◆
俺はホモじゃない。
断言する。誓って言う。天地神明に懸けて、俺、高良翔太は女が好きだ。おっぱいが好きだ。太ももが好きだ。うなじを見ただけで心拍数が二十は上がるし、PCにはエロ画像、エロ動画合わせて400GBはオカズが格納されている。ここ最近は特に性欲が加速の一途を辿っており、オナニーの回数は一日三回がデフォルト、調子のいい日は五回に達する。先日は一日八回抜いた──コツは健康的な生活と、毎日のスクワットだ。
そう、俺は正真正銘の女好きであり──さらにセフレもいる。
だからホモじゃないのだ。
え? セフレはどんなやつかって?
名前は
同い年で顔がいい。背が高くて、肌が白くて、笑うと犬歯がちょっとだけ覗く。髪はいつもさらさらで、シャンプーの匂いがする。声は男とも女とも取れる中性的なトーンで、耳に残る。そしてエッチが大好きで、俺と相性が抜群で、週に二回は俺のアパートに来てくれる。
完璧なセフレだ──ただ一点を除いて。
「翔太ぁ、来たよー」
金曜の夜八時。呼び鈴は鳴らさない。合鍵で勝手に入ってくる。それが白瀬のスタイルだ。
俺はベッドの上でスマホを握ったまま、玄関のほうを振り向いた。靴を脱ぐ音。コートを脱ぐ衣擦れ。冷蔵庫を開けてビールを取る音。このアパートを自分の家だと思っている一連の動作──いいよなこういうの。
だが問題がある。
白瀬の声はいつだって同じだって問題が。男の時も女の時も、まったく同じ中性的な声。声だけでは絶対に判別できない。
なぜそれが問題なのか──まあそれはいずれ分かるだろう。
「やっほ、きちゃった♡」
白瀬が入ってきた。ビールの缶を片手に、もう片方の手でコートのボタンを外しながら。長い脚。黒のタートルネック。胸元が平たいのか膨らんでいるのか、服の上からでは判別できない。
今日の白瀬は男なのか女なのかわからない。
セフレなんだから女だろうって?
まあそう考えるやつがいるのは至極当然だ──だが、浅い!
とはいえ説明が必要だろう。
TSというのはまあ、トランスセクシャルとかそういう深刻な話ではなく、もっと物理的でどうしようもない体質の話だ。不定期に、本当に不定期に、白瀬の体は男になったり女になったりする。本人いわく「生理みたいなもん」とのことだが、生理が来たら体にちんこが生えてくる女がどこの世界にいるのか。
しかも厄介なことに、男の白瀬と女の白瀬は見た目がほとんど変わらない。身長は同じ。顔立ちもほぼ同じ。髪も同じ。男の時も喉仏は目立たないし、骨格も肌の質感もほとんど変わらない。服を着ていると本当にわからない。
違うのは胸と股間だけだ。
そして白瀬は男であろうと女であろうと、等しくエッチが好きだった。
◆
白瀬との付き合いは長い。高校からだ。
入学して一週間目。体育の着替えの時間に、白瀬のシャツの下にあるはずのない膨らみを見た奴がいた。翌日には学年中に噂が広まっていた。「白瀬遊は半分女」。
正確にはTS体質だが、高校生にそんな微妙なニュアンスは伝わらない。男子には気持ち悪がられ、女子には物珍しがられた。体育の着替えでは更衣室に入れてもらえなくなり、誰も使わない空き教室で一人で着替えていた。
いじめというほど派手なものじゃなかった。ただハブられた。班決めで余り、昼飯は一人、体育のペアは永遠に組めない。そういうやつだ。
俺がいじめっ子の前に立ちはだかって白瀬をかばったとか、そういう格好いい話じゃない。
たまたま白瀬が女の日にすれ違って、めちゃくちゃ可愛かったから話しかけた。
それだけだ。
動機は極めて不純であり、正義感のかけらもない。俺は高校一年の春から既にシコ猿だったのだ。可愛い子を見たら話しかける。本能である。
でも話してみたら白瀬は普通に面白い奴だった。ゲームの趣味が合って、飯の好みも合って、下ネタに対する耐性が異常に高かった。男の日の白瀬も、顔が同じだから最初は混乱したけど、慣れたら普通に友達として付き合えた。
周りから「お前、あいつと仲いいの?」と訊かれるたびに、俺は堂々と答えた。「白瀬は友達だ。文句あるか」と。格好つけたかったわけじゃない。本当にそうだっただけだ。
白瀬はそれ以来、俺のそばにいるようになった。
大学も同じところに行った。白瀬が「翔太と同じとこがいい」と言ったのだ。俺は特に深い意味は考えなかった。友達と同じ大学、楽しいじゃん。ぐらいの感覚だった。
セフレになったのは大学二年の冬だ。
サークルの忘年会の帰り、俺はべろんべろんに酔っていた。十二月の冷たい空気の中、駅までの道をふらふら歩きながら叫んだ。
「あーやりてー。誰でもいいからやりてー」
最低の発言である。酔った大学生の語彙力は猿以下に落ちる。
隣を歩いていた白瀬が、ぽつりと言った。
「……今、私女だけど。する?」
俺は酔っていた。白瀬は酔っていなかった。それなのに白瀬の方から言い出した。
立ち止まった。白瀬の顔を見た。街灯の下で、白瀬は少しだけ頬を赤くしていた。寒さのせいか、別の理由かはわからなかった。
「……マジで?」
「マジで。ていうか前から気になってた。翔太とだったら、してみたいなって」
それが俺たちのファーストセックスだった。
白瀬のアパートで、白瀬のベッドで、ゴムもないからコンビニに走って、もたもたしながら、笑いながら、途中で白瀬が「痛い」と言うから止めて、もう一回ゆっくりやり直して。下手くそなセックスだった。でも終わった後に白瀬が「もう一回したい」と言ったから、俺たちは多分、体の相性だけは最初から良かったのだ。
それ以来、俺たちはセフレになった。
友達で、セフレ。
その関係が二年以上続いている。
「で、今日はどっち?」
俺は訊いた。切実に。
「んー、どっちだと思う?」
白瀬はベッドの端に腰掛けて、ビールをぷしゅっと開けた。一口飲んで、にいっと笑う。犬歯が覗く。この笑い方は男でも女でも変わらない。
「クイズにしよっか」
出た。
出たよ~!!!
白瀬の最悪の趣味──「どっちでしょうクイズ」。
ルールは単純。白瀬がヒントを三つ出す。それを元に、今の白瀬が男なのか女なのか一発回答。当たればノーマルセックス。外れたら──。
「外れたらホモセね」
にっこり笑って言うな。
「いや待ておかしいだろ、外れてもセックスすんのかよ。外れたら男ってことじゃん」
「うん。だってエッチしたし、男でも別によくない?」
全く良くない。
だがこの生き物に「今日は帰ってくれ」という選択肢は存在しない。白瀬遊という人間は、性別を問わず、性欲の化身なのだ。俺がシコ猿なら白瀬は発情期が永遠に終わらない野良犬である。それに、友達なんだぞ。ヤれないなら帰れなんてどこぞのアイドルグループのナントカメンバーみたいな事いえるわけない。
だが俺にも意地がある。
ホモセだけは──いや、もう何回かやってしまっているのだが──できれば避けたい。俺は女が好きなのだ。おっぱいが好きなのだ。おまんこが見たいのだ! ちんこは見たくないのだ。自分のだけで十分なのだ。
「よし。受けて立つ」
「いいね、その目。ギラギラしてて好きだよ」
そんな事をいいながら白瀬はビールをテーブルに置いて、俺の正面に立った。コートは脱いでいる。黒のタートルネックに細身のデニム。この服装だと胸の膨らみは判別できない。何を見ても手がかりがない。
「じゃあヒントその一。今朝、私──もしくは俺は、今朝トイレで座っておしっこした」
「それ男でも女でもありえるだろ! 情報がゼロだ!」
「そう? 男は立ってするもんでしょ」
「座ってする男もいるわ!」
「翔太は?」
「座ってする! つーかそれはいいんだよ! もっとわかりやすいヒントをくれ!」
「ヒントその二」
白瀬は人差し指を立てた。
「今日、ブラジャーをつけてます」
ブラジャー。
ブラジャーをつけている。ということは女──いや待て。白瀬は以前、男の時にスポーツブラをつけて出勤したと言っていた。「乳首が擦れるから」という理由で。
「そんなもんわかるか! お前男の時もブラつけるって言ってたろ!」
「あれ、覚えてた? 嬉しいなあ。じゃあ特別にもう一つだけヒントあげちゃう」
白瀬はタートルネックの裾に指をかけた。ゆっくりと、焦らすように持ち上げる。腹が見える。白い肌に薄っすらと腹筋の線が走っている。これだけだとまだわからない。女の白瀬もそこそこ腹筋がある。
裾がさらに上がる。肋骨の下あたりまで。
「ここまで見せてあげる。さあ、ヒントは以上。男か女か、回答どうぞ!」
胸は見えない。ぎりぎり腹の上端で止めている。くそっ、このチラリズムの暴力。腹筋の感じからすると──男か? でも女の白瀬も鍛えているから腹筋はある。へそのラインは──男寄り? いや、判断材料にならない。
俺は白瀬の首元を見た。タートルネックに覆われているが、どうせ白瀬は男でも喉仏が目立たない。首元は判別の役に立たない。声はいつも通りの中性的なトーンで、こればかりは何の判断材料にもならない。
「……女!」
賭けだ。理由は単純。さっき「私」と言いかけていた。白瀬は男の時は「俺」、女の時は「私」を使う。最初に「私──もしくは俺は」と言った。最初に出てきたのが「私」だ。つまり普段使っている一人称が先に出た。つまり今は女だ。
完璧な推理だ。
「──ぶっぶー」
白瀬はタートルネックをばさっと脱いだ。
平たい胸。薄い乳首。そして鎖骨の下に、ぺたんと何もない胸板。
男だ。
男の白瀬だ。
「私って言いかけたの、わざとだよ?」
「お前──!」
「引っかかると思った。翔太って素直だもんね」
白瀬は脱いだタートルネックをぽいっとベッドに投げて、にこにこしながらデニムのボタンに手をかけた。
「さあ、約束通り」
ちんこが見えた。
俺のじゃないちんこが。
半勃ちしている。こいつ、クイズの時点でもう興奮していたのか。
「待って。待ってくれ。こっちの心の準備が」
「準備なんていらないでしょ。もう七回目だよ?」
七回。
七回もホモセをしている。
俺は女が好きで、おっぱいが好きで、シコ猿で、それなのにこの二ヶ月で七回も男とセックスしている。全部このクイズのせいだ。通算成績は三勝七敗。
「ほら、翔太も脱いで」
白瀬はもうパンツまで脱いでいる。全裸。男の体。でも肌は白くてきれいで、腰のラインは妙に色っぽくて、男なのに脚が長くてすらっとしていて──いかんいかん。客観的に見るな。ちんこがついている。それだけでアウトだ。
「……脱ぐけど、俺はホモじゃないからな」
「うん、知ってる。でも勃ってるよ?」
見るな。
いや、勃っているのは事実だ。でもこれは白瀬の体が綺麗だからであって、男の体に興奮しているわけではない。断じて。天地神明に懸けて。
俺はTシャツを脱いだ。ジャージを脱いだ。パンツを脱いだ。
そして──抱き合った。
男同士で!
世界で最も不毛な一景の一つと言えよう。
「じゃあ、いつもの?」
「いつものって言うな。定番みたいに言うな」
「だって翔太、口でしてもらうの好きでしょ? 男の時のほうが上手いって前に言ってたじゃん」
言った。
言ってしまった。
あれは事後の、頭がぼんやりした状態での失言だ。公式見解ではない。
白瀬が膝をついて、俺の太ももに手を置き──
「んっ……」
咥えられた。
くそ、上手い。
随分と深く咥えてくるじゃねえか! 舌の使い方が丁寧で、亀頭の裏側を集中的に舐め上げる。ちゅぷ、ちゅぷと唾液の音が部屋に響く。外では金曜の夜の街のざわめきが聞こえる。隣の部屋のテレビの音。日常の中で俺は男にフェラされているのだ。
「っ、あ、そこ……」
「ん、ここ?」
裏筋を舌先でなぞりながら、白瀬が上目遣いで見上げてくる。整った顔。長い睫毛。これが女だったら最高の光景なのに。いや、男でもかなり──いかんいかん。
「白瀬、ちょっと待て、いったん離せ」
「やだ。美味しいのに」
美味しいとか言うな。
白瀬は離れる気配もなく、じゅるるっと音を立てて根元まで飲み込んだ。喉の奥が竿を締めつける。
「んぐっ、んぐっ……」
「ま、おまっ──!」
深い。奥まで入っている。鼻先が腹にくっつくほど深く咥えて、喉の奥で竿が脈動する。白瀬の喉が収縮するたびに快感が腰から背骨を駆け上がる。
くそ。
認めたくないが気持ちいい。
男にフェラされて気持ちいいと感じている自分がいる。俺はホモなのか? いや、違うはずだ……。
白瀬がゆっくり顔を離した。唾液の糸が亀頭と唇の間に架かって、ぷつんと切れる。
「イきそうだった?」
「……まだ」
「嘘。腰が震えてたのに」
嘘じゃない。まだ大丈夫だ。たぶん。
「じゃあ次、入れるね」
「入れるってどっちが──」
「翔太が入れるんだよ。俺のケツに」
言い方。
もっと婉曲的な言い方はないのか。
でも白瀬はもうベッドに四つん這いになっている。引き出しからローションを取り出して、自分で指にかけて、背中越しに手を回して──。
「お前、準備してきたのか」
「うん。家で洗ってきた。ちゃんとしてるよ」
ちゃんとしている。何をちゃんとしているのか。いやわかっている。わかっているが言葉にしたくない。
白瀬は中指を自分の中に入れて、くちゅくちゅと音を立てながらほぐしている。白い背中に汗の粒が浮いている。春先のまだ冷たい空気の中で、白瀬の体温だけが上がっている。
「……ほら、翔太。ゴムつけて」
枕元に置いてあったコンドームを手に取った。自分のちんこにかぶせる。かちかちに勃っている。白瀬のフェラのせいだ。白瀬のフェラのせいであって、男の尻に欲情しているわけではない。
と自分に言い聞かせながら、俺は白瀬の尻に手を添えた。
形のいい尻だ。男にしては丸みがある。白瀬は男でも女でも尻の形が良いのだ。
「入れるぞ」
「うん。ゆっくりね」
先端を押し当てた。ローションでぬるぬるに濡れた穴が、ぬぷっと先端を飲み込む。
きつい。
女の白瀬の膣とはまったく違う締めつけ。筋肉の輪が竿を締め上げるように圧迫してくる。温度は高い。内側の壁がうねるように俺の形に沿おうとする。
「あっ……ん、ふ……」
白瀬が声を漏らした。いつもの中性的な声が、甘く崩れる。
「お前……声、わざとだろ」
「わざとじゃないし……あっ、そこ、奥……」
半分まで入った。白瀬のケツの中は熱くて狭くて、ぬるぬるのローションが摩擦を和らげている。ゆっくり腰を進めると、奥のほうで何かに当たった。
「ひっ……! そこ、そこ当たってる、前立腺……っ!」
白瀬の体がびくんと跳ねた。腕が震えて、シーツを掴む。
「動くぞ」
「ん……うん、動いて……」
ゆっくりと腰を引いた。ずるり、とローションが絡んだ粘膜が竿にまとわりつく。そしてまた押し込む。ぬぷっ、ぬぷっ、と水音が響く。窓の外で酔っ払いが歌っている。金曜の夜だ。世間は飲み会で盛り上がっている。俺は男の尻を掘っている。
「あっ、あっ、翔太っ、もう少し速く動いていいよ……」
「……注文つけんな」
でも体は正直に応えた。腰の動きが速くなる。ぱんっ、ぱんっ、と肌がぶつかる音が部屋に響く。白瀬はシーツに顔を埋めて、くぐもった声を上げている。
「んんっ♡ あっ、やば、気持ちいい……♡」
ハートマーク付きの声を出すな。男のくせに。
「もっと、もっと奥、突いてっ♡」
腰を深く押し込んだ。白瀬の中のいちばん奥、前立腺の上を擦り上げるように角度を変える。腰の振り方にもコツがある──こんなもん、覚えたくはなかったよ。
「あ゛っ♡♡ そこぉ♡♡ んっ、んんっ♡♡」
白瀬は前立腺を刺激されると一気に理性が飛ぶ。男の時も女の時もエロい奴だが、ケツでイく時の白瀬は特に凄まじい。全身が痙攣して、涎を垂らして、目が焦点を失う。
俺はその光景を見ながら──認めたくないが興奮していた。
「イく、翔太、イっちゃう──!」
「俺も……やべ、出る……!」
白瀬のケツの奥で、ゴムに包まれたちんこがびくっ、びくっ、と脈打った。射精の瞬間、白瀬の腸壁がぎゅうっと収縮して、まるで搾りとるように竿を締め上げてくる。同時に白瀬の前で、白瀬自身のちんこがシーツの上にどぷっ、どぷっと白い精液を吐き出した。前立腺だけでイったのだ。手も触れずに。
「あ、ぁ……っ♡♡♡」
白瀬が崩れ落ちた。四つん這いから腹ばいに。俺も覆いかぶさるように倒れ込んだ。白瀬の背中に胸板がくっつく。天井のシーリングライトがぼんやり滲んで見えた。隣の部屋のテレビからバラエティ番組の笑い声が聞こえる。いかにもこう、日常!!! ──ってかんじなのに、その中にいる俺はホモセときた。しょうもない……まあでも……
「八回目」
白瀬が息を整えながら言った。
「……数えるな」
「だって記念だもん。まあ……ごめんね? 今日は男でさ」
何の記念だ。ホモセ八回記念。最悪の記念だ。
でも、白瀬が満足そうだし──別に今回はいいか……。
そう、正直どうでもいいのだ、白瀬は友達で、友達が男でも女でもどうでもいい。
そんな事はどうでもいい。
そして、友達が喜ぶなら、安心するならそれはそれでよい。
いいが、ヤるとなれば女がいいよ。当たり前だろ。俺はホモじゃないんだから。
分かってくれる奴がいるだろうか、俺の事フクザツな気持ちを。
◆
翌週の水曜日。
呼び鈴が鳴った。珍しい。白瀬はいつも合鍵で入ってくるのに。
「翔太、開けて」
いつもの声。これだけじゃわからない。
玄関を開けると、白瀬が立っていた。白いブラウスにフレアスカート。胸元がふっくらしている。ブラウスの第一ボタンの下、谷間の影が見える。
女だ。
女の白瀬だ。隠そうともしてないってことはクイズ無しってことだ。
「鍵忘れちゃった。てへ。入っていい?」
「……どうぞ」
女の白瀬が部屋に入ってくると、空気が変わる。同じシャンプーの匂いなのに、体温が混ざると甘くなる。デニムの時とは違うスカートの裾が膝の上で揺れて、太ももの白さが目に痛い。
俺のちんこが一瞬で反応した。これだ。これが正しい反応だ。女の体に対する健全な欲情。先週のホモセの罪を洗い流すような清々しい勃起。
「翔太、もう固くなってない? 私の声聞くだけで勃っちゃうのヤバ♡」
「うるさい!」
白瀬はくすくす笑いながらベッドに座った。スカートの裾から太ももがこぼれる。太ももの内側に薄い青い血管が透けている。その奥にあるもののことを考えると、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「今日はクイズしないの?」
「し、しなくていいだろ! その胸元の谷間見りゃわかる!」
「だねぇ♡じゃあ──」
白瀬はブラウスの第一ボタンを外した。鎖骨の下、乳房の上端が見える。白い谷間。
第二ボタン。
ブラジャーの縁が見えた。淡いピンクのレース。
第三ボタン。
おっぱいだ。
正真正銘の、白瀬遊のおっぱいだ。Cカップ。形がいい。乳首は薄いピンクで、少し上を向いている。
「今日はちゃんと女だよ。ほら、触って?」
触った。
右手で包むように触った。柔らかい。温かい。掌の中で乳房が形を変える。人差し指と親指で乳首をつまむと、ぷっくりと硬くなった。
「ん……翔太、乱暴」
「す、すまん……」
「今のはもっとしてって意味。学ぼうね~」
なんだこいつ、と思いながら俺は白瀬のおっぱいにほおずりをする。
「翔太、下も脱がせて。あと笑い方キモいよ」
うひうひと笑いながら、俺は白瀬が履くスカートのファスナーを下ろした。腰骨が見える。パンツは白い。シンプルな白い綿のパンツ。白瀬だから白パンなのか? ああ、どうしよう、俺は今秒速で馬鹿になっていっている。そういえば秒速で何万高稼ぐってデブがいたな。あいつ何してるんだろう。親戚があいつの情報商材を買ってたっけな──それどころじゃない!
おまんこだ!
おまんこだ。
白瀬のおまんこだ。ちんこがついていない。つるっとした丘にはしる割れ目を見ているだけで頭がくらくらしてきた。
「……見すぎ」
「見る。じっくり見る。先週ちんこしか見てないんだ。おまんこの有り難みを噛みしめさせろ」
「あはは、なにそれ」
白瀬が笑った。男の時と同じ声なのに、女の体で笑うとなぜか色っぽく聞こえる。この笑い声だけで俺のちんこは臨戦態勢だ。
白瀬まんに顔を埋めるとかすかに甘酸っぱい匂い。体臭と混ざって──もう、もう……!
「あっ……翔太、いきなり?」
舐めた。
割れ目に沿って、下から上へ。舌先でクリトリスのフードをめくって、ちっちゃい突起を直接舐め上げる。ぴちゃぴちゃと音を立てて──うまい。白瀬のここ、うまいんだよな。甘酸っぱいっていうか、なんていうか。俺が変態みたいだからこの話はやめよう。
「んあっ そこっ」
白瀬の太ももが俺の頭を挟んできた。ぷるぷると震えやがって──
よし、もっと震えさせてやる。
クリトリスを舌先で転がしながら、中指を膣口に這わせた。入り口はもうとろっとろ。ぬるりと指が滑り込む。膣壁が指を締めつけてくる。柔らかくて、熱くて、ぬるぬる。ケツ穴とは全然違う。こっちのほうがいい。絶対にこっちのほうがいい!!!
ちなみに俺はこの、舐めながら指でこちょこちょやるのが好きなのだが、これをネットに書くとおまんこの構造──おまん構造を知らない童貞がたまにケチをつけてくる。舐めながら指なんて突っ込めないだろうとかいう童貞くさいレスが飛んでくるのだ。馬鹿どもがよ。
「あっ、あっ、指、もう一本」
二本目を入れた。Gスポットのあたりを掻き上げるように指を動かすと、白瀬の腰がびくんと跳ねた。
「やっ そこぉ ダメ、すぐイっちゃう」
「イけよ。何回でもイけ」
「えっちの時だけ強気じゃん」
うるさい。普段から強気だ。たぶん。
指を動かしながらクリトリスを吸い上げた。白瀬の背中が跳ね上がる。太ももが震えて、膣壁が指をぎゅうっと締めつける。
「あっ、あっ イく、イくっ」
びくんっ、びくんっ白瀬がイった。膣の中から透明な液がとろりと溢れて、俺の指を伝って手首まで流れる。太ももの内側もべちょべちょ。
うーん、いいねえ。
いい光景だ。女の白瀬がイった後の蕩けた顔。これだよこれ。先週ちんこしか見てなかった俺の目に、今この瞬間、女体の祝福が降り注いでいる。ありがてえ!
「翔太入れて」
「待ってろ。ゴムつける」
コンドームを装着し──
「いくぞ」
「うん来て」
白瀬の脚を開いた。膣口にちんこの先端を当てる。
ぬぷっと──入った!!!
熱い。ぬるぬるしてる。膣壁が全方向からちんこを包み込んで、奥へ奥へと導いてくる。先週のケツ穴とは全然違う。こっちは柔らかくて、うねるように形が変わって、吸い込まれていく感じがある。
これだよこれがセックスだよ!
いやケツも一応セックスだけどさ! でもさ! こっちのが!!!
「あ、あぁ翔太の、おっきい」
「それ毎回言うよな」
「だって毎回おっきいもん──」
まあ入れるたびにサイズが変わったら怖いよな──そんな事を考えながら、俺は腰を動かし始めた。ゆっくりと引いて、奥まで押し込む。白瀬の膣がぬちゅ、ぬちゅと音を立てる。白瀬の両脚が俺の腰に巻きついて、踵が背中を押してくる。
「もっと……」
速くは──しない。
一定のリズムで抽挿するのだ。淡々と……メトロノームの様に。白瀬のおっぱいが震え、揺れ、それをみながらリズムをとる。
ペースをつかんだら今度は手を伸ばして片乳を掴み、乳首を指で弾く。すると白瀬の声が裏返った。
「ひゃあっ 乳首、乳首やめっ」
「やめない」
「鬼っ」
鬼で結構だ。先週ホモセを強いられたぶんの鬱憤を、今ここで全部吐き出す。白瀬よ、おまえが悪いんだからな?
動いているうちに、ぐちゅぐちゅと水音が激しくなってきた。そろそろか? と思ってると──白瀬が俺の首に腕を回して、耳元で吐息を漏らして言うのだ。
「翔太、好きっ」
と。
俺も好きだが……。確かに白瀬の事が好きではあるのだが──。
「ねえ、好きって言って」
「好きだよ」
結局、そう答えて、一緒にイッた。
「翔太は優しいねぇ」
そんな風に言った白瀬の表情はよくわからない。
嬉しそうでもあり、なんだか寂しそうでもあった。