ある熱帯夜、由佳は乃愛の荒い息で目を覚ます。秘密を共にしようとする由佳の提案により、二人の関係は大きく変わり始める。
◇
支部(葉月の白昼夢)とノクターンにも投稿してます。
一次創作用Twitter→@omaeyrmsnsg
八月は昔から嫌いだった。
誕生日があるけれど、暑いし、何より、すぐに終わりが訪れるのに、一生続くかのような顔をする夏休みというものが嫌いだった。
大学生になった今でも、それは変わらない。
八月が訪れる度に、私は憂鬱な気分になる。
暑い夏の夜だった。
私のスマホに、母さんからいきなり電話がかかってきた。なんでも、親戚の子が夏休みの間、私のところで預かって欲しいとの事だった。仕送りを貰っているし、一人暮らししているマンションの家賃も払ってもらっている。食費や光熱費は心配だったけれど、それは親戚から私に纏めて払ってくれるらしい。
それなら、一ヶ月くらいなら、まあ。
今は割と暇な期間だった。ちょっとした、新しい刺激が来るのも悪くないと思った。
熱帯夜、クーラーの効いた部屋で私は承諾の返事をした。
数日後、玄関のチャイムに応じて扉を開けると彼女は立っていた。
「あ……お久しぶりです、由佳お姉さん」
白磁のように白い——いや、もっと病的に白い子だった。
夏の日差しの中で、その白さは一層際立つ。照りつける陽光は嫌という程に照らし返され、吸血鬼のような蒼白の皮をじりじりと焼いている。そのまま日差しに立っていたら溶けてなくなってしまいそうだったので、私は彼女をすぐに部屋に招き入れた。
「久しぶり、乃愛ちゃん」
鍵を締めながら、私はそう返した。
幼い頃の乃愛は人形のようだった。細く柔らかく、しかし豊かな色素の薄い髪は綿花のようにふわふわと浮かび、シルクのように白く美しい
その時、乃愛は満面の笑みを浮かべて少し照れて身体を捩らせていたものだけれど——
「その、どうですか。大学は」
時の隔たりは残酷だ。いつだって私の後ろを着いてきていた人懐っこい乃愛は、社会性や常識というものを身にまとって、私との距離というものを作り出した。
「楽しいよ。自由な時間も多いし、この辺は遊べるところも沢山あるし」
「そう、ですか」
「うん」
会話が途切れると、乃愛はぼうっと正面を見つめていた。スマホを眺めてくれても良いのに、それもせずに物思いに耽っているのかただ前を見る。
そういえば、彼女の近況を全く知らなかった。どうしていきなりこっちへ来ようとしたのか、なんで私の所へ——という以前に、疎遠になってからの事を殆ど知らない。
沈黙に耐えきれなくなる前に、私から話しかけた。
「乃愛……でいいのかな。最近どう? もう、高校生だよね」
「乃愛と呼んでくださって、嬉しいです。由佳お姉さん。……はい、地元の高校に通っています」
乃愛の家はどうして引っ越したのだったか。それについても聞こうとしたけれど、高校の話をする時に少しだけ表情が曇ったことに気が付いた。
それはそうか。地元に不満が無ければ、夏休みにわざわざ遠い私のところまで来ないだろう。あまりその事には触れないようにすることにした。
そうして僅かな瞬間に大量の考えを巡らせると、口に出る言葉には綻びも出てしまって——
「へえ、あの小さかった乃愛ちゃんがね。あっという間だな」
乃愛ちゃん、なんて、小さい子を呼ぶような呼び方をしてしまう。
「……っ」
「っと、ごめん。つい昔の呼び方しちゃった。嫌だったかな?」
「ぁ、違います」
乃愛はようやく私の方を見てくれた。顔を赤くしながら照れ隠しのようにぱたぱたと手を振ると、膝を私の方へと向けて、ぽつりと零した。
「……むしろ、嬉しくて。由佳お姉さんが、あの時のことをまだ、覚えていてくれているのが」
「……なんて」と続けて言った乃愛がまた壁を向こうとしたから、私はその手を掴んだ。
「え、ゆ、由佳お姉さんっ!?」
昔と同じ、小さくて細い、少し冷たい乃愛の手だった。暑い夏、手を繋いで歩くのが好きだった。八月で唯一好きだったことかもしれない。
「乃愛ちゃんは変わらないよ。少しだけ背が高くなって、立派に大人びて。外に出たら、誰でも振り返るような美人さんに育ったけれど——私にとっては、昔と同じ乃愛ちゃんだから」
大きく手を広げる。
私たちが抱き合う時の合図だ。
「由佳、お姉さん……」
乃愛が私の胸の中に飛び込んできたから、小さなその頭をそっと撫でた。ふわふわとした艶やかな髪。いつだって触り心地の良い、乃愛の髪。顔を埋めようとしたら、乃愛はシャワーの後にして、と恥ずかしがりながら言った。
時の隔たりなんて、私たちにとっては些細なものだ。
そうして、少し長いけれどきっとあっという間に過ぎ去ってしまう一ヶ月が始まった。
朝、目が覚めると隣に乃愛が居た。
乃愛は昔から朝が弱い。今もそれは変わらないようで、私が二人で並んだせいで狭くなったベッドから身体を起こすと、むにゃむにゃと口を動かしてなにか呟いていた。
起こさないようにそっと動きながら朝の準備をする。顔を洗って歯を磨き、乱れた髪を雑に結って朝食を作り始める。乃愛が好きだったのはなんだったかな、そういえばコーヒーは飲めるのだろうか、乃愛のことばかり考えて忙しなく手を動かす。
「おはよう、ございます」
「乃愛ちゃん。おはよう、よく眠れた?」
「はい」
「あ、遠慮してるでしょ。本当は?」
「あまり……」
乃愛は恥ずかしそうに笑いながらぽつりと呟いた。
乃愛の考えていることはわかりやすい。表情豊かという方でもないけれど、私はよくわかった。
「初めて寝るだろうし、二人だと狭いからね。もしあれなら、今日一緒に寝るところ買いに行く?」
「あ、いえ、そんな、申し訳ないです。それに私はこれが良いですし……」
「そう? それならいいけど」
熱したフライパンの上にバターを広げ、溶き卵をそうっと入れる。火を消して、余熱で火を通すようにかき混ぜると良い香りが漂う。美味しそうなふわふわのスクランブルエッグの出来上がりだ。
「コーヒーは?」と聞くと、乃愛は「ブラックでお願いします」と答えた。結構大人びているんだな——なんてことを思いながら、私がコーヒーに注ぐ分の牛乳を冷蔵庫から出してもらうように乃愛に頼む。
私は朝食を盛りつける。葉野菜、トマト、スクランブルエッグ。トーストを二枚。毎日の朝食を二人分。
ワンルームの狭いキッチンで準備をするのは工夫が必要だったものの、そこまで苦ではなかった。
「いつも通りに準備しちゃったけど、苦手なものないかな」
「わあ、すごい。毎日、これを?」
「朝はしっかり食べたいんだよね。乃愛ちゃんにはちょっと重いかな?」
乃愛は首を振った。
「いいえ。由佳お姉さんに朝ごはんを作ってもらえて……なんと言いますか、すごく嬉しいです」
「大袈裟だよ。この位なら何時でも作れるからさ、遠慮せず食べてね——それじゃ、いただきます」
その日は乃愛と一緒に家の中で穏やかに過ごした。
彼女の好きなものを教えて貰って、明日のバイト帰りに買ってくる約束をした。
「お帰りなさい」
バイトから帰ってくると、乃愛が待っていてくれていた。三日も経てば随分と慣れてきたようで、少し緊張していた雰囲気もだいぶ和らいできている。
「ただいま」
なんだか、出掛ける前と部屋の雰囲気が違う気がした。
どこか清々しいような……よく観察すると、綺麗になっている。
「掃除してくれたの? 洗い物まで……」
「はい。お洗濯はお姉さんのものもありますから、自分のものだけさせて頂きました」
「ごめんね、いろいろさせちゃって。でも助かるよ、ありがとう」
私の感謝の言葉に乃愛は喜んでくれた。
帰ってくる家に誰かがいるというのは、それだけで感じるものが大きく変わる。私がいない時はもぬけの殻の、私だけの穴ぐらのようだった部屋は、乃愛という白い光で照らされていた。
「そうだ、乃愛ちゃんの好きなお菓子買ってきたよ。一緒に食べよっか」
「わ……嬉しい、ですっ。これ、地元には店舗がなくて……」
提げていたビニール袋を机の上に置く。袋にはドーナツチェーンのロゴが描かれていた。私も好きなチェーン店だ。
乃愛は結構な甘党のようで、こちらに来たらまずやりたかったものがこのドーナツを食べることだったのだという。幼い頃はあまり一緒にお菓子を食べた記憶がない。親に制限されていたのか、それとも最近になって目覚めたのかわからないけれど……どっちでも良いか。
コーヒーを淹れるためのお湯を沸かす間、乃愛の隣に並んで一緒にスマホで動画を見た。残念ながら、この部屋には省スペースのためにテレビは置かれていないから、暇つぶしの道具といえばスマホくらいしかなかった。
なんでもない夜は一人だったら暇で死にそうになるけれど、乃愛がいるからそんな時間も楽しくなる。あっという間に時間が過ぎて、私たちはふたり仲良くベッドで眠った。
なんだか、暑い。
クーラーが止まってしまっているのか、不用心にも窓を開けたままにしてしまったのか。
背中が暑い。汗をかいてしまっていた。
半覚醒の中で寝返りをうつと、少しだけ快適になる。私はすぐに夢の世界へ導かれそうに——
「お姉、さ——んッ」
私を呼ぶ声と、それに混ざる荒い息で目が覚めた。囁くような小さい声だったものの、乃愛が私を呼んでいるのに気が付かないはずもない。どうしたの——と声をかけようとして、なにか、助けを求めている声ではないことに気が付いた。
どこか
ごそごそと、私の後ろで乃愛が悶えていた。
「由佳、お姉、さ……んっ♡」
耳に熱い吐息が吹きかかった。反射的に身体がびくりと震えて、それに驚いたのか、乃愛は少しだけ離れた。しかし私が何もしないで狸寝入りを続けていると、身体は再び、ひし——と吸い付くように擦り合う。
乃愛の柔らかい身体が私の背中で動く。肩が丸められていて、片方の腕は下腹部に伸びているみたいだった。もう、勘違いもできない。乃愛は自分で自分を——。
「……乃愛ちゃん?」
耐えられなくなった私はついに、声を掛けた。
「えっ……、あ……! 由佳お姉さん、その、なんで」
そっと振り返ると、乃愛は暗闇の中でもわかるほどに頬を紅潮させていた。でもその目は私が起きていたことへの驚きで見開かれていて、口はぱくぱくと開いたり閉じたりしている。なにか言い訳を考えているのか、乃愛の身体は固まって、視線は上下左右へ忙しなく動いていた。
今一度乃愛の姿を眺めてみた。中途半端にはだけたパジャマは色っぽく、月明かりに照らされた白い肌は艶めかしく美しい。
私は少しだけ、距離を詰めた。
「ごめ、ごめんなさい、違うんです、これ、その、違くて」
乃愛の瞳から涙が溢れてくる。
嗚咽混じりに泣きながら、乃愛は言葉を並べていた。
「ごめんなさい、嫌ならすぐに出ていきます。本当に、気の迷いなんです」
悪いことをしているのは乃愛だ。誰が相手だって、寝ている無防備なところを勝手に
それなのに私は——
「なんだって、します。ですから、どうか」
——命乞いでもしているかのように泣きつく乃愛に、興奮していた。
「……嫌いに、ならないで……」
痛いほどに心臓の鼓動が大きくなっている。口腔が乾いて、瑞々しい乃愛の唇を奪いたくなる。理性が徐々に溶けていくのがあたまでわかった。
どうしてだろう?
私のせいなのか。それとも、乃愛のせいなのか。
「……大丈夫、嫌いになんてならないよ。怒ってもないし。乃愛ちゃんくらいの時は、私だって……。まあ、今もそう変わらないんだけど……」
乃愛の涙を指で拭った。
私たちはただの幼なじみ。親戚だ。小さい頃は普通の仲良しで、こんな感情なんて持ったことない。
魔性の色香に惑わされているような気分だった。
「だからさ、どうせなら。私だって、ほら、しばらくぶりだし」
「……するなら、一人だけじゃなくて。私も……一緒にさせてよ」
どうして私はこんなに興奮しているんだろう? 正常な判断ができない。情欲に脳みそは支配されていた。
冷房が止まっていたから?
そうかもしれない。
乃愛のせいで部屋の中が暑かったから?
きっとそうだ。
淫靡な香りが鼻をついて、頭が茹だってしまったから?
そうなのだろう。
♡
タオルケットを頭から被って、乃愛と私だけの狭い密室を作り上げた。酸素が足りない気がする。吐息はさらに荒くなり、湿った空気で髪が張り付く。
「ふ……うっ、は……ッ——♡」
「んっ……♡由佳、お姉さん……っ♡」
淫猥な音がくぐもって聞こえる。この空間の雰囲気に酔って、発情しているのが手に伝わる感触で嫌でもわかる。ちかちかと明滅する視界の中で、乃愛と目が合う。
まんまるでかわいらしいその瞳は、肉欲に溺れてしまっていて、蛇のように細められていた。
「あっ……♡かわいい、お姉さん……♡♡」
「なに、急に……っ♡馬鹿みたいな顔、してるよっ♡たぶん……」
「いいえ——ッ、はあ……♡♡すごく、えっちなお顔……♡♡そそられるわ——♡♡ん、ぐっ、は、あっ♡♡」
ずい、と乃愛の顔が近づいてくる。私の胸元に顔を埋めると、背中を丸めてさらに激しく快楽を享受しはじめた。胸に、乃愛の声が振動になって伝わる。ぞわぞわとしたその感覚は敏感な性感帯を刺激して、私の身体を刺激した。
乃愛に負けないくらい、私も興奮していた。頭がどうにかなりそうだった。でも、一線を超えることは許さない。
喉元を甘噛みされて「あっ♡」と声が漏れた。それに気を良くした乃愛がキスを求めてきたけれど、オブラートよりも薄くなってしまった理性を総動員して、それだけは拒んだ。
「……どうして?」
ぢゅ、と音を立てて首筋を吸われる。それすらも快感に変わってしまって、私は嬌声をあげた。
「ほら……♡気持ちいいんでしょう?♡ん……っ、ね、由佳お姉さん……っ♡♡キスをしたら、きっと、もっと気持ち良いですよ……っ♡♡」
ふるふると身体を震わせながら頭を振る。
こんな、こんな年下の女の子に力でも言葉でも負けるわけない。わかっているのに、私は、声を出せなくなっていた。喘ぎ声で声帯は埋まっていた。
「ねえ——想像、して?」
指を動かすのをやめれば良いのに、やめられない。乃愛に見つめられると、もっと、もっととなってしまう。
「由佳お姉さんの舌……♡あんっ……♡想像するだけで、ちょっとイっちゃった……♡♡貴方の、甘くて、熱くて、柔らかいその唇……♡♡ふふっ♡♡」
乃愛に耳朶を食まれる。
初めて知ったけれど、私は耳が弱いみたい。
「お姉さんの舌を、私が……♡♡たっ——くさん、なぶるの♡じゅるっ、て吸って……んっ♡いっぱい、ぺろぺろ舐めて……♡♡」
こんな状況での乃愛の言葉は、無視するにはあまりにも難しかった。どうか聞き流そうと目を固く瞑っても、むしろ逆に視界からの情報が減って、想像は強固になる。
はっ、はっ——。犬のように荒い息が口から漏れる。
「だめ、だめだからっ……♡」
それでも私が拒み続けると、乃愛は観念してそっと離れた——と思えば、私の耳を舐めて、しゃぶって、蹂躙する。高まり続けた性感にそれはあまりにもつよすぎて、私は息を吸うのも忘れて喘ぎ声を出し続けた。
「乃愛、ちゃ、それだめ♡むり、だめ、だめ、い——ぐっ♡」
「私も、イきます、お姉さん……っ♡♡由佳、お姉さん……っ♡」
気がついたら乃愛は私の上に乗っていた。タオルケットを退かすと、私の上で緩く腰を揺らしながら、嗜虐的な瞳でこちらを見据える。
「ふっ、は……♡ッ、イくところ、みてて……♡」
乃愛の手と指が、激しく動く。その動きに釣られて、私の興奮もさらに高まる。場所が場所だから、相互にオナニーしているだけなのに、まるで繋がっているように見える。
それが、さらに、私を物足りなくさせる。
なんで、どうして。
目の前に、いるのに。我慢なんて——
「はぁ、はぁっ……♡♡きもち、いっ、お姉さんに見られながらするの、きもち……♡♡」
「あ、すごい、えっち……♡あは……ね、一緒に、いこ♡」
「はい……っ♡♡おねえ、さん……っ♡♡」
絶対的な快楽が、四肢の先に向かって広がる。ぴん、と足が伸びる。
「い、く——♡」
「ッ♡♡」
私たちは揃って、声にならない声を上げた。
乃愛のびくびくとした震えが収まると、力尽きたように私の隣に倒れ込む。
「はっ♡ふふ♡きもち、よかった?♡」
「はい……♡」
乃愛をゆっくりと、優しく抱きしめる。身体はほかほかに温まっていて、心地よかった。
なぜか切れていた冷房をつけて、再び目を閉じた。隣から聞こえる規則正しい寝息に耳を澄ませていると、気が付いたら私も寝てしまっていた。
♡
その夜から、私たちの生活は一変した。
朝になっても、想いは静まらない。
冷静になってからどうなるだろう、なんて恐怖を眠るときに抱いていたものの、杞憂だった。
表面上は大きく変わらない。だが——
「お姉さん——♡触れても、良いですか?♡」
「だめ、まだ、だめ」
「——はぁ、そんなっ……こんなに、美味しそうなのに……♡」
昼でも、夜でも、朝でも——時間なんて関係なく、私たちは互いの欲求に従順に従っていた。
今は乃愛に「一緒にシたときのことを思い出しながら、目の前でしてほしい」と頼まれたから仕方なく……。そう、仕方なく、その要求に答えてあげていた。
「んっ♡ちょっと……。のあちゃ、そんなに、みて♡たのしいっ、の……?♡」
「はい……♡お姉さんがたくさん、気持ちよくなっているところを見るのは、すっごく……興奮、しますから♡」
ベッドの上で、私の乃愛は向き合っていた。
明るい部屋の中、乃愛の言葉に責められながら、感じるところを自分で触らせられる。屈辱的なはずなのに、嫌に興奮する。
「あっ……うふっ♡いま、ぎゅうっ——ってなりましたね♡私に見られてるの、嬉しいですか?」
「……っ♡♡うるさいっ、もう、生意気になっちゃって……」
「お姉さん、実況してみてください♡どんな風にしているのか、自分で声に出してください♡」
「はあっ……!? ……へんたい、すけべ。乃愛ちゃんがいけない子になっちゃった……」
「由佳お姉さん相手にはこうなっちゃうみたいです。お願いします♡」
乃愛がこんな子だなんて思ってもみなかった。でも、黒曜石のように美しい真っ黒な瞳に見つめられると、私の抗う気持ちは段々となくなっていく。
はあ……と、きっと気付かれている形だけのため息を見せて、胸の高鳴りのままに痴態の実況を始めた。
「今は、ゆっくり……♡♡ん、ぐっ、触ってます♡外のとこ……♡」
「いつも、触っているんですか? そこ……由佳お姉さんの——」
乃愛の視線がゆっくりと、私を舐めまわすように動く。視線に実体なんてないはずなのに、見られているところの皮膚が触れられているかのようにぞわぞわとする。
ひたり、と乃愛の視線が止まった。私の指先で弄っている秘所が細められた真っ黒な瞳に見据えられていた。
「——いじめられ慣れちゃってる、クリトリス♡たくさん感じて……お姉さん、えっちですね♡おっぱいとかは触らないんですか?」
「……胸は、たまに♡いつもは、こんな——ふっ♡♡バカみたいな格好♡しないから……っ、もう、見ないで♡♡」
「あぁ……♡かわいいっ……♡」
脚を大きく広げて、乃愛が見えやすいようにわざと大袈裟に動かす。声もわざとらしく出す。
私のその姿に興奮してくれてはいるようで、乃愛は楽しそうに笑いながら私の近くに寄ってくる。
「お姉さん、触っちゃだめ?♡」
「だめ、だって♡あっ、いきそ♡もう、おわるからっ、もう♡こんなの、絶対しないから……っ♡♡」
「——ッ♡♡私、はやく、由佳お姉さんのこと気持ちよくしてあげたいの……♡♡ね、触るのがダメなら——」
絶頂が近づく。私は目を瞑った。
イくときに目を閉じてしまう変な癖が、乃愛の目の前でしているときでも変わらず出てきた。
でも、それはあんまり良くない。乃愛は私の理性をもっと溶かそうと、声を使って私のことをさらに気持ちよくさせようとしてくるから。
「——キスは、どうかしら?♡舌をゆ……っくりと絡み合わせるような、えっちなのじゃなくて……♡もっと、愛情を確かめ合うような、軽いキス」
「のあちゃ、だめっ♡それやめて……っ!♡♡♡耳元で、ヤバ♡♡いきそ、いく、いく♡♡」
眉間に皺がよる。奥歯を噛み締めて、これから来る快感に身構える。
イく、いく、いく、乃愛に見られながら——
絶頂に向かって激しく動いていた私の手が、急に、強引に頭上に上げられた。予想だにしていなかった刺激で乃愛に聞かせたくない声が出そうになったけれど、どうにか我慢してうめき声に変えた。
「待って。質問に答えるまでイっちゃだぁめ」
「えっ——」
へこへこと腰が揺れる。
乃愛はそれを見て微かに笑って、私のクリの近くで指を揺らしていた。
「キス、しましょう? それだけじゃなくて……もっと……♡ふふっ……♡」
「あっ、う……♡」
だめだ。そんなこと。
私と乃愛は幼なじみで、親戚で。それ以上の関係を求めちゃいけない。
でも、ちょっとだけなら……いいのかも……。
私の腰が、ひとりでに動く。
やめろ、動くな、そんなことしちゃだめ。
理性を総動員して、頑張ってストップをかけた。
食いしばった口から「ふー、ふー♡」と、犬のように荒い息が出る。
「やっぱり、だめ。乃愛ちゃん、それ以外なら、いいから……♡」
「もう。でも……お姉さんの、そういうところも、好きですよ♡」
乃愛が情欲に塗れた笑顔を私に向ける。その顔は、私を求めていることがすごくわかる顔で、身体がすごく熱くなる。
また、私の耳元に乃愛の口が寄ってくる。そのときに、腕が少しだけ私の身体に当たって身体が震えた。
すぅ——と息を吸って、鈴の音の鳴るような声が、冷酷に私に告げる。
「——イけ♡年下の女の子に見られながら、ひとりでたくさんイっちゃえ♡」
脳みそがちかちかした。
焼ききれそうな興奮が頭の中を駆け巡った。
人生で初めてってくらいの絶頂に襲われて、濁ったような声を出してベッドに倒れ込んだ。
♡
「乃愛ちゃん」
「由佳お姉さん? どうしましたか?」
「乃愛ちゃんって、随分慣れてない……?」
ずっと責められていたのに、横になりながら話す時は、基本的に私が乃愛を腕枕しながら抱きしめている体勢になっていることが多かった。
まるで立場が逆になっているようで、少しおかしい。
「ふふっ。由佳お姉さんの言った通り、変態さんなんですよ、きっと」
「にしても、だよ。ませてるな最近の子は……」
私たちは、ぐずぐずと蕩けるような日々を過ごし続けていた。気が付けば八月の上旬は終わりかけていて、夏の盛りの終わりも見え始めている。
三大欲求を満たす合間で私はバイト、乃愛は夏休みの課題をこなすようなタイムスケジュールが、自然と組まれるようになってきていた。
「……これでいいのかなあ。ちょっと、爛れすぎじゃない……?」
私がぼやくと、乃愛は私の太ももの内側に手を忍ばせて、際どいところを掠るように触り始めた。
「あっ、こら」
「私は、夏の日差しにはあまり強くありませんから。このように、部屋の中で過ごすのが一番好きですよ」
「でも……小さい頃は、一緒に公園行ったり、お祭りに行ったりしてたよ。乃愛はいいの? せっかくこっちまで来たんだし……」
鼠径部が愛撫され続ける。声を出そうになるけれど、緩やかな快楽は絶頂の後の私にも心地よくて、強引に退かそうという気持ちにはならない。
「改めて、こちらに来た理由をしっかり話しておきましょうか」
「そういえば、聞いていなかったね。いいの? その、辛い理由なら無理に言う必要ないし」
乃愛の手が太ももから離れて、私のことをぎゅうと抱きしめた。
「私、逃げたかったんです」
思い出すかのように、乃愛はぽつりぽつりと語り始めた。
「お母さんが居なくなって、お父さんと一緒に暮らすようになって、いろいろ経験しました」
幼い頃の私には、乃愛たちが急にいなくなった理由は聞いても詳しく教えてくれなかった。お家の事情だよ——と、ただそれだけ。
成長してから、母さんとの間でもそのことを話すことはあまりなかった。なんとなく、触れないほうが良いと察してしまっていた。
「お父さんは、おばさん——あ、由佳お姉さんのお母さんにも、たくさん助けて貰っていたんですよ。でも、親の目が届かないところなんて沢山ありますから。ですから、いろいろ……経験、しました。ちょっとだけ、そんな所から逃げたくなったんです」
私の身体に埋められている顔を通じて、睫毛がふるふると揺れているのを感じた。
少しだけ強く、乃愛を抱きしめる。
「ずっと逃げるなんていうのはまだ無理だって、わかってます。馬鹿じゃないですし、お父さんにも迷惑掛けたくないですから。だから、一ヶ月だけ。夏休みの間だけ」
乃愛が身体を離す。私の頬に手を添えて、そっと見つめ合った。
「……ずっと会いたかった人のところに転がり込んで、思い出を作りたくって」
恥ずかしそうに言った乃愛は、すぐに顔を逸らして私に背を向けてしまった。
「……乃愛ちゃんっ!」
真っ白な、小さな背中。
たくさんの苦労を経験してしまった、まだ幼い背中を抱きしめる。
素肌同士だから、なんの障害もない。私たちの体温が混ざり合って、次第にひとつになっていく。
ちょっとだけ違うことにはなってしまったけれど、今の状態は乃愛の希望に沿っているのかもしれない。
……世間一般的には、あまりに悪い状態ではある。でも、私たちだけの思い出……ふたりきりの秘密にするなら、なんの問題もない。
誰にも言えない、微睡みの中の白昼夢
「……なんでもしよう。なんでもしてあげる。最高の思い出を……私たちだけの秘密を、沢山作ろう?」
「……由佳、お姉さん。……はいっ」
潤んだ声が聞こえた。
「それなら早速……。キスしましょう?」
「それはだめ」
「……どうしてですか」
「だめなの、とにかく」
なんでもしてあげたい。
でも、一線を超えるのだけはだめ。
正直、こんなことしているんだからそのくらい……なんて気持ちもある。乃愛はきっとそう思っているのだろう。
でも、その一線を超えたら……後戻りできなさそうで、怖かった。
でも、でも、でも。
今はなんとか抵抗できているが——流されてしまうのも、きっと、時間の問題だ。
♡
大学生は性に奔放になることが多いらしい。
どうしてか?
暇な時間が多いから。
けれど、誰とやっても楽しめない私は、そうなることはないと思っていた。
時間はいつでも流れていて、楽しい時間となるとそれはさらに早くなる。
乃愛と過ごす時間も、次第に終わりが見え始めてきていた。
そんな中、乃愛のことも徐々にだけれど理解することができていた。
「お姉さん——」
「お姉さん——♡」
彼女は、ねだる時は私の名前を呼ばない。
「だめ、ですか?」
潤んだ瞳でもの欲しげに私を見つめるだけ。
「由佳お姉さん?」
「んふっ……♡ 由佳、お姉——さんッ♡」
乃愛が私の名前を呼ぶ時は、既にやると決めている時だけ。
「——しても、いいかしら?」
その時は、諦めさせるのに一苦労する。
「だめ」
「だめじゃわからないわ。何がダメなんですか、ねえ、由佳お姉さん」
「とにかく——だめったら、だめなの」
「もう、つれないわね」
かわいらしく乃愛は言う。真っ白な肌に朱色が差した頬を少しだけ膨らませるその様子は、抵抗するのすら一苦労になるくらいだった。
乃愛とはまだキスをしていない。触ることも、許可していない。
盛り上がって少しだけ肌が触れることはあっても、意識的に触れることは許していなかった。
「由佳お姉さん……♡」
今日は、目隠しをしていた。
乃愛は攻めるほうが好きらしい。私は……攻められるほうが、好きらしい。
「……私、貴方のことをすごく……。すぅっ——ごく、愛しているの。可愛らしいところを沢山見せてくださいね……♡」
真っ暗な視界の中、乃愛の声だけを頼りに身体を触る。視界が無いだけで、恐怖と興奮が倍増する。
「乃愛、ちゃん……っ♡だめだよ♡勝手にさわったりしたら……だめ、だからね♡」
ぞくぞくとする。
背徳感なのか、期待なのか、恐怖なのかわからないくらいに、あるいはそれがごちゃまぜになっているのだろう。
「……ッ♡かわいい……♡お姉さん、おっぱい、触ってみてください。くりくり……って先端を触って、ね……♡♡」
乃愛が私の指をとって、胸の先端へ運ぶ。手首を固定されて、早く触るようにと促される。
「んっ♡ふぁっ♡きもち……♡乃愛ちゃん、きもちいっ……♡♡」
「あ……ふふっ、たくさん乱れちゃって……♡はあ……興奮、しちゃいます……♡♡」
無意識のうちに、空いた手でもっと気持ち良いところを触ろうとするけれど「まだ、ですよ♡」と耳たぶを喰まれながら囁かれて、腕を頭の上に持っていかれた。
「もっと、もっと焦らしましょうね、お姉さん……♡」
「いじ、わるぅっ……♡私、ちくびだけじゃ♡イ——け、ないっ、から♡」
もどかしい。
絶頂に近づいているのに、決定的なものが足りない。
乃愛にバレないように腰を揺らして、ブランケットに擦り付ける。足を伸ばしたり、下腹部に力を入れたりして、快楽を与えようともがく。
気が付いたらそれに一生懸命になっていて、私はすごく無様を晒していたらしい。
「……ふふっ♡お姉さん、バレバレですよ……?♡」
「へ♡あっ♡うそ、みないで♡やだ……♡♡乃愛ちゃんに、こんな姿……見られたくない……♡♡」
「かわいいですよ♡♡もっとたくさん、お姉さんのえっちな姿見せてください♡♡」
うずく。
もう、むり。
私がだめなら、もう、やってもらうしかない。
これは一線じゃない。
ただの触れ合い。前戯みたいなものだ。オナニーの延長だ。
アイマスクをずらすのは乃愛に止められず、私のその動作を何も言わずにじっと見つめていた。
それは獲物を見つめる蛇のようで、視線をずらして情けない声を出そうとする私はさながら蛙だった。
「ね、ねえ……♡乃愛ちゃん♡」
「どうしたの? 由佳お姉さん」
「……さわっても、いいよっ♡♡」
大きく手を広げる。
私たちが抱き合う時の、合図になってしまう。
幼い頃の思い出を、おとなの感情で上塗りしてしまう。
それでも、我慢できなかった。
「キスは?」
「それはっ……♡まだ、だめ……」
乃愛はくすりと笑った。淫魔のように優艶なその仕草は、私の期待を高めるのには十二分だった。
はやく、はやく——声に出したいのを我慢しているのに、乃愛は、ゆっくりと動く。
「……まず一歩、ですね。お姉さん♡ それじゃあ——」
乃愛の舌が私の耳を這う。
直接的に鼓膜に届けられる振動は、頭の中から響く声のようで、彼女の言葉の全てが私の頭を侵食する。
「んんっ♡♡♡」
舐めて、食んで、なぶって。
私の頭が身動きできないようにもう片方の耳を抑えながらされるから、私は逃げられない。
「まずは、お耳……♡」
耳の中に舌が侵入してくる。
じゅる♡ぬる♡ずるる……っ♡
目を閉じて、手を固く握る。肩がこわばって、奥歯ががちがちと鳴る。
「お姉さんの弱いところ……。ふふっ♡♡きもちいい、ですか?♡♡」
「きもち、きもちっ……♡♡ッ……♡♡」
だめ、やばい。
瞼の裏がちかちかしてきた。乃愛の吐息と体温と、それにずっと寸止めになっていたせいで、限界が近い。
「あ、だめ、耳でイっちゃいそ……ッ♡♡のあちゃ、ストップ、すと——ンッ♡♡」
「ぷはぁっ♡♡まだ、ですよ、由佳お姉さん♡♡」
また、寸前で止められる。
荒い呼吸を繰り返して開いたままだった口から、涎が垂れた。乃愛はそれを拭って、指をぺろりと舐めた。
「これからたっぷり……いじめますから♡たくさん焦らして、焦らして、お姉さんがへこへこ♡えっちにお願いしたら……♡」
おなかをぐっ……と押された。
私がしらないところだった。感じたことのないところ。未知の、一人だけじゃ絶対にわからないところ。
「おっ♡」って、ばかみたいな声が出た。
「イかせて、あげます♡♡♡」
私が……おねだりできたら、イかせてもらえる。
すぐにでも、乃愛に媚びてしまいそうだった。でも、でも——まだできない。……まだ。
はずかしくて、そんなこと……。
「次は……そうだ♡」
う~ん、と顎に指をあててかわいらしく悩んでいた乃愛が、私からほんの少しだけ離れた。
すると、するすると服を脱ぎ始める。
「あついから、私も脱いじゃいますね♡」
「あっ……♡」
「やぁん、えっちな目……♡♡お姉さん、触りたいですか?♡」
乃愛の下着姿が目の前にあった。
見るのは初めてじゃないし、裸だって見ている。それでも、明るいところでよく見るのは初めてだった。
ごくり、と喉が動く。
乃愛を触る? 私をずっといじめてきた、この子を……。
心のなかに嗜虐心が芽生えた。
「えっ……♡う、うんっ、私も、乃愛ちゃんのこと……」
「ふふっ……♡♡」
乃愛が私を起こそうと、手を伸ばして——
「だめでーす♡」
「ッ、そこっおっぱい♡♡やっ、なんでっ♡♡自分でさわるより、あっ、やめっ♡♡のあちゃ♡♡」
その手はそのまま、私の胸を無造作にいじめ始めた。
「お姉さんは、私にいじめられるだけ♡♡やり返そうなんて思わないでくださいね♡♡」
「————ッッ♡♡♡」
「えっ、うそ……♡ちょっとイッちゃいました?」
ちがう、ちがう。だめっ、私はこんなのなんかでっ♡♡
身体中に広がる熱を抑えようとしたけれど、無駄だった。
乃愛の言葉がささりすぎて、溜まりきった快楽がほんの少しだけ解放されてしまった。身体を微かに震わせて、顔が真っ赤になっていくのがわかる。
「……へんたい♡♡♡年下の幼馴染に責められて、言葉だけでイッちゃうんですねっ♡♡♡はあ……本当に——」
私の痴態を楽しそうに眺めていた乃愛が好き勝手に喋っている。
ため息をついて、私を見つめる。すると、その真っ黒い瞳を一際暗くさせて——
「どうして、そんなに私を唆らせるの?」
そう、囁いた。
「もうやめます。手加減なんてしないわ。貴方のこと、いっぱい……貪っちゃうから」
乃愛が私の上に覆いかぶさる。その際に、股の間を割るように膝が差し込まれた。
ぐっ♡と押されると、ぬちゅ……♡と粘っこい音がした。
私に聞かせるように、乃愛はそれを繰り返す。「んっ♡」とか「うっ♡」とか、我慢できなくて声を出すたびに乃愛は気を良くして激しく続ける。
なんの準備もなかったら痛いだけだった。でも、興奮で痛みは快楽に変わるし、摩擦はほぼなくなったそこでは、そんな雑に見える攻め方でも気持ちよさしかなかった。
「気持ちいい?♡」
「きもち、いっ、乃愛ちゃん、クリ、つぶさッ——ンッ♡♡つぶさ、ないで♡♡」
「ふふ……♡」
はあ——はあ——。
息も絶え絶えになるくらいに、鳴かされ続けている。
私の懇願が伝わったのか、乃愛は足を動かした。その代わりに手を伸ばして——
「い、や、だ♡♡♡」
ぎゅッ——
私の、一番気持ち良いところを、つぶされた。
「あ——ッ、だめだめだめ♡♡♡」
でも、強すぎてもイけない。
じゅくじゅくと、絶頂に向けて熱を溜め続けている身体が、限界を超えて熱くなっていく。
「かぁわいい。お姉さん、撮ってあげよっか?♡♡すっごい……かわいいわよ♡♡」
「だめ、それは……ッ♡」
それは、さすがに……。
ちょっとだけ、ずっとそれを乃愛に見られることを考えてしまうと、ちょっとだけ。良いのかな、なんて思ってしまうけれど。
「冗談ですよ♡次は……こっち♡」
「……あっ♡ん……ふ、うッ♡」
強すぎた刺激が一転して、私は緩やかな心地よさに襲われた。
乃愛がその舌で、私の先端をゆっくりと舐めていた。
吸って、舐めて、時折ちゅっ♡としている。
「……くッ♡あ……ふふっ♡♡」
かわいくて、つい撫でてしまう。
頑張って胸に吸い付く乃愛は私の庇護欲を掻き立てた。
「……由佳お姉さんは、本当に……ッ♡♡」
「えっ——んんッ♡♡♡」
じゅッ——。
強く乳首を吸われる。穏やかな刺激が続く中急に訪れたそれは、私の理性をぐずぐずに溶かしていく。
「お姉さん♡♡そろそろ……♡♡」
身体を起こした乃愛が、私の脚を開いた。
なにをされるんだろう。なにをされるかわかっている。
ちょっとこわい。ばかみたいに期待している。
心臓がばくばくとはねている。
期待した私の身体が、考えていることとは無関係に勝手に動く。
乃愛の指がゆっくりと動く。
クリの周りを撫でた。そっと、割れ物に触れるように。
それだけで、私はすこしだけイってしまった。なかがひくひく動いている。
乃愛は黒い瞳を細めてそれを眺めている。
「おねだり♡♡」
「えっ……♡」
「おねだり、してください♡♡」
いやだ、そんな変態みたいな、私、そんな人じゃないし。もっとクールなタイプだから。
自分からイかせてくれって媚びるようなこと絶対——
「——のあちゃっ♡♡おねがいしますっ♡♡イかせて、イかせてくださいっ♡♡」
エロ漫画じゃないんだから。乃愛はもう、ませてるんだから。そういう作品をたくさん読んでるんだろう。
しっかり教えてあげないと。現実じゃそんなことできないんだって。
「あうっ♡♡なんで、指、逃さないでっ♡♡もう、乃愛ちゃんのばかっ♡♡そんなことされると、イけないじゃんっ♡♡♡」
腰が揺れて、私の秘所を見せつけるように乃愛の指にすりすりとするのも、わざとだ。
こうした方が盛り上がるからであって、ただの演技だ。
「……ふふっ♡♡お姉さん、こっちは?♡」
「へっ……♡あッ♡なか、んんんッ——♡♡」
ナカを触っても気持ちよかったことなんてない。
だから、これは演技。
上のほうをぐりぐり♡とされて、腰が抜けそうになって、私の口からばかみたいに大きな声が出ちゃうのも、演技。
「開発したら、こっちも楽しめそうね……♡♡それじゃあ、そろそろ——」
乃愛が私のクリの目の前まで顔を近づけた。
「えっ、うそっ、だめ♡♡それ、だめだからっ♡♡乃愛ちゃん、だめだよっ♡♡」
「……うるさいっ♡♡」
乃愛はナカを攻める指を緩めることなく、私のクリをぱくり♡と口の中に含んだ。
舐められる。ころころと、舌の上で転がされる。そのたびに身体が大きく跳ねる。
吸われる。私はもう限界だった。演技、演技、そんなのない。そんな余裕ないっ♡♡♡
「あ、イく、イく、イきます、のあちゃん♡イきます♡♡♡」
「いいですよ♡♡たっぷり、イってください♡♡♡」
「フーッ♡ふ……ッ♡♡♡イ——ぐっ♡♡♡」
ちかちかと、目の前で花火が弾けた。
♡
私の理性はもう壊れちゃったの?
そう思うほどに、歯止めが効かなかった。
一度身体を重ねてしまってから、私たちは何度もシていた。朝も、昼も、夜も。リビングはもちろん、お風呂で、キッチンで、玄関で。
外で求められたこともあったけれど……あれはもう二度としない。乃愛は楽しそうだったけれど、私は気が気じゃなかった。……でも、求められたら断れないんだろうなあ、という予感がある。
こんなに繰り返しているけれど……これはセックスと言うのだろうか?
同性同士だから、なんとも言えない。触れ合うし口で刺激するし、でも、性器同士を合わせたりキスをしたりはしない。
とすれば、ギリギリ……セックスではない?
よかった。私はまだ理性を保てている。
乃愛と過ごす時間ももう少し。最後の一線だけは超えさせないようにしないと。
起きた姿のままベッドに寝転んで、スマホをだらだらと見ながら考え事をするそんな朝。スマホに急な通知が届いた。
「あー……めんどくさいな」
相手は……どうしていまさら。
私のぼやきに気が付いた乃愛が、こてんと寝返りをして顔を向けた。
「どうかしましたか?」
「うんとね……今夜、ちょっと家空けるかも」
「急なご予定が?」
乃愛にメッセージアプリの画面を見せる。
「うん、ほら」
やましいことはない。というか、乃愛と付き合ってもいない。
……ちょっと、えっちなことはしているけれど。仲の良い幼馴染なのには変わりない。
曖昧な関係の相手とのメッセージを見せてもまあ、大丈夫だろう。
「……誰、ですか」
「まあ一応……恋人、かな。自然消滅待ちだったのに、急に連絡よこしてきて」
うぶな乙女でもない。大学生なんだから、それなりに恋愛も楽しんでいた。
だけど、私は連絡がマメな方でもない。付き合っては気が付いたら消滅しているっていうのが多かった。
今のこの子だってそうだ。
「適当に相手してくるよ……面倒だけど」
はあ、とため息をつきながらスマホを放り投げた。
面倒だなぁ。もう二ヶ月は連絡を取っていないし、大学で顔を合わせても互いに関わらないようにしていたのに。周りの友人からは、とっくに別れてると思われているだろう。
でも、放っておくのも忍びない。きっぱりと告げてあげよう、友人としてなら仲良くなれそうな子だから。
「……お姉さん」
「なあ……に?」
乃愛の声に反応すると、唇を奪われた。
ふに、とみずみずしい乃愛の唇が私に触れる。
久しぶりの感触だった。
「え……んッ!?」
「まだわかっていないようですね」
声を上げても乃愛は離れない。
私が力いっぱい押しのけようとしても、細い腕からどんな力が出ているのか、びくともしない。
「私がどれだけ貴方を手放したくないのか」
一言喋って、長くキスをされる。
この不可解な状況を理解しようとする脳みそに酸素が持っていかれて、次第に足りなくなっていく。
「私がどれだけ貴方を独り占めしたいのか」
大きく息を吸うと、舌をねじ込まれた。
その動きは快楽を与えるためのもので、私の身体から次第に力が抜けていく。
息を吸いたい。でも、今度はもっと長い。
首を絞められているかのような気分で、窒息寸前。
「私がどれだけ——貴方を愛しているのか」
うつろになった脳みそで、乃愛の言葉をなんとか理解しようとする。
私を、ずっと、ああ——違う、私がずっと目を逸らしていた。乃愛はたくさん、アピールしてくれていたのに。
「由佳お姉さんは、悪い子ですね……。わからせて、あげる」
これは、報いだ。乃愛をないがしろにした、その報い。
今から私は、目を逸らしたせいで膨れ上がった感情のすべてを、受け止める。
♡
蹂躙されていた。乃愛の少し長く、少し小さい舌が私の口腔をなぶる。
舌を吸って、舐められた。口の上のところをぞりぞりとされると、痺れるくらいに身体がぞくぞくする。
「——ッ、はあっ♡はあっ♡」
「フッ……まだ」
「ンぅっ……♡♡」
僅かに口を離す瞬間に大きく息をする。
またすぐに、乃愛による蹂躙が始まる。
「……そうだわ、これ、やってみましょう」
「……へ?♡」
そう言って、乃愛は私の両耳を塞いだ。
そして、また同じように口の中に舌をねじ込ませて、わざと音を立てるようになぶり始めると——
「あっ♡うううっ♡♡なにぃ、これ♡♡すごっ♡んんっ♡脳みそ、んむっ♡犯されてるみたいっ♡♡♡」
「……まあまあね♡」
艶やかな水音が頭の中を支配した。ほんの一瞬だけ、私の反応を楽しむだけにやったようで、すぐにやめられた。
私の上に乗った乃愛が、一息付くように私を見下ろす。
「お姉さん♡♡」
甘い声がした。
「見て……?♡♡」
私の顔の前に、布が落ちてきた。乃愛のパジャマだ。
その服を退かす間にも、乃愛は服を脱ぐ。私が視界を取り戻すときには、もう、一糸纏わぬ姿になっていた。
何度か外に出たのに、日焼けはどこにもない。雪よりも白くて、生クリームよりも滑らかだった。
しなを作る乃愛は、私を誘惑していた。
「ふふっ……♡触りたいですか?♡」
触りたい。
私がたくさん鳴かされるように——ううん、少しだけ違う。
乃愛を慈しむように、たくさん、気持ちよくしたい。
「うん……乃愛ちゃんの気持ちよくなってるところ、見たい」
「……まあ♡由佳お姉さんはいつも、私のことばかり……♡♡」
乃愛はいらずらっぽく笑うと、私の上から退いて、隣に横になった。
もう一度キスをされると、指で私の身体を服の上からなぞって言った。
「脱いでください♡♡裸になって、肌をぴったりと合わせて、互いの体温を感じ合いましょう♡」
乃愛が私の頬に手を伸ばす。親指で愛おしげに唇を撫でられた。
「……私の愛を、知ってもらいたいんです♡」
そう言われたら、断れない。断るつもりもないけれど。
どうせなら、乃愛にも興奮してもらいたい。
うまくできるかわからないけれど、私は乃愛に見せつけるように、少しずつ服を脱いだ。
でも、乃愛のいたずらが邪魔をする。さわられたり、キスされたり。
「んっ、こらっ♡♡いたずら、されたら——ッ、脱ぎにくい、でしょ♡♡」
「ちゅっ♡んーん、ちがいますよっ♡じゅっ♡今のうちに、しっかり……跡を、付けておかないと♡♡」
乃愛は、たくさんの場所にキスマークを付けていた。自分のモノであると誇示するかのように、見えるところにも、見えないところにも。
「これから、たっぷり……二人で、気持ちよくなるんですから♡♡」
服を脱ぎ終えると、そんな言葉が耳に入る。
最後に残った下着が床に落ちる。
つい、私は聞き返してしまった。
「えっ……それって……」
「……♡♡」
乃愛は答えず、私を押し倒した。
肌が重なる。私より少し冷たい乃愛の体温で産毛立つ。
無造作に胸を触られた。でも、もう何回もしていることだから、的確に快楽を与えられる。
「私だって、余裕がないんです♡はあ、早く——うふっ♡」
びくびくと感じてしまう無様な私を眺めながら、乃愛も一人で自分のことを触っていた。
何を思いついたのか、私の手がとられた。
「——早く、貴方を、犯したい♡♡」
あつかった。たくさん濡れていた。
私よりも、ずっと。乃愛は私の痴態を見るだけで、たくさん興奮していた。
初めて乃愛のそこに触った。
「あっ♡……えと、乃愛ちゃん……。その」
でも、きっと。
これからもっと、すごいことをする。
「優しく……ね?」
期待で心臓がどきどきした。
あるいは、恐怖なのかもしれない。
「——ッ♡♡善処します♡」
乃愛が少しだけ身体を動かして、脚の間に入り込んだ。
私のからだの奥の奥が、その動きだけでぐず……♡と期待を持ってしまうのがわかってしまった。
「あら……♡すっごい……濡れてる……♡♡」
「や、あんまり、みないで♡♡恥ずかしいから♡♡」
「たくさん感じてくれた証でしょう?♡嬉しいです♡」
乃愛も脚を開いた。
私たちがつながる。これはもう、言い逃れできない。
ゆっくりと、恐る恐る進んだものの、一度触れてしまえばあとはなんともなかった。
「お姉さん……ッ♡由佳、お姉さん……♡」
「乃愛……ちゃん……♡♡」
乃愛がずり……と腰を動かす。
脳天が痺れるようにうずく。
私はもう、その感覚だけで、だめになった。腰が動かない。なすがままだ。
「ひうっ♡♡」
「あんっ♡これは……んっ♡きもち、ですね♡ちょっとしか、うごいて……ないのに♡」
ぐちゅ♡ぐちゅ♡
私たちが繋がる場所から、うるさいくらいにえっちな音が響く。
乃愛もたくさん感じてくれていて、それが私をもっと気持ちよくする。
「ふー、んふっ……♡♡もっと、うごき、ます……よっ♡♡」
動きが早くなった。ぱちゅん……♡とぶつかり合うような音も混ざり始めて、その時は、私のでっぱりが、乃愛のそれでぎゅ♡♡とつぶされていた。
前と後ろにうごく。上と下にうごく。
「あっ、んっ♡♡こすれて、きも、ぢっ♡♡」
「あはっ……。お姉さん、すごいお顔……♡♡」
乃愛が楽しそうにわらった。
胸がきゅんきゅんと疼く。おなかの奥がぐずぐずと疼く。
乃愛に対する感情が、いろいろと混ざり合っていく。私の大事な幼馴染。私をたくさん気持ちよくしてくれるひと。私が守りたい女の子。私のことをいじめてほしいひと。
「ねっ♡乃愛ちゃんも、気持ちいいっ?♡♡」
「はい♡ふっ、んっ♡♡すごくっ、気持ち良いですっ♡♡」
理性はとっくのとうに消え去っていて、発情なんて言葉じゃ言い表せないくらいに感情が高揚している。
乃愛と手を繋いだ。
乃愛のほうが熱かった。
「あぁっ……♡♡その、お顔♡♡由佳——お姉さんッ♡♡」
「えっ、ッ♡なにっ♡の——あ゛っ、ちゃっ♡♡」
乃愛がまだ本気じゃなかったことを、私は思い知る。
何度もキスを繰り返し、身体も心もぐちゃぐちゃにされた。無防備になってしまった身体と心を乃愛は容赦なく犯し、彼女無しでは生きていられないようにしようとしているのかと思うほど、快楽を刻み込んでくる。
「好きですっ♡♡ずっと、好きでした……♡♡」
「えっ、急に……♡♡ぐッ——その、うごき、やばいっ♡♡のあちゃん、それすきっ♡♡」
はじめて、乃愛の口からしっかりとその言葉を聞いた。今まで、身体を重ねているときでも直接的に私に好意を伝えることはなかった。
なにがすき、どれがすき。私が悶えるのがすき、私がぐじゅぐじゅになってしまうのが好き。
そういうことは言われても、私のことを好きとは言われなかった。
「ずっと、小さい頃から……♡♡」
「わかった、わかったからっ♡♡はなし、聞かせてっ♡♡」
乃愛の想いをしっかりと聞き届けたい。そう思っているのに、乃愛の攻めが緩んだり、止まったりすることはない。
胸の先端の小さな突起が、乃愛の口に含まれた。舐めて吸って甘く噛んで、反射的に私の身体は震えて、私たちはもっと触れ合う。
「私の、んぅっ♡手をッ、はあ♡引いて、あッ♡前を、ぉッ♡歩いてくれた、お姉さん……♡♡」
「うごきとめてっ♡♡あたまぐちゃぐちゃになるっ♡♡」
私とおなじように、乃愛も限界が近づいているようだった。
うわ言のように私との思い出を語りながら、一心不乱に私を貪っている。それがかわいくって、たくさん私を求めてくれているのがすごく伝わってきて、さらに興奮が掻き立てられる。
「すき♡」
「すきっ、わたしも、すき、だからっ♡」
どくん。
その言葉を聞いて、心臓が跳ねる。
「すき♡♡」
「やめてすきやめてっ♡♡あたまおかしくなるっ♡♡♡」
どくん。どくん。
頭と心がこわれそう。
「すき♡♡♡」
「あッッ——♡♡♡むり、もう、イく、イくイくイく……ッ♡♡♡」
もうだめだ。
乃愛に言われるだけで、勝手にイきそうになる。
「一緒にイきましょう……ッ♡♡お姉さん——♡♡♡」
情欲に塗れた声の中で精一杯の理性と愛情を込めながら、乃愛は私に囁いた。
「愛してます……ッ——♡♡♡」
「んうッ——!!♡♡♡♡」
唇が重なる。ふるふると震える瞳が、私の眼前にある。
黒い瞳に私が映っていた。
目の前の彼女に堕ちた、ばかみたいに幸せそうな私が映っていた。
キスを繰り返して、再び横になった。
息を切らしながらブランケットを乃愛に被せて、また何度かキスを交わした。
「由佳お姉さん」
「はっ、あっ……な、なに……」
「お誕生日、おめでとうございます」
「……ぁ、そっか……。今日か。だからあの子、連絡——ひうっ♡♡」
「ふふっ。だめですよ、私以外を考えるのは」
「わかっ、たわかったからぁ……っ!♡やめ♡そこ、おっ♡♡いぐ♡それだめやばイ、く——ッ♡♡♡♡」
もう、私はだめだ。
乃愛にめろめろだった。
♡
「今日は何時に出るの?」
「そうですね、18時くらいにここを出る予定です」
楽しい時間は、本当にあっという間だ。
私が乃愛と過ごす日も、ついに最後になっていた。
「そんな時間まで? 新幹線でも、あっちに着くのは夜遅くになっちゃうと思うけど」
「大丈夫です。お父さんが迎えに来てくれますから」
「新幹線乗った時と、最寄りに着いた時と、お家に着いた時。私にメッセージ送ってよ」
「はい。わかりました」
この一ヶ月で、たくさん思い出を作ることができた……と思う。
私的には、もっと、健全な思い出を作ってほしいところではあるけれど、乃愛は満足そうだった。
でも、どうせなら最後の日くらいはなにか特別なことをしたい。今まで行ったことのないところに行ったり、もっと……。
もっと。例えば、
ぞくり、と身体が震えた。かぶりを振って、その考えを追い出す。
「今日さ、最後の日だけど、どうする? どこか出かけようか」
「由佳お姉さん」
「っ……。うん、と、大学の紹介でもしようか? 多分、乃愛ちゃんなら勝手に入っても大丈夫だし」
乃愛もすぐに進路のことを考えないといけないはず。
もしかしたら、もう既に考えているかもしれないけれど、実際に大学に入ったら色々とイメージも掴めるだろう。
「由佳お姉さん?」
「そう、だ。近くに美味しいレストラン開いたんだよね。そこに、お昼に——」
スマホを取り出して、家からレストランまでの道を調べる。口コミもいい感じだった。
乃愛が画面を覗き込んで、横目で私を見つめてきた。
真っ黒い、乃愛の瞳。私を呑み込むような黒。この一ヶ月、ずっとずっと見つめられた。
パヴロフの犬——簡単な古典的条件づけ。見られたら、逆らえない。
液晶と私の間に割り込んで、そのまま肩を押されてベッドに倒される。
「由佳、お姉さん……♡」
「あっ、やめて、その目……。だめ、だめになっちゃうから」
「期待、してますよね♡いいんですよ、私だって——」
じゅる——♡♡
口付けをした瞬間に、舌が入り込む。私は抵抗せずに従順に、その侵入者を迎え入れた。
私も下を使って奉仕する。そっと、優しく、いつも気持ちよくしてくれるひとに、恭しく。
「貴方と身体を重ねたいの♡もっと、もっと……しましょう?♡」
「ふッ——う♡だめ、さわっちゃ……♡♡」
乃愛の手がするすると私の服の間に入り込む。無遠慮に下着をずらすと、そのまま直接私の性感帯を刺激された。
「だめ? なにがだめなの? 気持ちよくなること? それとも、私に溺れること?」
だめなのはそれじゃない、勝手にやるのがだめなんだ。
乃愛はそんなこと気にしてない。私が許してくれるってことを知っているから、なにもだめだって思っていない。なにを言ってもわかってくれない。
それに、いくら私が、どれほど抵抗しても——
「だめじゃない、でしょう?♡」
「は、い——ッ♡♡」
「言ってください。『もっとしてください。乃愛ちゃんに、もっと虐めてもらいたいです』。ほら」
命じられれば、従ってしまう。
「んっ♡そこだめ、弱いところだから——ッ♡♡んッ♡言います♡言います、からッ♡♡♡」
私はもう、だめなんだ。
この一ヶ月で教え込まれてしまった。私の身体の隅から隅まで、乃愛の知らないところはない。
「も……もっと……♡」
どこを触ったらどうなるか、どんな風に言ったらどうなるか。
全部——全部、知られちゃった。
「もっと、してくださいっ……♡乃愛ちゃんに……もっと、虐めてもらいたい……です♡♡」
ばかみたいな言葉が、自然と出てくる。
「ふふっ……。うふふふっ♡♡」
乃愛の求める言葉は、なんだってわかった。
私の求めることも、乃愛はわかってくれる。
「よくできました♡♡たぁくさん、虐めてあげますね♡由佳お姉さん♡♡」
もう、考える必要もない。
白昼夢でも見ているかのように、きもちよくなってしまえばいい。
♡
「由佳お姉さん♡ふふっ♡♡」
「あぅ……♡そんなに、みないでよ」
見つめられる。
「見ますよ♡何度見ても、どれくらい見ても飽きませんから……♡」
「私は……♡みられるだけでやばいんだから♡」
視線がいちばんやばかった。
目が合うだけでぞくぞくする。外でも、中でも、どんなときでも。
「……ッ♡はあ——落ち着いて、私。時間はたっぷりあるんだから、楽しまないと……♡……お姉さんっ♡」
「わっ、な、なに……♡ひゃっ♡♡」
おなかを吸われる。
大事な臓器がすぐ下にあるところ。なぜかどきどきする。
「おへそも気持ちいいんですよね♡♡でも、今日は最後ですから……♡♡」
「あっ、みみっ♡」
「たっぷり、おねだりしてください♡♡
「え、朝……は?」
「たっぷり——時間をかけて。ぐずぐずにしてあげます♡♡どこが、いいですか?♡♡」
「えっと……♡きゅうに、いわれて——んあっ♡♡ちょ、んっ♡♡ふっ、だめ、さわらないでっ♡」
「はやく♡♡今も時間は過ぎてるんですよ♡♡」
「じゃ、じゃあ……♡♡」
「はい♡」
乃愛の耳に口を近づけて、ようやく聞こえるくらいの声でそっと囁く。すっごく恥ずかしいから。
汚したくないから、服を脱いだ。
「いっぱいぎゅう——ってしながら、ふふ……♡♡ナカ、触ってほしいんですね♡♡」
「やっ、あっ♡♡はずかしっから♡♡♡何回もっ、んんっ♡言わないでよ♡♡」
「でも……♡♡きゅんきゅんっ♡♡ってなりますよ♡♡」
「やあ……♡」
「言葉で責められるの、好きですもんね♡♡甘やかされるのも——♡♡」
私のなかが、一番ふかいところが、乃愛の細長い指でぐちゃぐちゃにされる。
ぜんぶきもちいい。どんなに動いても、すごく気持ち良い。
「——お姉さんのふわふわのおまんこ、すっごく、あったかいですよ♡♡」
「ひゃっ♡♡」
「とろとろで……指をいれると、ぎゅうっ……♡♡って。ほしがりさんの、お姉さん♡♡」
乃愛が指を抜こうとすると、名残惜しそうに私のそこはずっと離そうとしない。
それがすごく恥ずかしいのに、乃愛は楽しそうに教えてくれる。
「お姉さんのすきな、これもしちゃおうっと♡」
ぐちゅぐちゅ指を動かしながら、乃愛が私の脚を開いた。
「あっ♡♡だめっ、それ♡」
「だめなわけ……ないでしょう?♡♡」
身体を動かして、当然、狙いは私をいじめること。あつくてやわらかくて真っ赤な舌で、たくさんいじめようとする。
「ひっ——♡♡うッ♡♡」
ちゅっ♡とかわいい音を立てて吸われた。
「んっ♡……ふふっ、かわいい、ちっちゃい、お姉さんのココ……♡♡」
じゅるっ♡ずずずっ♡♡って下品な音を立てると、乃愛は私のクリに指を伸ばす。
「剥いてあげますね♡♡」
「あっ、ちょっと……♡♡」
身体が震えた。
乃愛は剥き出しの敏感なクリに舌を伸ばして——動かさない。
「はっ、えっ、のあちゃん……♡えと、その、べろ……♡なんで、ずっと……♡♡」
「……♡♡」
「あっ、ね、ねえ、なめて、くれないのっ?♡♡」
にっこりと笑っていた。
「ううっ……♡♡」
私が腰をうごかさないと、だめなんだ。
もう、ひどい。変態なのはどっちなんだか。
この、最低なサディスト。私をいじめてなかせて、そうすることだけすっごく上手になっちゃった、私の大事な乃愛ちゃん。
「んっ、ふーっ♡♡あっ、もうすこし、もうすこ——」
ゆらゆらと震える腰を頑張って上げて、なんとか乃愛の舌の目の前までもっていく。
「ずるるっ♡♡」
「んんっ♡♡♡やだ、むり、いくッ♡♡」
でも、当然乃愛はされるがままにはならない。
私の太ももを両腕で掴んで逃げられなくすると、たくさん吸ってきた。
びくびく震えてたくさん震えて、たくさんイった。
乃愛が思い出したように時計を見た。
「あっ、もうお昼ですか。あっという間ね……♡」
「う゛っ……♡♡おっ♡のあ、ちゃっ……♡♡」
「あはっ……♡♡どろどろになっちゃった♡」
身動きできない。
いつの間にか立っていた乃愛が、ミネラルウォーターをごくごくと飲んでいた。
たくさん喘いでからからになった口を開くと、乃愛が口移しでのまそうとしてくれる。
「ちょっと休憩しましょう?ほら……♡♡」
「んっ、こくっ」
「うふっ、お上手、お上手……♡」
こくり、こくり。
冷たい。その奥に、あつい乃愛の舌があって、ちょっとだけ触れる。
一回、二回。
もう……ちょっとじゃない。
「ん——むっ♡♡」
「じゅるっ♡ずるるっ♡♡」
「——ッ♡♡……、……っ!!♡♡♡」
喉の奥まで舌を挿れられる。唾液が全て奪われて、私の口はまたからからになってしまった。
「ぷはっ♡♡おいしそうだったから……つい♡」
ぺろり、と真っ赤な唇を舐めた。
「次は……♡っ、ねえ、お姉さん♡」
私の上に乗った乃愛が、腰を擦り付けるように腰を揺らし始めた。
「私、やっぱり、我慢できなくなっちゃったわ♡♡」
されちゃう、あれ。
「食べるわね♡いっぱい犯すわ♡良い?」
だめなんて言えないの、わかってるのに。
「えっ、きゅうけ——」
「時間がもったいないもの♡」
あついのか冷たいのかわからない。
「あっ♡♡きもちっ♡♡」
「えへっ♡♡のあちゃん、きもちい、のっ?♡♡」
ぐちゅぐちゅ♡
「はいっ♡♡きもちい、ですっ♡♡」
「うふっ♡私のおまんこ、きもちいい?♡」
ちゅっ、キスをする。
乃愛が荒々しく口を拭った。
「はーっ♡♡はーっ……♡♡」
「あっ……♡♡」
もう、乃愛の理性もだいぶ無い。
「いいんだよ、乃愛ちゃん……♡♡」
獣みたいに怖い視線で、射抜かれた。
「我慢しないで、いっぱい、シて?」
ぐっ——っと乃愛がやりやすいように脚を開いて、精一杯誘惑する。
「~~~ッ!♡♡」
ずちゅんっ♡♡
「あ゛ッ♡♡」
獣の交尾みたいだった。
「お姉さんのクリ……♡♡がちがちで……♡♡あっ♡」
私を食べるみたいに、乃愛が覆いかぶさる。
「きもち、んっ♡♡おっ……♡」
目の前が、匂いが、肺の中が、耳の中も身体の中も頭の中も、乃愛でいっぱい。
「んふふ……♡♡えっちな声、はあ……♡♡出ちゃいました……っ♡♡」
乃愛は私の貪り続ける。
私は、全て受け止める。
「はあっ♡♡ふッ……♡♡」
セックスを始めてから、ふたりともまだイってなかった。
たっぷりと時間をかけて、絶頂への期待は最高に高まっている。
「もっと、したいのにっ……♡♡」
でも、そのせいで時間がたりない。
もっとしたい。私だってそうだった。
「お姉さんっ♡」
「なっ、にッ♡♡」
「いっしょにイきたいですっ♡♡」
乃愛が、かわいらしくおねだりしてくる。
「……いいよっ♡」
私たちが抱き合う時の合図のように、大きく手を広げた。
「一緒に、イこっか。乃愛ちゃん」
「……由佳、お姉さん」
乃愛を抱きしめて、たくさん撫でる。
ずっと変わらないふわふわの髪の毛。
ずっと真っ白な、すべすべの肌。
「はーっ♡♡んっ……♡♡イき、そッ……♡♡」
「私も、イきそうだよっ♡♡上手、それッ……♡♡」
全部全部、愛おしい。
大好き。
「イ——くっ♡♡」
「んっ……♡♡」
♡
「この時間でも、もう暗くなってきたね」
「夏が、終わるんですね」
「ね。乃愛ちゃん、楽しかった?」
まだ蒸し暑い夜に差し掛かろうとする夕方の道を、乃愛と並んで歩いていた。
すれ違う人たちはちょうど帰宅の時間のようで、みんな足早に歩いていた。けれど、別れが惜しい私たちはちょっとだけゆっくりと歩いている。
「ふふっ……♡それは、もちろん」
「……もうだめだよ?」
「わかっていますよ。これ以上居たら、お父さんにも、おばさんにも……それに、由佳お姉さんにも。迷惑かけちゃいますから」
また乃愛の瞳に魅入られそうになったので、私はとっさに目を逸らした。
「迷惑じゃないけどね、少なくとも、私は」
「まあ。お世辞でも、すごく嬉しいです」
「……はあ、貴方は本当に、変にませてるね。まだまだ子どもなんだから、素直に受け止めればいいのに」
乃愛は偉い。たぶん、地元でもこんな感じだ。親が一人だからなのか、元々の気性なのか。
一緒にいる間はよく甘えてくれたから、きっと、前者なんだろう。
『一人で大丈夫』というポーズをずっとしていないといけないんだから、当然疲れるし、逃げたくだってなる。
私くらいは、乃愛が寄りかかる事のできる人でありたい。
「私はさ、乃愛に嘘ついたり、お世辞言ったりしないから。全部本気だよ」
「……。……お姉さんは、変わりませんね」
「乃愛?」
「なんでもないですっ」
ぷいっと顔を逸らす乃愛。
夕日のせいか、真っ白なはずの顔が微かに赤くなっていた。
最寄りの駅の改札前まで、乃愛と一緒にやってきた。
乃愛の地元まで送っても良いくらいなんだけど、流石にそれは……と固辞されたから、今日はここまでだ。
あの乃愛のことだから、帰る時はだいぶぐずるのではないかと思ったけれど、案外あっさりとしている。
なんだか寂しいけれど、ちょっと距離があるだけだ。いつでも連絡はできるし、その気になればいつでも会える。
「またね」
——ただ、離れた後にどうなるかなんて、誰にもわからない。
一週間連絡しなければ、そのまま繋がりが消えてしまうことだって珍しくない。
「はい……あっ、忘れてたわ」
えっ——と声を出す前に、私は乃愛に口付けされる。
軽く、唇同士が触れるものだった。
「また会いましょう、由佳お姉さん」
私が呆けている間に乃愛は改札を過ぎていた。乃愛が乗る路線が乗り入れるホームは、すぐそこにあった。
角を曲がってエスカレーターに乗る前、乃愛がこちらを振り向いてかわいらしく手を振った。私も手を振り返して、帰路に着いた。
八月も終わるというのに、残暑で外は暑かった。
暑い夏の夜だった。
夏休み。残暑。蝉の声。
かき氷。花火。波の泡。
まどろみの中の白昼夢。
二人だけの秘密の関係。
だから、八月は嫌いなんだ。
終わりがあるものに、ひどく惹かれて、心奪われてしまう。
一次創作用Twitter→@omaeyrmsnsg