毒杯と分かっていても飲み干してしまうときがあります。
ご依頼は http://skeb.jp/@freege_affected か、 http://twpf.jp/freege_affected からどうぞ。
この甘美な季節に、まことの物語を語る者は、悪魔にそそのかされたと信ずべきである……
(Dans ce temps délicieux, quand on raconte une histoire vraie, c'est à croire que le Diable a dicté.)
――ジュール・バルベー=ドールヴィイ『罪の中の幸福』(Jules Barbey d'Aurevilly『Le bonheur dans le crime』/澁澤龍彦訳)
※
プロデューサーは、髪と生え際をぬるく粉っぽい風で撫でられていた。気だるい目蓋を開けると、自分がなにかのイスに腰掛け、なにかの机に腕を載せてその上に突っ伏していた、と気づく。
「ほわっ……起こして、しまいましたか……♪」
「……真乃?」
プロデューサーが、平均的な男性よりも一回りちょっと大きな上背をもたげると、ギンバトの灰白色が何羽ぶんかパサパサと羽音を立てて飛び去った。彼はそれを「眠ったままでいろ」と咎めだてされているように感じたが、彼の横にちょこんと座る少女――櫻木真乃――からは、咎めの色なんて欠片も見えないほんわかと穏やかな笑みを向けられた。
「お疲れのごようすだから、眠れそうな歌を歌っていたんですが」
プロデューサーがごわごわしたままの目をこすってあたりを見回すと、確かに「昼寝したままでいなさい」と言い聞かせんばかりのようすだった。
空気はからりと過ごしやすく、数歩先にはうららかな具合の陽光に照らされた地面が見えるが、プロデューサーと真乃のところは日陰になっている。敷石、木肌の机、ベンチ、四本柱と天井なしの寄棟屋根。小さかった頃の「お昼寝の時間」を思い起こさせる。プロデューサーは、公園の四阿(あずまや)でうたた寝していたらしい。彼に届く風がぬるく粉っぽいのもそのせいらしかった。
「いなかの春風のなかには眠り薬が混じっている……わけじゃあるまいし」
プロデューサーはそれなりの深さで寝入っていたらしく、肩や背中もぎちぎちとこわばっていた。もう一度眠りに落ちようとは思わなかった。
代わりに、すぐ横に並んで座っている少女へ顔を向ける。
「おかげさまで、ぐっすり眠れたみたいだ。ありがとう、真乃」
ここがどこか思い当たらなくて、プロデューサーは焦点をあちこち右往左往させ手がかりを探る。
真乃の向こうには、彼女とプロデューサーがかつて出会った公園と比べると、ずっとずっとだだっ広い緑の芝生が広がっていた。風が粉っぽいのは、緑の草花が飛ばした花粉のせいかもしれなかった。昼過ぎらしき太陽の指す方角を見ると、芝生の向こうに空と海と水平線のぼやぼやしたのが広がっていて、ぼやぼやの中を濃い緑のアオバトらしき鳥が漂っていた。どこかの海浜公園だろうか。けれども真乃以外の人影は豆粒ほども見えなくって、人混みの苦手な彼女に公園のほうが合わせたのか、と錯覚しそうになる。
そうして真乃が従えている背景は、芝生だの海だの遠いアオバトだのと一つ一つ分解すれば既視感があるのに、それらがいっぺんに揃って組み合わさっている場所は、プロデューサーの記憶の中にいっこうに見つからなかった。
「お目覚めしたばかりでは……ノド、乾いていませんか?」
真乃が手のひらを向けた方に視線を寄せると、テーブルの天板に桜色のクロス、丸いガラスのティーポットと、涼し気なグラスが2つ。カフェテリアならともかく、公園の四阿でのティータイムには似つかわしくない道具たちだった。山歩き慣れしている真乃なら、野外にはもっと携帯しやすい道具を選ぶはずだった。
ガラスのティーポットの中身は、道具に輪をかけて奇妙だった。なみなみとティーポットを満たす液体は、お茶の類いらしくない澄みきった透明で、褐色がかった濃い紫が水面にちらちら浮いている。紫は、真乃の指先ぐらいの小さな花びらが何枚も浮いているものらしかった。水面の下には、片手でも握れそうなぐらいの主根と側根とまばらなひげ根がゆらゆらしていて、控えめな高麗人蔘のように見えた。
「……これ、真乃が?」
「はい。春咲きのマンドレイクです」
「えっ」
プロデューサーは正直ぎょっとした。学生時代に背伸びして拾い読みしたシェイクスピアでは、マンドレイクを飲むとよく眠ることができて、ろくなことが起こらないはずだった。
「……マンドレイクって、地中海あたりにちゃんと実在する植物ですからね? 霧子ちゃんからわけてもらったんですけど」
「あぁ、すまない。植物には、とんと疎くて……真乃、やっぱり先生みたいだ」
「公園を歩いてて見つけられる花じゃ、ありませんけどね。愛のリンゴ、なんて言われたりすることも」
「へぇ……リンゴ?」
「似てませんよねぇ」
真乃がガラスのティーポットから2つのグラスに中身を注ぐと、マンドレイクを浸していた液体はすっかり無色透明でさらさらとしていて、真水のように見えた。ただプロデューサーは心に引っかかりを残していた。見た目で判断していいなら、ストレートのスピリタスだって、真水とさして変わらない。
「飲みやすいように、出せていればいいんですが……では、お先に失礼して」
真乃は、プロデューサーに見えないなにかが『出せて』いると言いつつ、彼女の片手で間に合いそうな大きさのグラスにわざわざ両手を添え、ゆっくりと、しかし一息で半分ほど飲んだ。彼女の両手はグラスの曲面を包み込みつつ指先どうしを合わせていて、プロデューサーの目には祈っているように見えた。祈りがまた昔の記憶に飛んだ。『ロミオとジュリエット』のジュリエットは、ロミオが迎えに来てくれると信じて、求婚者・パリス伯爵をやり過ごすためにマンドレイクを――
「……俺も、飲んでいいか?」
「どうぞ、めしあがれ……あったかく、なれると思いますよ」
――プロデューサーが妄想を振り払うようにグラスのマンドレイクをあおると、風より少しだけ冷たいさらさらが口腔に流れ込んで、寝起きの乾いた粘膜へかすかに甘く染み渡った。
※
「真乃……」
「ほわっ、あ……プロデューサー、さん?」
「俺の顔、なにかついてるか? さっきまで寝てたし、へんな顔してるんじゃないかって」
「いいえ……ほっぺたも、もう元に戻ってますし」
突っ伏して寝ている間に、腕にくっつけていた頬にへんなあとが――プロデューサーは自分の頬を撫でるが、少し火照った体温が指先に伝わって、真乃にじいっと見つめられるばかりだった。
その火照りが午睡の残り香か、それとも別のものか、プロデューサーは判断しかねた。
「きょうはいい日、ですね」
「っ……そうだな、すごく、いい日だ」
軽い相づちを打とうとして、プロデューサーは真正面から真乃の上目遣いを浴び、かすかにどもってしまう。見慣れているはずの真乃の姿に、どきりとさせられる。彼自身で戸惑ってしまうほど。
「いつまでも、こうしていられそうだ」
真乃が、いつもとどこか違うのだろうか。だとすれば気がついて、うまく褒めてやりたい……と、プロデューサーは職業病を発揮して、彼女のようすをうかがう。
真乃の服装は、襟とカフスが白、袖と身頃が濃紺になっているセーラー服だった。学校帰りの彼女はよくこの制服のままで事務所にやってくる。下のプリーツスカートは、水色と白の柄幅が広いチェック。こちらもプロデューサーには見慣れたもの。
「ふふっ、私の顔にも、なにか……?」
真乃の顔は、肩辺りで軽く遊ばせた髪の毛も、丸っこくて目尻が少し下がった目や口も、顔の中で唯一の鋭角ながら大きさは控えめな鼻梁も、さっきマンドレイクを飲み干した時に鳴ったであろうノドも、いつもどおりだった。野山の散策を好む真乃は、色白であっても不健康さを感じさせない。彼女の白さは、薄布を幾重にも重ねてその間で光が乱反射しているような艶だ、とプロデューサーは感じている。肌というより無縫の布のようだった。
「プロデューサーさんが、そんなにじっくり見てくれたことって……はじめてかも、知れませんね」
「あ。あぁ、すまない」
「いいえ、プロデューサーさん」
真乃の肌が薄赤い気配を孕んだような気がして、プロデューサーは軽く目を伏せる。彼女の胸元――四阿のベンチに腰掛けたまま、胸の前で両指の第一関節どうしを軽く触れ合わせていた。セーラー服の身頃を押し上げるふくらみは、それで一部だけ隠れている。白くほっそりとした指と、濃紺の布で包まれているふっくらした胸元のコントラストは、プロデューサー自身が『胸元ばかり見ては失礼だ』と自分を叱責するほど、彼の視線を長く強く釘付けにした。スカートのほうまで目線を下げる勇気が湧かなかった。
うららかな日の、穏やかな光景の、ほんわりとたたずむ真乃に劣情をもよおしたら、彼女が泡のように消え失せて置き去りにされてしまうと思った。そのパラノイアは熱っぽかった。
「……ちょっと、『あったかく』なってきた気がする」
真乃の言葉を引っ張り出しつつ、プロデューサーはベンチの背もたれにめいいっぱい寄りかかって、四阿の天井を仰いだ。深呼吸して、腹から立ち上る熱を逃がすよう息を吐いた。
「……プロデューサーさん、そこ、よろしいですか」
「真乃……『そこ』って?」
「そこですよ、そこ」
プロデューサーは、スラックスを履いた太腿に手を無造作に載せていた。その手の甲に、柔らかく温かい手が――プロデューサーは、それを『誰かの手』と理解する前に『真乃』だと認識していた――重ねられた。彼に目線を切られた真乃が、その隙をついてするりと彼に触れていた。
腕や腿がくっつきあって、もうお茶を飲んで談笑するには近すぎる距離。
「……指まで、『あったかく』なってきましたね」
プロデューサーのジャケット越しの肩と腕に、真乃が頭をもたせかけた。プロデューサーは、真乃の頭蓋骨の硬さと頭の重さを感じて、もう彼女が泡のようにふっつり消えることはない、と安心した。
安心したかと思うと、パラノイアがしぼむ代わりに、熱が体に飛び火する。真乃の匂いが、空気に溶け込んだひだまりのように、プロデューサーに染み込んでくる。
「静か、だな」
黙っていると、プロデューサーは自分の心臓が拍動して血の流れる音さえうるさく感じた。眠れない夜の無音に響くような、ニイニイゼミの声に似た小さな耳鳴りも混じっていた。
「それなら、少しだけ、歌います」
プロデューサーの耳元すぐそばに、真乃のささやき。耳殻にくちづけされたと感じるほど、真乃が近い。
――わたしは恋しい人のもの
――あの人はわたしを求めている。
「……真乃?」
――恋しい人よ、来てください。
――野に出ましょう
――コフェルの花房のもとで夜を過ごしましょう。
真乃は、すぐそばで優しいささやきを紡いだまま、プロデューサーへ重ねた手を強く押し付ける。
――朝になったらぶどう畑に急ぎ
――見ましょう、ぶどうの花は咲いたか、花盛りか
――ざくろのつぼみも開いたか。
――それから、あなたにわたしの愛をささげます。
真乃の歌に合わせるように、プロデューサーは心臓と血の音が高く低く揺れて聞こえる。
――恋なす(茄子)は香り
――そのみごとな実が戸口に並んでいます。
――新しい実も、古い実も
――恋しい人よ、あなたのために取っておきました。
「……そういう歌ですよ。古い歌です。歌なんです……歌なら、言えるんですけどね……私でも」
「情熱的な、歌だな」
「ところで……恋なす、ってなんのことだか、ご存知ですか?」
プロデューサーは想像もつかなかった。
ただ『恋なすは香』るとしたら、それはいままさに彼に染みいってくる真乃の香りに違いないと信じた。
「恋なすは、恋なすび……あなたと私が飲んだ、マンドレイクのことなんです、ね……♪」
真乃のささやきが上ずったあと、柔らかく濡れた小さな粘膜を押し付けられた。
※
「ん、ちゅ、れぅ、ちゅっ……んふ、プロデューサー、さん……っ」
同じティーポットからマンドレイクの一番出をついさっき同時に口にしたはずなのに、プロデューサーは眩暈がするほど真乃のくちづけを甘く感じた。真乃がほんわりとした陽だまりなら、自分はそれに溶かされゆく根雪か風花なんだろうと彼は思った。上下のくちびると舌先とを重ねて、ぎこちなく吸い合ううちに、ノドの奥あたりがじわじわと締め付けられて、溶けた自分が涙腺からあふれる幻感に陥る。
「んちゅ、ぷ、ふぁ……キス、したいんですっ……あ、しちゃって、ますけど、もっと」
今度は、真乃が溶けゆくプロデューサーを逃しはしないとばかりに、柔らかい腕でプロデューサーの頭をかき抱く。ベンチの座面に膝立ちになって、キスしながらとろける唾液をプロデューサーへ流し込む。くちびるの間に舌で割り込み、歯列をノックする。荒く苦しげな吐息やちゅうちゅうという音さえ溢すまいと、接吻を深くする。
「んぢゅ、く、ぢゅ……んう、ぁふ、んんくっ……ふぁ、んく、ぢゅううう……っ」
そうやって真乃が引き寄せようとするほど、プロデューサーの意識は朦朧とする。体が溶けていく熱さが興奮のせいだと悟っていた。その劣情をあらわにすることがためらわれた。真乃に肉欲を向けたら、およそ淫らさとかけ離れた春の夢が霧散して……というパラノイアの残り香が、彼の閉じた目ぶた裏で影送りのようににじんでいた。
「もっと……ふかく、プロデューサー……ひゃむっ、ぅふ、ぁああっ、んあっ、れる、んぷ、ふぅうっ……!」
プロデューサーのためらいさえ吸い出して食らってしまおうと、真乃が接吻をエスカレートさせる。長い息も柔らかな肢体もプロデューサーの上に乗せる――委ねる――あるいは、押し付ける。受け止めさせる。ジャケットが四阿のベンチにこすられて、悲鳴じみたシワを刻む。
「れぅ、ちゅ、んぢゅ、ふぅ、んむ……ぷふぁっ、あ……プロデューサーさん、これ……♪」
「ま、真乃、そこは……」
真乃が手のひらでプロデューサーのスラックスを撫でると、その向こうで彼の太腿や腰がびくりと動揺する。そわそわと軽いタッチが、まるで叱責や指弾のように響く。
真乃はそれを横目にしつつ手を離さないまま、慰撫と挑発が入り混じった猫なで声をプロデューサーへ流し込む。
「きゅうくつ、そうですね……いま、楽にしてあげますから……♪」
真乃は、プロデューサーのスラックスを締めるベルトを外して、じりじりとファスナーを下ろしてしまう。下着を押し上げるふくらみは、握ってみると骨のような芯の硬さが伝わってくるのに、指先でそうっと触るとぷにぷにとして、真乃はそのギャップに慕わしさがこみ上げた。
「プロデューサーさんも、私と……したい、ですよね……?」
「すまない……真乃、俺は……」
「何が『すまない』んです?」
真乃は、プロデューサーのウエストを締めるゴムを指先で摘んでぴたぴたと引っ張ったり離したりする。真乃の催促は、夢とは思えないほどプロデューサーに肌に響いて、目ぶた裏のためらいを散り散りにしていく。
「真乃に、興奮して……」
「えっちなこと、したくて、しょうがないんです?」
真乃の笑顔はいつもと同じぐらいほわほわと柔らかいのに、それにどうしようもなく興奮してしまう。この一粲を焼き付けられながら情事に及んだら、もう真乃の顔を淫らな想像なしには見られないかもしれない。
それでもプロデューサーは腰を浮かせ、彼自身の手で勃起ペニスを取り出す。
「ほわぁ……っ! さわっても、いいですか?」
プロデューサーが首肯するのとほとんど同時に、真乃は指先でペニスの茎をくすぐっていた。指先で硬さを確かめながら、軽くタップしたり、きゅうきゅうと指を絡めて揉み上げたり、愛撫というにはいささか艶が薄く、玩弄というにはいささか優しさが濃い。刺激でびくりと反応するところに、真乃は息を呑んだりはにかんだりして、そういうリアクションも合わせると、動物を愛でているような光景だった。
真乃の姿だけを見ていればぎりぎり牧歌的といえたが、彼女の目と手の先にはプロデューサーのナマの勃起。
刺激に浮かされ落差に揺らされ、プロデューサーが落ちていく。
「んふ、む……んんっ……もう少し、むぎゅむぎゅって、力を入れたほうが……それとも……」
「口で……」
「おくち、ですか?」
「舌で……アイスとか、舐めるみたいに……あ、歯は立てないで……」
お願いして、真乃がやってくれるなら……というところまで、理性が腐食していた。
「アイスみたいに溶けちゃわないですよね。溶けたら、困ります……」
「その心配は、ないはずだよ」
あの櫻木真乃がペニスを前に舌なめずりして、恋人に捧げるような熱っぽくとろけた目と口角で、キス――溶けるはずがないと思いながら、溶かされてもおかしくないんじゃないか、とプロデューサーは身震いする。
「んあぁっ、は、ぁ……」
「んちゅ、ぅ……だ、だいじょうぶ、ですか? もしかして、ぴりぴり沁みてたり……」
「いや、真乃がしてくれてると思うと、それだけで気持ちよくって……」
真乃とくちびるを重ねている時、プロデューサーは目を閉じていたので、彼女のキス顔――アイドルの仕事で映像に撮るような仕草ではなく、ほんとうの――を、彼は初めて目の当たりにした。『ほわっ』と口にするときの小さく丸い半開きなら可愛らしくもどこか危うくて庇護欲をそそり、『むんっ』と引き締められたなら意外な力強さを帯びて小気味よさを覚えさせる真乃のくちびる。それが熱っぽい吐息と甘ったい唾液をペニスに添わせている。亀頭に真乃が唾液の糸を垂らしてやったときなど、プロデューサーは見ているだけでキスの味が蘇ってノドを鳴らしてしまう。
「ぁ、うぁ……」
「へぷ、れぅ、んむ、ちゅ……へんな、気分になっちゃいます。私、プロデューサーさんのこと、可愛いって、思っちゃって」
ふだんの真乃から『可愛い』と言われたら、苦笑いして返すプロデューサーも、ペニスにバードキスの雨を降らし舌を絡めてくる真乃から言われたら、興奮と羞恥でうつむいてしまう。
「さきっぽのほうが、お好きですか」
「そ、そうだな……敏感では、ある」
「私、こっちのほうが好きですね。なんだか、ぷにぷにしてて」
舌を亀頭とカリ首へ集中的にあててくる。鈴口がぷかぷかと緩んで先走りを漏らす。さわさわとした味蕾の感触で、あの真乃に先走りを味わわせる状況がプロデューサーへ突きつけられ、官能と背徳感で腰が抜けそうになる。そうして腰が揺れても、肝心のペニスは真乃の手で抑えられていて、まったく逃れられない。
「へぷ、んぢゅ、れぅう、んむっ……にがかったり、しょっぱかったりすると、濡らしてあげるのも、はかどってきますね」
真乃の口の端から垂れた雫は、唾液か先走りか。ステージではきらめくばかりの青春や恋の歌声を紡ぐ口が、その歌を紡がせているプロデューサーの浅ましい欲望にまみれていた。
「プロデューサーさん、気持ちいいですか?」
「きもち、いい……気持ちいいよ、真乃」
「よかった。だってプロデューサーさん、ちょっと強くすると、すぐがまんしてるみたいなようすなんですもん」
「苦しいわけじゃないんだ……気持ちいいんだけど……がまんしないと、真乃がしてくれてるの、もったいなくて」
「ほわっ……複雑、なんですね……♪」
真乃の目つきが、熱に浮かされたように脱力して、栗色の瞳が色濃くなる。興奮して、瞳孔が開いているのだろうか。色濃くなると潤みのハイライトも際立つ。口元の笑みがそのままなのに、可愛らしさがみるみる妖艶さにひっくり返る。
「んぷ、ぬちゅ、くふ……くわえ、ちゃいますよ、プロデューサーさんの……っ」
とうとう亀頭が真乃に頬張られる。歯があたらないようくちびるを丸めてくれているのが愛おしい。ぬじゅ、ずるぅる、じゅうぅ……と、頬をすぼめてフェラで吸い付く音は、真乃の口から鳴ってはならない猥褻な響き。
「真乃、まの……っ!」
プロデューサーは、真乃を煽ってしまう声を漏らす。真乃の口淫で押し流されていると知らせてしまい、彼女を煽ってしまうとわかっていて漏らしてしまう。舐めてとしか言っていないのに口中でくわえられ吸われて、『やってくれるなら』という建前まで腐食していく。
「ふぇぷっ、ふぁ、あ、んぷっ……れりゅ、んぅうっ……んちゅ、ぢゅううう……プロデューサーさんの、声、聞いたり……顔、見てると……私も、もっと、したくなっちゃいますね……」
あまりの快楽に背と首を反らすと、四阿の屋根裏が見つめ返してくる。このままでは射精まで追い詰められ――口内射精を遠慮するほどの理性のかけらが残っていて――気をそらそうと、垂木だか桁だか梁だか、とにかく木目にシミを探してみるが、プロデューサーの目は一筋も見つけられなかった。
「む……手と、口だけでは、だめですか?」
「だめって、なに、が……?」
だめと言われればとっくにだめになってる気がしたのに『だけでは』というダメ押しの匂わせが、プロデューサーを動揺させる。真乃がフェラチオをしてくれているというありえない状況と、真乃の口から与えられる否定すべくもない快感との間で、彼は人格が乖離させられていく感覚に陥った。
「……もっと、プロデューサーさんを……私……」
粉っぽいそよ風さえ息を潜めていた。
真乃がセーラー服の胸リボンを引いてほどく音が、プロデューサーに響くほど静かだった。
※
イスに深く腰掛けたままのプロデューサーの膝と股間に、真乃が正面から上体をのしかからせる。真乃の重みのほとんどが、プロデューサーを押さえつけて離さないという気持ちに乗っていた。
真乃のバストは、セーラー服をはしたなくはだけて、あの艷やかな肌がふにゅりと柔らかい圧力でもってプロデューサーのペニスを包み込んでいる。
「男の人って、おっぱい、好きですよね?」
「そ、そうだな……」
「なら、プロデューサーさんも、お好きですか」
真乃はプロデューサーのすぐ横に手をついて体を支えながら、豊満な――プロフィールではトップ86センチ――それでいてぷりぷりと張りの強い乳房のふくらみで、プロデューサーのペニスを下腹部ごと飲み込んでいる。制圧している。支えとなる真乃の腕が乳房を横から圧迫して、それの圧力が胸のゆさゆさとした重みと合わせてプロデューサーの方にかかり、彼はきゅうくつそうだと他人事のように思った。
真乃の乳首は、プロデューサーが気づいたときにはすでにペニスと下腹部の間でこすれながらうろうろしていて、彼の目で見えるのはかすかな乳暈ぐらいだった。色は真乃のくちびるの色に似ていて、感触はくちびるより少しだけこりこりと弾力が強かった。乳首でもキスされている錯覚が這い登ってくる。
「こうすれば……キスといっしょに、してあげられますね」
真乃の微笑みは、日陰になっている四阿の中なのに、まぶしいほど無邪気だった。
真乃は、骨格が女性としてもやや小柄なほうだったが、みっしりと安定感――むしろ安心感――のある体幹を備えていてた。趣味の山歩きやダンスレッスンの賜物だろうか、とプロデューサーは妄想する。その体幹を土台とする真乃の乳房が、柔らかく堅固な拘束具となってプロデューサーのペニスを愛撫し苛む。ヘソまで届きそうな怒張も柔乳で包まれ、ずりゅずりゅと探り探りこすられると、他人事だと思っていたきゅうくつさが、すべて甘美な摩擦として襲いかかってくる。
「あ、ぁ、真乃、それ、は……」
「プロデューサーさんの、おっきいですけど……私で包み込んじゃうと、私のものになっちゃったみたいです」
パイズリ。そう口に出すことをプロデューサーは憚った。
真乃に対してあまりに露骨で下品な形容だと感じたし、単なるセックスの愛戯と片付けがたい体験だった。真乃は乳房を手で抑えていない――せいぜい腕が横から支えているぐらい――なのに、真乃の重みをぐいぐいとかけられているせいか、肌のほかにももっと深く広く体を重ね合わせている気がした。
「ほわぁ……膨らんで、びく、びくって……お胸でも、感じ取れて、なんだか私、ますます……♪ ちゅっ、んちゅっ、ふぅ、ぁん……っ」
真乃が、ペニスを乳房で抱擁しつつキスを降らせてくる。キスの水音と鼻にかかった声は甘え。温かく柔らかいおっぱいは親愛。それからプロデューサーを逃すまいとするしなやかな細腕は彼の認識の果てで、真乃以外が彼から消え失せていく。
「んふ、ぷろ、でゅー、さー、さんっ♪」
プロデューサーの反応を喜ばしく思い、真乃の上目遣いが細められる。可愛らしかった目が、潤みを帯びつつ、狙いをつけるように引き絞られ切れ長になった。目が細く長くなるほど、視線はプロデューサーにきりきりと食い込んだ。
「気持ちよくなって……私に気持ちよくされて、出しちゃうんですか……♪」
「出すのは……!? そ、そんな、だめだ、真乃……っ!」
「私は、がまんしてくれなくていいんですけど……プロデューサーさんはがまんしたくって、でも、がまんできなくて……」
真乃は癒やすような顔と体で、プロデューサーをずりゅずりゅと追い詰めていく。彼女がイスに乗せていた手のひらを、プロデューサーの腰に突き立てると、いよいよ逃げ場がなくなる。
「ま、真乃、もう……これ以上、されたら、出て、出てしまう……っ!」
「何が出ちゃうんですか? 出しちゃいけないもの、出しちゃうんですか?」
真乃は伸ばしたままの二の腕あたりで、さらに乳房を横から圧迫する。それが乳房の弾力とパイズリの摩擦と隙間なく包み込んでくる肌のせいで3乗に増幅され、ペニスに伝わるのは圧迫どころか圧搾という勢いになる。もう戻れない限界に追い詰められた最大勃起のペニスが、これではひとたまりもない。
「プロデューサーさんの子供を作るための、精液、ですよね? 私のおっぱいには、出したくないんですか」
「出したら、ま、真乃が、汚れて――」
「――本当は、別のところに出したいから、いま出さないようにがまんしているんじゃないですか?」
「そんな、こと、は……ぁっ……!」
真乃が口にした『別のところ』という響きで、プロデューサーは真乃の上目遣いから視線をそらした。彼女の膝立ちパイズリのせいで、ゆらゆら、くいくいと揺れるプリーツスカートの膨らみが見える。いまプロデューサーの男性器と精神を圧倒している両乳房よりも、もうひと回り大きいヒップの曲線。どっしりとして避けがたく圧倒的な搾精能力を誇示しつつ、パイズリに合わせてひらひらと軽快に振られている。
プロデューサーがそれを見ているうちに、自分が櫻木真乃の膣内にペニスをねじ込んで、射精して、射精させられる錯覚によって自分を塗り替えられていくのを感じた。恐ろしいほど甘美で甘美なほど恐ろしかった。
「プロデューサーさんは……そんなことして、いいと思ってるんですか? 恋なすびで、頭が……そういうことでいっぱいになっちゃったんですか」
「ぐ、く……それは……っ!」
プロデューサーは苦悶のくちびるを噛み締め、手のひらに爪を食い込ませた。本心はすっかり恋なすびだかマンドレイクのせいだと思っていたけれども、それを口にして認めることはできなかった。あの紫色はプロデューサーだけでなく真乃も口にしているのだから、恋なすびのせいにした瞬間、真乃も彼自身と同類になってしまう。止まらなくったっていいことになってしまう。
「ふふっ、私だって、ちゃんと同じですから……どきどきして、ずーっと、ゆめみたいに……だから、もっと、ぎゅーって、しちゃいたくなって……しちゃうんですけどね」
真乃のパイズリ摩擦と圧搾が、プロデューサーの想像を飛び越えてさらに勢いを増した。真乃の体の支点は、両手のひらから両肘になっていた。ふつうの手指で乳房を寄せてこすりつけるパイズリではなく、乳房と腕でプロデューサーのペニスを二重に抱きしめて、体全体でずりゅずりゅと愛撫してくる。
「は、ぁあ、ほぁ、ぁん……こうしてると、私も……プロデューサーさんの、気持ちいいって感じ、伝わってきて……とっても、いい気分ですっ」
真乃は息を弾ませながら、緩んだ口角のわずかな隙間からとろりとよだれをこぼしていた。目の焦点も、全身を捧げる愛撫の最中なのに、プロデューサーの顔に向けてほとんどズレずにぴたぴたと張り付いていた。
「いつ、出しちゃっても、私はいいんですよ……? プロデューサーさんの、お好きなように」
「真乃、ダメ……だ……そんなこと、言っちゃ、俺は……」
「へぇ、私のせいなんですか?」
「ああ、そんな……うっ、うっ……!」
言葉と愛撫で、プロデューサーは肌の外も中も制圧されていく。真乃に明け渡してしまう。彼女の堕落への誘いが、救いの女神の手としか思えなくなる。
「プロデューサーさんがお望みなら、私は、どっちだって……」
その言葉がみなまで紡がれる前に、ペニスがびくりと跳ね、睾丸がしびれるような精液の奔流が鈴口をこじ開け、真乃の乳房と鎖骨あたりにぶつかって弾ける。パイズリに挽かれたように、びぢゅ、ぐちゅと粘っこく籠もった音。真乃の吸い付くような肌と、震えるペニスの間に、精液がしとしとと染み渡る。その感触を味わったプロデューサーは、自分が真乃を汚したこと、自分の雄欲が真乃にねじ伏せられた経験を刻印される。
「ぁ……真乃、俺、は……」
「ふふ、プロデューサーさんったら……がまん、できなかったんですね。私のせいで……♪」
もう、淫らな想像なしに真乃を認識できない、とプロデューサーは悟った。
※
プロデューサーは、無言で真乃の腕を掴みながら立ち上がった。彼は膝も腰も使わず腕力だけで引っ張り上げたのに、膝立ちで彼にしなだれかかっていた真乃の体は、軽々とプロデューサーに立たされた。真乃が人ならぬほど不可思議な軽さなのか、単に彼女がプロデューサーの引っ張りに合わせて抱き上げられにいったのか。
「……真乃」
「ん、んんっうぅ……!? プロデューサー、さん……っ」
プロデューサーが肩や首を突っ伏して寝ていた机の天板に、今度は真乃の上体を押し倒す。プリーツスカートを慌ただしくめくりあげると、下着の代わりにむき出しの粘膜が目に入った。きゅうきゅうと恥じらうようにすぼまった肛門と、ふっくらと盛り上がってひくつく秘所だった。おっぱいにまさるとも劣らない大きく豊かな柔らかさの臀部に対して、二穴はプロデューサーにとってどちらもいくぶん弱々しく見えたが、その2つがとても同じ人間についている肉孔とも思えなかった。
「真乃……履いていなかったのか、濡らしていたのか……男のチンポ、弄り回しながら……」
「む……あなたが『男の』なんて他人事みたいに言っちゃ、いやですよ。あなたのです、プロデューサーさんっ」
「そうか」
真乃の秘所や内腿の肌は、あふれるほどの愛液で濡れて泡立っていた。パイズリのときに下半身までくらくら揺らしていたせいで、愛液を垂らした部分が擦れあったせいか。
そういえば、真乃がいつも仲良くしてる鳩も、花も、リンゴも、泡も、強く美しく淫らな女神につきものだった……などとプロデューサーに夢想が過ぎる。夢想は女神のほうだった。真乃は現実より現実らしかった。
「入れる、ぞ、真乃」
パイズリでねじ伏せられたはずのペニスと欲望が、その切っ先で真乃の秘所に威嚇のキスを押し付ける。
「は、ぁ、ああっ……♥ プロデューサーさん、もっと、硬くなって……やっぱり、私のこっちが……良かったんですか……?」
切っ先と入り口しか触れ合わせていないのに、真乃の下肢はしびれて微痙攣をまとっていた。先走りと愛液に濡れながら喘ぐ秘所が、挿入と、抜き差しと、種付けの懇願としか認識できない。
たっぷりと膨らんだ真乃の丸尻を、両手でホールドする。桃のように甘く柔らかそうな見た目は表面だけで、少しでも指を食い込ませるとみちみちと詰まった肉が押し返してくる。蹂躙できるものなら蹂躙してみろ、という強がりに感じられる。プロデューサーは唐突に確信した――真乃もパイズリのとき、彼自身やペニスに対して、同じ征服欲をそそられていたと。
「あ、ぁああ……♥ 私、そんなに押さえつけられて、間違っても、逃げられなくって……完全に、プロデューサーさんに、されるがままに、使われて、私……んひ、ぃ……ああぁあっ♥」
プロデューサーは、真乃の尻を掴みながら、彼女の秘所へ亀頭を沈み込ませる。きゅうきゅうと蠕動する粘膜が、それだけで射精感を高めていく。さっきすぼまっていた肛門と、おそらく生理的にはほぼ同じ運動なのに、肉棒をねじ込まれる前とねじ込まれたあとで真逆の意味に変わる。真乃の肉孔が、プロデューサーのペニス越しに欲望をすすっている。
「真乃……」
「は、はい……っ♥」
「奥まで入れてやろうか」
「お、ぉく……♥ ふ、ふふ、い、入れたいのは、プロデューサーさんじゃあ――」
「――舌を噛むなよ」
「あ――は、ほ……ぉ……っ! ぷ、ぷろ、りゅ……ぁ……♥」
プロデューサーの言葉は問いかけではなく宣告で、真乃は一瞬にして貫かれ、喘ぎと痙攣とともに奥底を責められることしか許されない。
「パイズリのときの余裕、もうなくなっちゃったか、真乃」
「あ、ぁああっ……だって、ぇ……そんな、なか、すごく、おく、まで……♥ はぁ、ああぁあぁ……っ♥」
プロデューサーは、真乃の膣内にペニスを挿入した感慨で朦朧としていた。自分から、櫻木真乃が大切に抱えてきた女の部分を獲りに行った。奥までオスの欲望に侵入された真乃の、震えて覚束ない嬌声が、プロデューサーの耳にはたった一人からの祝福の凱歌に聞こえた。
「あ、だ、め……わ、私、なか、ぁ♥ ぁ、あ……んんん……っ!」
プロデューサーが抜き差しを始めようとすると、真乃の微痙攣が膣内から肌の上まで広がっていることに気づく。膣内の細かな襞のうねりは激しくも散発的で、パイズリの盤石にして支配的な愛撫とは真逆の印象を与えた。真乃の尻肉に食い込ませた指の向こうも、ふわふわとうなじや肩に擦れる頭髪も、膣のように微痙攣していた。真乃がパイズリで全身をもってプロデューサーを屈服させたように、彼女は挿入も全身をもって受け止めてくれているようだった。
プロデューサーは、これ以上ないほど真乃を愛おしいと思った。
「かわいい、可愛いぞ、真乃……っ」
「はぁ、んっ♥ ゃ、ぁ、ん……ほっ、はっ、あっアッア……っ!」
ピストン運動は、真乃のパイズリより緩慢で小幅なストロークだったが、そのぶん執拗に真乃の奥を撫でさすった。プロデューサーは、自分のペニスの届いた奥底が、真乃の子宮口だと信じてピストンを重ねた。パイズリフェラのときに真乃にしてもらったお返しのように、彼女のそこにキスを降らせた。
「ぷろ、でゅ……はぁあ、ああっ♥ そ、そこ、やさし……され、あ、あぁ、ひゅっ、ひううぅっ♥」
プロデューサーが愛おしげに抜き差ししてやるほど、真乃は反対にだらしない痴態を肉の内側から肌へにじませ、女神からメスに堕ちていった。プロデューサーの余裕あるピストンがじれったいとばかりに、ホールドされたままの尻肉の曲線をぶるぶる震わせるほど真乃が腰を上下に激しくうなずかせる。男への媚びさえ取り払われたむき出しの欲望。合わせて引き攣りながらペニスを絞り上げてくる。プロデューサーにまた射精が間近へ迫ってくる。
「はぁ、はぁ……んっ、や、あっ……もっと……っ! もっと、して、ぇ……♥」
たっぷりと潤みを増した秘所で、ペニスを切なく刺激していると、くちょくちょ、じゅくじゅくと膣口からさえ切なげな声が聞こえてくる。
「や、やらぁ……♥ して、くれなきゃ、私、こわれちゃ……だめ、プロデューサー、さん……っ」
「……こわれちゃっても、真乃は、きっと素敵だと思うよ」
プロデューサーが反射的につぶやいたそれは、考えなしながら彼自身にはしっくりと響いた。恋なすびのせいでアイドル・櫻木真乃が壊れていまのありさまなら、もう一度壊れてもらってもいいんじゃないか、と本気で思っていた。
「や、ぁ、ぷろ――ほわ、ぁ――ぁ、ァ、ァ゛、ぁ……♥」
気がつけば、真乃は天板の上にべったりと張り付いて、投げ出された両手は指先で悲鳴のように木目をかりかりと引っ掻いていた。プロデューサーのペニスを併呑していた乳房も、固く平べったい天板に押し付けられて不平そうにふくれていた。
「真乃……胸も、触ろうか。さっきは、たっぷりしてくれたから……」
「は、ひぁあっ……!? そんな、いっぺんに、なんて、え……ぷ、プロデューサー、さんっ、私……っ!」
膣内の奥底にぐりぐりとペニスを押し付けつつ、溢れ出しそうな乳房をすくい上げる。肌はパイズリのときよりさらさらした汗で濡れるがまま、膣内と比べると気だるいぬるさを湛えていた。
こちらにも、さんざんもてあそんでくれた返礼をたっぷりしてやらなければならない。欲望と使命感を絡ませながら、プロデューサーの指がゆったりとなでて、きりきりとつねる。
「あうっ、ああっ……も、もう、私……はぅあ、あ、あ……っ」
真乃が背中を反らして、胸愛撫を受けやすい体勢をとってしまう。プロデューサーが勢いづく。
「強くしたり、ひねったりってのが、真乃のお好みか……?」
「そ、それ、いい……っ、いいです、いいんです……っ♥ プロデューサーさんに……んひぁっ♥ ……め、めちゃくちゃに、わたし、され……あは、あ、あぁあっ♥」
プロデューサーのペニスと腰が、真乃の奥の急所を覚えて、愛して、責める要領を掴む。それにつれて、ストロークが長く強くなっていく。打ち付けるごとに、結合部を濡らす愛液や泡が垂れ落ちる。真乃のしなやかで豊かな下肢は追い詰められる。膣内の張り詰めた痙攣が、アイドルらしく急峻にくびれたウエストにも、セーラー服越しの肩と背中にも浮かび上がってくる。
「ぷろでゅっ――ぁ、んっ……そ、そぇ、それぇ、す、すきっ、だいすき――っ♥」
パンパンと肌が音を立てるほどの抜き差しで、真乃の乳房は振り回されるように揺れて波打つ。その稜線にプロデューサーが手のひらを押し付けてやり、ぷっくりと主張する乳首を指先でとらえてやる。ひねりもつねりもしないうちから、愛撫を期待して真乃が呻く。
「真乃は……俺にしてやったのと、俺にされるのと、どっちが、好きなんだ……?」
「へぁ、ひ、ああっ♥ そんなの……ど、どっちも、すき、ですから……っ」
期待に応えて、指の腹でくにくにと刺激してやる。膣内の粘膜から尻肉や太腿の曲線までがぴりぴりと反応する。浅ましく媚びた搾精のジェスチャーを繰り広げる。それでいて、指先のいじめに反発するようにコリコリと張り詰める乳首が奇妙に可愛らしかった。
もうこらえきれなかった。
「それなら、真乃……今度こそ、中に出してやる」
「ふぁ……、あ、プロデューサーぁ♥ ……ァぁ、な、なか、って……ぁ、ぁッ……!」
射精という言葉だけで、真乃がきりきりと仰け反って、覚束ない両足までがプロデューサーの足へ押し付けられる。そのまま真乃は声を詰まらせ、息も絶え絶えになるが、精液を搾り取ろうとする動きはエスカレートする。乳首を強く弱く愛撫してやってもすべて膣内の種絞り痙攣へ波及する。嬌声さえも脱落して、すべてオスの精液を受け止める動作だけに専念してしまった女神の残影、春に浮かされたメス。
「真乃、真乃っ」
子宮口らしき奥底を、ペニスでコツコツと刺激する。度重なる催促に真乃が音を上げる。音を上げてもプロデューサーは止まらない。腰を引いて突き出して、膣内をえぐって尻を叩いて、乳首をつねって乳房をもみくちゃにして、今度は自分の意思と欲望で真乃に精液をぶちまける準備を整える。
「ぷろ、でゅ……さっ――きす、きすして、きす……っ♥」
真乃の切れ切れの懇願に応えて、彼女にめいっぱい振り向いてもらいながら、プロデューサーは限界まで前に体重をかけてくちびるを近づける。無理な体勢で奥底により深く食い込んでしまって、真乃の瞳も表情もぼやぼやと危うい。
くちびるが届かない。舌を伸ばす。宙を何回か舐める羽目になる。じれったくなって、抱きしめて引き寄せる。
「ぁ……んく、ふ、ぢゅ、ちゅう、んぷ……ちゅう、れぅ、ふふっ……んんっ……♥」
抱きしめたまま、プロデューサーの射精。真乃は静かに深く震えながら精液を受け入れる。子宮口の中の卵子を溺れさせて膣を埋め尽くしてしまいそうな勢いの射精が、また精液をすすり上げる蠕動が、静けさの中でいつ果てるとも知れず延々と続いた。
※
プロデューサーが目を開けると、その視界は、上からの日射だけ完全に断ち切っている四阿の屋根裏と、彼を見下ろしてくる真乃の顔と体だけで占められていた。
「テーブルの上に寝転がっちゃうなんて、お行儀、悪いですね……♪」
プロデューサーは、四阿のテーブルの天板で仰向けに寝転がっていて、真乃がプロデューサーの腰をまたいで座っていた。真乃ははだけたセーラー服と乱れたプリーツスカートのまま。プロデューサーは、四阿の屋根が遮り切っていない横からの日射が真乃の乳房を照らしていて、その膨らみに赤く血のにじむ擦り傷があるのを見つけた。途端に、自分の後頭部や肩や腰に擦れる天板の硬さが意識される。さっき――本当にさっきだろうか?――後背位で真乃を犯した時、傷つけてしまったのだろうか。
プロデューサーが『乱暴で、ごめん。こすれちゃったな』とつぶやくと、真乃はクスクスとあどけなく笑った。
「今度は、私が好きなようにしますから……それで、おあいこですっ」
真乃の肌は、擦り傷を除くと、頬も首も肩も腹も手足も、匂い立つようや白と汗で発情の色を見せつけていた。きっとプリーツスカートに隠れた股間や秘所や内腿も同じだろうと思われた。髪の毛は瞳や輪郭をしんなりと取り巻いて肌に張り付き、真乃の印象にあどけなさを上塗りしていた。乳首はぽってりと起ったまま、いじめられ足りないと不服そうにさえ見えた。
擦り傷と滲んだ血だけがプロデューサーを咎めていた。それでプロデューサーはかえって安心した。いま目前の真乃のなかで、唯一男に媚びていない部分だった。どんな男の心と体も奪いおおせる女神と、生身の櫻木真乃とをつなげる唯一のよすがで、『さっき犯した女が、ちゃんと櫻木真乃だったのだ』と彼に思い出させてくれた。
「ちょっと、むんっ、って力が入っちゃいますけど……私に、させて、くださいね」
真乃は前傾姿勢でプロデューサーの肩や胸板に右手を添えてバランスを取りつつ、もう片方の左手でスカートをたくし上げる。挿入前より格段に白く濁った潤みがプロデューサーからも見える。どろどろのままの秘所がペニスにこすりつけられる。彼も真乃も、ねちゃにちゃと湿っぽい摩擦を味わう。
こすりつける動作は、プロデューサーをそれだけでうめかせるほど続く。交合部が直に見えない真乃は、膣口の感触で目標を探っているらしい。
「ん、ふふっ……ここかな、プロデューサーさん、見えて、ますか……?」
真乃の陰毛はとても薄く、敏感な勃起ペニスでなんとか陰毛らしい感触を得られるぐらいで、プロデューサーの目では視認できなかった。ただ、二枚貝のような膣口粘膜がむしゃぶりついてきて、にゅりゅりゅ、ずりゅりゅとペニスをくわえこんでいくのを感じた。
「あ、ぁあ……入ってくよ、真乃、が……」
真乃による捕食じみた挿入が、ペニスにも頭の中にも焼き付けられる。
「は、ぁ……ほわぁ、あは……っ、はいり、ました……♥」
上からプロデューサーを迎える真乃の膣内は、きつく、それでいて意思がしっかりと乗った、舐めしゃぶるような締付け。真乃は膣口で根本までプロデューサーを呑むと、腰をゆるゆると揺らしながら、乳房の膨らみも揺らしながら、膣壁でペニスを責め立てる。
「ほわぁ……プロデューサーさんみたいな動き、やってみると、楽しいですね……♥」
真乃は、プロデューサーの緩慢で小幅で奥深くばかり突き刺すストロークを真似ているらしかった。
ただ角度が大きく違うせいか、真乃もプロデューサーもお互い擦れる場所や具合が変わっていて、真乃のゆるやかさは、その変化をしっとりと味わっていたい風も混じっていた。
「は、ぁあ、うぁ、あんっ……どうでしょうっ。プロデューサーさん……同じ私でも、違います?」
「うぐ、ま、真乃……気持ち、よすぎて……」
真乃は、快楽に身を委ねるように、あえて体を仰け反り気味にした。
プロデューサーの腹筋に向けて勃起するペニスと、その真逆に膣内が傾いて、真乃のヘソ裏あたりがぎりぎりと反抗のように鈍く強く刺激される。
「は、ぁあ、ぅお……っ!」
「私は、こっちのほうが好きですね……♥ やっぱり、プロデューサーさんの顔が、見えるし……」
後背位では真乃の膣内を支配者のごとく堂々と往来していたペニスが、いまは真乃と膣内にひっつかまれて無理に倒され、根本からきしまされている。プロデューサーはたまらず呻きをもらすが、それは射精をがまんするときの表情と息遣いに似ていた。
「それに、プロデューサーさんも……私を、見てくれてるから……♥」
ペニスと膣内を交合させたまま、腰を擦り付ける。真乃が膣内をえぐれながら蕩けていく様は、上から下までプロデューサーに差し出されている。
「ぁ、はうっ……んっ、ひゃんっ♥ もっと、私の感じてるところ、見てください……っ♥」
真乃が腰を前後にびくびくと震わせる。むっちりと豊かな尻は軽快に弾む。プロデューサーはそれに巻き込まれるまま。じりじりとボルテージが上がっていって、彼は快感が飽和しペニスが今度こそ溶け落ちてしまう気分に襲われて、たまらず真乃の腰を掴む。
「真乃……それ、は――あぁあー!? ほんと、おれ、は……ぁ……っ!」
「あ、んんっ……そうですか、そうなんですか……プロデューサーさん……っ♥」
動きを制限されても、真乃は熱っぽい視線を注ぎながら淫らに体を揺らす。腰を掴んだところで膣内の締め付けは封じられない。かえってペニスが煽られる。ペニスの焦燥が頭に上る。真乃を制止しようとしていたはずの手が、彼女の腰をまたホールドする。ペニスがくちくち、にちにちと真乃の奥をえぐるサポートに回ってしまう。
「ふふっ……むんっ、むんって言ってみたら、元気いっぱいになって……む、ふふっ、もっとしてくれますか?」
プロデューサーが、ここをテーブルの天板上であることを忘れ果て、ガツガツと腰を突き上げてやる。真乃は息をつまらせながら微笑む。絶頂を催したらしい膣内が、突き上げに応酬して容赦なくきつい搾精。下っ腹や太腿までひくひくと震えているが、顔は笑ったまま、切れ切れの喘ぎを漏らす。玉のような汗雫をはたはたと降らせてくる。
「……あぁ、真乃、俺、は……っ」
それらを浴びながら、プロデューサーは睾丸とペニスから最後の一滴を捻り出すような射精。余韻すら残さず尽き果てさせるつもりで注ぎ込む。
「あなたにしてもらいたいんです、あなたからして……デューサーさん……ずっと、わたしの……理由は……だって、ここが――」
混濁した意識を包む霧が、気まぐれのように晴れてプロデューサーは真乃がなにか小さい紫色を指先につまんでいるのを見た。
真乃は右手の人差指と中指で挟んでいて、真乃の手に収まるぐらいの棒状で、棒付きキャンディかタバコのように彼女のくちびるへ寄せられた紫色は、マンドレイクの茎と花だった。
「……真乃、それ、は」
「わかりますか、プロデューサーさん……ふふっ」
プロデューサーの上にまたがったままの真乃が、体を傾ける。キスでも迫るようにプロデューサーへ顔を寄せる。青臭いマンドレイクの色と匂いが、甘くとろける真乃の匂いと混じって、プロデューサーを困惑させる。彼は、まだ紫色を毒だと――彼がプロデューサーでなくなってしまう毒だと――認識できていた。これを摂ったら最後、また真乃と貪り合うだけの存在となり、それは溶け落ちてこわれるまで延々続くらしかった。
ためらうぐらいの理性は残っていた。
「さぁ、私と、もっと……今までと、違う世界を、あなたにも……」
けれどその理性も、すぐ媚毒に靡いた。媚薬を口に含んだ真乃に流された。
彼女がすでにそうと決めて服したのに、いまさら自分だけ拒んで何の意味があるのだろうか。
「ねぇ、プロデューサーさん……」
理性は自ら掘り出した疑問の前に沈黙し、崩折れた。
※
「――でゅーさー、プロデューサーっ!」
ジャケット越しの肩をどしどしと揺らされて、睡魔が追い払われた。
「あのさ、疲れて眠たいのはしょうがないけど、そんな寝方してちゃ疲れたままだと思うよ」
「せめて、はづきさんみたいにネックピローとか……いや、ちゃんと横になったほうが」
「うぐ、めぐる……灯織……?」
プロデューサーの頬を撫でたのは、少し冷えた無機質な空調の風。肩を揺らすのは、八宮めぐる・風野灯織の手のひら。耳へ流し込まれたのは、「眠ったままではダメ」と叱ってくる声だった。
「あ……ぷ、ふっ……! プロデューサーっ、ほっぺたに、へんな模様ついちゃってる~!」
「めぐる、笑っちゃ……ぷふっ!? ん、んんっ……よ、よろしければ、こちら、使ってください」
プロデューサーが、男性としても大きく広い上背をもたげると、左から八宮めぐるの忍び笑いの響きが、右から風野灯織の差し出してくるおしぼりの温かさが迫ってきた。
「あぁ、ありがとうな……寝てたのか、俺は」
「うん、私と灯織が見つけたときは、もうぐっすりっていうかぐったりって感じで」
プロデューサーはおしぼりで額を拭ったあと、『冷たい水で顔を洗ってくる』と言って男子トイレに駆け込み、スラックスと下着を下ろしてペニスを確認した。あんなに淫らな夢を見ていた記憶は生々しく、プロデューサーは夢精の心配をしたのだが、ペニスは本当に限界までセックスをした直後のようにうなだれていて、彼はかえって気持ち悪かった。
プロデューサーは仕方なく洗面所で顔を洗い、鏡越しにジャケットの生地がうっすら残っている自分の頬を見て苦笑を禁じ得なかった。
「あぁ、プロデューサー。ちょうどいいところに、真乃が」
「ま、真乃がっ!?」
「真乃がどうかしたんですか?」
「い、いや、真乃に……灯織とめぐる以外に、これ以上へんな顔を見られてたら、と思って」
灯織は『広机で、真乃がリラックスできるお茶を淹れてくれるとのことですよ』と告げてきて、プロデューサーは心臓のあたりがキリキリとこわばるのを感じた。
「わぁ……きれいだねっ、ラベンダーかな? にしては、色が濃いかもしれないけどっ」
「ふふ、めぐるちゃん、これはね……」
広机には、桜色のクロスと、丸いガラスのティーポットと、涼し気なグラス。
ガラスのティーポットの中では、紫褐色の花びらと小さな根っこが、さらさらの透明な液体に揺られていた。
(おしまい)