無一文のムジナさんと性欲だけは旺盛なチー牛くん 作:a-su
作者も反省しているので許してやってください。
◆◆◆ 梅雨の季節 ◆◆◆
僕はゼミの先輩に傘を盗られた。
『おいウシィ、傘借りっぞw』
『はっ、はい、へ、へへっ』
笑ってごまかしてしまう。そんな態度だからかな、返してもらえたことは一度もない。
だからその夜も、僕は雨の中を自転車で帰っていた。スニーカーがぐしょぐしょだ。
子どもの頃に通っていた古本屋の前を通りかかる。三年前に閉店して、シャッターが下りたままだ。
ひさしの下に誰かがうずくまり、呻いている。
「ぅ……うぅ……」
酔っぱらいかと思ったけど、白いコートが濡れねずみなのが気になって声をかけた。
「あ……の、大丈夫、ですか? あ、怪しいものじゃなくて、僕、
若い女の人だ。よどんだ青い目が僕を見上げる。
スマホない。
家族いない。
お金ない。
家、ない。
仲間、もう、誰もいない。
短い言葉を一つずつ並べたあと、彼女はよろよろと立ち上がった。
「ねぇ……泊めてくれないかな」
「いっ!?」
「タダとは言わない。君にも利益があるから」
雨が注ぐ街灯の下、グレーのショートボブが首筋に張りついている。しずくが乗った長いまつげと、薄い唇。
……え、なにこのお姉さん。
顔がいい。
胸でっか。脚なっが。
太ももがムッチムチ。
そして顔がいい。よすぎる。
心臓が止まりそうなほどに好みで、疑いようもなく一目惚れだった。
◆
家に連れて帰り、タオルを渡して、インスタントの味噌汁と冷凍のチャーハンを出した。
そのあとで「タダとは言わない」の中身を聞いて、僕は汗ばんだ手を膝の上で握った。
だって売春だ。きっと罰が当たる。ガチャで最高レアを引いた次の日に財布を落とす、みたいな。
だからルーズリーフを出して、スマホで調べながら契約書モドキを書いた。我ながらアホだけど、いわゆる搾取みたいなことはしたくない。あの先輩みたいなことはやりたくなかったんだ。
一、ムジナ(以下「甲」)は、
牛島要(以下「乙」)の家に住む。
二、乙は、甲に寝床とごはんを用意する。
三、甲は、その代わりに乙の性処理をする。
ただし一日に二回まで。
四、避妊具は必ず使う。
五、乙は、甲の過去を聞かない。
六、どちらかが嫌になったら契約はおしまい。
甲
シャワーをする彼女に、僕のTシャツを貸した。イベント限定で、限定衣装のSSRキャラが印刷されてるやつだ。
「でっ……!」
「なに」
「い、いえ」
胸、でっ……か。
SSRキャラが、胸のところでビヨーンと横に伸びている。推しの顔が見たことのない横幅になってた。シャツの前がカーテンみたいに持ち上がっている。
自分もシャワーをしてから寝室のドアの前まで行って、僕は引き返した。契約書があってもヤバい気がしたんだ。
居間のソファで参考書を開いて、眠ったふりをする。
……寝れるかっ。
僕はTシャツの下の、あの、女の人の胸についてるアレの形を頭の中で逆算していた。
◆
「寝てるし。ベッド、あっちなんだけど」
「え、あっ、え、ムジナさん? べ、ベッドって」
「あの、ムジナさん……もう一回、いいですか?」
「二回までなら、契約の範囲内だけど」
「ありがとうございますっ!」
「出るっ、出ますっ、ムジナさんのおまんこに!」
「~~~……ッ!?」
◆
……凄かった。童貞の妄想なんかぶっちぎるくらいムジナさんのアレは凄くて、顔も声も、アソコも最高で……とにかく最高の初体験だった。
ああでも、くそぉっ。神々しすぎて畏れ多くて、おっぱいを揉むタイミングがなかったっ。次は、次こそはっ。
◆◆◆ 同居生活 二日目 ◆◆◆
ドンキというところは迷路だった。
天井まで箱が積まれていて、同じ歌がずっと流れている。造り物みたいな花の匂いと、焦がしたバターみたいなお菓子の匂いが混ざって、鼻の奥がむずがゆい。
……女の穴が不思議とムズムズする。こんなの初めてだった。昨夜、
部屋着の棚で、地味な色のキャミソールとショートパンツを選んだ。これならエロすぎるとは言われないだろう。
彼がレジの列に並んでいるあいだ、コスプレの棚の前で足が止まった。白と黒の、まだら模様の布が目に入る。
……牛ビキニ? なに、このいやらしいの。
◆
家に帰って着替えて見せる。
「どう? これなら文句ないでしょ」
「っ、あっ、は、はい、いいと思います」
なのに彼は、私を見るなり目をそらした。耳まで真っ赤……エロいの? ただ薄くて体にぴったりとしてて、脚が露出するってだけの服が?
◆
夕飯は彼が作った。トン、トン、トン、と野菜を刻む音が一定で、思ったより手際がいい。
「ばあちゃんに教わったのは、これくらいで」
「これくらいって、十分でしょ。……私、料理なんてしたことないし」
居間の木のテーブルに、野菜炒めと味噌汁が並んだ。天板には、湯呑みの丸い跡がいくつも残っている。
「じいちゃんの代からあるテーブルなんです」
椅子は四つで、箸は二膳だけ。
◆
夜、彼のベッドに並んで座る。
「手でいい? 昨夜みたいに、汗だくになるのはめんどくさいし。新しい服を汚したくないし」
「は、はい……っ」
ハーフパンツの上から手のひらで撫でると、布の下で陰茎がもう硬く張っている。彼は「おウッ」という動物的な声を漏らし、数分で射精した。
二回目は、仰向けに寝て脚を開く。
「好きにしていいよ。私、じっとしてるから」
昨夜のは、たまたまだ。久しぶりだったから体が勝手を忘れていただけ。
これは仕事。寝床とごはんの代金。どうでもいい。どうせ、ほかにやることなんて何もないし。だから天井の木目でも数えていればいい。
ゴムをつけた彼が、おそるおそる覆いかぶさってくる。うっ、と息を漏らしながら、ぬぷり、と入ってきた。
律動を感じながら、私は天井を見上げる。節が三つ。四つ……。
途中で彼の動きが止まった。
「胸、さわって、いいですか」
「いいけど。何も感じないよ、胸なんて」
「はぁ……おっきいからですかね」
「くすぐったくもない。昔から」
「それでも、さわりたいです」
「物好きだね」
彼がキャミソールの上から乳房に手のひらを乗せ、上半身を倒してくる。硬いのを根元まで私に沈めたまま、お腹とお腹がぴったり重なるくらい──。
クリッ。
「んッ、んッ!?」
私の体が跳ねて、彼を下から押し上げる。下腹部がひくひくと震え、汗が浮かぶ。
なに、いまの。
彼の下腹の硬い出っぱりが、割れ目の上の小さな粒をまともに押しつぶした、みたい。
目が合う。眼鏡の奥の目がまばたきを忘れてる。
「い、いま、ムジナさんのナカ、ぎゅって……」
「なんでもない。ちょっと、びっくりしただけ」
「いや、でも、これ」
彼は引き下がらなかった。男のを根元まで沈めたまま、付け根の硬いところを押しつけて小さく円を描く。
くり。くり、くりゅっ。
「ぁ、待っ……そっこ、やッ!」
胸は本当に何も感じない。乗っている手が汗ばんで熱いだけ。
なのに、下の粒は!
「いま当たってる、当たってる! 固いのがグリグリ当たってるってばッ!」
なにコレ、なにコレ、なにコレ。
ぐりって潰されて、
潰されたまま回されて、
知らない。こんなの、知らない、
皮の下でぷっくり硬くとがって、
じゅわっと熱くなって、
ぬめりが彼の付け根まで濡らして、
ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ……。
「あッ、あッ、あッ、あッ、あッ!」
ちがう。これは女の仕組み。汗と同じ。
そう思うそばから、ナカが彼をきゅうっ、きゅうっ、と噛んでいる。
「あッ、あッ、ああッ!!」
「す、すごい、吸いついてきます……っ」
「いわ、なくて、いいっ! ぁ、あっ!」
勢いよく突かれてるわけじゃない。いちばん深いところにも来ていない。腰をぐねぐねと揺らされているだけ。
それなのに、粒から背骨を伝って、ぴりぴりした痺れが首の後ろまで這いのぼってくる。
昨夜は、奥だった。子宮の入り口を何度も叩かれて落ちた。
今夜は前。
……奥と前、いっぺんにされたら、どうなるの?
思っただけで、ナカがきゅうっと縮んだ。
怪獣こそが選ばれた命で、人間は選ばれなかったほう。五千年前からずっとそう思ってきた。
その人間の、骨ひとつに。眼鏡の、私より背の低い、昨日まで童貞だった男に!
「ぁ、あ、あっ、もう、もう、それ、だめ……っ」
「だ、だめ、ですか……? でも、熱くて、とろとろで……っ」
ぐりゅっ、と最後にひとつ押しこまれた。
熱い、粒が熱い、お腹の下が熱い。熱いのが全部、粒の一点に吸いこまれて、きゅうっと小さく固まって──。
「ちが、っ……ちが、っ、あ゛ぁぁぁ……♡」
あッ、あッ、落ちる、落ちる……! お゛っ! すとんって、おちるぅぅぅ……ッ!
かかとがシーツを蹴る。
膝が彼の脇腹をはさみこむ。
粒がどくどく脈を打つ。
ナカが彼を絞りあげた。
絞ると粒がまた付け根の硬さにこすれる。
びっく、びっくと腰が大きく上下する。
止まらない。止め方わかんない。
口が開いたまま閉じない。
よだれが顎を伝っていく。
「あっ、ムジナさん、締まっ……出るっ、出ちゃいますっ……!」
「やっ! あ゛っ! あ゛っ! あ゛~~~っ!」
彼が私にしがみついて、ナカでびくびくと脈を打った。どく、どく、と熱が打ちつけられるたびに、私はぽっかり開いた唇を「あ」の形にわななかせた。
しばらく、天井の木目がぶれて見えた。はー、はー、と男と女の吐息が響く。
ああ……まただ。昨夜のはたまたまじゃなかった。なんでか分からないけど、彼ってばひどく私に……
「君、いま、何したの」
「え、えっと……ほ、骨が、たぶん、当たってて」
「骨」
「す、すいませんっ」
「謝らなくていいけど」
「はい、すみません」
「変なとこに骨、生やしてるね」
「恥骨くらい、人間なら誰でもありますよ」
ゴムを外す彼の手際が昨夜より少しだけよくなっていた。
私はシーツを引き寄せ、まだひく、ひく、と脈を打っている割れ目の上の粒を、手のひらで押さえる。
◆◆◆ 七日目 ◆◆◆
「あの……ぱ、パイズリ、してほしいです」
居間のソファで正座した彼が、そう切り出した。手には、「ローション」と書いた透明なボトルを持っている。
「ぱいずり? ……なにそれ。食べるもの?」
「えっと、その、おっぱいで、挟んで……こう」
両手で胸を寄せてぎゅっと閉じる仕草を、彼は三回もやった。顔が真っ赤だ。
「それ君は何が楽しいの。挟まれてるだけじゃん」
「た、楽しいっていうか……夢、なんです」
夢……。
私は、黙ってキャミソールを頭から抜いた。ローション、という透明な液を谷間に垂らす。
ソファに座り直した彼の、脚のあいだに膝をつく。ハーフパンツから出てきた陰茎は、もうお腹につきそうなほど反り返って、先っぽに透明なしずくを乗せていた。
両手で乳房を左右から寄せて、谷間に迎える。
熱っ……。
「これで合ってる? 思ってたより、間抜けな格好なんだけど」
「あっ、は、はい! ムジナさんのおっぱいに、僕の、ぜんぶ埋まってますっ。な、何カップあるんですか」
「知らない」
胸の内側のいちばん薄い皮膚に、彼の脈動が直に当たる。どくん、どくん、と打つたびに、谷間の肉がほんの少し押し返される。
変なの。手で握るより、こっちのほうが落ち着く気がする。
「や、やわらか、あったか……っ、抱き枕とぜんぜんちがう、三次元の本物の谷間……っ、うそだ、夢じゃない、夢じゃないっ!」
「何言ってるか分かんない。動かすよ。痛かったら言って」
寄せたまま、上へしごく。谷間から赤黒い先っぽが顔を出して、また沈む。
にちゅ、ぬちゅ、にちゅ……。
汗とローションの混ざった音。見上げると、彼の顔があった。眉が寄って、口が半開きで、目だけがこっちを見ている。初めての夜と同じ、どうしようもないって顔。
……ふふ。
「こう?」
左右からぎゅうっと強く寄せる。
「ひっ! そ、それっ、それ、やばいですっ!」
「ふうん。じゃあ、こう?」
先っぽを谷間から出したまま、止める。彼の太ももがぶるぶる震えだした。
「と、止めないでっ、止めないでくださいっ……!」
覚えておこう。寄せると鳴く。止めると震えて、ねだる。
この顔、もっと見たい。もっと、もっと崩したい。
二こすり目で彼の尻がソファから浮いた。
「もう出そう? いいよ、このままで」
「でっ、出ますっ、ムジナさんのおっぱいでっ、出ちゃいますっ!」
三こすり目。
谷間の奥で、根元がどくん、と脈打つ。
精液が勢いよく鎖骨まで飛ぶ。
首筋をとろりと伝う。
熱い。
伝ったあとが、すうっと冷えていく。
「はやっ。三回しか動いてないんだけど。……あと、出しすぎ」
「ムジナさんのおっぱいが悪いんです……まじで、何カップあるんですか」
鎖骨の精液を指ですくって、しばらく眺めた。鼻に近づけると、ちぎった草の茎の青臭さに、川の泥の生臭さが少し混じっている。
最初の夜、ゴムの向こうで私のナカに出されていたのは、これか。ちょっとだけ舐めてみたくなって、やめた。
拭いたあとも、谷間の肌だけがじんじん、じんじんとしている。キャミソールを着直すと、布が谷間をかすめるたびに、ざわっ、ざわっと谷間だけが騒ぐ。
なんで。なんで。なんで胸なんかが。
……何なの、これ。
◆◆◆ 十日目 ◆◆◆
昼間にひとりだと、この家は静かすぎる。冷蔵庫のうなりと、寝室の時計の秒針しか聞こえない。
本棚の奥の薄い本をめくってみたけど、知らない言葉ばかりですぐ閉じた。
彼の枕に顔をうずめる。寝汗の染みた綿と、髪の脂の匂い。最初の夜は「知らない男の匂い」だったのに。
すう、と吸いこむ。
脚のあいだが、ひくっ、と縮む。
……なにやってるんだろ、私。
もう一回、吸う。
ひくっ。
もう一回。
ひくっ、ひくっ。
ショートパンツの股がじわっと湿って、布が割れ目に貼りついていく。太ももを閉じて、もじもじとこすり合わせる。こすり合わせるほど、布が食いこむ。
ほしい。
ちがう。ほしくなんか、ない。
でも、あの硬いの。
二日目に粒をくりくり潰してきた、付け根の硬さ。
最初の夜、子宮の入り口までずんずん届いた、熱い陰茎。
思い出しただけで、空っぽのナカがきゅう、きゅう、と何もないものを噛もうとする。
キャミソールの上から、自分で乳首をつまんでみた。何も起きない。
ショートパンツの中に指を入れる。割れ目はもうぬるぬるで、指がつるっと滑った。
粒を押す。
くり、くり、と回す。
ちがう。もっと硬いので、もっと重く。
ナカに指を沈める。
一本。
二本。
ああぅ、届かない……っ、いちばん深いところまで、ぜんぜん届かない!
ちがう、ちがう、これじゃない。とどかない、とどかないぃ……っ!
「っ、ん……ばか、ばかっ……!」
自分の指はただの指で、彼のはなんか違う。
時計を見る。まだ二時……彼が帰ってくるまで、あと五時間。
……早く帰ってきて。
思ってしまってから、枕に顔を押しつけた。思ってない。思ってない。思ってないってば。
◆
夕方、炊飯器で米を炊いてみたけど、べちゃっとした。卵焼きは巻けずに焦げてる。
「焦げた。言っとくけど、火が強かったの。私のせいじゃない」
「た、食べます! ムジナさんの手料理……っ」
帰ってきた彼は、泣きそうな顔で全部食べた。
「ばあちゃんのは甘かったんです。砂糖入れてて」
「卵焼きって、甘くするものなの?」
覚えておこう、砂糖の入った卵焼き。
◆
食器を洗ったあとで、彼が小さな箱を差し出した。中古のスマホだ。
「昼間、さみしかったら……あ、いや、その、連絡できるように」
「さみしくないし。……でも、もらっとく」
登録された名前は、「牛島要」ひとつだけ。
◆◆◆ 十二日目~十六日目 ◆◆◆
ムジナさんにスマホを渡してから、僕の一日は通知で区切られるようになった。
──十二日目 8:15──
『いってらっしゃい』
ウサギがお辞儀をするスタンプだった。駅のホームで僕はにやけた。
──十二日目 12:03──
学食で自撮りが届いた。カメラが近すぎて、青い片目と前髪しか写っていない。
速攻で保存した。
──十二日目 18:40──
『まだ焦げる。このフライパン、たぶん性格悪い』
黒い卵焼きの写真。
──十三日目 10:42──
『ちんぽってなに』
講義中である。僕は机に突っ伏した。
『君の本棚の、うすい本に書いてあった。いっぱい出てくる』
本棚の奥の、あれだ。
『それは、その、男の、アレのことで』
とかなんとか、打つ指が震える。
『僕のとかの』
『卑語というか、なんと言いますか』
『ふうん。変なの』
その日はそれで終わった。
──十三日目 17:55──
『卵焼き、また焦げた。ちんぽ』
バイトの休憩室でお茶を噴いた。
『悪口じゃないです!! 焦げたときに言うやつじゃないです!!』
『ちがうの? 言いやすいのに』
──十四日目 13:20──
『じゃあ、おまんこって、私のここ?』
ショートパンツの股の写真。灰色の布にシワが一本寄っている。その下には、毎晩僕のを呑みこんでるところがあって……そう思うだけでジーンズの前がきつくなった。
いやいや、ゼミの最中だ。僕はスマホを裏返して、机の下で膝を組む。
裏返したスマホがまた震えた。
『上の、ちっちゃい粒は?』
『ほら、君の骨が当たるとこ。あれ、まだ名前知らない』
『く、クリトリス……です』と打つのに、三回打ち間違えた。
──十五日目 11:08──
『乳首、自分でさわってみた』
『くすぐったいのが、むずむずになった』
『左のほうが、むずむずする。なんで左だけなんだろ』
その三行を、僕は講義が終わるまでに二十回は読み返した。左のほうが、むずむずするんだ。
ムジナさんが自分で左の乳首を……真顔のまま、眉だけちょっと寄せて……。
ああ、レジュメの内容が一行も頭に入らない。
──十五日目 18:30──
『砂糖入れた。甘い。焦げたとこは苦い。差し引きで、ふつう』
半分だけ焦げた卵焼きの写真。黄色いところのほうが少しだけ多い。
──十六日目 10:00──
『ふぇら? っていうの、くちでするやつ?』
皮をむいたバナナを、唇の手前まで持っていった自撮り。青い目が、カメラを見上げている。
『練習したらバナナが茶色くなった。ちゃんと食べたから、怒らないで』
──十六日目 16:45──
『はやく帰ってきて。昼からずっと待ってるんだけど』
『君のちんぽで、練習の成果を見せてあげる』
言葉の使い方は合っていた。タイミングはヤバすぎるけどな!
僕は最後の講義を抜けて、自転車をこいだ。
◆
玄関の戸を開けると、上がり
「ただい……」
言い終わる前に、ベルトへと手がかかった。汗だくのジーンズがパンツごと膝まで下ろされる。
ぶるんと跳ね出た僕のちんぽが、ムジナさんの鼻先をかすめた。自転車をこいできたせいで、自分でも分かるくらい蒸れている。
「む、ムジナさん、僕、汗……っ」
「練習の成果、見せるって言ったでしょ」
すん、すん、とムジナさんが鼻を鳴らした。
嗅いでる。嗅いでる。僕のちんぽを、あのムジナさんが、真顔で嗅いでる!
「君のちんぽ、汗くさい」
今ちんぽって言った?
ああムジナさんが肉声で言った。メッセージの中だけの言葉だったのに、この薄い唇から、ちんぽ、って!
あ、やっべ、脳が処理落ちした。もう玄関先でフェラされることしか考えられない。
ぱくっ、と
「いっ」
歯が当たった。ムジナさんがすぐに口を離す。
「ごめん。バナナは、歯が当たっても文句言わなかったから」
バナナと比べられてる? そうか、ムジナさんのフェラ処女を奪ったのはバナナ……バナナに嫉妬する日が来るとは思わなかったっ。
もう一度。今度は唇で歯を包んでいた。ぬぽっ、と亀頭がまるごと呑まれる。
「んむ……ばなな、より、かたい。あと、あつい」
咥えたままで、もごもご感想を言われる。
勝った。バナナに勝った……!
熱い舌が亀頭のあちこちを探る。ざらっとした舌の腹がカリの段差をこすって、僕は玄関の戸に背中をぶつけた。外で蝉が鳴いている。
舌先が、裏筋の、カリのすぐ下ににゅるんと触れた。
「うあっ! う、裏筋っ、それっ、それぇっ!」
思わず突き出した下腹のせいで、亀頭がムジナさんの上あごをこすった。ムジナさんの目が細くなる。いったん口を離して、唾液の糸を引いたまま、上目づかいで訊いてくる。
「うらすじ?」
「は、はい、う、裏筋、です……」
「ふうん。そこが弱いんだ? 覚えた」
返事をする前に、裏筋を舐め上げられた。
れろっ、れろっ、れろぉっ。
頬をすぼめて吸われる。
じゅぷ、ぢゅっ、ぢゅうっ。
pixivのfanboxでもDLsiteでも見たことないくらいエロすぎる顔だった。頬がへこんで、青い目がうるんで、灰色の前髪が額に貼りついている。
だめだ。
だめだ、だめだ、もう、
なにも我慢できない、
お腹の底から、熱いのがせり上がってきて、
「でっ、出ますっ! ムジナさんっ、口、離してっ、出ちゃうっ!」
ムジナさんが目を見開いて、口を離した。
びゅるっ。一発目が
二発目が喉に。
三発目がキャミソールの胸元まで飛び散る。
止まらない。
膝ががくがくする。
戸に背中を預けたまま、何度も精液をぶちまけた。
ムジナさんは顎についた精液を指でぬぐって舐めた。眉がぎゅっと寄る。
「にがっ」
「はーっ、はーっ、な、舐めて、舐めてるっ」
「バナナのほうがおいしいかな」
「がーんっ」
「それ口で言う人、初めて見た……」
◆
その夜、ムジナさんは台所で卵焼きを焼いていた。
キャミソールとショートパンツの後ろ姿。菜箸を持つ手つきが、前よりずっと慣れている。砂糖が焦げる手前の、カラメルの匂いがする。
僕は、訊く前に後ろから抱きついた。
いいですかと訊かずにムジナさんに触ったのは初めてだ。
「なに。いま火を使ってるんだけど」
うなじに鼻をうずめる。シャンプーと、台所の湯気の匂い。
キャミソールの裾から手を入れた。ずっしり重い乳房を手のひらですくい上げて、メッセージで教わったとおり、左の乳首を指の腹でつまむ。
カチャン、と菜箸が床に落ちた。
「なんで、左の……っ」
「教えてくれたじゃないですか。左の乳首のほうが、むずむずするって」
「ばかっ、それ、ぁっ!」
つまんだ乳首が、指のあいだでみるみるしこっていく。くすぐったくもないと言っていた乳首がこりこりだ。
ムジナさんのお尻が僕の股間に押しつけられたまま、もじっ、もじっと揺れている。
「もう、この、すけべ」
ムジナさんが自分でコンロの火を止めた。
僕はその手を引いて、居間のテーブルまで連れていった。じいちゃんの代からある、湯呑みの跡だらけのテーブルだ。
天板に両手をつかせて、ショートパンツをショーツごと片脚だけ抜く。ムッチムチの尻が、目の前に突き出された。割れ目がもう、蛍光灯の下でてらてら光っている。
ゴムをつけて、亀頭を割れ目に押し当てる。ぬちゅ、と吸いつかれた。
「ん、んっ、まだ、はいる……。早く、どぴゅってしちゃってよ」
ずぷぷっ、と一気に根元まで沈む。
熱い。ゴムの膜ごしでも、とろとろの肉が四方からちんぽに絡みついてくる。初めてのフェラをした昼間からなんだろうか。何かを待っていたみたいに、ムジナさんのおまんこは濡れきっていた。
「あっ、今日、ちょっと変っ、かもっ……」
気持ちいい。気持ちいい、気持ちいい、気持ちよすぎて膝が笑う。
「ふうっ、ふうっ、ふうーっ」
「あっ、あっ、あっ……」
突くたびに、僕の下腹がムジナさんの尻肉にぶつかる。
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ。
「あッ、あッ、ああッ!!」
白い尻肉が波打つ。テーブルの脚が床をごとっ、ごとっと打つ。湯呑みの丸い跡の上に、ムジナさんの手のひらの汗の跡が重なっていく。
「ムジナさんのお尻、突くたびに波打ってます。見てるだけで出そう……っ」
左の乳首をつまんだまま、いちばん深いところを突き上げる。つまんだ瞬間に、ナカがきゅっ、きゅっと締まる。
「ムジナさんの乳首、こりこりです。つまむたびに、おまんこ、きゅってなってます」
「いわ、ないでっ! ちくび、つままれて、る、っ、だけ、なのにっ……ん、んっ!」
ムジナさんが振り向いた。唇が重なる。
歯は当たらない。最初の夜は前歯どうしがかちっと鳴ったのに。今夜は、僕がムジナさんの下唇を先にくわえて、それから舌を入れた。
唇を離すと、ムジナさんが目を丸くしていた。
「ちょっと上手くなってない? 誰で練習したの」
「ムジナさんで、練習したので」
ムジナさんが何か言い返しかけた。
その前に、テーブルの縁へ押しつけるように深く突き入れた。ムジナさんの体が前へずれて、天板の縁が割れ目の上に食いこむ。ちょうどクリのところに。
「クリとおまんこの奥、いっしょにされるの、好きですよね」
「ちが、っ、すき、じゃな……ぁっ、あ゛……っ♡」
乳首をつまむ。子宮の入り口を突く。突くたびに、天板の縁がクリを押しつぶす。
三つ同時に性感帯を刺激する。何度も。
「ムジナさんが欲しいです。講義中も、バイト中も、ずっと、ずっと欲しかったんですっ」
「そんな、ほしがられたら……っ、うまっちゃう、ナカ、ぜんぶ、うまっちゃうぅ……♡」
うまる、ムジナさんの中身が、僕で……ちんぽがナカでもう一回り膨らんだ。
「そっれっ、ヤバ…………イひっ!」
ムジナさんの背中が弓みたいに反る。
嫌々をするように、お尻が左右に振れる。振れるたびにクリが縁にこすれて、また反る。
つま先立ちになった足が、ぶるぶる震えている。
「ちんぽ、おく……っ、ちくび、いっしょ、だめっ、だめぇっ♡ しらない、こんなの、しらないぃっ!」
覚えたての言葉で、ムジナさんが鳴いている。
ちんぽ、って。僕のちんぽで、って!
膝ががくがくと内側へ折れかけて、テーブルの縁を握る指が白くなる。粘膜が何度も、小刻みに僕を絞った。根元から先っぽへ搾り上げる。
ムジナさんが、乳首とクリと奥をいっしょに責められて、イっている。
僕の指とちんぽで、イっている!
「イってますよね? いま、イってますよね、ムジナさん」
「お゛っ、お゛……っ♡ おちる、また、おちるぅ……~~~ッ♡」
そう思った瞬間、僕も止まれなかった。
ムジナさんの尻を両手でつかむ。
いちばん深いところに押しつける。
射精する。
どくっ、どくっ、と吐き出すたびにナカが吸いついてくる。
最後の一滴まで搾り取られる。
ムジナさん、ムジナさん、と名前を呼ぶことしかできない。
しばらく、二人でテーブルに突っ伏していた。
台所から、焦げた匂いがする。
「また焦げた」
ムジナさんがぽつりと言って、それから付け足した。
「ちんぽ」
「それ悪口じゃないですって!」
(続く)
次回、水着のムジナが「一日二回まで」の契約を自分から破りたくなる話