大学在学中に副業込みとはいえ、ライター業で食い扶持を稼げるようになった後藤一人(かずと)25歳はある晩、下北沢の居酒屋『かおみせ』へと足を運んでいた。
「全員で人気バンドになって、うっ売れて学校中退したい……」
 取材旅行から帰ったばかりだが、大恩ある叔父夫婦に頼まれては断ることもできず、というかせずに向かったものの、遭遇したのはいとこのひとり15歳の重い想い。迎えに来て早々に声を掛けるか迷った矢先、
「これからもたくさん見せてね。ぼっちちゃんのロック……『ぼっち・ざ・ろっく』を!」
「あっはい!」
 そんな青春真っ盛りな話を聞いて感心している内に、ひとりとその友達は居酒屋へと戻っていく。一人(かずと)は数分程、時間を空けてから店内へと入っていった。
「すみません。いとこのひとりを迎えに来たのです、が……きくり?」
「あれ~? かず君何でここに居るの~?」
 叔父夫婦に頼まれていとこのひとりを迎えに居酒屋へ来たのだが……何故かそこには、知っている顔がいつもの調子で酒を飲んでいた。