どうしてもぼくと女子校に通いたい三つ編みメガネ耳年増幼馴染(発育の良さNO.1)が全力でぼくを誘惑してきて、あと一回射精したら女の子になってしまうぼくを授乳手コキで雌堕ちさせようとしてくる件について 作:しじままどせ
オリジナル:現代/恋愛
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「……ねえ、手をつなご?」
終業式のあと、帰り道を歩いているときに、後ろからついてきていた優花ちゃんが言った。
ふりかえってぼくは彼女を見た。
そこには低くなった冬の夕日を背にして立っている美少女がいる。逆光になって表情はよく見えないけれど、頬のあたりにほのかに赤みがさしているような気がした。
彼女、優花ちゃんはぼくの幼馴染だ。
三歳のころから隣の家に住んでいる、同級生の女の子。ぼくの初恋の人。そしてぼくの現・好きな人。
そんな女の子から『手をつなご?』なんて誘われて、ぼくはうれしかった。
「えー……、でも……」
けれども、しかしながら、ぼくはためらった。
手を繋いでいるところを見られたら、またクラスの子たちにバカにされるかもしれないと思ったからだ。男子と女子が仲よくしていると笑われる。
『あいつら付き合ってるんだぜ』などとまたからかわれたりするのもイヤだった。そうなったら優花ちゃんがかわいそうだから。
「……やだ?」
首をかしげるようにしながら優花ちゃんは聞いた。三つ編みにした長い髪がふらりと揺れた。
もちろん、いやかといえばそんなことはない。
むしろ好きな子から誘われてうれしくない男子なんているものか。ぼくは、それこそ三歳の頃からずっと優花ちゃんのことが好きだったのだ。
だからその申し出には飛びつきたいくらいなのだけれど、やっぱりぼくたちは男子と女子だし、照れくさくてためらってしまうのだ。
「………………」
黙っているぼくを見て、彼女はすこし悲しそうな顔をしてうつむいた。ててて、とぼくのそばまで小走りで駆けてきて隣に並ぶ。
隣に並ばれると、ふんわりと彼女のいい匂いがしてドキドキした。女の子特有の甘い香りだった。
ぼくは優花ちゃんの顔を見上げて、その顔が可愛くて、それからあわてて目をそらした。すると彼女のセーターを押し上げているふたつの大きな膨らみが目に入ってしまった。
女の子の胸だ。
クリーム色の縦編みセーターから主張する、好きな女の子の、おっぱい。しかもとても大きい。
それで顔が熱くなっていくのを感じた。心臓がバクバクしていて、息苦しくなるほどだった。
優花ちゃんは、全校生徒でいちばん発育のいい美少女だ。
身長もぼくよりも10cmくらい大きくて、なんと165cmくらいもある。胸だっておおきい。こっそり聞いたところによるとDカップもあるらしい。
いつも黒縁の大きなメガネをかけていて、髪の毛は地味めな三つ編みのおさげにしていることが多い。どちらかというと目立たないように気を使っている容姿。そして、それがとても似合っている女の子だ。
性格はおとなしくて引っ込み思案だけれど、お勉強の方は得意で学年で常にトップを取っている。そしてぼくの大好きな、それこそ幼稚園に入学する以前から隣に住んでいる幼馴染でもある。
「あのね……、
と、優花ちゃんはぼくの耳元に口を近づけるようにしてささやいた。彼女の吐息が耳にかかって、ゾクッとしてしまった。
大人しくて、どちらかというと口下手である彼女はこうして耳元でささやくように話す癖があるのだ。
優花ちゃんの方がぼくよりもずっと背が高いから、彼女はすこし屈みこむようにしながら話しかけてくる。
そうやって近づいてこられると距離がすごく近く感じて、吐息が耳に当たって、それだけでなんだかドキドキしてしまう。
「な、何かな、優花ちゃん」
「わたしと手を繋ぐの、やだ?」
「いや、えっと……。いやじゃないけど、でもほら、ぼくは男子で、優花ちゃんは女子でしょう?
女の子同士で手を繋いでいる子たちはたくさんいるけれど、男女でそういうことをするのは変だよ。またクラスの子たちに笑われちゃうかもしれないし……」
「………………」
ぼくがそう言うと、優花ちゃんむっつりと唇を引き結んだ。唇をもごもごと動かして、頬を膨らませたりしていた。なんだか拗ねているような感じだった。
それから背の高い彼女はこちらを見下ろして、しっとりとした感じでぼくを見た。黒縁メガネの奥のまつ毛がふるえて、大きな瞳がうるんでいた。
「……理々くんのばか。あほ、ぼけなす、いくじなし」
ぽつり、ぽつりと文句を言われた。たぶん本気で言っているわけではなくて、わがままを言って困らせようとしているだけなのだと思う。
だって『わたしはわがままを言っているんだよ』と顔に書いてあったから。
どちらかというと無表情ぎみの彼女だけれど、もう十年近い付き合いになるぼくにはわかるのだ。たぶん、ぼくが優花ちゃんの唯一の
優花ちゃんは(ぼくもだけれど)友達が少ない。
とても口下手なのと、ちょっと変わったところのある性格のせいで、みんなから距離を置かれてしまっているのだ。学年で常にトップを取っている学力が余計にみんなを敬遠させる原因になっているのかもしれない。
いちどクラスの女の子たちに『優花ちゃんと仲良くしてあげてよ』と頼んでみたことがあるのだけれど、むしろ逆にぼくまで反感を買ってしまったくらいで。
そういうわけで優花ちゃんとぼくはほとんど唯一の友達同士なのだ。
家が隣なこともあっていつも一緒に帰るし、クラスの男子から『おまえたち付き合ってるんだろ?』なんてからかわれることもよくあるくらいには。
「……ほら、手、つなご?」
と、なおのこと優花ちゃんは言ってきた。
もう一度念押しするように言われてしまった。
うれしい。
そこまで言われたら断れないじゃないか。
でも『まったくしょうがないな。こんなにお願いされたら断れないじゃないか』という顔を作る。
そうしていかにも恥ずかしいので渋々ですよ、といった様子を装ってぼくは小さくため息をついた。
「もう……。わかった、わかったよ。つなぐことにする」
ぼくはそう答えた。
すると優花ちゃんは「……むふー」と得意げに鼻息を出した。
そして嬉しそうな顔をして「やったあ、理々くんだ」と小さく呟くように言いながら、ぼくの手を握った。
そして、きゅ、と左手のひらを握られる。
女の子の手だ。細くてしなやかな指だ。
けれどもぼくよりもずっと大きくて、すべすべしていていて、温かかった。彼女の手の感触にドキドキしてしまう。
「えへへ、理々くんと手をつなぐの、久しぶり。うれしい」
「そうかあ……。ええと、よかったね?」
「うん! めでたし、めでたし」
急に機嫌を直した優花ちゃんは、ぼくの隣でにこにこと笑っていた。メガネの奥の大きな瞳が細められていて、長いまつ毛が影を落としている。
ぼくはそんな彼女の顔を見て、やっぱりかわいいなあとドキドキしながら思った。
「……理々くん、お顔赤いよ? どうかしたの?」
「う、ううん、なんでもない。夕日がまぶしかっただけ。行こう」
と、やや強引に話をそらしてぼくは歩き出した。
優花ちゃんは一歩後ろからついてきていて、手をつないだままで歩いてくれる。
「……えへへ、理々くんの手、あったかいねえ」
一歩後ろを歩く優花ちゃんがぼくの顔を覗き込むようにして耳元でささやいた。
甘い吐息がくすぐったくて、背骨から尾骨にかけてゾクゾクした感覚があった。
「ゆ、優花ちゃん……?」
「んー?」
「い、いや、何でもないけど……」
「ん、えへへ、そうなんだ」
まあ、そんな感じで、優花ちゃんとぼくは夕日に照らされた道を手を繋いで歩いた。無理をした早足のぼくが彼女を先導するかたちになって、優花ちゃんが後からついてくる形だ。
優花ちゃんはご機嫌でなぜだかスキップでもしているみたいだった。
彼女の揺れる三つ編みと、それから縦セーターの丸みを帯びた膨らみがぽいんぽいんと上下するのが見えて、ぼくはまたヘンなドキドキを感じて困ってしまう。
なんだかヘンな気分になってしまいそうだ。
近ごろときどきこんな風にヘンな気持ちになることがあって、けれども自分ではそれがどういうものなのかよくわからなかった。
ただ、それが優花ちゃんと一緒にいるときにしか起こらないということだけは知っていた。
ともかく、こうして、ぼくと優花ちゃんの小学校生活最後の冬休みは幕を開けたのである。
きゅ、きゅっと手を握ってくる優花ちゃんの手は柔らかくて、好きな子といっしょに手を繋いで歩くのはしあわせで、だからこそぼくは気がつかなかった。
まさかこの冬休みがぼくの人生を決定的に変えてしまうことになるだなんて。
***
クリスマスを過ぎて、いよいよ年末が近づいてきたころ。
ぼくは優花ちゃんの部屋で冬休みの宿題に精を出していた。
優花ちゃんの両親は仕事で忙しくていつも帰りが遅い。それはうちもそうで、だからぼくたちふたりは放課後や休日に一緒にいることが多かった。
これは本当に幼い頃からの習慣だ。だからいまさら気にもならない。
好きな女の子の部屋で、彼女とふたりっきりだったとしても、ぼくはぜんぜん緊張しなかった。彼女の大きなぬいぐるみを抱いて、むしろリラックスできるくらいだ。
優花ちゃんが何もしてこなければ、だけれど。
「ね、理々くん、ここわかんないの。教えて?」
ローテーブルで隣に座っている優花ちゃんが言った。唇に赤いえんぴつを押し当てて、むにむにしながら首をかしげている。
彼女は今日はタートルネックのセーターを着ていて、下はシックな色合いのロングスカートだ。チャームポイントのメガネと三つ編みもそのままである。
ずいーっ、と身を寄せるようにしてこちらのノートをのぞき込んできた。教えてほしそうに、身を寄せてくる。
ぼくの顔のすぐ横に彼女の顔があった。
近い。
抜群に近い。
いい匂いがする。女の子特有の甘くて優しい香り。
そのうえぼくの二の腕に優花ちゃんの胸が当たっている。やわらかい。それに体温も感じる。
むにん、むにんと腕に押し当てられる、クラスでもいちばん発育のいいおっぱい。
なんだか頭がくらくらしてくる。ヘンな気持ち、というか、
「というか、わかんないはずないよね? きみは学年でいちばん賢くて、ぼくは二番手なんだから。優花ちゃんがわからないところをぼくがわかるわけがないよ……」
「むー、それでもわたしは理々くんからお勉強を教えてほしいのです。理々くん先生、よろしくお願いします」
「えぇ……」
耳元でささやかれるとぞくっとしてしまう。思わず身をすくめるようにしながら、ぼくは優花ちゃんの方に顔を向けた。
すると至近距離で目が合う。
吐息が混じるくらいの距離、優花ちゃんのメガネのフレームとぼくの前髪がぶつかるのではないかと思えるほどの距離だ。
優花ちゃんの瞳は潤んでいてふんわりと色づいていた。頬は赤く染まって唇の端っこが震えていた。その唇がぼくの唇に触れてしまいそうで、ぼくはあわてて目をそらした。
キスという概念くらいは知っている。
それは恋人同士がするものだ。ぼくと優花ちゃんは恋人ではないし、穏当ではない。
「理々くん? えへへ、どうしたの?」
ぽやぽやと頬を染めた優花ちゃんがこちらを見つめている。そして、彼女はゆっくりとますますこちらに身体を寄せてくる。
ふに、と彼女の大きな膨らみがぼくの腕に押しつけられる。柔らかくて、あたたかかくて、それはぼくにはないもので。
「ゆ、優花ちゃん……。ちょっと、あの」
「なぁに?」
「近いっていうか、えっと、あのう……」
「わたしは理々くんにもっとくっつきたいのだけど……。だめかなあ」
「だ、だめだよ。だってぼくたち、まだ子どもだし」
「どうして子どもだとだめなの? クラスのルナちゃんとマナちゃんは教室で抱っこしたり、手をつないでいたりするのに」
「そ、そういうのは、ぼくたちの関係とは違うというか……。だってほら、ルナちゃんとマナちゃんは女の子同士だし、仲よしだから……」
「……わたしと理々くんは仲よしではない?」
「い、いや、もちろん、仲よしだけど……」
ふーん……っ、と鼻息を出して、優花ちゃんはさらにこちらに寄りかかってきた。
ほとんどぎゅっと抱きしめられているかのような体勢。こちらの背中に回された彼女の両腕が、ぼくの肩甲骨あたりに密着していて、逃げられないようにされているようだった。
「ゆ、優花ちゃん……?」
「理々くん、あったかい。お日さまみたいな匂いがして、ぽかぽかする」
感じ入るように耳元でささやかれる甘ったるい声。ぼくの心臓はもう破裂しそうで、バクバクと脈打っている。
好き。優花ちゃん、好きだ。
でも、そういうのがだめだって、なぜだかはっきりと思った。
女の子の部屋で、こんなふうに抱き寄せられるなんて、ぜったい、よくない。大人が見たらきっと怒られてしまう。
こんなのはおかしいんだ。
このままだとぼくたちはどんどんヘンな気持ちになっていって、やがて取り返しのつかないことになってしまうと思う。
「だ、だめだよ。優花ちゃん、だめだ」
ぼくは彼女の肩をつかんだ。ぐいっと押し返すようにして彼女から離れる。
「………………ッッ!」
すると優花ちゃんは驚いたような顔をして、目を見張った。息を飲んで、それからみるみると瞳に涙を浮かべていく。
「……なんで?」
「え……?」
「どうしてだめなの? 理々くんは、わたしのこと、きらい?」
ぽろりぽろりと彼女の瞳から大粒の涙がこぼれた。ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、優花ちゃんは後ずさるようにして離れていった。
そのまま体育座りになって、膝を抱え込むようにして泣き出してしまった。
静かにしゃくりあげていて、黒い三つ編みがへなんと垂れていた。
ぼくはそんな優花ちゃんを見てひどく動揺した。
優花ちゃんのことをきらいなはずがない。むしろかけがえのない存在だと思っている。
けれどもぼくは彼女のことが好きで、好きすぎて、だからこそこの先いっしょにいるとお互いのためにならないと思っているのだ。そのためにぼくは準備もしていて……。
「……あのね、」と優花ちゃんは言った。涙まじりの震える声で。
「わ、わたしは、理々くんとずっと、ずーっといっしょにいたいの。それだけなの。
でも、中学校が別々になっちゃうから、寂しいの。
わたし、女子校に……、県外の全寮制の中高一貫校を受験するつもりだから。だから……、」
「……え?」
突然の言葉にぼくは戸惑ってしまった。
生まれ育った町から離れていく? つまり、ぼくから離れていく?
ぼくにべったりな優花ちゃんがそんなことを考えていたことに驚いてしまった。
「だから……、今だけだから、こうしていっしょにいられるのもあと少しだけしかないから、抱っこしたかったの。それだけなの」
「優花ちゃん……」
「理々くんはわたしのこと、きらい? みんなみたいに、
ぐす、ぐすと、優花ちゃんは泣いている。
ぼくよりも10cmくらいも大きな体を全力でちぢこまらせて、小さく小さくなって、彼女は震えている。
そういうことか。
彼女は学校ですこし周囲の女子から敬遠されていて、馴染めなくて、それで県外の中学を志望しようとしているのか。
『どっか行け』と言われたから、どっか行く。単純な理屈で、だからこそ、ぼくにはそれが悲しかった。
「優花ちゃん、そんなこと思ってないよ。ぼくは優花ちゃんのこと嫌いだなんて思ったことはない。一度だってきみを遠ざけようだなんて考えたことはないよ」
「……ほんとう?」
「うん。本当だ。だから泣かないで……」
「……わかった。もう抱っこしてって言わないから、わたしと、手をつないでくれる?」
その様子はいかにも哀れっぽくて、さみしげで、ぼくは胸が痛くなった。
彼女をここまで追いつめた原因の一端が自分にあることもわかっていた。それが辛かった。
「わかったよ、手をつなごう」
ぼくはうずくまっている優花ちゃんのそばに寄っていった。そして右手を差し出すと、優花ちゃんはおそるおそるぼくの手を握った。
そっと握ってくる手は冷たくて、小刻みにふるえていた。きっとぼくも同じくらい冷たいだろう。ふたりして手を握り合って、ぼくらはしばらく黙って座っていた。
ぼくの隣で黙っている優花ちゃんは本当に小さくて、か細くて、折れてしまいそうなほどだと思った。
「………………」
だから、ぼくがこのとき思っていたことは、こうだ。
『強くならなければならない。このままだとぼくは優花ちゃんを守れない。優花ちゃんに悲しい思いをさせたくない。ぼくも、優花ちゃんも、お互いに成長して、強くなる必要がある』
それは決意であり、覚悟でもあった。
ある種の必要に迫られた気持ちで、ぼくはそう思ったのだ。
だからぼくは、いや、ぼく
「あのね、優花ちゃん……。
優花ちゃんが全寮制の女子校に行くのと同じように、ぼくもきみに話したいことがあったんだ」
「……なあに?」
「優花ちゃん、ぼくもね、同じように全寮制の男子校へ行こうと思っているんだ。きみがぼくから離れていってしまうように、ぼくもまた自分の道を進むよ」
「……えっ」
「ぼくは男だから女子校へは行けないでしょう?
むしろこれからどんどん体がたくましくなって、筋肉とか、身長が伸びて、きみよりもずぅっと大きくてごつくなるはずだ」
「………………」
「きみが女子校に行っている間に、ぼくはぼくで成長をして、いつかきみに追いつくから。だから手をつなぐのは、いまだけだよ」
「……どうして?」
「春からきみをひとりにするのが心残りだけど、おたがいが成長するためには仕方のないことだから」
「………………」
優花ちゃんは、何も言わなかった。
ただぎゅっとぼくの手を握って、うつむいていた。そしてぼくたちはそれ以上言葉を交わすことなく、ただ時間だけが過ぎていく。
やがて夕方になり、ぼくは優花ちゃんの両親にあいさつをしてから家に帰った。
帰宅する際に優花ちゃんは平静を装っていて、口数は少なかったけれど、いつものように別れ際にぎゅっと抱きついてきたのだった。
***
幼馴染の少年、
そこには少年の残した麦茶のグラスがあり、テーブルの上には優花のノートが広げられたままになっていた。
窓の外は夕暮れを通り越し、夜の帳が降りようとしている。日の落ちたあと特有の青い闇が部屋を満たしていた。
灯りを点けることなく優花はベッドに腰かけた。
黒縁の大ぶりなメガネをやや乱雑に投げ捨て、三つ編みに結った髪留めをほどく。視界がぼんやりと輪郭を失った。
優花は美少女だ。
ふだんは大ぶりなメガネと地味な三つ編みで目立たないものの、顔立ちは非常に整っており、目鼻立ちは繊細かつ端正である。
顔面だけではない。優花という少女は体つきにも恵まれており、背が高く手足はすらりと長い。少なくとも小学生のスタイルではない。
その胸元は豊満で、尻は丸みを帯びている。
間違いなく学年でいちばん発育がいいのが優花だった。最上級生であるから、学園一発育がいいといってもいいかもしれない。処女ではあるが、性的な興味に関しても少なくとも全くの無知である理々よりは進んでいると断言できる。
「……、理々くん……」
ぱさりと広がった長い髪をかきあげながら、優花は大きくため息をつく。ぽつりとつぶやいた声は震えていた。
理々の前では平静を装ったものの、優花は内心穏やかではなかった。
(……だって理々くんが遠くにいっちゃうなんて思ってもみなかったんだもの)
元はといえば全寮制の女子校への進学を決意したのは優花自身だ。とはいえ、理々と別の道を歩むことになるとまでは思っていなかったのだ。
いや、進学先は女子校なのだから男子である理々は来られない。それは自明の事実だ。
けれども小学六年生の優花は、そしてこれまでの人生の大半を理々と過ごしてきた優花は、言葉の上では理々との離別を認識していても、実感として理々との離別を想定していなかった。
理々との別れ。それは、それこそ優花の世界のすべてが覆されるような衝撃だった。
「………………」
理々はかけがえのない存在だ。彼は誤解されがちな優花のことを誰よりも理解しているし、信頼してくれている。ずっと、いつまでも、いつまでもいっしょにいられると思っていた。
けれども現実はどうやら違うらしい。もう理々といっしょに居られない。そのことに優花は猛烈な不安を感じていた。
「……理々くん、……理々くん」
優花はベッドに置いてあったぬいぐるみを抱きしめた。
それは理々がクレーンゲームでとってくれた巨大な猫のぬいぐるみだ。『ぼくの取ったやつだから』としょっちゅう理々が抱きしめている。
ふわ、と優花はその大きな毛玉に顔をうずめた。柔らかな感触に包まれると少しだけ落ちつく。
ほんの少しだけ理々の、少年らしい匂いが残っている気がした。少しずつ大人の男らしいものに変わっていく、そんな彼の香りだ。
近ごろ理々は声変わりをしつつある。手足も大きくなり、筋肉もついて、がっしりしてきた。いずれは優花を追い越して、もっと大きな、立派な男性になるのだろう。
そうなったら少なくとも今のような関係ではなくなってしまう。
「……理々くんが、女の子だったらな……」
ぽろり、と口からこぼれたのはそんな言葉だ。
それが不可能なことくらい優花にだってわかっている。それでも思わずにはいられなかった。
理々、限りなく女性的に近い名前を持つ少年。
彼はおそらくこれからますます男性的になっていって、その外見も内面も、すべてにおいて成人男性のそれに近づいていくことだろう。
そうなったらもう優花は近くにはいられない。
手を握ったり、抱きついたり、いっしょに寝たりもできなくなる。そんなことをすればきっと怒られてしまう。
ましてや女子校に理々と進学することなど、できるはずもない。
「……理々くん」
理々のことを思って、彼の香りのするぬいぐるみを抱きしめていると、優花は下腹部が火照って熱くなっていることに気づいた。
それは彼女の子宮が疼いている証拠だ。
優花は自分の肉体の変化に気づいている。このところずっとそうだったから。
理々に自分の胸を押し当てて彼を赤面させるときも、至近距離に顔を寄せてキスをしそうになったときも、それから耳元へ言葉を流し込んだだけでも。優花の下腹はじんわりとした熱を帯びるようになっていた。
「ん……っ♡」
優花は自身のスカートの中へと手を伸ばした。ショーツの上から秘部をすり、と撫でる。
そこはすでに湿っていた。
限りのない美食を前にして涎を垂らすかのように、優花の成熟しつつある花弁は蜜をこぼしていた。
そして、そこを弛めて撫でて自らを慰める方法を、優花はよく知っていた。
だから優花は頭から布団をかぶり、ぬいぐるみを抱きしめ、目を閉じる。
たいへんみじかく爪を切り、やすりがけまでして角を落とした中指の先端を、ショーツの奥へと忍ばせていく。
下着の内側は熱く、蒸れていた。
近づいて嗅げば女の芳香が漂ってくるかもしれない。そうでなくとも布団をかぶった中では、優花の牝じみた発情臭が充満していることだろう。
その臭いにつられて優花の手は勝手に動き出した。
大陰唇を割り開き、さらに奥にある割れ目をなぞる。やはりそこはもうぬかるんでいて、成熟しつつある女体が淫らにひくついていることがわかった。
「……り、……、……りり
びくり、と優花の全身が震えた。
いま彼女は、無意識のうちに理々の名前を呼んだ。
彼女が想い、恋い焦がれる幼馴染の姿を思い浮かべていたからだ。
空想の中の理々の姿は自分より10cmほども低い身長の少年であり、同時に、かつての理々の姿だ。男性として成熟し始める前の、まだ少年とも少女ともつかない、未分化な時期の理々。
まだ『理々ちゃん』と呼ばれていたころの、あどけない姿だった。そんな愛らしい理々が自分の胸に抱かれて、恥ずかしがったり、あるいはとろとろに顔を蕩かせ、甘えてくる。
「……りりちゃん、……っ♡ ……は♡ ……すき♡ わたしも、りりちゃんのこと、だいすき……っ♡」
妄想の中で、優花は理々を抱いていた。
相思相愛であることになっている、少女のような理々を。
そして自分の手で彼女の輪郭を撫でこすり、乳房の柔らかな肉を揉みあわす。まだ蕾のような引き結ばれた秘裂をゆったりと解きほぐし、未成熟な彼女に女としての悦楽を刻み込む。
幼げな少女の口を開けた膣口をとろとろに潤ませ、優花自身の中指をもってして処女宮の扉をこじ開けていく。
そのとき
快楽に身をよじり、未知の感覚に怯えながら、それでもなお、優花にすがりつくように抱きついてきて、やがては歓喜の声をあげるだろうか。
涙をうるませ、口の端によだれを伝わせながら、見知らぬ悦楽に溺れていく。
まるで、いま自らを慰めている優花自身のように……。
「……ん、……ぅ♡ ……りりちゃ、ぁ♡ ……、~~っ♡♡」
そうして優花は快楽のひとつの果てへと達した。
優花自身の幼い子宮がきゅんとうねり、とぷり、と熱いものが溢れ出す。
ぎゅう、とぬいぐるみを抱きしめ、甘い吐息を漏らしながら、優花はひくひくと痙攣をする。秘部に触れていない方の手が理々の手を探してさまよい、やがてはベッドのシーツを握りしめる。
そうしてそれから甘くも苦い余韻が訪れて、優花はようやく息をすることを思い出す。
「……っ♡♡ ……すーっ♡ ……はーっ♡ ……はぁ♡ ……はぁ、……、……はふぅ」
絶頂の余韻と、虚脱感によって優花はベッドの上で放心する。くたり、とぬいぐるみにしなだれかかる。
当然ながらぬいぐるみは無生物であるので抱き返したりはしないし、頭を撫でてくれたりすることもない。本当ならさんざん気をやった理々に優しく撫でてもらいたいのだが。
しかしそれは無理なことだ。
理々はここにはおらず、居たとしても抱き返してはくれなかったではないか。
(……理々ちゃん、……理々くん、……理々)
彼の名前を唱えながら、たゆたう波のような余韻に身を任せ、優花は思った。
理々といつまでもいっしょに居たい。
彼女と共に成熟していきたい。
同じ学校へ通って、同じ部屋で寝起きして、いっしょにごはんを食べて、お風呂に入って。
いっしょに遊んだり、いっしょに勉強をしたりして、たまにはケンカをして、仲直りをして、もっと仲よしになって。
そして手をつないで、抱きしめあって、眠る。
そういう生活がしたい。
優花はそう願う。
(でも、……できないんだよね)
もちろん秀才たる優花にはそれが不可能であることはわかっている。
理々は男性だ。そして優花はどうしようもなく女性だ。ふたりで女子寮の同室で暮らすなどということは不可能だ。
けれど、優花は理々と並んで歩きたいのだ。
同じ目線で、対等の立場で。女の子同士で。
優花は願わずにはいられない。
「いっしょにいたいよ……、理々ちゃん……」
ぬいぐるみを抱き寄せ、優花は切なげにつぶやく。
しかし、彼女のその小さな呟きに応える者は誰もいないのだった。
***
年が明けて、お正月になった。
ぼく、こと塔本理々は家の前で優花ちゃんを待っていた。これからいっしょに初詣に行くのだ。
今日はうちの両親は朝から晩まで出かけていて、初詣に行くのにお隣の優花ちゃんとふたりきりで行くことになったのである。
元日の空は雲ひとつない快晴だ。風は冷たいけれど、日差しはまずまず温かい。日向に出れば寒くない。息を吐いてみたら真っ白で、煙みたいだ。それが楽しくてぼくは何度も白い煙を吐き出した。
なんだか汽車になった気分だ。煙突から出る白い蒸気みたいに、はーっと白い息が出てきてはお空に溶けていく。
「はーっ……、しゅっぽー、はーっ……、しゅっぽっぽー」
やってみると意外と楽しい。
自分のしっぽを追いかける犬みたいにくるくると回りながら、ステップを踏むみたいに足を交互に動かしたりなんかして。
そうしていると目が回ってきて、急に現れた家の壁に衝突したとき、
「理々くん、なにしてるの……?」
と、怪訝そうに声をかけられた。
振り向くとそこには優花ちゃんがいた。
今日はボアのついたモッズコートを着ていて、いつもより大人っぽい雰囲気だ。フレアスカートにぶ厚めの黒いタイツを合わせていて、足下はショートブーツを履いている。
髪はいつものようにトレードマークの三つ編みで、メガネもいつもの黒縁のものをつけている。
けれども三つ編みの先に巻かれた赤いリボンだけは新鮮だった。もしかするとお正月だから新調したのかもしれない。
なんにせよ大人びていて、とても美人さんだと思った。
子どもみたいに遊んでいた自分がバカみたいで恥ずかしくなって、ぼくは思わず赤面してしまう。
「……や、ごめん、ちょっとふざけてて……」
と、もじもじと言い訳をしているうちに優花ちゃんは不思議そうな顔をしながら近づいてきた。
やっぱりぼくよりも背が高くて、見上げるようにして彼女の顔を見つめることになる。まあ今はそうでもなくても、すぐに追い抜いてみせる予定なのだけれど。
「理々くんは子どもみたいでかわいいねえ」そう言って優花ちゃんはくすりと笑う。
「えっ、そ、そうかな」
「うん、そうだよ。理々くんはまだまだちっちゃくてかわいらしい男の子だよ。わたしよりちっちゃいもん」
そう言われると少し嬉しいような、それでいて男として認めてもらえていないことにショックを受けるような複雑な気持ちになる。
ぼくとしては優花ちゃんを守れるような強い男の人になりたいのだけど。
そんなことを考えていると、優花ちゃんがじっとこちらの顔を見ていることに気がついた。腰を曲げて屈んで、メガネのレンズ越しに上目遣いに見上げてくる。
その視線はなんだか熱っぽく感じられた。優花ちゃんの瞳はいつだってきらめいていて、そのせいか感情が読み取りづらい。いまもどういうつもりなのかよくわからない。
綺麗な目と、それから顔が近くてどきりとした。
ゆっくりと近づいてきて、優花ちゃんいつものように言葉を流し込むように耳に顔を寄せて……、
ぱくっ♡といきなり耳たぶを食まれた。
「…………っひ!?」
びっくりして飛び跳ねそうになった。耳から全身にぞぞぞ……、と気持ちのよい痺れが広がって、腰が砕けるかと思った。
優花ちゃんの唇は柔らかく湿っていて、そして熱かった。
彼女はそのまま上からぼくの肩に手を置いて、さらに耳をはむ♡はむ♡と唇で甘噛みしてくる。耳の中で彼女の舌先がぴちゃ、ぬぞっ、と音を立てた。
「ん……っ、ちょ……、優花ちゃ……んっ」
変な声が出てしまった。恥ずかしい。
けれどもぼくより大きな優花ちゃんが上から押さえつけるみたいに肩を掴んでいるものだから、逃げることもできなかった。
耳介と耳朶を丁寧に舐められ、それから軟骨の部分を甘噛みされる。くぐもった優花ちゃんの呼吸音と、唾液をたっぷり含んだ水音が鼓膜を震わせる。
ぞくん、と首筋のあたりに震えが走る。背骨を伝って体の奥底を伝播していく。
同時に胸の奥にぽわ、と温かな火のようなものを感じた。いつものヘンな感じだ。優花ちゃんに触られているところ全部が熱くて、腰が砕けそうになる。
「ん……っ、ん……っ、ん……っ」
ぼくは耐えきれずに息を漏らした。
そうしてしばらくそうされていると、やがて優花ちゃんの耳への口づけの嵐が止んだ。最後にちゅっ、軽く頬に口づけてから顔を離す。
「……ふぅ」
ようやく終わった、とほっとすると同時に、ぼくの体はすっかり力が抜けてしまっていた。優花ちゃんが腋の下に手を入れて支えてくれなかったら倒れてしまいそうだった。
「……もう、いきなり何するんだよ」
と抗議の声を上げると、優花ちゃんはきょとんと首を傾げた。それから自分のしたことを思い返すみたいにして、ああ、と納得した様子を見せる。
「理々くんが変なことをして遊んでいたから、わたしも理々くんに変なことをして遊ぼうと思って」
「……? なにそれ」
「理々くん、さっきからずっと一人で『しゅっぽー』とかやってた。楽しそうだったから、わたしも理々くんをペロペロした。たのしかった。理々くんの耳は弱点」
ほっこりとした顔で優花ちゃんは言った。
なんだか嬉しそうだったので、ぼくはそれ以上文句を言うことができなかった。
それに優花ちゃんはなんだかんだとぼくを可愛がってくれるし、こういう風にじゃれついてくれることがたまにあるのだ。
このくらいの奇行でうろたえていたら優花ちゃんの幼馴染なんて務まらない。彼女はこういう子なのだってわかっているし、まあまあ慣れている。
耳舐めは慣れないし、ヘンな気持ちになるけれど……。
「さむい中で待たせてごめんね? あけましておめでとう」
優花ちゃんはまた耳元で囁くように言う。吐息がかかってくすぐったい。
それからぼくの手を握って、自分の胸元に、モッズコートの内側へ導いた。むに、と柔らかなものに手が触れる。セーターだ。いや、セーター越しに彼女の胸に手が触れている。
彼女のコートの内側は、当然だけれども彼女の体温と湿度に満ちている。そしてとくん、とくん、と心臓の音が直接伝わってきた。
「あの、……ゆ、優花ちゃん……?」
「さむかったでしょう? ごめんね、温めてあげる」
「……う、うん」
「……えへ。赤くなってる理々くん、かわいい……」
ほくほくと満足げに微笑みながら、優花ちゃんは嬉しそうだ。笑いながら、優花ちゃんは指先でぼくのほっぺたをぷにっと押して、それから鼻先をつついてくる。
なんだかからかわれている気分だ。
視線を逸らすと、今度は手をぼくのアゴに添えて、くい、と上を向かされた。
「……理々くん、お顔真っ赤」
「そ、それは寒いからだよ!」
「んー? じゃあほっぺも温めてあげようか?」
くすくす笑いながら優花ちゃんはぼくの両頬に手のひらを添えて、そのまま包み込んでくる。手のひらはぼくよりも大きくて、けれども指が細くてしなやかで柔らかい。
優花ちゃんはぼくの顔を覗き込むようにして見つめてくる。ぼくは恥ずかしくて目を合わせられない。
キスされる……、と予感した。このポーズはキスのポーズだ。小学六年生だって知っている。
しかし、どきどきしながら待っていると、優花ちゃんはぼくのおでこと自分のおでこをくっつけて「……あは」とわらった。おでこキス。
額と額が重なっている。彼女の三つ編みがぼくの首に当たる。
超至近距離で目が合う。吐息が混ざる。
「ゆ、優花ちゃん……?」
「あは、キスしたかった?」
「そ、そ、そんなわ、わけ……、ないよ」
「そう……、ざんねん……」
残念と言いつつも優花ちゃんはどこか幸せそうだった。くりくりと額を擦り合わせてくる。まるで猫みたいだ。
彼女の吐息からはミントの葉磨きみたいな爽やかな匂いがして、それがぼくたちの唇の間で溶け合ってゆく。それがどうにも心地よくて頭がくらくらしてしまう。
優花ちゃんのほうも目を細めてうっとりしている。ぼくも脳が痺れるようなめまいがする。
それからゆっくりと顔を傾けて、本当に互いの唇が触れ合いそうになったとき「……あら?」と優花ちゃんの後ろから声がした。
優花ちゃんのお母さんだ。
ぼくたちは慌てて飛び退いた。
勢いよく優花ちゃんが振り向いたので彼女の三つ編みがばちんとぼくの顔面にぶつかってきて、痛いかった。
「ふたりとも、あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします。
優花、あんまり理々くんにご迷惑かけてはだめよ。ちゃんと仲よくしなさいね?
理々くんもごめんなさいねぇ、うちの子ったらきみと初詣に行けるのがうれしくて昨日から浮かれっぱなしで……」
「お、おかあさんっ」
優花ちゃんは慌てたようにくびをぶんぶんと振ったり、手をぎゅーっと握って下に引っ張ったりしている。三つ編みも一緒に揺れている。
ふだんは大人しい優花ちゃんにしては珍しくコミカルな動きで、なんだか恥ずかしがっているようだ。
ぼくとしても、先ほどのぼくの恥ずかしい姿について言及されるのではないかと内心気が気ではなかった。けれども優花ちゃんの母親は、特にぼくのことには言及せずに話を続けた。
「それじゃあ、優花。お父さんとお母さんはちょっと用事があって夕方までは帰らないけど、理々くんといっしょだから大丈夫よね? 初詣には十分気を付けて行きなさいよ? 神社は人が多いから迷子になっちゃダメ。神さまの前でふざけないこと。あと暗くならないうちに帰ってきなさいね」
「うん……」
「……それと、はいこれ。お小遣いあげるから、ちゃんと神さまにご挨拶するのよ。
受験の合格祈願と、それから合格したら寮生活になるんだからちゃあんと見守っててくださいってお願いするのよ」
そう言って優花ちゃんのお母さんは、優花ちゃんの手に五千円札と五円玉を握らせてあげた。お正月だからなのか、ふたつとも真新しいお札と硬貨だ。
まあ、優花ちゃんの受験する学校はミッション系の女子校だから神社の神さまは協力してくれないのではないかと思ったけれど、ぼくはそこは言わずにおいた。
なぜなら「残ったお金はお小遣いとして理々くんと自由に使っていいからね」と付け足されたからだ。神社にはきっと出店が出ているからおやつが買える。コンビニにも寄れるかもしれない。冬はあんまんを食べたいものだ。
優花ちゃんも同じくらい楽しい気持ちなのか、頬をぽんやりと染めて、メガネの位置を直したり、三つ編みをいじったりしている。
「えへへ、理々くんとふたりでお出かけ。楽しみ」
「うん、ちゃんと合格できるようにお祈りしないとね」
「……むぅ」
ちょっと意図と違ったのか、優花ちゃんは一瞬だけむーっとした顔をした。けれどもすぐに機嫌を直して「……行こ」とぼくの手を引っぱった。
「うちのお父さんとお母さんも今日は帰りが遅くなるから、帰ってきたらふたりっきりでお家でいっしょに遊ぼうね」
ぽんやりと頬を赤らめる優花ちゃん。
なんだかその仕草はとてもかわいらしく思えた。大好きな優花ちゃんといっしょに居られる時間が増えると思うと、ぼくもうれしかった。
そういうわけでぼくはホクホクした気持ちで初詣に行くことになったのである。
だからぼくは想像もしていなかった。
この初詣が、ぼくの存在そのものを書き換えてしまうような、大きな転換点になるなんて……。
*****
「わぁ……、すごい人ごみ」
「う、うん。はぐれたら大変なことになりそうだね、優花ちゃん」
一月一日の神社は人でいっぱいだった。
町はずれの静かな場所にある神社にもかかわらず参道には屋台が並び、たくさんの参拝客が列をなしている。
鳥居から少し入ったあたりでは甘酒を配っているらしく特有の甘ったるい香りが漂ってくる。
境内はごった返していて家族連れや恋人同士、友達グループなどで賑わっている。元日からみんな元気なことだ。
ぼくたちは人ごみが得意ではない。
とくに優花ちゃんは大人しくて引っ込み思案なところがあるのでこういう混雑したところだとすぐに流されてしまいそうになる。
さいわい彼女はぼくよりも背が高くて目立つから見失う可能性は低いけれど一度はぐれてしまったら後が大変だ。
「ぼく、ちょっと尻込みしちゃうな、こんなに人がたくさんいると……。いったん出直してお家でゆっくりしてからまた来ようか」
「……だめ。お祈りしたいことがあるから」
意外にも優花ちゃんは強情だった。
のし、のしと仁王立ちするみたいにしながら鳥居の奥を睨んでいる。なにか本気の決意を固めた様子だ。
こうなると優花ちゃんは頑固だ。ぼくが何を言おうと、きっと譲ってはくれないだろう。
まあ、そういうところが優花ちゃんの魅力でもある。一度決めたことは絶対に曲げない、意志の強い子。
以前いきなり「お勉強でいちばんになる」と宣言したと思ったら、それ以後のテストでずーーっと学年でトップを取り続けているみたいな、そんな強い子なのだ。
その長所は同時に危うさでもある。成績が常に学年でいちばんであるせいで、クラスの子たちと折り合いがつかないことがよくあるし。なりふりを構わないところがあるし。
だからぼくが優花ちゃんを守ってあげないと、とは思う。なかなかうまくいかないものだけれど。
「わかったよ。じゃあ行こう。でも、はぐれると危ないから、ぜったいにぼくの手を離さないでね」
「……っ♡」
ぼくは彼女の手を握った。
すると優花ちゃんはぽーっと頬を染めて、それから甘すぎるものを食べたときみたいに口をもごもごと歪めた。まるで嬉しそうな表情を隠すためにわざと変な顔にしているみたいだ。
それから、きゅっとぼくの手を握り返してくる。手の感触を確かめるみたいに何度も握ったり開いたりして、それから「えへへ」と笑った。
「理々くんのほうから手をつないでくれたの、はじめて」
「そうかな? べつに普通じゃない?」
「ううん。いつもわたしがお願いしてた。理々くんと手をつなぎたいですって」
優花ちゃんは嬉しそうに言う。
言われてみると、確かに優花ちゃんから手を繋いでくることはあっても、ぼくから繋いだことはなかったかもしれない。
だって、恥ずかしいし、男子と女子で手をつないだりするのはなんだかヘンな感じがするし。クラスの子たちから、からかわれたりしそうだし。
「行こ、理々くん。神さまのとこ、行こ」
くい、と優花ちゃんはぼくの手を引っ張った。そうしてぼくたちはゆっくりと歩き出した。
人の流れに沿って、なぜか優花ちゃんがぼくの前を歩いていくかたちになった。ズンズンと進んでいく優花ちゃんに、ぼくは手を引かれるようについていく。
あれ、おかしいな、ぼくが優花ちゃんを守らないといけないはずなのに、と思いながら、ぼくは彼女に手をひかれるままに歩を進めた。
優花ちゃんは小声で「理々ちゃん、がんばっていてかわいいね」などと言ったのがうっすらと聞こえた気がした。
「………………」
やがて優花ちゃんは人波から離れて、境内の端っこのほうまでやってきた。
ここまで来ると人はまばらで、ほとんどいないといってもいい。小さなお社があるだけだ。あとは木々が生い茂っていて、日陰になっている。
ざわ……、ざわ……、と木立が揺れている。冬の冷たい風が吹いてきて前を歩く優花ちゃんの三つ編みをぷらぷらと揺らす。
「優花ちゃん……? なんだかこっちは人がぜんぜん居ないみたいだよ。道が違うんじゃない? 出店のある方へ戻ろうよ」
「だめ。こっちであってる」
振り返らずに優花ちゃんは言った。いつになく真剣な雰囲気で、なんだか怖いくらいだ。
そのまま小さなお社の前にたどり着く。
ややオンボロで、色あせた赤いお賽銭箱と、さび付いた鈴がついている。
お参りをするにはあまりにも簡素で、お世辞にも立派な神社とは言えない。肝試しとかで使うほうがよほど似合っているような雰囲気だ。
「ここじゃなくない? あっちにもっと大きなお宮があったと思うんだけど……」
「ううん、ここでいい。ここであってる」
優花ちゃんは確信めいた口調で言った。
メガネの奥の瞳が妖しげに輝いている。なんだかとても不吉なものを感じて、ぞくりと背中の毛が逆立った気がした。
けれどもぼくのそんな不安とは裏腹に優花ちゃんはポケットから五千円札を一枚取り出して、構えた。真剣な表情で。
このときぼくは止めるべきだったのかもしれない。
ここが運命における最後の分岐点だったから。
けれど、優花ちゃんはぼくが止めるまでもなくお札をお賽銭の箱の中へと放り込んだ。
せっかくお母さんから貰った五千円札と五円玉のうち、五千円の方を! 金額が大きい方をだ!
ぼくらのような小学生にとって、五千円は半年ぶんのお小遣いに匹敵する額なのに!
「ちょっ……!? 優花ちゃん、何やってんの!?」
「……? おさいせん」
きょとんとした顔をする優花ちゃん。
ぼくが慌てて止める間もなく五千円札はお賽銭箱に吸い込まれていった。
優花ちゃんの手元には五円だけが残る。
五円だけでは何も買えない。出店はおろか、コンビニでも何も買えない。
「もう、なんてことするの。せっかくお母さんから貰ったお金を……」
「手元にある
はっきりとした口調で優花ちゃんは言った。
それから五円玉を大事そうにポケットの中にしまいこんだ。
ぎゅ、ぎゅっと繋いだままのぼくの手を感触を確かめるみたいに握り直して、それから手を離して胸の前へ持っていった。
お辞儀を二回して、それから手のひらをあわせて、ぱちんぱちんと拍手をする。真剣な表情で目を閉じる。
慌ててぼくもそれに倣った。二礼二拍手一礼。
「……………………」
何事かは分からないけれど、優花ちゃんは熱心に祈っていた。合格祈願だろうか。よほど町を出て、寮生活がしたいのだろうか。
ぼくは、祈りたいことは、なかった。
ぼく自身が欲しいものとか、なりたい将来の夢とか、そういうのはない。優花ちゃんのことを守らなければという気持ちはあるけれど、それは彼女が女子校へ行ってしまったら果たせなくなるのだし。
だから、強いて願うとするならば、優花ちゃんの幸福だろうか。
女子寮で彼女が仲よくできる友達がひとりでも居ますように。彼女のことを心から思っている人が、彼女のそばに居てくれますように。心から彼女のことを好きなってくれる人が、彼女の隣にいつまでも居てくれますように。
あと、もしも願っても許されるのならば、優花ちゃんのそばにずっと居たい。いつまでもだ。
優花ちゃん……。
「………………」
目を閉じて、神さまに祈ることさえ忘れて、ぼくは優花ちゃんのことを考え続けた。
──叶えます。
ふいに、誰かの声が響いた。
ぼくはびっくりして思わず目を開いてしまった。
誰もいない。ただうらびれた神社だ。
隣を見ると優花ちゃんが目を見開いていた。ぱちくりぱちくりと瞬きをしている。
「いま、何か聞こえた?」
「う、うん……。なんか声が
びっくりしたためだろうか。声が裏返って、高い音が出た。まるで声変わり前みたいな。
それから急に首の後ろ、うなじの中あたりがぐわんと熱く痺れるみたいにむず痒くなった。ぞぞぞぞぞぞ、と全身に鳥肌が立つ。急にインフルエンザに罹ったみたいに体温が上がっていく。
なんだかヘンだ。おかしい。
耳がぼーっとして、喉の奥から食道を伝わってお腹に熱いものが降りていく感覚。とくにヘソの下あたりがくわくわする。
身体の内側が燃えるみたいになって、じんわりと汗が浮かんでくる。心臓がばくばくと暴れるように脈打つ。息が苦しい。呼吸はできるのに、空気が足りない。
ぼくは苦しくて、優花ちゃんにもたれかかった。
「り、理々くん? どうしたの、大丈夫?」
「わ、わか、らない。なんだかヘンな感、じがするんだ」
明らかに体調のおかしそうなぼくに、優花ちゃんは心配そうにしてくれた。わたわたと慌てながらぼくの肩を抱いて支えてくれる。
肩に優花ちゃんの柔らかい胸と、それから温かさを感じる。けれどもぼくはそれどころではなくて、ただひたすらに自分の内側が燃え盛るような感覚に喘いでいた。
「どうしよう、わたしのせいだ……」
ぽそり、と優花ちゃんがつぶやいた。
まるでぼくとは反対で、顔が真っ青になってしまっている。
そして彼女はぼくを抱きしめた。強く、強く、ぎゅっと、まるでぼくがどこかに行ってしまうのを防ぐみたいに。
目に涙をたくさん溜めて、唇を引き結んで、ぼくの顔を見下ろしてくる。その表情はいかにも悲痛そうで、まるで自分のせいでぼくがこんなふうになってしまったかのように思い詰めているみたいだ。
ぼくは、ぼくが苦しむよりも、優花ちゃんが泣き出しそうな顔でいるのを見るほうが辛い。
「だいじょぶだよ。優花ちゃん、安心して。ぼくはどこへも行かないから」
「…………ッッ」
ハッと息を飲んで、優花ちゃんは目を大きく見開いた。
こちらの手を両手で掴み、すがりつくようにしてぼくの顔を覗き込んでくる。
「……理々くん、お家へ帰ろう。やっぱり何かおかしい」
「うん……。そうだね」
「ぜったいに離れたらダメ。手をつないで、いっしょに行こ」
「わかった。約束する」
「わたしのお家で看病をするね」
優花ちゃんが手を引いてくれたので立ち上がれた。そうしてぼくらは手をつないだまま歩き出した。
なんだか骨盤がズレるみたいに腰のあたりの違和感が消えなかったけれど、優花ちゃんが手を握って支えてくれているから転ばずにすんだ。むしろ優花ちゃんの手はぼくよりも大きくて、とても安心感があった。
そうしてぼくたちは優花ちゃんの家まで歩いて戻ったのである。いっぽごと、一秒ごとに、どんどん溜まっていく体の熱さに耐えながら。
──今からあなたは女体化します。
そんな言葉がお社のほうから聞こえたらしいけれど、少なくともぼくの耳には入らなかった。
***
「は、は、はぁ……っ、……ゆっ、ゆうかちゃん……」
息が荒い。
ぼくは優花ちゃんの部屋のベッドのうえで仰向けになっていた。光さす優花ちゃんの部屋の明るい天井が見える。
優花ちゃんのご両親は夕方まで不在で、それはぼくの家も同じ。だからこの場にはぼくたちふたりしかいない。
ぼくのトレーナーは脂汗やら何やかやですっかりびしょ濡れになっていて、下着のシャツも背中がぺったりとくっついていて気持ちが悪かった。
体の奥の熱はまだ引かずに残っている。むしろ時間を経るにつれてひどくなっているみたいだ。
「理々くん、理々くん、だいじょうぶ? つらい? しんどい?」
不安げに優花ちゃんはぼくの手を握ってくれていて、ときおり額に手を当てたり、頬をさすってくれたりする。
それから喉元や首筋、胸元や腕などにペタペタと触れてて、輪郭を確かめるみたいに撫でてくれたりする。
「……、あ、理々くん、これ」
「だ、だいじょう、ぶ。ぼくはだいじょうぶだから、そんな顔しないで……」
「………………ッッ」
ハッとした顔になって、優花ちゃんはまた泣き出してしまいそうになった。でも、なんとかしてそれを堪えると、優花ちゃんは覚悟を決めたかのようの真剣な目をした。
それからパタパタと駆けていって、タオルやら飲み物やらを持って戻ってきた。戻ってきた頃にはもう弱々しい雰囲気はまるでなくて、むしろはっきりとした意思を感じさせるような表情をしていた。
彼女は一瞬だけメガネを持ち上げて顔を拭き、それから寝ているぼくの隣に腰掛けて額に優しく触れると、微笑んだ。
「理々くん、大丈夫。わたしが理々くんを楽にしてあげるから」
「え……、それってどういう……?」
「とりあえず脱ごう? 汗を拭いて、お水を飲みましょう。服の締めつけがあるとよくないから。わたしも貧血のときはそうしている」
淡々と、静かに、明らかな事実を述べるみたいに優花ちゃんは言った。いつもの辿々しい口調ではなく、もっとはっきりした言い方。
ぼくはぼんやりとしていた。頭が回らなかった。ただ、その確信めいた言い方には安心感があった。
優花ちゃんは、きっと正しい。
だからぼくはその言葉に従うことにした。
女の子の前で服を脱ぐことの気恥ずかしさより、優花ちゃんに身を預ける心地よさが勝ったのだ。きっと今までの信頼関係があったからそう思ったのだと思う。
「ほら、理々くん、バンザイして?」
「ん……、はい」
言われたとおりにすると、優花ちゃんはぼくのトレーナーの裾を持ち上げ、それからそっと服を脱がせてくれた。お腹のあたりが涼しくなって、胸も息がしやすくなった。
きっと本当に服の締めつけがあって苦しかったのだな、と思って首を起こして身体を見て「……ッ!?」と息を飲んだ。
「……ッ」
と、優花ちゃんも息を飲む音が聞こえた気がした。けれどもすぐに優花ちゃんは冷静な声で言った。
「理々くん、大丈夫、おかしくないよ」
おかしくないはずがなかった。
なぜなら、ぼくの胸元、具体的に言うと乳首がぷっくりと膨らんでいたからだ。
普段のぼくの乳首はせいぜいが赤ちゃんのそれと変わらないくらいの慎ましいものなのだけれど、いまでは小指の第一関節くらいに膨れてしまっている。
道理でジンジンと疼くように痺れていたわけだ。
ここに戻ってくる道中でも服にすれて甘い刺激が走って、正直、歩くのがやっとだった。
まるで触ってくれと言わんばかりにピンと勃ち上がった乳首は『ここに吸いついてください』といわんばかりに主張をしている。
「な、なんで、こんな……? 優花ちゃん、どうしよう胸が腫れてるよ」
「うん、女の子の乳首みたいで可愛いね。大丈夫、変じゃないよ。わたしの乳首もおんなじ感じだから、大丈夫」
「い、いや、でもぼくは男だし……、それにこんなに風になっちゃうなんて」
乳首だけではない。
同時に乳腺も発達してきているのか、胸の中にかたい
怖い、と感じた。自分が自分でなくなっていくような感覚。自分の体が作り替えられていくような恐怖。体は熱いのに、背筋だけが氷柱みたいに凍っている。
優花ちゃんが右手を握ってくれているにもかかわらず、怖い。思わず泣きそうになって優花ちゃんを見上げると、
──ぴと
と、優花ちゃんがぼくの胸に手を添えた。
胸の左のほう、心臓のあたりに手のひらが押し当てられる。そしてとん、とん、とん、と静かなリズムで心臓を叩くようにしてくれる。
爆裂しそうだった鼓動が、ゆっくりと落ち着いていく。むしろ胸全体が柔らかくなるような感覚さえあった。
「……あぅ、ぅ。……優花ちゃん、ぼく、なんだか胸が熱い」
「うん。さすってあげる」
優花ちゃんはぼくの胸板を、腋から胸の下へと胸郭に沿って何度も往復するようにして撫で上げてくれる。そのたびに胸の奥がじんわりと温かくなって、胸が柔らかくなっていく。
甘くて切ない感覚が全身に広がって、ぼくは思わず吐息を漏らしてしまった。
「……は、……ふぅ、……ぁ、……っ」
「気持ちいい?」
「うん……」
優花ちゃんは優しい目をしてぼくの胸を撫でくれている。もう片方の手はぼくの手を握ったままで、指を絡めるようにしてぎゅっと握られている。
ぼくは安心して、優花ちゃんに身を任せる。
やがて、撫でられている胸の方までがふんわりとした熱を帯びてきた。胸の内側に水風船があって、それがだんだんと膨らんでくるような感じだ。
優花ちゃんの手が動くたびにぼくの乳房はむず痒い熱をもって、お腹の奥がきゅーっとなる。
「……っ、……ぁ、……はぁ……」
そうしてぼくの胸は膨らんでいった。クラスでいちばん発育のいい優花ちゃんほどではないにしろ、それでも少女らしいツンと張りのある膨らみになってしまった。
自分に胸があるということは、ありえない。
ぼくはぎょっとして身を起こして、優花ちゃんに「ゆ、ゆうかちゃんっ」と呼びかけてしまった。
その声も、声変わりで低くなりかけていたはずのぼくの声なのに、なんだか高くなっている。以前に逆戻りしたみたいに高いソプラノボイスになっている。
「ど、どうしよう。ぼく、ぼくにおっぱいが生えちゃった……! ぼくに女の子の部分ができてる!」
胸を触ってみると、確かにそれはおっぱいで。
まだ蕾のような柔らかさではあるものの、しっかりとした弾力があって。それは男子にはあるはずのないもので。
そして、そのことに強い羞恥心を覚える。ぼくに、優花ちゃんと同じようにおっぱいがあるなんて。
「……ぁ、……っ」
恥ずかしくて顔が真っ赤になるのがわかった。
女の子みたいになってしまった自分の胸を優花ちゃんに見られて、触れられて、そしてちょっぴり気持ちよくなっていることがたまらなく恥ずかしかった。
「み、見たらだめ。見ないで、優花ちゃん」
こちらが胸を隠しながら訴えると、優花ちゃんの瞳がメガネの奥でくらりと大きく揺れた。
彼女は一瞬だけ目を閉じて何かを耐えるかのような表情を浮かべると、次の瞬間には強い決意に満ちた顔つきになっていた。
そして、いきなり自分のセーターをがばりと脱いだ。
ばるんっ、と飛び出してくるようにして出てきた優花ちゃんのふたつの大きなおっぱい。大人用の薄桃色のブラジャーに支えられた白い柔肉の塊が、ぼくの目の前に出現した。
優花ちゃんはそのブラジャーを下側にぐいっと引っ張って、そのまま外してしまう。すると支えを失った彼女の胸はどたぷんと重たげに垂れ下がって、ぶるんと震える動きに合わせて上下に跳ねる。
大好きな、女の子の、胸。
白くて、ふっくらとした丸みと、その頂点で可愛らしく主張する桜色をした突起。もっと薄い色の乳輪はわずかに汗ばんでいて、つややかな光沢を放っている。
それはこれまで何度となくぼくに押し当てられてきた優花ちゃんの胸で、その柔らかな触感と温かさを思い出して、下腹部がぎゅーーっと熱くなった。
「……ぅ、……ぁ?」とぼくは声にならない声を漏らす。
優花ちゃんは意志のこもった目でぼくを見ると、そっと両手をぼくの肩に置いた。
「理々くん、聞いて。おっぱいがあることは恥ずかしいことじゃない」
言っていることが無茶苦茶だ。
だってぼくは男子で、男子には胸はないはずで、でもいまは優花ちゃんと同じおっぱいがぼくの胸にあって。
けれども優花ちゃんの眼力には不思議な説得力があった。ぼくは言葉を失って、ただ優花ちゃんの目と胸とを交互に見るだけしかできない。
そのままフカフカのベッドへ押し倒されて、また仰向けになってしまう。視界が天井と優花ちゃんの顔でいっぱいになって、次の瞬間には顔にふっかりと柔らかい感触がした。
「……………っ!」
鼻腔に優花ちゃんの甘い体臭が広がった。
ぼくの顔面に優花ちゃんのおっぱいが乗っかっていて、呼吸をするたびに肺のなかが優花ちゃんの匂いで満たされていく。
「……、……! ……!」
何をやっているのさ、こんなのことおかしいよ、と言おうとしたのだけれど、言葉が出なかった。
それよりも早くぼくの口のなかに優花ちゃんの胸の頂たる乳首が侵入してきたからだ。口の中にミルクのような甘い味がと汗の塩味が混ざり合った香りがぼくの思考をとろけさせてしまう。
「……ほら、力を抜いて、たぶんもうちょっとで楽になるから」
「………………」
もはやぼくは優花ちゃんの言葉に従うしかなかった。体の熱はどんどん上がっていって、全身が痺れたみたいに力が入らなくなっている。
頭のてっぺんから足の裏までが甘くて心地よい刺激に蕩かされている。目を閉じると優花ちゃんの心音がよく聞こえてきて、優花ちゃんの香りがして、口の中は優花ちゃんの乳首が甘い味を与えていて。
ぼくは抵抗する気力を根こそぎ奪われて、ベッドのうえでくたりと脱力する。
「これから理々くんの体にますます変化が訪れると思うけれど、わたしがついているから安心して。深く息をして、なりゆきに身を任せるんだ」
説いて聞かせるように言いながら、優花ちゃんはぼくの頭を優しく撫でてくれた。ぼくはそれを嬉しいと感じてしまって、こくこくと緩やかに首肯する。
すると優花ちゃんは片手でぼくの右手を握って、もう片方の手をぼくの喉元に添える。
「……む、……ぅ」
「そう、上手。ゆっくり鼻から吸って……、吐いて……、吸って……、吐いて……。そう、わたしの心臓の音を聞いて……」
言われるがままに鼻で深呼吸を繰り返す。
優花ちゃんの細い指はぼくの喉仏を軽く押さえていて、すりすりと擦っている。徐々に喉のふくらみは奥へと押し込まれていって、完全に女の子と変わらないくらいの大きさになった。
きっともう以前のように話しても声は低くならないだろう。ソプラノの声であるだろう。
それから優花ちゃんの手のひらは鎖骨をなぞりながら移動して、肩、腋、二の腕へと降りていく。優花ちゃんはまるでマッサージをするようにぼくの二の腕をさすってくれている。
男らしい体格になりつつあった腕は丸みをおびてゆき、生えかけていたわき毛もなくなってしまった。つるりとした腋窩があらわになって、そこに空気が触れているだけでゾクッとする。
二の腕から肘へ、そして筋張っていたはずの手はいつの間にか柔らかく丸みを帯びていく。手首、そして指の節さえもほっそりとして、少女らしい可憐さをもったものに変わってしまった。
「……理々くん、かわいい……」
うっとりとした声で優花ちゃんが言った。
ぼくの裸の上半身を見つめる彼女の目は、どこか夢見がちな様子だった。
そして、ぼくの体の変容は、上半身が変わっていくにつれて下半身にも及んでいった。
まず最初に腰回りが柔らかくなった。骨盤が広がったのかお尻が大きくなった気がして、それに伴って脚のつく向きも変わったのか、内股気味になってしまっている。
ふとももはムチムチと柔らかくなって、ヒザやスネの筋も消えて、同時にお尻から下がむっちりした質感になっていく。
濃くなりつつあったすね毛も赤ちゃんと変わらないうぶ毛に変わり、やがてそれもなくなってツルリと滑らかな肌になっていく。
女の子のようにしなやかで柔らかな、肌理の細かい素足。サルスベリの木のようにふとももの付け根からかかとまで何処にも引っかかることなく伸びている。
上半身も下半身も、どこもまるで女の子みたいな姿になってしまった。
ただ、股間の、もっとも男性らしい部分だけは未だにしっかりと残っていた。
そこはピーンと張り詰めて、ぼくのズボンを押し上げている。大好きな女の子の胸に吸いついて、彼女がぼくの全身を撫でまわしてくれているのだから当然だ。
「理々くん、気持ちいい? それともつらい? おちんちん苦しそう……」
優花ちゃんはぼくのヘソの下あたりにそっと手を這わせる。とん、とん、とん、とそこを叩くようにして、さらにぼくのお腹の奥に切ない感覚が広がっていった。
腹筋でもなければ腸でもない。そこに存在するはずのない器官が、その部分を内側から強く圧迫しているような感じだ。
切なくて、熱くて、じんわりと気持ちいい。
「……ぁ、……ゆ、優花ちゃん、ぼく、ぼく……っ」
たまらずぼくは優花ちゃんの乳首から口を離して、必死に訴えかける。
このままではどうなるのか。わならないけれど、ヘンになってしまいそうな予感があった。
「だいじょうぶ、理々ちゃんの体は女の子になるんだよ。きっとそれはすごく気持ちいいことなんだ」
「……おん、なのこ?」
「うん」
優花ちゃんは微笑んで、ぼくの下腹部を撫でてくれる。それからぬるり、とズボンの中へと指をすべりこませた。
指先で下着越しにぼくのモノに触れられる。ひやりとした感触が伝わって、おちんちんを指先で摘まむようにされて、それがぼくの敏感な場所なのだと自覚させられる。
「理々くんは男の子だけど、これから女の子になるの。だから最後に上手にお射精して、たくさん気持ちよくなろう?」
「しゃせい……、……っ。いやだ、ぼく、ぼくは女の子になんか、なりたく……」
「ごめんね。わたしが理々くんを女の子にしようとしているわけじゃなくて、理々くんの体が自然とこうなっているだけなの。
だからわたしには止めることはできなくって、わたしは理々くんが少しでも気持ちよくなれるように協力することしかできないんだ。
大丈夫、怖くないよ。全部わたしに任せて、安心して、わたしのおっぱいに甘えて、何も考えずにただ身を任せてくれればいいから」
またぼくの顔面に優花ちゃんの乳房が乗っかる。
視界は彼女の胸でいっぱいになって、頭のなかが甘い匂いと柔らかい感触でいっぱいになって、口へは優花ちゃんの乳首を含ませれる。
耳元には優花ちゃんの甘いささやき声が届いてくる。
「ほら、赤ちゃんみたいにおっぱいを吸って、力を抜こう? そうしたらすぐに楽になれるから」
その声は催眠術でもかけられているかのようにぼくの心を蕩けさす。体から力が抜けて、抵抗する気力が失われていく。
いやだ。こんな、わけもわからないままに女の子になるのはいやだ。
けれどもどうすることもできない。
ただ優花ちゃんの胸に溺れて、ちゅう、ちゅうと吸うだけ。抵抗できない。
「あは、かわいい。理々くん、おっぱいおいしい?」
「……ん、ちゅ、ぅ」
「そっか、じゃあ、おちんちんもシコシコしてあげるからね。いっぱい出して、楽になろうね」
優花ちゃんはぼくのパンツのなかでぼくのモノを優しく握りこむ。
それからゆっくりとした動きで上下に撫で始めた。
最初はお風呂で体を洗うときみたいに表面だけを滑らせるような手つきだった。それがだんだんとスピードを増していき、やがて竿全体を揉みほぐすように握ってくるようになる。
ちゅこ、ちゅことすべるように擦られて、ぼくは全身に電気が走るかのような快感を覚える。
射精したら終わりだ、と思う。
射精したら女の子になってしまう。
射精したらすべて終わってしまう。
そんな確信を覚えてぼくはなんとか抵抗しようとする。
腰を跳ね上げた落としたりして優花ちゃんの手から逃れようする。けれども彼女はそれを許さず、ますます胸をぼくの顔に押し付けるようにしてくる。
「だめだよ、逃げちゃダメ。わたしの手で気持ちよくなって、ね?」
ぼくのペニスは、おそらく以前よりもずっと縮んでいる。優花ちゃんの手に余ってしまうほどの大きさだったはずなのに、いまや彼女の手のひらのなかに収まっていて、細く、短く、可愛らしくなっていた。
全力で勃起しているはずなのに、すごく気持ちがいいのに、どんどん小さくなっていってしまう。にもかかわらず感度はどんどん高まっていって、腰椎が溶けてしまいそうなほどの快楽が全身に広がっていく。
気持ちよくなればなるほどおちんちんが縮んでいく。
体内に格納されて消えようとしていく。それはいやだ。
「……んっ……、……ふ、……っ」
優花ちゃんの胸に顔を埋めたまま、ぼくは声にならない声をあげる。そうしていないとおかしくなりそうだからだ。
ヘコヘコと情けなく腰を動かして、どうにかして逃れようとする。しかし優花ちゃんはぼくの抵抗を許さない。
親指と人さし指のあいだに挟むようにしてぼくの亀頭をぎゅっと掴み、胎内に埋まっていこうとするペニスをしこ、しことリズミカルに扱く。
「ふふ、理々くんのおちんちん、どんどん小さくなっちゃっている。先っぽからたらたらーって透明な液が出てきちゃった。トロトロしてる。おちんちんにまぶしてあげようか」
ぼくの尿道口からはカウパーがとめどもなく溢れてきていた。いや、あるいは新造された愛液が出口を求めて尿道から漏れているのかもしれない。
優花ちゃんはそれを潤滑油にして、さらに手の動きを加速させる。にちゅ、にちゅ、にちゅと淫らな音が鳴り響く。
もうおちんちんは優花ちゃんの人さし指と中指の先で覆えるくらいのサイズになっていた。陰嚢はほとんど胎内に格納されてしまっている。
気持ちいい。射精したい。けれども、縮んでいく。
それでも優花ちゃんは手を休めない。優花ちゃんはその二本指を器用に動かして、円を描くようにしながらぼくのおちんちんを責め立てる。
ほとんど陰核小帯じみてきた裏筋を何度も往復させて、しこしこ、しこしこと刺激を与え続ける。気持ちいい。それがたまらなく気持ちいい。
縮めば縮むほど神経繊維は密集していって、ペニスとしてはもう用を為さない単なる快楽器官へと成り下がっていく。ビリビリと痺れて、脳が焼き切れそうなくらいの快感がぼくを襲う。
「……んぅっっ、……~~っ、……、ふ、……うぅ」
優花ちゃんの乳首を口に含みながら、ぼくは必死に甘い悲鳴を噛み殺す。そうしないと本当に頭がおかしくなってしまいそうで。
けれどももう限界で、我慢できなかった。
「理々くん、お射精したい? お精子ぴゅーっぴゅしたい? がんばって、まだイけるよ。イッていいよ、がんばって、お射精しよう? お射精ぴゅっぴゅってして、気持ちよく女の子になろ?」
優花ちゃんはぼくを絶頂へと導こうとしている。耳元で囁かれる言葉はぼくの脳髄に染みこんできて、理性的な思考をすべて奪い去っていく。
射精したら終わりだ。なのに、ただ気持ちいいことしか考えられなくなる。
ぼくは優花ちゃんの言うとおりにしたくなる。
射精したい。射精したい。射精したい。
そして、優花ちゃんの指が、裏筋を引っ掻いた瞬間。
「──────────っ!」
ぼくは果てた。
ぴくん、ぴくん、と痙攣して、優花ちゃんの人さし指と中指の間にぴゅる、と一筋の精液を吐き出す。
ほとんど無色透明な、さらりとした粘液。
その瞬間にぶわーーっと気持ちいいのが広がった。
尾骨から頸椎まで花畑が広がるような快楽。
でも、それだけ。
女の子になりかけたおちんちんでは、たった一度『ぴゅる』としか射精できなかった。
しかし、にもかかわらず、気持ちいいのか終わらない。
射精が終わったのにふとももの付け根の痙攣が止まらない。気持ちいいのがいつまでも続いて、ぼくは優花ちゃんの胸にすがりつくことしかできない。
優花ちゃんの指はちょっと出た精液をまぶすようにして、ほとんど陰核と化したモノをくりくりと弄び続けている。それがまたたまらない感覚を生みだして、もっと出したいという欲求が湧きあがってくる。陰嚢も陰茎も格納されて消えてしまったのに。
「……ふぁ♡ やだっ♡ イッたのに、ぼく、イッたのにぃ……っ♡」
思わず叫ぶと、女の子みたいな甘い声が出てきてしまった。それもすぐに乳房によって塞がれてしまう。
優花ちゃんはぼくのペニスだったモノをいじめつづけているのだ。
「理々くん、お射精できたね。えらいよ。でも、まだまだいけるよね? 女の子は何回でもイケるんだから」
ぼくの陰核を指でなぞりながら、優花ちゃんは陰嚢があった部分を指先でぬぱ♡と開く。そこはいつの間に縦ひと筋の割れ目が走っており、そこからはとぷとぷと透明な愛液が滴っている。
お尻の方まで液が垂れて、お尻の穴がひくひくと収縮を繰り返しているのがわかる。
そのおつゆをクリトリスに塗り込むようにしながら、優花ちゃんはぼくの股間をまさぐり続けた。
「──っ♡♡ や……っ♡♡ やだ、やだやだ♡♡ またイクっ♡♡ すぐイっちゃうからっっ♡♡♡ やだぁ♡♡♡」
ぼくは泣き叫びながらもその快感に抗うことができない。
おちんちんがなくなってしまったかわりに痕跡として残ったクリトリスは、ぼくに未知の快楽を刻み込んでくる。
気持ちよくて、気持ちよくて、気持ちよくて、何も考えられない。頭の中が真っ白で、ビリビリと電流が走ったみたいになって、自分が自分でなくなってしまいそうになる。
「~~~~~~~~~~~~ッッッッッッ♡♡♡♡♡♡」
そうしてぼくは二度目の絶頂を迎えた。
優花ちゃんのおっぱいに吸いついたまま、背中を大きく仰け反らせて、腰を突き出すようにしながら気をやる。
しかしそれはもはや射精を伴わず、優花ちゃんが撫でている痕跡器官からは何の液体も放出されない。単なる快楽だけの、終わりのないオーガズム。
同時に、新たにできたぼくの牝貝はくぱくぱと開閉するように痙攣しながら懸命に蜜を分泌し続けている。
お腹の奥がきゅんきゅんとうずいて、切なくて、苦しくて、気持ちよくて、どうにもならない。気持ちいい。全身が気持ちいいのが止まらない。
がくがく痙攣して、背筋を逸らして、声にならない悲鳴を上げて。
脳内で快楽物質を吐き出し続けて。感じ続けて。気持ちよくなって。
そうして、やがて絶頂の果てにぼくが潮を噴いた。
そのとき吹き出た液体は、もはやぼくペニスからではなく新造された膣口のあたりから勢いよく噴出したのだった。
*****
「……はひゅぅーー、……ふひゅーー、……は、……は、……っ」
ぼくが達してからいったい何分経っただろうか。
優花ちゃんのフカフカのベッドのうえで、ぼくはトロトロに蕩けてしまっていた。優花ちゃんの胸の谷間に顔を埋めたまま、息も絶え絶えになっている。
ひと息ごとに肺のなかへ甘ったるい匂いが流れこんできた。そのたびにぼくはビクンと体を震わせてしまう。きっと今のぼくの顔は、涙や唾液でぐしゃぐしゃになっていることだろう。
「理々くん、最後にかっこよくお射精できたね。えらい、えらい」
優花ちゃんはそんなぼくを抱きしめてくれる。頭を優しくなでてくれて、髪をすくように指を絡めてくる。
いつの間にか髪はふわふわの猫っ毛になってしまっていて、長さもボーイッシュなショートヘア程度に伸びてしまっていた。
好きなこの胸に抱き寄せられながら頭を撫でられるたこうかでいっぱいになって、手足がぐずぐずに溶けてしまいそうだった。
「気持ちよかった?」
「……う、ん」
ぼくは素直に返事をする。
気持ちよすぎて、気持ちよすぎるのが怖いくらいで、けれども優花ちゃんが居てくれるなら安心できそうで、ぼくは彼女の胸に抱かれていたかった。
けれども彼女が胸を離して、ぼくの顔を解放してしまう。
「お水飲も? 脱水症状になっちゃう」
そう言って、優花ちゃんはぼくの体を起こして座らせて、ペットボトルのミネラルウォーターを差し出してくれた。
涙を拭いて、ぼくはそれを口に含む。
「まだ飲む?」
ぼくが首を横に振ると彼女はボトルを受け取って蓋をして、それからぼくの右手をまた握った。「……はふぅ」と何か物事を成し遂げたみたいなため息をつくと、ぼくの隣に座って寄りかかってくる。
そうして、ようやくぼくは自分の体を視認した。
ベッドに腰掛けたまま見下ろすと、自分の胸が目に入る。そこにあるのは、女の子の、ふたつの膨らみだ。
大きさは優花ちゃんのモノほどではなくて、むしろ慎ましい方かもしれない。しかしそれでも間違いなく女の人のもので、それが恥ずかしいような嬉しいような、不思議な気持ちになる。
乳首も以前よりもずっと膨れて敏感になっていて、空気の流れだけで感じ入ってしまうほどだった。
それから手の甲も指も細くて華奢で、爪は短く切りそろえられている。肌には毛のようなものは生えておらず、つるりとしていた。
ヘソの下あたりに手のひらをあてると、きゅーっ、きゅーっと収縮を感じる。いまだ絶頂の余韻にひたっているらしい子宮が、子宮頸管から愛液を分泌させているのだ。
その男性には存在しない粘液はぼくの膣内を満たして、膣口から溢れて下着を濡らしている。シーツにも大きな染みを作ってしまっているのが見えた。
おそるおそるズボンの中に手を入れてみると、やはりそこには慣れ親しんだペニスはなく、かわりに割れ目の感触がある。ぬと……っ♡とした粘り気が指先を汚す。
「……んっ♡」
敏感な部分に触れてしまったことで思わず声が出てしまった。その声は、自分が出したとは思えないほどに甘く可愛らしくなっている。
「女の子に、なっちゃった」
ぼくは隣にいる優花ちゃんに報告をする。
どうしてそうなったのか分からないけれど、現実としてぼくは女の子になってしまっていた。
頭がぽわぽわして、お腹がきゅうきゅうして、もうどうしようもない。
「うん、なっちゃったね。理々くん、女の子になっちゃった」
「ぼく、どうしたらいいんだろう。ずっとこのままなのかなあ?」
「……わかんない。理々くんは男の子に戻りたい?」
「………………」
それは、どうだろうか?
まだ女の子になってしまったばかりで、気持ちいいことしか考えられていないので、よくわからない。働かない頭で無理矢理に未来を想像してみる。
女の子の服を着ている自分、スカートを履いて、ブラジャーをつけて、女の子用のパンツを穿いている自分。
女の子と一緒に着替えて、女の子のトイレに入って、座っておしっこをして。女子トイレには男子トイレにはない小さなごみ箱があって。
そういえば女の子ってどうして連れだってトイレにいくのだろう? 女の子は女の子同士で仲がよくて、女の子同士で手をつないで歩いたり、教室で抱きしめあったり、男の子と女の子ではできないことをたくさんしている。
「女の子になってしまったの、いやだ?」
「……わかんない」
「わかんない、かぁ」
「……うん」
男の子とか、女の子とか、よくわからなかった。今までの自分と異なるということしかわからない。
ただ、優花ちゃんから与えられた女の子の性感はあまりにも強烈過ぎて、それをなかったことにしてしまうのは惜しいなと思ってしまう。
けれど自分が女の子として生きていくとも思うとそれはあまりに不安で、ひとりではとても耐えられないことのようにも思える。
「理々くん、とりあえずお風呂に入ろうか? ベトついて気持ち悪いでしょ」
「……でも、ぼく、体がこんなだし」
「だいじょうぶ。わたしが一緒に入るよ」
「──えっ!?」
優花ちゃんの提案に、ぼくは驚いて声を上げてしまう。
だって、一緒にお風呂に入るということは裸になるということで、つまり優花ちゃんも裸にならなければいけなくて。
それは、なんというか、とても恥ずかしいことだと思った。だって、ふたりとも裸だなんて。自分ひとりの女の子の裸だけでも恥ずかしくて仕方がないのに。
ぼくが躊躇っているのを見て、優花ちゃんはくすりと笑う。頬をぽやっと赤く染めながら、彼女はぼくの耳元でささやくように言った。
「女の子が女の子とお風呂に入るのはぜんぜんヘンなことじゃないんだよ? 温泉だって男湯と女湯に別れているけれど、女の子と女の子はいっしょにお風呂に入るでしょう?」
それは、そうだ。
ぼくはこくりと肯く。
まあ、それとこれとは話が別だと思ったのだけれど、優花ちゃんに説得されて、結局ぼくは彼女といっしょにお風呂に入ることになってしまった。
だって、好きな子に『一緒にお風呂に入ろう?』なんて誘われて断れるわけがなかったから。
***
「これからは『理々ちゃん』って呼ぼうかな……」
脱衣所でぼくのズボンを脱がしながら、優花ちゃんがそんなことを呟いた。彼女の視線はぼくの下半身に向けられていて、ぼくはその光景を直視できない。
薄目を開けて見た自分の股間は、やっぱり見慣れたものと違っていて、しかしそれがかえって生々しくて。
つるりとした土手だ。
見るからにおちんちんが生えていなくて、恥丘のこんもりとした膨らみだけがそこにあった。
立った状態ではその秘部の内側までは見ることがかなわないけれど、そこから滴った愛液がふとももを伝っている。
ふとももにもスネにも毛は生えていない、女の子の足だ。近ごろ生えつつあった陰毛はほんのわずかに残っていたけれど、毛質が柔らかくなったのかふわふわと風に揺れて、頼りなく感じられた。
「ほら、見てよ理々ちゃん。理々ちゃん、すっごく可愛いよ」
優花ちゃんがぼくの耳元に顔を寄せて、顔を覆ったぼくの指を外しながら脱衣所の鏡を指さす。
そこには、美少女がふたり、映っていた。
ひとりはもちろん優花ちゃんだ。
上半身は裸で、学年一大きなおっぱいの形がはっきりと見えている。三つ編みとメガネはそのままだけど、半裸の優花ちゃんはまるで別人のように聖母じみて見えた。
そして、もうひとりの美少女。
現在のぼくの顔立ちはどちらかというと中性的だ。ボーイッシュと言ってもいいかもしれない。くりっとした目もとの表情はどこか幼げで、ぷっくらとした唇は小ぶりで、けれども頬を真っ赤に染めて目を潤ませている表情は庇護欲を誘う。
髪質も変わっていて、以前はツンツンとしていた髪が今はふんわりとた猫っ毛になっている。どうにかギリギリ結べるか結べないかくらいの長さのショートヘアで、前髪が目にかかりそうになっていた。
全体的に華奢になった体つきは、しかし胸のふくらみだけは年相応にしっかりとあって、腰回りも以前よりも少し丸みを帯びているように見える。
以前のぼくはごく普通の容姿だったように思うのだけれど、女の子になってみるととんでもなく美少女なのだ。
ぼくはメガネを外した優花ちゃんが世界でいちばん美少女だと常々思っているのだけれど、鏡の中の美少女はその次くらいにかわいいと思える。
「うーん……、理々ちゃんはかわいいなあ」
「ううぅ……、そういうこと言うの、やめてよぉ……」
恥ずかしさに、ぼくは思わずうめき声を漏らした。
なんだか自分がすごく恥ずかしい存在になってしまったような気がして、その事実を受け入れたくない気分になってしまうのだ。
ぼくは女の子の体になってしまって、しかも優花ちゃんに裸を見られて、さらにはかわいいと言われてしまって、恥ずかしくて恥ずかしくてたまらなくなってしまう。
胸がドキドキして、お腹の下あたりがきゅうんとして、内股でモジモジしてしまう。
「………………っ♡」
恥ずかしいのと同時に女の子としての快感を思い出してしまったのか、子宮がきゅっきゅっと収縮して、愛液がどばっとあふれ出してきて、ふとももをつたっていく感触があった。
女の子の体は本当に不思議だ。ちょっとしたことでこんなにも簡単に気持ちよくなってしまえるんだから。
そんな風にぼくが慣れない感覚に戸惑っている隙に、優花ちゃんはあちらを向いて下半身に身に着けていたロングスカートをバサリと脱ぎ落した。
黒いタイツ越しに桃色のショーツを穿いた丸いお尻が見えた。黒タイツの内側でややシワになってるショーツと、それでもなお張りのあるお尻はとっても魅力的で。
腰あたりのゴムをぐいっと引っ張ると、ショーツに包まれた優花ちゃんのお尻が丸見えになる。そのままゆっくりと脱いでいく優花ちゃんの後ろ姿は、なぜかとてもえっちな気がする。
そうして現れた優花ちゃんの裸はぼくよりもずっと発育がよくて、すらりとした手足に豊かな乳房と、柔らかそうな下腹部と。
陰毛もすでに薄く茂っていて、優花ちゃんの大事なところを守るように生えている。ぼくよりもずっと大人っぽい女性らしい肉体で、とても綺麗で。
ぼくの視線に気づいたらしい優花ちゃんは「……んー?」と首を傾げる。
「理々ちゃんどうかした? わたしの体に何かついてる?」
「な、なんにもついてないよ! ただ、その、優花ちゃんの体がきれいだから、つい」
「あはっ、ありがと。理々ちゃんもなんにもついてなくて可愛いよ?」
「……ッ」
恥ずかしさを誤魔化すために褒め返してみると、あっさり返り討ちにあってしまった。
優花ちゃんの裸を見たことで興奮してしまったのか、またも膣内がじゅんっ♡となった。じわじわと焦げるような性感がお腹の奥に生まれ始めて、ぼくは慌てて思考を逸らす。
これ以上裸の優花ちゃんを見ているとおかしくなりそうだった。本当にヘンになりそう。でも、だからといってどうすることもできない。
そのうえ優花ちゃんはいきなりぼくに抱き着いてきた。
背中側からぼくのお腹に手を回して、背後からむにゅりと押し当てられる豊満な胸の感触。生の乳首のコリッとした感覚が押し当てられて、ぼくは息を飲んだ。
ぼくよりも10cmも背の高い優花ちゃんに抱きしめられていると全身で包み込まれているようで、それでいて生の素肌と素肌が直接触れあってぴりぴりとした甘い刺激が生まれていく。
すり、すり、とぼくのヘソの下あたりに優花ちゃんの手のひらが触れる。まるでその奥にある臓器を慈しんでいるかのような手つきで撫でまわされて、ぼくはぞくりと身を震わせた。
ぼくは前屈みになって「……ぅ♡ ……あぁ♡」と甘い吐息を漏らす。その声は女の子そのもののようで。すると優花ちゃんの体がますます密着してきて、ふたりの体が溶け合うかのように思えて。
「……理々ちゃん」
と、優花ちゃんのささやき声が耳元で聞こえた。
甘く熱を帯びたその囁き声は、まるで毒のようにぼくの脳を蕩けさせてくる。
「ごめんね理々ちゃん。女の子同士でお風呂に入るのは普通だ、なんて言ったのは嘘なの。お風呂に行くための口実。本当はね、理々ちゃんとこういうことしたいって思ってたの」
「こうい、うこと?」
「女の子同士でえっちなことをするの。理々ちゃんのおまんこにわたしの中指を挿れて、くたくたになるまで蕩かして、ふにゃふにゃになった理々ちゃんを愛したいの」
「──ひゃうっ♡」
優花ちゃんの指先がぼくの秘裂をなぞった。
濡れそぼったそこはぬちゃりと粘っこく糸を引いて、ぼくは驚きに悲鳴を上げる。
そのまま表面を擦るように指を上下されて「……あっ、あぁっ、んぅ……♡♡」と喘ぎが漏れてしまう。
「理々ちゃん……、いっしょにお風呂入ろっか? そういうこと、したいでしょう? もっと女の子の身体で気持ちよくなりたくないの?」
「……う、うん。……入り、たい」
ぼくはこくりとうなずいた。
もうどうにでもなれという気持ちだった。
だって、好きな女の子から与えられる快楽はあまりにも甘美で抗いがたかったから。それに優花ちゃんの手つきはどこまでも優しくて、乱暴される心配などどこにもなかったから。
いや、それだけではない。
ぼくは気持ちよくなりたくて、女の子の快感が欲しくて、仕方がなかったのだ。
「……じゃあ、行こ」
優花ちゃんは嬉しげに微笑むとぼくの手を引いて浴室へと向かっていく。ぼくはもうされるがままになっていて、抵抗する気力すら失われていた。
ただひとつだけ思ったことは、優花ちゃんに手を引かれるのは悪くないということだった。
***
そして、ぼくは風呂場のバスチェアの上にぺたんと座り込んでいた。
浴室暖房のおかげで真冬だというのに寒さはまったく感じないけれど、かわりに緊張と興奮のせいで汗ばむくらいに体温が高まっている。
優花ちゃんもそれは同じなのか、ほくほくした表情でシャワーヘッドを手に取ると、コックを捻った。最初は冷水だったけれどすぐに温水に変わる。
そしてぼくの後ろに膝立ちになると、ボディソープのポンプを押して手のひらに出した。こちらの耳元に口を寄せて、優花ちゃんは言う。
「これからわたしが理々ちゃんを洗うけど、いい?」
ぼくは何も言わずにこくりと肯いた。
これから何をされるのかはなんとなく想像がついているし、むしろ早くして欲しいと思っているくらいだった。
つまり優花ちゃんはぼくを洗いながら愛撫してくれるということで、ぼくはそれを受け入れる姿勢を見せるべきだということで。
優花ちゃんはぼくの背中に手を伸ばすと、たっぷりの泡で包んでくる。
スポンジではなくて直接手で触れられる感触は新鮮だった。温かくて柔らかくて気持ちよくて、ぼくは「……ふあぁ♡」とため息をつく。
「理々ちゃんは可愛いなあ。こんなに小さくなっちゃって」
「……うぅ、そんなに小さいかな」
「うーん、身長はあんまり変わってないみたいだけど、全体的にちいさくなった。肩が丸くなったし、しなやかになったのかも」
「あぅ……、それは、その、女の子になったからだよ……」
「理々ちゃんは女の子の方が向いているよ」
そう言い切って、優花ちゃんは泡まみれのぼくの背中に後ろから抱きついてきた。
背中に当たる柔らかい胸の感触。せっけんで摩擦係数が下がっているせいか、よりなめらかで優花ちゃんの肌の熱がむしろダイレクトに伝わってくる。
「……んっ♡」
思わず声が漏れてしまった。
お腹の下あたりがきゅんきゅんと疼いてしまい、ぼくはバスチェアに腰掛けたままふとももをモジモジとすり合わせる。
そのまま優花ちゃんは背中を胸で洗いながら、後ろからぼくの耳に口づけた。耳朶に軽く歯を立てられ、舌先で舐めあげられる。
「……ふあぁ♡ あぅ、ゆう、か、ちゃん……♡」
「ふふっ、理々ちゃんは本当に可愛いなあ。理々ちゃんの耳が弱いのはとっくにリサーチ済みだよ」
「あ、あぅ、そんなぁ♡」
「ほぉら、ふぅ〜♡」
「あぁっ♡ だめぇ、それ、ダメっ♡」
耳の中に生暖かい吐息を吹き込まれ、同時に耳たぶを甘噛みされると、ぞわっとした快感が背筋を駆け抜けた。
そのまま耳介に舌を押し当てられると、ぬぞぬぞ♡と唾液の音を立てられる。鼓膜に直接響く卑猥な音にぼくは腰をくねらせた。
腰が砕けてへたり込みそうになるのをお腹に回された腕に支えられる。ぼくは喉を反らせながら、ただ甘い声で鳴くことしかできなかった。
「……じゃあ、これからえっちを開始します。理々ちゃんは気持ちよなってしまって、声やおしっこを漏らしてしまうかもしれません。けれどここは浴室なので理々ちゃんがどんなに恥ずかしくても誰にもバレることはありません。安心して、女の子としてたくさんえっちなことをしましょう」
優花ちゃんの言葉は催眠術のようにぼくの脳を蕩けさせていく。ぼくは優花ちゃんの言うとおりにするしかないし、逆らうつもりもない。
だってぼくは優花ちゃんから与えられる甘美な快楽に期待してしまっているのだから。
「いい?」
「お願いします……」
「ん、えらいね、理々ちゃん」
優花ちゃんは満足げにうなずくと、ぼくの耳に唇を近づけてきた。ぼくは目を閉じてその時を待つ。
そして次の瞬間には、ぢゅぷ……っ♡という淫靡な音が聞こえてきて、耳穴にねっとりとした感触が押し入ってきた。ぐにゅりと軟体動物のような柔らかさがぼくの敏感な粘膜を犯してくる。
その感触はあまりにも未知のもので、耳から脳を経由して全身に痺れるような感覚が伝播していく。
「ひゃうっ♡ はう、うう、うぅっ♡」
同時に優花ちゃんの両手が腋から胸を包み込むように揉み上げてきて、「あぁっ♡」とぼくは甘い悲鳴を上げた。
優花ちゃんの手つきは巧みで、泡のぬめりを利用してぼくの胸を撫でまわしてくる。毛の抜け落ちた腋窩から円を描くようにして乳房の端をなぞられると、くすぐったさと心地よさに「あぅ、あぅ……♡」と声を漏らしてしまった。
ここにはスペンス乳腺という性感帯があるらしい。そこを刺激すれば女性ホルモンが分泌されて、おっぱいが大きくなるとかなんとか、以前そう優花ちゃんが言っていたことを思い出す。
そうしておっぱいの周囲から内側に向けてなぞられていくと、どんどん胸の中心が熱を帯びていく。女の子特有の発達した乳首がピンと尖って、ぼくは切なげな吐息をこぼす。
優花ちゃんは耳を舐めながら、乳輪の端に人さし指の爪を引っ掛けて、かりっ♡と引っ掻いた。おっぱいと乳輪の境目の部分を、左右同時に、まるで『ここに女の子の乳首がありますよー』と丸を描くみたいに。
かりかり、かりかりと何度も同じところを責められる。どんどん乳首に血液が送られて充血していき、ぴくっ♡びくっ♡と痙攣するように震え始めた。
「理々ちゃんのここ、すごく硬くなってきたね♡ 理々ちゃんは乳首を自分で触ったことある?」
「な、ないよ……。あるわけないじゃん……」
「そっか、じゃあ、ここでも気持ちよくなれるってことを覚えようね?」
優花ちゃんは耳元でそうささやくと、今度は耳を甘噛みしてきた。軟骨に歯が食い込んできて、ぼくは「ひゃぅ……♡」と声を震わせる。
そのまま耳をしゃぶりながら、優花ちゃんはぼくの乳首へと手を伸ばしてきた。勃起したそれを優しくつままれると、電気が走ったみたいな衝撃が走る。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ だめぇ、ゆうかちゃん、ちくび、さわっちゃ、だ、め……♡♡」
ぼくはビクビクと身体を震わせて悶えた。
優花ちゃんはぼくの耳元でくすりと笑うと、耳たぶに歯を立てる。
「だいじょうぶ、怖がらないで。気持ちいいことは悪いことじゃないんだよ? 落ち着いて深ぁく息を吸って、ゆっくり吐き出して。リラックスしようね?」
そんな風に言いながら、優花ちゃんはちっとも乳首を責める手を緩めてくれない。ぼくは優花ちゃんの言う通りにゆっくりと呼吸しながら、女の子の快感を受け入れていた。
「……ふぅ、ふぅ、ふぅ……♡ あぁ、あぁ、あぅ……♡」
「そうそう、上手だよ理々ちゃん。そのまま力を抜いて。わたしに身をゆだねるの。ほら、理々ちゃんのおっぱい、だんだん柔らかくて気持ちよくなっていくでしょう?」
「あぅ、うぅ、うん……♡ ゆうかちゃん、ゆうかちゃん……♡」
優花ちゃんの言う通りだった。
耳と同時に愛撫されているせいか、あるいはぼくの神経が鋭敏になっているのか、胸への愛撫はうれしさが溢れてしまうほど気持ちがいい。
優花ちゃんの優しい言葉も手伝って、ぼくは自分が女の子なんだということを実感させられる。
彼女の片手が胸の下に伸びてきて、ヘソの周りをくるくると円を描きながら撫ぜてくる。くすぐったいような気持ちいいような、不思議な感覚。
やがてお腹まで降りてきた手が下腹部に触れると、子宮の上あたりをマッサージするみたいに押さえつけてくる。
「んんっ……♡」
その圧迫感に思わずお腹に力を入れると膣内に溜まっていた粘液がじわりと滲み出すのを感じた。とっくに濡れまくっている秘部だけれど、さらにとろとろと蜜をこぼしている。
その様子はきっと優花ちゃんにもばれているんだろうと思うと恥ずかしくて仕方がない。
「理々ちゃんのおまんこ、もうトロトロになってるよ」
「いやぁ♡♡ そんなこと、言わないでよぉ……っ♡♡」
「どうして? 女の子はみんなこうなるの。わたしも同じようになっているからわかるよ」
「あぁっ♡♡」
そう言いながら優花ちゃんはシャワーで泡を落として、生の手のひらをぼくの内ももに押し当てる。バスチェアに腰掛けたままのぼくの足を割り開くと、優花ちゃんはその間に自分の手のひらを差し入れてきた。
ふとももの内側から鼠蹊部のあたりを撫でられて、ぼくは「んぅ♡」と声を漏らしてしまう。恥丘の膨らみや、うぶ毛のように生えた陰毛のあたりをやわやわと撫でられる。
はっ、はっ、はっ♡♡とぼくは甘い呼吸を繰り返す。
バスチェアに座ったまま足を大きく開脚させられているという羞恥心がまた興奮を煽ってくる。
「理々ちゃん、もっと開いて」
「んっ♡♡ あぁっ♡♡」
優花ちゃんに言われるまま、その手に促されるまま、ぼくは無意識のうちに股をさらに大きく広げてしまっていた。
すると、くぱ♡とぼくの牝貝が左右に開かれる。
すっかり熟れきって真っ赤になった粘膜が外気に晒される。それはまるで自分から見せつけるかのように、くね♡くね♡と妖しく揺れ動いていた。
男の頃には見えなかったはずの粘膜が、女のそれとして露になる。
思わずのけ反ると背中に優花ちゃんの胸が当たった。柔らかな感触に、ぼくは甘い吐息をこぼす。
「あぅ、あぅ、あぅぅぅ♡♡」
「ほら、理々ちゃんのおまんこ、こんなにえっちなお汁でドロドロだよ。理々ちゃんはえっちな子だね」
「あぁっ♡ あぁっ♡ ごめんなさい、えっちで、ごめんなさぃ……♡♡」
「ううん、えっちな理々ちゃんは大好きだよ。だって、わたしに興奮して、えっちな気分になっちゃったんだもんね? 最高にかわいい。よしよししてあげるね?」
「うぅぅ、ううう……♡♡」
ふわ、と口を開けたぼくの秘部を優花ちゃんの手のひらが包み込む。すでに洪水のように濡れそぼったそこが温かく覆われて、そのままやわやわと撫でられる。
大陰唇から小陰唇にかけて、そしてその奥の粘膜にまで。優花ちゃんは丁寧に、ぼくの性器全体をほぐすように優しく揉み込んでいく。
肉の厚いひだを掻き分けながら指先で粘膜を擦られ、本来は固いつぼみであるはずの幼膣の表面を揉み込まれると、じんわりとした快感が広がっていった。
性器に対する直接的な刺激と、乳首を転がされる刺激と、性感帯である耳を舐められるの。くまなく全身へと与えられる刺激に、まるで全身が溶けてしまいそうなほどの気持ちよさを覚え、ぼくは喉を震わせる。
「あぁ、あぁ……♡♡ すごい、あついよぉ……♡♡」
「理々ちゃんのここ、すごく熱くなってる。火傷しちゃいそうだね。えっちなおつゆがどんどん溢れてきて、止まらないよ?」
「あぁっ♡ だめぇ、ゆうかちゃん、そこ、だめなの……♡♡」
「どこがだめなの? ここかな?」
「ひゃうっ♡♡」
ぬ゛るぅ……♡と包皮をめくられて、顔を出した陰核亀頭を直接摘ままれる。その瞬間、バチッと脳髄に電流が走って、視界が白くなった。
優花ちゃんは親指と人差し指でぼくのクリトリスをくにゅ♡くにゅ♡と捏ね回してくる。敏感すぎる突起を指の腹で磨かれると、それだけでぼくはビクンビクンと身体を跳ねさせてしまう。
「あっ、あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
「理々ちゃん、気持ちいいんだね。ここを触られると女の子は気持ちよくなってしまうの。わたしも好きだよ。
理々くんのおちんちんだった場所、シコシコしてあげようね?」
まろび出たばかりの淫豆に再び指が添えられて扱かれ始める。包皮に包まれたままでは味わえないダイレクトな快楽。ぼくは甲高い悲鳴を上げた。
ちゅこちゅこと根元を扱いて、勃起した陰核の裏側をくすぐるようにして撫でて。ぼくの身体を隅々まで知り尽くしているかのごとく優花ちゃんの愛撫は的確で、ぼくはすぐに絶頂へと押し上げられてしまう。
「ひゃうっ♡♡ あうっ♡♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
「うふふ、理々ちゃん、かわいい声出してる。気持ちいいんだ?」
「きもち、いい……♡♡ あっ♡ きもち、いいの……っ♡♡ ぼく、女の子にされてるの気持ちいいっ♡♡ イっちゃう♡♡ 女の子なのに、ぼく、女の子の身体で、女の子の身体でイッちゃう……っ♡♡♡」
「いいんだよ、女の子の身体でいっぱい気持ち良くなって。さっきだってイッたでしょう? 女の子の快感を受け入れれば受け入れるほど、女の子になれるんだよ。ほら、いってみよう? いくよ?」
くりゅ♡と陰核を摘まみ上げられると同時に、耳たぶに歯を立てられる。乳首もひねられた。そのみっつの刺激が合わさり、ぼくは限界を迎えた。
目の前がチカチカして、お腹の奥がきゅーんとなって、子宮が収縮する。刺激は脊椎を伝わって脳へ。脳みそは懸命に快楽物質を分泌し、秘部はさらに大量の愛液を吐き出して。
そしてぼくは達した。
「~~~~~~~~~~~~ッッッ♡♡♡♡♡♡」
男しての射精が尿道を押し広げる感覚なら、女としての最初のオーガズムはお腹の内側に溜まったマグマが子宮の中で爆発するような感覚だった。
ぼくは声にならない声で喘ぎながら、全身を激しく痙攣させる。背筋が反って、手足がピーンと伸びる。眼球がぐるんっ♡と上を向く。
ぴくっ♡ぴくっ♡と膣内が震え、そのたびに粘っこい愛液がどぷっ♡とこぼれ落ちる。優花ちゃんの手のひらに受け止められるけれど、それでも収まりきらなかったものが浴室の床にぼたぼたと垂れ落ちた。
「あぁぁぁ……♡♡ あぁぁぁ……♡♡」
そうしてがんばって達しているぼくの秘裂に、優花ちゃんの中指が当てられた。絶頂で弛んだ肉の割れ目の間をぬうように秘密の唇がめくられて、中指の第一関節が、ずぶぶぶっ……♡と沈み込んだ。
ぼくのおまんこに、優花ちゃんの中指が、入っている。
たっぷりと愛液をたたえたぼくの蜜壺は、何の抵抗もなく優花ちゃんの指を受け入れた。
「あぁぁ……♡♡ あぁぁ……♡♡」
「うふふ、理々ちゃんのナカ、あったかい。わたしの指、きゅう♡きゅう♡締め付けてるよ。わかる? こうやってゆっくり出し入れすると、理々ちゃんは気持ち良くなるんだよね?」
「いまイッてるのに、またイク……♡♡ またイク……♡♡」
「いいよ、もっと気持ちよくなって。わたしの指で、もっとえっちになって」
「あぁぁ……♡♡ あぁぁ……♡♡」
優花ちゃんの指がゆっくりと抜き差しされる。膣壁が擦られる。その動きはぼくにまた新たな性感を呼び起こす。
体の内側をなぞられるという未知の感覚に、ぼくはただひたすら甘い声を上げることしかできない。例えて言うなら性感帯になった頬の内側の粘膜に舌を這わされているような感じだ。
そんなぼくの膣内で優花ちゃんの中指は折り曲げたり伸ばしたり、あるいは指先を細かく振動させたりと、様々な方法でぼくを犯してくる。
「あぁっ♡ あぅぅっ♡ あぅぅぅ っ♡」
「理々ちゃん、ほら、気持ちいいでしょう? 理々ちゃんのおまんこ、こんなにトロトロになっちゃったよ。
初めてなのにこんなにえっちで、理々ちゃんは本当にかわいいね。わたしよりずっと女の子の才能があるよ」
「いやぁっ♡♡ いわな、いで……っ♡♡」
「どうして? こんなにえっちなのに? ほら、甘ぁい匂いが漂ってきてるよ。えっちな女の子の香り。こんなにたくさんえっちなお汁を出してるんだもの、ね?」
優花ちゃんの言葉通り、ぼくの秘所からは次から次にとろとろの粘液があふれ出していた。優花ちゃんの指の動きに合わせて、くちゅくちゅ♡と卑猥な水音が響く。
恥ずかしくて、でもどうしようもないくらいに興奮してしまう。ぼくはもうすっかりトロトロで、ひたすらに快楽を享受するだけの生き物になっていた。
「ゆうかちゃん、ゆうかちゃん……っ♡♡」とぼくがうわ言のように呟くと、「大丈夫だよ」と優しい声音で返された。その声を聞いただけでぼくは安心しきってしまう。
そうしているうちにクリトリスから与えられる鋭い絶頂ではない、むしろ身体の芯が蕩けてしまいそうなほどの快感が広がっていった。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
「うふふ、理々ちゃんのお腹、ぽかぽかになってきたね。そろそろかな?」
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ なんかくる、あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
「いいよ、深イキしよう? そのまま身を任せて、手足の力をくた♡と抜いて? わたしの指のことだけ考えて?」
「ん゛ぅ~~~?♡♡♡♡♡♡」
優花ちゃんの声に従って全身の力を抜き切った瞬間、ぼくは深いところへ落ちていった。
今までの絶頂とは比べ物にならないくらいに深くて重い絶頂だ。まるで全身の細胞ひとつずつが作り変えられていくかのような、甘美な浮遊感と多幸感。
自分の身体が自分でなくなったみたいに、身体が勝手に動いてしまう。優花ちゃんの指をぎゅうぎゅう♡と食い締めながら、腰がくねくねと踊っている。
手足は投げ出されたままで、指一本動かせない。それなのに気持ちいい。
でろ♡と舌を垂らしたままの口元から、唾液が流れ落ちて胸の谷間へと伝っていく。意識は宙に浮いたまま、ただ身体だけが快楽に溺れている。頭の中では真っ白な光が明滅していて、何も考えられない。
気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい……♡♡ その気持ちよさ以外のことがすべて抜け落ちて、ぼくはただそれだけを反すうし続ける。
「あ゛~~~~~~~~~~~~~~ッッッ♡♡♡♡」
浅い海の中から太陽を見上げたみたいなキラキラした光を見ながら、ぼくは深い深い絶頂を迎えているのだった。
***
カポーン、と何かの音が鳴った。
「ふう……」
ぼくは湯船に浸かり、大きく息を吐いている。ぼくの背中側には相変わらず優花ちゃんがいて、後ろから抱きしめるみたいにいっしょにお風呂につかっていた。
結局あの後、ぼくは優花ちゃんの手によって丹念に洗われてしまった。それはもう隅々まで。隅々までだ。
髪はもちろん、顔も首も背中もお尻もお腹も足も、さらにはおっぱいもおまんこも、そしてお尻の穴までも、ぼくは優花ちゃんに触られて洗われまくってしまった。
その際に何度絶頂したかは数えていない。数え切れなかったというのが正直なところだ。
「………………」
そしてぼくは今、非常に困っている。
さっきまであんなに気持ちよかったはずなのに、今ではそれが信じられないほどに恥ずかしい。
あれほどまでに女の子としての悦びを教え込まれて、しかもそれを何度も繰り返したのに、ぼくは未だに自分が女の子になってしまったという事実を受け入れられずにいた。
いや、限りなく達してしまってようやく性欲が収まったことによって、冷静にものごとを考えられるようになってきたのかもしれない。
これから先どうしたらいいのかとか、どうやってこの事実を受け止めればいいのだとか、お父さんやお母さんになんと説明しようかとか、そういうことを考えると不安になってしまっていた。
でも、優花ちゃんはあまり気にしていないみたいだ。ぼくを抱きしめたまま、ぽやんとしている。
「理々ちゃん、気持ちよかった?」
「うん……。すごい、気持ち良かったよ。優花ちゃん、上手なんだね」
「ありがとう。理々ちゃんが可愛かったから、ついやりすぎちゃったかも」
「でも、ぼく、これからどうしていいかわかんなくて。女の子になっちゃって、それで、えっと学校とか、生理だってあるだろうし……」
「そうだね、女の子って大変だからね」
「……ねえ、優花ちゃん。ぼく、本当にこのまま女の子でいるしかないのかな? 一生男の子には戻れないの……? 優花ちゃん、知ってたら教えて……?」
ぼくがそう尋ねると、優花ちゃんはぼくの肩に顎を乗せてきた。むにゅ、と背中に柔らかいものが押し付けられる感触があってドキッとする。
そのまま優花ちゃんは逡巡するみたいにしばらく黙り込んでいたけれど、やがて口を開いた。
「ごめんね、理々くんが女の子になってしまったのは、わたしが原因かもしれないの」
「優花ちゃんのせい……? どういうこと……?」
「今朝ふたりで神社へ行ったでしょう? その時にわたし五千円を奉納して、神さまに『理々くんと一緒に中高と同じ学校で寮生活がしたい』ってお願いしたの。
わたしが進学しようと思っている学校は女子校でしょう? だから神さまが叶えてくれたのだと思う」
「…………あー」
それでなんとなく、察しはついた。
あの時の優花ちゃんはかなり思い詰めた顔をしていたけれど、どうやらぼくと一緒に女子校へ通いたかったらしい。
でも、
あの時ぼくは、
『女子寮で彼女が仲よくできる友達がひとりでも居ますように。彼女のことを心から思っている人が、彼女のそばに居てくれますように。心から彼女のことを好きなってくれる人が、彼女の隣にいつまでも居てくれますように』
と考えていた。
そして、いつまでも優花ちゃんのそばにずっと居たい、とも。
おそらく世界でいちばん優花ちゃんのことを想っている人間はぼくだ。その自信がある。
だからもしも女の子のぼくが優花ちゃんの隣に居れば、それは『心から彼女のことを好きなってくれる人が、彼女の隣にいつまでも居てくれますように』という願いをを叶えることにもなるはずだ。
つまり、ぼくの願いと優花ちゃんの願いを同時に叶えようとすると、ぼくが女の子になって一緒に女子校へ進学するのが最適解なわけで……。
だからぼくは女の子になってしまった、ということ。
「優花ちゃんはぼくと一緒に進学したかったんだ?」
「……う、ん」
ぼくの後ろで、こちらの肩に顎を乗せている優花ちゃんの声は弱々しくて、不安げで、幼い頃にいつもぼくの後ろをついてきていた女の子の頃の面影がそのまま残っていた。
もしかしたら、ぼくが優花ちゃんのことを大好きなのと同じくらいに、あるいはそれ以上に、優花ちゃんはぼくのことが大好きなのかもしれない。
そう考えれば納得がいく。優花ちゃんがぼくに対してべったりなのも、やたらぼくに胸を押し当ててくるのも、神さまにお願いをしたのも、全部ぼくへの好意ゆえの行動だったのだ。
だとするならば、両思いだ。
だったら話は簡単だ。ぼくはもう迷わない。
「優花ちゃん、ぼくのことそんなに好きだったんだね」
「当たり前だよ。わたし、ずっとずっと前から理々くんのことが好きだったんだよ。ずっとずっと昔から、ずっとずっと」
優花ちゃんがぼくの首筋に頬ずりする。ぼくの身体を抱きしめる腕に力がこもる。
ぼくはそんな優花ちゃんの手を取って、ぎゅっと手を
「理々
「……え?」
「だからさ、一緒に女子校へ行こうよ。優花ちゃんの望み通り、同じ学校に通おう。ぼくも受験するからさ」
「いい、の? 理々ちゃん、ほんとうに?」
「もちろん。それにさ、ほら」
「……?」
ぼくは首を傾げる優花ちゃんのほうを振り向いて、彼女の目を見る。メガネ越しの瞳は少し潤んでいた。
その頬に手を添えると、優花ちゃんはハッとしたように息を飲んで、ゆっくりと目を閉じる。そのまま唇を重ねる。
ぼくの方からキスをした。
ファーストキスだ。
優花ちゃんの唇は柔らかくて、かつ弾力があって、ほんの少しだけ甘かった。愛おしい味がした。
そうしてキスをしていると、優花ちゃんの手はふにゃっと弛んだ。それでもぼくは唇を接触させたまま彼女を味わった。
しばらくしてから顔を離すと、優花ちゃんは「ふぇ……」と声を上げて目を白黒させた。
「り、りちゃん……」
「好きだよ、優花ちゃん」
「わ、わた、しも……っ」
「ね、だからいっしょにいこう。大丈夫、ぼくたちならきっとうまくやっていけるから」
「うん……、うん……!」
そうしてそれから、優花ちゃんはぼくの両頬を両手で挟んで、今度はあちらからキスをしてきた。今度はちょっと長めの大人のキスだ。
恋人同士のする、大人のキスで、舌と舌がまじりあって。
そうしてぼくは女の子になって、
それからぼくは優花ちゃんの恋人になったのである。
──叶えました。
と、神さまの声がどこからか聞こえた気がした。
***
「わあ、理々ちゃん、すっごくかわいい」
「……あぅ。……そ、そうかな?」
そうしてそれから、ぼくが女の子になってから三か月後。桜が咲いて、春になった頃。ぼくたちは無事に受験に合格して、四月からは全寮制の女子校へ進学することが決まっていた。
あのあと両親にどうやってぼくが女の子になってしまったことを説明しようか悩んだものの、おそるおそる家に帰って両親に会ってみたら、
『何言ってるの。理々は産まれたときから女の子じゃない』
とあっさり言われてしまった。
どうやらぼくの身体だけではなく、ぼくの過去や存在そのものまで女の子だったことに書き換わってしまったらしい。
自分の部屋に帰ったら女の子みたいなキュートでファンシーな部屋になっていた。クローゼットには女の子の服しかないし、パジャマはピンク色だし、下着も女物だし、ジュニアブラあるし、本棚や机の上には少女マンガやぬいぐるみなんかが置かれているし。
ぼくが男だった痕跡はどこにもなかった。
優花ちゃんとぼくの記憶の中だけにしか男のぼくは存在していないらしい。
……まあ、神さまがやったことだし、それくらいできて当然なのかもしれないけれど。
ともかくぼくは産まれたときから女の子だったことになってしまって、つまり女子校を受験する要項はすべて満たしてしまっていて。
かくしてぼくは女の子として女子校を受験して、当然のように合格をして、この春から優花ちゃんと同じ女子校に通うことになったのである。
で、今。
「やっぱり理々ちゃんはスカートが似合うよ! えへへ、この学園の制服かわいいなーって以前から目を付けていたんだけど、実際に理々ちゃんが着てみるとこんなに可愛いなんて……」
「あはは、ちょ、ちょっと恥ずかしいな……」
ぼくは今、入学式に向かうためにセーラー服を着ている。品のいい白っぽいセーラー服だ。
当たり前だけど女の子用の、スカートの。それもお嬢さま学校だからすごく可愛くて上品で清楚で可憐でお淑やかな感じのやつだ。
元男としてはスカートは恥ずかしくて女の子になってしまって以来避けてきたのだけれど、学校指定の制服となると話は別だ。スカートを履かざるを得ない。さすがに入学式から目立ちたくないし。
それで着替えていたら、女子寮で同室になっている優花ちゃんが急に興奮しだして、こうだ。
さっきからぼくの髪を弄ったり、胸元のスカーフを直したり、スカートをめくってショーツを確認したり、内ももにキスをしたり、もうやりたい放題だ。
優花ちゃんはぼくに可愛い女の子の格好をさせることに異様なこだわりがあるらしく、しばしばこうして暴走してしまうのだ。
「ああ、もう我慢できない。理々ちゃん、ぎゅってして? おねがーい」
「はいはい。もう、しょうがないなぁ、優花ちゃんは」
そう言いながらぼくは優花ちゃんのことを抱きしめる。
すると優花ちゃんは嬉しそうな顔をしながら、ぼくのおっぱいに頬をすり寄せてくる。ぼくよりも身長が10cmも大きい癖に、子供みたいだ。その姿はまるで大きな猫みたいでとても愛くるしい。
恋人同士になってからというもの、優花ちゃんはこんな甘えんぼさんになってしまった。いや、彼女は元々甘えてきていたのに対してきちんとぼくが応えるようになっただけかもしれないけれど。ともあれ優花ちゃんはしょっちゅうくっ付いてくるのだ。
まあ、女の子と女の子が手をつないで歩いていても何も言われない。教室で抱っこしていても、そういうものだと思ってスルーされる。
だからぼくたちはいつも大っぴらにくっ付いている。どうも改変された過去でもそうであったらしいし。ぼくらは女の子同士で、いつも手をつないで歩いていた。そういうものだ。
「ほら、行こう? そろそろ集合時間に遅れるよ?」
「えへへ、理々ちゃん大好き」
「はいはい。ぼくも優花ちゃんが大好きだよ」
「手をつないでいこうよ」
「もちろん。当たり前でしょう?」
そうしてぼくは優花ちゃんに手を差し出して、
優花ちゃんはぼくの右手をそっと握りしめて、
手をつないで、ふたり並んで歩き出したのである。
めでたしめでたし
おしまい
ここまで読んでいただきありがとうございました。
前回掲載いたしました『三億円~』も非常に高い評価をいただきまして、とてもうれしいです。これからもどうかよろしくお願いいたします。
しじままどせ