硬派に生きようと思ってたのに、俺のことが好きな同僚がTSして子作りを求めてきた 作:品川カタン
(ドメインはまだ寝ているな)
ドメインは次の日が休みとなると、遅くまで眠る習慣がある。普段から強力な魔法を使用しているから疲労が溜まっているのだろう。小さな寝息に合わせて上下している彼女の白い肩を見つめる。
(宿の予約は昼からだし、暫くはこのまま寝かせておこう)
時計に目を向けた。現在の時刻は七時半、ここを出るまでは四時間以上も時間がある。俺は仕事がなくとも早く起きる癖がついているため、休日はたいてい本を読んで過ごしたり、必要な買い出しに出かけるくらいだ。
洗面台からリビングに行き、ソファに座る。良い朝だ、窓から見える空も青い。穢れていない。息を吸っても気持ちの悪い湿った空気を口の中で味わわずに済む、良い気候だ。
(これでいい)
俺は何に対して言い聞かせているのかわからないが、心の中でそう呟いていた。
(これでいいんだ)
暫くぼうっと窓の外を眺めていると、入口の方からバタバタと誰かの足音が聞こえた。
「……なんだ?」
立ち上がり、俺が先にドアを開けるとその足音の主の男はびくりと肩を震わせ驚いた表情をした。額には酷く汗をかいており、目線を左右にキョロキョロと動かしたあと、俺を見上げて言った。
「……実は、ミニドラゴンがうちの畑を荒らしているんです。今すぐ助けて欲しくて」
「……うちは今日休みだと書いてあるが、神殿に申請するだけでは間に合わないのか?」
「その、本当はそうするべきなのでしょうが──! 育てているリンゴは本当に貴重な品種のもので……!! まだこの街に
「ミニドラゴン……」
倒せはするだろうが、動きが素早い上に魔法威力の強い魔族だ。討伐に向かうならば、ドメインの手を借りて拘束デバフをかけてもらうべきではあるのだが──
【よお!! 起きろクソガキ!! あっはっはっ、おもしれーもんあるぞ外に!!】
なにかの声が聞こえた。
【あぁ!? 眠いだぁ!? テメェ、お父様の言うことが聞けねえのか!!】
……結局、朝五時に叩き起されて見せられた〝面白いもの〟というのは、瘴気を放出する魔獣だった。
「…………」
父はあの時酔っていた。あいつは、普段俺の面倒を全く見ないくせに……アルコールが入って気分が上がると、ああやって無駄な外出に連れていくことがあった。
「わかった、俺が行く。場所はどこだ」
「あっ、ありがとうございます!! ギルドにはもう一人、魔術師の方がいると聞いたのですが……」
「必要ない。俺一人で十分だ、早く案内してくれ」
ドメインを起こす必要はないだろう。
普段からよく働いてくれている同僚に、わざわざ無理をさせなくても良い。俺は玄関付近に置いてあった大剣を持ち、そのまま男が案内する畑へと向かった。
……俺は、判断を誤らなかった。
「あの、お怪我は大丈夫でしょうか……!!」
「このくらい問題ない」
ミニドラゴンは、結局俺一人で討伐できた。畑を襲う程度のものだし、苦戦もしなかった。だが、慌てている男に釣られてまともに防具を用意しなかった結果──大したことは無いが、毒爪で左腕を裂かれて怪我をしてしまった。
「帰ればポーションがある。それをかければすぐに治る」
「さ、流石ですね……!! 本当にありがとうございました!!」
「構わん」
男に背を向けて歩き出した瞬間、ずきりと腕に鈍い感覚が走った。戦闘をしている際はあまり気にならなかったが、神経の方まで毒が流れ込んでいるようで少し痛む。
「……チッ」
討伐は手早く終わった。怪我も、早くポーションで治してしまえば良いのだし大したことは無い。ドメインの手を煩わせずにも済んだ。俺は間違っていない。
(…………それなのに)
それなのに、俺は何故……こうも落ち着かないのだろうかと思った。
(違う、これでいい。ドメインもまだ起きていないだろうし、さっさと治しておこう。余計な心配をされたらたまらん)
俺はなるべく何も考えずに、ギルドハウスへと向かった。広くなったように感じていたはずの視界も、今は暗く狭まっていてとにかく帰路の方しか見えない。俺は間違ったことをしていないはずなのに、妙に胸がざわつく。早く、早く帰ってしまおう。やっとギルドハウスに到着して、ドアを開けた瞬間だった。
「……団長どこ行ってたの?」
心臓が跳ねた。思わず、腕を背後に隠した。
ドアを開けたら、すぐ前にドメインがいた。冒険用装備を身につけ、ちょうど今外出しようとしていたような格好だった。
「……頼まれごとがあったから行っただけだ。大したことは──」
「腕、なんで後ろに隠したの」
何も言えなくなった。
後ろめたいことをしている訳ではないのに、ドメインから尋ねられて俺はまるで罪人にでもなったかのような気分になった。彼女の服装をもう一度見る。やはりドメインは暫く前に起きていて、俺を探そうとでもしていたのだろう。
お互いの間にしんとした沈黙が流れた。その時間が異様に長く感じられて、どうにもできやしないのに早くやり過ごさせてくれという気持ちでいっぱいになった。
そして、その沈黙を初めに破ったのはドメインだった。
「団長、なんか昨日から変だよ」
俺を見上げながらそう言った。
変、変。その言葉が頭を渦巻いた。俺が変。どこが変だった? 俺は、なるべく正しい方向へと歩めるように努力したはずだ。それなのに、何が変で──
「…………俺は元々、おかしいんだ」
気がついたら自分の口からそんな言葉が出ていて、驚いた。
弱音を吐きたかった訳じゃない。言い返したかった訳でもない。それなのに、自分が話しているとは思えないようなことばかりが口から出てくる。
「……何言って」
「俺はおかしい人間だ、ドメイン。暴力性が高く、その癖に自分が正しいと思い込んでいて。だが団員ともまともに話せていなくて──その結果残ったのはお前だけだ」
「…………」
そうだ。
俺は去っていった団員たちを腑抜けだと言ったが、そもそも俺は彼らとまともに話そうとしていなかった。だが、ドメインだけは違った。
「ドメイン、お前は俺のことを好きだと言ったがそもそも俺は好かれる資格なぞないんだ。俺は、だらしない父さんのようになりたくなかったから高潔な勇者を目指していただけで……本当の俺は全く高潔じゃない。あのクソ野郎の血が半分、俺の中に流れているんだ」
「団長」
「気持ち悪いんだ、ずっと。俺が気持ち悪い。俺の欠点が顔を覗かせた時、そこにあるのは俺だけの顔じゃない。父さんの顔まで見えてくる」
俺は何を言っているんだ?
こんなことを突然話しても、ドメインは困るだけだろうに。
【仲間ァ? あいつら使えねーからなぁ、チッ。俺が外でいい顔してたらすーぐ調子乗りやがる】
「ドメイン、俺を買いかぶらないでくれ」
【女なんて文句言ってきたら後ろからパンパン突いてやりゃ黙るんだよ!! あっはっはっ!! 将来のためによーく覚えておけよ!!】
「俺は父のようにさえならなければ良いと思っているだけだ」
【クソガキ!! この酒じゃねえって言っただろうが!!】
「お前が思っているような人間じゃ──」
「
──ドメインの声が部屋の中で響いた。
俺は、俺の名前を呼ばれた瞬間、頭の中で父の声と顔が消えたような気がした。
ドメインの顔を見た。綺麗な青色の瞳が、真っ直ぐに俺を捉えている。表情は、怒っているのだろうか。それとも別の感情を抱いているのだろうか。上手く理解ができずに戸惑っていると、ドメインが俺の方へと歩いてきて──胸ぐらを掴んできた。
「僕は、どうして腕を隠したんだって聞いたんだ。どうして外にいたのかも気になっているんだ!! 答えろ!!」
「それは……!!」
「──団長、逃げるな!!」
「なっ……!!」
逃げる、という単語に思わず頭がかっと熱くなり、胸ぐらを掴んでいるドメインを睨みつけた。
「俺のどこが逃げているというんだ!!」
「いいや、逃げている!! 父親と同じだからって、自分の嫌なところを全部見なかったことにして……僕が何を聞いても、そうやって話を逸らしてるだろ!!」
「何をわかったような口を聞いている!! 俺は、俺なりに父と同じ轍を踏まないように努力してきたつもりだ!! 俺が今まで、どれだけのことをしてきたと思って──」
「そうだ!! 団長──アーサー団長は、今までたくさん努力をしてきた。たくさん人を救ってきた。何よりも、僕は団長に救われた!!」
ドメインの気迫に押されてしまい、言葉が詰まった。
俺は確かに、この時怒りが湧いていた。そして、ドメインとここまでの口論になるのは初めてで、焦りも出てきていた。それでもドメインは、少しも怯んだ様子を見せず、俺に向かって叫び続けた。
「アーサー団長が今までしていたことは、お父さんを避けるための行動だったかもしれない! でも……全部事実だ。事実だった!! 色々な人を救ったのも、僕を救ったのも真実だ!!」
「…………」
「自分が好かれる資格がない!?笑わせないでよ!! 事実から逃げるな、不安へ逃げるな!! ──僕と向き合うことから逃げるな!!」
不思議だった。
ドメインは、なぜこんなにも俺に言い返すことができるのだろうか。俺が唐突に吐き出した毒に対して──なぜ、ここまで強い言葉を返せるのか。
(あ、そうか)
その答えは、ドメインの泣きそうな表情を見てすぐにわかった。
俺はきっと、最初から見破られていたのだろう。
ドメインは、俺が父を恐れながら行動していることを知っていたのだろう。その名を避けていることを知っていたのだろう。そして、それを理解した上でギルドにいてくれたのだろう。 語らなければ、誰にも見破られないと思っていた。だがそれは間違いだった。ドメインはずっと、俺のことをよく見ていたのだ。
【流石、アーサード様のご子息が設立したギルドですね!! こんなにも素晴らしい魔術師を新しく連れてくるとは……!】
【まだこの街に
俺は今まで、ここまで人に向き合ってもらったことがあっただろうか。こうして名前を呼ばれ、本気で怒られ、本気で伝えようとしてもらったことが、あっただろうか。
俺は怖かった。今、こうやって向き合うのが怖かった。怖いのに、言い表すことのできない明るさと温かさが込み上げてきていた。空に昇ってきた陽が眩しくて、思わず目を瞑ってしまうような。そういう気分だった。
「団長、お父さんみたいになりたくないっていう思いは……そのままでいいと思う。たけど、その恐怖のせいで自分の感情、成し遂げてきたこと、僕から告白されたこと……重ねてきた〝事実〟から逃げちゃダメだ。いや、逃がさない。──僕が、団長が好きだという事実からも、絶対に逃がさない!!」
部屋の中が静まり返った。
ドメインは叫び疲れて、はあはあと息を切らしていた。
俺の胸ぐらを掴んだまま、泣きそうな表情で歯を食いしばっていて、手が震えていた。
こんなドメインを見るのは、初めてだった。
「……
ドメインの言葉の続きを待った。
「だから次は、
俺のやりたいこと。
俺は、一体何をしたいんだろうか。
『団長、ありがとうね』
『何がだ?』
昔の会話を思い出した。
『僕をギルドに入れてくれて。身分証も見せられない中で、こんなランクの高いギルドに雇ってくれたことを感謝しているんだ』
『当たり前だろう』
ああ。
そうか。
『俺は……勇者になる。そして、魔王空間を滅ぼす。そうして本当の平和を、取り戻さねばならない。その為には、実力あるお前が必要だ』
俺は最初から、やるべきことを言っていた。
「…………俺は」
また、昔の記憶が蘇った。
『魔族戦争が終われば、父さんだって前の父さんに戻るはず──』
ぼろ、と頬から熱い感情の海が溢れているのがわかった。
「世界に本当の平和をもたらす……勇者になりたい……お前と、ドメインと一緒に……そうしたい……」
──その瞬間だった。
ドメインの手が俺の頬へと伸びてきた。そして、唇に柔らかいものが勢いよく押し当てられた。ドメインからキスをされたのに気がついたのは、数秒後だった。
「っっっ!?」
柔らかい舌が押し入ってきて、口内を侵される。ドメインの腰をぐい、と引いて俺も舌を絡めた。しばらく、貪るようなキスをし合った。存在を確かめるように。自分はここにいるぞと叫ぶように。そして、互いの気持ちを混ぜ合わせてひとつにするように。
キスを続けながら、ドメインが俺を押すようにして前へ進む。俺はその勢いに押されて後ずさり、二人で背後のソファへと倒れ込んでしまった。ドメインが俺の上に乗った状態で、一度唇が離れ、毒消しポーションの瓶を飲み──それを口移ししてきた。
「はは、バレていたか」
みるみると傷が塞がっていく感覚がする。ドメインが、ニヤリと笑った。
互いに息を切らしているのを確かめると、また唇を重ね舌を絡める音を響かせた。それが何回も何回も続いた。
「アーサー団長!!」
何度目かのキスを終えて、ようやく本当に唇が離れたあと、ドメインは酸欠やら何やらで顔を真っ赤にしながら上着を脱いだ。
「──エッチしよう、今ここで!!」
「い、今かぁ!?」
「あははは!! 今だよ!!」
ドメインが上着と防具を脱いで向こうに放り、俺の服まで脱がせてくる。「自分でできる!」と言いながらくすぐってやると、楽しそうに笑いながらもその手を止めようとはしなかった。
二人して服をしわくちゃにして下手くそに脱がせあったあと、互いの肌に触れた。温かい日差しのようなぬくもりを持つドメインの胸、腹、脚をなぞり、それに合わせてびくりと震えるのを見て、俺の興奮は既に高まっていた。
「ドメイン」
俺の上に乗っているドメインへと手を伸ばし、その下半身を弄るともう濡れていた。指を二本入れてぐちゅ、ぐちゅと音を立てながら肉穴のザラザラした場所を押してやると、ドメインが明らかに感じているような媚声を小さく上げた。
「愛している」
水音が響く。顔だけではなく、全身の白い肌まで赤く火照らせたドメインが、とろんと蕩けた顔を俺に向けてきた。
「だん、だんちょうっ♡♡ 僕も、ぼくも愛してるっ♡♡」
「しようか」
俺のそそり立った物を肉穴の入口に押してやると、ぷにんと柔らかい感触がした。ドメインの体重によって熱を持った柔らかい肉が、みるみると俺の勃起したものを飲み込んでいき、そうして奥底へとしっかりと挿入っていった。
「ふうっ♡♡ 団長、だんちょうっ♡♡ アーサー団長っ♡♡♡ はげしい、奥当たってへんになるっ♡♡♡」
「ははっ、良いんじゃないか?」
「いじわるっ♡♡ ん゛うっ♡♡ だめ、そこだめ、弱いからだめっ♡♡♡」
弱いと言われた場所を容赦なく下から突いてやると、ドメインの中がよく締まって俺の膨らんだ物を吸い付く。快感を全身で味わい、そして俺に奉仕し返すように、ドメインの可愛い秘部が俺のものへとまとわりついていく。
気持ち良い。可愛い。楽しい。俺は多幸感に溢れていた。いつものような罪悪感はない。責めすぎて余裕がなくなってきているドメインを見て少し申し訳ないという気持ちすらも、喜びと興奮に取り込まれていき、俺は強い解放感を感じていた。
「ドメインっ、ドメインっ、ドメイン!!」
「だんちょう、イキそう?♡♡ イキそうな顔してるよ、えっち♡♡ いいよ、ぼくと一緒にいこ♡♡ 中に全部だしてきもちよくなろ♡♡♡」
「ああ、出そうだ、ふうっ、ドメイン、出すぞ、受け止めてくれ、愛している!!」
「んっ♡♡ だんちょうっ♡♡ 僕も愛してるっ♡♡ イキそう♡♡ 大好き♡♡ すき♡♡ いく、いく、いくっ♡♡♡」
最後は強く抱き締め合いながら、共に絶頂した。射精の勢いで脈打つ俺の物と、精液を搾り取ろうとするドメインの腟内がどくん、どくんと互いに震えて、しばらくその姿勢のまま二人の肌の感触を味わいあっていた。