※この作品はR-18です。

無一文のムジナさんと性欲だけは旺盛なチー牛くん   作:a-su

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ムジナさんを書くのが楽しすぎて、3話の予定が4話になりました。
作者も反省しているので許してやってください。


中編① チー牛大学生との同居生活でどんどんエッチになっていくムジナ

 

 ◆◆◆ 梅雨の季節 ◆◆◆

 

 僕はゼミの先輩に傘を盗られた。

 

『おいウシィ、傘借りっぞw』

『はっ、はい、へ、へへっ』

 

 笑ってごまかしてしまう。そんな態度だからかな、返してもらえたことは一度もない。

 

 だからその夜も、僕は雨の中を自転車で帰っていた。スニーカーがぐしょぐしょだ。

 子どもの頃に通っていた古本屋の前を通りかかる。三年前に閉店して、シャッターが下りたままだ。

 

 ひさしの下に誰かがうずくまり、呻いている。

 

「ぅ……うぅ……」

 

 酔っぱらいかと思ったけど、白いコートが濡れねずみなのが気になって声をかけた。

 

「あ……の、大丈夫、ですか? あ、怪しいものじゃなくて、僕、牛島(うしじま) 要(かなめ)っていいます。スマホとか持ってますか。家族に連絡できますか。なかったら貸しますけど……」

 

 若い女の人だ。よどんだ青い目が僕を見上げる。

 

 スマホない。

 家族いない。

 お金ない。

 家、ない。

 仲間、もう、誰もいない。

 

 短い言葉を一つずつ並べたあと、彼女はよろよろと立ち上がった。

 

「ねぇ……泊めてくれないかな」

「いっ!?」

「タダとは言わない。君にも利益があるから」

 

 雨が注ぐ街灯の下、グレーのショートボブが首筋に張りついている。しずくが乗った長いまつげと、薄い唇。

 

 ……え、なにこのお姉さん。

 

 顔がいい。

 胸でっか。脚なっが。

 太ももがムッチムチ。

 そして顔がいい。よすぎる。

 

 心臓が止まりそうなほどに好みで、疑いようもなく一目惚れだった。

 

 ◆

 

 家に連れて帰り、タオルを渡して、インスタントの味噌汁と冷凍のチャーハンを出した。

 

 そのあとで「タダとは言わない」の中身を聞いて、僕は汗ばんだ手を膝の上で握った。

 

 だって売春だ。きっと罰が当たる。ガチャで最高レアを引いた次の日に財布を落とす、みたいな。

 

 だからルーズリーフを出して、スマホで調べながら契約書モドキを書いた。我ながらアホだけど、いわゆる搾取みたいなことはしたくない。あの先輩みたいなことはやりたくなかったんだ。

 

 

 

 一、ムジナ(以下「甲」)は、

   牛島要(以下「乙」)の家に住む。

 二、乙は、甲に寝床とごはんを用意する。

 三、甲は、その代わりに乙の性処理をする。

   ただし一日に二回まで。

 四、避妊具は必ず使う。

 五、乙は、甲の過去を聞かない。

 六、どちらかが嫌になったら契約はおしまい。

 

    甲 狢(ムジナ)  乙 牛島(うしじま) 要(かなめ)

 

 

 

 シャワーをする彼女に、僕のTシャツを貸した。イベント限定で、限定衣装のSSRキャラが印刷されてるやつだ。

 

「でっ……!」

「なに」

「い、いえ」

 

 胸、でっ……か。

 SSRキャラが、胸のところでビヨーンと横に伸びている。推しの顔が見たことのない横幅になってた。シャツの前がカーテンみたいに持ち上がっている。

 

 自分もシャワーをしてから寝室のドアの前まで行って、僕は引き返した。契約書があってもヤバい気がしたんだ。

 

 居間のソファで参考書を開いて、眠ったふりをする。

 

 ……寝れるかっ。

 

 僕はTシャツの下の、あの、女の人の胸についてるアレの形を頭の中で逆算していた。

 

 

 ◆

 

 

「寝てるし。ベッド、あっちなんだけど」

「え、あっ、え、ムジナさん? べ、ベッドって」

 

 

「あの、ムジナさん……もう一回、いいですか?」

「二回までなら、契約の範囲内だけど」

「ありがとうございますっ!」

 

 

「出るっ、出ますっ、ムジナさんのおまんこに!」

「~~~……ッ!?」

 

 

 ◆

 

 ……凄かった。童貞の妄想なんかぶっちぎるくらいムジナさんのアレは凄くて、顔も声も、アソコも最高で……とにかく最高の初体験だった。

 ああでも、くそぉっ。神々しすぎて畏れ多くて、おっぱいを揉むタイミングがなかったっ。次は、次こそはっ。

 

 

 

 ◆◆◆ 同居生活 二日目 ◆◆◆

 

 ドンキというところは迷路だった。

 天井まで箱が積まれていて、同じ歌がずっと流れている。造り物みたいな花の匂いと、焦がしたバターみたいなお菓子の匂いが混ざって、鼻の奥がむずがゆい。

 

 ……女の穴が不思議とムズムズする。こんなの初めてだった。昨夜、牛島(うしじま) 要(かなめ)と交わったせいだろうか。

 

 部屋着の棚で、地味な色のキャミソールとショートパンツを選んだ。これならエロすぎるとは言われないだろう。

 彼がレジの列に並んでいるあいだ、コスプレの棚の前で足が止まった。白と黒の、まだら模様の布が目に入る。

 

 ……牛ビキニ? なに、このいやらしいの。

 

 ◆

 

 家に帰って着替えて見せる。

 

「どう? これなら文句ないでしょ」

「っ、あっ、は、はい、いいと思います」

 

 なのに彼は、私を見るなり目をそらした。耳まで真っ赤……エロいの? ただ薄くて体にぴったりとしてて、脚が露出するってだけの服が?

 

 ◆

 

 夕飯は彼が作った。トン、トン、トン、と野菜を刻む音が一定で、思ったより手際がいい。

 

「ばあちゃんに教わったのは、これくらいで」

「これくらいって、十分でしょ。……私、料理なんてしたことないし」

 

 居間の木のテーブルに、野菜炒めと味噌汁が並んだ。天板には、湯呑みの丸い跡がいくつも残っている。

 

「じいちゃんの代からあるテーブルなんです」

 

 椅子は四つで、箸は二膳だけ。

 

 ◆

 

 夜、彼のベッドに並んで座る。

 

「手でいい? 昨夜みたいに、汗だくになるのはめんどくさいし。新しい服を汚したくないし」

 

「は、はい……っ」

 

 ハーフパンツの上から手のひらで撫でると、布の下で陰茎がもう硬く張っている。彼は「おウッ」という動物的な声を漏らし、数分で射精した。

 二回目は、仰向けに寝て脚を開く。

 

「好きにしていいよ。私、じっとしてるから」

 

 昨夜のは、たまたまだ。久しぶりだったから体が勝手を忘れていただけ。

 これは仕事。寝床とごはんの代金。どうでもいい。どうせ、ほかにやることなんて何もないし。だから天井の木目でも数えていればいい。

 

 ゴムをつけた彼が、おそるおそる覆いかぶさってくる。うっ、と息を漏らしながら、ぬぷり、と入ってきた。

 律動を感じながら、私は天井を見上げる。節が三つ。四つ……。

 途中で彼の動きが止まった。

 

「胸、さわって、いいですか」

「いいけど。何も感じないよ、胸なんて」

「はぁ……おっきいからですかね」

「くすぐったくもない。昔から」

「それでも、さわりたいです」

「物好きだね」

 

 彼がキャミソールの上から乳房に手のひらを乗せ、上半身を倒してくる。硬いのを根元まで私に沈めたまま、お腹とお腹がぴったり重なるくらい──。

 

 クリッ。

 

「んッ、んッ!?」

 

 私の体が跳ねて、彼を下から押し上げる。下腹部がひくひくと震え、汗が浮かぶ。

 なに、いまの。

 

 彼の下腹の硬い出っぱりが、割れ目の上の小さな粒をまともに押しつぶした、みたい。

 目が合う。眼鏡の奥の目がまばたきを忘れてる。

 

「い、いま、ムジナさんのナカ、ぎゅって……」

「なんでもない。ちょっと、びっくりしただけ」

「いや、でも、これ」

 

 彼は引き下がらなかった。男のを根元まで沈めたまま、付け根の硬いところを押しつけて小さく円を描く。

 くり。くり、くりゅっ。

 

「ぁ、待っ……そっこ、やッ!」

 

 胸は本当に何も感じない。乗っている手が汗ばんで熱いだけ。

 なのに、下の粒は!

 

「いま当たってる、当たってる! 固いのがグリグリ当たってるってばッ!」

 

 なにコレ、なにコレ、なにコレ。

 ぐりって潰されて、

 潰されたまま回されて、

 知らない。こんなの、知らない、

 皮の下でぷっくり硬くとがって、

 じゅわっと熱くなって、

 ぬめりが彼の付け根まで濡らして、

 

 ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ……。

 

「あッ、あッ、あッ、あッ、あッ!」

 

 ちがう。これは女の仕組み。汗と同じ。

 そう思うそばから、ナカが彼をきゅうっ、きゅうっ、と噛んでいる。

 

「あッ、あッ、ああッ!!」

「す、すごい、吸いついてきます……っ」

「いわ、なくて、いいっ! ぁ、あっ!」

 

 勢いよく突かれてるわけじゃない。いちばん深いところにも来ていない。腰をぐねぐねと揺らされているだけ。

 それなのに、粒から背骨を伝って、ぴりぴりした痺れが首の後ろまで這いのぼってくる。

 

 昨夜は、奥だった。子宮の入り口を何度も叩かれて落ちた。

 今夜は前。

 ……奥と前、いっぺんにされたら、どうなるの?

 思っただけで、ナカがきゅうっと縮んだ。

 

 怪獣こそが選ばれた命で、人間は選ばれなかったほう。五千年前からずっとそう思ってきた。

 その人間の、骨ひとつに。眼鏡の、私より背の低い、昨日まで童貞だった男に!

 

「ぁ、あ、あっ、もう、もう、それ、だめ……っ」

「だ、だめ、ですか……? でも、熱くて、とろとろで……っ」

 

 ぐりゅっ、と最後にひとつ押しこまれた。

 熱い、粒が熱い、お腹の下が熱い。熱いのが全部、粒の一点に吸いこまれて、きゅうっと小さく固まって──。

 

「ちが、っ……ちが、っ、あ゛ぁぁぁ……♡」

 

 あッ、あッ、落ちる、落ちる……! お゛っ! すとんって、おちるぅぅぅ……ッ!

 

 かかとがシーツを蹴る。

 膝が彼の脇腹をはさみこむ。

 粒がどくどく脈を打つ。

 ナカが彼を絞りあげた。

 絞ると粒がまた付け根の硬さにこすれる。

 びっく、びっくと腰が大きく上下する。

 止まらない。止め方わかんない。

 口が開いたまま閉じない。

 よだれが顎を伝っていく。

 

「あっ、ムジナさん、締まっ……出るっ、出ちゃいますっ……!」

 

「やっ! あ゛っ! あ゛っ! あ゛~~~っ!」

 

 彼が私にしがみついて、ナカでびくびくと脈を打った。どく、どく、と熱が打ちつけられるたびに、私はぽっかり開いた唇を「あ」の形にわななかせた。

 

 

 

 

 しばらく、天井の木目がぶれて見えた。はー、はー、と男と女の吐息が響く。

 ああ……まただ。昨夜のはたまたまじゃなかった。なんでか分からないけど、彼ってばひどく私に……ぴ(・)っ(・)た(・)り(・)くるみたいだ。

 

「君、いま、何したの」

「え、えっと……ほ、骨が、たぶん、当たってて」

「骨」

「す、すいませんっ」

「謝らなくていいけど」

「はい、すみません」

「変なとこに骨、生やしてるね」

「恥骨くらい、人間なら誰でもありますよ」

 

 ゴムを外す彼の手際が昨夜より少しだけよくなっていた。

 私はシーツを引き寄せ、まだひく、ひく、と脈を打っている割れ目の上の粒を、手のひらで押さえる。

 

 

 

 ◆◆◆ 七日目 ◆◆◆

 

「あの……ぱ、パイズリ、してほしいです」

 

 居間のソファで正座した彼が、そう切り出した。手には、「ローション」と書いた透明なボトルを持っている。

 

「ぱいずり? ……なにそれ。食べるもの?」

「えっと、その、おっぱいで、挟んで……こう」

 

 両手で胸を寄せてぎゅっと閉じる仕草を、彼は三回もやった。顔が真っ赤だ。

 

「それ君は何が楽しいの。挟まれてるだけじゃん」

「た、楽しいっていうか……夢、なんです」

 

 夢……。

 私は、黙ってキャミソールを頭から抜いた。ローション、という透明な液を谷間に垂らす。

 

 ソファに座り直した彼の、脚のあいだに膝をつく。ハーフパンツから出てきた陰茎は、もうお腹につきそうなほど反り返って、先っぽに透明なしずくを乗せていた。

 両手で乳房を左右から寄せて、谷間に迎える。

 熱っ……。

 

「これで合ってる? 思ってたより、間抜けな格好なんだけど」

 

「あっ、は、はい! ムジナさんのおっぱいに、僕の、ぜんぶ埋まってますっ。な、何カップあるんですか」

 

「知らない」

 

 胸の内側のいちばん薄い皮膚に、彼の脈動が直に当たる。どくん、どくん、と打つたびに、谷間の肉がほんの少し押し返される。

 変なの。手で握るより、こっちのほうが落ち着く気がする。

 

「や、やわらか、あったか……っ、抱き枕とぜんぜんちがう、三次元の本物の谷間……っ、うそだ、夢じゃない、夢じゃないっ!」

 

「何言ってるか分かんない。動かすよ。痛かったら言って」

 

 寄せたまま、上へしごく。谷間から赤黒い先っぽが顔を出して、また沈む。

 

 にちゅ、ぬちゅ、にちゅ……。

 

 汗とローションの混ざった音。見上げると、彼の顔があった。眉が寄って、口が半開きで、目だけがこっちを見ている。初めての夜と同じ、どうしようもないって顔。

 ……ふふ。

 

「こう?」

 

 左右からぎゅうっと強く寄せる。

 

「ひっ! そ、それっ、それ、やばいですっ!」

「ふうん。じゃあ、こう?」

 

 先っぽを谷間から出したまま、止める。彼の太ももがぶるぶる震えだした。

 

「と、止めないでっ、止めないでくださいっ……!」

 

 覚えておこう。寄せると鳴く。止めると震えて、ねだる。

 この顔、もっと見たい。もっと、もっと崩したい。

 

 二こすり目で彼の尻がソファから浮いた。

 

「もう出そう? いいよ、このままで」

「でっ、出ますっ、ムジナさんのおっぱいでっ、出ちゃいますっ!」

 

 三こすり目。

 谷間の奥で、根元がどくん、と脈打つ。

 精液が勢いよく鎖骨まで飛ぶ。

 首筋をとろりと伝う。

 熱い。

 伝ったあとが、すうっと冷えていく。

 

「はやっ。三回しか動いてないんだけど。……あと、出しすぎ」

「ムジナさんのおっぱいが悪いんです……まじで、何カップあるんですか」

 

 鎖骨の精液を指ですくって、しばらく眺めた。鼻に近づけると、ちぎった草の茎の青臭さに、川の泥の生臭さが少し混じっている。

 最初の夜、ゴムの向こうで私のナカに出されていたのは、これか。ちょっとだけ舐めてみたくなって、やめた。

 

 拭いたあとも、谷間の肌だけがじんじん、じんじんとしている。キャミソールを着直すと、布が谷間をかすめるたびに、ざわっ、ざわっと谷間だけが騒ぐ。

 

 なんで。なんで。なんで胸なんかが。

 ……何なの、これ。

 

 

 

 ◆◆◆ 十日目 ◆◆◆

 

 昼間にひとりだと、この家は静かすぎる。冷蔵庫のうなりと、寝室の時計の秒針しか聞こえない。

 本棚の奥の薄い本をめくってみたけど、知らない言葉ばかりですぐ閉じた。

 

 彼の枕に顔をうずめる。寝汗の染みた綿と、髪の脂の匂い。最初の夜は「知らない男の匂い」だったのに。

 

 すう、と吸いこむ。

 脚のあいだが、ひくっ、と縮む。

 ……なにやってるんだろ、私。

 

 もう一回、吸う。

 ひくっ。

 

 もう一回。

 ひくっ、ひくっ。

 

 ショートパンツの股がじわっと湿って、布が割れ目に貼りついていく。太ももを閉じて、もじもじとこすり合わせる。こすり合わせるほど、布が食いこむ。

 

 ほしい。

 ちがう。ほしくなんか、ない。

 でも、あの硬いの。

 二日目に粒をくりくり潰してきた、付け根の硬さ。

 最初の夜、子宮の入り口までずんずん届いた、熱い陰茎。

 思い出しただけで、空っぽのナカがきゅう、きゅう、と何もないものを噛もうとする。

 

 キャミソールの上から、自分で乳首をつまんでみた。何も起きない。

 

 ショートパンツの中に指を入れる。割れ目はもうぬるぬるで、指がつるっと滑った。

 

 粒を押す。

 くり、くり、と回す。

 ちがう。もっと硬いので、もっと重く。

 ナカに指を沈める。

 一本。

 二本。

 ああぅ、届かない……っ、いちばん深いところまで、ぜんぜん届かない!

 

 ちがう、ちがう、これじゃない。とどかない、とどかないぃ……っ!

 

「っ、ん……ばか、ばかっ……!」

 

 自分の指はただの指で、彼のはなんか違う。

 時計を見る。まだ二時……彼が帰ってくるまで、あと五時間。

 

 ……早く帰ってきて。

 思ってしまってから、枕に顔を押しつけた。思ってない。思ってない。思ってないってば。

 

 ◆

 

 夕方、炊飯器で米を炊いてみたけど、べちゃっとした。卵焼きは巻けずに焦げてる。

 

「焦げた。言っとくけど、火が強かったの。私のせいじゃない」

 

「た、食べます! ムジナさんの手料理……っ」

 

 帰ってきた彼は、泣きそうな顔で全部食べた。

 

「ばあちゃんのは甘かったんです。砂糖入れてて」

「卵焼きって、甘くするものなの?」

 

 覚えておこう、砂糖の入った卵焼き。

 

 ◆

 

 食器を洗ったあとで、彼が小さな箱を差し出した。中古のスマホだ。

 

「昼間、さみしかったら……あ、いや、その、連絡できるように」

 

「さみしくないし。……でも、もらっとく」

 

 登録された名前は、「牛島要」ひとつだけ。

 

 

 

 ◆◆◆ 十二日目~十六日目 ◆◆◆

 

 ムジナさんにスマホを渡してから、僕の一日は通知で区切られるようになった。

 

 ──十二日目 8:15──

 

『いってらっしゃい』

 

 ウサギがお辞儀をするスタンプだった。駅のホームで僕はにやけた。

 

 

 ──十二日目 12:03──

 

 学食で自撮りが届いた。カメラが近すぎて、青い片目と前髪しか写っていない。

 速攻で保存した。

 

 

 ──十二日目 18:40──

 

『まだ焦げる。このフライパン、たぶん性格悪い』

 

 黒い卵焼きの写真。

 

 

 ──十三日目 10:42──

 

『ちんぽってなに』

 

 講義中である。僕は机に突っ伏した。

 

『君の本棚の、うすい本に書いてあった。いっぱい出てくる』

 

 本棚の奥の、あれだ。

『それは、その、男の、アレのことで』

 とかなんとか、打つ指が震える。

『僕のとかの』

『卑語というか、なんと言いますか』

 

『ふうん。変なの』

 

 その日はそれで終わった。

 

 

 ──十三日目 17:55──

 

『卵焼き、また焦げた。ちんぽ』

 

 バイトの休憩室でお茶を噴いた。

 

『悪口じゃないです!! 焦げたときに言うやつじゃないです!!』

 

『ちがうの? 言いやすいのに』

 

 

 ──十四日目 13:20──

 

『じゃあ、おまんこって、私のここ?』

 

 ショートパンツの股の写真。灰色の布にシワが一本寄っている。その下には、毎晩僕のを呑みこんでるところがあって……そう思うだけでジーンズの前がきつくなった。

 いやいや、ゼミの最中だ。僕はスマホを裏返して、机の下で膝を組む。

 裏返したスマホがまた震えた。

 

『上の、ちっちゃい粒は?』

『ほら、君の骨が当たるとこ。あれ、まだ名前知らない』

 

 『く、クリトリス……です』と打つのに、三回打ち間違えた。

 

 

 ──十五日目 11:08──

 

『乳首、自分でさわってみた』

『くすぐったいのが、むずむずになった』

『左のほうが、むずむずする。なんで左だけなんだろ』

 

 その三行を、僕は講義が終わるまでに二十回は読み返した。左のほうが、むずむずするんだ。

 ムジナさんが自分で左の乳首を……真顔のまま、眉だけちょっと寄せて……。

 ああ、レジュメの内容が一行も頭に入らない。

 

 

 ──十五日目 18:30──

 

『砂糖入れた。甘い。焦げたとこは苦い。差し引きで、ふつう』

 

 半分だけ焦げた卵焼きの写真。黄色いところのほうが少しだけ多い。

 

 

 ──十六日目 10:00──

 

『ふぇら? っていうの、くちでするやつ?』

 

 皮をむいたバナナを、唇の手前まで持っていった自撮り。青い目が、カメラを見上げている。

 

『練習したらバナナが茶色くなった。ちゃんと食べたから、怒らないで』

 

 

 ──十六日目 16:45──

 

『はやく帰ってきて。昼からずっと待ってるんだけど』

『君のちんぽで、練習の成果を見せてあげる』

 

 言葉の使い方は合っていた。タイミングはヤバすぎるけどな!

 僕は最後の講義を抜けて、自転車をこいだ。

 

 ◆

 

 玄関の戸を開けると、上がり框(かまち)に、ムジナさんが膝立ちで待っていた。

 

「ただい……」

 

 言い終わる前に、ベルトへと手がかかった。汗だくのジーンズがパンツごと膝まで下ろされる。

 ぶるんと跳ね出た僕のちんぽが、ムジナさんの鼻先をかすめた。自転車をこいできたせいで、自分でも分かるくらい蒸れている。

 

「む、ムジナさん、僕、汗……っ」

「練習の成果、見せるって言ったでしょ」

 

 すん、すん、とムジナさんが鼻を鳴らした。

 嗅いでる。嗅いでる。僕のちんぽを、あのムジナさんが、真顔で嗅いでる!

 

「君のちんぽ、汗くさい」

 

 今ちんぽって言った?

 ああムジナさんが肉声で言った。メッセージの中だけの言葉だったのに、この薄い唇から、ちんぽ、って!

 あ、やっべ、脳が処理落ちした。もう玄関先でフェラされることしか考えられない。

 

 ぱくっ、と咥(くわ)えられる。

 

「いっ」

 

 歯が当たった。ムジナさんがすぐに口を離す。

 

「ごめん。バナナは、歯が当たっても文句言わなかったから」

 

 バナナと比べられてる? そうか、ムジナさんのフェラ処女を奪ったのはバナナ……バナナに嫉妬する日が来るとは思わなかったっ。

 

 もう一度。今度は唇で歯を包んでいた。ぬぽっ、と亀頭がまるごと呑まれる。

 

「んむ……ばなな、より、かたい。あと、あつい」

 

 咥えたままで、もごもご感想を言われる。

 勝った。バナナに勝った……!

 

 熱い舌が亀頭のあちこちを探る。ざらっとした舌の腹がカリの段差をこすって、僕は玄関の戸に背中をぶつけた。外で蝉が鳴いている。

 舌先が、裏筋の、カリのすぐ下ににゅるんと触れた。

 

「うあっ! う、裏筋っ、それっ、それぇっ!」

 

 思わず突き出した下腹のせいで、亀頭がムジナさんの上あごをこすった。ムジナさんの目が細くなる。いったん口を離して、唾液の糸を引いたまま、上目づかいで訊いてくる。

 

「うらすじ?」

「は、はい、う、裏筋、です……」

「ふうん。そこが弱いんだ? 覚えた」

 

 返事をする前に、裏筋を舐め上げられた。

 

 れろっ、れろっ、れろぉっ。

 

 頬をすぼめて吸われる。

 

 じゅぷ、ぢゅっ、ぢゅうっ。

 

 pixivのfanboxでもDLsiteでも見たことないくらいエロすぎる顔だった。頬がへこんで、青い目がうるんで、灰色の前髪が額に貼りついている。

 

 だめだ。

 だめだ、だめだ、もう、

 なにも我慢できない、

 お腹の底から、熱いのがせり上がってきて、

 

「でっ、出ますっ! ムジナさんっ、口、離してっ、出ちゃうっ!」

 

 ムジナさんが目を見開いて、口を離した。

 びゅるっ。一発目が顎(あご)に当たる。

 二発目が喉に。

 三発目がキャミソールの胸元まで飛び散る。

 止まらない。

 膝ががくがくする。

 戸に背中を預けたまま、何度も精液をぶちまけた。

 

 ムジナさんは顎についた精液を指でぬぐって舐めた。眉がぎゅっと寄る。

 

「にがっ」

「はーっ、はーっ、な、舐めて、舐めてるっ」

「バナナのほうがおいしいかな」

「がーんっ」

「それ口で言う人、初めて見た……」

 

 ◆

 

 その夜、ムジナさんは台所で卵焼きを焼いていた。

 キャミソールとショートパンツの後ろ姿。菜箸を持つ手つきが、前よりずっと慣れている。砂糖が焦げる手前の、カラメルの匂いがする。

 

 僕は、訊く前に後ろから抱きついた。

 いいですかと訊かずにムジナさんに触ったのは初めてだ。

 

「なに。いま火を使ってるんだけど」

 

 うなじに鼻をうずめる。シャンプーと、台所の湯気の匂い。

 キャミソールの裾から手を入れた。ずっしり重い乳房を手のひらですくい上げて、メッセージで教わったとおり、左の乳首を指の腹でつまむ。

 カチャン、と菜箸が床に落ちた。

 

「なんで、左の……っ」

「教えてくれたじゃないですか。左の乳首のほうが、むずむずするって」

「ばかっ、それ、ぁっ!」

 

 つまんだ乳首が、指のあいだでみるみるしこっていく。くすぐったくもないと言っていた乳首がこりこりだ。

 ムジナさんのお尻が僕の股間に押しつけられたまま、もじっ、もじっと揺れている。

 

「もう、この、すけべ」

 

 ムジナさんが自分でコンロの火を止めた。

 僕はその手を引いて、居間のテーブルまで連れていった。じいちゃんの代からある、湯呑みの跡だらけのテーブルだ。

 天板に両手をつかせて、ショートパンツをショーツごと片脚だけ抜く。ムッチムチの尻が、目の前に突き出された。割れ目がもう、蛍光灯の下でてらてら光っている。

 

 ゴムをつけて、亀頭を割れ目に押し当てる。ぬちゅ、と吸いつかれた。

 

「ん、んっ、まだ、はいる……。早く、どぴゅってしちゃってよ」

 

 ずぷぷっ、と一気に根元まで沈む。

 熱い。ゴムの膜ごしでも、とろとろの肉が四方からちんぽに絡みついてくる。初めてのフェラをした昼間からなんだろうか。何かを待っていたみたいに、ムジナさんのおまんこは濡れきっていた。

 

「あっ、今日、ちょっと変っ、かもっ……」

 

 気持ちいい。気持ちいい、気持ちいい、気持ちよすぎて膝が笑う。

 

「ふうっ、ふうっ、ふうーっ」

「あっ、あっ、あっ……」

 

 突くたびに、僕の下腹がムジナさんの尻肉にぶつかる。

 

 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ。

 

「あッ、あッ、ああッ!!」

 

 白い尻肉が波打つ。テーブルの脚が床をごとっ、ごとっと打つ。湯呑みの丸い跡の上に、ムジナさんの手のひらの汗の跡が重なっていく。

 

「ムジナさんのお尻、突くたびに波打ってます。見てるだけで出そう……っ」

 

 左の乳首をつまんだまま、いちばん深いところを突き上げる。つまんだ瞬間に、ナカがきゅっ、きゅっと締まる。

 

「ムジナさんの乳首、こりこりです。つまむたびに、おまんこ、きゅってなってます」

 

「いわ、ないでっ! ちくび、つままれて、る、っ、だけ、なのにっ……ん、んっ!」

 

 ムジナさんが振り向いた。唇が重なる。

 歯は当たらない。最初の夜は前歯どうしがかちっと鳴ったのに。今夜は、僕がムジナさんの下唇を先にくわえて、それから舌を入れた。

 唇を離すと、ムジナさんが目を丸くしていた。

 

「ちょっと上手くなってない? 誰で練習したの」

「ムジナさんで、練習したので」

 

 ムジナさんが何か言い返しかけた。

 その前に、テーブルの縁へ押しつけるように深く突き入れた。ムジナさんの体が前へずれて、天板の縁が割れ目の上に食いこむ。ちょうどクリのところに。

 

「クリとおまんこの奥、いっしょにされるの、好きですよね」

 

「ちが、っ、すき、じゃな……ぁっ、あ゛……っ♡」

 

 乳首をつまむ。子宮の入り口を突く。突くたびに、天板の縁がクリを押しつぶす。

 三つ同時に性感帯を刺激する。何度も。

 

「ムジナさんが欲しいです。講義中も、バイト中も、ずっと、ずっと欲しかったんですっ」

 

「そんな、ほしがられたら……っ、うまっちゃう、ナカ、ぜんぶ、うまっちゃうぅ……♡」

 

 うまる、ムジナさんの中身が、僕で……ちんぽがナカでもう一回り膨らんだ。

 

「そっれっ、ヤバ…………イひっ!」

 

 ムジナさんの背中が弓みたいに反る。

 嫌々をするように、お尻が左右に振れる。振れるたびにクリが縁にこすれて、また反る。

 つま先立ちになった足が、ぶるぶる震えている。

 

「ちんぽ、おく……っ、ちくび、いっしょ、だめっ、だめぇっ♡ しらない、こんなの、しらないぃっ!」

 

 覚えたての言葉で、ムジナさんが鳴いている。

 ちんぽ、って。僕のちんぽで、って!

 

 膝ががくがくと内側へ折れかけて、テーブルの縁を握る指が白くなる。粘膜が何度も、小刻みに僕を絞った。根元から先っぽへ搾り上げる。

 ムジナさんが、乳首とクリと奥をいっしょに責められて、イっている。

 僕の指とちんぽで、イっている!

 

「イってますよね? いま、イってますよね、ムジナさん」

 

「お゛っ、お゛……っ♡ おちる、また、おちるぅ……~~~ッ♡」

 

 そう思った瞬間、僕も止まれなかった。

 ムジナさんの尻を両手でつかむ。

 いちばん深いところに押しつける。

 射精する。

 どくっ、どくっ、と吐き出すたびにナカが吸いついてくる。

 最後の一滴まで搾り取られる。

 ムジナさん、ムジナさん、と名前を呼ぶことしかできない。

 

 

 

 しばらく、二人でテーブルに突っ伏していた。

 台所から、焦げた匂いがする。

 

「また焦げた」

 

 ムジナさんがぽつりと言って、それから付け足した。

 

「ちんぽ」

「それ悪口じゃないですって!」

 

(続く)




次回、水着のムジナが「一日二回まで」の契約を自分から破りたくなる話
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