに俺を見つめ輝く瞳の前では俺の心も揺れて定まらなかった。
「……わかりました。そのことも含めて両親と話してきます。明日お嬢さんの家に行きますから、今日はもうお帰りなさい」
押されてしまって、結局そんな無暗に期待させるような返事をしてしまう。
すると、お嬢さんはわぁっ、と大きく息を吸い込みながら、見ているこちらまで嬉しくなってしまうような満面の笑みを浮かべた。
「いいお返事をお待ちしております! では先生、また明日」
お嬢さんは深々と一礼すると、スカートを翻し、軽い足取りで去っていく。
……あんな風になっている彼女をがっかりさせるのはあまりに惨いだろう。俺の中で、答えはもう決まっていた。
◆
翌日、俺は彦谷家の門の前に立っていた。手には昨日に倍する量の荷物を持っている。山の麓にある彦谷の屋敷は俺の実家から徒歩5分の距離にあるが、こちらの春は東京よりも暖かく、少しばかり汗が滲んだ。
彦谷の屋敷は歴史ある日本家屋で、黒々とした
息を整えてから、こんな家には不似合いに思える文明の利器たるインターホンを押し込む。ややあって、インターホンのスピーカーから女性の声で誰何の声が上がった。
「はい。どちら様ですか」
やや低く、落ち着いたその声の主は、女中の
知っている人が出てくれたことで緊張が解け、俺は少し弾んだ声で返答する。
「桜子さんですか? 俺です、
「ああ! お嬢様からお話は伺っております。今参りますね」
問題なく伝えられたことにホッと一息つき、門の前で桜子さんを待つ。
しかし、俺を出迎えたのは彼女ではなく、白いシャツと青いスカートを身にまとったサエお嬢さんだった。
「アキ先生、来てくださったのですね!」
小走りに駆けてきて門を開けた彼女はそのまま俺の胸に飛び込んできそうな勢いだったものだから身構えたが、当然彼女はそんなはしたない真似はせず、俺の前で立ち止まった。
「お嬢さん。わざわざお出迎えありがとうございます」
「桜子が先生と話しているようだと気付いて、大急ぎで出てきてしまいました。私ったら、恥ずかしい女でございますね」
「いえ、嬉しかったです」
「お世辞でも嬉しいですわ。それで先生、その荷物……」
「お嬢さんの期待している通りだと思いますよ。その話も含めて中へ入りましょうか」
「……! はい。すぐに!」
お嬢さんは俺の手を引いて屋敷へと歩き出す。はしゃいだその様子は幼子のようで微笑ましく、彼女の話を受けてよかったと早くも思い始めていた。
俺はお嬢さんに案内されて客間に通され、お嬢さんからの提案を受ける旨を伝えた。
「このことを話したら両親は目の色を変えまして、本当はゆっくり荷造りするはずだったのですが、この通り、ほとんど追い出されるような形で来ることになってしまいました。すみません」
畳の上で正座をして頭を下げる。
あの人たちだって大人だろうに、こんな性急なことをして、お嬢さんに失礼だとは思わなかったのかと、今更怒りも湧いてくる。
「まあ、先生、頭をお上げになって? 何も謝ることなんてないじゃございませんか。彩枝は先生が来てくださってこんなに嬉しいのに」
お嬢さんは心底楽しそうに、屈託のない笑みを浮かべていた。
「そう言って貰えると、少しは心が軽くなります。これからお世話になります」
「はい! よろしくお願いしますね、先生」
こうして俺は、再び彼女の先生として、この地で過ごすことになったのだった。
◆
俺には男ひとりが暮らすには広過ぎるくらいの居室が与えられた。
畳を最近張り替えたのだろう、真新しい
住み込みで働いているはずの桜子さんの部屋もここまで広くはなかったはずだ。俺のような若造が使うのは気後れしてしまう。
「お嬢さん、こんなに立派なお部屋、俺には過ぎた代物です。男ひとりが暮らすのに、物置小屋でも十分なんですから」
「空いているお部屋がここしかないんです。遠慮なさらないで?」
そんなわけないだろうと思うが、お嬢さんはなぜだかどうしても俺にこの部屋を使わせたいらしかった。
俺はううむ、と難しそうに唸るが、お嬢さんに逆らってまで狭い部屋を使いたいわけでもないから、やがて了承した。
「足りないものがあったら、なんでもおっしゃってくださいね。では、夕食のお時間にまたお呼びしますわ」
甲斐甲斐しくそんな風に言われると、どちらが雇い主だかわからなくなるくらいだ。
確かに昔からお嬢さんは俺に懐いてくれていたが、この特別扱いぶりには当惑してしまう。
「久々の再開だし、家に男を寝泊まりさせるなんてことになって、お嬢さんも舞い上がっているのだろう。変な勘違いをするんじゃないぞ、明良」
そう呟いて自戒し、俺は荷物に手を付ける。夕食までに荷解きは済ませてしまいたかった。
◆
荷解きを終えたところで、丁度お嬢さんが俺を呼びにきた。
彼女に案内され、食卓に招かれたところで、俺は閉口した。大きく長いそのテーブルには、ところ狭しと豪華な料理──────鯛の刺身の盛り合わせや、山盛りの天ぷら、肉料理は角煮やカツレツなど──────が置かれていたのだ。
「お嬢さん、今日はそんなにおめでたいことがあったのですか?」
「? ええ、先生が帰ってきて、しかも今日から一緒に暮らしてくれるんですもの、これがおめでたいことでなくて、何がおめでたいことなんでしょう?」
恐るべきことに、これは俺の……俺のためだけに用意されたものだとお嬢さんは言う。
俺は覚悟、というより諦めの境地に達して、大人しく食卓についた。するとお嬢さんが向かい側に、とても楽しそうな顔をして座るのだ。
ふたりきりの食事だ。気になって「桜子さんやお父さんは?」と聞いてみる。
「桜子は先にひとりで済ませてしまうし、お父様はいつも部屋で食べていますから。ですからこうして誰かと一緒に食事をするの、久しぶりなんですよ。いっぱい食べてくださいね、先生」
「それは、寂しかったんじゃないですか?」
「まあ、彩枝はそんなに子供じゃありませんわよ? ふふ、でもそうですね、先生と一緒だと浮かれてしまうくらいには、子供っぽいところもありますわ」
そうやって面白そうに笑ってのけるのだから、敵わない。
「今日も明日も明後日も、ずうっと先生と一緒なのですよね。ああ、想像もできません。まさかこんな日が来るなんて」
「3日後には飽きているかもしれませんよ」
お嬢さんがあまりに大げさなものだから、大人げなくそんな意地悪を言ってしまう。
と、お嬢さんは突然に口を閉じ、俺の瞳をまっすぐに見据えた。俺はたじろぎ、彼女と同様に口を閉じてその黒々とした瞳を見つめ返すしかなかった。
「きっと飽きさせませんわ」
それを言う彼女の声色には何か決意めいたものが含まれていて、俺は茶化すこともできず、曖昧に頷いて刺身を一枚口の中に放り込んだ。
◆
その夜、筆記具を携えたお嬢さんが俺の部屋を訪ねてきた。俺は名目上家庭教師ということになっているわけで、こうやってお嬢さんの勉強を見てやるのがこれからの主な仕事となる。
とはいえ……。
「……」
お嬢さんが解いているのは今日の課題のようだが、彼女はスラスラと問題を解いては自分で答え合わせまでしてしまうから、俺の出番は全く無い。
見る限り、間違っている部分も無いようである。なんと手のかからない生徒であろうか。
決してそんなことはしないが、俺が寝転んでスマートフォンを弄っていたって問題は無いだろう。
「……お嬢さん、仕事をくれませんか」
「はい? 今まさにしていただいておりますけれど」
きょとんとした顔でそう言われる。だが、これは世間一般に仕事とは言われないであろう。このままでは俺は手のかかる置物のような状態だ。納得は出来ない。
「そうかもしれませんが、これではあまりに甲斐がない。こんなことで給料を貰ってしまっては引け目を感じてしまいます。ただでさえ、お嬢さんは俺を厚く遇してくれているというのに」
「そうですか? 彩枝は先生に見られているというだけで、とても勉強が捗りますのよ?」
「それは、喜ばしいことですが……」
「ええ。ですからこのままで構いません。夜に殿方の部屋を訪れるというのも、ドキドキして楽しいですし」
胸に手を当ててにこやかに笑うサエお嬢さん。彼女の笑顔はあまりに無垢で愛らしく、言葉に迷いはなく、本当にこれで良いような気がしてしまう。
冷静になって考えれば、この時間に彼女が部屋に来ることだって問題があるように思えるのだが……。
仕事についてお嬢さんに相談してもあまり良い方向には転ばないかもしれないなと思い、俺は桜子さんに相談してみようと思うのだった。
◆
「仕事、ですか」
「ええ。このままだといたたまれない気持ちになってしまうので……」
朝食を終え、学校に向かうサエお嬢さんを見送った後、俺は桜子さんに昨日考えたことを相談してみた。
この小柄な女中は、今年で還暦を迎えるという。サエお嬢さんの祖父の代からこの家に奉公していて、結婚もしていない。彦谷家に人生を捧げた人物だ。
その在り方を俺は学生時代から密かに尊敬していた。
「明良さんは真面目なのですねぇ。彦谷のお家に勤めて、それも働かずにお金が貰えるとなったら、誰でも大喜びすると思いますけど」
桜子さんの言い分に苦笑する。
「俺はそこまで正直にはなれません。出来ることならもっとお嬢さんのお役に立ちたいですし」
「明良さんがいてくれるだけで、十分お役に立っているとは思いますけどね。そういうことなら、色々とやることはありますよ。何分私もトシですから、お掃除なんかは手の及ばない部分もありますし。手順は教えますから、一緒にやってみますか?」
「是非、お願いします」
そうして俺は屋敷の掃除をすることになった。
やってみて改めて思うのだが、この屋敷は広い。一階だけでも20畳はある居間を中心に、それを取り囲む廊下や茶の間、客間、俺が使っている部屋と、空き部屋がふたつ。
なるほど、これを掃除するのは重労働だ。しかし……
「やっぱり嘘じゃないか、空き部屋が無いなんて……」
空き部屋に溜まった埃を掃き取りながらひとりごちる。
ふたつの空き部屋は俺にあてがわれたものよりもひと回り小さい。今更そのことでお嬢さんを責めようなどとは思わないが、過剰な厚遇への疑問は増す。
「明良さん、どうかされました?」
俺が独り言を言っているのに気付いて、傍で見ていた桜子さんが聞いてくる。
彼女なら口も堅い。これも相談してみて良いかもしれない。
「いえ。お嬢さんは何故俺にこんなにも良くしてくれるのだろう、と。いくら子供の頃世話になった相手だからといって、ここまでしてくれなくても良いでしょう? 俺は忘れられていても仕方がないとまで思っていたのに……」
「あらあら、おほほ」
俺の真剣な問いに、何がおかしいのか、桜子さんは口元を押さえて笑い声を上げた。
「俺、何か変なことを言いましたか?」
重ねて問うと、桜子さんは咳払いをして呼吸を落ち着けた。そうして諭すような口調で話し始める。
「いえいえ、ごめんなさいね。そうですねえ、確かにお嬢様は、明良さんのことを特別扱いしていますねえ」
「でしょう? 評価されなさすぎても悲しいですが、何もしていないのに評価されすぎるのも居心地が悪いんです」
初めて自分の気持ちに共感してくれる人が現れた安心感と喜びで、食い気味に話してしまう。しかし桜子さんは「でも」と言葉を続けた。
「何もしていないなんてことはないでしょう? 明良さんはお嬢様にとても優しくしてくださいました。物心がつく前にお母様を亡くして、旦那様もお忙しい方でしたし、私はあくまで女中。そんな中で明良さんの存在はお嬢様にとって大変大きいものだったのですよ。先生、先生と、親鴨についていく小鴨のように明良さんを慕うお嬢様のなんて嬉しそうで、可愛らしかったことか……」
桜子さんが遠くを見るように目を細める。
その仕草と声色で、これが俺を慰めるための世辞などではないことがわかる。
「そうだったんですか……」
あの頃の俺は、ただお嬢さんと過ごすのが楽しく、また当時から折り合いの良くなかった両親と離れる口実にもなったから、自分が世話になっているという気持ちはあっても、お嬢さんの救いになっているだなんて思いもしなかった。
「ええ。明良さんがいなくなってからのお嬢様はとても寂しそうで、先生はどうしているだろうか。もしまた先生に会えたら恩返しがしたいとしきりにおっしゃっていました。ですから私も、明良さんが帰ってきてくれて本当に嬉しく思っているのです。引け目を感じることなんてありません。是非このお屋敷にずっといてくださいな、お嬢様もそれを望んでおられますから」
「……わかりました。でもやっぱり、もう少し色々と仕事を教えてください。お嬢さんが俺に対して感じているのと同じくらい、俺もお嬢さんに恩を感じているんです」
「ええ、頑張ってくださいね」
それから俺達は黙々と、屋敷中の掃除を進めるのだった。
◆
「先生? 先生ー?」
掃除を一段落させ、庭にある池の鯉に餌をやっていると、そんな声が聞こえた。
「お嬢さんが帰ってきたか」
鯉の餌に蓋をして、迎えに行こうとした時にはチラリとお嬢さんが障子から顔を出していた。
俺と目が合うと、お嬢さんはにっこりと零れるような笑みを浮かべる。思わず頭を撫でてやりたくなったが、手には餌の匂いがついているし、それでなくても不用意に女性の体を触るのは失礼だと思いとどまり、中途半端なところで手が宙に浮いた。
「先生、こんなところにいらしたんですね。まあ、鯉の餌やりなんて、桜子に任せてしまえばいいのに」
俺の手の中にある鯉の餌を見つけてお嬢さんが言う。
「その桜子さんに頼まれたんです。こういう小さなことでも任せてもらえると嬉しいものですよ。お嬢さん、俺は池の鯉のようには生きられませんから」
「でも、鳥のようにどこかへ飛んで行っても嫌ですからね?」
ただぼうっとして、餌を投げ込まれるのを待つような生活は出来ない、という意味合いで言ったことを、賢いお嬢さんは正しく理解していた。
桜子さんが庭に下りてきて、俺の手を取る。
「先生、わがままを言っても良いですか?」
不安そうな表情だった。思えば、帰ってきてからの俺はお嬢さんに冷たかったかもしれない。
故郷に帰ってきて、実家も、彦谷の家も自分の居場所でないように感じて、お嬢さんとの間に一線を引こうとしてきた。
お嬢さんもそれを感じていたのだろう。だからこうやって、俺をこの場に留めようと必死なのだ。
「ええ、なんなりと」
少しかがんで、お嬢さんと目線を合わせる。ああそうだ、昔はこうやってお嬢さんの言葉に耳を傾けていたじゃないか。
これまでの俺はみっともなかった。小さなことを気にして卑屈になって、目の前にいる人のことさえまっすぐに見ようとしていなかった。
「まず、学校に行く時は、毎日お見送りしてください。それと、帰ってくる時も、必ず玄関までお迎えに来て、真っ先におかえりを言ってください」
「はい」
「彩枝が屋敷にいる時は、他の仕事をせずにいっぱい構ってください。テストの成績が良かった時はたくさん褒めてください」
「わかりました」
「それと……ええと、とにかく、彩枝を甘やかしてください。寂しい思いをさせないでください。もう……どこにもいかないでくださいまし、先生」
「それは、中々骨が折れる仕事ですね」
「先生!?」
お嬢さんは頬を赤らめて、俺を見上げながら睨んでくる。
「ひどい人! 彩枝がこんなにお願いしているのに! それに、まだまだたくさんたくさん、して欲しいことがあるのを我慢しているのに……!」
「すみません、冗談です。わかりました。お嬢さんが傍に置いてくれている限り、俺はどこにも行きません」
本心を言えば、嬉しくてたまらなかった。今すぐお嬢さんを、力いっぱいに抱き締めてやりたかった。
もうこの世のどこにも、自分を大切に想ってくれている人は、味方してくれる人はいないと思いながら帰ってきたのに、実際はこんなにも美しい人が一途に、大切に想ってくれていたのだ。愛してくれていたのだ。
これ以上の幸せがどこにあろうか。この人の隣が、俺の居場所なのだ。
ああ、けれど、これ以上を求めてしまいたくなる。この優しく、素晴らしい人を、自分のものにしたい、などと……。
◆
俺が彦谷の屋敷で世話になり始めて、1ヶ月の時が過ぎようとしていた。
俺はその内に仕事にも慣れてきて、今では桜子さんと一緒に食事の準備などもするようになったし、当初はぎこちなかったお嬢さんとの関係も良好なものになっていた。
サエお嬢さんの父である
この日は休日で、俺は以前のお嬢さんの「わがまま」に従って、今は彼女と縁側でふたり、茶を啜っていたる。
お嬢さんと雑談しながら、桜子さんの用意してくれた茶菓子のかりんとうを口の中に放り込む。カリカリとした食感と甘みが口の中に広がって、苦い緑茶に良く合った。
万事が上手く行き、世間のしがらみは遠く、凪のような、穏やかな日々が続いていた。この街には夏と、それに先立つ梅雨の足音が微かに聞こえ始めていて、季節の移り変わりによって、自分がここに馴染んで行っているのを実感する。
「梅雨になったら庭の
「学生の頃は花の良さはあまりわかりませんでしたけどね。ここで暮らしていると、そういったものにも目が行くようになってきました」
ここでは時がゆっくりと流れて、大きくはないが、深い
しかし、そんな中で
俺の目に映るお嬢さんの姿は、日に日に鮮やかさを増していっている。
今日のお嬢さんは髪をひとつにまとめ、涼しげな半袖のブラウスと短めのスカートだけを身にまとい、大胆に肌を出している。
瑞々しくきめ細やかな肌は陽光を受けて輝き、彼女が動いて肩や太ももが垣間見えると、気恥ずかしくて目を逸らしてしまう。
「次の春にはお花見にも行きたいですね……先生、少しお傍に寄りますわね?」
お嬢さんは何を思ったのか唐突に湯のみと茶菓子を置いてあったお盆を後ろに追いやると、俺のすぐ隣まで距離を詰めてくる。
それだけでなく、彼女は俺に体重を預け、頭を肩に乗せた。
「お嬢さん? 眠いんですか……?」
体の左側で、彼女の体重と肌の温度を感じる。程よい負荷と温もりだった。
風が吹くと黒髪がさわさわと腕を撫で、ふわりと良い香りも漂ってくる。
「先生、こちらを向いてくださる? 話す時に相手の目を見ないのは、失礼でしてよ?」
俺はずっと顔を逸らして、邪な考えを起こさぬように努めていたが、ついにお嬢さんに命令されて逆らえなくなった。
上目遣いに俺を見る、潤んだ、艶っぽい瞳と目が合う。
5つも年下であることなど感じさせない、大人の、女の目だった。
お嬢さんが吐息混じりに囁く。
「先生、彩枝は気付いておりますのよ?」
息を呑む。痛い程に胸が鳴る。ああ、それもお嬢さんには気づかれているだろう。
何に? などと尋ねるまでもなく、お嬢さんはそのまま核心を突く言葉を口にする。
「先生が彩枝を追う目線が熱っぽいこと。先生が彩枝のことを、女として見ていること」
「あ……」
何か弁解しようとして、そんな呻きとも吐息とも取れないような声だけが漏れる。
「良いんです、先生。彩枝は何も不満に思ってはいません。寧ろ嬉しく思っておりますのよ? 昔からお慕いしていた殿方が、とうとう自分をそんな目で見てくれているのですから。先生、彩枝は、5年も待ったんですのよ……?」
お嬢さんの左手の指が微かに頬に触れて、俺は身を強張らせる。
彼女は親指で俺の下唇をそうっと撫でた。性への期待に、体の奥底が震えるような心持ちがした。
「先生、今夜、先生のお部屋に行きますわ。待っていてくださいね」
このまま口づけでもされていれば、俺は流されるままにお嬢さんを求めていたかもしれない。
けれどお嬢さんはそれだけ言って、俺の体から離れた。
「っ……は、はい」
情けないことにお嬢さんの告白に何も答えることが出来ず、俺は言われるがまま頷き、お嬢さんはお盆を持って、桜子さんのいる厨房の方へ消えていった。
◆
その後のお嬢さんは普段通りで、昼食の時も夕食の時も、あの誘いのことを匂わせるようなことはしなかった。
俺にとってもその態度はありがたく、夜になるまでに色々なことを考える猶予があった。
風呂や歯磨きなど、寝る前の一通りの用事を済ませ、お嬢さんを待つ。
永遠にも思える時間が過ぎて、ようやくスー、と襖が開く控えめな音がし、髪を下ろしたサエお嬢さんが現れた。
「先生……」
「良く来ましたね、そこに座ってください」
「は、はい」
お嬢さんも緊張しているのだろう。俺がそう促すと素直に従い、そそくさとした動きで指し示した座布団の上に正座した。
「お嬢さん、これからすることの前に、いくつか確認したいことがあります。良いですか」
「はい」
言いながら、それこそ先生が生徒と面談をしているようだな、などと思う。夜中の自室でふたりきりの
「と、質問をする前に、言っておかなければならないことがありました。お嬢さん、俺も、お嬢さんのことが好きです。ひとりの女性として、愛しています」
緊張して言えなくなってしまう前に、畳みかけるように言い切った。お嬢さんの顔をまっすぐに見ることが出来ない。先に告白したのは彼女なのだから、これはただの確認に過ぎないはずなのに。
自分から言ったサエお嬢さんは、どれほどの勇気が必要だったことだろう。
「先生……彩枝は、幸せ過ぎて泣いてしまいそうです」
言われて、お嬢さんの目元を見る。きらりと光る水滴が滲んでいて、俺はそれをそっと指で拭ってやった。
「あ……ふふ、もう、泣いていたんですね」
「お嬢さん、俺も幸せです。この家に来てから、ずっと幸せでした。これ以上ないだろうと、何度思ったか知れません。けれど、今この瞬間が、これまでで一番幸せです……お嬢さん、最初に聞いておきたいのですが、このことは、お父さん……修治さんも承知の上ですか?」
そうでないなら、どんな言い訳をしようとも、修治さんにとって俺は娘に手を出した不埒者でしかない。
至極真面目な質問だったのだが、お嬢さんはかぁっと顔を赤くして、指をもじもじさせながら、小さな声で答えた。
「そのっ……私が先生とこれからしようとしていることまでは、知らないはずですが。ただ、私が先生のことを好いていることは父も承知しています。先生が帰ってきたその日に、相談しましたから」
「あっ、すみません。少々配慮に欠けた聞き方でしたね。でも、そういうことなら良かった。俺達はまだ若い。踏み入った関係になるなら、周囲の人々の理解は必須ですから」
正直な話、これが一番の懸念であったから、そこに問題が無いと知れれば、後はさして重要な問いは残っていない。俺は一度肺に溜まっていた空気を吐き出すと、次の問いに移行した。
「では次。俺ははっきり言って、そう立派な人間じゃありません。お嬢さんに世話してもらっていなければ仕事も無いような人間でした。実家だって裕福じゃないし……我が親ながら、俺の両親は人の卑しいところを煮詰めたような人達です。お嬢さんに迷惑をかけるかもしれない。将来のことを考えるのなら、あまり良い相手ではないかもしれません」
そんな家や両親が嫌になって、俺は実家を出たのだ。東京の良い大学を出て就職し、両親を黙らせるために。まあ、結果は見ての通りで、それ故に憂いを取り除けないでいるのだが。
この問いにも、お嬢さんは毅然と答えた。
「立派な人間でないなんて、そんなことはありませんよ。だって先生は今ここで彩枝を押し倒したって良いのに、こんな、面談みたいなことをして、凄く彩枝のことを考えてくれています。どんなに裕福な人でも、こんなことが出来る人はそうはいません。先生は気付いていないかもしれませんけど、そこが先生の美徳で、私が好きになった部分なんですよ。あまり自分を卑下しないでください。彩枝まで悲しくなってしまいます」
お嬢さんの最後の言葉に、俺はハッとする。
そう、ああいう物言いは、自分が傷つきたくなくて、人に気を遣わせるためにするものなのだ。この期に及んで俺は臆病になっていた。恥ずかしいことだ。この自嘲癖は改めねばなるまい。
「すみません、お嬢さん。そこまで言わせてしまって。それと、ありがとうございます。両親とは良く話してみようと思います。こうなったらもう、逃げられませんから」
先生、先生と呼ばれてきたけれど、今はもうお嬢さんに教わることも多くなった。
良いことだと思う。教えて、教わって、愛して、愛されて。それは対等だということだから。
「他に聞きたいことはありますか?」
「将来のことについては、まだまだたくさん、話し合いたいことがあります。でも、今はこれで十分です。今は、サエお嬢さんが欲しい」
「アキ先生が求めるなら、彩枝はいくらでも応えたいと思っております」
どちらからともなく、距離を縮める。やがて手を取り合い、離して、背中に回し……唇と唇が重なる。
なんて心地よい温もりだろう。お嬢さんを優しく抱き留め、目を瞑れば、ふたりが溶け合って、大きな熱の塊になっているようで……。
息継ぎをして、角度を変えて、また重なり合う。永遠にこうしていたって、まだ足りないだろう。
「んっ、せんせぇっ……」
お嬢さんが切なげに俺の名を呼んで、ようやく冷静になり、彼女を放す。
サエお嬢さんの頬は上気し、キスの余韻を確かめるように口元を押さえ、どこを見るでもなく俯いている。
はらりと耳にかかっていた黒髪が落ち、お嬢さんの顔との間にカーテンを作る。その光景は絵画のような端麗さと、娼婦の如き淫靡さが両立した凄絶な美で、息が詰まった。
そしてその美の全てが、今夜は俺のものなのだ……。
「お嬢さん」
「ぁ、先生……ふふ、彩枝は大人になったと思っていたのですけど、ダメですね。口づけひとつで、こんなにも蕩けて。先生は、いかがですか?」
熱っぽい瞳で、ふにゃりと笑うお嬢さん。その笑みに、俺の方がすっかり骨抜きにされてしまう。
「サエお嬢さん、可愛い……」
そんなありきたりな褒め言葉を口にして、またお嬢さんを、今度はさっきより力強く、彼女の体の輪郭がはっきりとわかるくらいに抱きしめる。
「先生も、可愛いですね……」
お嬢さんは抱きしめられながら俺の頭を優しく撫でる。子供にするような手つきだが、それに羞恥は感じず、ただ安らかだった。
「キス以外のことも、しましょう」
意を決して耳元でそう囁く。お嬢さんは無言で頷いて、俺の肩に手を置いて離れるよう促すと、ブラウスのボタンを外して胸元を緩める。
そうすると、上からは微かになめらかな脂肪の膨らみが見て取れる。そのチラリズムに胸を高鳴らせたのも束の間、お嬢さんは両手で服の裾を掴むと、一息に脱いでしまった。
「ふぅ……」
息を吐きながら、乱れた髪を左右に頭を振って落ち着け、最後に両手で後ろに払ってまとめる。その一連の動作の間に、ほっそりとした腕や、くびれた腰、そして何より、白い下着に覆われた胸の膨らみを目に焼き付ける。
と、彼女の視線が俺の方に向き、眉をひそめながら、腕で体を隠した。はて、と思っていると、唇を尖らせて言う。
「先生? 彩枝ひとりに恥をかかせるおつもりですか?」
「……お嬢さんに見惚れていて、すっかり忘れていました」
「まあ、先生ったら、調子がいいんですから」
「本心ですよ」と言い返しつつ、俺もシャツと下着をいっぺんに脱いでしまう。
「確かに、見惚れてしまいますね」
頬を赤らめたまま、お嬢さんが俺の体を見て言う。
「そうですか?」
お嬢さんと違って、あまり見応えのある体ではないと自分では思う。別段鍛えているわけでもない、肉付きの薄い男の体だ。
「殿方の裸をこんな間近で見るのは初めてですし、何より、先生のお体ですから……」
「見るだけでなく、いくらでも触れて、感じて良いんですよ」
両手を広げてお嬢さんを招く。すると彼女はおそるおそる、しかし確かに手を伸ばしてきて、俺の胸板に触れた。
「硬い……当たり前ですけど、自分の体とは、全然違うものですね」
興味深そうに感想を述べる姿は彼女の生来の真面目さが出ていて大変に可愛らしい、のだが……俺は眼下に見える、彼女のふたつの膨らみにどうしても目が行ってしまう。
脂肪で出来た、白い塊。極端な言い方をしてしまえばたったそれだけのものに、抗いがたい魅力を感じる。まして、相手はサエお嬢さんなのだから。
「先生も触りたいですか? その、彩枝のこれは、あまり大きくはありませんけれど……」
乳房を下から抱えて、差し出すように体を前のめりにするお嬢さん。
ただ、羞恥か、恐怖か、その手が微かに震えているのに気付く。
「お嬢さん、恥ずかしいのなら無理をしなくても」
胸ではなく、震えるその手を取って落ち着かせる。俺とて無理矢理にお嬢さんを抱きたいわけではない。互いの心はわかっているのだ。今日はこれで切り上げたっていい。
「い、いえ……はい。確かに、恥ずかしいの、ですけれど。無理はしていません。先生に全てを捧げたいのは、本当ですから……」
「……!」
日和った俺の考えは、その言葉で完全に否定された。
覚悟が出来ていなかったのは俺の方だ。女性にこうまで言わせてしまうとは。
「わかりました。そこまで言うなら、俺ももうやめません」
言って、下着の上からお嬢さんの胸に触れる。彼女の言う通り、大きさで言えば控えめだ。だが指に力を入れれば薄布に遮られながらでも、その柔らかさが感じられる。
「先生、その、いかがですか……?」
お嬢さんが自信なさげに聞いてくる。俺が夢中になって無言なものだから心配させてしまったのだろう。
俺は言葉を返さず、代わりにその唇を奪うことで返答とした。
「あ、んんっ……ちゅ、はっ、ちゅぱっ」
何度かついばみ、最後に深く口づけすると共に、舌で彼女の唇を割り開く。彼女は即座にその意図を察してくれて、俺の舌が口内に進入するのを許してくれた。
「ぢゅっ、れろっ、しぇんしぇ……ほれ、ひもひいいれす。んっ! んふうっ……」
上手く喋れないながらも一生懸命に感想を伝えようとしてくれるお嬢さんがいじらしくて、彼女の頭を抱き寄せて、不規則に動く舌を絡めとり、唾液を交換する。
「んっ、すうっ、ひゃっ……むっ、んんーっ!」
息継ぎもそこそこに彼女を求め続ける、やがて彼女の方から俺の頭を抱き、求めてくるようになったことに気付いて、俺は密かに彼女のブラジャーのホックに手を伸ばした。
それは思っていたよりも簡単に外れて、肩紐をずらすと、お嬢さんは逆らわずに腕を抜き、そしてまた俺の頭に絡みつく。
やがてすとんと互いの体の間に布が落ちる。それに構うこともなく、俺はお嬢さんの脇腹からせり上がるようにして、彼女の生の乳房に触れた。
「……!」
びくっ、とお嬢さんが体を震わせ、唇が離れる。唾液が銀の橋を造り、重力に耐えかねて、先ほどの下着の上に落ちて細い跡を作った。
「お嬢さんの体、とても綺麗で、触っていると幸せな気持ちになります」
「先生……彩枝は、嬉しゅうございます……」
今度は確かな言葉でお嬢さんを褒める。お嬢さんは接吻の余韻で息を切らしながら、艶っぽい声で返した。
……お嬢さんの乳房は汗でしっとりとして指に吸いつくような感触で、愛撫される内にその先端がピンと立ちあがって存在を主張する。
その部分に出来る限り優しく、労わるように触れてやると、またお嬢さんの体が小さく跳ねるのを感じた。
「気持ちいいですか」
乳輪をなぞるように指を滑らせながら聞く。
「あんっ、聞かないで、くださいっ……はぁんっ!」
その甲高い喘ぎこそが答えだった。俺は気を良くして、愛撫の手は止めずにお嬢さんに囁く。
「あまり声を出し過ぎると、桜子さんやお父様に聞かれてしまいますよ」
この歴史ある家は、歴史あるが故に、あまり防音には優れていない。ふたつ部屋を隔てていても、多少大声で喋ったり笑ったりしていれば、その内容まで聞き取れてしまう。
桜子さんの部屋は2階だし、1階の修治さんの寝室もこの部屋からは離れているが、それでも安心して叫べる程ではないだろう。
「せんせい、ひどいっ……!」
お嬢さんは目尻に涙を浮かべながら俺を誹る。いじめすぎるのはよくないなと頭では思いながら、俺の手はお嬢さんのスカートを脱がしにかかっていた。
「あ、やっ……!」
お嬢さんの手が俺の手首を掴んで止めようとするが、力が入っていない。ほとんど抵抗なく、俺は彼女をショーツ一枚の姿にすることに成功した。
血管が透けるほど白く透明感のある太ももは俺の欲望を尚も駆り立て、鼠径部の線はその先にある彼女の秘密の場所を想像させてやまない。
俺は本能の赴くままに彼女を布団の上に押し倒そうとし、しかしお嬢さんに片手で制された。
「こ、ここから先は、電気を消してくださいませんか? 灯りの下で全てを晒す勇気は、まだなくて……」
この願いに俺は素直に応え、灯りを消す。部屋は一瞬完全な闇に閉ざされ、月光だけが部屋を照らす。
しばしの間、暗闇に目を慣れさせるために互いを見つめ合う。徐々に鮮明になり、夜闇を纏って艶めくお嬢さんは、夜の女神の化身であった。
闇よりも尚濃い黒髪が存在感を放ち、濡れた唇が艶やかに輝く。均整の取れたその肢体は言うまでもなく美しい。彼女を見ながら、俺は嘆息した。
「先生、後の服は一緒に脱ぎませんか? それなら、彩枝も勇気が貰えると思うのです」
その提案にドキリとする。ふたり一緒に服を脱ぐというのは、これからすることへの確認作業のようで、いよいよ彼女とひとつになれるのだと期待と興奮が胸の中で渦巻く。
俺は頷くと、ズボンのベルトに手を掛けて外し、一気に下ろした。
お嬢さんもまた、ショーツをゆっくりと下ろし始めている。少しずつ、少しずつ彼女の鼠径部や恥丘が露になっていく様に、自分のパンツの中で欲望が屹立していく。
亀頭がゴム部分に引っかかり、それを外しながら、お嬢さんより数瞬早く脱ぎ終わる。
ショーツから足を抜くところをじっくりと観察し、再び俺達は向かい合った。
「先生の、それ、もう大きくなってらっしゃいますね……」
「……お嬢さんの裸体を前にして、こうならないはずがありません」
「そんな風に目を逸らさないで? もっとたくさん、彩枝をいやらしい目で見てください、先生……」
妖艶に誘惑の言葉を述べながら、お嬢さんはするりと滑るように俺の前にやってきて、そのまま跪いた。
次の瞬間、お嬢さんの指が俺の男根に触れたかと思うと、同時に、彼女の唇が剥き出しになった亀頭に口づけてくる。
「っ、お嬢さん……?!」
あまりに卑猥な行為に、狼狽の声が上がる。とてもではないが、お嬢さんがそんな
「ぁ、ごめんなさい、もしかして、痛かったりしましたか? これを見ていると、なんだかこうしてあげたくなったのです。凶暴ですけど、どこか愛らしくて……」
俺の顔を伺いながら喋るお嬢さんの吐息がかかって、ぞわぞわとした気持ち良さが男根から腰にかけて広がる。
……彼女の言うことを信じるのなら、今の行動は全くの天然ということになる。これを才能と言っていいのかはわからないが、彼女には天性のものがあるに違いない。
「痛くは、ありません。寧ろ気持ちがいいです。もしよかったら、そのまま舐めたり、咥えたりしてください」
「ああ、良かった。ではそうします」
心底ホッとしたような表情で、嫌悪感など一切ないように言うお嬢さんを見て、俺は背徳感に震えた。
お嬢さんは俺に言われた通りに男根を舐め始める。
亀頭を舌先で弄び、唇で包んで絞るように舐め上げたかと思うと、今度は裏筋に根本からゆっくりと舌を這わせる。時折俺の顔を見上げて、反応を確かめているのがいじらしく、またいやらしい。
「ぐっ、初めてなのに、とてもお上手ですよ、サエお嬢さん……!」
こんなことでお嬢さんのことを褒めることがあるとは想像していなかった。
お嬢さんは純粋で、俺に性技を褒められてだらしなく頬を緩めている。彼女はすぐにどうすれば俺が気持ちいいかというのを理解し、亀頭の傘の部分を舐めながら、手で睾丸をマッサージして、俺の快感を高めることに迷いがなかった。
「んじゅっ、じゅるっ、じゅぽっ、じゅぽっ……せんせぇ? びくびくしてます、ね。れろっ、んくっ……」
唾を呑み込む時の喉の動きで、口がすぼまり、それによって痺れるような感覚が男根を襲った。尿道の中を熱が込み上げてくる。
「お嬢さん、もっ、出ます……」
限界が近いことを伝える。暗にお嬢さんに口淫を止めてほしいということを示唆していたのだが、お嬢さんは寧ろより深くまで俺の男根を咥えて、射精を促してくる。
「せんせっ、いいれすよ、さえの、んじゅっ、じゅるるっ……おくちのなかに、ちゅぶっ、おだしに、なってっ……!」
果たして
「くっ、お嬢さんっ……!」
俺は無意識にお嬢さんの頭を掴み、ほとんど無理矢理に口の中へ精液を流し込む。快楽で頭は真っ白になって、もはやより強い快楽を求めること以外今は考えられなかった。
「んんっ?! んぶっ、んぐっ、ごくっ、ごくっ、こくっ……」
「うあ、お嬢さん、飲んで……!?」
お嬢さんの喉が、艶めかしく、何度も上下に動き、口の中のドロドロとした液体を飲み下しているのがわかる。
そこまでする必要はないのに、彼女は至極満足気な表情をして俺の男根から口を離すと、全てを飲み干したことを証明するために、小さな口をいっぱいに開いて口の中に精液が残っていないことを確認させた。
「先生の子種、大変おいしゅうございました……」
しまいには、頬に手を当て、恍惚として呟くのだ。凄まじい興奮で俺の頭は茹だって、ただ荒い息を繰り返すばかりだった。
「先生、ねえ、こちらにもくださいな?」
そして、彼女は布団に横たわり、自分の下腹部を指してそう言った。彼女の秘部は陰毛に包まれて未だ全容を見るに能わないが、その黒い下生えも既に濡れて、月光によって淫靡に煌めている。
俺は誘蛾灯に誘われる虫のようにふらふらとした足取りで彼女の元へたどり着くと、肉感的な太ももを押し開いて、その場所を目にした。
闇の中にあって、細かいところまでは見えないが、透明な露が僅かな光を反射しながら布団に垂れるのが見えた。それをさかのぼるように指で辿って行けば、ひくひくと蠢く肉の花弁、その入り口に辿り着く。
「んっ、あっ……」
敏感な部分に触れられて、お嬢さんが控えめな嬌声を上げる。俺は入り口の周りを解すようにしながら十分に指を濡らし、ゆっくりとその奥へと入って行った。
人差し指の第一関節が入ったあたりで感じる、強い圧力。それは受け入れて包んでいるというよりは、緊張して強張っているが故の締め付けだった。濡れてこそいるが、このままでは挿入には耐えられまい。
「お嬢さん、深呼吸して、力を抜いて」
「はい、先生」
お嬢さんに弛緩させることを意識させると、幾分か締め付けが弱まる。その隙に少しずつ奥へ指を滑り込ませていく。
「ふぅあっ、ぅんっ……」
締め付けが強くなったところで一度引き返し、お嬢さんの呼吸に合わせてまた進む。嬌声は少しずつ甘く蕩けるようなものになっていき、俺の鼓膜を通じて脳を揺らす。
たっぷり10分程もかけて、人差し指の全てが入り切った。
「大丈夫ですか、お嬢さん」
「っ、はい。痛くも、苦しくもありません。お腹の奥がじんわり暖かくて……」
これなら大丈夫だろうと、膣の中で指を動かし、膣壁を更に解していく。そうしている内にお嬢さんの声は「んっ、うっ」と小刻みなものになっていき、呼吸も浅くなるが、対照的に膣内は柔らかくなり、愛液が更に分泌されて指が動かしやすくなっていく。
「はっ、あっ、せんせっ、気持ちいっ、これ、好きですっ」
「その気持ち良さに逆らわないで、身を任せてください」
人差し指に加えて中指も用い、ぐちゅ、ぐちゅと水音を立てるようになった秘部を愛撫する。敷布団は彼女の体液で濡れ、表面にシミを作っている。
……そろそろ、良いかもしれない。
お嬢さんの表情を窺う。俺が指の動きを止めたことで息を整えていた彼女は、俺の視線と、そこに含まれた欲望を敏感に感じ取ると、目だけで静かに頷いた。
膣から指を抜き、付着した液体をティッシュで拭き取ると、俺はお嬢さんに覆いかぶさった。汗で頬に張り付いた髪を取ってやり、頬に手を当てる。じわりと温かい。
彼女のことを、まだ幼かった頃から知っている。好きな食べ物も、色も、細かな癖だって知っていて、5年離れてもそれらを忘れることはなかった。
美しい思い出、妹のように思っていた少女。それは今目の前にある現実で、誰よりも大切な女性だった。
「お嬢さん、良いですか」
最後の確認を取る。お嬢さんは臆することなく、ただ信頼だけを込めた瞳をして「はい」と答えた。
お嬢さんの足を広げさせて、その間に自分の体を滑り込ませる。男根に手を添えて、膣口の位置にしっかりとあてがった。
「先生、手を……」
挿入の直前にそう言われ、俺は伸ばされたお嬢さんの手に自分の手を絡ませる。そしてとうとう、男根を彼女の秘部に突き立てた。
「んっ……!」
男根の異物感は、指のそれとは違ったものなのだろう。お嬢さんは身を捩りながら、挿入に耐えようとしていた。
遅々とした歩みで、亀頭が膣へと埋まっていく。ヌルヌルとぬめった粘膜が与えてくる刺激は手や口とは一線を画している。
丹田に力を込めて快感に抗いながら、更に奥へと進んでいく。
「んんっ、先生っ? 今、どれくらい入っているのですか……?」
「まだ、半分といったところですっ……」
「はんぶん……ふああっ!」
嬌声を上げ、絡めた手をギュッと握るお嬢さん。
「ぞくぞくして、指の時とは、ちがい、ますねっ……!」
「痛くはありませんか?」
丁寧に愛撫したのもあってか、幸いにして血が出ている様子は見受けられない。とはいえ、初めてなのだ。なるべく気遣ってやりたい。
「いえ、寧ろ気持ちが良くて……先生が、ゆっくり入ってくるのがもどかしいくらいで……」
「っ……!」
熱っぽい吐息を漏らしながら言われて、驚きと興奮とが同時にやってくる。
彼女が身を捩り、嬌声を上げていたのは痛みや異物感からではなく、ただ快楽によるものだったのか。
彼女は最初からそれに浴していだけなのだ。
「お嬢さん、あなたという人は、淫らな女だ……!」
怒りにも似た欲望に突き動かされて、俺は男根の全てをお嬢さんの中へ抉り込ませる。
ゴツ、と亀頭が最奥に当たる感覚があり、お嬢さんは「ひぅっ!」と引き攣った声を上げた。
「あ、あぁ、先生が彩枝のいちばん深いところまで……気持ちよくて、幸せで、彩枝は、彩枝は……」
乱暴とも言える行いに晒されながら、サエお嬢さんは蕩けた声を出して惚けていた。
この行いによって危地に立つことになったのは俺の方で、最初とは違って優しく、しかし激しく俺を受け入れる彼女の肉壺に囚われた男根は、今にも精液を漏らしてしまいそうになっていた。
「はっ、お嬢さん……!」
痛みに耐えようとする人物が布を噛むのに似て、俺は射精感に耐えるためにお嬢さんの手の甲へ縋るように口付けする。
「先生、とても気持ち良さそうなお顔……嬉しい、彩枝の体で先生がこんなにも悶えてくださるなんて……」
魔性だ。俺はこんなにも必死なのに、お嬢さんはそんな俺を見て悦ぶ余裕すらある。
「先生、ほら、もっと気持ち良くなってください。彩枝と心行くまで交わって、先生の生命の源を彩枝の中へ放ってくださいな」
「はぁっ、クソッ!」
普段なら決してお嬢さんの前では口にしない言葉を使って自分を奮い立たせる。
このままでは終われない。お嬢さんを善がらせ、絶頂に導いてやりたい。
ほとんど意地だけを支えにして、俺は腰を振り始めた。
「んんっ! 動いて、ますっ、先生が、んああっ! 彩枝の中でっ!」
指で触れた時に、お嬢さんが感じやすい部分は大凡わかっていた。その場所を執拗に責めながら、絡めていた指を離し、腰を掴んで自分が動きやすく、耐えやすいポジションを作った。
「先生のゆびっ、たくましくて、熱いぃっ……!」
熱いのはお嬢さんの肌と、膣内も同じだ。前後運動をしながら男根は溶けていくかのようで、煮えたぎった精液は尿道いっぱいに充填され、少しでも気を抜けば放出されてしまうことだろう。
「っ、お嬢さん、あまり長くは保ちません……!」
「はいっ、ああっ! 彩枝の中で、たくさん出して、はあっ、くださいっ!」
お嬢さんが慈しむように俺の背中に手を回そうとする。俺は彼女がやりやすいように体を倒し、その抱擁を受け入れる。
最早どこからどこまでが自分の体なのか、その境界も曖昧になるほどに密着しながら、湧き上がってくる幸福感と快美感に身を任せる。
「お嬢さん、愛しています、サエ、彩枝……」
「やっ、先生、名前呼ぶのっ、あたま、弾けるみたいになってっ、アキ先生っ、明良っ!」
互いに名前を呼び合い、愛を囁き合う。ドクン、ドクンという鼓動を共鳴させ、肉体を分かち合う。繋がり合う。
こんなに心と体を任せることが出来る相手は、きっと他に現れない。何があっても後悔のないように、全力で彼女を求める。
「あっ、先生っ、口っ、キス、してっ! 声、でちゃうからっ!」
修治さんや桜子さんに聞こえてしまうという俺の言葉を覚えていたのだろう、俺は開き直って、いっそ聞かせてやろうとくらいに思っていたが、お嬢さんがこう言うのなら、望み通りに口を塞いでやる。
唇が重なり合い、最早これ以上に触れ合える場所などなくなる。
「んんっ、んっ、んんんん~~~~~ッッ!!!」
口を塞がれ、くぐもった声を上げながら、お嬢さんは全身を震わせ、忘我の境を越える。
肉壺は限界まできつく締まり、吸い上げるように精を求めて蠢く。俺もまた、自分の腰とお嬢さんの腰とを密着させ、高まりに高まった衝動を解放した。
これまでの人生で感じたことのない、魂ごと持っていかれるような至上の快楽に包まれながら、お嬢さんの中に自らの証を刻み込む。
射精は永遠のことだったか、それとも一瞬か。全身に凄まじい疲労感を抱えながら、俺は全てを吐き出し切って、震える腕に鞭打ちながら、お嬢さんの上から
全身は汗やらその他の液体やらでぐしょぐしょで、それはお嬢さんも同じだった。未だ口を開けて天井を見上げている彼女のために、俺はタンスからタオルを取り出し、彼女の顔や体を丁寧に拭いてやる。
「ありがとうございます、先生……」
ある程度のところで彼女は上体を起こし、俺からタオルを受け取る。
互いの体からする汗の匂い、脱ぎ散らかされた服、乱れ切った布団。それら行為の残滓を見て、彼女を抱いたのだと改めて自覚する。
軽率だっただろうか。いや、そうは思わない。俺達は本当に愛し合っていると思うし、後悔はどこにもなかった。
「この時間からシャワーを浴びるとふたりを起こしてしまうかもしれませんし、今は体を良く拭いて、水分補給をしてから寝てください。お嬢さん、今夜は本当に素敵な夜でした、ありがとう」
何はともあれ、礼を述べておきたかった。幸福で、夢のような時間だった。
お嬢さんは優しい笑みを浮かべて俺の言葉を受け止めてくれる。
「こちらこそ。先生、これからもどうか末永く、彩枝を愛してくださいね」
俺は力強く頷き、最後に一度、サエお嬢さんを力強く抱きしめた。月が、俺達を祝福してくれているようだった。
◆
お嬢さんと愛を交わしてから数日、俺達は互いの家族に報告し、晴れて交際は認められた。
俺の日々の仕事の中には、彦谷家の婿として修治さんからの直々の教育を受けることが追加されて慌ただしくなり、またその分お嬢さんと一緒にいる時間が減って、彼女が父へ文句を言いに行く回数が増えたが、大きくは変わっていない。
そして今日は特別に時間を貰って、お嬢さんとふたり、あの山へと登りに来ていた。
この山の頂上にある城跡は、俺が地元を離れている間に国指定の史跡に認定され、それに伴って登山道がこれまで以上に整備されているのが驚きだった。
鬱蒼としていた木々は見通しが良くなるように伐採され、地面はコンクリートで舗装された部分も多くなっている。
登山客もそれなりにいて、何組かとすれちがって挨拶を交わすこともあった。
久々の登山に疲労感を覚えながら、最後の段差をお嬢さんの手を取ってやりながら登りきる。
少し歩いてから振り向くと、街の様子を一望できた。
ふもとにある彦谷家こそ見えないが、俺の実家や母校、子供の頃お嬢さんと一緒に遊んだ公園などは、はっきりとわかった。
「先生は、この街がお好きですか?」
隣で一緒に眺めていたお嬢さんが聞いてくる。
「今でも、あまり好きではありません。でも……」
「でも?」
「お嬢さんがいるから、ここに居てもいいなと思えます」
「良かった。これからも、ずっと一緒ですよ?」
「もちろん。さて、目当てのものを探しにいきましょうか」
お嬢さんの手を引いて歩き出す。俺達は何も、ただ景色を見るためだけにここに来たのではなかった。
観光の目玉である城跡の横を抜け、落ち葉の多い道を行く。その先には、立派な枝ぶりの楠があった。根本には大きな洞が開いていて、子ども一人くらいなら入れるスペースがある。
そう、ここは俺達の出会いの場所だった。
「これが残っていて良かった。道中景気よく木が切られていたものですから、気が気でなかったんですよ」
「ふふ、私もです」
お互いに同じことを懸念して、それが杞憂であったことに笑い合う。
「さて、じゃあ、お嬢さん。いえ、彩枝さん」
俺達がここに来たのは、ふたりにとっての特別な場所で、ある儀式をしておきたかったからだった。
お嬢さんを名前で呼び、その手を取ってまっすぐに見つめる。
漆黒の瞳、夜空のような髪。美しく聡明な、俺の恋人。誇らしい気持ちでいっぱいになりながら、俺はその言葉を口にした。
「俺と、結婚してください」
──────その時のお嬢さんの笑顔を、俺はこの場所で彼女と出会った時の思い出と同じように、一生忘れはしないだろう。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
もし少しでもエッチだった!面白かった!と思ってくださったなら、評価やお気に入り等していただけると励みになります。