|ω・`)チラリ
やぁ、また2時間ほど間に合わなかったよ。
こんな更新もしないオナニー小説を見てくれている人はまだいるのだろうか……
あ、ちなみに大量更新です。例によって修正は気が向けばします。
1/28
32.膨らんできたトラベルノート
王都を離れ、カッツェ平原近くで野営を行った後、検問所を通りエ・ランテルへと入市した。
といっても経由するだけで特に用は無かったりするのだが。以前に寝床としていた宿は、ナザリックに拠点を移すのに既に引き払ってしまったし、顔を出したって特に親しくしていた訳でもない。
たまに通っていた酒場はあっても精々が顔見知り程度。エ・ランテルにはそこそこ居たはずなんだが、思い入れらしい思い入れなんて殆どない。
ここでの出来事と言えば、クレマンティーヌにいきなり襲われたり、かと思えば死んでて驚いたり、何を思ったのか生き返らせてみたり。
……あれ? やだ、俺、友達少な過ぎ……?
ユリとともに、転移門を通ってナザリック地下大墳墓へと向かう。
どうやら王都で行ったゲヘナについて、成果の報告とそれに関わった人員に褒美の授与を行うらしい。
ゲヘナは、俺の魂が(過去なのか隣り合う世界なのかわからないが)飛ばされる前の話なので、少し昔にあった出来事のように感じてしまうが、現実にはつい先日に起こったことである。
どうにも、記憶が混乱しているようで、ゲヘナで自分が何をしていたか思い出せない部分があるが……まぁ、今回のゲヘナで最も尽力した人物と言えば、デミウルゴスに他ならないだろう。
作戦の立案に、冒険者モモンが英雄に至るシナリオの脚本、役者までもこなし、八面六臂の働きを見せた。
当のデミウルゴスはそれをモモンガに称賛され、笑みを浮かべていたが、アルベドなんかは心からのお褒めの言葉を掛けられるのを見て妬ましそうにしていたな。
他にも、情報収集に従事したセバスやソリュシャンなんかも評価され、それぞれの望むものを願った。他、エントマも活躍してたが、蒼の薔薇のチンチクリンに散々に痛めつけられたみたいだからなぁ……まぁ、今回は相性が悪かったのだろう。そのエントマはリベンジの機会を願ったようだ。
ユリもゲヘナには参加していたが、彼女への褒美についてはナザリックの盟主であるモモンガからではなく、俺から与えることとなった。というのも、現状ではユリの役柄が俺の専属侍従ということもあり、侍従に対して主人が務めを果たすべきとモモンガが判断したからだ。彼女の願いについては、また後日、個別に対応することとしよう。
ゲヘナの成果報告に続けて、今後のナザリックの方針を確認した。司会進行はデミウルゴス、解説デミウルゴスだ。
基本的にナザリックを維持・運営してゆくことが前提にある。その前提のもと、アインズウールゴウンの存在を世界に知らしめ、望みは薄いだろうが、俺のようなハグレた存在が他にいないかを確かめることもするようだ。他にも前からモモンガとは話を擦り合わせていたことだが、ナザリックの強化と情報収集には力を入れていく方針だ。
──と順調に話が進んでいたのだが、デミウルゴスが爆弾を落とした。モモンガの目的である世界征服が今回のことで一歩近づいた、と。確かにそんな話はデミウルゴスから前に聞いていた。デミウルゴスの中では、その足掛かりとしてゲヘナが実行され、王国の裏を制圧したという認識があるようだ。
何か皆、当然知ってましたけど? みたいな顔に対して、ポカンとしているモモンガ。いや、なんでポカンとしてんだよ。モモンガの指示で王国を襲撃したんじゃないのか。焦ったように見られても俺が困るだけだ。
……というか、そんな気はしてたけどね。モモンガからは世界征服とか話にも無かった訳だし。そんな大それた計画を自発的に立てるとも思えない。また何かしらの言動で誤解でもされていたか、成り行きみたいなものだろう。まぁ、今回のはもう手遅れだが。
ということで、デミウルゴスはナザリックを表の世界に出して建国する事を提案した。建国の理由とかは俺も想像していた所、あぁ、やっぱりなと納得出来る内容だった。異形種が多いナザリックが人間種の国家に従属するなど単純にメリットがないからだ。
ザワつく玉座の間でユリはしたり顔で何度も頷いてたりもしたが、皆、一様に驚いていた。どうにも国家の建設はモモンガの計画の内で、最初から組み込まれていたことになっているらしい。
しかし、カルネ村が重要な要素にあがるのは初耳だったな。人間種と亜人種の多種族混成国家を作るための実験の場だったとは……
それならば、俺も今度、一度は見とかないといけないかな。
その後については、一日の終わりにモモンガに誘われてスパに行った。スライム風呂て何やねん。確かに効率的ではあるんだが……
モモンガを洗っているのは三吉君。風呂では実質的に専属となっているせいで、同じスライム種のソリュシャンから嫉妬を買って何処かに隠されたことがあるらしい。
風呂では互いの近況についてチラホラ話す。モモンガも中々にストレスを溜めているようで、ナザリックの支配者としての演技にプレッシャーを感じているようだ。俺は支配者として上に立ちたいとかいう願望はないと思っているが、モモンガ一人に全て背負わせる訳にもいかない。少し考えないといけないな。
他にも、こういう場では極力、仕事の話はしないようにとは思っていたんだが、どうしてもそういう話になってしまう。
特に、モモンガはナザリックの運営に尽力しているのに対して、俺は未だナザリックの為に働いてるとは言い難い。俺は今後どのような立場になるべきか。以前と違い、ギルドメンバーの代わりに守護者達があれこれ拠点運営のために働いているが、今更俺に役職をつけて組織に捩じ込むのも、命令系統に混乱を生むだけだろう。
可能ならば、独立した分野での貢献が望ましい。例えば各地域での情報収集や潜入捜査、危険の少ない範囲内での威力偵察……ナザリック側にはいない人物としてナザリックの運営を影から助ける役割も今後は必要になってくるのではないだろうか、という話をした。
その話にモモンガは渋っていたが、否定出来ないものもあったらしい。概してそういった役割の奴らは有事の際に切り捨てられるという危険性もあるのだろうが、建国を目指す今のナザリックに有用なのは確かだろう。
その覚悟ではないが、モモンガには俺の所持していたリングオブアインズ・ウール・ゴウンを預かって貰うことにした。この指輪は弱点となり得る。モモンガも転移の指輪の取り扱いには注意しているようだったしな。
……まぁ、もっと込み入った難しい話は追々詰めていけばいい。当分はモモンガの補助をしながらナザリックの下僕たちと交流を深めてゆくということで良いだろう。
広い風呂で二人きりというのも味気ない。今度は男性守護者の皆も誘って風呂に来ようという話にもなった。
……
ユリが専属の侍従ということになっているのだが、彼女にはナザリックでの仕事も幾つかある。それではユリが休む暇がないというので、モモンガから相談があり、ナザリック内ではプレアデスのメンバーや一般メイドが交代で付き人をしてくれることになった。
そんなのいらないとは言ったんだが……モモンガがあなただけ逃げようったって、そうはいきませんからね、だってさ。
まぁ、それはいいんだが、休みを強制的に与えられたユリのショックを受けた反応が少し面白かった。抵抗しようともしていたが、いくら疲労がないとはいえ24時間働こうとするのはヤバい。ユリもモモンガからジッと見つめられて諦めたようだ。……俺だったら休み貰えたら喜ぶだけなんだけどな。ついでだから、ゆっくりしてこいと送り出した。
現在、ナザリックには外部から来た存在として、冒険者モモンの騎獣であるハム助や、少し前に制圧したリザードマンが居るそうで、闘技場に挨拶がてら顔を出した。
ハム助は殿のお友達でござるか? だなんて、可愛いな、オイ。リザードマンのザリュースとゼンベルはガチガチに固まっていたが……別に俺のせいじゃないよな?
彼らはユグドラシル由来の存在が武技を扱うことが可能なのか、実験をかねて鍛錬をしているようだ。しかし、デスナイトとハムスターが仲良くなるなんてことあるんだな……仲の良いことは良い事だが。
しかし、時たま誰かのくぐもった声が聞こえていたのだが、結局最後まで姿が見えないままだった。訓練場に幽霊などのモンスターの気配はなかったのだが……少し不気味だ。
先日モモンガと話していた件。早速、男性守護者たちと風呂へ。コキュートスに対してのデミウルゴスの言葉が酷い。そりゃあ、蟲人だもの、素っ裸だろうさ。少し気になったんだが、コキュートスは熱い風呂に入っても大丈夫だったのだろうか。何か近くに入って来たときは湯の温度が一気に下がったし……無理させたのなら申し訳ないな。コキュートス的には水風呂が最も気に入ったようだった。
女湯ではアルベドがかけ湯なしで湯船に入ろうとしたらしい。まさか風呂で、るし☆ふぁーの声を聞くことになるとは思わなかったぞ……お風呂ではマナーは守りましょう。
(追記)
夜にユリが部屋を訪ねてきた。別に疚しい理由ではない。ゲヘナの報奨の件で話がしたいと伝えていたのだ。別に休日が終わってからでも良かったのだが、突然休みを与えられて落ち着かなかったらしい。
しかし、ユリの要望がリングオブアインズウールゴウンとはな……俺も一つ持ってはいたが、先日モモンガに返却したばかり。果たして渡しても良いものか。これについては俺の一存では決められない。モモンガへの相談が必要になるだろう。
☆月★日
昨日のユリへの報奨の件をモモンガへと相談した。モモンガとしては、もしも敵性存在に奪われた場合、ナザリック外から一気に内側に侵入することが出来るため、指輪の保持者は極力減らしたいらしい。現に、今も配下たちには外に持ち出すことは禁止していると。
その場にいたアルベドからはユリの職務上、ナザリックと外とを行き来することになるため、移動の手間を考えるとリングオブアインズウールゴウンの使用許可自体は検討する意義はあるという意見があがった。
しかしながら、外での活動が増えるに従い、ユリ程度での戦闘力では指輪を奪われるリスクも高まってゆくという指摘もあった。
アルベドとしては保持許可を与えるのであれば、持ち出しはナザリック近辺に限定すべきではないかという考えらしい。
とはいえ、リスクである事に違いはない。
……ということで、ユリには悪いがリングオブアインズウールゴウンを与えることは現時点では保留。その代わりになる訳ではないが、彼女には私物の指輪を与え、守護者の誓約を結ぶことにした。
☆月★日
リザードマンの集落を視察した。リザードマンはトブの大森林、瓢箪をひっくり返したような形の湖の南側に住処を構えている。現在は5部族──緑爪、小さき牙、鋭き尻尾、竜牙、朱の瞳が存在し、かつては存在していた黄色の斑、鋭剣、の2部族を含めれば7つの集落があったという。
2つの部族が滅んだ背景について聞いてみれば緑爪の族長シャースリューが言い辛そうにしつつも答えてくれた。過去に食糧難があり、食糧を奪い合って争いが起こったのだそうだ。結果、戦争に破れた黄色の斑と鋭剣は滅びたが、人口が減ったことで食糧難を乗り切ることができ、その滅びた部族の生き残りは竜牙に組み込まれるに至ったのだと。
彼らの風俗だが、基本的に閉鎖的な社会を持ち、ナザリックに占領されるまでは部族間でも交流には消極的だったらしい。それがナザリックという強大な敵が現れたことで、一時的にも部族間が結束することになり、それにより対抗しようとした。……まぁ、それでも結局は敵わなかった訳なのだが。
現在、彼らはこの地を統治するコキュートスから鋭き尻尾の集落に纏めて暮らすように指示されているようで、ここらでは家屋を作っている途中の場所も多く見られた。概ね、部族により居住の場所は固まっているようだったが、俺らが視察で周辺を見回ると遠目にビクビクしながら此方を伺ってくるという点では何処も共通していた。
だが、せっかくの視察。案内されるがままに見て回るだけではつまらない。何か問題が起こっていないかを聞くと、一所に大勢が集まっている影響で食糧の確保が難しくなっているらしい。しかし、それも既にコキュートスがナザリックに対応を願い、ナザリックより物資を運びつつ、彼らの主食となる魚の大規模な養殖場の建設を計画しているそうだ。
魚の養殖については、元々はザリュースが知識を持っていたようだ。というのも、過去の食糧難を経験したことで、再び起こるかもしれない危機を回避するために知識を得ようと彼は旅人となり、外部で魚の養殖の知識を習得、故郷に戻ると養殖を始めたのだそうだ。以前は、ある程度軌道に乗せる事が出来ていたらしいが……ここに来て、死からの復活の代償により知識が逸失してしまったようで、稚魚から養殖する方法がわからず、手探りの状態なのだという。
水質の悪化防止、共食いの防止、生餌の確保、水中酸素や温度の管理等々……生き物の生育環境を管理するということは並大抵の苦労ではないはず。その努力に素直に敬意を払いたい。
ナザリックに養殖の知識があるかは不明だが、此処は一つ知恵者のデミウルゴスに伝えて、適格者に指導して貰うとしよう。最古図書館にも資料がないか問い合わせてみるつもりだ。
昨日に引き続き、カルネ村の視察を行った。
この村に優秀なポーションの作成者がいることは事前に知っていた。ンフィーレア、リジイー。二人は元々はエ・ランテルに拠点を構えており、以前にエ・ランテルで起こったアンデッド事件の被害者でもある。
故に事件の首謀者の一人であり、ンフィーレア君を拉致した張本人のクレマンティーヌをこの村に連れてくることはしていなかった。そういった事情もあり、今回はユリだけの同行となっている。
ちなみに最初は、ただの冒険者として、のんびり村を見て回ろうと考えていたのだが、顔を出すとだけ伝えていたルプスレギナが気を利かせて村の有力者に根回しをしてしまったらしい。これについては俺がルプスレギナに根回し不要と伝えていなかったのが悪かったのだが。
なもんで、ナザリックの関係者、それもルプスレギナよりも上の立場の奴が村に来ると知られ、少し騷しくなってしまったようだ。流石に今顔を覚えられてしまうと、また来ることがあった時に困るので急いで顔を隠すことにしたが……
案内をしてくれたのは、村で合流したルプスレギナと、カルネ村の有力者の一人であるエンリ。何処にでもいる村娘といった風ではあるが、人の琴線に触れるのが上手いというか、ユリなどはルプスレギナや美姫ナーベを引き合いに美人だと褒められて機嫌よくしていた。計算ではなく、自然にそういった言葉が出てくるのは凄いことだと思う。
また彼女はモモンガがこの世界に来て始めて接触した者の一人でもあり、彼女からしてみればモモンガは村や、命を助けてくれた恩人。命を助けた際にモモンガが渡したマジックアイテムにより呼び出されたゴブリン達亜人種もカルネ村の一員として暮らしている。
人間種と亜人種が混じり合って生活しているのは、王国内ではここぐらいではないだろうか? 少なくとも聞いた事は無かった。彼らは此方、特にルプスレギナのことを警戒しているのか、直接話すことは殆ど出来ず、遠目から観察するだけだったが、ゴブリンたちは自警団の訓練、トブの大森林での狩猟などで村内での役割も担うまでになっているようだ。彼ら自身は陽気で、社交性も高い。ナザリックから物資を運んだ事への礼もあり、礼儀もある程度備えているようだ。
もう一つの目的であるポーションの製造の進捗を聞くために村の中でも離れにあるンフィーレア君の工房に向かう。何故離れているのかだが、途中であったエンリの妹のネムがンフィー君は臭いと言っていたように、工房に近づくにつれて臭いが強くなってゆく。恐らくは薬草を磨り潰したりする作業で臭いがついてしまうのだろう。ポーションのことを嬉々として説明するンフィーレア君にも臭いは染み付いており、エンリが眉を顰めていたのが印象的だった。
☆月★日
視察も終わり、今日は一日休養とする──モモンガも守護者達も働いている中、一人だけ休むというのは気まずくあるのだが……
とはいえ、モモンガや俺が休まないと、守護者達やメイド達は休む必要などないと働き詰めになってしまう。今は組織のトップの一人と言えるが、以前はただの平の労働者だった。労働環境の良し悪しがパフォーマンスに影響するのはよくわかっているつもりだ。トップになったからには、そこら辺は気をつけなければならないと思う。
余暇といっても普段と然程変わる訳でもない。侍女としてユリは付いてくるし、俺がやりたい事をするというのも変わらない。普段から仕事をちゃんとしていないことがわかってしまうな……
まぁ、俺のスタンスとしては、モモンガとの会議や守護者達への意思下達、彼ら守護者達が対応しきれない事への対処とかだから。普段からあまりあくせく働く役目ではない事を伝えておく……
どうせだ。最近はユリと二人きりになることも無かった。いい機会だから、今日はユリを巻き込んで怠惰に過ごすとしよう。それに、ユリも休み方を知らないようだったからな。余暇の過ごし方を教授するのでも良いかもしれない。
☆月★日
ナザリックを表の世界へと出すための作戦が始まる。最終的な目標は世界征服。そのためにナザリックを中心とした国家を形成しなければならない。そして、それを達成するためには、また幾つかの段取りを踏む必要がある。
まず第一にナザリック周辺の土地をナザリックが実効支配、所有していると認めさせること。
第二、ナザリックは手を出してはいけない集団だと知らしめること。
第三、建国に際して、周辺国家に正式に認められた国家であると言質をとり、後ろ盾を得ること。
これら条件を揃えるため発案された作戦では、漆黒のモモンを通してバハルス帝国の主席宮廷魔術師に接触した後、帝国がナザリック地下大墳墓を調査するように主席魔術師を通して誘導する。
この主席魔術師は文字通り魔法狂いらしく、新たな魔法の知識のためならば自身の全てを差し出すような一面があるらしい。ナザリック地下大墳墓にその新たな魔法の知識があるかもしれない、となれば無視することは不可能だろう。帝国が釣れる公算は高い。
そもそも何故直ぐにでも名乗りをあげないのかだが。それは異形種の多いナザリックは潜在的に人間と敵対関係に陥りやすく、いきなり王国、帝国、法国の三方を敵とする可能性もあるためだ。故にいずれかの国家を後ろ盾にする必要があったのだが……
王国では釣れる人物といえば愚物しか居らず、此方の力を理解しない可能性すらある。王国の支配層が冷静な判断を下せるかも疑問だ。そのまま敵対関係に陥り、王国が破滅する可能性もなくはない。
法国に至っては現在のところ、不明な所が多い。過去に現れたプレイヤーを神と崇める六大神を信仰しており、人間以外の他種族には排他的かつ攻撃的。現在はエルフと戦争状態にあるとクレマンティーヌから聞いている。特性上、人間種以外が多いナザリックとは致命的に相性が悪いだろう。
よって、ある程度理性的な交渉が期待でき、亜人種とも共生している例のある帝国一択だったという訳だ。
☆月★日
モモンガが帝国へと向かう前に、俺が先に出立することに決めた。帝国には実は以前に訪れた事がある。とはいえ、竜王国への旅の帰りについでに滞在し、少し仕事をした程度で、帝都自体を訪れるのは初めてだ。
エ・ランテルから北東。帝都アーウィンタールへの道中の中程にある衛星都市。エ・ランテルと同格くらいの規模の都市だったと記憶している。その時は特に観光もせず、エ・ランテルに戻ることにしたのだが……今度はよく街の様子を見て回りたいものだ。
……出来れば今回はクレマンティーヌとユリとは別行動を取りたい。──……そういえば、モモンガがとある細工をしたいと言っていた気がする。
ということで、モモンガに提案。二人をその細工を施すための作戦に参加させてはどうか、と。クレマンティーヌを拉致、ナザリック地下大墳墓の深くを開始点として、地上部への脱出を目指させるというある種のゲーム。各所にはボスとして守護者達やユリを含めたプレアデス達を配置して脱出の邪魔をさせる。
つまるところ、細工とはナザリックのセキュリティ強化の実験──を建て前とした、本命は建国に向けて、外部向けにナザリック地下大墳墓の内部や守護者達の力などの欺瞞情報をある程度流すことなのだが、その役目をクレマンティーヌに任せようと思う。
クレマンティーヌはナザリックのことを基本的に嫌っている。拉致され、実験に付き合わされたと知った彼女は腹いせとばかりに、自身が得たナザリックの偽情報を拡散しようとするだろう。
無論のこと、作戦が上手くいった暁には彼女の望む報奨を与える予定ではある。……が、作戦への加入を承諾、むしろ勧めた俺に対しては、どのみちブチ切れるのが目に見えてる。だからお詫びとして、何か個人的にも用意しておかないといけないのだが……
……ま、少し可愛そうだとは思うが、未だにナザリックに顔を出そうとしないクレマンティーヌだ。今回のことは歓迎の儀とでもとって貰おう。ユリの方もクレマンティーヌを主体とした実験の監視役とでも言っておけば問題あるまい。
今回は久しぶりの一人旅になるのかな? なんだか、ワクワクしてきたぞ。
☆月★日
単身、帝国へ。エ・ランテルから帝都アーウィンタールへは凡そ4日ほど。定時の連絡、報告要員として、影の悪魔を影に潜ませている。また緊急時にはデミウルゴスから直接メッセージが送られてくるそうだ。
再度、作戦の流れを確認する。まずは冒険者モモンが帝国の主席魔術師に接触。ナザリックを表の世界に出すために、人間側からナザリックへと接触させるように誘導する。具体的には未知の遺跡の発見と、遺跡に眠っているかもしれない数多の財の可能性の示唆。一方で、そこに潜むアンデッドモンスターの危険性についての警告もする。帝国としてもアダマンタイト級冒険者の言葉を無視は出来ないだろう。
作戦に際し、モモンガからは漆黒として一緒に行動しないかと提案されたが断った。新進気鋭の、最も新しいアダマンタイト級冒険者パーティーに、ぽっと出の金級冒険者が入れる訳がないだろうに。……まぁ、相応の成果を上げるなど、やりようはあるのだろうが、やはり目立つので嫌だ。
と、言ったらあからさまに落ち込んでいたので、機会があれば、合同依頼くらいならいいんじゃないか? とは伝えたが……
俺が出立したのと同日。クレマンティーヌを拉致し、ナザリック地下大墳墓の深層に配置、作戦を開始したようだ。聞くところによれば、さっそくブチ切れ状態だったとか。
……ユリもなんか雰囲気が冷たいらしいし。
……うん。
☆月★日
俺が徒歩でのんびり移動している間に冒険者モモンはさっさと帝国入りし、アポ無しで主席魔術師と会談したそうだ。アポ無しって、すごい。
と、ここまでは順調ではあったのだが、イレギュラーが発生したようだ。帝国の主席魔術師フールーダがモモンガに弟子になりたいと乞い願ったらしい。対価を、己の全てを捧げると言って。情報にはあったが、本当に魔法キチのようだ。自身がより高みに登るために、躊躇いなく自身の所属している国を裏切るとは……
モモンガの弟子となったフールーダには、その対価となった己の全てを捧げるという言葉通り、忠誠を示すために帝国を売り渡し、帝国や周辺諸国の情報を流すスパイとなることを求めたという。
さっそくフールーダは皇帝に、正体不明の遺跡──ナザリック地下大墳墓の調査を進言したようだ。とはいえ、同時に危険性のリスクについても伝えてある。帝国の対応としては、まずはワーカーを送り込んで様子見という所だろう。
☆月★日
エ・ランテルを出立し、早四日目。道中に立ち寄った都市で一休みし、市場や商店を覗いていたらあっという間だった。当初は4日で帝都に到着する予定だったが、一日分伸びそうだ。
明日には、帝都に入市することになる。噂に聞く帝都アーウィンタールがどれ程の都市なのか、楽しみだ。
☆月★日
帝都へ入都した。
帝都での近々の目的は、ゲヘナの後に、王国からの追求(蒼の薔薇)を躱すために帝国へと逃げた不死人達と合流すること。彼らは冒険者に扮してゲヘナに参加していたが、当然のことながら実際には冒険者ではない。クレマンティーヌから借り受けていた冒険者証(ハンティングトロフィー)も既に返却してある。
一応、召喚主は俺であるし、彼らは死体を依り代として、この世界で受肉している。モモンガに確認したところ、死体を依り代とした召喚では、時間制限で送還されることがないらしい。そのため、一応は主である俺が彼らを統率しなければならなかった。
メッセージで連絡を取り聞いてみれば、今は帝国騎士、露天商、帝国の裏組織の暗殺者、中にはワーカーやらコロシアムの剣闘士になった奴もいる。本当は冒険者として新たに登録し、活動する予定であったのだが、帝国では冒険者の地位が低く、低ランクでは生活にも困るほどだったという。なので、それぞれが帝国に紛れつつ職に就いて生活し、次の指示を待っている状態だった。
帝国で冒険者の地位が低いのには、国政が絡んでいるようだ。帝国ではモンスター討伐の役目は騎士団にあり、治安の維持のために騎士による警邏も行われている。つまりは、王国ではモンスター討伐が冒険者の仕事であったのに、帝国ではそうではないということだ。
これは帝国の皇帝が自身の権威の後ろ盾である騎士団を優遇した結果とも取れる。それに、冒険者は基本的に国同士の戦争には加わることはないらしく、長年王国と争ってきた帝国が態々いざという時の戦力にならない冒険者を支援するはずもないだろう。
──都市外の遠くからも見える巨大な白亜の帝城がこの帝都アーウィンタールの象徴。そして帝国皇帝の権威の大きさを示しているかのようだ。
入市して先ず目に入ったのが道路であり、都市内に限れば殆どが石敷きかレンガ敷きに整備されている。他にも王国とは異なり、区画整備も進んでいる。皇城を中心として放射状に重要施設が配置されており、行政の効率も考えられているようだ。街頭の設置された町並みは理路整然としており、古風な景観であった王都とは異なり、どこか近代の都市を思わせる。
人々の表情も明るい。騎士の巡回が頻繁にあることで帝都内の治安もいいのだろう。宿を取り、帝都の名物を聞いてみたが、ここには多くの娯楽があるようだ。
闘技場に、美術館、食品や生活雑貨を取り扱う中央市場や魔道具の取り扱いのある北市場。王国には表向きなかった奴隷市場なんて場所もあるそうだ。
明日、少し回ってみようと思う。
☆月★日
冒険者組合へ向かう。帝国の冒険者組合は閑古鳥が鳴いているようで、掲示板を確認するも帝都であるというのに、依頼は多くない。
受付嬢に聞いてみたら、依頼自体が少ないので、ある程度のランクからの依頼は紹介制となっているようだ。当然、実績のない金級ソロ冒険者などに紹介できる依頼などある訳がないんだとか。この受付嬢の態度が悪すぎなんだが?
討伐依頼は予想通り殆どが騎士団に持っていかれているらしく、あるのは雑用やら、護衛依頼、あとは薬草や一部モンスター由来の素材の納品みたいなのばかり。帝国での冒険者の地位が低いせいか、依頼を受けるのにも信用が必要となり、何度か金にならない雑用やら常駐依頼をこなして、人となりやら実力を示さなければならないらしい。
そして、無愛想で失礼な受付嬢からあなたのように問題がある冒険者には割り振る仕事はない、とか言われた。思い出すだけで腹が立つ。
どういう意味なのか聞いても面倒臭そうな反応されるばかり。あげくの果てには犯罪者扱いされ、騎士団に通報したから大人しくしていろだと。全く意味がわからない。もう頼まれたって帝国の組合には二度と行かない。
……それはそうと、今はナザリックには戻れない(何となく置いてきたユリとクレマンティーヌと顔を合わせづらい)。ユグドラシル金貨ならそれなりに持ってはいるが、この世界で流通している通貨の手持ちには限りがある。ホント俺は帝都で、どうやって過ごしたらいいんだよ?
イライラしながら考えごとをしていたせいか闘技場やら美術館の近くを見て回ったというのに、うろ覚えな記憶しかない。
影に潜んでいる悪魔も怒り心頭で、俺を心配するような気配を見せていたが、ナザリックには報告するなと厳命しておいた。資金の心配をしているなんて、情けないし、恥ずかしくて言えない。
どうにもシャドウデーモンの怒りが冷めないようで、あの失礼な受付嬢を少し脅かしに行かせた。勿論、殺傷は避けるように命令したが。多分、嫌な事でもあって見知らぬ冒険者である俺に八つ当たりして来たんだろう。これで少しは反省して貰いたいものだ。
一晩考えてみたが、上手い金策は思いつかない。精々がインベントリに眠っているアイテムを北市場で売るか、日雇で肉体労働に従事するくらいか……? まぁ、それはそれで目立ってしまうのが予想つくが。なんたってユグドラシル由来のアイテムは何だかんだ貴重だし、この身も重機よりパワーがあるからな。
今日は俺が召喚した不死人達と会う予定があった。向こうから指定されたのは歌う林檎亭という宿屋に併設されてある酒場。
そこでパッチ達と会った。彼らがゲヘナの後に王国から帝国へと逃げて来て、早一月、それぞれで生活していた。中には早くも恋人が出来たって奴もいた。
不死人は人間と見た目は殆ど同じだが、他にも亡者、霊体の三形態を持つ。種族は当然の事だが人とは異なり、一応はアンデッドの一種と言える。ふと思ったのだが、異種族ではあるが男女であればすることはするだろう。もしも二人の間に、不死人と人間との間に、子どもが生まれたらどうなるのだろう、と。もしも、子どもが生まれ、その子どもの種族が不死人なら大変なことになりかねないのではないだろうか。
……まぁ、悩んだ所でどうしようもないし、どうせなるようにしかならない。もし、そうなったとしても、この世界に不死人という種族が新たに増えるだけだ。
彼らにはこのまま帝国で生活を続けるように指示した。現状、特に戦力が必要な場面ではない。帝国と争うような、来たる時が来るかはわからないが、今は戦力を埋没させておこう。出来れば彼らがこのまま帝国に同化して、影響力を増し、ナザリックに情報を齎してくれるようになればいいのだが。
そして、既に帝国に生活の基盤がある彼らに仕事の相談をした。沈黙ののち、不死人の王が日雇の肉体労働とは……と止められ、嘆かれた。仕事を探さない限り所持金が尽きかねないことを伝えると哀れに思ったのか暫く宿暮らしが出来るくらいの金を恵まれた。情けなさ過ぎる。パッチも嫌そうな顔して、利子付きであるが貸してくれた。人に金なんて貸しそうにないのに意外なことだ。
金が無い、金が無いと金策の話をしていると何処かで会ったような顔の男が話しかけてきた。
すぐに思い出せなかったのだが、以前にカッツェ平原でアンデッドに襲われた時に助けられた事があるという。そういえば、カッツェ平原を調べに行ったときにスケリトルドラゴンに追い回されているワーカーを助けた事があった筈だ。
男の名前はヘッケラン。そういえばと思い過去の日記を読むと確かに会っている。ヘッケラン達、フォーサイトの面々はこの踊る林檎亭を拠点としているそうで、此処はワーカー達への依頼を仲介する場でもあったらしい。
彼らも話に加わって酒盛りしていると、腕を見込んで、一緒に仕事をしてみないかと誘われた。俺たちは安全に金が稼げる、アンタは依頼を受けられる、双方に利があると言うが……しかし、パーティーメンバーのイミーナは反対。頭脳担当に相談しなければならないからだとか。
彼らが奢ってくれると言うので遠慮なくタダ酒、タダ飯を堪能した後、帝国にモモンガが滞在していることを思い出しメッセージを送ってみた。モモンガに何処に滞在しているのかと聞けば、フールーダに紹介された真新しい高級ホテルみたいな宿らしい。何でこんなにも待遇が違うのか。ランクか? ランクのせいなのか?
モモンガの所にお邪魔しようとも思ったのだが、一度、漆黒に加入しないかという誘いを断った手前、金がないからと頼るのではプライドが無いと呆れられるだろうな……